JP2014095638A - ヘモグロビンa0分画の分離方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】カチオン交換クロマトグラフィーにより、短時間で再現性良くヘモグロビンA0分画を分離する方法を提供する。
【解決手段】カチオン交換クロマトグラフィーによるヘモグロビンA0分画の分離方法であって、下記溶離液A及び溶離液Bの少なくとも二種類の溶離液と、カチオン交換基を有するカラム充填剤とを用い、測定系に生じる圧力値を9.8×10Pa以上19.6×10Pa以下に設定するヘモグロビンA0分画の分離方法。
溶離液A:pHが4.0〜6.0であって、下記(1)、(2)、及び、(3)の全ての成分を含む溶離液
(1)カオトロピックイオン
(2)酸解離定数を3.5以上6.5未満の範囲に有し、モノカルボン酸、ジカルボン酸、トリカルボン酸、及び、アミノ酸からなる群より選択される少なくとも一種である酸又はその塩
(3)酸解離定数を6.5以上9.5以下の範囲に有し、無機オキソ酸及びアミノ酸の少なくともいずれかである酸又はその塩
溶離液B:pHが溶離液AのpHよりも0.5〜3.0高く、かつ、濃度が溶離液Aの濃度よりも20〜200mmol/L小さく、溶離液Aの送液後に送液する溶離液
【選択図】なし

Description

本発明は、カチオン交換クロマトグラフィーにより、短時間で再現性良くヘモグロビンA0分画を分離する方法に関する。
液体クロマトグラフィーによる安定型ヘモグロビンA1cの測定方法は、他の測定方法と比較して精度が良く、短時間で測定できるため、特に糖尿病患者の安定型ヘモグロビンA1cの測定値(ヘモグロビンA1c値)の管理に用いられている。この用途では、同時再現性試験時におけるヘモグロビンA1c値のCV値(%)が1.0%以下程度の精度が要求される。
安定型ヘモグロビンA1cの高精度測定のためには、安定型ヘモグロビンA1cと他のヘモグロビン類との良好な分離が必要である。高い分離性能を得るための一般的な手段は、カラム充填剤粒子の粒径を小さくし、より均一にすることである。例えば、特許文献1には、平均粒径値が3〜4μmの微小な充填剤を用いて安定型ヘモグロビンA1cを測定する方法が開示されている。しかし、その結果、測定系にかかる圧力は50×10Pa以上と大きくなる。そのため、使用する液体クロマトグラフは高い耐圧性能が必要になり、高価で複雑な構造になる。また、測定系に常時高圧がかかるため、長期間使用した場合の配管系の詰まりや劣化、カラム寿命の短縮等の弊害をもたらす。安定型ヘモグロビンA1cの測定のような多数の検体を測定する項目においては、カラム寿命はコストに直接影響を及ぼすため、短期間で測定精度が低下するカラムは実用上使用できない。従来の方法で高精度測定を行う場合は、特許文献1に示された圧力値と同等か、それ以上の圧力値が生じる。
高圧測定での問題を回避するために測定系に生じる圧力値を小さくする方法として、粒径値が大きいカラム充填剤を用いる方法がある。しかしこの方法では、カラム内の空隙率の増加によって分離性能が低下し、ヘモグロビンA1c値の測定精度の低下、及び、カラム寿命の短縮という問題が生じる。また、測定時の流速を小さくする方法もある。しかしこの方法では、流量が不安定になり分離性能の低下によるヘモグロビンA1c値の測定精度の低下、及び、測定時間の延長等の問題が生じる。
一方、安定型ヘモグロビンA1cをより精度よく分離するための溶離液に関する技術も開示されている。溶離液の変更は、充填剤の変更に比べて容易にできるため、クロマトグラフィーの改良手段として有益である。安定型ヘモグロビンA1cを測定する際の溶離液の成分は、通常の液体クロマトグラフィーに用いる緩衝液の成分が適宜用いられている。例えば、リン酸やホウ酸等の無機オキソ酸を含む緩衝液を用いる方法(特許文献2〜5)、有機酸やアミノ酸を含む緩衝液を用いる方法(特許文献6、7)等が開示されている。また、溶離液に界面活性剤を添加する方法(特許文献8、9)、カオトロピックイオンを添加する方法(特許文献2、4、10)等、各種添加剤を付与することで分離性能の向上が図られている。
通常、糖尿病診断のための測定では、測定時間の短縮のため、ヘモグロビンA0分画は1本のピークとして溶出する。しかしヘモグロビンA0分画には、ヘモグロビンA2や異常ヘモグロビンが含まれる。ヘモグロビンA2の測定は、サラセミアの診断に用いられる。また、異常ヘモグロビンであるヘモグロビンSやヘモグロビンCの測定は、重篤な貧血等の遺伝子疾患の検出に用いられる。例えば、特許文献11では、特定の複数の溶離液を用いることにより、ヘモグロビンA0分画に含まれるヘモグロビンA2、ヘモグロビンS及びヘモグロビンCを同時に測定できるとしている。
しかし、安定型ヘモグロビンA1c、ヘモグロビンA2、ヘモグロビンS及びヘモグロビンCを短時間で同時に測定する場合は、安定型ヘモグロビンA1cのみを測定する場合に比べて、分離するピーク数が増えるため、各ピークを高精度に分離することが困難になる。また、安定型ヘモグロビンA1cと、ヘモグロビンS及びヘモグロビンCの保持時間が大きく異なるため測定時間が延長する。
多くのピークを短時間で分離するためには、より高い分離性能が必要である。上記の溶離液に関する従来技術では、短時間測定で分離性能を高くすることが困難なため、結局小粒径のカラム充填剤を用いることになり、高圧下での測定における上記問題が生じる。特に、長期間測定を行った場合には、使用初期には良好であった測定再現性が低下する問題が生じる。
また、保持時間の大きく異なる成分を同時に測定する場合、特許文献1に開示されているような、測定時間の短縮化のために比較的保持時間が短い成分を濃度の低い溶離液で溶出させた後、濃度の高い溶離液に変更して、比較的保持時間が長い成分を溶出させることが行われている(濃度の正のグラジエント法)。しかし、このような従来の方法によりヘモグロビン類の測定を行う場合、長期間の測定で再現性が低下するという問題がある。
特開平5−005730号公報 特開平3−102259号公報 特開平3−255360号公報 特開昭63−75558号公報 特開昭58−210024号公報 特開平5−60742号公報 特開平11−295286号公報 特開平5−5730号公報 特開平10−10108号公報 特開2000−55899号公報 特開2001−159625号公報
本発明は、カチオン交換クロマトグラフィーにより、短時間で再現性良くヘモグロビンA0分画を分離し、安定型ヘモグロビンA1c及びヘモグロビンA0分画中のヘモグロビン類を同時に測定する方法を提供することを目的とする。
本発明は、カチオン交換クロマトグラフィーによるヘモグロビンA0分画の分離方法であって、下記溶離液A及び溶離液Bの少なくとも二種類の溶離液と、カチオン交換基を有するカラム充填剤とを用い、測定系に生じる圧力値を9.8×10Pa以上19.6×10Pa以下に設定するヘモグロビンA0分画の分離方法である。
溶離液A:pHが4.0〜6.0であって、下記(1)、(2)、及び、(3)の全ての成分を含む溶離液
(1)カオトロピックイオン
(2)酸解離定数を3.5以上6.5未満の範囲に有し、モノカルボン酸、ジカルボン酸、トリカルボン酸、及び、アミノ酸からなる群より選択される少なくとも一種である酸又はその塩
(3)酸解離定数を6.5以上9.5以下の範囲に有し、無機オキソ酸及びアミノ酸の少なくともいずれかである酸又はその塩
溶離液B:pHが溶離液AのpHよりも0.5〜3.0高く、かつ、濃度が溶離液Aの濃度よりも20〜200mmol/L小さく、溶離液Aの送液後に送液する溶離液
以下に本発明を詳述する。
本発明は、カチオン交換基を有するカラム充填剤を用いるカチオン交換クロマトグラフィーにおいて、特定の成分並びに特定のpH及び濃度を有する少なくとも二種類の溶離液を特定の順序で送液する方法、即ち、従来の「濃度の正のグラジエント法」ではなく、「pHの正のグラジエント及び濃度の負のグラジエントを併用する方法」を用いる。
本発明者は、このグラジエント法を用いた測定方法が、測定系に生じる圧力値を従来よりも低い特定の範囲に設定する場合にのみ、短時間の測定においてもヘモグロビンA0分画に含まれる成分の良好な再現性を示すことを見出した。
その結果、短時間で再現性良く安定型ヘモグロビンA1cと、通常ヘモグロビンA0分画に含まれるヘモグロビンA2、ヘモグロビンS及びヘモグロビンCの少なくとも一種以上を同時に測定できること、並びにこの良好な再現性を長期間に亘って維持できることを見出し、本発明を完成させた。
本発明方法の分離対象とする「ヘモグロビンA0分画」とは、糖尿病診断のために一般に行われるカチオン交換クロマトグラフィーによるヘモグロビンA1cの測定において、ヘモグロビンA1cの後に溶出させるヘモグロビンA0分画を指す。即ち、健常人血液の場合、ヘモグロビンA1a、ヘモグロビンA1b、ヘモグロビンF、不安定型ヘモグロビンA1c及び安定型ヘモグロビンA1cを含むファーストフラクション以外の成分である。
本発明の方法により分離できるヘモグロビンA0分画中のヘモグロビンは、具体的には、ヘモグロビンA2、ヘモグロビンS、ヘモグロビンCの内の少なくとも一種のヘモグロビンを指す。
本発明に用いる溶離液Aは、pHが4.0〜6.0である。溶離液AのpHが4.0未満の場合、安定型ヘモグロビンA1cの溶出が遅くなり、測定時間が延長する。また、ヘモグロビン類が変性して分離性能が悪くなり、測定精度が低下する。溶離液AのpHが6.0を超える場合、カチオン交換反応が充分行われなくなり、分離性能が低下する。溶離液AのpHの好ましい下限は4.2、好ましい上限は5.8である。
溶離液Aはカオトロピックイオン(以下、成分(1)ともいう)を含有する。
カオトロピックイオンとしては、例えば、トリブロモ酢酸イオン、トリクロロ酢酸イオン、チオシアン酸イオン、ヨウ化物イオン、過塩素酸イオン、ジクロロ酢酸イオン、硝酸イオン、臭化物イオン等の陰イオン性カオトロピックイオン類や、カルシウムイオン、リチウムイオン、カリウムイオン、グアニジウムイオン等の陽イオン性カオトロピックイオン類等が挙げられる。なかでも、トリブロモ酢酸イオン、トリクロロ酢酸イオン、チオシアン酸イオン、ヨウ化物イオン、過塩素酸イオン、ジクロロ酢酸イオン、硝酸イオン、グアニジウムイオンが好ましく、過塩素酸イオン、硝酸イオン、グアニジウムイオンがより好ましい。溶離液Aは、二種類以上の成分(1)を含有してもよい。
溶離液A中の成分(1)の濃度の好ましい下限は0.1mmol/L、好ましい上限は400mmol/Lである。成分(1)の濃度が0.1mmol/L未満の場合及び400mmol/Lを超える場合は、安定型ヘモグロビンA1cの分離性能が低下することがある。成分(1)の濃度のより好ましい下限は1mmol/L、より好ましい上限は300mmol/Lである。
溶離液Aは、酸解離定数(pKa値)を3.5以上6.5未満の範囲に有し、モノカルボン酸、ジカルボン酸、トリカルボン酸、及び、アミノ酸からなる群より選択される少なくとも一種である酸又はその塩(以下、成分(2)ともいう)を含有する。
なお、本明細書において、「pKa値を3.5以上6.5未満の範囲に有し、モノカルボン酸、ジカルボン酸、トリカルボン酸、及び、アミノ酸からなる群より選択される少なくとも一種である酸又はその塩」とは、「pKa値を3.5以上6.5未満の範囲に有し、モノカルボン酸、ジカルボン酸、トリカルボン酸、及び、アミノ酸からなる群より選択される少なくとも一種である酸」又は「pKa値を3.5以上6.5未満の範囲に有し、モノカルボン酸、ジカルボン酸、トリカルボン酸、及び、アミノ酸からなる群より選択される少なくとも一種である酸」の塩を意味する。
溶離液Aが成分(2)を含まない場合、安定型ヘモグロビンA1cの分離性能が悪くなる。また、溶離液AのpHが変動しやすくなり、安定型ヘモグロビンA1c値の測定再現性が低下する。成分(2)のpKa値の範囲は、3.8以上6.5未満であることが好ましい。
なお、二つ以上のpKa値を有する酸の場合、そのうちの少なくとも1つのpKa値が3.5以上6.5未満であれば、この酸又はその塩は成分(2)のpKa値の条件を満たすものとする。
成分(2)は、モノカルボン酸、ジカルボン酸、トリカルボン酸、アミノ酸、又は、これらの塩が好ましい。これらの酸又は塩から生ずるカルボキシル基により安定型ヘモグロビンA1cの分離性能が向上する。
成分(2)のモノカルボン酸としては、例えば、乳酸、グリコール酸、ギ酸、酢酸等が挙げられる。
成分(2)のジカルボン酸としては、例えば、シュウ酸、オキサロ酢酸、マレイン酸、マロン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、フマル酸、コハク酸、酒石酸、リンゴ酸、グルタル酸、アジピン酸等が挙げられる。
成分(2)のトリカルボン酸としては、例えば、クエン酸、イソクエン酸等が挙げられる。
成分(2)のアミノ酸としては、例えば、アスパラギン酸、β−アラニン、ヒスチジン、グルタミン酸等が挙げられる。
なかでも、ジカルボン酸又はその塩、トリカルボン酸又はその塩が好ましく、コハク酸又はその塩、クエン酸又はその塩がより好ましい。
溶離液Aは、二種類以上の成分(2)を含有してもよい。
溶離液A中の成分(2)の濃度の好ましい下限は0.1mmol/L、好ましい上限は400mmol/Lである。成分(2)の濃度が0.1mmol/L未満の場合、溶離液AのpHが変動しやすくなり、安定型ヘモグロビンA1c値の測定再現性が低下することがある。成分(2)の濃度が400mmol/Lを超える場合、クロマトグラムのベースラインが不安定になることがある。成分(2)の濃度のより好ましい下限は1mmol/L、より好ましい上限は300mmol/Lである。
溶離液Aは、pKa値を6.5以上9.5以下の範囲に有し、無機オキソ酸及びアミノ酸の少なくともいずれかである酸又はその塩(以下、成分(3)ともいう)を含有する。
なお、本明細書において、「pKa値を6.5以上9.5以下の範囲に有し、無機オキソ酸及びアミノ酸の少なくともいずれかである酸又はその塩」とは、「pKa値を6.5以上9.5以下の範囲に有し、無機オキソ酸及びアミノ酸の少なくともいずれかである酸」又は「pKa値を6.5以上9.5以下の範囲に有し、無機オキソ酸及びアミノ酸の少なくともいずれかである酸」の塩を意味する。
溶離液Aが成分(3)を含まない場合、安定型ヘモグロビンA1cの分離性能が悪くなる。成分(3)のpKa値は、6.5以上9.2以下であることがより好ましい。
なお、二つ以上のpKa値を有する酸の場合、そのうちの少なくとも1つのpKa値が6.5以上9.5以下であれば、この酸又はその塩は成分(3)のpKa値の条件を満たすものとする。
成分(3)は、無機オキソ酸、アミノ酸又はこれらの塩である。これらの酸又は塩から生じるオキソ酸イオン又はカルボキシル基により安定型ヘモグロビンA1cの分離性能が向上する。
成分(3)の無機オキソ酸としては、例えば、リン酸、ピロリン酸、ホウ酸等が挙げられる。
成分(3)のアミノ酸としては、例えば、アスパラギン、ヒスチジン、セリン、トリプトファン、チロシン、アルギニン、リシン、メチオニン、フェニルアラニン、システイン、グルタミン等が挙げられる。
なかでも、無機オキソ酸又はその塩が好ましく、リン酸又はその塩がより好ましい。溶離液Aは、二種類以上の成分(3)を含有してもよい。
溶離液A中の成分(3)の濃度の好ましい下限は0.1mmol/L、好ましい上限は400mmol/Lである。成分(3)の濃度が0.1mmol/L未満の場合、溶離液AのpHが変動しやすくなり、安定型ヘモグロビンA1c値の測定再現性が低下することがある。成分(3)の濃度が400mmol/Lを超える場合、クロマトグラムのベースラインが不安定になることがある。成分(3)の濃度のより好ましい下限は1mmol/L、より好ましい上限は300mmol/Lである。
表1に主要な酸のpKa値を示した(CRC Handbook of Chemistry and Physics, 87th Edition, 2007)。本明細書では、pKa値として、表1に示した値を採用する。なお、表1に示していない酸のpKa値については、電位差滴定法、吸光度法、電気泳動法等の公知の方法によって測定される値を用いる。表1の「○」は成分(2)の条件又は成分(3)の条件を満たすもの、「×」は成分(2)の条件又は成分(3)の条件を満たさないものを示す。
また、溶離液Aが成分(2)の条件及び成分(3)の条件の両方を満たす一種類以上の酸又はその塩を含有する場合は、当該溶離液Aは成分(2)及び成分(3)の両方を含有することとする。
Figure 2014095638
溶離液Aの濃度の好ましい下限は21mmol/L、好ましい上限は500mmol/Lである。溶離液Aの濃度が21mmol/L未満である場合又は500mmol/Lを超える場合は、安定型ヘモグロビンA1cの分離性能が低下することがある。溶離液Aの濃度のより好ましい下限は25mmol/L、より好ましい上限は400mmol/Lである。
なお、本明細書における「溶離液の濃度」とは、各溶離液が含有する成分(成分(1)、成分(2)、成分(3)を含む)の合計の濃度を指す。
溶離液Aは、上述した溶離液Aの条件の範囲内で、組成や物性の異なる複数の溶離液Aを用いてもよい。
溶離液Aは、ヘモグロビンA0よりも早い保持時間を有するヘモグロビン類を溶出させるために用いることが好ましい。溶離液Aが溶出させるヘモグロビン類には安定型ヘモグロビンA1cが含まれることが好ましい。
本発明の測定方法では、溶離液Aの送液後に溶離液Bを送液する。
溶離液Bは、pHが溶離液AのpHよりも0.5〜3.0高い溶離液である。溶離液BのpHが溶離液AのpHよりも0.5〜3.0高くない場合は、ヘモグロビンA0分画の分離精度が悪くなり、ヘモグロビンA2、ヘモグロビンS、ヘモグロビンCの測定精度が低下する。溶離液BのpHは、溶離液AのpHよりも0.8〜2.8高いことが好ましい。
また、溶離液BのpHは4.5〜9.0が好ましく、5.0〜8.6がより好ましい。
溶離液Bの濃度は、溶離液Aの濃度よりも20〜200mmol/L小さい。溶離液Bの濃度が溶離液Aの濃度より20mmol/L以上小さくない場合又は200mmol/Lを越えて小さい場合、ヘモグロビンA0とヘモグロビンA2、又は、ヘモグロビンA0とヘモグロビンSの分離精度が低下する。溶離液Bの濃度は、溶離液Aの濃度よりも25〜180mmol/L小さいことが好ましい。
また、溶離液Bの濃度は、1〜300mmol/Lが好ましく、5〜200mmol/Lがより好ましい。
なお、複数の溶離液Aを用いた場合は、溶離液Bの直前に送液する溶離液Aに対して、溶離液BのpH及び濃度が上記規定範囲内である必要がある。
溶離液Bは、pH及び濃度が異なること以外は、溶離液Aと同様の成分を含む溶離液でもよい。また、溶離液Aが含む成分(1)、成分(2)、及び、成分(3)のいずれか一種以上を含んでいてもよい。
溶離液Bは、上述した条件を満たす範囲内で、組成や物性の異なる複数の溶離液Bを用いてもよい。
溶離液Bは、ヘモグロビンA0分画、即ち、ヘモグロビンA0及びヘモグロビンA0よりも遅い保持時間を有するヘモグロビン類を溶出させるために用いることが好ましい。溶離液Bが溶出させるヘモグロビン類にはヘモグロビンA0、ヘモグロビンA2、ヘモグロビンS及びヘモグロビンCが含まれることが好ましい。
本発明の測定方法において、溶離液の切り替え方法はステップワイズグラジエント法でもよいし、リニアグラジエント法でもよい。
ステップワイズグラジエント法では、安定型ヘモグロビンA1cを含む、ヘモグロビンA0よりも早い保持時間を有する成分を溶離液Aで溶出した後、溶離液Bに切り替えて、ヘモグロビンA0分画、即ち、ヘモグロビンA0並びにヘモグロビンA2、ヘモグロビンS及びヘモグロビンCを含むヘモグロビンA0よりも遅い保持時間を有する成分を溶出することが好ましい。
リニアグラジエント法では、溶離液Aを主成分とする溶離液により安定型ヘモグロビンA1cを含む、ヘモグロビンA0よりも早い保持時間を有する成分を溶離液Aで溶出した後、溶離液Bを主成分とする溶離液によりヘモグロビンA0分画、即ち、ヘモグロビンA0並びにヘモグロビンA2、ヘモグロビンS及びヘモグロビンCを含むヘモグロビンA0よりも遅い保持時間を有する成分を溶出することが好ましい。少なくともヘモグロビンA0が溶出する段階において、カラム内が、測定開始初期の溶離液(ステップワイズグラジエント法の溶離液Aに相当)よりも、pHが0.5〜3.0高くかつ濃度が20〜200mmol/L小さい溶離液(ステップワイズグラジエント法の溶離液Bに相当)になっていることが好ましい。
また、連続測定を行う際には、溶離液Bを送液してヘモグロビン類を溶出した後、再び溶離液Aを送液してカラム内を測定開始時の状態に戻すことが好ましい。
本発明の測定方法では、溶離液A及び溶離液Bに加えて、溶離液Bの送液後に、pHが7.0〜9.0の溶離液Cを送液することが好ましい。溶離液Cを用いることにより、ヘモグロビンS及びヘモグロビンCをより短時間で測定できる。
溶離液CのpHが7.0未満の場合、ヘモグロビンS及びヘモグロビンCの溶出が遅くなり、測定時間が延長する。溶離液CのpHが9.0を超える場合、ヘモグロビンが変性し、ヘモグロビンS及びヘモグロビンCの分離性能が悪くなることがある。溶離液CのpHの好ましい下限は7.2、好ましい上限は8.8である。
溶離液Cは、ヘモグロビンA0よりも遅い保持時間を有するヘモグロビン類を溶出させるために用いることが好ましい。溶離液Cが溶出させるヘモグロビン類にはヘモグロビンS及びヘモグロビンCが含まれることが好ましい。溶離液の切り替え方法は、上述した溶離液A及び溶離液Bの場合と同様、ステップワイズグラジエント法でもよいし、リニアグラジエント法でもよい。また、連続測定を行う際には、溶離液Cを送液してヘモグロビン類を溶出した後、再び溶離液Aを送液してカラム内を測定開始時の状態に戻すことが好ましい。
溶離液Cは、pHが上述した範囲であること以外は、溶離液A又は溶離液Bと同様の成分を含む溶離液でもよい。また、溶離液Aが含む成分(1)、成分(2)、及び、成分(3)のいずれか一種以上を含んでいてもよい。更に、溶離液Cは、上述した条件を満たす範囲内で、組成や物性の異なる複数の溶離液Cを用いてもよい。
本発明の測定方法では、溶離液A、溶離液B、及び、溶離液Cに加えて、溶離液Bの送液後、溶離液Cの送液前に、pHが溶離液BのpHより0.5〜3.0低く、かつ、濃度が溶離液Bの濃度よりも20〜200mmol/L大きい溶離液Dを送液することが好ましい。溶離液Dを用いることにより、ヘモグロビンS及びヘモグロビンCの分離性能が更に向上する。
溶離液DのpHが溶離液BのpHよりも0.5〜3.0低くない場合は、ヘモグロビンS及びヘモグロビンCの分離性能が低下することがある。溶離液DのpHは、溶離液BのpHよりも0.8〜2.8低いことが好ましい。
また、溶離液DのpHは、4.0〜6.0が好ましく、4.2〜5.8がより好ましい。
溶離液Dの濃度が溶離液Bの濃度よりも20〜200mmol/L大きくない場合は、ヘモグロビンS及びヘモグロビンCの分離精度が低下することがある。溶離液Dの濃度は、溶離液Bの濃度よりも25〜180mmol/L大きいことが好ましい。
溶離液Dの濃度は、21〜500mmol/Lが好ましく、25〜400mmol/Lがより好ましい。
なお、複数の溶離液Bを用いた場合は、溶離液Dの直前に送液する溶離液Bに対して、溶離液DのpH及び濃度が上記規定範囲内である必要がある。
溶離液Dは、ヘモグロビンA0よりも遅い保持時間を有するヘモグロビン類を溶出させるために用いることが好ましい。溶離液Dが溶出させるヘモグロビン類にはヘモグロビンS及びヘモグロビンCが含まれることが好ましい。溶離液の切り替え方法は、上述した溶離液A及び溶離液Bの場合と同様、ステップワイズグラジエント法でもよいし、リニアグラジエント法でもよい。
溶離液Dは、pH及び濃度が上述した条件を満たすこと以外は溶離液A、溶離液B又は溶離液Cと同様の成分を含む溶離液でもよい。また、溶離液Aが含む成分(1)、成分(2)、及び、成分(3)のいずれか一種以上を含んでいてもよい。更に、溶離液Dは、上述した条件を満たす範囲内で、組成や物性の異なる複数の溶離液Dを用いてもよい。
本発明の測定方法に用いる溶離液は、成分(1)〜(3)以外の無機酸又はその塩類、有機酸又はその塩類、酸性化合物、塩基性化合物、水溶性有機溶媒等の公知の溶離液組成物を含有してもよい。また、界面活性剤、親水性ポリマー類、親水性低分子化合物、防腐剤、安定化剤等の公知の添加剤成分を含有してもよい。
本発明の測定方法に用いるカラム充填剤は、カチオン交換基を有する。
カチオン交換基としては、例えば、カルボキシル基、スルホン酸基、リン酸基等が挙げられる。なかでも、スルホン酸基が好ましい。
なお、本発明の測定方法でいうカチオン交換基には、該カチオン交換基に付随する構造は問わないため、カチオン交換基を末端に有する全ての官能基を含む。例えば、本発明の測定方法でいう「カルボキシル基」とは、カルボキシルエチル基、カルボキシルプロピル基等、カルボキシル基が結合する官能基類全てを含む。
また、上記架橋重合体粒子は、表面に複数種のカチオン交換基を有していてもよい。
上記カラム充填剤は、架橋重合体粒子の表面に、カチオン交換基含有重合体を有するカラム充填剤であることが好ましい。
架橋重合体粒子を構成する架橋重合体は、アクリル系重合体(アクリル系架橋重合体)であることが好ましい。
なお、本明細書において、「アクリル系架橋重合体」とは、アクリル基又はメタクリル基を有する架橋性単量体(以下、「アクリル系架橋性単量体」ともいう)の重合物を意味する。また、後述する「(メタ)アクリレート」とは、「アクリレート又はメタクリレート」を示し、「(メタ)アクリル酸」とは、「アクリル酸又はメタクリル酸」を示す。
アクリル系架橋性単量体としては、例えば、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート類、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート類、アルキレングリコールジ(メタ)アクリレート類、ヒドロキシアルキルジ(メタ)アクリレート類、分子内に少なくとも2個の(メタ)アクリル基を有するアルキロールアルカン(メタ)アクリレート類等が挙げられる。
ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート類としては、例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート類としては、例えば、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
アルキレングリコールジ(メタ)アクリレート類としては、例えば、ポリテトラメチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリ(プロピレングリコール−テトラメチレングリコール)−ジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールポリプロピレングリコールポリエチレングリコール−ジ(メタ)アクリレート、1,3−ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサグリコールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
ヒドロキシアルキルジ(メタ)アクリレート類としては、例えば、2−ヒドロキシ−1,3−ジ(メタ)アクリロキシプロパン、2−ヒドロキシ−1−(メタ)アクリロキシ−3−(メタ)アクリロキシプロパン、2−ヒドロキシ−3−(メタ)アクリロイルオキシプロピル(メタ)アクリレート、グリセロールジ(メタ)アクリレート、グリセロールアクリレートメタクリレート、ウレタン(メタ)ジアクリレート、イソシアヌル酸ジ(メタ)アクリレート、イソシアヌル酸トリ(メタ)アクリレート、1,10−ジ(メタ)アクリロキシ−4,7−ジオキサデカン−2,9−ジオール、1,10−ジ(メタ)アクリロキシ−5−メチル−4,7−ジオキサデカン−2,9−ジオール、1,11−ジ(メタ)アクリロキシ−4,8−ジオキサウンデガン−2,6,10−トリオール等が挙げられる。
分子内に少なくとも2個の(メタ)アクリル基を有するアルキロールアルカン(メタ)アクリレート類としては、例えば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタンテトラ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
これらのアクリル系架橋性単量体は、単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
アクリル系架橋重合体の原料として、アクリル系架橋性単量体以外に、必要に応じて非架橋性単量体も原料として用いてもよい。
非架橋性単量体は、アクリル系単量体(以下、「アクリル系非架橋性単量体」ともいう)であることが好ましい。
アクリル系非架橋性単量体としては、例えば、(メタ)アクリル酸アルキル類、水酸基を有するアクリル系非架橋性単量体等が挙げられる。
(メタ)アクリル酸アルキル類としては、例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル等が挙げられる。
水酸基を有するアクリル系非架橋性単量体としては、例えば、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート類、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート類、アルキレングリコールモノ(メタ)アクリレート類、その他の水酸基を有する(メタ)アクリレート類等が挙げられる。
ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート類としては、例えば、エチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、メトキシトリ(ポリ)エチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート類としては、例えば、プロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、テトラプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
アルキレングリコールモノ(メタ)アクリレート類としては、例えば、ポリ(エチレングリコール・プロピレングリコール)モノ(メタ)アクリレート、ポリ(エチレングリコール・テトラメチレングリコール)モノ(メタ)アクリレート、ポリ(プロピレングリコール・テトラメチレングリコール)モノ(メタ)アクリレート、オクトキシポリエチレングリコールポリプロピレングリコール−モノ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
その他の水酸基を有する(メタ)アクリレート類としては、例えば、グリセリンモノ(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2,3−ジヒドロキシルエチル(メタ)アクリレート、2,3−ジヒドロキシルプロピル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
これらのアクリル系非架橋性単量体は、単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
アクリル系非架橋性単量体を用いる場合、アクリル系非架橋性単量体の添加量は、アクリル系架橋性単量体量100重量部に対して、100重量部以下であることが好ましい。アクリル系非架橋性単量体の添加量が100重量部を超えると、得られる架橋重合体粒子の架橋度が低下することにより耐圧性が小さくなり、膨潤や収縮が生じて分離精度が低下しやすくなる。
カチオン交換基含有重合体は、カチオン交換基含有単量体を重合して得られる重合体であることが好ましい。
カチオン交換基含有単量体は、アクリル系のカチオン交換基含有単量体であることが好ましい。
カルボキシル基を有するアクリル系のカチオン交換基含有単量体としては、例えば、(メタ)アクリル酸、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルサクシネート、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルフタル酸等の(メタ)アクリル酸誘導体類や、クロトン酸、イタコン酸、シトラコン酸、メサコン酸、マレイン酸、フマル酸、及び、これらの誘導体等が挙げられる。
リン酸基を有するアクリル系のカチオン交換基含有単量体としては、例えば、(メタ)アクリロイルオキシエチル)アシッドホスフェート、(2−(メタ)アクリロイルオキシエチル)アシッドホスフェート、(3−(メタ)アクリロイルオキシプロピル)アシッドホスフェート及びこれらの誘導体等が挙げられる。
スルホン酸基を有するアクリル系のカチオン交換基含有単量体としては、例えば、2−(メタ)アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、2−スルホエチル(メタ)アクリレート、3−スルホプロピル(メタ)アクリル酸等の(メタ)アクリル酸誘導体類等、スチレンスルホン酸、アリルスルホン酸、(3−スルホプロピル)−イタコン酸、及び、これらの誘導体等が挙げられる。
これらのアクリル系のカチオン交換基含有単量体は、単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
また、カチオン交換基含有重合体は、カチオン交換基を有する化合物(以下、「カチオン交換性化合物」ともいう)と反応可能な官能基(以下、「反応性基」ともいう)を有する親水性重合体にカチオン交換性化合物を反応させて得られるものでもよい。
反応性基は、非イオン性の親水性基であることが好ましい。
非イオン性の親水性基としては、水酸基、グリコール基、エポキシ基、グリシジル基、1級アミノ基、2級アミノ基、シアノ基、アルデヒド基等が挙げられる。なかでも、水酸基、エポキシ基、グリシジル基、1級アミノ基、2級アミノ基が好ましく、水酸基、エポキシ基、グリシジル基がより好ましい。
反応性基を有する親水性重合体は、反応性基を有する単量体(以下、「反応性単量体」ともいう)の重合物であることが好ましい。
反応性単量体としては、(メタ)アクリル酸エステル類が好ましい。
(メタ)アクリル酸エステル類としては、例えば、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート類や、ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート類や、アルキレングリコールモノ(メタ)アクリレート類や、エポキシ化又はヒドロキシル化(メタ)アクリレート類や、アミノ化(メタ)アクリレート類や、アルデヒド化又はシアノ化(メタ)アクリレート類等が挙げられる。
ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート類としては、例えば、エチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、メトキシトリ(ポリ)エチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
ポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート類としては、例えば、プロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、テトラプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
アルキレングリコールモノ(メタ)アクリレート類としては、例えば、ポリ(エチレングリコール・プロピレングリコール)モノ(メタ)アクリレート、ポリ(エチレングリコール・テトラメチレングリコール)モノ(メタ)アクリレート、ポリ(プロピレングリコール・テトラメチレングリコール)モノ(メタ)アクリレート、オクトキシポリエチレングリコールポリプロピレングリコール−モノ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
エポキシ化又はヒドロキシル化(メタ)アクリレート類としては、例えば、グリシジル(メタ)アクリレート、グリセリンモノ(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2,3−ジヒドロキシルエチル(メタ)アクリレート、2,3−ジヒドロキシルプロピル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
アミノ化(メタ)アクリレート類としては、例えば、2−アミノエチル(メタ)アクリレート、2、3−ジアミノエチル(メタ)アクリレート、2−アミノプロピル(メタ)アクリレート、2、3−ジアミノプロピル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリルアミド等が挙げられる。
アルデヒド化又はシアノ化(メタ)アクリレート類としては、例えば、(メタ)アクロレイン、シアノ(メタ)アクリレート、メチルシアノアクリレート、エチルシアノアクリレート、ブチルシアノアクリレート、(メタ)アクリロニトリル等が挙げられる。
これらの反応性単量体は、単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
カチオン交換性化合物としては、反応性基が水酸基の場合は、例えば、ブロムエタンスルホン酸ナトリウム等のハロゲン化エタンスルホン酸類や、クロロ酢酸ナトリウム等のハロゲン化酢酸類や、イオン交換基を有するアルデヒド化合物類や、トリカルバニル酸やブタンテトラカルボン酸等の多官能カルボン化合物類や、1,3−プロパンスルトン、1,4−ブタンスルトン等のスルトン化合物類等が挙げられる。また、反応性基がエポキシ基、グリシジル基、アミノ基の場合は、例えば、硫酸ナトリウム、タウリン、グリコール酸、亜硫酸ナトリウム等のイオン交換性化合物類が挙げられる。
本発明のヘモグロビンA0分画の分離方法に用いるカラム充填剤は、架橋重合体粒子の存在下でカチオン交換性単量体を重合させて得られる重合物であることが好ましい。または、架橋重合体粒子の存在下で反応性基を有する親水性単量体を重合させ、カチオン交換性化合物を反応させて得られる重合物であることが好ましい。
本発明のヘモグロビンA0分画の分離方法は、上記の溶離液及び上記のカラム充填剤を用いた上で、測定系に生じる圧力値を9.8×10Pa以上19.6×10Pa以下となるように設定する。
なお、本明細書において「測定系に生じる圧力値(以下、単に「圧力値」ともいう)」とは、クロマトグラフィーの流路系において、カラムを含む、送液ポンプ以降の配管系流路全体により発生する圧力値を意味する。例えば、送液ポンプとカラムとの間に接続した圧力計により測定される値である。
圧力値が9.8×10Pa未満であると、安定型ヘモグロビンA1c並びにヘモグロビンA0分画、即ち、ヘモグロビンA0、ヘモグロビンA2、ヘモグロビンS及びヘモグロビンCの測定値の精度が低下し、測定時間が延長する。また、圧力値が非常に小さいため、圧力値の制御が困難となる。圧力値が19.6×10Paを超えると、測定精度及び測定安定性が低下する。
本発明のヘモグロビンA0分画の分離方法におけるカチオン交換クロマトグラフィーは、溶離液送液用のポンプ、検出器、試料導入装置等を備えた公知の液体クロマトグラフに、上述したカラム充填剤を充填したカラムを接続し、かつ、測定系に生じる圧力値を上述した設定範囲にすることにより行うことができる。
本発明は、糖尿病診断の指標となる安定型ヘモグロビンA1c、サラセミア診断の指標となるヘモグロビンA2、遺伝子疾患の診断の指標となるヘモグロビンS、ヘモグロビンCを短時間で高精度に測定する。
また、本発明は、安定型ヘモグロビンA1cとともに、健常人血に含まれるヘモグロビン類、例えば、ヘモグロビンA0、ヘモグロビンF(胎児性ヘモグロビン)を短時間内に高精度に測定できる。なかでも、安定型ヘモグロビンA1c及びヘモグロビンA2の同時測定、安定型ヘモグロビンA1c、ヘモグロビンS及びヘモグロビンCの同時測定、並びに安定型ヘモグロビンA1c、ヘモグロビンA2、ヘモグロビンS及びヘモグロビンCの同時測定に好適に用いられる。
本発明によれば、カチオン交換クロマトグラフィーにより、短時間で再現性良くヘモグロビンA0分画を分離し、安定型ヘモグロビンA1c及びヘモグロビンA0分画中のヘモグロビン類を同時に、長期間に亘って再現性に良く測定できる。
実施例1の測定を行った際に得られたクロマトグラムである。 比較例1の測定を行った際に得られたクロマトグラムである。 比較例2の測定を行った際に得られたクロマトグラムである。 比較例9の測定を行った際に得られたクロマトグラムである。 実施例12の測定を行った際に得られたクロマトグラムである。 実施例14の測定を行った際に得られたクロマトグラムである。 実施例16の測定を行った際に得られたクロマトグラムである。 HbS値のCV値とΔpHとの関係を示すグラフである。 HbC値のCV値とΔpHとの関係を示すグラフである。 HbS値のCV値とΔ濃度との関係を示すグラフである。 HbC値のCV値とΔ濃度との関係を示すグラフである。 実施例2及び比較例2の測定条件による、測定回数とヘモグロビンA1c値との関係を示すグラフである。 実施例8及び比較例9の測定条件による、測定回数とヘモグロビンS値との関係を示すグラフである。 実施例17の測定条件による、設定圧力値と同時再現性試験時のヘモグロビンA1c値のCV値との関係を示すグラフである。 実施例17の測定条件による、設定圧力値と同時再現性試験時のヘモグロビンS値のCV値との関係を示すグラフである。 実施例17の測定条件による、設定圧力値と同時再現性試験時のヘモグロビンA2値のCV値との関係を示すグラフである。 測定例1〜6における測定回数とヘモグロビンA1c値との関係を示すグラフである。 測定例1〜6における測定回数とヘモグロビンS値との関係を示すグラフである。 測定例1〜6における測定回数とヘモグロビンA2値との関係を示すグラフである。
以下に実施例を掲げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されない。
(製造例1)
製造例1では、カチオン交換基を有する架橋重合体粒子であるカラム充填剤を調製した。
トリエチレングリコールジメタクリレート(架橋性単量体、新中村化学工業社製)170g、テトラメチロールメタントリアクリレート(架橋性単量体、新中村化学工業社製)80g、及び、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸(カチオン交換基含有単量体、東亞合成社製)150gの単量体混合物に、過酸化ベンゾイル(重合開始剤、キシダ化学社製)1.0gを混合して溶解し、5重量%のポリビニルアルコール(分散剤、日本合成化学社製、「ゴーセノールGH−20」)水溶液2000mLに分散させた。
反応系を300rpmで撹拌しながら窒素雰囲気下で80℃に加温して10時間重合反応を行い、カチオン交換基を有する架橋重合体粒子であるカラム充填剤を得た。
得られたカラム充填剤の平均粒径値を、粒度分布測定装置(PSS社製、「アキュサイザーS788/SIS」)により測定したところ、6.7μmであった。
(製造例2)
製造例2では、架橋重合体の表面でカチオン交換基含有単量体を重合し、カチオン交換基を有する架橋重合体粒子であるカラム充填剤を調製した。
(1)架橋重合体粒子の調製
ジエチレングリコールジメタクリレート(架橋性単量体、新中村化学工業社製)20g、トリエチレングリコールジメタクリレート(架橋性単量体、新中村化学工業社製)150g、及び、テトラメチロールメタントリアクリレート(架橋性単量体、新中村化学工業社製)80gの単量体混合物に、過酸化ベンゾイル(重合開始剤、キシダ化学社製)1.0gを混合して溶解し、5重量%のポリビニルアルコール(分散剤、日本合成化学社製、「ゴーセノールGH−20」)水溶液2000mLに分散させた。反応系を350rpmで撹拌しながら窒素雰囲気下で80℃に加温して1.2時間重合反応を行い、架橋重合体粒子を得た。
(2)カチオン交換基含有重合体の調製
上記「(1)架橋重合体粒子の調製」の反応系に2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸220gを溶解したイオン交換水200mLを添加した後、80℃で2時間重合反応を行い、表面にカチオン交換基含有重合体を有する架橋重合体粒子であるカラム充填剤を得た。
得られたカラム充填剤の平均粒径値を、製造例1と同様の方法で測定したところ、6.7μmであった。
(製造例3)
製造例3では、架橋重合体の表面に反応性基を有する親水性重合体を調製して、カチオン交換性化合物を反応させることにより、表面にカチオン交換基含有重合体を有する架橋重合体粒子であるカラム充填剤を調製した。
上記製造例2の「(1)架橋重合体粒子の調製」の反応系に2,3−ジヒドロキシルプロピルメタクリレート(反応性単量体、日油社製)150gを添加した後、80℃で2.5時間重合反応を行い、架橋重合体の表面に反応性基含有親水性重合体を有する重合物を得た。この重合物10gを、1,3−プロパンスルトン10gを溶解した2%水酸化ナトリウム水溶液200mL中に添加して60℃で撹拌し、表面にカチオン交換基含有重合体を有する架橋重合体粒子であるカラム充填剤を得た。
得られたカラム充填剤の平均粒径値を、製造例1と同様の方法で測定したところ、6.6μmであった
(製造例4)
製造例4では、カチオン交換基を有さない架橋重合体粒子であるカラム充填剤を調製した。
ジエチレングリコールジメタクリレート(架橋性単量体、新中村化学工業社製)20g、トリエチレングリコールジメタクリレート(架橋性単量体、新中村化学工業社製)150g、及び、テトラメチロールメタントリアクリレート(架橋性単量体、新中村化学工業社製)80gの単量体混合物に、過酸化ベンゾイル(重合開始剤、キシダ化学社製)1.0gを混合して溶解し、5重量%のポリビニルアルコール(分散剤、日本合成化学社製、「ゴーセノールGH−20」)水溶液2000mLに分散させた。反応系を300rpmで撹拌しながら窒素雰囲気下で80℃に加温して8時間重合反応を行い、カチオン交換基を有さない架橋重合体粒子であるカラム充填剤を得た。
得られたカラム充填剤の平均粒径値を、製造例1と同様の方法で測定したところ、6.8μmであった。
(実施例1)
実施例1では、製造例1で得られたカラム充填剤を充填したカラムを用いて、ヒト血液試料中の安定型ヘモグロビンA1c(HbA1c)、ヘモグロビンA2(HbA2)、ヘモグロビンS(HbS)及びヘモグロビン(HbC)を測定した。
(1)カラム充填剤の充填
製造例1で得られたカラム充填剤0.8gを、50mmol/Lリン酸緩衝液(pH6.0)30mLに分散して撹拌しスラリー化した。5分間超音波処理した後、スラリー全量を、ステンレス製エンプティカラム(4.6φ×35mm)を接続したパッカー(アズワン社製)に注入した。パッカーに送液ポンプ(GLサイエンス社製、「PU−614」)を接続し、圧力20MPaで送液して定圧充填した。
(2)測定試料の調製
HbA1c、HbA2、HbS及びHbCを含むヒト血液をフッ化ナトリウム採血し、0.05%のTritonX−100(Sigma−Aldrich社製)を含むリン酸緩衝液(pH6.7)により100倍に溶血希釈した。
(3)測定条件
測定条件を表2に示す。流速は1.8mL/分に設定し、測定系の圧力値は15.6×10Paに設定した。なお、圧力値は以下の方法により測定した。カラムを液体クロマトグラフに接続し、送液ポンプとカラムとの間にデジタル圧力計(長野計器社製、「GC61」)を接続し、溶離液Aを送液した時の圧力表示値を読み取った。
溶離液Aは、成分(1)として55mmol/Lの過塩素酸ナトリウムを含み、成分(2)として15mmol/Lのコハク酸(pKa値4.2及び5.6)を含み、成分(3)として110mmol/Lのリン酸ナトリウム(リン酸のpKa値2.2、7.2、12.3)を含む(溶離液Aの濃度は180mmol/L)。溶離液AのpHは5.3に調整した。
また、溶離液Bとして130mmol/Lのリン酸ナトリウム水溶液(pH7.0)を用いた。溶離液Aと溶離液BのpHの差(溶離液BのpH−溶離液AのpH:以下、ΔpHともいう)は+1.7、溶離液Aと溶離液Bの濃度の差(溶離液Bの濃度−溶離液Aの濃度:以下、Δ濃度ともいう)は−110mmol/Lだった。
溶離液Aを20秒間送液後、溶離液Bを100秒間送液するステップワイズグラジエント法により溶出した。ヘモグロビン類を溶出後、40秒間再び溶離液Aを送液してカラム内を初期状態に戻した。
Figure 2014095638
(4)測定結果
得られたクロマトグラムを図1に示す。ヘモグロビンF(ピーク1)、HbA1c(ピーク2)、ヘモグロビンA0(HbA0:ピーク3)、HbS(ピーク4)及びHbC(ピーク5)が良好に分離できた。
(実施例2)
実施例2では、製造例2で得られたカラム充填剤を充填したカラムを用いて、ヒト血液試料中のHbA1c、HbS及びHbCを測定した。
製造例2で得られたカラム充填剤を、実施例1と同様にしてステンレス製エンプティカラムに充填し、実施例1と同様の方法でヒト血液試料を測定した。カラム充填剤、溶離液A及び溶離液Bの成分、並びに、設定圧力値を表3に示す。得られたクロマトグラムは図1と同様、HbA1c、HbS及びHbCを良好に分離できた。
Figure 2014095638
(実施例3)
実施例3では、製造例3のカラム充填剤を充填したカラムを用いて、ヒト血液試料中のHbA1c、HbS及びHbCを測定した。
製造例3で得られたカラム充填剤を、実施例1と同様にしてステンレス製エンプティカラムに充填し、実施例1と同様の方法でヒト血液試料を測定した。カラム充填剤、溶離液A及び溶離液Bの成分、並びに、設定圧力値を表3に示す。
得られたクロマトグラムは図1と同様、HbA1c、HbS及びHbCを良好に分離できた。
(比較例1)
比較例1では、製造例4で得られたカラム充填剤を充填したカラムを用いて、ヒト血液試料中のHbA1c、HbS及びHbCを測定した。
製造例4で得られたカラム充填剤を、実施例1と同様にしてステンレス製エンプティカラムに充填し、実施例1と同様の方法でヒト血液試料を測定した。カラム充填剤、溶離液A及び溶離液Bの成分、並びに、設定圧力値を表3に示す。
得られたクロマトグラムを図2に示す。ヘモグロビン類は分離されず一度に溶出された(ピーク6)。カチオン交換基を有しないカラム充填剤(製造例4)を用いた場合は、本発明で規定する溶離液A及び溶離液Bを用い、本発明で規定する設定圧力値の範囲内で測定を行っても、ヘモグロビン類は分離できなかった。
(実施例4〜7)
実施例4〜7及び比較例2〜8では、実施例2のカラム充填剤(製造例2)及び溶離液Bを用い、溶離液Aを変更した場合を示す。
まず、実施例4〜7では、実施例2の溶離液Aに含まれる成分を、本発明の規定範囲内において変更して実施例2と同様の測定を行った。カラム充填剤の種類、溶離液A及び溶離液Bの成分、並びに、設定圧力値を表4に示す。
実施例4及び実施例5は溶離液Aの成分(1)の種類を変更した場合、実施例6は溶離液Aの成分(2)の種類を変更した場合、実施例7は溶離液Aの成分(3)の種類を変更した場合を示す。
得られたクロマトグラムはいずれも図1と同様、HbA1c、HbS及びHbCを良好に分離できた。
Figure 2014095638
(比較例2〜8)
比較例2〜8では、実施例2の溶離液Aに含まれる成分を本発明の規定範囲外の成分に変更して実施例2と同様の測定を行った。カラム充填剤の種類、溶離液A及び溶離液Bの成分、並びに、設定圧力値を表5に示す。
比較例2は、溶離液Aとして、成分(1)を含まない溶離液を用いた例を示す。
比較例3は、溶離液Aとして、成分(2)を含まない溶離液を用いた例を示す。
比較例4は、溶離液Aとして、成分(2)に代えて、pKa値は成分(2)の規定範囲内だが、モノカルボン酸、ジカルボン酸、トリカルボン酸、及び、アミノ酸以外の酸を含む溶離液を用いた例を示す。
比較例5は、溶離液Aとして、成分(2)に代えて、pKa値が成分(2)の規定範囲外の酸を含む溶離液を用いた例を示す。
比較例6は、溶離液Aとして、成分(3)を含まない溶離液を用いた例を示す。
比較例7は、溶離液Aとして、成分(3)に代えて、pKa値は成分(3)の規定範囲内だが、無機オキソ酸及びアミノ酸以外の酸を含む溶離液を用いた例を示す。なお、表5中、「HEPES」は、「2−[4−(2−ヒドロキシエチル)−1−ピペラジニル]エタンスルホン酸」を示す。
比較例8は、溶離液Aとして、成分(3)に代えて、pKa値が成分(3)の規定範囲外の酸を含む溶離液を用いた例を示す。
Figure 2014095638
比較例2により得られたクロマトグラムを図3に示す。HbA1cの分離性能は、実施例1(図1)に比べて悪かった。比較例3〜8により得られたクロマトグラムも図3と同様であった。
以上の実施例4〜7及び比較例2〜8の結果から、本発明の規定範囲内の溶離液Aを用いることにより、HbA1cを良好に分離できることがわかった。また、本発明の規定範囲外の溶離液Aを用いた場合、溶離液B及び設定圧力値が本発明の規定範囲内であっても、HbA1cの分離が悪いことがわかった。
(実施例8〜11)
実施例8〜11並びに比較例9〜15では、実施例2のカラム充填剤(製造例2)及び溶離液Aを用い、溶離液Bを変更した場合を示す。
まず、実施例8〜11では、実施例2における溶離液BのpH及び濃度の条件を、本発明の規定範囲内において変更し、実施例2と同様の測定を行った。カラム充填剤の種類、溶離液A及び溶離液Bの成分、並びに、設定圧力値を表6に示す。
得られたクロマトグラムはいずれも図1と同様、HbA1c、HbS及びHbCを良好に分離できた。
Figure 2014095638
(比較例9及び比較例10)
比較例9及び比較例10では、実施例2における溶離液BのpH及び濃度の条件を、本発明の規定範囲外において、HbS及びHbCの保持時間が実施例1と同様になるように条件を変更し、実施例2と同様の測定を行った。カラム充填剤の種類、溶離液A及び溶離液Bの成分、並びに、設定圧力値を表7に示す。
比較例9は、溶離液Bとして、pHが溶離液Aと同等で、濃度が溶離液Aよりも大きい溶離液を用いた例を示す(濃度勾配のみによる溶出法)。
比較例10は、溶離液Bとして、pHが溶離液Aよりも高く、濃度が溶離液Aと同等の溶離液を用いた例を示す(pH勾配のみによる溶出法)。
比較例9により得られたクロマトグラムを図4に示す。HbA1cは実施例1と同様に分離できたが、HbA0、HbS及びHbCの分離性能は悪くなった。比較例10のクロマトグラムも図4と同様であった。
Figure 2014095638
(比較例11〜15)
比較例11〜15では、実施例2における溶離液BのpH及び濃度の条件を、本発明の規定範囲外において変更し、実施例2と同様の測定を行った。カラム充填剤の種類、溶離液A及び溶離液Bの成分、並びに、設定圧力値を表7に示す。
比較例11は、溶離液Bとして、pHが溶離液Aより0.4高く(規定範囲外)、濃度が溶離液Aよりも小さい溶離液を用いた例を示す。
比較例12は、溶離液Bとして、pHが溶離液Aより3.2高く(規定範囲外)、濃度が溶離液Aよりも小さい溶離液を用いた例を示す。
比較例13は、溶離液Bとして、pHが溶離液Aよりも高く、濃度が溶離液Aより10mM小さい(規定範囲外)溶離液を用いた例を示す。
比較例14は、溶離液Bとして、pHが溶離液Aよりも高く、濃度が溶離液Aより220mM小さい(規定範囲外)溶離液を用いた例を示す。
比較例15は、溶離液Bとして、pHが溶離液Aよりも3.2高く(規定範囲外)、濃度が溶離液Aより220mM小さい(規定範囲外)溶離液を用いた例を示す。
得られたクロマトグラムはいずれも図4と同様、HbA0、HbS及びHbCの分離性能は悪かった。
(実施例12)
実施例12〜17では、実施例2のカラム充填剤(製造例2)及び溶離液Aを用い、溶離液Bを変更した場合、溶離液Cを用いた場合、溶離液C及び溶離液Dを用いた場合を示す。
実施例12では、実施例2のカラム充填剤(製造例2)及び溶離液Aを用い、溶離液Bを変更した場合を示す。
実施例2における溶離液BのpH及び濃度の条件を、本発明の規定範囲内において変更し、実施例2と同様の測定を行った。カラム充填剤の種類、溶離液A、溶離液Bの成分、並びに、設定圧力値を表8に示す。
得られたクロマトグラムを図5に示す。短時間でHbA1c、HbA2(ピーク7)、HbS及びHbCを良好に分離できた。
Figure 2014095638
(実施例13)
実施例13では、実施例2のカラム充填剤(製造例2)及び溶離液Aを用い、溶離液Bを二種類(溶離液B1及び溶離液B2)用いた場合を示す。
実施例2における溶離液Bを二種類の溶離液B(溶離液B1及び溶離液B2)を用いることに変更し、かつ、溶離液B1及び溶離液B2のpH及び濃度の条件を、ともに本発明の規定範囲内の条件にして実施例2と同様の測定を行った。カラム充填剤の種類、溶離液A、溶離液B1及び溶離液B2の成分、並びに、設定圧力値を表8に示す。
得られたクロマトグラムは図5と同様であり、短時間でHbA1c、HbA2、HbS及びHbCを良好に分離できた。
(実施例14及び実施例15)
実施例14及び実施例15では、実施例13のカラム充填剤(製造例2)、溶離液A、溶離液B1及び溶離液B2を用いた上で、更に溶離液Cを用いた場合を示す。
実施例13における溶離液A及び二種類の溶離液B(溶離液B1及び溶離液B2)を用い、更に本発明の規定範囲内の溶離液Cを溶離液B2の後に送液して、実施例2と同様の測定を行った。
カラム充填剤の種類、溶離液A、溶離液B1、溶離液B2及び溶離液Cの成分、並びに、設定圧力値を表8に示す。
溶離液Aを20秒送液後、溶離液B1を30秒、溶離液B2を35秒、溶離液Cを5秒、溶離液Aを20秒送液するステップワイズグラジエント法により溶出した。
実施例14により得られたクロマトグラムを図6に示す。HbA1c、HbA2、HbS及びHbCを、実施例12及び実施例13よりも短時間で良好に分離できた。実施例15により得られたクロマトグラムも図6と同様であった。
(実施例16)
実施例16では、実施例2のカラム充填剤(製造例2)、溶離液A、溶離液Bを用いた上で、更に溶離液C及び溶離液Dを用いた場合を示す。
実施例2における溶離液A及び溶離液Bを用い、更に本発明の規定範囲内の溶離液Dを溶離液Bの後に送液し、更に本発明の規定範囲内の溶離液Cを溶離液Dの後に送液して、実施例2と同様の測定を行った。
カラム充填剤の種類、溶離液A、溶離液B、溶離液C及び溶離液Dの成分、並びに、設定圧力値を表8に示す。
実施例16により得られたクロマトグラムを図7に示す。HbA1c、HbA2、HbS及びHbCを良好に分離できた。実施例12及び実施例13と同程度の分離性能が、実施例15と同程度の測定時間で得られた。
(実施例17)
実施例17では、実施例13のカラム充填剤(製造例2)、溶離液A、溶離液B1、溶離液B2を用いた上で、更に溶離液C及び溶離液Dを用いた場合を示す。
実施例13における溶離液A、溶離液B1及び溶離液B2を用い、更に本発明の規定範囲内の溶離液Dを溶離液B2の後に送液し、更に本発明の規定範囲内の溶離液Cを溶離液Dの後に送液して、実施例13と同様の測定を行った。
カラム充填剤の種類、溶離液A、溶離液B1、溶離液B2、溶離液C及び溶離液Dの成分、並びに、設定圧力値を表8に示す。
得られたクロマトグラムは図7と同様であり、短時間でHbA1c、HbA2、HbS及びHbCを良好に分離できた。
(評価)
実施例及び比較例の測定条件を用いて以下の評価を行った。
(評価1)HbA1cの同時再現性試験
実施例1〜17(表3、表4、表6、表8)並びに比較例2〜8(表5)の測定条件を用いて、HbA1cの同時再現性試験を実施した。
実施例1「(2)測定試料の調製」で得られたヒト血液試料を、20回連続測定して得られたHbA1c値のCV値(以下、「同時再現性試験により得られたCV値」を単に「CV値」ともいう)を表9に示す。
本発明の規定範囲内の溶離液Aを用いた実施例1〜7では、HbA1c値のCV値はいずれも1.0%以下と良好であった。
カラム充填剤の異なる実施例1〜3では、特に製造例2及び製造例3のカラム充填剤を用いた場合にHbA1c値のCV値が良好であり、その中でも製造例2で得られたカラム充填剤を用いた実施例2において良好であった。
また、溶離液Aの成分を本発明の規定範囲内で変更した実施例4〜7、溶離液Bを本発明の規定範囲内で変更した実施例8〜13、溶離液C並びに溶離液C及び溶離液Dを用いた実施例14〜17においても、HbA1c値のCV値はいずれも良好であった(表9)。
本発明の規定範囲外の溶離液Aを用いた比較例2〜8では、HbA1c値のCV値はいずれも3.0%以上と悪く、糖尿病患者のHbA1c値の精度管理を行えるレベルではなかった。
Figure 2014095638
(評価2)修飾ヘモグロビン類の測定
実施例1〜17及び比較例2〜8の測定条件を用いて、人為的に調製した修飾ヘモグロビン類を多く含む試料の測定を行った。修飾ヘモグロビン類を含む試料として、不安定型ヘモグロビンA1c含有試料(試料L)、アセチル化ヘモグロビン含有試料(試料A)、カルバミル化ヘモグロビン含有試料(試料C)の3種類を、以下の方法により調製した。
試料Lは、健常人血に、グルコースを2500mg/dLとなるように添加し、37℃で3時間加温することにより調製した。試料Aは、健常人血に、アセトアルデヒドを60mg/dLとなるように添加し、37℃で2時間加温することにより調製した。試料Cは、健常人血に、シアン酸ナトリウムを60mg/dLとなるように添加し、37℃で2時間加温することにより調製した。
分離性能は、修飾ヘモグロビン類を含む試料のHbA1c値から、修飾ヘモグロビン類を含む試料の調製に用いた健常人血試料(非修飾品)のHbA1c値を差し引いた値(Δ値)を算出して比較することにより評価した。結果を表9に示す。
本発明の規定範囲内の溶離液Aを用いた実施例1〜7では、Δ値はいずれも0.15以下と良好であった。また、実施例8〜17においてもΔ値はいずれも良好であった。特に溶離液Dを用いた実施例16及び17において良好であった。本発明の規定範囲外の溶離液Aを用いた比較例2〜8では、Δ値はいずれも0.4以上と悪く、HbA1c値が修飾ヘモグロビン類の影響を受けた(表9)。
(評価3)HbS及びHbCの同時再現性試験
実施例1〜17及び比較例9〜15(表7)の測定条件を用いて、HbA1c、HbS及びHbCを同時測定した場合の同時再現性試験を実施した。
実施例1「(2)測定試料の調製」で得られたヒト血液試料を20回連続測定して得られたHbS値及びHbC値のCV値を表9に示す。
本発明の規定範囲内の溶離液Bを用いた実施例1〜17では、HbS値及びHbC値の各CV値はいずれも1.4%以下と良好であった。本発明の規定範囲外の溶離液Bを用いた比較例9〜15では、HbS値及びHbC値の各CV値はいずれも2.5%以上と悪かった(表9)。
HbS値のCV値とΔpHとの関係を図8、HbC値のCV値とΔpHとの関係を図9に示す。ΔpHが本発明の規定範囲内(0.5〜3.0)の溶離液Bを用いた実施例1〜17では、HbS値及びHbC値のCV値はいずれも1.5%以下と良好であった。一方ΔpHが本発明の規定範囲外の比較例ではCV値が悪かった。なお図8及び図9における比較例13及び比較例14は本発明の規定範囲内のΔpHだがCV値が悪い。これは比較例13及び比較例14のΔ濃度が本発明の規定範囲外のためである。
同様にHbS値のCV値とΔ濃度との関係を図10、HbC値のCV値とΔ濃度との関係を図11に示す。Δ濃度が本発明の規定範囲内(−200〜−20mmol/L)の溶離液Bを用いた実施例1〜17では、HbS値及びHbC値のCV値はいずれも1.5%以下と良好であった。一方、Δ濃度が本発明の規定範囲外の比較例ではCV値が悪かった。なお、図10及び図11における比較例11及び比較例12は本発明の規定範囲内のΔ濃度だがCV値が悪い。これは比較例11及び比較例12のΔpHが本発明の規定範囲外のためである。
以上から、溶離液BのΔpHとΔ濃度が共に本発明の規定範囲内の場合のみ、HbA1c値、HbS値及びHbC値のCV値が良好となることがわかった。
(評価4)HbA2の同時再現性試験
実施例12〜17の測定条件を用いて、HbA1c、HbA2、HbS及びHbCを同時測定した場合の同時再現性試験を実施した。
実施例1「(2)測定試料の調製」で得られたヒト血液試料を20回連続測定して得られたHbA2値のCV値を表9に示す。
本発明の規定範囲内の溶離液Bを用いた実施例12〜17では、HbA2値のCV値はいずれも1.0%以下と良好であった。特に溶離液Bを二種類用いた実施例13〜15、17において良好であった(表9)。
なお、本発明の規定範囲外の溶離液Bを用いた比較例では、いずれもHbA2ピークを分離することができなかった。
(評価5)測定安定性の評価
実施例及び比較例の測定条件を用いて、実施例1「(2)測定試料の調製」で得られたヒト血液試料を4000回繰り返し測定し、HbA1c値、HbA2値、HbS値、HbC値の推移を確認した。
まず、実施例2及び比較例2の測定条件を用いてHbA1c値の推移を確認した。測定回数とHbA1c値の関係を図12に示す。
本発明の規定範囲内の溶離液Aを用いた実施例2では、4000回の測定においてもHbA1c値は測定初期からほとんど変動せず安定であった。一方、本発明の規定範囲外の溶離液Aを用いた比較例2では約1600回の測定でHbA1c値が低下した。
同様の評価を他の実施例及び比較例の測定条件を用いて行った。HbA1c値が初期の測定値から0.3%以上低下した時の測定回数を表9に示す。なお、表9において、4000回の測定時にHbA1c値が低下しなかった場合は「4000」と表記した。
本発明の規定範囲内の溶離液Aを用いた場合(実施例1〜実施例17)は、測定回数3500回以上においてもHbA1c値が安定していた。特に製造例2のカラム充填剤を用いた実施例2、4〜17において良好であった(表9)。
本発明の規定範囲外の溶離液Aを用いた場合(比較例2〜8)は、測定回数1600回以下で測定値が低下した。
次に、実施例8及び比較例9の測定条件を用いて、HbS値の推移を確認した。測定回数とHbS値の関係を図13に示す。
本発明の規定範囲内の溶離液Bを用いた実施例8では、HbS値は約3500回の測定まで安定であった。一方、本発明の規定範囲外の溶離液Bを用いた比較例9では約1500回の測定でHbS値が低下した。
同様の評価を他の実施例及び比較例の測定条件を用い、HbS値及びHbC値の推移を確認した。HbS値が初期の測定値から0.3%以上低下した測定回数、及び、HbC値が初期の測定値から0.3%以上低下した測定回数を表9に示す。なお、表9において、4000回の測定時にHbS値、HbC値が低下しなかった場合は、それぞれ「4000」と表記した。
本発明の規定範囲内の溶離液Bを用いた場合(実施例1〜実施例17)は、測定回数3000回以上においてもHbS値及びHbC値が安定していた。特に本発明の規定範囲内の溶離液Bを二種類用いた場合(実施例13〜15及び実施例17)及び溶離液Dを用いた場合(実施例16、17)において良好な安定性を示した(表9)。
本発明の規定範囲外の溶離液Bを用いた場合(比較例9〜比較例15)は、測定回数1500回以下で測定値が低下した。
実施例12〜17の測定条件を用いてHbA2値の推移を確認した。HbA2値が初期の測定値から0.3%以上低下した測定回数を表9に示す。なお、表9において、4000回の測定時にHbA2値が低下しなかった場合は「4000」と表記した。
本発明の規定範囲内の溶離液Bを用いた実施例12〜17は、測定回数3800回以上においても、HbA2値が安定していた(表9)。
以上の評価1〜5により、本発明の規定範囲内のカラム充填剤、溶離液A、溶離液B、及び、設定圧力値を用いた場合は、HbA1c値、HbA2値、HbS値及びHbC値の測定再現性及び測定安定性が良好であることがわかった。特に本発明の規定のカラム充填剤を用いること、本発明の規定範囲内の二種類の溶離液Bを用いること、又は本発明の規定範囲内の溶離液Dを用いることにより、HbA1c値、HbA2値、HbS値及びHbC値の測定再現性及び測定安定性が良好となることがわかった。
(製造例5)
製造例5及び製造例6では、本発明に規定する設定圧力値の検討を行うため、製造例2と同様の組成及び同様の方法によるが、平均粒子径が異なるカラム充填剤を調製した。
まず製造例5では、製造例2より平均粒子径が小さいカラム充填剤を調製した。
(1)架橋重合体粒子の調製
ジエチレングリコールジメタクリレート(架橋性単量体、新中村化学工業社製)20g、トリエチレングリコールジメタクリレート(架橋性単量体、新中村化学工業社製)150g、及び、テトラメチロールメタントリアクリレート(架橋性単量体、新中村化学工業社製)80gの単量体混合物に、過酸化ベンゾイル(重合開始剤、キシダ化学社製)1.0gを混合して溶解し、5重量%のポリビニルアルコール(分散剤、日本合成化学社製、「ゴーセノールGH−20」)水溶液2000mLに分散させた。反応系を400rpmで撹拌しながら窒素雰囲気下で80℃に加温して1.2時間重合反応を行い、架橋重合体粒子を得た。
(2)カチオン交換基含有重合体の調製
上記「(1)架橋重合体粒子の調製」の反応系に2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸200gを溶解したイオン交換水200mLを添加した後、80℃で2時間重合反応を行い、表面にスルホン酸基含有重合体を有する架橋重合体粒子であるカラム充填剤を得た。
得られたカラム充填剤の平均粒径値を、製造例1と同様の方法で測定したところ、4.2μmであった。
(製造例6)
製造例6では、製造例2よりも平均粒子径が大きいカラム充填剤を調製した。
製造例5「(1)架橋重合体粒子の調製」の反応系の撹拌速度を400rpmから250rpmに変更した以外は製造例5と同様に操作してカラム充填剤を得た。
得られたカラム充填剤の平均粒径値を、製造例1と同様の方法で測定したところ、9.5μmであった。
(評価6)設定圧力値の同時再現性への影響評価
設定圧力値を変更した場合の同時再現性を確認した。
設定圧力値は、平均粒径値が異なるカラム充填剤を用いること、及び、測定時の流速を変更することにより行った。
平均粒径値が異なるカラム充填剤は、製造例2、製造例5及び製造例6で得られた各カラム充填剤を用いた。各カラム充填剤を、実施例1「(1)カラム充填剤の充填」と同様にしてステンレス製エンプティカラムに充填して得られたカラムを用いた。また、測定時の流速は、0.1〜3.3mL/分の間で変更した。
同時再現性試験は、実施例17の溶離液A、溶離液B、溶離液C及び溶離液Dを用い、評価1の方法に準じて行った。
同時再現性試験時の設定圧力値と、HbA1c値のCV値との関係を図14に示す。CV値は、本発明で規定する設定圧力値の範囲(9.8×10〜19.6×10Pa)において良好であった。
同時再現性試験時の設定圧力値と、HbS値のCV値との関係を図15に示す。CV値は、本発明で規定する設定圧力値の範囲において良好であった。
同時再現性試験時の設定圧力値と、HbA2値のCV値との関係を図16に示す。CV値は、本発明で規定する設定圧力値の範囲において良好であった。
図14〜16において、本発明の規定範囲外の設定圧力値の場合は、本発明の規定範囲内のカラム充填剤及び溶離液を用いた場合でも再現性が低下した。
設定圧力値とCV値の関係は、実施例1〜16の溶離液を用いた場合でも同様であった。
(評価7)設定圧力値の測定安定性への影響評価
設定圧力値を変更した場合の測定安定性を確認した。
設定圧力値は評価4と同様の方法で変更した。また、測定安定性試験は、製造例2、5、又は6で得られたカラム充填剤及び実施例14の溶離液を用い、評価5の方法に準じて行った。各測定例の測定条件を表10に示す
測定例1〜6における測定回数とHbA1c値との関係を図17に示す。設定圧力値が本発明の規定範囲内の場合(測定例1〜4)、約4000回の測定まで安定していた。一方設定圧力値が本発明の規定範囲外の場合、測定例5では約500回で、測定例6では約1500回でHbA1c値が低下した。
測定例1〜6における測定回数とHbS値との関係を図18に示す。設定圧力値が本発明の規定範囲内の場合(測定例1〜4)、約4000回の測定まで安定していた。一方設定圧力値が本発明の規定範囲外の場合、測定例5では約500回で、測定例6では約1500回でHbS値が低下した。
測定例1〜6における測定回数とHbA2値との関係を図19に示す。設定圧力値が本発明の規定範囲内の場合(測定例1〜4)、約4000回の測定まで安定していた。一方設定圧力値が本発明の規定範囲外の場合、測定例5では約1000回で、測定例6では約1800回でHbA2値が低下した。
これらの挙動は、他の製造例で得られたカラム充填剤を用いた場合でも同様であった。また、他の実施例の溶離液を用いた場合でも同様であった。
上記評価4及び評価5の結果から、本発明に規定する設定圧力値の範囲外で測定を行った場合は、本発明に規定するカラム充填剤及び溶離液を用いた場合でも、再現性や安定性が悪くなることを確認できた。
上記評価6及び評価7の挙動、即ち、設定圧力値による同時再現性及び測定安定性への影響は、カラム充填剤の平均粒径値を変更した場合でも、測定時の溶離液の流速を変更した場合でも同様であった。従って、これらの挙動は、充填剤の平均粒径値や流速の影響ではなく、設定圧力値の影響である。
Figure 2014095638
以上から、カチオン交換基を有するカラム充填剤を用いること、本発明で規定する溶離液を用いること、及び本発明で規定する設定圧力値を用いること、の全ての条件を満たす場合のみにおいてヘモグロビンA0分画が分離でき、HbA1c、HbA2、HbS及びHbCの高精度測定が行えることを確認した。また、溶離液A及び溶離液Bに加えて、本発明に規定する溶離液C及び溶離液Dを用いることにより、HbA1c、HbS及びHbCの同時測定、並びにHbA1c、HbA2、HbS及びHbCの同時測定が、より短時間で高精度に測定できた。
本発明によれば、カチオン交換クロマトグラフィーにより、短時間で再現性良く、長期間に渡ってヘモグロビンA0分画を分離でき、HbA1c及びHbA2、並びにHbA1c、HbA2、HbS及びHbCを同時に測定できる。
1 ヘモグロビンF
2 ヘモグロビンA1c
3 ヘモグロビンA0
4 ヘモグロビンS
5 ヘモグロビンC
6 全ヘモグロビン
7 ヘモグロビンA2

Claims (10)

  1. カチオン交換クロマトグラフィーによるヘモグロビンA0分画の分離方法であって、
    下記溶離液A及び溶離液Bの少なくとも二種類の溶離液と、
    カチオン交換基を有するカラム充填剤とを用い、
    測定系に生じる圧力値を9.8×10Pa以上19.6×10Pa以下に設定する
    ことを特徴とするヘモグロビンA0分画の分離方法。
    溶離液A:pHが4.0〜6.0であって、下記(1)、(2)、及び、(3)の全ての成分を含む溶離液
    (1)カオトロピックイオン
    (2)酸解離定数を3.5以上6.5未満の範囲に有し、モノカルボン酸、ジカルボン酸、トリカルボン酸、及び、アミノ酸からなる群より選択される少なくとも一種である酸又はその塩
    (3)酸解離定数を6.5以上9.5以下の範囲に有し、無機オキソ酸及びアミノ酸の少なくともいずれかである酸又はその塩
    溶離液B:pHが溶離液AのpHよりも0.5〜3.0高く、かつ、濃度が溶離液Aの濃度よりも20〜200mmol/L小さく、溶離液Aの送液後に送液する溶離液
  2. 溶離液Bの送液後に、pHが7.0〜9.0の溶離液Cを送液することを特徴とする請求項1記載のヘモグロビンA0分画の分離方法。
  3. 溶離液Bの送液後、溶離液Cの送液前に、pHが溶離液BのpHより0.5〜3.0低く、かつ、濃度が溶離液Bの濃度よりも20〜200mmol/L大きい溶離液Dを送液することを特徴とする請求項2記載のヘモグロビンA0分画の分離方法。
  4. 溶離液Aが含む成分(2)が、ジカルボン酸又はその塩、或いは、トリカルボン酸又はその塩であることを特徴とする請求項1、2又は3記載のヘモグロビンA0分画の分離方法。
  5. 溶離液Aが含む成分(3)が、無機オキソ酸又はその塩であることを特徴とする請求項1、2、3又は4記載のヘモグロビンA0分画の分離方法。
  6. カチオン交換基を有するカラム充填剤は、架橋重合体粒子の表面に、カチオン交換基含有重合体を有するカラム充填剤であることを特徴とする請求項1、2、3、4又は5記載のヘモグロビンA0分画の分離方法。
  7. 架橋重合体粒子を構成する架橋重合体、及び、カチオン交換基含有重合体は、アクリル系重合体であることを特徴とする請求項6記載のヘモグロビンA0分画の分離方法。
  8. 請求項1、2、3、4、5、6又は7のヘモグロビンA0分画の分離方法を用いた、安定型ヘモグロビンA1c及びヘモグロビンA2の同時測定法。
  9. 請求項1、2、3、4、5、6又は7のヘモグロビンA0分画の分離方法を用いた、安定型ヘモグロビンA1c、ヘモグロビンS及びヘモグロビンCの同時測定法。
  10. 請求項1、2、3、4、5、6又は7のヘモグロビンA0分画の分離方法を用いた、安定型ヘモグロビンA1c、ヘモグロビンA2、ヘモグロビンS及びヘモグロビンCの同時測定法。
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