JP2003282966A - 電子型熱電変換材料 - Google Patents

電子型熱電変換材料

Info

Publication number
JP2003282966A
JP2003282966A JP2002081169A JP2002081169A JP2003282966A JP 2003282966 A JP2003282966 A JP 2003282966A JP 2002081169 A JP2002081169 A JP 2002081169A JP 2002081169 A JP2002081169 A JP 2002081169A JP 2003282966 A JP2003282966 A JP 2003282966A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
thermoelectric conversion
conversion material
less
factor
plane
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Pending
Application number
JP2002081169A
Other languages
English (en)
Inventor
Jun Sugiyama
純 杉山
Shingo Hirano
晋吾 平野
Toshihiko Tani
俊彦 谷
Naoki Kito
直樹 亀頭
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Toyota Central R&D Labs Inc
Original Assignee
Toyota Central R&D Labs Inc
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Toyota Central R&D Labs Inc filed Critical Toyota Central R&D Labs Inc
Priority to JP2002081169A priority Critical patent/JP2003282966A/ja
Publication of JP2003282966A publication Critical patent/JP2003282966A/ja
Pending legal-status Critical Current

Links

Classifications

    • YGENERAL TAGGING OF NEW TECHNOLOGICAL DEVELOPMENTS; GENERAL TAGGING OF CROSS-SECTIONAL TECHNOLOGIES SPANNING OVER SEVERAL SECTIONS OF THE IPC; TECHNICAL SUBJECTS COVERED BY FORMER USPC CROSS-REFERENCE ART COLLECTIONS [XRACs] AND DIGESTS
    • Y02TECHNOLOGIES OR APPLICATIONS FOR MITIGATION OR ADAPTATION AGAINST CLIMATE CHANGE
    • Y02PCLIMATE CHANGE MITIGATION TECHNOLOGIES IN THE PRODUCTION OR PROCESSING OF GOODS
    • Y02P20/00Technologies relating to chemical industry
    • Y02P20/10Process efficiency
    • Y02P20/129Energy recovery, e.g. by cogeneration, H2recovery or pressure recovery turbines

Landscapes

  • Compositions Of Oxide Ceramics (AREA)
  • Inorganic Compounds Of Heavy Metals (AREA)

Abstract

(57)【要約】 【課題】 高いゼーベック係数S、低い電気抵抗率ρ、
及び低い熱伝導率κを同時に示し、しかも高温大気中に
おいて安定して高い性能指数を示す電子型熱電変換材料
を提供すること。 【解決手段】 本発明に係る電子型熱電変換材料は、層
状ペロブスカイト(A n+13n+1)構造を有
し、その組成が、一般式:(AE1−yM1)
n+1(Mn1−zM2)3n+1−δ(但し、A
Eは、2種以上のアルカリ土類金属元素、M1は、希土
類元素並びにBi、Sn、Sb、In及びPbの内の1
種又は2種以上の元素、M2は、Ru、Nb、Mo、W
及びTaの内の1種又は2種以上の元素、0≦y≦0.
5、1≦n≦5、0≦z≦0.5、y+z>0、−0.
5≦δ≦+0.5)で表されるマンガン酸化物からな
り、かつ寛容因子が0.9以上1.0以下であることを
特徴とする。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、電子型熱電変換材
料に関し、さらに詳しくは、太陽熱発電器、海水温度差
熱電発電器、化石燃料熱電発電器、工場廃熱や自動車廃
熱の回生発電器等の各種の熱電発電器、光検出素子、レ
ーザーダイオード、電界効果トランジスタ、光電子増倍
管、分光光度計のセル、クロマトグラフィーのカラム等
の温度を制御する精密温度制御装置、恒温装置、冷暖房
装置、冷蔵庫、時計用電源等に用いられる熱電変換素子
を構成する熱電変換材料として好適な電子型熱電変換材
料に関する。
【0002】
【従来の技術】熱電変換とは、セーベック効果やペルチ
ェ効果を利用して、電気エネルギーを冷却や加熱に、ま
た逆に熱エネルギーを電気エネルギーに直接変換するこ
とをいう。熱電変換は、(1)エネルギー変換の際に余
分な老廃物を排出しない、(2)排熱の有効利用が可能
である、(3)材料が劣化するまで継続的に発電を行う
ことができる、(4)モータやタービンのような可動装
置が不要であり、メンテナンスの必要がない、等の特徴
を有していることから、エネルギーの高効率利用技術と
して注目されている。
【0003】熱と電気とを相互に変換できる材料、すな
わち、熱電変換材料の特性を評価する指標としては、一
般に、性能指数Z(=S/(ρκ)、但し、S:ゼーベ
ック係数、ρ:電気抵抗率、κ:熱伝導率)、又は性能
指数Zと、その値を示す絶対温度Tの積として表される
無次元性能指数ZTが用いられる。ゼーベック係数は、
1Kの温度変化によって生じる起電力の大きさを表す。
熱電変換材料は、それぞれ固有のゼーベック係数を持っ
ており、ゼーベック係数が正であるもの(p型)と、負
であるもの(n型)に大別される。
【0004】また、熱電変換材料は、通常、p型の熱電
変換材料とn型の熱電変換材料とを接合した状態で使用
される。このような接合対は、一般に、熱電変換素子と
呼ばれている。熱電変換素子の性能指数は、p型熱電変
換材料の性能指数Z、n型熱電変換材料の性能指数Z
、並びに、p型及びn型熱電変換材料の形状に依存
し、また、形状が最適化されている場合には、Z及び
/又はZが大きくなるほど、熱電変換素子の性能指数
が大きくなることが知られている。従って、性能指数の
高い熱電変換素子を得るためには、性能指数Z、Z
の高い熱電変換材料を用いることが重要である。
【0005】このような熱電変換材料としては、例え
ば、Bi−Te系、Pb−Te系、Si−Ge系、酸化
物セラミックス系等の種々の材料が知られている。これ
らの中で、Bi−Te系及びPb−Te系の化合物半導
体は、それぞれ、室温近傍及び300〜500℃の中温
域において、優れた熱電特性(ZT〜0.8)を示す。
しかしながら、これらの化合物半導体は、高温域での使
用は困難である。また、材料中には高価な稀少元素(例
えば、Te、Sb、Seなど)や、毒性の強い環境負荷
物質(例えば、Te、Sb、Se、Pbなど)を含むと
いう問題がある。
【0006】一方、Si−Ge系の化合物半導体は、1
000℃付近の高温域において優れた熱電特性を示し、
また、材料中に環境負荷物質を含まないという特徴があ
る。しかしながら、Si−Ge系の化合物半導体は、高
温大気中において長時間使用するためには、材料表面を
保護する必要があり、熱的耐久性が低いという問題があ
る。
【0007】これに対し、酸化物セラミックス系の熱電
変換材料は、材料中に稀少元素や環境負荷物質を必ずし
も含まない。また、高温大気中において長時間使用して
も熱電特性の劣化が少なく、熱的耐久性に優れるという
特徴がある。そのため、酸化物セラミックス系の熱電変
換材料は、化合物半導体に代わる材料として注目されて
おり、熱電特性の高い新材料やその製造方法について、
従来から種々の提案がなされている。
【0008】例えば、M.Ohtakiらは、単純ペロブスカイ
ト型化合物であるCaMnOのCaサイトの10at
%をBi、La、Ce等の3価又は4価の金属元素と置
換し、その電気伝導率及びゼーベック係数の評価を行っ
ている(Michitaka Ohtaki et.al., Journal of Solid
State Chemistry 120, 105-111(1995)参照)。同文献に
は、高抵抗を示すn型半導体であるCaMnOのCa
サイトの一部を高原子価元素と置換することによって、
電気伝導率が著しく増加し、ゼーベック係数の絶対値が
適度に減少する点、及び置換元素としてBiを用いた時
に、最大の出力因子(=S/ρ)が得られる点が記載
されている。
【0009】また、特開平5−198847号公報に
は、n型熱電変換材料として、ストロンチウムとチタン
を含む複合酸化物を主成分とし、かつ所定量の酸素欠損
を有する酸化物半導体を用いた電子冷却素子が開示され
ている。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】半導体の熱電性能は、
性能指数Zで評価でき、高いゼーベック係数S、低い電
気抵抗率ρ及び/又は低い熱伝導率κを示す材料ほど、
高性能な熱電変換材料となる。上述したように、CaM
nOのCaサイトの一部を高原子価元素に置換した
り、あるいはSrTiO系酸化物に対して酸素欠損を
導入する方法は、キャリア濃度を増大させ、電気抵抗率
ρを下げる方法として有効である。
【0011】しかしながら、ゼーベック係数Sは、キャ
リア濃度と負の相関があるので、単純に電気抵抗率ρを
下げるためにキャリア濃度を増大させると、ゼーベック
係数Sを減少させるという問題がある。そのため、上述
した従来の方法では、到達可能な性能指数Zに限界があ
る。
【0012】また、酸素欠損を導入する方法の場合、高
温で長時間の還元処理が必要であり、生産効率が低いと
いう問題がある。さらに、酸素欠損を有する酸化物半導
体を高温大気中で使用すると、使用中に酸素を吸収し、
電気抵抗率ρが急激に増加するという問題がある
【0013】本発明が解決しようとする課題は、高いゼ
ーベック係数S、低い電気抵抗率ρ、及び低い熱伝導率
κを同時に示す電子型熱電変換材料を提供することにあ
る。また、本発明が解決しようとする他の課題は、高温
大気中においても安定して高い性能指数を示す電子型熱
電変換材料を提供することにある。
【0014】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決するため
に本発明に係る電子型熱電変換材料は、層状ペロブスカ
イト(An+13n+1)構造を有し、その組成
が、 一般式:(AE1−yM1)n+1(Mn1−zM2)
3n+1−δ (但し、AEは、2種以上のアルカリ土類金属元素、M
1は、希土類元素並びにBi、Sn、Sb、In及びP
bの内の1種又は2種以上の元素、M2は、Ru、N
b、Mo、W及びTaの内の1種又は2種以上の元素、
0≦y≦0.5、1≦n≦5、0≦z≦0.5、y+z
>0、−0.5≦δ≦+0.5)で表されるマンガン酸
化物からなり、かつ寛容因子が0.9以上1.0以下で
あることを要旨とするものである。
【0015】また、本発明に係る電子型熱電変換材料の
2番目は、層状ペロブスカイト(A n+1
3n+1)構造を有し、その組成が、 一般式:{(CaSr1−x)1−yM1}n+1Mn
3n+1−δ (但し、M1は、希土類元素並びにBi、Sn、Sb、
In及びPbの内の1種又は2種以上の元素、0<x<
1、0<y≦0.5、1≦n≦5、−0.5≦δ≦+
0.5)で表されるマンガン酸化物からなり、かつ寛容
因子が0.9以上1.0以下であることを要旨とするも
のである。
【0016】Aサイト元素として2種以上のアルカリ土
類金属元素を含む層状ペロブスカイト型マンガン酸化物
において、Aサイト元素及び/又はBサイト元素の一部
を高原子価元素で置換すると、キャリア濃度を増加させ
ることができる。また、これと同時に、ペロブスカイト
型構造の寛容因子が最適となるように、置換元素の種類
及び量に応じてアルカリ土類金属元素の種類及び量を制
御すると、キャリア濃度を一定にしたまま、キャリア移
動度を増大させることができる。さらに、層状ペロブス
カイト型マンガン酸化物は、2次元伝導面にキャリアが
閉じこめられるために、低い熱伝導率κを示す。
【0017】そのため、高いゼーベック係数S、低い電
気抵抗率ρ及び低い熱伝導率κを同時に達成することが
できる。また、酸素欠損のみを用いてキャリアを導入す
る方法に比して、高温大気中において、安定して高い性
能指数を示す。
【0018】
【発明の実施の形態】以下に本発明の一実施の形態につ
いて詳細に説明する。本発明の第1の実施の形態に係る
電子型熱電変換材料は、層状ペロブスカイト(An+1
3n+ )構造を有し、その組成が、次の化1の
式に示す一般式で表されるマンガン酸化物からなる。
【0019】
【化1】(AE1−yM1)n+1(Mn1−zM2)
3n+1−δ (但し、AEは、2種以上のアルカリ土類金属元素、M
1は、希土類元素並びにBi、Sn、Sb、In及びP
bの内の1種又は2種以上の元素、M2は、Ru、N
b、Mo、W及びTaの内の1種又は2種以上の元素、
0≦y≦0.5、1≦n≦5、0≦z≦0.5、y+z
>0、−0.5≦δ≦+0.5)
【0020】化1の式において、M1は、Aサイト元素
であるアルカリ土類金属元素AE(2価)の置換元素で
あり、マンガン酸化物中において3〜5価の価数を示
す。また、M2は、Bサイト元素であるMn(4価)の
置換元素であり、マンガン酸化物中において5価又は6
価の価数を示す。
【0021】置換元素M1、M2は、いずれもマンガン
酸化物にキャリアを導入するための元素であり、少なく
とも一方が添加されていればよい。また、置換元素M1
及びM2の置換量をそれぞれ表すy及びzの値は、いず
れも0.5以下が好ましい。より詳細には、マンガン当
たりのキャリア数pが0より大きくて0.5未満とな
るようなyとzの値が望ましい。例えば、M1の価数が
3価の場合は、pは(n+1)/nで表されるので、
yの範囲は、0<y<0.5n/(n+1)が好まし
い。一般的には、M1の価数がv価(3≦v≦5)の場
合は、0<y<0.5n/{(v−2)(n+1)}、
M2の価数がw価(5≦w≦6)の場合は、0<z<
0.5/(w−3.5)の範囲が望ましい。y及び/又
はzの値がこれらの値を超えると、ホールがドープされ
p型半導体となるので好ましくない。さらに、各置換元
素M1、M2は、それぞれ1種類の元素を用いても良
く、あるいは2種以上を組み合わせて用いても良い。
【0022】層状ペロブスカイト型マンガン酸化物は、
一般に、岩塩構造又は歪んだ岩塩構造を有するAO層
と、MnO八面体が稜を共有する形で2次元的に連結
したn層のマンガン層が交互に積層した構造を取る。こ
のマンガン層の層数を表すnの値は、1以上5以下が好
ましい。層数nが5を越える場合は、性能指数Zが低下
する。特に、層数nの値を2以上3以下とすると、電気
抵抗率ρが小さくなり、高い性能指数Zが得られる。
【0023】なお、AO層間に挟まれるマンガン層の層
数nは、材料全体を通して一定であっても良く、あるい
は、長周期若しくは短周期で規則的に、又は不規則に変
動していても良い。従って、マンガン層の層数nの値
は、1以上であり、かつ小数を含む場合がある。
【0024】また、層状ペロブスカイト型酸化物は、A
n+13n+1の一般式で表されるが、製造条件
によっては、酸素が過剰となったり、あるいは酸素欠損
が生ずる場合がある。本発明に係る電子型熱電変換材料
は、このような過剰酸素又は酸素欠損が含まれていても
良い。
【0025】酸素量の化学量論組成からのずれの程度を
表すδの値は、具体的には、−0.5以上+0.5以下
が好ましい。マンガン酸化物に酸素欠損が発生すると、
Bサイト元素であるMnの価数が変わって3価と4価の
混合原子価状態となり、キャリアが導入されるが、δの
値が、+0.5を越えると、キャリア濃度が過大とな
り、ゼーベック係数Sが低下するので好ましくない。一
方、δの値が−0.5未満になると、高原子価元素が過
剰酸素によって電気的に中和されるために、キャリア濃
度が低下し、電気抵抗率ρが増大するので好ましくな
い。
【0026】また、過剰酸素又は酸素欠損を含むマンガ
ン酸化物を高温大気中に曝すと、酸素の放出又は吸収が
起こり、熱電特性が経時変化する。従って、高温大気中
において安定して高い熱電特性を示す熱電変換材料を得
るためには、δの値は、−0.05以上+0.05以下
が好ましく、さらに好ましくは、−0.02以上+0.
02以下である。
【0027】また、本発明に係る電子型熱電変換材料
は、寛容因子が所定の範囲内にあることを特徴とする。
ここで、層状ペロブスカイト型化合物の結晶構造は、理
想的には正方晶であり、その中のペロブスカイト単位格
子は、理想的には立方格子であるが、Aサイト元素、B
サイト元素及びこれらの置換元素の種類、並びに置換元
素の量に応じて、正方晶、斜方晶、単斜晶など、立方格
子から歪んだ構造をとる場合がある。「寛容因子
(t)」とは、このような層状ペロブスカイト構造中の
ペロブスカイト単位格子について立方格子からの歪の大
きさや結晶格子の対称性と密接な関係があるパラメータ
をいい、次の数1の式で定義される。
【0028】
【数1】
【0029】この寛容因子tは、マンガン酸化物中に存
在するキャリアの移動度とも密接な関係があり、寛容因
子tを最適化することによって、キャリア濃度を一定に
保ったまま、キャリア移動度のみを増加させることがで
きる。この点は、本願発明者らによって初めて見出され
たものである。
【0030】本発明に係る電子型熱電変換材料におい
て、rとして9配位のイオン半径を用い、r及びr
として、6配位のイオン半径を用いた場合、寛容因子
tは、0.9以上1.0以下が好ましい。また、高いキ
ャリア移動度を得るためには、寛容因子tは、好ましく
は、0.942以上0.98以下、さらに好ましくは、
0.943以上0.976以下、さらに好ましくは、
0.945以上0.972以下である。
【0031】マンガン酸化物中に存在するキャリア濃度
は、主に置換元素M1、M2の種類及び含有量によって
制御することができる。これに対し、置換元素M1、M
2の種類及び含有量が与えられた場合において、寛容因
子tは、イオン半径の異なる2種以上のアルカリ土類金
属元素AEの種類及び含有量を制御することによって最
適化することができる。すなわち、化1の式において、
アルカリ土類金属元素AEの種類及び含有量は、寛容因
子tが所定の範囲内となるように、その種類及び添加量
を任意に選択することができる。
【0032】また、本発明に係る電子型熱電変換材料に
おいて、その微構造は、特に限定されるものではなく、
緻密質又は多孔質のいずれであっても良い。一般に、熱
電変換材料の性能指数Zは、熱伝導率κに依存し、熱伝
導率κが小さい材料ほど、高い熱電特性を示す。また、
材料の熱伝導率κは、材料の組成と微構造(すなわち、
気孔率、気孔径等)に依存し、組成が同一である場合に
は、緻密質よりも多孔質である方が高い熱電特性を示
す。但し、多孔質構造を有する材料の場合、その気孔率
は、30%以下が好ましい。気孔率が30%を超える
と、材料の強度が低下するので好ましくない。
【0033】さらに、層状ペロブスカイト型化合物は、
上述したように、立方晶、正方晶、斜方晶、単斜晶な
ど、種々の結晶構造をとるが、本発明に係る電子型熱電
変換材料は、いずれの結晶系に属するものであっても良
く、特に限定されるものではない。但し、対称性の高い
結晶構造を有しているほど、大きなキャリア移動度が得
やすいという利点がある。マンガン酸化物の結晶構造
は、具体的には、正方晶系、斜方晶系又は単斜晶系のい
ずれかに属していることが望ましい。
【0034】化1の式で表されるマンガン酸化物は、置
換元素M1、M2及びアルカリ土類金属元素AEの種類
及び含有量に応じて、熱電特性の異なる種々の熱電変換
材料となる。特に、正方晶系、斜方晶系又は単斜晶系に
属する層状ペロブスカイト(An+13n+1
構造を有し、Aサイト元素として2種以上のアルカリ土
類金属元素AEを含むマンガン酸化物は、寛容因子tを
最適化することによって、573Kにおいて、電気抵抗
率ρが0.02Ωcm以下、ゼーベック係数Sが負でそ
の絶対値が50μV/K以上、及び熱伝導率κが4W/
mK以下であるn型の熱電変換材料となる。
【0035】また、層状ペロブスカイト型マンガン酸化
物の熱電特性は、結晶方位に応じた異方性があり、ab
面と平行な方向の熱電特性は、ab面と垂直な方向(以
下、これを「c軸方向」という。)の熱電特性より高い
値を示す。ここで、「ab面」とは、層状ペロブスカイ
ト型マンガン酸化物を擬正方晶とし正方晶表示した場合
の{001}面に相当する。特に、マンガン層の層数n
が1又は2である層状ペロブスカイト型マンガン酸化物
の場合、c軸方向の電気抵抗率ρは、ab面内方向の
電気抵抗率ρabより1桁〜2桁大きいことが知られて
いる。従って、多結晶体を構成する各結晶粒のab面を
一方向に配向させると、無配向焼結体より高い性能指数
を示す。
【0036】具体的には、ab面を配向させることによ
って、573Kにおいて、配向面に平行な方向の電気抵
抗率ρが0.01Ωcm以下、ゼーベック係数が50μ
V/K以上、熱伝導率κが4W/mK以下であるn型の
熱電変換材料が得られる。
【0037】ここで、「ab面が配向する」とは、各結
晶粒のab面が互いに平行になるように配列すること
(以下、これを「面配向」という。)、及び各結晶粒の
ab面が焼結体を貫通する1つの軸に対して平行に配列
すること(以下、これを「軸配向」という。)の双方を
意味する。高い熱電特性を得るためには、ab面は、面
配向していることが望ましい。
【0038】また、ab面を面配向させる場合、配向の
程度は、次の数2の式で表されるロットゲーリング法に
よる平均配向度Q(HKL)で表すことができる。
【0039】
【数2】
【0040】なお、数2の式において、ΣI(hkl)
は、面配向焼結体について測定されたすべての結晶面
(hkl)のX線回折強度の総和であり、ΣI(hk
l)は、面配向焼結体と同一組成を有する無配向焼結体
について測定されたすべての結晶面(hkl)のX線回
折強度の総和である。また、Σ'I(HKL)は、面配向
焼結体について測定された結晶学的に等価な特定の結晶
面(HKL)のX線回折強度の総和であり、Σ'I(H
KL)は、面配向焼結体と同一組成を有する無配向焼結
体について測定された結晶学的に等価な特定の結晶面
(HKL)のX線回折強度の総和である。
【0041】従って、焼結体中に含まれる各結晶粒のa
b面が無配向である場合には、平均配向度Q(HKL)
は0%となる。また、焼結体中に含まれるすべての結晶
粒のab面が互いに平行に配向している場合には、平均
配向度Q(HKL)は100%となる。
【0042】高い熱電特性を示す熱電変換材料を得るた
めには、ab面の平均配向度Q(HKL)は、高い程良
い。ab面の平均配向度Q(HKL)は、好ましくは、
30%以上、さらに好ましくは、50%以上である。
【0043】次に、本発明の第2の実施の形態に係る電
子型熱電変換材料について説明する。本実施の形態に係
る電子型熱電変換材料は、第1の実施の形態に係る電子
型熱電変換材料において、寛容因子tを最適化するため
のアルカリ土類金属元素AEとして、Ca及びSrを選
択した点を特徴とするものである。アルカリ土類金属元
素AEとしてCa及びSrを用いた層状ペロブスカイト
型マンガン酸化物は、熱電特性に優れたn型の熱電変換
材料となる。
【0044】また、その中でも、層状ペロブスカイト
(An+13n+1)構造を有し、その組成が、
次の化2の式に示す一般式で表されるマンガン酸化物か
らなるものは、特に優れた熱電特性を示す。
【0045】
【化2】 {(CaSr1−x)1−yM1}MnO3−δ (但し、M1は、希土類元素並びにBi、Sn、Sb、
In及びPbの内の1種又は2種以上の元素、0<x<
1、0<y≦0.5、1≦n≦5、−0.5≦δ≦+
0.5)
【0046】また、本実施の形態においても、寛容因子
tは、0.9以上1.0以下が好ましい。高いキャリア
移動度を得るためには、寛容因子tは、好ましくは、
0.942以上0.98以下、さらに好ましくは、0.
943以上0.976以下、さらに好ましくは、0.9
45以上0.972以下である。なお、その他の点につ
いては、第1の実施の形態に係る電子型熱電変換材料と
同様であるので、説明を省略する。
【0047】次に、本発明に係る電子型熱電変換材料の
作用について説明する。An+1 3n+1で表さ
れる層状ペロブスカイト構造を有する遷移金属酸化物半
導体は、多くの場合、アルカリ土類金属元素により構成
されるAイオン、又は遷移金属元素により構成されるB
イオンを高原子価のイオンで置換することにより、キャ
リアである電子が導入され、導電性を示す。
【0048】一方、半導体の性能指数Zは、ゼーベック
係数S、電気抵抗率ρ(又は電気抵抗率ρの逆数である
電気伝導率σ)、及び熱伝導率κに依存する。これらの
内、ゼーベック係数Sと電気伝導率σとは、導入された
キャリア濃度nとの間に、それぞれ、次の数3の式及び
数4の式で表される関係がある。
【0049】
【数3】
【0050】
【数4】
【0051】数4の式に示すように、電気伝導率σとキ
ャリア濃度nとの間には正の相関があるので、酸化物半
導体中のキャリア濃度nが高くなるほど、電気伝導率σ
は大きくなる。一方、数3の式に示すように、ゼーベッ
ク係数Sとキャリア濃度nとの間には負の相関があるの
で、酸化物半導体中のキャリア濃度nが高くなるほど、
ゼーベック係数Sは、低下する。従って、酸化物半導体
の性能指数Zを高くするために、単にキャリア濃度nを
増加させ、電気伝導率σを高くする方法では、到達可能
な性能指数Zに限界がある。
【0052】これに対し、数4の式から明らかなよう
に、電気伝導率σは、キャリア移動度μとの間に正の相
関がある。また、層状ペロブスカイト構造中のキャリア
移動度μは、BO八面体のB−O−B結合角及びB−
O結合距離に依存し、ある一定のキャリア濃度で比較し
た場合には、B−O−B結合角が180゜に近づくほ
ど、及び/又はB−O結合距離がある一定の値に近づく
ほど、キャリア移動度μは増加する。
【0053】従って、キャリア濃度nを低く抑えたたま
ま、B−O−B結合角及び/又はB−O結合距離を適切
に制御することができれば、キャリア移動度μのみ、す
なわち電気伝導率σのみを増加させることができる。
【0054】本発明は、このような考えに基づいてなさ
れたものであり、B−O−B結合角及びB−O結合距離
を最適化し、キャリア移動度μのみを増加させるため
に、寛容因子tというパラメータを用いた点に特徴があ
る。また、キャリア濃度nを低く抑えたまま、寛容因子
tを最適化するために、キャリアを発生しない2種以上
のアルカリ土類金属元素AEを組み合わせて用いた点に
特徴がある。
【0055】すなわち、キャリア濃度nが微小であるペ
ロブスカイト構造マンガン酸化物半導体に高原子価の置
換元素M1、M2を固溶させると、所定量のキャリアを
導入することができる。また、これと同時に、寛容因子
tが最適となるように、イオン半径の異なる2種以上の
アルカリ土類金属元素AEの種類及び含有量を制御する
と、キャリア濃度nを増加させることなく、キャリア移
動度μが最大となる構造を安定化させることができる。
さらに、層状ペロブスカイト構造の中でも、正方晶系、
斜方晶系又は単斜晶系に属するものは、結晶格子の歪が
小さいために、B−O−B結合角及びB−O結合距離の
最適化が容易であり、キャリア移動度μの高い構造を安
定化させやすい。
【0056】さらに、層状ペロブスカイト構造を有する
マンガン酸化物は、AO層間に挟まれたマンガン層が主
として電気伝導層として機能し、2次元伝導面(すなわ
ち、ab面)にキャリアが閉じこめられた状態になって
いる。その結果、異方性の少ない単純ペロブスカイト型
化合物に比して、低い熱伝導率κを示す。
【0057】そのため、本発明によれば、従来の方法で
は困難であった、高いゼーベック係数Sと、低い電気抵
抗率ρ(又は高い電気伝導率σ)と、低い熱伝導率κと
を同時に示す高性能な熱電変換材料が得られる。また、
酸素欠損のみを用いてキャリア濃度nを制御する従来の
方法に比して、高温における化学的安定性が増し、80
0〜1000℃程度の高温度環境でも優れた熱電特性を
示す。さらに、熱電特性の高いab面を配向させると、
配向方向の熱電特性は、同一組成を有する無配向焼結体
より高い値を示す。
【0058】次に、本発明に係る電子型熱電変換材料の
製造方法について説明する。本発明に係る電子型熱電変
換材料は、種々の方法により製造することができる。第
1の方法は、無配向焼結体を得るための方法であり、層
状ペロブスカイト型マンガン酸化物を構成する成分元素
を含む単純化合物を所定量混合し、これを、仮焼、粉
砕、成形及び焼結する方法である。
【0059】この場合、出発原料として用いる単純化合
物は、特に限定されるものではない。例えば、成分元素
を含む水酸化物、酸化物、複合酸化物、炭酸塩、硝酸
塩、シュウ酸塩、酢酸塩などの塩類、アルコキシド等を
用いることができる。また、仮焼及び焼結条件は、層状
ペロブスカイト型マンガン酸化物の組成に応じて、最適
な条件を選択すれば良い。
【0060】第2の方法は、配向焼結体を得るための方
法であり、所定の条件を満たす異方形状粉末を含む原料
を調製し、この原料を異方形状粉末が配向するように成
形し、焼結させる方法である。
【0061】この場合、異方形状粉末は、最も広い面積
を占める面(以下、これを「発達面」という。)が層状
ペロブスカイト型マンガン酸化物のab面と格子整合性
を有するものを用いる必要がある。格子整合性の良否
は、異方形状粉末の発達面の格子寸法と層状ペロブスカ
イト型マンガン酸化物のマンガン層の格子寸法の差の絶
対値を異方形状粉末の発達面の格子寸法で割った値(以
下、これを「格子整合率」という。)で表すことができ
る。格子整合率は、具体的には、20%以下が好まし
く、さらに好ましくは、10%以下である。
【0062】また、配向を容易化するためには、異方形
状粉末の平均アスペクト比(=最大寸法/最小寸法の平
均値)は、3以上が好ましく、さらに好ましくは、5以
上である。但し、平均アスペクト比が過大になると、原
料調製中に異方形状粉末が破砕され、配向させるのが困
難となる場合がある。従って、異方形状粉末の平均アス
ペクトには、好ましくは100以下、さらに好ましく
は、20以下である。
【0063】さらに、配向及び焼結を容易化するために
は、異方形状粉末の平均粒径(=最大寸法の平均値)
は、0.05μm以上20μm以下が好ましく、さらに
好ましくは、0.1μm以上5μm以下である。
【0064】このような異方形状粉末としては、具体的
には、作製しようとする層状ペロブスカイト型マンガン
酸化物と同一組成を有し、かつ発達面がab面からなる
板状粉末が好適な一例として挙げられる。また、異方形
状粉末として、作製しようとする層状ペロブスカイト型
マンガン酸化物とは異なる組成を有し、その発達面が層
状ペロブスカイト型マンガン酸化物のab面と格子整合
性を有し、かつ他の原料と反応することによって層状ペ
ロブスカイト型マンガン酸化物となるもの(例えば、擬
正方晶表示における{001}面を発達面とするSr
MnO板状粉末、CaMnO板状粉末、Sr
板状粉末等)を用いても良い。
【0065】また、異方形状粉末が配向した成形体を得
るためには、成形方法として、異方形状粉末に対して強
い剪断力が作用する方法を用いればよい。異方形状粉末
の発達面を面配向させる成形方法としては、具体的に
は、ドクターブレード法、ロールプレス法、押出法(テ
ープ状)等が好適な一例として挙げられる。また、異方
形状粉末の発達面を軸配向させる成形方法としては、押
出法(非テープ状)が好適な一例として挙げられる。
【0066】異方形状粉末の発達面と層状ペロブスカイ
ト型マンガン酸化物のab面との間には格子整合性があ
る。従って、このような成形方法を用いて異方形状粉末
を配向させ、所定の温度で焼結させると、異方形状粉末
の発達面が層状ペロブスカイト型マンガン酸化物のab
面として承継される。その結果、焼結体中において、a
b面が一方向に配向した状態で、層状ペロブスカイト型
マンガン酸化物の板状結晶が成長し、配向焼結体が得ら
れる。
【0067】
【実施例】(実施例1)以下の手順に従い、一般式:
{(CaSr1−x)1−yM1}n+1Mn
3n+1で表される組成を有する層状ペロブスカイト型
マンガン酸化物を作製した。まず、出発原料として、S
rCO、CaCO,M1(但し、M1=L
a、Nd、Gd、Dy、Yb)及びMn(いずれ
も、(株)高純度科学研究所製)を用い、それぞれ所定
の組成となるようにこれらを配合し、ボールミルで24
時間混合した。
【0068】次に、得られた混合粉を大気中において、
温度:800〜1300℃、保持時間:5時間の条件下
で、仮焼を行った。次いで、仮焼した粉末を解砕した
後、加圧力:50MPaの条件下で金型成形した。さら
に、得られた成形体を酸素気流中において、温度:12
00〜1550℃、保持時間:5時間の条件下で焼結し
た。
【0069】得られた焼結体について、焼結体密度の測
定及び粉末X線回折を行った。その結果、焼結体の相対
密度は、いずれも90%以上であった。また、いずれの
焼結体とも、生成相は、層状ペロブスカイト単相であっ
た。
【0070】次に、得られた焼結体から試験片を切り出
し、573Kにおいて、電気抵抗率ρ及びゼーベック係
数Sを測定した。なお、電気抵抗率ρの測定には、直流
4端子法を用いた。さらに、数1の式を用いて、各試料
の寛容因子tを算出した。なお、寛容因子tを算出する
際には、イオン半径として、シャノンの報告値(R.D.Sh
annon、Acta Cryst. A32, 751(1976)参照)を用いた。
また、Aサイトイオンのイオン半径には9配位の値を用
い、Bサイトイオン及び酸素イオンのイオン半径には6
配位の値を用いた。
【0071】表1に、x=0である各試料の組成、寛容
因子t、電気抵抗率ρ、ゼーベック係数S、及び出力因
子S/ρを示す。また、表2〜表6に、x=0.1〜
1.0である各試料の組成、寛容因子t及び出力因子S
/ρを示す。なお、表1〜表6において、nは、マン
ガン層の層数であり、「n=∞」とは、いわゆる単純ペ
ロブスカイト型化合物であることを表す。また、
「p」とは、見かけのキャリア濃度、すなわち、Mn
当たりのキャリア数(=y(n+1)/n)を表す。
【0072】
【表1】
【0073】
【表2】
【0074】
【表3】
【0075】
【表4】
【0076】
【表5】
【0077】
【表6】
【0078】(1) 実験番号1〜12 アルカリ土類金属元素AEとしてSrのみ(x=0)を
用い、置換元素M1としてLaを用い、キャリア濃度p
=0.1〜0.3とした実験番号1〜12の場合、キ
ャリア濃度一定の条件下では、マンガン層の層数nが2
の時に出力因子S/ρは極大を示した。また、マンガ
ン層の層数nが2である場合、キャリア濃度pが小さ
くなるほど、出力因子S/ρは増加した。
【0079】(2) 実験番号21〜34 置換元素M1としてGdを用い、マンガン層の層数nを
1、キャリア濃度pを0.1とし、アルカリ土類金属
元素AEとしてCa及びSrを用いた実験番号21〜3
0の場合、イオン半径の小さいCaの含有量xが多くな
るほど、寛容因子tは減少した。これに対し、出力因子
/ρは、寛容因子tが0.98以下になると急激に
増加した。また、出力因子S/ρはx=0.5〜0.
6の時に極大となり、Caの含有量x=1.0である実
験番号30の約1.7倍の値を示した。
【0080】さらに、Caの含有量xを0.4、キャリ
ア濃度pを0.05〜0.3とした実験番号31〜3
4の場合、出力因子S/ρは、p=0.1の時に極
大となった。
【0081】(2) 実験番号41〜100 置換元素M1としてLaを用い、マンガン層の層数nを
2、キャリア濃度pを0.1とし、アルカリ土類金属
元素AEとしてCa及びSrを用いた実験番号41〜5
0の場合、Caの含有量xが多くなるほど、寛容因子t
は減少した。
【0082】これに対し、出力因子S/ρは、寛容因
子tが0.98以下になると急激に増加した。また、出
力因子S/ρはx=0.4〜0.5の時に極大とな
り、Caの含有量x=1.0である実験番号50の約
1.8倍の値を示した。
【0083】置換元素M1としてNdを用いた実験番号
51〜60、Gdを用いた実験番号61〜70、Dyを
用いた実験番号81〜90、及びYbを用いた実験番号
91〜100も同様であり、Caの含有量xが多くなる
ほど寛容因子tは減少した。
【0084】これに対し、出力因子S/ρは、寛容因
子が0.98以下の領域で高い値を示した。置換元素M
1としてNdを用いた場合、出力因子S/ρはx=
0.5の時に極大となり、実験番号60の約1.8倍の
値を示した。また、置換元素M1としてGd、Dy及び
Ybを用いた場合、出力因子S/ρはx=0.4の時
に極大となり、それぞれ、実験番号70の約2.0倍、
実験番号90の約1.9倍及び実験番号100の約2.
2倍の値を示した。
【0085】さらに、置換元素M1としてGdを用い、
マンガン層の層数n=2、Caの含有量x=0.4と
し、キャリア濃度pを0.05〜0.3とした実験番
号71〜74の場合、出力因子S/ρは、p=0.
1の時に極大となった。
【0086】(3) 実験番号101〜140 置換元素M1としてLaを用い、マンガン層の層数nを
3、キャリア濃度pを0.1とし、アルカリ土類金属
元素AEとしてCa及びSrを用いた実験番号101〜
110の場合、Caの含有量xが多くなるほど寛容因子
tは減少した。これに対し、出力因子S/ρは、寛容
因子が0.98以下になると急激に増加した。出力因子
/ρはx=0.5の時に極大となり、Caの含有量
x=1.0である実験番号110の約1.8倍の値を示
した。
【0087】置換元素M1としてGdを用いた実験番号
111〜120、及びDyを用いた実験番号131〜1
40も同様であり、Caの含有量が多くなるほど寛容因
子tは減少した。また、出力因子S/ρは、寛容因子
tが0.98以下の領域で高い値を示した。さらに、置
換元素M1としてGdを用いた場合、出力因子S/ρ
はx=0.4の時に極大となり、実験番号120の約
2.0倍の値を示した。また、置換元素M1としてDy
を用いた場合、出力因子S/ρはx=0.5の時に極
大となり、実験番号140の約2.3倍の値を示した。
【0088】さらに、置換元素M1としてGdを用い、
マンガン層の層数n=3、Caの含有量x=0.4と
し、キャリア濃度pを0.05〜0.3とした実験番
号121〜124の場合、出力因子S/ρは、p
0.1の時に極大となった。
【0089】(4) 実験番号141〜154 置換元素M1としてGdを用い、マンガン層の層数nを
無限大(すなわち、単純ペロブスカイト型マンガン酸化
物)、キャリア濃度pを0.1とし、アルカリ土類金
属元素AEとしてCa及びSrを用いた実験番号141
〜150の場合、Caの含有量xが多くなるほど寛容因
子tは減少した。これに対し、出力因子S/ρは、寛
容因子が0.98以下の領域で高い値を示した。また、
出力因子S/ρはx=0.3〜0.4の時に極大とな
り、Caの含有量x=1.0である実験番号150の約
2.0倍の値を示した。
【0090】さらに、置換元素M1としてGdを用い、
マンガン層の層数n=∞、Caの含有量x=0.3と
し、キャリア濃度pを0.05〜0.3とした実験番
号151〜154の場合、出力因子S/ρは、p
0.1の時に極大となった。
【0091】図1(a)に、置換元素M1=Gd、Ca
の含有量x=0.4(n=∞の場合は、x=0.3)、
キャリア濃度p=0.1である試料のマンガン層の層
数nと出力因子S/ρの関係を示す。図1(a)よ
り、マンガン層の層数nと出力因子S/ρとの間に強
い相関があり、層数n=2〜3の時に、高い出力因子S
/ρが得られることがわかる。
【0092】また、図1(b)に、置換元素M1=G
d、マンガン層の層数n=1、2、3、∞、Caの含有
量x=0.4(n=∞の場合は、x=0.3)である試
料のMn当たりのキャリア数(キャリア濃度p)と出
力因子S/ρの関係を示す。図1(b)より、キャリ
ア濃度pと出力因子S/ρとの間に相関があり、p
=0.1の時に、出力因子S/ρが極大を示すこと
がわかる。
【0093】さらに、図1(c)に、キャリア濃度p
=0.1である各試料の寛容因子tと出力因子S/ρ
の関係を示す。図1(c)及び表2〜表6より、置換元
素M1の種類及びマンガン層の層数nによらず、寛容因
子tが0.942以上0.98以下の領域で高い出力因
子S/ρが得られることがわかる。
【0094】また、寛容因子tを0.943〜0.97
6とすると、最大の出力因子(PF max)とCaの含
有量x=1.0の時の出力因子(PFCa=1.0)の
差(ΔPF=PFmax−PFCa=1.0)の約10
%に相当する出力因子S/ρの増加が得られることが
わかる。さらに、寛容因子tを0.945〜0.972
とすると、ΔPFの約50%に相当する出力因子S
ρの増加が得られることがわかる。
【0095】以上の結果から、キャリア濃度が一定であ
る場合において、キャリアを発生させないアルカリ土類
金属元素の種類及び量を最適化すると、熱電特性が向上
することがわかった。また、寛容因子tと熱電特性との
間に密接な関係があり、寛容因子tを適切に制御するこ
とによって、高いゼーベック係数Sと低い電気抵抗率ρ
とを同時に達成できることがわかった。
【0096】(実施例2)以下の手順に従い、{(Ca
0.4Sr0.6)0.9Gd0.1}Mn組成
を有し、かつab面が面配向した面配向焼結体を作製し
た。まず、フラックス法を用いて、擬正方{001}面
を発達面とするSrMnO板状粉末を合成した。次
いで、この板状粉末、SrCO、CaCO粉末、G
粉末及びMn粉末を化学量論組成となる
ように秤量し、これに所定量の有機溶媒を加えて24時
間湿式混合した。混合終了後、スラリーに所定量のバイ
ンダ及び可塑剤を添加し、さらに3時間湿式混合した。
【0097】次に、スラリーをポットから取り出し、テ
ープキャストにより厚さ約100μmのシート状に成形
した。さらに、得られたシートを重ね合わせ、温度:8
0℃、圧力:10MPaの条件で圧着した。さらに、ロ
ールプレス機により、この圧着シートを圧下率30%で
圧延した。
【0098】次に、得られた成形体を大気中において、
温度:600℃、加熱時間:4時間の条件下で脱脂し
た。次いで、脱脂後の成形体を圧力:300MPaの条
件下で静水圧処理した。さらに、この成形体を大気中に
おいて、温度:1450℃、加熱時間:5時間の条件下
で焼結した。
【0099】得られた配向焼結体について、実施例1と
同一の手順に従い、ab面と平行な方向のゼーベック係
数S及び電気抵抗率ρを測定した。その結果、ab面と
平行な方向の出力因子S/ρは、43.2×10−4
Wm−1−2であり、同一組成を有する無配向焼結体
(実験番号64)に比して、約4倍に増加した。これ
は、主としてab面と平行方向の電気抵抗率ρが約1/
4に低下し、ゼーベック係数Sがほとんど変化しなかっ
たためである。なお、本配向焼結体のab面と平行な方
向の熱伝導率κは、573Kにおいて、3.0W/mK
であった。
【00100】以上、本発明の実施の形態について詳細
に説明したが、本発明は上記実施の形態に何ら限定され
るものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々
の改変が可能である。
【0101】例えば、上記実施例においては、アルカリ
土類金属元素並びに置換元素M1として、それぞれ、C
a及びSr、並びにLa、Gd等の希土類元素を用いた
例について主に説明したが、Mg、Ba等の他のアルカ
リ土類金属元素、並びに他の希土類元素及びBi、Sn
等の置換元素M2を用いた場合も同様に、寛容因子を適
切に制御することによって、キャリア移動度が最大とな
る構造を安定化させることができる。
【0102】また、上記実施例においては、Ca及びS
rの2種類のアルカリ土類金属元素を用いて寛容因子t
を制御する例について主に説明したが、3種以上のアル
カリ土類金属元素を用いて寛容因子を制御し、これによ
ってキャリア移動度が最大となる構造を安定化させても
良い。
【0103】
【発明の効果】本発明に係る電子型熱電変換材料は、層
状ペロブスカイト型マンガン酸化物からなり、しかもア
ルカリ土類金属元素AEの種類及び含有量を最適化する
ことによってキャリア移動度が最大となる構造を安定化
させているので、キャリア濃度を比較的低い値に維持し
たまま、高いゼーベック係数、低い電気抵抗率及び低い
熱伝導率を同時に達成できるという効果がある。また、
高温における化学的安定性が高く、高温大気中におい
て、安定して高い熱電特性を示すという効果がある。
【0104】さらに、キャリア移動度が最大となる構造
を安定化させた層状ペロブスカイト型マンガン酸化物の
ab面を一方向に配向させると、配向方向の熱電特性が
向上するという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】 図1(a)は、x=0.4又は0.3、M1
=Gd、及びp=0.1の場合におけるマンガン層の
層数nと出力因子S/ρの関係を示す図であり、図2
(b)は、x=0.4又は0.3、及びM1=Gdの場
合におけるマンガン層の層数n、Mn当たりのキャリア
数p及び出力因子S/ρの関係を示す図であり、図
1(c)は、p=0.1の場合における寛容因子tと
出力因子S/ρの関係を示す図である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 谷 俊彦 愛知県愛知郡長久手町大字長湫字横道41番 地の1 株式会社豊田中央研究所内 (72)発明者 亀頭 直樹 愛知県豊橋市多米町字滝ノ谷34−209 Fターム(参考) 4G030 AA05 AA08 AA09 AA11 AA20 AA21 AA23 AA24 AA25 AA26 AA34 AA39 AA40 AA42 AA43 BA01 BA12 BA21 CA01 CA02 CA03 4G048 AA05 AB06 AC08 AD06 AD08 AE05

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 層状ペロブスカイト(An+1
    3n+1)構造を有し、その組成が、 一般式:(AE1−yM1)n+1(Mn1−zM2)
    3n+1−δ (但し、AEは、2種以上のアルカリ土類金属元素、M
    1は、希土類元素並びにBi、Sn、Sb、In及びP
    bの内の1種又は2種以上の元素、M2は、Ru、N
    b、Mo、W及びTaの内の1種又は2種以上の元素、
    0≦y≦0.5、1≦n≦5、0≦z≦0.5、y+z
    >0、−0.5≦δ≦+0.5)で表されるマンガン酸
    化物からなり、かつ寛容因子が0.9以上1.0以下で
    ある電子型熱電変換材料。
  2. 【請求項2】 層状ペロブスカイト(An+1
    3n+1)構造を有し、その組成が、 一般式:{(CaSr1−x)1−yM1}n+1Mn
    3n+1−δ (但し、M1は、希土類元素並びにBi、Sn、Sb、
    In及びPbの内の1種又は2種以上の元素、0<x<
    1、0<y≦0.5、1≦n≦5、−0.5≦δ≦+
    0.5)で表されるマンガン酸化物からなり、かつ寛容
    因子が0.9以上1.0以下である電子型熱電変換材
    料。
  3. 【請求項3】 その結晶構造が正方晶系、斜方晶系又は
    単斜晶系に属し、 573Kにおいて、電気抵抗率が0.02Ωcm以下、
    ゼーベック係数が負でその絶対値が50μV/K以上、
    及び熱伝導度が4W/mK以下である請求項1又は2に
    記載の電子型熱電変換材料。
  4. 【請求項4】 各結晶粒のab面が実質的に平行に配向
    した多結晶体からなり、 573Kにおいて、配向面に平行な方向の電気抵抗率が
    0.01Ωcm以下、ゼーベック係数が負でその絶対値
    が50μV/K以上、及び熱伝導度が4W/mK以下で
    ある請求項1又は2に記載の電子型熱電変換材料。
JP2002081169A 2002-03-22 2002-03-22 電子型熱電変換材料 Pending JP2003282966A (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2002081169A JP2003282966A (ja) 2002-03-22 2002-03-22 電子型熱電変換材料

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2002081169A JP2003282966A (ja) 2002-03-22 2002-03-22 電子型熱電変換材料

Publications (1)

Publication Number Publication Date
JP2003282966A true JP2003282966A (ja) 2003-10-03

Family

ID=29229917

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2002081169A Pending JP2003282966A (ja) 2002-03-22 2002-03-22 電子型熱電変換材料

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP2003282966A (ja)

Cited By (7)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2005124881A1 (ja) * 2004-06-22 2005-12-29 Aruze Corp. 熱電変換素子
WO2006004059A1 (ja) * 2004-07-01 2006-01-12 Aruze Corp. 熱電変換モジュール
JP2006261384A (ja) * 2005-03-17 2006-09-28 National Institute Of Advanced Industrial & Technology 酸化物熱電変換材料の構造
WO2007037332A1 (ja) * 2005-09-28 2007-04-05 Nec Corporation 相変化物質および熱制御装置
JP2010037131A (ja) * 2008-08-04 2010-02-18 National Institute Of Advanced Industrial & Technology n型熱電特性を有する酸化物焼結体
US9716217B2 (en) 2009-12-17 2017-07-25 Eberspaecher Exhaust Technology Gmbh & Co. Kg Exhaust system with thermoelectric generator
CN114656243A (zh) * 2022-02-25 2022-06-24 纯钧新材料(深圳)有限公司 钙锰氧热电材料及其制备方法

Cited By (15)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2005124881A1 (ja) * 2004-06-22 2005-12-29 Aruze Corp. 熱電変換素子
JP5160784B2 (ja) * 2004-06-22 2013-03-13 株式会社ユニバーサルエンターテインメント 熱電変換素子モジュール
JPWO2005124881A1 (ja) * 2004-06-22 2008-04-17 アルゼ株式会社 熱電変換素子
US8129610B2 (en) 2004-06-22 2012-03-06 Universal Entertainment Corporation Thermoelectric transducer
WO2006004059A1 (ja) * 2004-07-01 2006-01-12 Aruze Corp. 熱電変換モジュール
JPWO2006004059A1 (ja) * 2004-07-01 2008-04-24 アルゼ株式会社 熱電変換モジュール
US7868242B2 (en) 2004-07-01 2011-01-11 Universal Entertainment Corporation Thermoelectric conversion module
JP2006261384A (ja) * 2005-03-17 2006-09-28 National Institute Of Advanced Industrial & Technology 酸化物熱電変換材料の構造
JP4543127B2 (ja) * 2005-03-17 2010-09-15 独立行政法人産業技術総合研究所 酸化物熱電変換材料の構造
US7981532B2 (en) 2005-09-28 2011-07-19 Nec Corporation Phase-change substance, thermal control device and methods of use thereof
JP5046948B2 (ja) * 2005-09-28 2012-10-10 日本電気株式会社 相変化物質および熱制御装置
WO2007037332A1 (ja) * 2005-09-28 2007-04-05 Nec Corporation 相変化物質および熱制御装置
JP2010037131A (ja) * 2008-08-04 2010-02-18 National Institute Of Advanced Industrial & Technology n型熱電特性を有する酸化物焼結体
US9716217B2 (en) 2009-12-17 2017-07-25 Eberspaecher Exhaust Technology Gmbh & Co. Kg Exhaust system with thermoelectric generator
CN114656243A (zh) * 2022-02-25 2022-06-24 纯钧新材料(深圳)有限公司 钙锰氧热电材料及其制备方法

Similar Documents

Publication Publication Date Title
Delorme et al. Effect of Ca substitution by Sr on the thermoelectric properties of Ca3Co4O9 ceramics
US10950774B2 (en) Thermoelectric materials and devices comprising graphene
He et al. Oxide thermoelectrics: The challenges, progress, and outlook
JP5189289B2 (ja) ペロブスカイト型複合酸化物の製造方法
Park et al. Influence of partial substitution of Cu for Co on the thermoelectric properties of NaCo2O4
Kim et al. Thermoelectric properties of La3+ and Ce3+ co-doped CaMnO3 prepared by tape casting
Ji Metal oxide-based thermoelectric materials
Liu et al. Achieving enhanced thermoelectric performance of Ca1− x− yLaxSryMnO3 via synergistic carrier concentration optimization and chemical bond engineering
Prevel et al. Thermoelectric properties of sintered and textured Nd-substituted Ca3Co4O9 ceramics
WO2010147921A1 (en) Reduced low symmetry ferroelectric thermoelectric systems, methods and materials
Combe et al. Relationship between microstructure and thermoelectric properties of Bi 2 Sr 2 Co 2 O x bulk materials
Boyle et al. Competing dopants grain boundary segregation and resultant seebeck coefficient and power factor enhancement of thermoelectric calcium cobaltite ceramics
JP4168628B2 (ja) 熱電変換材料及びその使用方法
JP2003142742A (ja) マンガン酸化物熱電変換材料
Nag et al. Doping induced high temperature transport properties of Ca1− xGdxMn1− xNbxO3 (0≤ x≤ 0.1)
JP4635387B2 (ja) 板状粉末の製造方法及び結晶配向セラミックスの製造方法
JP2003282966A (ja) 電子型熱電変換材料
JP4608940B2 (ja) 熱電材料
JP4013245B2 (ja) 結晶配向セラミックス及びその製造方法、結晶配向セラミックス製造用板状粉末、並びに熱電変換素子
Bose et al. Effect of dual-doping on the thermoelectric transport properties of CaMn 1− x Nb x/2 Ta x/2 O 3
JP2004087537A (ja) p型熱電変換材料及びその製造方法
Nag et al. High temperature transport properties of co-substituted Ca1− xLnxMn1− xNbxO3 (Ln= Yb, Lu; 0.02≤ x≤ 0.08)
Tanwar et al. Role of structural distortion on thermoelectric aspects of heavily Sr2+ doped GdMnO3
US6806218B2 (en) Grain oriented ceramics, thermoelectric conversion element and production process thereof
Seo et al. Fabrication and thermoelectric properties of Sr1− xSixMnO3− δ