JP2002016297A - 結晶配向バルクZnO系焼結体材料の製造方法およびそれにより製造された熱電変換デバイス - Google Patents
結晶配向バルクZnO系焼結体材料の製造方法およびそれにより製造された熱電変換デバイスInfo
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Abstract
かりでなく、その熱電特性のバラツキもなく、しかも環
境負荷特性にも優れた結晶配向バルクZnO系焼結体材
料の製造方法およびそれにより得られる熱電変換デバイ
スを提供すること。 【解決手段】 結晶配向材料のテンプレートとなる物質
である形状異方性を有するZnOまたはその前駆体粉末
材料と、このZnOまたはその前駆体粉末材料との反応
によって結晶異方性のある導電性酸化物を生成する物質
とを混合し、この混合材料を前記異方形状粉末が一方向
に配向するように常温下で成形し、この成形物を熱処理
することにより合成し、その後に焼結する。
Description
更に詳しくは、熱電特性に優れた結晶配向性を有するバ
ルクZnO系焼結体材料の製造方法及びそれにより製造
された熱電変換デバイスに関するものである。
つである熱電気発電(熱電発電)というのは、二種類の
金属(若しくは半導体等)の両側を接合した接点を異な
る温度に保った時に流れる熱電流や、回路を開いた時に
生じる起電力をいわゆるゼーベック効果によって得ると
いうものである。この熱電気発電は、エネルギー変換の
際に老廃物が生じることはなく、メンテナンス効率がよ
い等の特長を有している。また、ゼーベック効果の逆過
程であるペルチェ効果を利用し、電子冷却を行うことも
できるものである。
して、熱電特性の最大効率ηmaxや、性能指数Zとい
った数値が用いられている。熱電特性の最大効率η
maxは数1に示した算出式で表され、また性能指数Z
は数2に示した算出式で表される。
{((ZT+1)1/2−1)/((ZT+1)1/2
+Tc/Th} ηmax:最大効率 Th:高温側温度 Tc:低温側温度 ZT:無次元性能指数
しての熱電特性の向上には、性能指数Zの大きい物質で
あること、すなわちゼーベック係数(S)や電気伝導率
(σ)の値が高く、熱伝導率(κ)の値が小さい物質で
あることが要求される。ここで、ゼーベック係数(S)
は材料そのものの物性値であるためどのような熱電材料
を用いるかによって決定されるが、電気伝導率(σ)及
び熱伝導率(κ)はその熱電材料の組成や結晶組織によ
って大きく変化させることが可能である。そのため、ゼ
ーベック係数(S)の高い熱電材料とはどういうものな
のか、また電気伝導率(σ)が高く、熱伝導率(κ)を
低くするためにはどのような結晶組織が良いのか等が種
々検討されている。
しては、例えば、Bi−Te系、Si−Ge系、Pb−
Te系等が一般的に知られている。中でも、性能指数Z
の値がもっとも大きいBi−Te系は、実用化材料の中
で最も熱電特性がよい熱電材料であるとされている。な
ぜならば、Bi−Te系はゼーベック係数(S)が大き
く、電気伝導率(σ)が適度に高い上に、Seを少し固
溶させることにより熱伝導率(κ)を低下させることが
可能となり、その結果、性能指数(Z)を増加させるこ
とができるとされているからである。
が低く、熱電特性における好適な温度域を示す範囲が狭
いという難がある。また、その融点が低いために高温域
での使用ができないことから、低温側温度と高温側温度
との差が小さくなってしまい、それに伴って熱電特性の
最大効率ηmaxの値が低くなってしまい、さらに材料
コストが高く、材料そのものが環境負荷物質であるとい
う環境上の問題もある。また、Bi−Te系以外のSi
−Ge系、あるいはPb−Te系の熱電材料について
も、Bi−Te系よりもその熱電特性が劣るばかりでな
く、環境上の問題がある物質もある。
セラミックス系で環境負荷特性に優れた熱電材料とし
て、例えば、特開2000−12915号公報に示され
るように、Zn−In−O系熱電変換材料が知られてい
る。この材料は、熱電特性に優れているとして注目され
ているものであるが、この公報にはその材料の結晶配向
性については特に言及されておらず、おそらく通常の粉
末プロセスで調製された無配向多結晶の材料と考えられ
る。
言及するものではないが、ZnO系材料と結晶配向させ
ると熱電特性等の物性が向上することが、専門誌「セラ
ミックス」、Vol.33、No.4、p290(19
98年発行)に紹介されている。ここには、演題「酸化
亜鉛の配向性制御と光学的機能」(ZnO)として、ス
パッタリング等で作製した配向ZnO薄膜または気相輸
送法を用いて作製したバルク配向ZnO多結晶材料とす
ることで、光学デバイスへの応用可能性や高い圧電特性
が得られることが報告されている。
クス基礎科学討論会(2000年1月開催)において、
ZnOとIn2O3の複合酸化物粉末を熱処理して合成
した(ZnO)5・In2O3粉末を1300℃でのホ
ットフォージング法で成形・結晶配向化し、焼結するこ
とによりアンドープ型Zn−In−O系焼結体を製造す
ることに成功したことを発表した(予稿集p247,2
80参照)。この方法によれば、高い配向度をもったZ
n−In−O系結晶配向セラミックスが得られ、また、
無配向のものよりも高い熱電特性が得られることが確認
されている。
38回セラミックス基礎科学討論会での発表のように、
ホットフォージング法により結晶配向性バルクZnO系
焼結体材料を製造することは、このホットフォージング
法が熱間加工法の1つであることから材料中に加工によ
るせん断応力に分布が生じやすく、そのために結晶の配
向度が不均一となり、結果的にこの熱間加工材から作製
した焼結体の熱電特性には大きなバラツキが生じ、十分
に機能を発揮できないという問題がある。
加工法であることから高温での加工を必要とするため製
造コストが高くなり、熱間加工後、さらに焼結を行うこ
とから生産性が悪いという問題もあった。
果、このバルクZnO系焼結体材料について常温による
成形法によって結晶の配向化を行うことで熱電特性のバ
ラツキのない安定した品質の結晶配向性バルクZnO系
焼結体材料が得られるのではないか、またこの材料が低
廉に、かつ生産性良く製造できるのではないかとの考え
に至ったものである。ここで常温とは、ドクターブレー
ド法や鋳込み成形法、押出成形法等で利用される室温か
ら、樹脂の軟化を利用する射出成形法で用いられる20
0℃以下の温度までの範囲を示す。
向への配向性を有する多結晶配向性バルクZnO系焼結
体材料であって、優れた熱電特性を有するのみならず、
その熱電特性のバラツキの少ないものを製造する方法を
提供するものである。またこの熱電材料を200℃以下
の常温成形法および常圧焼結法により製造することによ
り製造コストの低廉化並びに生産性の向上をも達成する
ものである。
に本発明に係る結晶配向バルクZnO系焼結体材料の製
造方法は、請求項1に記載のように、結晶配向材料のテ
ンプレートとなる物質である形状異方性を有するZnO
またはその前駆体粉末材料と、このZnOまたはその前
駆体粉末材料との反応によって結晶異方性のある導電性
酸化物を生成する物質とを混合し、この混合材料を前記
異方形状粉末が一方向に配向するように常温下で成形
し、この成形物を熱処理することにより合成し、その後
焼結するようにしたことを要旨とするものである。ここ
で一方向に配向するとは、異方形状粉末が板状粒子の場
合には、板状粒子の広がり面が特定の軸方向にのみ平行
に配列することとする。すなわち、テープ成形のような
手法で広がり面が平行に配列していても良いし、棒状試
料の押出成形のような手法で広がり面が押出方向を軸と
して含むように配列しても良い。
配向バルクZnO系焼結体材料は、ZnOを主成分とす
るもの、あるいはZnOを含む複合酸化物からなるもの
であり、Znが並んだ電気伝導性の高い面に平行な結晶
面が特定の軸方向にのみ平行に配向しているものであ
る。
クZnO系焼結体材料とは、少なくとも主相がウルツ鉱
型ZnOであり、c面が特定の軸方向にのみ平行に配向
しているものを指称する。これにB、Al、Ga、C
r、In、Si、N、Fのようなドーパント元素を固溶
していても良く、また、第二相が存在していても良い。
晶配向バルクZnO系焼結材料とは、(ZnO)m・I
n2O3(m=5〜19、好ましくは5〜7)のように
Zn原子が並ぶc面に平行な層状の結晶構造を有する物
質を主相とし、Zn原子が並ぶ面が特定の軸方向にのみ
平行に配向しているものを指称する。これにドーパント
元素を固溶していても良く、また、第二相が存在してい
ても良い。ドーパントとしては、例えば、(ZnO)m
・In2O3の場合には、Y、La、Ce、Nd、G
d、Acなどの希土類元素、Ti、Co、Fe、Ni、
Cu等の遷移金属元素、Mg、Al、Si等の軽元素が
挙げられる。
ては、硫酸亜鉛、硝酸亜鉛、塩化亜鉛、炭酸亜鉛、酢酸
亜鉛の中から選択される亜鉛塩と、2−アミノエタノー
ル、2,2’−イミノジエタノールおよび2,2’,
2’’−ニトリロトリエタノールの中から選択されるア
ミノエタノールとを水溶液中で混合し、生成する錯体を
加熱処理することによって得られる異方形状亜鉛塩が代
表的なものとして挙げられる。
とは、このような異方形状亜鉛塩を熱分解させることに
より得られる板状のZnO粉末のことである。これら形
状異方性を有するZnOまたはその前駆体粉末のうち、
最も好ましいのは板状の塩基性硫酸亜鉛、ZnSO4・
3Zn(OH)2・nH2O、あるいはこれを熱分解し
て得られる板状のZnO粉末である。特に塩基性硫酸亜
鉛は強度が高く、他の反応源物質と混合しても破壊され
にくいためより好ましい。これらの粉末のアスペクト比
は5以上、望ましくは10以上のものを使用することに
より、高い配向度の焼結体が得られる。この形状異方性
を有するZnOまたはその前駆体粉末材料と混合して反
応させる物質とは、酸化物、炭酸塩などの塩、金属粉末
等から選ばれる。通常は目的とする電気伝導性材料を合
成するために必要な物質、すなわちドーパントや複酸化
物の構成元素を含む原料を用いるが、異方形状でないZ
nO粉末やZnOを含む複酸化物自体でも良い。
配向するように常温下で成形する方法としては、ドクタ
ーブレード法、押出成形法、射出成形法、展伸成形法、
圧延法、遠心成形法、鋳込み成形法等が代表的なものと
して挙げられる。この方法によれば、異方形状粉末に強
いせん断応力が作用し、結晶配向性の良い成形体が得ら
れる。また常温での成形であるから量産向きである。
ZnO系焼結体材料は、Zn原子が並ぶ面が特定の軸方
向にのみ実質的に配向した結晶粒を多く含む多結晶体で
ある。すなわち、配向成形法としてテープ成形のような
手法を用いた場合にはZn原子が並ぶ面がテープ面と平
行に配向した結晶粒を多く含むいわゆる面配向または一
軸配向となり、棒状試料の押出成形や射出成形の場合に
は、Zn原子が並ぶ面が棒の長手方向を軸とする方向と
平行に配向する。これらいずれの場合にも、Zn原子が
並ぶ面と平行な方向が存在する。テープ成形のような手
法の場合にはテープ面に平行ないずれの方向でも良い
し、棒状押出成形の場合には、押出方向となる。熱電素
子として使用する場合には、この方向に温度差を設けた
り、電流を流して使用するのが望ましい。
結晶配向バルクZnO系熱電変換デバイスは、上述のよ
うに製造された結晶配向バルクZnO系焼結体材料が熱
電素子として用いられていることを要旨とするものであ
る。このZnO系熱電変換デバイスによれば、ZnOの
多結晶粒子がZn原子が並ぶ面が特定の面または特定の
方向に平行に整然と配向し、その特定の面内の一方向、
あるいは特定の方向に温度差を設けたり、電流が流れる
構造とすることにより高い熱電特性を発揮することはも
とより、その熱電特性も安定したものとなる。
明する。 (実施例1)組成式ZnSO4・3Zn(OH)2・n
H2Oで表されるアスペクト比10以上の板状の結晶粒
子と試薬のIn2O3の粉末とを焼成によってZnOと
In 2O3とのモル比が5:1となるように秤量し、有
機溶媒であるトルエンとエタノールの混合溶媒中でボー
ルミルにより混合した。そしてこの混合粉末粒子中にバ
インダーとして有機系のポリビニルブチルアルコール
(PVB)を加え、さらに可塑剤としてフタル酸ジ−n
−ブチルを加え、そのスラリー状のものをドクターブレ
ード法により厚さ約200μmのテープ状に成形した。
そしてこの約200μm厚さのテープ状の成形体を約8
0枚重ね、16mm厚としたものを80℃の温度で圧着
した。ついでこの試料を、1150℃まで30℃/hr
の昇温スピードで昇温し、この昇温温度1150℃で6
時間の熱処理を行った後、静水圧(CIP)成形により
加圧し、材料密度を高め、しかる後、ZnO粉末に試料
を埋め、密閉した大気雰囲気で1550℃まで600℃
/hrの昇温スピードで昇温し、この昇温温度1550
℃で2時間程掛けて焼結した。
亜鉛ZnSO4・3Zn(OH)2・nH2Oの板状結
晶粒子を走査型電子顕微鏡(SEM)により観察した組
織写真である。この顕微鏡写真でもわかるように、この
結晶配向のテンプレートとなる原料はアスペクト比の高
い六角板状結晶を呈している。尚、この粉末とIn2O
3とを混合し、1150℃で加熱して合成した(Zn
O)5・In2O3粉末は同じ六角板状結晶でZnが並
ぶc面が広がり面となっていた。これは、この原料その
ものがトポタキシーあるいはトポタキシーに近い反応を
利用して生成されたものであることに因る。
た(ZnO)5・In2O3焼結体のX線回折強度の測
定データ(XRD)を示している。試料は、焼結体のテ
ープ面と平行な面を研削し、その面のX線回折測定を行
ったものである。このXRDによれば、この焼結体が、
ZnOを含む複合酸化物である(ZnO)5・In2O
3相であり、かつ結晶面指数(00・l)で最も高いピ
ーク値を示し、c面からの強い回折ピークが観察された
ことから、テープ面に平行な面において結晶が最も配向
していることが確認されるものである。Lotgeri
ng法による配向度は、81%であった。
(ZnO)5・In2O3焼結体の破面を走査型電子顕
微鏡(SEM)により観察した組織写真であり、(a)
はテープ面に平行な破面、(b)はテープ面に垂直な破
面を観察したものである。この図3(a)(b)を比較
してわかるように、テープ面に平行に板状結晶粒子が並
んだ組織となっている。
で用いたIn2O3に代えてAl2O3を用いたもの
で、またZnOとAl2O3との配合比率も変えてあ
り、ZnOを主成分とするZnO系材料を作製するもの
である。具体的には板状のZnSO4・3Zn(OH)
2・nH2O粒子と試薬のAl2O3を、焼成後にZn
OとAl2O3がモル比で98:1になるように秤量
し、実施例1と同様にテープ成形体を作製した。この試
料を、1150℃まで30℃/hrで昇温し、1150
℃x6時間の熱処理を行った後、CIP成形処理で密度
を高め、ZnO粉末に試料を埋め、密閉した大気雰囲気
で1400℃x10時間の焼結を行い、AlドープZn
O焼結体を作製した。
のテープ面に平行に優先配向しており、Lotgeri
ng法で計算した配向度は86%に達していた。また、
焼結体の優先配向面に平行な方向に温度差を設けて測定
した場合のゼーベック係数(S)と同じ方向での電気伝
導率(σ)を800℃で測定したところ、熱電出力因子
(S2σ)は3.0x10−4W/mK2であった。
および2と違って結晶配向のテンプレートとなる形状異
方性粉末に板状のZnSO4・3Zn(OH)2・nH
2O粒子を熱分解して作製した板状のZnO粉末を用い
ている。そしてこの板状ZnO結晶粉末とAl2O3を
モル比で98:1となるように秤量し、混合にボールミ
ルではなく回転式混合機を用い、あとは実施例1と同様
にテープ成形体を作製した。このテープを積層圧着して
厚さ約1mmの成形体とし、600℃で脱脂した後、Z
nO粉末に試料を埋め、密閉した大気雰囲気で1400
℃x10時間の焼結を行い、AlドープZnO焼結体を
作製した。
に平行に優先配向しており、Lotgering法で計
算した配向度は82%に達していた。また、焼結体の優
先配向面に平行な方向に温度差を設けて測定したゼーベ
ック係数(S)と同じ方向での電気伝導率(σ)を80
0℃で測定したところ、熱電出力因子(S2σ)は2.
8x10−4W/mK2であった。
対比されるもので、実施例1のZnSO4・3Zn(O
H)2・nH2Oに代えて形状異方性を有しない市販の
等方性ZnO粉末を用いている。この市販のZnO粉末
とIn2O3粉末とをモル比で5:1の割合で湿式混合
し、乾燥後の粉末を1150℃x6時間の条件で加熱し
て(ZnO)5・In2O3粉末を合成した。そしてこ
の粉末を解砕した後、100MPaの圧力でプレス成形
し、この成形体をZnO粉末に試料を埋め、密閉した大
気雰囲気で1550℃まで600℃/hrの昇温スピー
ドで昇温し、1550℃x2時間掛けて焼結した。この
ようにして作製した(ZnO)5・In2O3焼結体
は、優先配向はしていないものである。
1の供試試料について、熱電特性の測定試験を行ったの
でそれについて述べる。実施例1の供試試料は、図4に
示した2種類の試料、すなわち、c軸に垂直な方向の熱
起電力と電気伝導率を求める矩形試料(⊥試料とする)
とc軸に平行な方向の熱起電力と電気伝導率を求める矩
形試料(//試料とする)を切り出し、ゼーベック係数
(S)と電気伝導率(σ)の温度依存性を測定し、熱電
出力因子(S2σ)を計算した。
を採り、縦軸に熱電出力因子(S2σ)を採っている。
温度はおよそ300℃〜800℃の範囲で行った。その
結果、本実施例品である「⊥試料」が最も熱電出力因子
(S2σ)の温度依存性が小さく、次いで比較試料1が
良い結果を示し、本実施例の「//試料」が最も熱電出
力因子(S2σ)の温度依存性が大きいとの結果が得ら
れた。その差は、特に測定温度の低い領域(300℃寄
り)で顕著であった。
1との比較において熱電特性の比較をしたものである。
本実施例1は、上述の「⊥試料」を用いている。また、
熱電特性は500℃の温度領域での比較値を示してい
る。そしてこの表1よりわかるように、本実施例1は5
00℃において熱電出力因子(S2σ)の値が、1.6
x10−4W/mK2と、比較例1の1.3x10−4
W/mK2よりも約20%高い値を示している。
で得られる成形体を1300℃x1.5時間でホットフ
ォージング処理を行い配向化処理をした後、ZnO粉末
に試料を埋め、密閉した大気雰囲気で1550℃まで6
00℃/hrで昇温し、1550℃x2時間で焼結した
ものである。
は優先配向している部分としていない部分とがある不均
質な焼結体であった。ゼーベック係数(S)と同じ方向
での電気伝導率(σ)を室温で測定し、熱電出力因子
(S2σ)を計算したところ、試料の中心近くは0.7
−0.8の高配向度であったが、試料端部では配向度が
0.5前後と低く、試料端部を含む焼結体の熱電出力因
子(S2σ)は比較例1の無配向材料と変わらなかっ
た。
よび3と対比されるもので、実施例2の板状前駆体粉
末、実施例3の板状ZnO粉末に代えて形状異方性を有
しない市販の等方性ZnO粉末を用いている。そしてこ
の試薬のZnO粉末とAl2O3粉末をモル比で98:
1の割合で湿式混合し、乾燥後の粉末を1200℃x1
0時間の条件で加熱してAlドープZnO粉末を作製し
た。この粉末を30MPaの圧力でプレス成形し、この
成形体をZnO粉末に試料を埋め、密閉した大気雰囲気
で1400℃x10時間の条件で焼結した。
向しておらず、ゼーベック係数(S)と同じ方向での電
気伝導率(σ)を800℃で測定したところ、熱電出力
因子(S2σ)は1.4x10−4W/mK2と実施例
3の配向焼結体の1/2の値であった。
と比較品(比較例1〜3)に用いられた材料、および測
定データ(配向性、熱電特性)を表にまとめたものであ
る。本実施例品はいずれもc面に垂直な面(テープ面に
平行な面)に配向しており、熱電出力因子(S2σ)の
値も本実施例品の「⊥試料」(c軸に垂直な方向の熱起
電力を求める試料)は対比される比較例1および比較例
2の試料と較べていずれも高く、良好な結果を示してい
ることがわかる。
℃で実施例1が1.75x10−4W/mK2であるの
に対し、比較例1および比較例2は1.65x10−4
W/mK2と低い値となっている。また、実施例2およ
び実施例3は比較例3と対比され、実施例2および3は
比較例3と較べておよそ2倍以上の良い値を示してい
る。
うに多結晶配向性とし、かつ成形が常温下でのドクター
ブレード法に依ることにより、熱電出力因子(S2σ)
が高いデータが得られることが確認された。尚、本発明
の実施例2と3を比較すると、データ上は実施例2の方
が良い結果を示したが、その理由として考えられること
は、ZnO板状粉末よりもZnO前駆体粉末(塩基性硫
酸亜鉛)の方が強度が高いため混合処理によって壊れに
くく、板状形状を保ちやすい。このため配向度が高くな
り、熱電特性も優位になるためである。
のテンプレートとなるアスペクト比10以上の板状Zn
SO4・Zn(OH)2と試薬のIn2O3粉末を混合
する際に、In2O3のうち3%をYに置換して、(Z
nO)5・(In0.97Y0.03)2O3の合成を
行ったものである。
In:Y=97:3になるように板状ZnSO4・Zn
(OH)2と試薬のIn2O3粉末と試薬のY2O3粉
末を湿式混合し、バインダーと可塑剤を加え、実施例1
と同様に厚さ200μmのテープ状に成形し、圧着して
厚さ約16mmの成形体を作製した。この成形体を11
50℃で熱処理後、CIP処理を行い、さらに1550
℃で2時間焼結した。この焼結体は、X線回折により、
実施例1と同じく、テープに平行な面がc面となるよう
に一軸配向した(ZnO)5・In2O3構造であるこ
とがわかった。この焼結体のLotgering法によ
るc面の配向度は、85%であった。また、この焼結体
の相対密度は、約90%であった。
長手方向とし、この方向のゼーベック係数と電気伝導率
を測定するように棒状試料を切り出した。また、テープ
面と垂直な面でスライスした板状試料を切り出し、テー
プ面と平行な方向の熱拡散率を測定し、熱伝導率を計算
した。
ゼーベック係数を図6、7に、板状試料を用いて測定し
た熱伝導率を図8に示す。配向焼結体は相対密度が低い
にもかかわらず、緻密な無配向焼結体(比較例4)より
も高い電気伝導率を示した。また、熱伝導率は無配向試
料(比較例4)の約1/2の値であった。性能指数Z
は、図9に示すように、無配向試料(比較例4)よりも
高い値を示し、800℃での値は、3.1×10−4K
−1となった。この値は、無次元性能指数ZT=0.3
3にあたり、n型酸化物としては非常に高い値である。
と同じ組成で、無配向の(ZnO)5・(In0 .97
Y0.03)2O3焼結体を作製し、熱電特性を測定し
た。即ち、Zn:(In+Y)=5:2、かつIn:Y
=97:3になるように試薬のZnOと試薬のIn2O
3粉末と試薬のY2O3粉末を混合し、プレス成形した
後、1550℃で2時間焼結した。この焼結体は、X線
回折により、(ZnO)5・In2O3構造であり、配
向していないことがわかった。この焼結体の特性は、実
施例4の配向試料に比べて電気伝導率と熱伝導率の点で
不利であり、配向試料よりも低い性能指数を示した。
ス構造(ZnO)m・In2O3においてm=9の場
合、即ち、(ZnO)9・In2O3の配向焼結体を作
製したものである。結晶配向のテンプレートとなるアス
ペクト比10以上の板状ZnSO4・Zn(OH)2と
試薬のIn2O3粉末を、Zn:In=9:2になるよ
うに湿式混合し、バインダーと可塑剤を加え、実施例1
と同様に厚さ200μmのテープ状に成形し、圧着して
厚さ約16mmの成形体を作製した。この成形体を11
50℃で熱処理後、CIP処理を行い、さらに1550
℃で2時間焼結した。この焼結体は、X線回折により、
テープに平行な面がc面となるように一軸配向した(Z
nO)9・In2O3構造であることがわかった。この
焼結体のLotgering法によるc面の配向度は、
91%であった。また、この焼結体の相対密度は、93
%であった。
長手方向とし、この方向のゼーベック係数と電気伝導率
を測定するように棒状試料を切り出した。また、テープ
面と垂直な面でスライスした板状試料を切り出し、テー
プ面と平行な方向の熱拡散率を測定し、熱伝導率を計算
した。
ゼーベック係数を図10、11に、板状試料を用いて測
定した熱伝導率を図12に示す。配向焼結体は、相対密
度が低いにもかかわらず、緻密な無配向試料(比較例
5)よりも高い電気伝導率を示した。また、熱伝導率
は、無配向試料(比較例5)の約1/2の値であった。
性能指数Zは、図13に示すように、無配向試料(比較
例5)よりも高い値を示し、800℃での値は、2.9
×10−4K−1となった。この値は、無次元性能指数
ZT=0.31にあたり、n型酸化物としては非常に高
い値である。
と同じ組成で、無配向の(ZnO)9・In2O 3焼結
体を作製し、熱電特性を測定した。即ち、Zn:In=
9:2になるように試薬のZnOと試薬のIn2O3粉
末を混合し、プレス成形した後、1550℃で2時間焼
結した。この焼結体は、X線回折により、(ZnO)9
・In2O 3構造であり、配向していないことがわかっ
た。この焼結体の特性は、実施例5の配向試料に比べて
電気伝導率と熱伝導率の点で不利であり、配向試料より
も低い性能指数を示した。
Oは高い移動度を持つ有力なn型の酸化物熱電材料のベ
ース組成材料であり、特にAl等をドーピングしたZn
Oのc面内、および(ZnO)m・In2O3のような
ホモロガス構造のZnOを含む複酸化物では、一般に、
Znが並んだ結晶面に平行なc面内の電気伝導率が高
い。このような異方性材料で、熱電特性の異方性の大き
な結晶面を配向させた配向多結晶を作製し、その配向面
方向を電界を印加する方向(電子冷却・加熱の場合)、
温度勾配を設けて電界を発生させる方向(熱電発電の場
合)とすることにより、無配向多結晶よりも高い性能を
発揮することができる。また、機械的特性は単結晶より
優れており、耐熱衝撃性も良好であるばかりでなく、単
結晶に較べ熱伝導率を低減できるため、むしろ単結晶よ
り高い特性が期待できる。さらに、配向多結晶の製造コ
ストは単結晶より小さい。しかも、単結晶では組成むら
が生じやすく、均一なドーピングは困難であるが、その
ような問題もないものである。
配向バルクZnO系常圧焼結材料を作製するために極め
て有効であり、成形体中で配向した板状のZnOまたは
ZnO前駆体粉末テンプレートの反応によって合成する
ことにより、(1)配向度が均一で、かつ高く、(2)
均一な組成を容易に実現でき、(3)通常の粉体成形・
焼結プロセスで作製するため、低コストである、という
大きなメリットが生じるものである。
しては、次のようなことが挙げられる。 (1)熱電材料の性能指数(Z)は、熱起電力(ゼーベ
ック係数)の二乗と電気伝導率の積を熱伝導率で割った
値であるが、これらの値には方位依存性があり、一般に
電気伝導率が高い方位に電界を加えたり、温度勾配を設
けることによって高性能な特性を引き出すことができ
る。多結晶は単結晶より破壊靭性に優れるため、機械的
強度が大きくなる。また、フォノンが粒界や空孔で散乱
されるため、熱伝導率が低くなる。こうした総合的理由
から、組成が同じ材料間で比較した場合、配向多結晶は
無配向多結晶や単結晶よりも優れた材料である。特に、
配向多結晶焼結体は電気伝導率(σ)とゼーベック係数
(S)の温度依存性が小さいため、熱電出力因子(S2
σ)の温度依存性も小さくなり、廃熱発電で期待され、
比較的低温での性能に優れた材料であると言える。 (2)テープ成型法などによってテンプレート粉末を均
一に成形するのは容易であり、焼結体の配向はテンプレ
ート粉末の配向に従うため、均一な配向ができる。 (3)異方形状粉末は単純な組成の物質を使用し、キャ
リアのドーピングなど、正確な目的組成は反応によって
実現するため、組成再現性が高い。 (4)単結晶育成や気相輸送蒸着法、圧力印加(ホット
フォージング法)のような高コスト手法を用いることな
く、通常のセラミック・プロセスで作製が可能となる。
るものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々
の改変が可能である。例えば、上記実施例では、結晶配
向のテンプレートとなる形状異方性粉末材料として、六
角板状結晶のZnO粉末あるいはその前駆体である塩基
性硫酸亜鉛を用い、またこれとの反応物質にIn2O 3
やAl2O3粉末を用いた例を示したが、各種の異方形
状亜鉛塩を用いることができ、またB2O3、Ga2O
3、Cr2O3、SiO2などをIn2O3やAl2O
3に代えて用いることも材料の特性上勿論可能なことで
ある。また、原料に微細なZnO、ドープしたZnO、
ZnOを含む複酸化物の粉末を加えることは、焼結性を
向上させるために極めて有効である。また、配向性を持
たせるための成形法として、上記した実施例ではドクタ
ーブレード法を用いたが、その他に常温下で配向性良く
成形できるものであれば、常温での押出成形、射出成
形、展伸成形、圧延成形、遠心成形、鋳込み成形等も可
能である。
結体材料の製造方法によれば、室温での押出成形やドク
ターブレード成形など通常用いられる粉体成形法で容易
に配向する異方形状粉末として異方形状の酸化亜鉛また
は酸化亜鉛の前駆体を用い、目的とする組成となるよう
に他の反応物質、あるいは焼結が容易な酸化亜鉛微粒子
を加えて混合し、異方形状の酸化亜鉛または酸化亜鉛の
前駆体が配向する成形法で成形し、これに熱処理を加え
る過程において、テンプレート物質である異方形状の酸
化亜鉛または酸化亜鉛の前駆体の配向方位が保存される
ようにエピタキシー反応またはトポタキシー反応で目的
物質が合成され、かつ、同じ熱処理中に目的とするZn
Oを主成分とする、あるいはZnOを含む複酸化物に転
換したテンプレートが粒成長し、結果的に結晶配向した
高特性のバルクZnO系常圧焼結体が得られるものであ
る。従って、この方法によればZnOを主成分とする、
あるいはZnOを含む多元系複酸化物のような複雑な系
でも高い熱電特性の配向焼結体を生成性の高いプロセス
で製造できる。さらに、材料そのものが酸化物系セラミ
ックス材料であるから、Bi−Te系などのような環境
負荷の問題もなく、環境特性にも優れているという利点
も有するものである。
デバイスとして利用することは、多結晶高配向のZnO
系材料ということで、熱電特性に優れることはもとよ
り、量産性に優れて市場に低廉に提供でき、さらに環境
負荷特性に優れていることから環境汚染の防止にも対応
できるという利点も有するものである。
nSO4・3Zn(OH)2・nH2Oの板状結晶粒子
の走査型電子顕微鏡(SEM)による結晶組織を示した
ものである。
3焼結体のX線回折強度の測定データを示した図であ
る。
3焼結体の破面のSEMによる観察組織を示したもの
で、(a)はテープ面に平行な破面、(b)はテープ面
に垂直な破面を示したものである。
プ面に平行な方向(c軸に垂直な方向)での熱電測定状
態を示し(この時の試料を「⊥試料」と表現する)、
(b)はテープ面に垂直な方向(c軸に平行な方向)で
の熱電測定状態を示す(この時の試料を「//試料」と
表現する)図である。
1の結晶無配向試料との温度依存性を比較して示した図
である。
と電気伝導率との関係を示す図である。
とゼーベック係数との関係を示す図である。
と熱伝導率との関係を示す図である。
と性能指数との関係を示す図である。
度と電気伝導率との関係を示す図である。
度とゼーベック係数との関係を示す図である。
度と熱伝導率との関係を示す図である。
度と性能指数との関係を示す図である。
Claims (3)
- 【請求項1】 結晶配向材料のテンプレートとなる物
質である形状異方性を有するZnOまたはその前駆体粉
末材料と、このZnOまたはその前駆体粉末材料との反
応によって結晶異方性のある導電性酸化物を生成する物
質とを混合し、この混合材料を前記異方形状粉末が一方
向に配向するように常温下で成形し、この成形物を熱処
理することにより合成し、その後に焼結するようにした
熱電材料の製造方法。 - 【請求項2】 前記異方形状粉末が一方向に配向する
ような200℃以下の常温成形法としてドクターブレー
ド法、押出成形法、射出成形法、展伸成形法、圧延法、
遠心成形法、鋳込み成形法のうち1種以上の成形法が用
いられていることを特徴とする請求項1に記載される熱
電材料の製造方法。 - 【請求項3】 請求項1または2に記載された製造方
法により生成された結晶配向バルクZnO系焼結体材料
が熱電素子として用いられていることを特徴とする熱電
変換デバイス。
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