JP2002179871A - 含フッ素共重合体の水性分散体 - Google Patents

含フッ素共重合体の水性分散体

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Abstract

(57)【要約】 【課題】 耐候性、耐溶剤性、耐水性、基材への密着性
に優れ、さらに高光沢を有する塗膜を形成しうる常温架
橋可能な含フッ素共重合体の水性分散体を提供する。 【解決手段】 カルボニル基を有する含フッ素共重合体
(A1)粒子の水性分散体、または同一粒子内に含フッ
素共重合体と(メタ)アクリル系重合体を含有し、前記
含フッ素共重合体および/または(メタ)アクリル系重
合体がカルボニル基を有する、含フッ素複合重合体(A
2)粒子の水性分散体と、前記カルボニル基1モルに対
し0.03〜1モルの、1分子中に3つ以上の−CON
HNH基を有する化合物(B)を含有させる。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の技術分野】本発明は常温架橋可能な含フッ素共
重合体の水性分散体に関し、特に耐候性、耐溶剤性、耐
水性、基材への密着性に優れ、さらに高光沢を有する塗
膜を形成しうる常温架橋可能な含フッ素共重合体の水性
分散体に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来、フルオロオレフィンとシクロヘキ
シルビニルエーテルおよびその他各種の単量体を重合し
て得られる共重合体が、室温で有機溶媒に可溶であり、
塗料として用いた場合に透明で高光沢を有し、しかも高
耐候性、撥水撥油性、耐汚染性、非粘着性などフッ素樹
脂の有する優れた特性を備えた塗膜を与えることが知ら
れており(例えば特開昭55−44083号公報)、建
築などの分野で使用が増大しつつある。一方、近年大気
汚染の観点から有機溶剤の使用に対して規制が行われつ
つあるため、有機溶剤を用いない水性塗料や粉体塗料に
対する需要が高まっており、フッ素樹脂についてもその
ための検討がなされており、フッ素樹脂が乳化重合で製
造できることが報告されている(特開昭55−2541
1号公報)。
【0003】架橋タイプの含フッ素共重合体の水性分散
体としては、フルオロオレフィン、カルボニル基含有単
量体、および親水性マクロモノマを重合して得られる含
フッ素共重合体と、ヒドラジド化合物とを含む含フッ素
水性分散体(特開平7−97497号公報)や、含フッ
素共重合体およびアクリル系重合体を含み、アクリル系
重合体中にカルボニル基含有単量体が共重合された複合
重合体粒子の水性分散体と、ヒドラジド化合物とを含有
する含フッ素水性分散体(特開平7−268163号公
報)が提案されている。しかし、塗装される基材の種類
によって充分な塗膜の密着性が得られない、耐溶剤性が
不充分などの問題があった。一方、分子内に1つ以上の
カルボニル基またはケトン基を有する単量体とその他の
単量体を共重合して得られる共重合体と、3官能ヒドラ
ジド化合物からなる水性樹脂組成物が提案されている
(特開平11―343377号公報)が、該共重合体が
炭化水素系単量体から構成されているため、水性塗料と
して使用した場合、塗膜の耐候性が不充分であった。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、前述の従来
技術の有する問題点を解決しようとするものである。す
なわち、本発明は、耐候性、耐溶剤性、耐水性、基材へ
の密着性に優れ、高光沢を有する塗膜を形成しうる常温
架橋可能な含フッ素共重合体の水性分散体を提供するこ
とを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明は前述の問題点を
解決すべくなされたものである。すなわち、本発明は、
カルボニル基を有する含フッ素共重合体(A1)粒子の
水性分散体と、前記カルボニル基1モルに対し0.03
〜1モルの、1分子中に3つ以上の−CONHNH
を有する化合物(B)を含有することを特徴とする含フ
ッ素共重合体の水性分散体である。また、本発明は、上
記含フッ素共重合体の水性分散体において、1分子中に
3つ以上の−CONHNH基を有する化合物(B)
が、下記式(1)
【0006】
【化3】 (式中、R、R、RおよびRはそれぞれに水素
原子または水酸基であり、pは0〜3の整数であり、q
は2〜8の整数であり、p+q≦8かつp<qを満足す
る。)で表わされるトリカルボヒドラジド化合物である
含フッ素共重合体の水性分散体である。
【0007】また、本発明は、上記含フッ素共重合体の
水性分散体において、前記含フッ素共重合体(A1)
が、フルオロオレフィンに基づく重合単位を含有するも
のである含フッ素共重合体の水性分散体である。また、
本発明は、同一粒子内に含フッ素共重合体と(メタ)ア
クリル系重合体を含有し、前記含フッ素共重合体および
/または(メタ)アクリル系重合体がカルボニル基を有
する、含フッ素複合重合体(A2)粒子の水性分散体
と、前記カルボニル基1モルに対し0.03〜1モル
の、1分子中に3つ以上の−CONHNH基を有する
化合物(B)を含有することを特徴とする含フッ素共重
合体の水性分散体である。また、本発明は、上記含フッ
素複合重合体(A2)の水性分散体において、1分子中
に3つ以上の−CONHNH基を有する化合物(B)
が、下記式(1)
【0008】
【化4】 (式中、R、R、RおよびRはそれぞれに水素
原子または水酸基であり、pは0〜3の整数であり、q
は2〜8の整数であり、p+q≦8かつp<qを満足す
る。)で表わされるトリカルボヒドラジド化合物である
含フッ素共重合体の水性分散体である。また、本発明
は、上記含フッ素複合重合体(A2)の水性分散体にお
いて、前記含フッ素共重合体が、フルオロオレフィンに
基づく重合単位を含有するものである含フッ素共重合体
の水性分散体である。さらに、本発明は、上記含フッ素
共重合体(A1)または含フッ素複合重合体(A2)の
水性分散体において、前記1分子中に3つ以上の−CO
NHNH基を有する化合物(B)がブタントリカルボ
ヒドラジドである含フッ素共重合体の水性分散体であ
る。以下、本発明の水性分散体について、詳細に説明す
る。
【0009】
【発明の実施の形態】含フッ素共重合体(A1)は、カ
ルボニル基を有する。含フッ素共重合体(A1)は、
(a)含フッ素単量体に基づく重合単位と、(b)カル
ボニル基含有単量体に基づく重合単位を必須成分として
含有するものが好ましい。(a)成分は、含フッ素単量
体であり、好ましくはフルオロオレフィンである。フッ
化ビニリデン、トリフルオロエチレン、クロロトリフル
オロエチレン、テトラフルオロエチレン、ペンタフルオ
ロプロピレンおよびヘキサフルオロプロピレンなど、1
分子中にフッ素原子が2〜10程度のフルオロオレフイ
ンが好ましく、このうちパーハロオレフインがより好ま
しい。特にクロロトリフルオロエチレン、テトラフルオ
ロエチレンが好ましく用いられる。フルオロオレフィン
に基づく重合単位は、含フッ素共重合体(A1)に20
〜80モル%の割合で含有されることが好ましい。フル
オロオレフインに基づく重合単位が余りに少ないと耐候
性が充分に発揮されず、また多すぎると水分散性が極め
て悪くなるため好ましくない。30〜70モル%である
ことがより好ましい。特に40〜60モル%が好まし
い。(b)成分は、カルボニル基含有単量体であり、好
ましくは下記式(2)
【0010】
【化5】 (式中、mは0〜5の整数であり、nは0〜5の整数で
ある。)で表わされるビニルエーテル型カルボニル基含
有単量体、アクロレイン、ジアセトンアクリルアミド、
ホルミルスチロール、(メタ)アクリルオキシアルキル
プロパナール、アセトニトリルアクリレート、ジアセト
ン(メタ)アクリレート、アセトアセトキシアルキル
(メタ)アクリレートなどが挙げられる。特に、式(2)
で表わされるビニルエーテル型カルボニル基含有単量
体、ジアセトンアクリルアミド、アセトアセトキシアル
キル(メタ)アクリレートが好ましく用いられる。カルボ
ニル基含有単量体に基づく重合単位は、含フッ素共重合
体(A1)に1〜30モル%の割合で含有されることが
好ましい。3〜20モル%が特に好ましい。
【0011】さらに、含フッ素共重合体(A1)は、
(a)成分、(b)成分と共重合可能な炭化水素系単量
体として、水酸基含有単量体が共重合されることが好ま
しい。水酸基含有単量体を含有することにより、塗膜と
した時の基材への密着性が向上する。例えば、ヒドロキ
シブチルビニルエーテル、シクロヘキサンジメタノール
モノビニルエーテルの如きヒドロキシアルキルビニルエ
ーテル類;ヒドロキシエチルアリルエーテル、シクロヘ
キサンジメタノールモノアリルエーテルの如きヒドロキ
シアルキルアリルエーテル類;ヒドロキシエチルアクリ
レート、ヒドロキシエチルメタクリレートの如きアクリ
ル酸またはメタクリル酸のヒドロキシアルキルエステ
ル;ヒドロキシアルキルビニルエステル、ヒドロキシア
ルキルアリルエステルなどが例示される。水酸基含有単
量体に基づく重合単位は、含フッ素共重合体(A1)に
0.1〜25モル%の割合で含有されることが好まし
い。また、含フッ素共重合体の水性分散体の安定性を向
上させるため、カルボン酸基またはポリオキシエチレン
基を含有する単量体を共重合してもよい。カルボン酸基
含有単量体として、(メタ)アクリル酸、クロトン酸、
ウンデシレン酸が例示される。ポリオキシエチレン基を
含有する単量体としては、前記水酸基含有単量体へのエ
チレンオキシド付加物が例示される。エチレンオキシド
付加量は、2〜20モルが好ましい。
【0012】特にヒドロキシブチルビニルエーテル、シ
クロヘキサンジメタノールモノビニルエーテルの如きヒ
ドロキシアルキルビニルエーテル類やヒドロキシアルキ
ルビニルエステル類へのエチレンオキシド付加物が好ま
しく用いられる。カルボン酸基またはポリオキシエチレ
ン基を含有する単量体に基づく重合単位は、含フッ素共
重合体(A1)に0.05〜25モル%の割合で含有さ
れることが好ましい。0.2〜20モル%が特に好まし
い。前記含フッ素共重合体(A1)は、上記単量体の他
にこれらと共重合可能な、炭化水素系単量体が共重合さ
れたものであってもよい。
【0013】その他共重合可能な単量体としては、エチ
レン、プロピレンなどのオレフイン類;エチルビニルエ
ーテル、プロピルビニルエーテル、ブチルビニルエーテ
ル、シクロヘキシルビニルエーテルなどのビニルエーテ
ル類;ブチルビニルエステル、オクチルビニルエステル
などのビニルエステル類;スチレン、ビニルトルエンな
どの芳香族ビニル化合物などのビニル系化合物;エチル
アリルエーテルなどのアリルエーテル類やブチルアリル
エステルなどのアリルエステル類;アクリル酸ブチルな
どのアクリル酸のエステル;メタクリル酸メチル、メタ
クリル酸エチルなどのメタクリル酸のエステル;ビニル
トリエトキシシラン、トリエトキシシリルビニルエーテ
ルなどの加水分解性シリル基含有単量体等が例示され
る。特に、オレフイン類、ビニルエーテル類、ビニルエ
ステル類、アリルエーテル類、アリルエステル類が好ま
しく採用される。ここで、オレフイン類としては炭素数
2〜10程度のものが好ましく、ビニルエーテル類、ビ
ニルエステル類、アリルエーテル類、アリルエステル類
としては、炭素数2〜15程度の直鎖状、分岐状あるい
は脂環状のアルキル基を有するものが好ましく採用され
る。特に、ビニルエーテル類がフルオロオレフィンとの
交互共重合性に優れ、含フッ素共重合体塗膜の耐候性が
良好となるため好ましい。
【0014】含フッ素共重合体(A1)粒子の水性分散
体は、前記(a)成分、(b)成分、および必要に応じ
てその他の単量体を使用して、水性媒体中で乳化重合す
ることにより製造することができる。含フッ素共重合体
(A1)を得るための乳化重合においては、界面活性剤
が好ましく用いられる。界面活性剤としてはアニオン性
界面活性剤、ノニオン性界面活性剤、またはそれらが組
み合わせて用いられ、あるいは両性界面活性剤を用いる
こともできる。アニオン性界面活性剤としては、高級ア
ルコール硫酸塩のエステル、たとえばアルキルスルホン
酸ナトリウム塩、アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウ
ム塩、コハク酸ジアルキルエステルスルホン酸ナトリウ
ム塩、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリ
ウム塩などが用いられる。ノニオン性界面活性剤として
は、ポリオキシエチレンアルキルエーテル類、ポリオキ
シエチレンアルキルフェニルエーテル類、ポリオキシエ
チレンアルキルエステル類、ポリオキシエチレンアルキ
ルフェニルエステル類、ソルビタンアルキルエステル
類、グリセリンエステル類、およびその誘導体などが用
いられる。両性界面活性剤としてはラウリルベタインな
どが用いられる。
【0015】乳化重合を行う際、重合系内のpHを上昇
させる目的で、pH調整剤を用いることが好ましい。p
H調整剤としては、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、オ
ルトリン酸水素ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム、四ホ
ウ酸ナトリウムなどの無機塩基類およびトリエチルアミ
ン、トリオクチルアミンなどの有機塩基類等が例示さ
れ、無機塩基類と有機塩基類とを併用してもよい。pH
調整剤の添加量は、重合速度が遅くならないように、重
合系内のpHが6以上になるよう添加されることが好ま
しい。乳化重合の開始は、通常の乳化重合の開始と同様
に重合開始剤の添加により行なわれる。かかる重合開始
剤としては、通常のラジカル重合開始剤を用いることが
できるが、水溶性重合開始剤が好ましく採用され、具体
的には過硫酸アンモニウム塩等の過硫酸塩、過酸化水素
あるいはこれらと亜硫酸水素ナトリウム、チオ硫酸ナト
リウム等の還元剤との組合わせからなるレドックス重合
開始剤、さらにこれらに少量の鉄、第一鉄塩、硫酸銀等
を共存させた系の無機系重合開始剤、またはジコハク酸
パーオキシド、ジグルタール酸パーオキシド等の二塩基
酸過酸化物、アゾビスイソブチルアミジン二塩酸塩、ア
ゾビスブチロニトリル等の有機系重合開始剤が例示され
る。重合開始剤の使用量は、種類、乳化重合条件等に応
じて適宜変更可能であるが、通常は乳化重合させるべき
単量体100質量部当り、0.005〜0.5質量部程度
が好ましく採用される。また、これらの重合開始剤は一
括添加してもよいが、必要に応じて分割添加してもよ
い。
【0016】さらに、乳化重合開始温度は主に重合開始
剤の種類に応じて適宜最適値が選定されるが、通常は、
0〜100℃、特に20〜90℃程度が好ましく採用さ
れる。また、反応圧力は、適宜選定可能であるが、通常
は0.1〜10MPa、特に0.2〜5MPa程度を採
用するのが望ましい。含フッ素共重合体(A1)粒子の
水性分散体における含フッ素共重合体(A1)粒子の含
有量は、特に制限ないが、15〜70質量%が好まし
く、25〜60質量%が特に好ましい。
【0017】含フッ素複合重合体(A2)粒子は、同一
粒子内に含フッ素共重合体と(メタ)アクリル系重合体
を含有し、前記含フッ素共重合体および/または(メ
タ)アクリル系重合体はカルボニル基を有する。含フッ
素複合重合体(A2)中の含フッ素共重合体は、含フッ
素共重合体(A1)と同様であり、(a’)含フッ素単
量体に基づく重合単位が必須成分として含有され、さら
に(b’)カルボニル基含有単量体に基づく重合単位を
含有するものが好ましい。含フッ素複合重合体(A2)
中の含フッ素共重合体における(a’)成分および
(b’)成分は、含フッ素共重合体(A1)における
(a)成分、(b)成分と、同様である。(a’)成分
に基づく重合単位の含有量は、含フッ素共重合体(A
1)と同様である。(b’)成分に基づく重合単位の含
有量は、1〜20モル%が好ましく、3〜15モル%が
特に好ましい。
【0018】また、含フッ素複合重合体(A2)の含フ
ッ素共重合体における共重合される他の単量体も、それ
らに基づく重合単位の含有量も、含フッ素共重合体(A
1)と同様である。さらに、重合方法、重合条件も含フ
ッ素共重合体(A1)と同様である。含フッ素複合重合
体(A2)における(メタ)アクリル系重合体は、(メ
タ)アクリル系単量体に基づく重合単位を有する。ここ
で、(メタ)アクリルとは、アクリルとメタクリルの両
者を意味する。(メタ)アクリル系単量体としては、下
記の単量体が例示される。アクリル酸メチル、アクリル
酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸イソプロピ
ル、アクリル酸ブチル、アクリル酸ヘキシル、アクリル
酸オクチル、アクリル酸ラウリル、メタクリル酸メチ
ル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタ
クリル酸イソプロピル、メタクリル酸ブチル、メタクリ
ル酸ヘキシル、メタクリル酸オクチル、メタクリル酸ラ
ウリル等のアクリル酸またはメタクリル酸の炭素数1〜
18のアルキルエステル;グリシジルアクリレート、グ
リシジルメタクリレート;アリルアクリレート、アリル
メタクリレート等のアクリル酸またはメタクリル酸の炭
素数2〜8のアルケニルエステル;ヒドロキシエチルア
クリレート、ヒドロキシエチルメタクリレート、ヒドロ
キシプロピルアクリレート、ヒドロキシプロピルメタク
リレート等のアクリル酸またはメタクリル酸の炭素数2
〜8のヒドロキシアルキルエステル;アリルオキシエチ
ルアクリレート、アリルオキシメタクリレート等のアク
リル酸またはメタクリル酸の炭素数3〜18のアルケニ
ルオキシアルキルエステル;γ-アクリロイルオキシプ
ロピルトリメトキシシラン、γ-メタクリロイルオキシ
プロピルメチルトリメトキシシラン等の加水分解性シリ
ル基を含有するもの、さらにアクリル酸、メタクリル酸
等が例示される。
【0019】該(メタ)アクリル系重合体は、カルボニ
ル基を有することが好ましい。カルボニル基含有単量体
としては、アクロレイン、ジアセトンアクリルアミド、
アセトアセトキシアルキル(メタ)アクリレート、ホル
ミルスチロール、さらに(メタ)アクリルオキシアルキ
ルプロパナール、アセトニトリルアクリレート、ジアセ
トン(メタ)アクリレートなどが挙げられる。特にジア
セトンアクリルアミドが好ましく用いられる。これらカ
ルボニル基含有単量体に基づく重合単位は、(メタ)ア
クリル系重合体に好ましくは5〜50モル%の割合で含
有される。さらに好ましくは、10〜30モル%含有さ
れる。含フッ素複合重合体(A2)は、含フッ素共重合
体とアクリル系重合体を質量比で95/5〜40/60
の割合で含有する。アクリル系重合体の割合が5質量%
より少ないと、基材への密着性に劣る。また、アクリル
系重合体の割合が60質量%より多いと、耐候性が低下
する。さらに好ましくは、含フッ素共重合体とアクリル
系重合体を質量比で90/10〜60/40の割合で含
有する。
【0020】含フッ素複合重合体(A2)粒子の水性分
散体は、含フッ素共重合体の水性分散体中で、(メタ)
アクリル系単量体を、例えばシード重合法によって重合
することにより得ることができる。シード重合法におい
て使用可能なラジカル重合開始剤としては、前記含フッ
素共重合体を調製するための乳化重合開始剤として例示
したものが好ましい。その使用量も前記と同様とするこ
とができる。シード重合方法は、反応系の氷点から沸点
までの温度範囲で通常の方法により行われる。含フッ素
複合重合体(A2)粒子の水性分散体における含フッ素
複合重合体(A2)粒子の含有量は、特に制限ないが、
15〜70質量%が好ましく、25〜60質量%が特に
好ましい。
【0021】本発明で用いる化合物(B)は、1分子中
に3つ以上の−CONHNH基を有する化合物であ
る。3官能以上であるために3次元的架橋が可能であ
り、従来の2官能性ヒドラジドに比べて、架橋密度を高
くすることができる。1分子中に3つ以上の−CONH
NH基を有する化合物(B)は、1分子中に3つ以上
のカルボン酸基あるいはカルボン酸エステルを含有する
任意の化合物に、水加ヒドラジンを加熱下に反応させる
ことによって得られる。化合物(B)の具体例として
は、例えば、エチレンジアミン4酢酸テトラヒドラジ
ド、ニトリロ酢酸トリヒドラジド、1,2,4−ベンゼ
ントリヒドラジド、ピロメリット酸トリヒドラジド、シ
クロヘキサントリカルボン酸トリヒドラジド、クエン酸
ヒドラジド、下記式(1)で表わされるトリカルボヒド
ラジド化合物が例示されるが、好ましくは下記式(1)
で表わされるトリカルボヒドラジド化合物等が挙げられ
る。
【0022】
【化6】 (式中、R、R、RおよびRはそれぞれに水素
原子または水酸基であり、pは0〜3の整数であり、q
は2〜8の整数であり、p+q≦8かつp<qを満足す
る。) 式(1)のトリカルボヒドラジド化合物を架橋剤として
用いた場合、得られる塗膜の耐溶剤性、基材への密着性
を飛躍的に高めることができる。化合物(B)の具体例
としては、1,2,4−ブタントリカルボヒドラジド、
1,1,4−ブタントリカルボヒドラジド、1,2,5
−ペンタントリカルボヒドラジド、1,3,6−ヘキサ
ントリカルボヒドラジド、1,3,7−ヘプタントリカ
ルボヒドラジド等の脂肪族のトリカルボン酸トリヒドラ
ジド、水酸基を有する化合物としては1−ヒドロキシ−
1,2,4−ブタントリカルボヒドラジド等が挙げられ
るが、好ましくは1,2,4−ブタントリカルボヒドラ
ジド、1,2,5−ペンタントリカルボヒドラジドが挙
げられ、特に好ましくは1,2,4−ブタントリカルボ
ヒドラジドが挙げられる。
【0023】化合物(B)の含有量は、含フッ素共重合
体(A1)または含フッ素複合重合体(A2)中のカル
ボニル基1モルに対し、0.03〜1モルであり、好ま
しくは0.07〜0.7モルであり、特に好ましくは
0.1〜0.4モルである。0.03モルより少ないと
充分な架橋が得られず耐溶剤性、耐水性などの高性能化
が期待できない。1モルより多く配合すると貯蔵安定性
も悪くなるため好ましくない。本発明の水性分散体に
は、親水性有機溶剤が添加されていてもよい。しかし、
親水性有機溶剤は溶剤規制があるので添加されていない
ことが好ましい。親水性有機溶剤を使用する場合は、安
定性の面から20質量%以下とすることが好ましい。親
水性有機溶剤としては、メタノール、エタノール、イソ
プロパノール等のアルコール類、アセトン、メチルエチ
ルケトン等のケトン類、メチルセロソルブ、ブチロセロ
ソルブ等のグリコールエーテル類、テトラヒドロフラ
ン、1,4−ジオキサン等のエーテル類等が挙げられ
る。
【0024】本発明の水性分散体は、そのままでも水性
塗料として使用可能であるが、必要に応じて着色剤、造
膜助剤、紫外線吸収剤、レベリング剤、ハジキ防止剤、
皮バリ防止剤などを混合してもよい。着色剤としては、
染料、有機顔料、無機顔料などが例示される。水性分散
液の安定性を向上させるためにpH調整剤を添加しても
よい。また、水性塗料として使用する場合には必要によ
り、他の硬化剤を配合してもよい。他の硬化剤として
は、メラミン樹脂、イソシアネート、オキサゾリン化合
物の例示され、これらのうち一種類配合してもよく、あ
るいは数種類を配合してもよい。これらの他の硬化剤と
組み合わせた場合には必要に応じて、2液型塗料として
使用される。また、本発明の含フッ素共重合体の水性分
散体は、単独で水性塗料として使用されるばかりでな
く、各種水性塗料とのブレンドにより使用することも可
能である。さらに無機塗料と複合化して使用することも
可能である。
【0025】
【実施例】以下に、本発明を実施例および比較例により
さらに具体的に説明する。本発明は、これらの例により
何ら制限されるものではない。以下の製造例、実施例お
よび比較例において、「部」および「%」は、それぞれ
「質量部」および「質量%」を意味する。 (合成例1) 含フッ素共重合体(A1)粒子の水性分散体 内容積2リットルのステンレス製撹拌機付オートクレー
ブ(耐圧50kg/cm)にシクロヘキサンジメタノ
ールモノビニルエーテル(CHMVE)/エチルビニル
エーテル(EVE)/シクロヘキシルビニルエーテル
(CHVE)/CHMVEへのエチレンオキシド(E
O)付加物(平均分子量800)/カルボニル基含有単
量体を10/10/20/5/5(モル比)の割合で含
有する単量体混合物50部、 イオン交換水100部、
乳化剤(日本乳化剤(株)製、商品名:Newcol
293)1部、乳化剤(日本乳化剤(株)製、商品名:
Newcol 240)1部、炭酸カリウム0.1部、
過硫酸アンモニウム0.1部を仕込み、氷冷で冷却し
て、窒素の圧入、脱気を繰り返して溶存空気を除去した
後、クロロトリフルオロエチレン(CTFE)を10部
仕込んだ後に60℃で反応を開始する。この時のオート
クレーブの圧力はゲージ圧で0.5MPaで、反応が進
行すると圧力が低下するが、圧力が一定(0.5MP
a)になるようにCTFEをさらに40部添加する。そ
の後ゲージ圧がほぼ0MPaになるまで反応を行なっ
た。総反応時間は10時間であった。その結果、含フッ
素共重合体粒子の水性分散体が得られた。
【0026】(合成例2〜3)乳化重合に用いる単量体
組成を表1に示すように変更し、それ以外は合成例1に
記載の方法に準じて含フッ素共重合体粒子の水性分散体
を得た。 (合成例4)内容積2リットルのステンレス製撹拌機付
オートクレーブ(耐圧5MPa)にイオン交換水100
部、パーフルオロオクタン酸アンモニウム塩0.1部を
仕込み、氷冷で冷却して、窒素の圧入、脱気を繰り返し
て溶存空気を除去した後、VdF/CTFE/TFEを
75/15/10(モル比)の割合で含有する単量体混
合物にて60℃で0.8MPaまで加圧した。次に、酢
酸エチル2g、過硫酸アンモニウム0.3gを圧入し、
槽内圧力が0.8MPaになるように単量体混合物を連
続供給し、50時間反応を行った後、槽内を常温、常圧
に戻し、反応を停止させた。その結果、含フッ素共重合
体粒子の水性分散体が得られた。
【0027】
【表1】 表中の略号は、以下に示すものである。 CTFE:クロロトリフルオロエチレン TFE:テトラフルオロエチレン VdF:フッ化ビニリデン CHMVE:シクロヘキサンジメタノールモノビニルエ
ーテル EVE:エチルビニルエーテル CHVE:シクロヘキシルビニルエーテル V−9:ベオバ−9(シェル化学社製) カルボニル基含有単量体:CH=CHO(CH)
−C(=O)−CH
【0028】(合成例5)窒素ガス導入管、滴下ロー
ト、撹拌機および温度計の備えられた2リットル丸底フ
ラスコに、合成例2で製造された含フツ素共重合体の水
分散体1000部、脱イオン水100部を入れ、フラス
コ内を充分に窒素置換し60℃に昇温した。一方で、下
記の配合からなる単量体混合物を作成した。 メタクリル酸メチル 40部 メタクリル酸ブチル 35部 メタクリル酸ヒドロキシエチル 5部 メタクリル酸 5部 ジアセトンアクリルアミド 15部 撹拌下、反応器を60℃に保ったまま、上記単量体混合
物を滴下した後、過流酸アンモニウム0.1gを添加し
反応を開始した。さらに3時間保ち撹拌を続けた。上記
操作の終了後、反応器を冷却し、同一粒子内に含フッ素
共重合体とアクリル系重合体を含有する含フッ素複合重
合体粒子の水性分散体を得た。得られた水性分散体は固
形分濃度48%、粘度10センチポイズ(20℃)、p
H7.4、平均粒子径0.20μm、最低造膜温度40℃
であつた。
【0029】(合成例6〜8)乳化重合に用いる含フッ
素共重合体、単量体組成を表2に示すように変更し、そ
れ以外は合成例5に記載の方法に準じて、含フッ素複合
重合体粒子の水性分散体を得た。
【表2】 表中の略号は、以下に示すものである。 MMA:メタクリル酸メチル BuMA:メタクリル酸ブチル EA:アクリル酸エチル MA:メタクリル酸 DAAm:ジアセトンアクリルアミド
【0030】(実施例1〜4)上記合成例1、5〜8に
より得られたカルボニル基含有含フッ素共重合体粒子の
水性分散体およびカルボニル基含有含フッ素複合重合体
粒子の水性分散体に、それぞれカルボニル基1モルに対
して0.3モルの架橋剤1,2,4−ブタントリカルボ
ン酸トリヒドラジドを配合した。該水性分散体71部
に、酸化チタン(石原産業社製、商品名:CR90)1
0部、造膜助剤(チッソ社製、商品名:Cs−12)
5.4部、増粘剤(ヘキスト合成社製、商品名:レオビ
スCR)0.3部、分散剤(サンノプコ社製、商品名:
ノスコスパース44−C)0.8部、消泡剤(ダウコー
ニング社製、商品名:FSアンチフォーム90)0.6
部、イオン交換水10.3部を用いて配合して、塗料を
調製した。これらの塗料をアルミニウム板上に、乾燥膜
厚40μmとなるようにエアスプレーで塗布し、20℃
で1週間乾燥し試験片を得た。
【0031】(比較例1〜3)カルボニル基含有含フッ
素共重合体粒子の水性分散体およびカルボニル基含有含
フッ素共重合体粒子の水性分散体に、それぞれカルボニ
ル基1モルに対して架橋剤として0.5モルのアジピン
酸ジヒドラジドを配合し、それ以外は実施例1に記載の
方法により試験片を得た。これら試験片について耐候
性、耐水性および耐溶剤性、密着性、初期光沢の試験を
行った。その結果を表3に示す。耐候性評価はQUV試
験3000時間後に著しく光沢が低下したものを×、光
沢の低下があまりみられないものを○とした。耐溶剤性
評価はキシレンに浸漬した布でラビングテストを行い塗
膜の破損した回数を調べた。密着性はJIS K540
0に基づき、2mm間隔25個のマス目を作り、テープ
剥離試験を行った。残ったマス目の数を示す。初期光沢
は、光沢計(スガ試験器(株)製)を用いて反射角60
°の光沢を測定した。耐水性評価は60℃の温水に1週
間浸漬後、塗膜のふくれや剥離のないものを○、あるも
のを△とした。
【0032】
【表3】
【0033】
【発明の効果】本発明の含フッ素共重合体の水性分散体
は、耐候性、耐溶剤性、耐水性および基材への密着性に
優れ、さらに高光沢を有する塗膜を形成することがで
き、常温架橋可能な塗膜を与えることができる。また、
本発明の水性分散体を用いた水性塗料は、溶剤規制など
の問題に心配がなく、幅広い用途に適用が可能である。
例えば、ガラス、金属、セメントなど外装用無機建材の
塗装などに有用である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) C08L 51/06 C08L 51/06 Fターム(参考) 4J002 BC121 BD121 BD141 BD151 BD161 BE041 BE051 BG071 BG131 BN201 EQ026 4J011 PA66 PC02 4J026 AA26 BA27 FA04 FA07 GA09 4J100 AB07Q AC24P AC25P AC26P AC27P AC31P AE09Q AE09R AE10R AE18R AF06Q AG08R AJ01R AJ02R AL08Q AL09R AM21Q BA03R BA12Q BA13Q BA14Q BC04R CA04 CA05 EA06 JA01

Claims (7)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 カルボニル基を有する含フッ素共重合体
    (A1)粒子の水性分散体と、前記カルボニル基1モル
    に対し0.03〜1モルの、1分子中に3つ以上の−C
    ONHNH基を有する化合物(B)を含有することを
    特徴とする含フッ素共重合体の水性分散体。
  2. 【請求項2】 1分子中に3つ以上の−CONHNH
    基を有する化合物(B)が、下記式(1) 【化1】 (式中、R、R、RおよびRはそれぞれに水素
    原子または水酸基であり、pは0〜3の整数であり、q
    は2〜8の整数であり、p+q≦8かつp<qを満足す
    る。)で表わされるトリカルボヒドラジド化合物である
    請求項1に記載の含フッ素共重合体の水性分散体。
  3. 【請求項3】 前記含フッ素共重合体(A1)が、フル
    オロオレフィンに基づく重合単位を含有するものである
    請求項1または2に記載の含フッ素共重合体の水性分散
    体。
  4. 【請求項4】 同一粒子内に含フッ素共重合体と(メ
    タ)アクリル系重合体を含有し、前記含フッ素共重合体
    および/または(メタ)アクリル系重合体がカルボニル
    基を有する、含フッ素複合重合体(A2)粒子の水性分
    散体と、前記カルボニル基1モルに対し0.03〜1モ
    ルの、1分子中に3つ以上の−CONHNH 基を有す
    る化合物(B)を含有することを特徴とする含フッ素共
    重合体の水性分散体。
  5. 【請求項5】 1分子中に3つ以上の−CONHNH
    基を有する化合物(B)が、下記式(1) 【化2】 (式中、R、R、RおよびRはそれぞれに水素
    原子または水酸基であり、pは0〜3の整数であり、q
    は2〜8の整数であり、p+q≦8かつp<qを満足す
    る。)で表わされるトリカルボヒドラジド化合物である
    請求項4に記載の含フッ素共重合体の水性分散体。
  6. 【請求項6】 前記含フッ素共重合体が、フルオロオレ
    フィンに基づく重合単位を含有するものである請求項4
    または5に記載の含フッ素共重合体の水性分散体。
  7. 【請求項7】 前記1分子中に3つ以上の−CONH
    NH基を有する化合物(B)がブタントリカルボヒド
    ラジドである請求項1〜6のいずれかに記載の含フッ素
    共重合体の水性分散体。
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