JP3493654B2 - 熱電素子材料及びその製造方法、並びに、Co3O4板状結晶及びその製造方法 - Google Patents

熱電素子材料及びその製造方法、並びに、Co3O4板状結晶及びその製造方法

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、熱電素子材料及び
その製造方法、並びに、Co 板状結晶及びその製
造方法に関し、更に詳しくは、高い熱電特性を有する結
晶配向性を有するナトリウム含有コバルト酸化物(Na
Co、実際は不定比性があるため、NaCo
(1≦x≦2、2≦y≦4))焼結体による熱電素
子材料及びその製造方法、並びに、このような熱電素子
材料の製造に適したCo 板状結晶及びその製造方
に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来、熱電気発電(熱電発電)は、二種
類の金属(若しくは半導体等)の両側を接合した接点を
異なる温度に保った時に流れる熱電流や、回路を開いた
時に生じる起電力の熱電効果によって電力を得る、いわ
ゆるゼーベック効果をもってエネルギーを得るものであ
る。このように熱電気発電は、エネルギー変換時に排出
する廃物がなく、又、メンテナンス効率がよい等の特徴
を有している。又、同じ材料を用いてペルチェ効果を利
用し、電子冷却を行うこともできる。
【0003】そして、これに用いられる熱電気発電用の
材料素子(以下単に「熱電素子」という)における高温
及び低温温度等は、前記熱電素子における熱電特性の最
大効率や、性能評価に用いられる性能指数と密接に関係
している。ここで、前記熱電素子における熱電特性の最
大効率ηmaxを示す算出式を数1に示し、更に、前記熱
電特性における性能を示す性能指数Zの算出式を数2に
示す。このように、各々が相互に影響し、その結果とし
て最大効率ηmaxや性能指数Zが得られることになる。
【0004】
【数1】
【0005】
【数2】Z=δS/kZ:性能指数δ:電気伝導度
S:ゼーベック係数k:熱伝導度
【0006】数2の式により、熱電素子の特性向上に
は、ゼーベック係数(S)と電気伝導度(δ)が高く、
熱伝導度(k)が低いことが必要である。但し、ゼーベ
ック係数(S)は物性値であるため材料によって決定さ
れるが、電気伝導度(δ)及び熱伝導度(k)は、組織
や組成によって大きく変化させることが可能である。そ
のため、現在ゼーベック係数(S)の高い材料探索や電
気伝導度(δ)及び熱伝導度(k)を変化させる組織制
御が検討されている。
【0007】そして、現在用いられている熱電素子とし
ては、例えば、Bi−Te系、Si−Ge系、Pb−T
e系等が知られている。中でも、前記性能指数Zの値が
最も大きいBi−Te系は、実用化材料の中で最も熱電
特性がよい熱電素子であるといえる。なぜならば、Bi
−Te系はゼーベック係数(S)が大きく、電気伝導度
(δ)が適度に高い。更にSeを少し固溶させることに
より熱伝導度(k)を低下させることが可能となり、そ
の結果、性能指数(Z)を増加させることになる。
【0008】しかし、このBi−Te系は融点が低く、
熱電特性における好適な温度域を示す範囲が狭いという
難がある。又、その融点の低さ故に高温域での使用がで
きないことから、低温温度と高温温度との差が小さくな
ってしまい、それに伴ってη maxも低くなってしまう。
更に、材料が高価で然も毒性が極めて高い環境負荷物質
であることから、その取扱いや用途に留意する必要があ
る。
【0009】また、前記Bi−Te系以外の熱電素子に
ついては、Bi−Te系よりもその熱電特性が劣ること
に加えて、前記Si−Ge系は材料が高価であり、又、
Pb−Te系は前記Bi−Te系と同様に材料が高価で
毒性を有していることから、これも取扱いや用途に対す
る留意が必要である。そのためBi−Te系が最も実用
されるものであるが、既述したような難点を有するた
め、これらに代替される熱電素子材料が検討されてい
た。
【0010】そうした技術的背景の中で、Na−Co−
O系の材料が熱電材料特性に優れることが寺崎氏らによ
り報告された(専門誌「固体物理」Vol.33 No.
31998参照)。この報告によれば、組成式NaCo
で表される単結晶材料が、従来最も優れていたB
i−Te系と同等以上の熱電特性を有するというもので
ある。このNaCoの結晶構造を図4(a)及び
(b)に模式的に示すが、図4(a)に示したように、
この物質は層状酸化物であり、NaCo はCoO
2面とNa(サイトを50%ランダムに占有)がC軸方
向に向かって交互に積層した構造である。
【0011】また図4(b)に示すように、CoO
はCoイオンが三角格子状に配列し、酸素イオンがCo
イオンを中心に陵を共有した8面体を構成したものであ
る。そしてこの材料の物理的特性を測定した結果、a軸
方向(c面内方向)における電気伝導度が室温で5×1
S/cmと高く、常温での熱起電力も100μV/
Kと非常に高いことが確認されているということで、こ
のNaCoはBi−Te系の熱電素子材料に代替
されるものとして有望視されるに至っている。
【0012】また、特開平10−256612号公報に
は、組成式Na(Co1−Z (但し1≦x
≦2、2≦y≦4、0<z<1、A=Mn、Fe又はC
u)及び、組成式Na1−P(Co1−Z
(但し1≦x≦2、2≦y≦4、0<p<1、0<
z<1、A=Mn、Fe又はCu、B=Ca、Sr、B
a、Bi又はY)で構成される熱電素子が開示されてい
る。これらはゼーベック係数を大きくすることによっ
て、広範囲な温度域に亘って高い熱電特性を有する材料
が安価に得られるとするものである。
【0013】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、前述の
寺崎氏らにより報告されたNaCo材料は、単結
晶構造のものである。CoO面とNaとの層がC軸方
向に積層した積層構造を持つことから、その異方性が大
きく、特定の方位で使用する単結晶材料としては優れた
熱電特性を有するとしても、通常の等方性の焼結体とし
ては熱電特性がそれ程高くはない。一方、単結晶材料は
高コストであり、実用に供する大きさの材料を作製する
のは困難である。又、たとえ作製してもその強度値は低
く、実用に耐え得ない。
【0014】また、前述の特開平10−256612号
公報のものは、その材料の配向性については言及されて
いないが、各種複合酸化物を製造するように、その複合
酸化物に必要な元素源を含む原料を均一に混合し焼成す
ることにより得られるとするものであるから、おそらく
ランダムに配向しているものと思われる。
【0015】これにより本発明者らは、種々実験を重ね
た結果、このNaCoのようなA系材
料は、もともと層状方向(C軸方向)への電気伝導度が
高いことから、C軸方向に配向した多結晶の焼結体が得
られれば、単結晶材料と同等の性能が得られるはずであ
るとの考えに至った。
【0016】 そこで本発明において解決しようとする
課題は、C軸方向に配向した多結晶のA系材
料、例えばNaCoであって、同一組成を有する
無配向焼結体に比べて遙かに優れた熱電特性を有する熱
電素子材料を提供すると共に、その熱電素子の製造コス
トの低減化を図ろうとするものである。また、本発明が
解決しようとする他の課題は、このような熱電素子材料
の製造に適したCo板状結晶及びその製造方法を
提供することにある。
【0017】
【課題を解決するための手段】この課題を解決するため
に、本発明に係る熱電素子材料は、A(A:
Na必須、Ca、Sr、Ba、Bi、Y、BCo必
須、Mn、Fe、Cu、1≦x≦2、2≦y≦4)型構
造を有し、C軸が一方向に配向した焼結体からなり、次
式、 配向度(%)=(X−X JCPDS )/(1−X JCPDS )×100 (但し、X=ΣI (00l) /ΣI total 、X
JCPDS :粉末X線回折の公的基準値を用いて計算し
たXの値、I total :XRDの全ピーク強度、I (0
0l) (00l) 方向のピーク強度)を用いて算出されるC軸
の配向度が93%以上である ことを要旨とするものであ
る。この熱電素子材料によれば、C軸が一方向に配向し
たものであるから、C面内方向における電気伝導度が高
く、同一組成を有する無配向焼結体に比べて遙かに高い
熱電特性が得られることになる。この時に、特に請求項
に記載の発明のように、NaCo系材料が熱
電特性に優れるものとして好適に用いられる。
【0018】 また、本発明に係る熱電素子材料の製造
方法は、少なくともCoの水酸化物又は酸化物の板状結
晶とアルカリ金属塩とを含む混合物を前記水酸化物又は
酸化物の板状結晶が一方向に配向するように成形し、こ
の成形体を焼成するようにしたことを要旨とするもので
ある。
【0019】 このようにして製造されたNaCo
のようなA系熱電素子材料は、C軸方向へ
配向した多結晶構造のものであるから、そのC面内方向
における電気伝導度が高く、同一組成を有する無配向焼
結体に比べて遙かに高い熱電特性が得られる。そしてこ
のような結晶構造のものを得るには、この種の材料への
適用は未だないトポタキシー法などを適用すれば特殊な
装置等を用いることなく製造でき、製造コストの低減が
図れることになる。又、上記のような配向した熱電素子
材料の製造方法は、NaCoO4系材料の製造に限定
されるわけではなく、Fe、Mn、Cuの板状又は短冊
状の水酸化物、又は酸化物を原料に用いることにより、
配向した一般式A系熱電素子材料の製造方法
となり得る。さらに、本発明に係るCo板状結晶
は、Coからなり、かつ、{111}面が発達し
た板状結晶であることを要旨とするものである。また、
本発明に係るCoO4板状結晶の製造方法は、Co塩
水溶液にNaOH水溶液を加えてCo(OH)の沈殿を
生成させる工程と、前記沈殿を水溶液中において空気酸
化させる工程とを備えていることを要旨とするものであ
る。
【0020】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施例をNaCo
系材料を例として詳細に説明する。初めに、本発
明の製造方法について説明する。図1は、その製造工程
を示したものである。作製手順として、先ずCo(OH)
又はCoの板状結晶粒子を作製する必要があ
る。Co(OH)は六方晶系であり、板状として析出す
ることが知られている。そこでCo(NO)水溶液に
アルカリ(NaOH水溶液)を加えると、Co(OH)
が沈殿する。
【0021】尚、ここでアンモニア水は錯体をつくるた
め使用できない。又、KOHは不純物となるため使用し
ない方がよい。更にこの水溶液を三日間撹拌し続ける
と、空気酸化によりCo(OH)がトポタクティック的
に酸化してCoが生成される。従って、これも板
状結晶粒子である。
【0022】このCoの板状結晶粒子、又は前述
のCo(OH)板状粒子と、NaCOの粉末とをエ
タノールあるいはトルエン等の有機溶媒に分散させ、こ
れにバインダーを混ぜて、そのスラリーをドクターブレ
ード法などを用いてテープ状に成形(キャスト)する
と、六角板状のCo(OH)又はCo結晶粒子の
平面方向がテープ平面方向に配向した成形体が得られ
る。また、混合粉末にバインダーを加え、押出成形を行
っても配向成形体が得られる。そして、この成形体を乾
燥し脱脂した後、酸素雰囲気中で焼結すると、反応によ
り配向性NaCoの焼結体が得られる。
【0023】次に、例えばCo板状粒子を用いた
場合の反応について説明する。先ず、Co(NO)
NaOHとの中和反応により得られるCo(OH)が脱
水によりCo酸化物(CoOやCo)となると
き、Co(OH)の(001)方向とCo酸化物の(1
11)方向に相関があるトポタクティックな反応が起こ
る。そして、得られたCo酸化物は六角板状晶の板面に
垂直な方向が(111)方向となる。これをテープキャ
ストすると、テープ面に垂直な方向が(111)方向と
なった板状Co酸化物が配向成形される。
【0024】このときCo酸化物を(111)軸横方向
から見ると、CoとOが積層した層状構造となっている
ことがわかる。したがって、このCo酸化物とNaCo
とは結晶方位に関係があり、NaがCo酸化物の
層間に侵入するような反応でNaCoが生成され
る。その結果、六角板状の結晶性が壊れずに成形体の配
向性が焼結体にそのまま引き継がれる。
【0025】これによって、テープ面に垂直方向にC軸
が配向したNaCo焼結体が得られることにな
る。但し、この材料は不定比性化合物であるため、一般
式はNaCo(1≦x≦2、2≦y≦4)で表
される。又、Co(OH)の板状粒子を用いた場合も同
様に説明でき、テープ面に垂直方向にC軸が配向したN
aCo焼結体が得られることになる。
【0026】次に具体的に供試試料を作製したので、こ
れについて説明する。 (試料)始めに、0.1モル/リットルのCo(NO)
水溶液を600ミリリットル調整した。この溶液に
0.4モル/リットルのNaOH水溶液300ミリリッ
トルを少しずつ滴下すると、Co(OH)のピンク色の
沈殿物が生成された。このCo(OH)は六方晶系であ
り、板状の析出物である。
【0027】そして、このCo(OH)の沈殿物をその
ままの状態で三日間継続して撹拌すると、Co(OH)
がトポタクティック的に空気酸化されてCoが生
成された。そこで、この沈殿物を吸引濾過して収集し、
80℃で数日間乾燥した。このCoは結晶粒径が
約1μmの板状結晶粒子のものであった。
【0028】次に、このCo板状結晶粒子5gと
NaCOを1.8gとをエタノール8ミリリット
ル、及びトルエン11ミリリットルの溶剤に溶かし、こ
れに更に有機バインダとしてポリビニルブチラール1g
及びジブチルフタレート1gを混合し、スラリー状のも
のを作製した。尚、途中でのNaの蒸発を考慮して、N
COをNaCoの化学量論比に比べて10
%過剰に加えた。
【0029】次に、前記スラリー状のものをドクターブ
レード法により100μmの隙間に流し込みながらテー
プ状に成形(キャスト)し、更にこれを乾燥することに
よりCoの板状結晶粒子の平面方向が前記テープ
方向に配向したフィルム状の成形体を得た。そして、こ
のフィルム状の成形体を10枚積層状に重ね合わせて加
圧状態で600℃の加熱温度で仮焼し、これを850〜
900℃の温度でもって空気中で12時間焼成、若しく
は850〜900℃の温度でもって1時間、25MPa
の圧力下でホットプレスを行った。更に焼結の際にはN
aの蒸発を最小限におさえるため、試料の周囲にNa化
合物を配置した。これにより、NaCo を始めと
する各種ナトリウム含有コバルト酸化物の焼結体が得ら
れた。
【0030】このようにして得られた本発明試料である
NaCoを始めとするナトリウム含有コバルト酸
化物の焼結体の物性値を、公的基準値(JCPDSカー
ド)及び本発明試料を粉砕したものとの比較において次
の表1に示す。この表において物性値としては、材料密
度(及び相対密度)と配向度とを示している。尚、該配
向度はテープ面垂直方向のC軸方向への配向度を示して
いる。
【0031】
【表1】
【0032】表1よりわかるように、本発明試料である
NaCoを始めとするナトリウム含有コバルト酸
化物の焼結体の板面に対するC軸方向への配向度は93
%と高く、粉末試料の44%よりは格段に配向性がある
ことが確認された。更にホットプレスすることにより、
密度は4.37g/cm、配向度95%と密度、配向
度共に向上した焼結体が得られた。尚、配向度は数3に
示す式から算出した。
【0033】
【数3】 配向度(%)=(X−XJCPDS)/(1−X
JCPDS)×100 X=ΣI(00l)/ΣItotal JCPDS :粉末X線回折の公的基準値を用いて計算
したXの値、total:XRDの全ピーク強度 I(00l):(00l)方向のピーク強度
【0034】図2は、本発明試料のNaCoを始
めとするナトリウム含有コバルト酸化物の焼結体におけ
るテープ面に平行な面に対するX線回折強度の回折パタ
ーン(XRD図形)を示し、図3は、比較試料として図
1に示した焼結体を粉砕して粉末にした粉末試料におけ
るX線回折強度の回折パターンを示した図(XRD図
形)である。又、図中( )内の数字は結晶面指数を示
し、その図中の波形が上昇している部分は、その回折ピ
ークを示している。
【0035】この結果、本発明試料は、図2に示すよう
に、結晶面指数(002)が最も高い回折ピークを示
し、次いで結晶面指数(004)が高くなっている。前
記結晶面指数の回折ピークは波形の大きさが大きい程そ
の配向性が大きいことを表していることから、テープ面
に平行な面においては、前記結晶面指数(00l)が最
も配向していることが分かる。
【0036】これに対して比較試料として、図3に示し
た粉末試料によると、結晶面指数(002)と結晶面指
数(004)に回折ピーク値が見られるものの、そのピ
ーク値は低く、図1の本発明試料に較べて配向性が低い
ことを示している。
【0037】次に、本発明試料である多結晶配向性Na
Coを始めとするナトリウム含有コバルト酸化物
材料と比較するため、NaCoの単結晶試料(比
較用試料1)と、NaCo無配向多結晶試料(比
較用試料2)を作製して各種の比較試験を行なったので
説明する。
【0038】(比較用試料1)比較用試料1の単結晶N
aCoは、凝固による単結晶の生成方法、いわゆ
る既存のブリッジマン法を用いて作製した。先ず、市販
のCo粉末と、NaCO粉末、及びNaCl
粉末を1:1:5〜6モル%の割合でもって計量し、こ
れを混合した後、アルミナるつぼに入れた。そして、こ
れを1050℃でもって5時間加熱して溶融し、次に、
1050℃〜850℃まで1時間に3℃ずつの降下速度
で室温まで冷却した。これによってNaCl中に約1×
1×0.02mmの大きさで結晶成長したNaCo
単結晶材料が得られた。そこでこれを水洗いしてN
aClを洗い流し、この単結晶材料を採取した。
【0039】(比較用試料2)比較用試料2の多結晶無
配向NaCo焼結体については、市販のCo
粉末とNaCO粉末とをNaCoに対して
NaCOが10%過剰になるように計量する。そし
て、その粉末をボールミルでもって24時間混合した
後、この混合粉を800℃でもって12時間空気中で仮
焼し、NaCo粉末を得た。そして、次にこの粉
末を1t/cmで成形し、周囲を同じ組成粉末で覆っ
て(パウダーベッド法)900℃の温度でもって12時
間空気中で焼結した。
【0040】次の表2は、ホットプレスにより得られた
本発明の試料(多結晶配向性NaCoを始めとす
るナトリウム含有コバルト酸化物の焼結体)と、上述の
比較用試料1(単結晶NaCo)及び比較用試料
2(多結晶無配向NaCo焼結体)の各種物性値
を各々室温(300K)で測定した結果を示している。
測定項目としては、ゼーベック係数、電気伝導度、熱電
導度、出力因子、及び性能指数を挙げた。
【0041】
【表2】
【0042】これによると、本発明試料と比較用試料1
及び2との間ではゼーベック係数及び熱伝導度には全く
差がなく、電気伝導度、出力因子及び性能指数に差が見
られた。具体的には比較用試料1の単結晶NaCo
が電気伝導度及び出力因子が高い値を示し、その結
果、前述の数1及び数2の式に表される性能指数も最も
優れた値を示していることがわかる。
【0043】しかし、本発明試料の多結晶配向性NaC
焼結体と比較試料の多結晶無配向NaCo
焼結体とを比較してみると、本発明試料は電気伝導度
及び出力因子ともに比較試料2よりも高い値を示すこと
により熱電特性の指標となる性能指数Zについても優れ
た値を示している。このように、本発明試料によれば、
比較用試料2(多結晶無配向)よりも遙かに向上した性
能指数Zが得られ、高い熱電特性が得られることが確認
された。
【0044】そして本発明試料(多結晶配向性)が比較
用試料(多結晶無配向)よりも優れた結果が得られた理
由を考察するに、本発明試料のように、NaCo
を始めとするナトリウム含有コバルト酸化物の焼結体を
生成した時に、Co酸化物の板状結晶粒子が破壊される
ことなく、然もその結晶粒子がC軸方向に配向した構造
のものが得られることから、その配向性によって高い熱
電特性が得られたものと思われる。一方、単結晶に比べ
て本発明試料は性能指数Zが少し小さい。しかし、単結
晶に比べてその生産コストは低いため、工業的な価値は
高いといえる。
【0045】本発明は、上記した実施例に何ら限定され
るものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々
の改変が可能である。例えば、上記実施例においてはN
aCoを始めとするナトリウム含有コバルト酸化
物で構成される素子材料について説明したが、これに限
定されるものではなく、例えば既述の特開平10−25
6612号公報に示されるようにこれに他の元素を配合
したような素子材料についても適用できる。
【0046】また、本発明は熱電特性の優れたナトリウ
ム含有コバルト酸化物の焼結体を得るのに、コバルト水
酸化物又は酸化物の板状結晶粒子を得て、これを配向性
をもって焼結させたことにある。これの製造方法につい
ても一概ではなく、種々の組成材料に適合した温度や溶
媒等を選択することができる。また成形方法についても
テープキャスト法のみでなく、押出成形、展仲成形等に
よってコバルト酸化物の板状結晶を一方向に配向させる
ものであってもよい。更に多結晶配向性材料を得る方法
としては、特開平10−53465等が適用可能であ
る。
【0047】 本発明の熱電素子材料は、A
(A:Na必須、Ca、Sr、Ba、Bi、Y、B
o必須、Mn、Fe、Cu、1≦x≦2、2≦y≦4)
型構造を有し、C軸が一方向に配向した焼結体から
り、かつC軸の配向度が93%以上であるから、C面内
における電気伝導度が高く、同一組成を有する無配向焼
結体に比べて遙かに高い熱電特性が得られる。そして、
この熱電素子材料は、少なくともCoの水酸化物又は酸
化物の板状結晶を含む原料を、板状結晶が一方向に配向
するように成形し、焼成することにより得られるから、
単結晶のもののように特殊な装置を用いる必要がなく、
安価に製造できる利点がある。本発明は、特にNaCo
系材料の熱電特性に優れた効果が得られる。
【0048】 また、本発明の熱電素子材料の製造方法
によれば、上述のA型構造を有する焼結体を
得るために、少なくともCoの水酸化物又は酸化物の板
状結晶粒子とアルカリ金属塩とを含み、かつ上述の焼結
体を製造可能な組成を有する原料を混ぜた後、Coの水
酸化物又は酸化物の板状結晶粒子が配向性をもって配列
された成形体とし、これを焼成するものである。従って
得られた焼結体は多結晶で配向性を有することから、高
い熱電特性を有し、然も製造上もCoの板状結晶粒子を
配向させた状態に成形し焼成するだけで特殊な装置等は
用いられていないため、単結晶に比べて製造コストも低
減できる。そして更に、これらの素子材料はBi−Te
のような毒性物質を含有していないから、環境特性にも
優れるという効果を有するものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例に係る多結晶配向性NaCo
を始めとするナトリウム含有コバルト酸化物焼結体
の製造工程を説明する図である。
【図2】本発明の実施例におけるホットプレスにより得
られたNaCoを始めとするナトリウム含有コバ
ルト酸化物焼結体のテープ面に平行な面のX線回折強度
の回折パターン(XRD図形)を示した図である。
【図3】本発明の実施例におけるNaCo焼結体
を粉砕した粉末試料におけるX線回折強度の回折パター
ン(XRD図形))を示した図である。
【図4(a)、(b)】従来一般に知られる単結晶Na
Coの結晶構造を示した模式図である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 平9−22692(JP,A) 特開 平9−321346(JP,A) 特開 平10−72257(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C04B 35/00 - 35/22 C01G 51/04 H01L 35/22

Claims (7)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 A(A:Na必須、Ca、S
    r、Ba、Bi、Y、BCo必須、Mn、Fe、
    u、1≦x≦2、2≦y≦4)型構造を有し、C軸が一
    方向に配向した焼結体からなり、次式 配向度(%)=(X−X JCPDS )/(1−X JCPDS )×100 (但し、X=ΣI (00l) /ΣI total JCPDS :粉末X線回折の公的基準値を用いて計算
    したXの値、 total :XRDの全ピーク強度、I (00l) (00l)
    方向のピーク強度)を用いて算出されるC軸の配向度が
    93%以上である ことを特徴とする熱電素子材料。
  2. 【請求項2】 A=Na、B=Coであることを特徴と
    する請求項1に記載の熱電素子材料。
  3. 【請求項3】 少なくともCo の水酸化物又は酸化物の
    板状結晶とアルカリ金属塩とを含む混合物を前記水酸化
    物又は酸化物の板状結晶が一方向に配向するように成形
    し、この成形体を焼成するようにしたことを特徴とする
    請求項1に記載の熱電素子材料の製造方法。
  4. 【請求項4】 前記板状結晶は、{111}面が発達し
    たCo板状結晶である請求項3に記載の熱電素子
    材料の製造方法。
  5. 【請求項5】 前記板状結晶は、{001}面が発達し
    たCo(OH)板状結晶である請求項3に記載の熱電素
    子材料の製造方法。
  6. 【請求項6】 Coからなり、かつ、{111}
    面が発達した請求項1に記載の熱電素子材料を製造する
    ために用いられるCo板状結晶。
  7. 【請求項7】 Co塩水溶液にNaOH水溶液を加えて
    Co(OH)の沈殿を生成させる工程と、 前記沈殿を水溶液において空気酸化させる工程とを備
    えた請求項6に記載のCoO4板状結晶の製造方法。
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