JP4158389B2 - 高配向性多結晶セラミックス及びその製造方法、並びに熱電変換素子 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、高配向性多結晶セラミックス及びその製造方法、並びに熱電変換素子に関し、さらに詳しくは、太陽熱発電器、海水温度差熱電発電器、化石燃料熱電発電器、工場排熱や自動車排熱の回生発電器等の各種の熱電発電器、光検出素子、レーザーダイオード、電界効果トランジスタ、光電子増倍管、分光光度計のセル、クロマトグラフィーのカラム等の温度を制御する精密温度制御装置、恒温装置、冷暖房装置、冷蔵庫、時計用電源等に用いられる熱電変換素子を構成する熱電変換材料として好適な高配向性多結晶セラミックス及びその製造方法、並びに、このような高配向性多結晶セラミックスを熱電変換材料として用いた熱電変換素子に関する。
【0002】
【従来の技術】
熱電変換とは、セーベック効果やペルチェ効果を利用して、電気エネルギーを冷却や加熱に、また逆に熱エネルギーを電気エネルギーに直接変換することをいう。熱電変換は、(1)エネルギー変換の際に余分な老廃物を排出しない、(2)排熱の有効利用が可能である、(3)材料が劣化するまで継続的に発電を行うことができる、(4)モータやタービンのような可動装置が不要であり、メンテナンスの必要がない、等の特徴を有していることから、エネルギーの高効率利用技術として注目されている。
【0003】
熱と電気とを相互に変換できる材料、すなわち、熱電変換材料の特性を評価する指標としては、一般に、性能指数Z(=S2σ/κ、但し、S:ゼーベック係数、σ:電気伝導率、κ:熱伝導率)、又は、性能指数Zと、その値を示す絶対温度Tの積として表される無次元性能指数ZTが用いられる。ゼーベック係数は、1Kの温度変化によって生じる起電力の大きさを表す。熱電変換材料は、それぞれ固有のゼーベック係数を持っており、ゼーベック係数が正であるもの(p型)と、負であるもの(n型)に大別される。
【0004】
また、熱電変換材料は、通常、p型の熱電変換材料とn型の熱電変換材料とを接合した状態で使用される。このような接合対は、一般に、熱電変換素子と呼ばれている。熱電変換素子の性能指数は、p型熱電変換材料の性能指数Zp、n型熱電変換材料の性能指数Zn、並びに、p型及びn型熱電変換材料の形状に依存し、また、形状が最適化されている場合には、Zp及び/又はZnが大きくなるほど、熱電変換素子の性能指数が大きくなることが知られている。従って、性能指数の高い熱電変換素子を得るためには、性能指数Zp、Znの高い熱電変換材料を用いることが重要である。
【0005】
このような熱電変換材料としては、例えば、Bi−Te系、Pb−Te系、Si−Ge系、酸化物セラミックス系等の種々の材料が知られている。これらの中で、Bi−Te系及びPb−Te系の化合物半導体は、それぞれ、室温近傍及び300〜500℃の中温域において、優れた熱電特性(ZT〜0.8)を示す。しかしながら、これらの化合物半導体は、高温域での使用は困難である。また、材料中には高価な稀少元素(例えば、Te、Sb、Seなど)や、毒性の強い環境負荷物質(例えば、Te、Sb、Se、Pbなど)を含むという問題がある。
【0006】
一方、Si−Ge系の化合物半導体は、1000℃付近の高温域において優れた熱電特性(ZT〜1.0)を示し、また、材料中に環境負荷物質を含まないという特徴がある。しかしながら、Si−Ge系の化合物半導体は、高温大気中において長時間使用するためには、材料表面を保護する必要があり、熱的耐久性が低いという問題がある。
【0007】
これに対し、酸化物セラミックス系の熱電変換材料は、材料中に稀少元素や環境負荷物質を必ずしも含まない。また、高温大気中において長時間使用しても熱電特性の劣化が少なく、熱的耐久性に優れるという特徴がある。そのため、酸化物セラミックス系の熱電変換材料は、化合物半導体に代わる材料として注目されており、熱電特性の高い新材料やその製造方法について、従来から種々の提案がなされている。
【0008】
例えば、A.C.Massetらは、コバルトを含有する層状酸化物(以下、これを「コバルト層状酸化物」という。)の一種であるCa3Co4O9の多結晶体及び単結晶を作製し、その結晶構造と熱電特性の評価を行っている(A.C.Masset et al., Phys. Rev. B, 62(1), pp.166-175, 2000参照)。同文献には、Ca3Co4O9は、岩塩型の結晶構造を有するCa2CoO3層と、CdI2型の結晶構造を有するCoO2層が、所定の周期でc軸方向に積層された格子不整合層状酸化物である点が記載されている。
【0009】
また、同文献には、Ca3Co4O9の比抵抗に異方性があり、{00l}面内の比抵抗は、{00l}面に垂直な方向の比抵抗より格段に小さくなる点が記載されている。さらに、Ca3Co4O9単結晶の{00l}面方向のゼーベック係数は、300K近傍において約125μV/Kに達し、ゼーベック係数の温度依存性も小さい点が記載されている。
【0010】
なお、コバルト層状酸化物の「{00l}面」とは、熱電特性が高い面、すなわち、CoO2層と平行な面をいう。コバルトを含有する層状酸化物は、結晶構造が明らかになっていないものが多く、また、単位格子の取り方によって結晶軸及び結晶面の定義が異なるが、本発明においては、{00l}面を上述のように定義する。
【0011】
また、例えば、特開2001−19544号公報には、Bi2Sr2−xCaxCo2Ow、Bi2−yPbySr2Co2Ow、Bi2Sr2−zLazCo2Ow等の一般式(但し、0≦x≦2、0≦y≦0.5、0<z≦0.5)で表される組成を有し、層状の結晶構造を有し、かつ1.0×104S/m以上の電気伝導度を有する複合酸化物焼結体が開示されている。また、同公報には、Bi供給源、Sr供給源、Ca供給源、Co供給源等の原料を加圧成形し、この成形体を一軸加圧しながら酸素雰囲気中で加熱することによって原料の一部を部分溶融させた後、徐冷する複合酸化物の製造方法が開示されている。
【0012】
さらに、特開2000−269560号公報には、フラックス法で合成した平均粒径5mm、平均厚さ20μmのNaCo2O4結晶を金型成形した後、この成形体をホットプレスすることにより得られる複合酸化物集合体が開示されている。また、同公報には、スパッタリング法を用いて、基板上にNaCo2O4薄膜を形成させる複合酸化物の薄膜の製造方法が開示されている。
【0013】
【発明が解決しようとする課題】
Ca3Co4O9、Bi2Sr2−xCaxCo2Ow等のコバルト層状酸化物は、相対的に大きなゼーベック係数を有するp型の熱電変換材料であり、しかも、その熱電特性には、結晶方位に応じた異方性がある。従って、熱電特性の高い結晶面({00l}面)が一方向に配向した材料を用いれば、熱電特性の異方性を最大限に利用することができ、性能指数の向上が期待できる。また、これを用いた熱電変換素子の性能指数の向上も期待できる。
【0014】
しかしながら、CaCO3、Co3O4等の成分元素を含む単純化合物の混合物を仮焼し、これを成形・焼結する通常のセラミックス製造プロセスでは、熱電特性の高い結晶面が一方向に配向したコバルト層状酸化物の焼結体は得られない。
【0015】
一方、特開2001−19554号公報には、成形体を一軸加圧しながら原料の一部を部分溶融させた後、徐冷すると、冷却過程において再結晶が起こり、加圧面に平行な方向に沿って{00l}面が成長した結晶粒からなる焼結体が得られる点が記載されている。しかしながら、この方法では、再結晶によって所望の結晶が得られる物質系や組成のみに限られ、例えば、結晶化の際に分相や結晶構造の変化を生ずる系には適用できないという問題がある。
【0016】
また、特開2000−269560号公報に開示されているように、スパッタリング法によれば、基板の材質、スパッタリング条件等を最適化することによって、{00l}面が高い配向度で配向したNaCo2O4薄膜を基板上に形成することができる。しかしながら、スパッタリング法では、薄膜しか得られず、実用に耐えうる大きな断面積を有する熱電セラミックスを作製するのは困難である。一方、フラックス法で合成した粗大な板状粉末を単にホットプレスする方法では、高い配向度を有する熱電セラミックスを作製するのは困難である。
【0017】
さらに、熱電特性の高い結晶面を配向させるために、コバルト層状酸化物を単結晶化することも考えられる。しかしながら、単結晶は、製造コストが高いという問題がある。また、一般に、小さな単結晶は得られるが、熱電変換に用いるミリメートルオーダーサイズのバルク材料の作製は困難である。
【0018】
本発明が解決しようとする課題は、優れた熱電特性を示すコバルト層状酸化物からなり、かつ、高い性能指数を示す高配向性多結晶セラミックスを提供することにある。
【0019】
また、本発明が解決しようとする他の課題は、物質系によらず広範囲な系に適用でき、かつ、断面積の大きな焼結体を製造することが可能な高配向性多結晶セラミックスの製造方法を提供することにある。
【0020】
さらに、本発明が解決しようとする他の課題は、このような高配向性多結晶セラミックスを熱電変換材料として用いた熱電変換素子を提供することにある。
【0021】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために本発明に係る高配向性多結晶セラミックスは、CoO2層からなる第1副格子と、擬岩塩構造層からなる第2副格子とが交互に堆積した構造を有するコバルト層状酸化物の多結晶体からなり、前記コバルト層状酸化物の{00l}面のロッキングカーブ半値幅が、15度以下であることを要旨とする。
【0022】
本発明に係る高配向性多結晶セラミックスは、優れた熱電特性を有するコバルト層状酸化物の多結晶体からなり、しかも極めて高い{00l}面配向度を有しているので、{00l}面が配向している方向と平行な方向の性能指数は、同一組成を有する無配向焼結体の性能指数より高い値を示す。
【0023】
また、本発明に係る高配向性多結晶セラミックスの製造方法は、CoO 2 層からなる第1副格子と、擬岩塩構造層からなる第2副格子とが交互に堆積した構造を有するコバルト層状酸化物のCoO2層と格子整合性がある結晶面Aを備えた第1粉末を含む原料を調製する原料調製工程と、前記結晶面Aのロットゲーリング法による配向度が55%以上となるように、前記原料を成形する成形工程と、該成形工程で得られた成形体を加熱し、焼結させる焼結工程とを備えていることを要旨とする。
【0024】
この場合、前記第1粉末は、前記コバルト層状酸化物の前駆体であっても良く、あるいは、前記コバルト層状酸化物であっても良い。また、前記第1粉末は、その発達面が、前記結晶面Aである異方形状粉末が好ましい。
【0025】
コバルト層状酸化物からなる配向焼結体を製造する場合において、焼結体中のコバルト層状酸化物の{00l}面の配向度は、成形体に含まれる第1粉末の配向度に強く依存する。そのため、成形体中における第1粉末の配向度をある一定の値以上とすれば、各結晶粒の{00l}面が極めて高い配向度で配向した高配向性多結晶セラミックスが得られる。
【0026】
さらに、本発明に係る熱電変換素子は、熱電変換材料として本発明に係る高配向性多結晶セラミックスを用いたことを要旨とする。本発明に係る高配向性多結晶セラミックスは、同一組成を有する無配向焼結体より高い性能指数を有しているので、これを用いた熱電変換素子は、同一組成を有する無配向焼結体を用いた熱電変換素子よりも高い性能指数を示す。
【0027】
【発明の実施の形態】
以下に本発明の実施の形態について詳細に説明する。本発明に係る高配向性多結晶セラミックスは、コバルト層状酸化物の多結晶体からなり、コバルト層状酸化物の{00l}面のロッキングカーブ半値幅が、15度以下であることを特徴とする。
【0028】
ここで、「コバルト層状酸化物」とは、構造は明確にされていないが、CoO2層からなる第1副格子と、CoO2層とは異なる層からなる第2副格子とが所定の周期で堆積した層状化合物、すなわち、CoO2層を副格子とする層状化合物をいう。
【0029】
第1副格子は、1層又は2層以上のCoO2層からなる。また、「CoO2層」とは、正八面体の中心に1個のCo原子があり、かつ、その頂点に合計6個の酸素原子があるCoO6八面体が、酸素を共有する形で二次元的に連結したものをいう。この場合、CoO2層に含まれるCo原子の一部は、他の金属元素(例えば、Cu、Sn、Mn、Ni、Fe、Zr、Cr等)に置換されていても良い。
【0030】
一方、第2副格子は、CoO2層とは異なる層であれば良く、その組成や構造については、特に限定されるものではない。すなわち、第2副格子は、1種類の層からなるものであっても良く、あるいは、組成や副格子構造の異なる2種以上の層が規則的又は不規則的に組み合わされたものであっても良い。但し、高い熱電特性を得るためには、第2副格子は、岩塩構造又は歪んだ岩塩構造を有するもの(本発明において、これらを「擬岩塩構造層」という。)が特に好適である。
【0031】
また、第1副格子と第2副格子は、交互に堆積していれば良く、その堆積周期は、特に限定されるものではない。すなわち、コバルト層状酸化物は、1層又は2層以上のCoO2層(第1副格子)と、1層又は2層以上の他の層(第2副格子)とが、短周期もしくは長周期で規則的に堆積したものであっても良く、あるいは、これらが不規則的に堆積したものであっても良い。
【0032】
コバルト層状酸化物としては、具体的には、Ca3Co4O9、Bi2Ca2Co2O9、Bi2Sr2Co2O9、Bi2Ba2Co2O9等、及び、これらの層状酸化物を構成する陽イオン元素の一部が他の元素に置換された層状酸化物が好適な一例として挙げられる。これらの中でも、カルシウムを含有するコバルト層状酸化物(以下、これを「カルシウムコバルト層状酸化物」という。)であって、次の化1の一般式で表されるものは、高い熱電特性を有しているので、結晶方位を一方向に揃えることによって、高い性能指数を有する熱電変換材料となる。
【0033】
【化1】
{(Ca1−xAx)2CoO3+α}(CoO2+β)y
(但し、Aは、アルカリ金属、アルカリ土類金属及びBiから選ばれる1種又は2種以上の元素、0≦x≦0.3、0.5≦y≦2.0、0.85≦{3+α+(2+β)y}/(3+2y)≦1.15)
【0034】
なお、化1の式において、「0.85≦{3+α+(2+β)y}/(3+2y)≦1.15」は、基本組成({(Ca1−xAx)2CoO3}(CoO2)y )を有するカルシウムコバルト層状酸化物に含まれる酸素の化学量論量(3+2y)に対し、最大で±15atm%の範囲で酸素が過剰となったり、あるいは、酸素の欠損を生ずる場合があることを示す。この場合、増減する酸素は、第1副格子に含まれる酸素(β)又は第2副格子に含まれる酸素(α)のいずれか一方であっても良く、あるいは、双方の酸素であっても良い。
【0035】
化1の式に示すカルシウムコバルト層状酸化物において、Caの一部をアルカリ金属、アルカリ土類金属及び/又はBiからなる置換元素Aで置換すると、層状酸化物の電気伝導度が向上するという効果がある。但し、置換元素AによるCaの置換量が過大になると、大気中の水分と反応するなど化学的に不安定になるので、置換量は30atm%以下が好ましい。
【0036】
また、化1の式に示すカルシウムコバルト層状酸化物において、第1副格子及び/又は第2副格子に含まれるCoの一部をCu、Sn、Mn、Ni、Fe、Zr及び/又はCr(以下、これらを「置換元素C」という。)で置換しても良い。Coの一部を置換元素Cで置換すると、層状酸化物のゼーベック係数及び/又は電気伝導度が向上するという効果がある。この場合、置換元素CによるCoの置換量は、25atm%以下が好ましい。
【0037】
高い熱電特性を示すコバルト層状酸化物の第2の具体例は、次の化2の一般式で表されるものからなる。化2の式で表されるコバルト層状酸化物もまた、結晶方位を一方向に揃えることによって、高い性能指数を有する熱電変換材料となる。
【0038】
【化2】
(Bi1−xーyBxCoyO1+α)(CoO2+β)z
(但し、Bは、アルカリ金属及びアルカリ土類金属から選ばれる1種又は2種以上の元素、0.2≦x≦0.8、0≦y<0.5、0.2≦x+y≦1、0.25≦z≦0.5、0.85≦{1+α+(2+β)z}/(1+2z)≦1.15)
【0039】
なお、化2の式において、「0.85≦{1+α+(2+β)z}/(1+2z)≦1.15」は、基本組成( (Bi1−xーyBxCoyO)(CoO2)z)を有するコバルト層状酸化物に含まれる酸素の化学量論量(1+2z)に対し、最大で±15atm%の範囲で酸素が過剰となったり、あるいは、酸素の欠損を生ずる場合があることを示す。この場合、増減する酸素は、第1副格子に含まれる酸素(β)又は第2副格子に含まれる酸素(α)のいずれか一方であっても良く、あるいは、双方の酸素であっても良い。
【0040】
また、化2の式に示すコバルト層状酸化物において、第1副格子及び/又は第2副格子に含まれるCoの一部は、置換元素Cで置換されていても良い。Coの一部を置換元素Cで置換すると、層状酸化物のゼーベック係数及び/又は電気伝導度が向上するという効果がある。この場合、置換元素CによるCoの置換量は、25atm%以下が好ましい。
【0041】
「ロッキングカーブ」とは、単色のX線を一定方向から試料に入射させ、試料をブラッグ角の付近で回転させたときに得られる回折強度の角度変化を表す曲線をいう。多結晶体のある1つの面(測定面)に単色のX線を入射させ、特定の結晶面に対応するX線回折ピークのロッキングカーブを測定すると、測定面に対する特定の結晶面の配向度を知ることができる。一般に、ロッキングカーブの半値幅が狭くなるほど、特定の結晶面が測定面に対して高い配向度で配向していることを示す。
【0042】
また、多結晶体を構成する各結晶粒の特定の結晶面の配向の程度を表す指標であって、ロッキングカーブ半値幅以外のものとしては、例えば、後述するロットゲーリング(Lotgering)法による平均配向度Q(HKL)が知られている。ロットゲーリング法による平均配向度Q(HKL)は、中〜高配向度領域における配向度を表す指標として適している。一方、ロッキングカーブ半値幅は、ロットゲーリング法による平均配向度Q(HKL)ではほとんど区別が付かない高配向度領域における配向度を詳細に表す指標として適している。
【0043】
本発明に係る高配向性多結晶セラミックスにおいて、高い熱電特性を得るためには、配向面に対して測定されたコバルト層状酸化物の{00l}面のロッキングカーブ半値幅は、小さい程良い。{00l}面のロッキングカーブ半値幅は、具体的には、15度以下が好ましく、さらに好ましくは、12度以下である。
【0044】
なお、{00l}面に対応するX線回折ピークは、通常、複数本現れる。これらの内、ロッキングカーブ半値幅の測定に用いるピークは、コバルト層状酸化物の組成、結晶構造等に応じて、最適なものを選択する。一般的には、少なくとも最大の{00l}面ピークを用いて測定されたロッキングカーブ半値幅が、上述の範囲にあればよい。また、相対的に大きな{00l}面ピークが複数本ある場合には、少なくとも高角側にある{00l}面ピークを用いて測定されたロッキングカーブ半値幅が、上述の範囲にあればよい。
【0045】
例えば、化1の式で表されるコバルト層状酸化物の場合、(004)面のX線回折ピークが用いられる。一方、化2の式で表されるコバルト層状酸化物の場合、(0010)面のX線回折ピークが用いられる。
【0046】
次に、本発明に係る高配向性多結晶セラミックスの作用について説明する。圧電定数など、ある特性について結晶方位に応じた異方性がある材料において、特定の結晶方位を配向させると、配向方向の特性が向上することは知られている。この場合、配向度が高くなるほど特性は向上するが、配向度がある一定の値を越えると、特性は飽和し、それ以上向上しないのが一般的である。
【0047】
しかしながら、コバルト層状酸化物からなる配向焼結体の場合、その熱電特性は、ロットゲーリング法による配向度ではほとんど区別が付かない高配向度領域(具体的には、ロットゲーリング法による{00l}面の配向度が99%以上の領域)においても飽和せず、配向度の僅かな変動が、熱電特性の大きな変動を引き起こす。これは、配向度の僅かな変動によって、配向方向の電気伝導率σが大きく変動するためと考えられる。
【0048】
本発明に係る高配向性多結晶セラミックスは、高い熱電特性を示すコバルト層状酸化物の多結晶体からなり、しかも、{00l}面の配向度が極めて高くなっている。そのため、本発明に係る高配向性多結晶セラミックスは、同一組成を有する無配向セラミックス及び低配向度の配向セラミックスより高い熱電特性を示す。また、本発明に係る高配向性多結晶セラミックスを用いた熱電変換素子は、同一組成を有する無配向セラミックス及び低配向度の配向セラミックスを用いた熱電変換素子よりも高い性能指数を示す。
【0049】
次に、本発明の第1の実施の形態に係る高配向性多結晶セラミックスの製造方法について説明する。コバルト層状酸化物のような複雑な組成を有するセラミックスは、通常、成分元素を含む単純化合物を化学量論比になるように配合し、この混合物を成形・仮焼した後に解砕し、次いで解砕粉を再成形・焼結する方法によって製造される。しかしながら、このような方法では、各結晶粒の特定の結晶面が特定の方向に配向した配向焼結体を得るのは極めて困難である。
【0050】
本実施の形態においては、この問題を解決するために、特定の条件を満たす針状、板状等の異方形状粉末を成形体中に相対的に高い配向度で配向させ、この異方形状粉末をテンプレート又は反応性テンプレートとして用いてコバルト層状酸化物の成長及び/又は合成、並びにその焼結を行わせ、これによって多結晶体を構成する各結晶粒の{00l}面を極めて高い配向度で一方向に配向させた点に特徴がある。本実施の形態において、異方形状粉末には、以下の条件を満たすものが用いられる。
【0051】
第1に、異方形状粉末には、成形時に一定の方向に配向させることが容易な形状を有しているものが用いられる。そのためには、異方形状粉末の平均アスペクト比(=異方形状粉末の最大寸法/最小寸法の平均値)は、3以上であることが望ましい。平均アスペクト比が3未満であると、成形時に異方形状粉末を一方向に配向させるのが困難となる。異方形状粉末の平均アスペクト比は、さらに好ましくは5以上である。
【0052】
一般に、異方形状粉末の平均アスペクト比が大きくなるほど、異方形状粉末の配向が容易化される傾向がある。但し、平均アスペクト比が過大になると、後述する原料調製工程において異方形状粉末が破砕され、異方形状粉末が高い配向度で配向した成形体が得られない場合がある。従って、異方形状粉末の平均アスペクト比は、100以下が好ましく、さらに好ましくは20以下である。
【0053】
また、異方形状粉末の平均粒径(=異方形状粉末の最大寸法の平均値)は、0.05μm以上20μm以下が好ましい。異方形状粉末の平均粒径が0.05μm未満であると、成形時に作用させる剪断応力によって異方形状粉末を一定の方向に配向させるのが困難になる。一方、異方形状粉末の平均粒径が20μmを超えると、焼結性が低下する。異方形状粉末の平均粒径は、さらに好ましくは、0.1μm以上5μm以下である。
【0054】
第2に、異方形状粉末には、その発達面(最も広い面積を占める面)が、コバルト層状酸化物のCoO2層と格子整合性を有しているものが用いられる。所定の形状を有する異方形状粉末であっても、その発達面がコバルト層状酸化物のCoO2層と格子整合性を有していない場合には、本発明に係る高配向性多結晶セラミックスを製造するためのテンプレートとして機能しない場合がある。
【0055】
格子整合性の良否は、異方形状粉末の発達面の格子寸法とコバルト層状酸化物のCoO2層の格子寸法の差の絶対値を異方形状粉末の発達面の格子寸法で割った値(以下、この値を「格子整合率」という。)で表すことができる。格子整合率が小さくなるほど、その異方形状粉末は、良好なテンプレートとして機能することを示す。極めて高い配向度を有する高配向性多結晶セラミックスを製造するためには、異方形状粉末の格子整合率は、20%以下が好ましく、さらに好ましくは10%以下である。
【0056】
第3に、異方形状粉末は、必ずしもコバルト層状酸化物そのものである必要はなく、後述する第2粉末と反応して、コバルト層状酸化物を生成するもの(以下、これを「コバルト層状酸化物の前駆体」という。)であっても良い。従って、異方形状粉末は、コバルト層状酸化物に含まれる陽イオン元素の内のいずれか1種以上の元素を含む化合物あるいは固溶体の中から選ばれることになる。
【0057】
以上のような条件を満たす異方形状粉末であれば、いずれも本発明に係る高配向性多結晶セラミックスを製造するためのテンプレート又は反応性テンプレートとして機能する。このような条件を満たす材料としては、具体的には、作製しようとする高配向性多結晶セラミックスと同一組成を有するコバルト層状酸化物、あるいは、Co(OH)2、CoO、Co3O4、CoO(OH)等のコバルト化合物が好適である。これらは、いずれも、コバルト層状酸化物のCoO2層と格子整合性を有する結晶面Aを発達面とする板状粉末を比較的容易に合成することができる。
【0058】
{00l}面を発達面とするコバルト層状酸化物の板状粉末は、当然に本発明に係る高配向性多結晶セラミックスを製造するためのテンプレートとして機能する。このような板状粉末は、その構成元素を含む塩類を水に溶解し、この水溶液にアルカリ水溶液(例えば、NaOH、KOH、アンモニア水等)を滴下する沈殿法、その構成元素を含む酸化物をフラックスと共に加熱するフラックス法、その構成元素を含む酸化物をオートクレーブ中で加熱する水熱法等、液相が関与した合成法を用いて合成することができる。また、この時、合成条件を適宜制御すれば、板状粉末の形状制御も比較的容易に行うことができる。
【0059】
Co(OH)2は、CdI2型の結晶構造を有している。Co(OH)2の{001}面は、他の結晶面に比して表面エネルギーが小さいので、{001}面を発達面とする板状粉末の製造は比較的容易である。また、Co(OH)2の{001}面は、コバルト層状酸化物のCoO2層との間に極めて良好な格子整合性を有している。そのため、{001}面を発達面とするCo(OH)2板状粉末は、本発明に係る高配向性多結晶セラミックスを製造するための反応性テンプレートとして特に好適である。
【0060】
{001}面を発達面とするCo(OH)2板状粉末は、沈殿法により合成することができる。具体的には、CoCl2、Co(NO3)2等のコバルト塩を含む水溶液中に、アルカリ水溶液(NaOH、KOH、アンモニア水等)を滴下すればよい。これにより、水溶液中に、{001}面が発達したCo(OH)2の板状粉末を析出させることができる。また、この時、合成条件を適宜制御すれば、板状粉末の形状制御も比較的容易に行うことができる。
【0061】
また、CoOは、岩塩型の結晶構造を有し、その{111}面は、コバルト層状酸化物のCoO2層との間に極めて良好な格子整合性を有している。そのため、{111}面を発達面とするCoO板状粉末は、本発明に係る高配向性多結晶セラミックスを製造するための反応性テンプレートとして好適である。
【0062】
沈殿法でCo(OH)2粉末を合成した後、この水溶液を大気中で長時間撹拌すると、Co(OH)2板状粉末が徐々に酸化される。この時、酸化条件を最適化すると、Co(OH)2の{001}面がCoOの{111}面として承継され、{111}面を発達面とするCoO板状粉末が得られる。
【0063】
また、Co3O4は、スピネル型の結晶構造を有し、その{111}面は、コバルト層状酸化物のCoO2層との間に極めて良好な格子整合性を有している。そのため、{111}面を発達面とするCo3O4板状粉末は、本発明に係る高配向性多結晶セラミックスを製造するための反応性テンプレートとして好適である。
【0064】
次に、上述した板状粉末をテンプレート又は反応性テンプレートとして用いた本実施の形態に係る高配向性多結晶セラミックスの製造方法について説明する。本実施の形態に係る製造方法は、原料調製工程と、成形工程と、焼結工程とを備えている。
【0065】
初めに、原料調製工程について説明する。原料調製工程は、上述したコバルト層状酸化物のCoO2層と格子整合性を有する「結晶面A」を備えた第1粉末を含む原料を調製する工程である。本実施の形態においては、第1粉末として、上述した板状粉末、すなわち発達面が結晶面Aである板状粉末が用いられる。この場合、板状粉末は、1種類の化合物からなるものであって良く、あるいは、2種以上の化合物の混合物であっても良い。
【0066】
また、板状粉末がコバルト層状酸化物の前駆体である場合、板状粉末と第2粉末とを所定の比率で混合する。「第2粉末」とは、前駆体である板状粉末と反応してコバルト層状酸化物となる化合物をいう。第2粉末の組成及び配合比率は、合成しようとするコバルト層状酸化物の組成、及び、反応性テンプレートとして使用する板状粉末の組成に応じて定まる。また、第2粉末の形態については、特に限定されるものではなく、水酸化物、酸化物粉末、複合酸化物粉末、炭酸塩、硝酸塩、シュウ酸塩、酢酸塩などの塩、アルコキシド等を用いることができる。
【0067】
例えば、コバルト層状酸化物が化1の一般式で表されるカルシウムコバルト層状酸化物であり、板状粉末として、Co(OH)2、CoO、Co3O4及び/又はCoO(OH)を用いる場合には、第2粉末として、Ca等のアルカリ土類金属元素を含有する第2化合物を用いる。また、コバルト層状酸化物がアルカリ土類金属元素及びCo以外の第3元素(この場合は、1種若しくは2種以上のアルカリ金属元素及び/又はBi)を含む場合には、第2粉末として、これらを含有する第3化合物を用いる。
【0068】
第2化合物は、焼成によってアルカリ土類金属元素の酸化物を形成し得るものであればよく、アルカリ土類金属元素を含有する酸化物、水酸化物、塩、アルコキシド等、種々の化合物を用いることができる。
【0069】
Caを含有する第2化合物としては、具体的には、酸化カルシウム(CaO)、水酸化カルシウム(Ca(OH)2)、塩化カルシウム(CaCl2)、炭酸カルシウム(CaCO3)、硝酸カルシウム(Ca(NO3)2)、カルシウムジメトキシド(Ca(OCH3)2)、カルシウムジエトキシド(Ca(OC2H5)2)、カルシウムジイソプロポキシド(Ca(OC3H7)2)等が好適である。また、第2化合物は、上述した化合物の内、いずれか1種類のみを用いても良く、あるいは、2種以上の化合物を組み合わせて用いても良い。
【0070】
第2化合物が固体である場合又は固体状態のまま混合を行う場合、第2化合物の平均粒径は、10μm以下が好ましい。平均粒径が10μmを超えると、反応が不均一となったり、焼結性が低下するので好ましくない。第2化合物の平均粒径は、さらに好ましくは5μm以下である。第2化合物の平均粒径は、成形性や取扱性が低下しない限りにおいて、小さいほど良い。
【0071】
第3化合物は、焼成によって第3元素を含む酸化物を形成し得るものであればよく、第3元素を含有する酸化物、水酸化物、塩、アルコキシド等、種々の化合物を用いることができる。
【0072】
Naのみを含有する第3化合物としては、具体的には、炭酸ナトリウム(Na2CO3)、硝酸ナトリウム(NaNO3)、ナトリウムイソプロポキシド(Na(OC3H7))等が好適である。
【0073】
Kのみを含有する第3化合物としては、具体的には、炭酸カリウム(K2CO3)、酢酸カリウム(CH3COOK)、硝酸カリウム(KNO3)、カリウムイソプロポキシド(K(OC3H7))等が好適である。
【0074】
Biのみを含有する第3化合物としては、具体的には、酸化ビスマス(Bi2O3)、硝酸ビスマス(Bi(NO3)3)、塩化ビスマス(BiCl3)、水酸化ビスマス(Bi(OH)3)、ビスマストリイソプロポキシド(Bi(OC3H7)3)、Bi金属単体等が好適である。
【0075】
さらに、第3化合物は、2種以上の第3元素を含む複合化合物であっても良い。また、第2粉末として、上述した第3化合物の内、1種類のみを用いても良く、あるいは、2種以上の第3化合物を組み合わせて用いても良い。
【0076】
なお、第3化合物が固体である場合又は固体状態のまま混合を行う場合、第3化合物の平均粒径は、10μm以下が好ましく、さらに好ましくは5μm以下である点は、第2化合物と同様である。
【0077】
また、例えば、コバルト層状酸化物が、化1の一般式で表され、かつ、Coの一部が置換元素Cで置換されたカルシウムコバルト層状酸化物であり、板状粉末として、Co(OH)2、CoO、Co3O4及び/又はCoO(OH)を用いる場合には、第2粉末として、上述した第2化合物及び第3化合物に加えて、置換元素Cを含有する1種又は2種以上の第4化合物を用いれば良い。
【0078】
第4化合物は、焼成によって置換元素Cを含む酸化物を形成し得るものであればよく、置換元素Cを含有する酸化物、水酸化物、塩、アルコキシド等、種々の化合物を用いることができる。Cuを含有する第4化合物としては、具体的には、酸化銅(CuO、Cu2O)、炭酸銅(CuCO3)、塩化銅(CuCl、CuCl2)、Cu金属単体等が好適な一例として挙げられる。また、第4化合物は、上述した化合物の内、いずれか1種類のみを用いても良く、あるいは、2種以上の化合物を組み合わせて用いても良い。
【0079】
なお、第4化合物が固体である場合又は固体状態のまま混合を行う場合、第4化合物の平均粒径は、10μm以下が好ましく、さらに好ましくは5μm以下である点は、第2化合物及び第3化合物と同様である。
【0080】
また、例えば、コバルト層状酸化物が化2の一般式で表される組成を有し、板状粉末として、Co(OH)2、CoO、Co3O4及び/又はCoO(OH)を用いる場合には、第2粉末として、アルカリ土類金属元素を含有する1種又は2種以上の第2化合物、Biを含有する1種又は2種以上の第3化合物、及び、アルカリ金属を含有する1種又は2種以上の第3化合物を用いる。
【0081】
さらに、コバルト層状酸化物が、化2の一般式で表され、かつ、Coの一部が置換元素Cで置換されたものであり、板状粉末として、Co(OH)2、CoO、Co3O4及び/又はCoO(OH)を用いる場合には、第2粉末として、上述した第2化合物及び第3化合物に加えて、置換元素Cを含有する1種又は2種以上の第4化合物を用いれば良い。他の組成を有するコバルト層状酸化物からなる結晶配向セラミックスを製造する場合も同様である。
【0082】
なお、原料調製工程においては、所定の比率で配合された板状粉末及び第2粉末に対して、さらに、作製しようとするコバルト層状酸化物と同一組成を有する非板状の微粉(以下、これを「第3粉末」という。)を添加しても良い。原料中に第3粉末を添加すると、焼結体密度が向上するという効果がある。
【0083】
この場合、第3粉末の配合比率が過大になると、必然的に原料全体に占める板状粉末の配合比率が小さくなり、焼結体中のc面の配向度が低下するおそれがある。従って、第3粉末の配合比率は、要求される{00l}面の配向度が得られるように、最適な値を選択するのが好ましい。
【0084】
また、板状粉末に対して、第2粉末及び/又は第3粉末を添加する場合、これらの混合は、乾式で行っても良く、あるいは、水、アルコール等の適当な分散媒を加えて湿式で行っても良い。さらに、この時、必要に応じてバインダ及び/又は可塑剤を加えても良い。
【0085】
次に、成形工程について説明する。成形工程は、結晶面Aのロットゲーリング法による配向度が所定の値以上となるように、原料を成形する工程である。ロットゲーリング(Lotgering)法による「配向度」とは、次の数1の式で表される平均配向度Q(HKL)をいう。
【0086】
【数1】
【0087】
なお、数1の式において、ΣI(hkl)は、配向成形体について測定された測定対象物(この場合は、第1粉末)のすべての結晶面(hkl)のX線回折強度の総和であり、ΣI0(hkl)は、配向成形体と同一組成を有する無配向成形体について測定された測定対象物のすべての結晶面(hkl)のX線回折強度の総和である。また、Σ’I(HKL)は、配向成形体について測定された測定対象物の結晶学的に等価な特定の結晶面(HKL)のX線回折強度の総和であり、Σ’I0(HKL)は、配向成形体と同一組成を有する無配向成形体について測定された測定対象物の結晶学的に等価な特定の結晶面(HKL)のX線回折強度の総和である。
【0088】
従って、成形体中に含まれる第1粉末が無配向である場合には、平均配向度Q(HKL)は0%となる。また、成形体中に含まれるすべての第1粉末の特定の結晶面(HKL)が測定面に対して平行に配向している場合には、平均配向度Q(HKL)は100%となる。
【0089】
高い熱電特性を示す高配向性多結晶セラミックスを得るためには、成形体中に含まれる第1粉末の結晶面Aの配向度は、高いほど良い。結晶面Aのロットゲーリング法による配向度は、55%以上が好ましく、さらに好ましくは、70%以上、さらに好ましくは、80%以上である。
【0090】
結晶面A(すなわち、板状粉末の発達面)の配向度が高い成形体を得る方法には、具体的には、以下のような方法がある。第1の方法は、原料調製工程で得られた原料を直接、圧延(ロールプレス)する方法である。この場合、圧延温度、圧下率等の圧延条件を最適化することによって、結晶面Aの配向度を制御することができる。一般に、圧延温度が高くなるほど、及び/又は、圧下率が大きくなるほど、結晶面Aの配向度を高くすることができる。なお、圧下率とは、次式により定義される値をいう。
圧下率=(圧延前のシートの厚み−圧延後のシートの厚み)/圧延前のシートの厚み×100(%)
【0091】
第2の方法は、ドクターブレード(テープキャスト)法、押出法、プレス成形等、板状粉末に強い剪断力が作用する方法を用いて成形体を作製し、次いで得られた成形体を圧延(ロールプレス)する方法である。特に、ドクターブレード法又は押出法を用いてテープ状に成形し、これを直接、又は所定枚数積層圧着した後、圧延する方法が好適である。ドクターブレード法又は押出法は、板状粉末に相対的に強い剪断力が作用するので、テープ面に対して板状粉末が平行に配向したテープを得ることができる。このテープをさらに圧延すると、板状粉末の配向度をさらに高めることができる。
【0092】
この場合も、圧延温度、圧下率等の圧延条件を最適化することによって、結晶面Aの配向度を制御することができる。例えば、ドクターブレード法を用いて得られるテープの積層体を圧延する場合、圧下率は、10%以上が好ましく、さらに好ましくは、30%以上である。また、50%を超える圧下率で圧延すると成形体が薄くなるので、このような場合には、厚さの低下を見込んで予め厚い成形体を用意するか、あるいは、積層圧着−圧延を所定回数繰り返すのが好ましい。
【0093】
圧延は、室温で行っても良く、あるいは、バインダの分解、変質等が生じない温度以下の温間で行っても良い。この際、圧延ロールを加熱しても良いし、あらかじめ成形体を加熱しても良いし、その両方でも良い。室温で圧延を行う場合であっても、板状粉末の配向度を高めることができるが、温間で圧延を行うと、バインダが軟化するために、板状粉末の配向が容易化する。一般に、圧下率が同一である場合、圧延温度が高くなるほど、テープ又はテープの積層体にクラックが生じにくくなり好ましい。温間で圧延する場合、圧延温度は、40℃以上が好ましく、さらに好ましくは、60℃以上であるが、用いるバインダーに対して最適な温度を選択すれば良い。
【0094】
次に、焼結工程について説明する。焼結工程は、成形工程で得られた成形体を加熱し、焼結させる工程である。板状粉末(第1粉末)、並びに、必要に応じて添加された第2粉末及び第3粉末を含む成形体を所定の温度に加熱すると、これらの反応によってコバルト層状酸化物が成長及び/又は生成すると同時に、コバルト層状酸化物の焼結も進行する。
【0095】
コバルト層状酸化物の場合、焼結は、通常、800℃以上1200℃以下で行われる。最適な加熱温度は、反応及び焼結が効率よく進行し、かつ異相が生成しないように、使用する板状粉末、第2粉末、作製しようとするコバルト層状酸化物の組成等に応じて選択する。例えば、Co(OH)2板状粉末とCaCO3から、Ca3Co4O9組成を有する高配向性多結晶セラミックスを作製する場合、加熱温度は、930℃以下が好ましい。また、加熱時間は、所定の焼結体密度が得られるように、加熱温度に応じて最適な値を選択すればよい。
【0096】
加熱方法としては、室温から所定温度に徐々に昇温する方法や、あらかじめ所定温度に加熱した炉内に配向成形体を導入し、一気に加熱する方法などがあり、作製しようとするコバルト層状酸化物の組成などに応じて、最適な方法を選択すればよい。また、焼結は、常圧で行っても良く、あるいは、ホットプレス、ホットフォージング、HIP等、加圧下で行っても良い。特に、ホットプレス法は、配向度の極めて高い焼結体を得る方法として好適である。
【0097】
また、焼結工程は、酸素が存在する雰囲気下(すなわち、大気中又は酸素中)で行うのが好ましい。酸素を含まない雰囲気下で成形体を加熱すると、コバルト層状酸化物に含まれる酸素量が減少し、熱電特性が低下する場合があるので好ましくない。特に、酸素中において成形体を加熱すると、高い熱電特性を有する高配向性多結晶セラミックスが得られる。
【0098】
なお、バインダを含む成形体の場合、焼結工程の前に、脱脂を主目的とする熱処理を行っても良い。この場合、脱脂の温度は、特に限定されるものではなく、少なくともバインダを熱分解させるに十分な温度であれば良い。但し、出発原料として、Na等の低融点金属を含む化合物を用いる場合には、Na等の蒸発を防ぐために、500℃以下で脱脂を行うのが好ましい。また、脱脂は、酸素が存在する雰囲気下で行うのが好ましい。
【0099】
また、配向成形体の脱脂を行うと、配向成形体中の板状粉末の配向度が低下したり、あるいは、反応が進行して配向成形体が膨張する場合がある。このような場合には、脱脂を行った後、焼結を行う前に、配向成形体に対して、さらに静水圧(CIP)処理を行うのが好ましい。脱脂後の配向成形体に対して、さらに静水圧処理を行うと、脱脂に伴う配向度の低下、あるいは、配向成形体の密度低下に起因する焼結体密度の低下を抑制できるという利点がある。
【0100】
次に、本実施の形態に係る高配向性多結晶セラミックスの製造方法の作用について説明する。板状粉末、並びに、必要に応じて添加された第2粉末及び第3粉末を含む原料を調製し、これを板状粉末に対して剪断応力が作用するような成形方法を用いて成形すると、板状粉末が成形体中に配向する。このような配向成形体を所定の温度で加熱すると、板状粉末、第2粉末及び第3粉末が反応し、コバルト層状酸化物が成長及び/又は生成する。
【0101】
この時、板状粉末の発達面とコバルト層状酸化物のCoO2層との間には格子整合性があるので、板状粉末の発達面が、コバルト層状酸化物の{00l}面として承継される。その結果、焼結体中には、{00l}面が一方向に配向した状態で、コバルト層状酸化物の板状結晶が成長する。
【0102】
このような工程を経て得られた焼結体中のコバルト層状酸化物の{00l}面の配向度(特に、高配向度領域における{00l}面の配向度)は、成形体中に含まれる板状粉末の配向度に強く依存する。そのため、板状粉末に強い剪断力を作用させることによって、板状粉末の配向度が所定の値以上である成形体を作製し、これを焼結すれば、各結晶粒の{00l}面が極めて高い配向度で配向した高配向性多結晶セラミックスが得られる。
【0103】
本実施の形態に係る製造方法は、通常のセラミックスプロセスをそのまま用いることができるので、低コストである。また、配向度及び組成が均一であり、しかも断面積の大きな高配向性多結晶セラミックスが得られる。また、この方法により得られる高配向性多結晶セラミックスは、多結晶体であるので、単結晶より破壊靱性が大きく、また、粒界や空孔でフォノンが散乱されるので、単結晶より熱伝導率が低くなる。さらに、この方法により得られる高配向性多結晶セラミックスは、電気伝導度の高い{00l}面が極めて高い配向度で配向しているので、無配向セラミックスより高い熱電特性を示す。そのため、これを熱電変換材料として用いれば、耐久性及び熱電特性に優れた熱電変換素子を作製することができる。
【0104】
次に、本発明の第2の実施の形態に係る高配向性多結晶セラミックスの製造方法について説明する。本実施の形態に係る製造方法は、成形方法として、第1粉末が含まれる原料を大きな磁場中で成形する磁場中成形法を用いた点を特徴とする。
【0105】
この場合、第1粉末は、作製しようとする高配向性多結晶セラミックスと同一組成を有するコバルト層状酸化物であってもよく、あるいは、コバルト層状酸化物の前駆体であっても良い。
【0106】
また、第1粉末は、コバルト層状酸化物のCoO2層と格子整合性を有する結晶面Aを有していれば良い。また、結晶面Aの配向を容易化するためには、第1粉末は、発達面が結晶面Aである異方形状粉末が好ましい。特に、上述したコバルト層状酸化物又はCo(OH)2等のコバルト化合物からなる板状粉末が、第1粉末として好適である。なお、その他の点については、第1の実施の形態に係る製造方法と同一であるので、説明を省略する。
【0107】
第1粉末を含む原料に対して強力な磁場を作用させながら成形する場合において、磁場の組み合わせを最適化すると、結晶面Aの配向度が所定の値以上である配向成形体が得られる。このような成形体を所定温度に加熱すると、配向した結晶面Aに対して平行にコバルト層状酸化物の板状結晶が成長及び/又は生成する。その結果、{00l}面が極めて高い配向度で配向した高配向性多結晶セラミックスが得られる。
【0108】
本実施の形態に係る製造方法によれば、{00l}面の配向度が極めて高く、配向度及び組成が均一であり、しかも相対的に断面積の大きな高配向性多結晶セラミックスが低コストで得られる。また、これを熱電変換材料として用いれば、耐久性及び熱電特性に優れた熱電変換素子を作製することができる。
【0109】
【実施例】
(実施例1)
以下の手順に従い、Co(OH)2板状粉末を合成した。まず、濃度0.1mol/lのCoCl2水溶液、及び、濃度0.4mol/lのNaOH水溶液を調製した。次いで、600mlのCoCl2水溶液に対し、300mlのNaOH水溶液を100ml/hの速度で滴下した。これにより、溶液中には、青色の沈殿物(Co(OH)2)が生成した。
【0110】
NaOH水溶液の滴下が終了した後、N2バブリングしながら溶液を撹拌し、室温で24時間熟成させることによりピンク色の結晶(Co(OH)2)が得られた。この結晶を吸引濾過し、室温でN2ガスにより24時間乾燥させた。本実施例で得られたCo(OH)2粉末は、六角形を呈する板状粉末であった。また、板状粉末の平均粒径は0.5μmであり、平均アスペクト比は約5であった。
【0111】
(実施例2)
図1に示す手順に従い、Ca3Co4O9組成を有する高配向性多結晶セラミックスを作製した。まず、ステップ1(以下、これを単に「S1」という。)において、CaCO3粉末(平均粒径0.2μm)、実施例1で合成したCo(OH)2板状粉末、トルエン及び無水エタノールをそれぞれ容器に所定量計り取った。次いで、これらの原料をボールミルに入れ、24時間湿式混合した(S2)。混合終了後、スラリーに所定量のバインダー及び可塑剤を添加し(S3)、さらにボールミルで3時間湿式混合した(S4)。表1に、各原料の仕込量を示す。
【0112】
【表1】
【0113】
次に、スラリーをポットから取り出し、テープキャストにより厚さ約100μmのシート状に成形した(S5)。さらに、得られたシートを重ね合わせ、温度:80℃、圧力:100kg/cm2(9.8MPa)の条件で圧着した(S6)。さらに、この積層体に対して、圧延処理を行った(S7)。本実施例において、圧延温度は常温とし、圧下率は30%とした。
【0114】
次に、成形体を、大気中において、温度:700℃、加熱時間:2時間の条件下で脱脂した(S8)。次いで、脱脂後の成形体を圧力:3ton/cm2(294MPa)の条件下で加圧成形(静水圧処理)した(S9)。さらに、この成形体を、酸素中において、温度:920℃、加熱時間:48hr、加圧力:100kg/cm2(9.8MPa)の条件下でホットプレスした(S10)。
【0115】
(実施例3)
圧延処理(S7)の圧延温度を60℃とした以外は、実施例2と同一の手順に従い、高配向性多結晶セラミックスを作製した。
【0116】
(比較例1)
圧延処理(S7)を行わなかった以外は、実施例2と同一の手順に従い、焼結体を作製した。
【0117】
実施例2、3及び比較例1で得られた脱脂前の成形体について、それぞれ、Co(OH)2粉末の{001}面のロットゲーリング法による平均配向度Q(HKL)を測定した。また、実施例2、3及び比較例1で得られた焼結体について、それぞれ、コバルト層状酸化物の{00l}面のロットゲーリング法による平均配向度Q(HKL)及び(004)面のロッキングカーブ半値幅(RC半値幅)を測定した。表2に、その結果を示す。
なお、(004)面のRC半値幅の測定は、X線源にCu−Kαを用い、DS(発散スリット)1/2°、SS(散乱スリット)1/2°、RS(受光スリット)0.15mmの条件下で行った。また、RC半値幅は、RC半値幅の測定値から装置固有の半値幅を差し引いた値を用いた。
【0118】
【表2】
【0119】
圧延処理を行わなかった比較例1の場合、成形体のロットゲーリング法による平均配向度Q(HKL)は、52.6%であった。これに対し、実施例2及び3の場合、成形体の平均配向度Q(HKL)は、それぞれ、78.9%及び82.4%に向上した。
【0120】
一方、各焼結体について測定されたロットゲーリング法による平均配向度Q(HKL)は、圧延処理の有無によらず、いずれも99%を越えていた。しかしながら、焼結体のRC半値幅は、圧延処理の有無及び圧延条件によって大きく相違した。すなわち、比較例1の場合、RC半値幅は15.7°であった。これに対し、実施例2及び3の場合、RC半値幅は、それぞれ、10.1°及び9.3°であり、{00l}面の配向度が向上した。表2より、焼結体のRC半値幅は、成形体の配向度に強く依存することがわかる。
【0121】
次に、実施例2、3及び比較例1で得られた焼結体から、テープ面と平行な方向に沿って棒状試料を切り出した。次いで、この棒状試料を用いて、200℃〜700℃の温度範囲において、テープ面と平行な方向について、ゼーベック係数、熱伝導率及び電気伝導率を測定した。さらに、得られたゼーベック係数、電気伝導率及び熱伝導率を用いて、無次元性能指数ZTを算出した。図2に、測定温度と無次元性能指数の関係を示す。
【0122】
図2より、実施例2、3で得られた焼結体の無次元性能指数ZTは、全温度域において、比較例1の焼結体より大きいことがわかる。また、RC半値幅が小さくなるほど、無次元性能指数ZTが大きくなることがわかる。これは、電気伝導率の高い{00l}面を一方向に、かつ極めて高い配向度で配向させることによって、テープ面と平行な方向の電気伝導率が向上し、これによって性能指数Zが向上したためである。
【0123】
以上、本発明の実施の形態について詳細に説明したが、本発明は上記実施の形態に何ら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の改変が可能である。
【0124】
例えば、上記実施例においては、焼結法としてホットプレス法が用いられているが、ホットプレス法に代えて、常圧焼結法、常圧焼結+HIP処理法等、他の焼結法を用いても良い。
【0125】
また、上記実施例においては、成形方法として、ドクターブレード法と圧延法が用いられているが、成形体中における結晶面Aの配向度を所定の値以上とすることができる限り、他の成形方法を用いても良い。
【0126】
また、コバルト層状酸化物の前駆体からなる板状粉末(第1粉末)に対して第2粉末を添加し、コバルト層状酸化物を生成させる場合において、第2粉末として、板状粉末(第1粉末)と同一組成を有する前駆体からなる不定形粉末を用いても良い。この場合、目的とする組成を有する高配向性多結晶セラミックスが得られるように、他の粉末の組成及び配向比率に応じて、不定形粉末を所定の比率で配合すればよい。
【0127】
さらに、本発明に係る高配向性多結晶セラミックスは、高い性能指数を示すので、熱電発電器、精密温度制御装置、恒温装置、冷暖房装置、冷蔵庫、時計用電源等に用いられる熱電発電素子を構成する熱電変換材料として特に好適であるが、本発明の用途はこれに限定されるものではなく、巨大磁気抵抗効果を利用した各種の電子素子(例えば、磁気ヘッド)にも応用することができる。
【0128】
【発明の効果】
本発明に係る高配向性多結晶セラミックスは、コバルト層状酸化物の多結晶体からなり、かつ各結晶粒の{00l}面が極めて高い配向度で配向しているので、同一組成を有する無配向セラミックスに比して高い性能指数を示すという効果がある
【0129】
また、本発明に係る高配向性多結晶セラミックスの製造方法は、成形過程において、結晶面Aを相対的に高い配向度で配向させるので、コバルト層状酸化物の{00l}面が極めて高い配向度で配向した高配向性多結晶セラミックスを低コストで製造できるという効果がある。また、本発明に係る方法は、物質系によらず適用でき、断面積の大きな焼結体であっても容易に製造できるという効果がある。
【0130】
さらに、本発明に係る高配向性多結晶セラミックスは、同一組成を有する無配向セラミックスに比して高い性能指数を示すので、これを熱電変換材料として用いれば、高い性能指数を有する熱電変換素子が得られるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の一実施の形態に係る高配向性多結晶セラミックスの製造方法を示す工程図である。
【図2】 実施例2、3及び比較例1で得られた焼結体の温度Tと無次元性能指数ZTとの関係を示す図である。
Claims (9)
- CoO2層からなる第1副格子と、擬岩塩構造層からなる第2副格子とが交互に堆積した構造を有するコバルト層状酸化物の多結晶体からなり、
前記コバルト層状酸化物は、
一般式:{(Ca 1−x A x ) 2 CoO 3+α }(CoO 2+β ) y
(但し、Aは、アルカリ金属、アルカリ土類金属及びBiから選ばれる1種又は2種以上の元素、0≦x≦0.3、0.5≦y≦2.0、0.85≦{3+α+(2+β)y}/(3+2y)≦1.15)、または、
一般式:(Bi 1−xーy B x Co y O 1+α )(CoO 2+β ) z
(但し、Bは、アルカリ金属及びアルカリ土類金属から選ばれる1種又は2種以上の元素、0.2≦x≦0.8、0≦y<0.5、0.2≦x+y≦1、0.25≦z≦0.5、0.85≦{1+α+(2+β)z}/(1+2z)≦1.15)で表されるものであり、
前記コバルト層状酸化物の{00l}面のロッキングカーブ半値幅が、15度以下である高配向性多結晶セラミックス。 - 前記コバルト層状酸化物は、Coの0〜25atm%が、Cu、Sn、Mn、Ni、Fe、Zr及びCrから選ばれる少なくとも1つの置換元素Cで置換されたものである請求項1に記載の高配向性多結晶セラミックス。
- CoO 2 層からなる第1副格子と、擬岩塩構造層からなる第2副格子とが交互に堆積した構造を有するコバルト層状酸化物のCoO2層と格子整合性がある結晶面Aを備えた第1粉末を含む原料を調製する原料調製工程と、
前記結晶面Aのロットゲーリング法による配向度が55%以上となるように、前記原料を成形する成形工程と、
該成形工程で得られた成形体を加熱し、焼結させる焼結工程とを備えた高配向性多結晶セラミックスの製造方法。 - 前記第1粉末は、前記コバルト層状酸化物の前駆体からなる請求項3に記載の高配向性多結晶セラミックスの製造方法。
- 前記第1粉末は、前記コバルト層状酸化物からなる請求項3に記載の高配向性多結晶セラミックスの製造方法。
- 前記第1粉末は、その発達面が前記結晶面Aからなる異方形状粉末である請求項3から5までのいずれかに記載の高配向性多結晶セラミックスの製造方法。
- 前記成形工程は、前記異方形状粉末を含む原料又はその成形体を圧延する圧延工程を備えている請求項6に記載の高配向性多結晶セラミックスの製造方法。
- 前記成形体は、前記異方形状粉末がテープ面に対して平行に配向したテープ又はその積層体である請求項7に記載の高配向性多結晶セラミックスの製造方法。
- 請求項1または2に記載の高配向性多結晶セラミックスを用いた熱電変換素子。
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