JP2003142742A - マンガン酸化物熱電変換材料 - Google Patents
マンガン酸化物熱電変換材料Info
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Abstract
とを同時に示し、しかも高温大気中において安定して高
い性能指数を示すマンガン酸化物熱電変換材料を提供す
ること。 【解決手段】 本発明に係るマンガン酸化物熱電変換材
料は、ペロブスカイト(ABO3)構造を有し、その組
成が、一般式:(AE1−yM1y)(Mn1− zM2z)
O3−δ(但し、AEは、2種以上のアルカリ土類金属
元素、M1は、希土類元素並びにBi、Sn、Sb、I
n及びPbの内の1種又は2種以上の元素、M2は、R
u、Nb、Mo、W及びTaの内の1種又は2種以上の
元素、0≦y≦0.5、0≦z≦0.5、y+z>0、
−0.5≦δ≦+0.5)で表されるマンガン酸化物か
らなり、かつ寛容因子が0.7以上1.0以下であるこ
とを特徴とする。
Description
電変換材料に関し、さらに詳しくは、太陽熱発電器、海
水温度差熱電発電器、化石燃料熱電発電器、工場廃熱や
自動車廃熱の回生発電器等の各種の熱電発電器、光検出
素子、レーザーダイオード、電界効果トランジスタ、光
電子増倍管、分光光度計のセル、クロマトグラフィーの
カラム等の温度を制御する精密温度制御装置、恒温装
置、冷暖房装置、冷蔵庫、時計用電源等に用いられる熱
電変換素子を構成する熱電変換材料として好適なマンガ
ン酸化物熱電変換材料に関する。
ェ効果を利用して、電気エネルギーを冷却や加熱に、ま
た逆に熱エネルギーを電気エネルギーに直接変換するこ
とをいう。熱電変換は、(1)エネルギー変換の際に余
分な老廃物を排出しない、(2)排熱の有効利用が可能
である、(3)材料が劣化するまで継続的に発電を行う
ことができる、(4)モータやタービンのような可動装
置が不要であり、メンテナンスの必要がない、等の特徴
を有していることから、エネルギーの高効率利用技術と
して注目されている。
電変換材料の特性を評価する指標としては、一般に、性
能指数Z(=S2/(ρκ)、但し、S:ゼーベック係
数、ρ:電気抵抗率、κ:熱伝導率)、又は性能指数Z
と、その値を示す絶対温度Tの積として表される無次元
性能指数ZTが用いられる。ゼーベック係数は、1Kの
温度変化によって生じる起電力の大きさを表す。熱電変
換材料は、それぞれ固有のゼーベック係数を持ってお
り、ゼーベック係数が正であるもの(p型)と、負であ
るもの(n型)に大別される。
変換材料とn型の熱電変換材料とを接合した状態で使用
される。このような接合対は、一般に、熱電変換素子と
呼ばれている。熱電変換素子の性能指数は、p型熱電変
換材料の性能指数Zp、n型熱電変換材料の性能指数Z
n、並びに、p型及びn型熱電変換材料の形状に依存
し、また、形状が最適化されている場合には、Zp及び
/又はZnが大きくなるほど、熱電変換素子の性能指数
が大きくなることが知られている。従って、性能指数の
高い熱電変換素子を得るためには、性能指数Zp、Zn
の高い熱電変換材料を用いることが重要である。
ば、Bi−Te系、Pb−Te系、Si−Ge系、酸化
物セラミックス系等の種々の材料が知られている。これ
らの中で、Bi−Te系及びPb−Te系の化合物半導
体は、それぞれ、室温近傍及び300〜500℃の中温
域において、優れた熱電特性(ZT〜0.8)を示す。
しかしながら、これらの化合物半導体は、高温域での使
用は困難である。また、材料中には高価な稀少元素(例
えば、Te、Sb、Seなど)や、毒性の強い環境負荷
物質(例えば、Te、Sb、Se、Pbなど)を含むと
いう問題がある。
000℃付近の高温域において優れた熱電特性(ZT〜
1.0)を示し、また、材料中に環境負荷物質を含まな
いという特徴がある。しかしながら、Si−Ge系の化
合物半導体は、高温大気中において長時間使用するため
には、材料表面を保護する必要があり、熱的耐久性が低
いという問題がある。
変換材料は、材料中に稀少元素や環境負荷物質を必ずし
も含まない。また、高温大気中において長時間使用して
も熱電特性の劣化が少なく、熱的耐久性に優れるという
特徴がある。そのため、酸化物セラミックス系の熱電変
換材料は、化合物半導体に代わる材料として注目されて
おり、熱電特性の高い新材料やその製造方法について、
従来から種々の提案がなされている。
化合物であるCaMnO3のCaサイトの10at%を
Bi、La、Ce等の3価又は4価の金属元素と置換
し、その電気伝導率及びゼーベック係数の評価を行って
いる(Michitaka Ohtaki et.al., Journal of Solid St
ate Chemistry 120, 105-111(1995)参照)。同文献に
は、高抵抗を示すn型半導体であるCaMnO3のCa
サイトの一部を高原子価元素と置換することによって、
電気伝導率が著しく増加し、ゼーベック係数の絶対値が
適度に減少する点、及び置換元素としてBiを用いた時
に、最大の出力因子(=S2/ρ)が得られる点が記載
されている。
は、n型熱電変換材料として、ストロンチウムとチタン
を含む複合酸化物を主成分とし、かつ所定量の酸素欠損
を有する酸化物半導体を用いた電子冷却素子が開示され
ている。
性能指数Zで評価でき、高いゼーベック係数S、低い電
気抵抗率ρ及び/又は低い熱伝導率κを示す材料ほど、
高性能な熱電変換材料となる。上述したように、CaM
nO3のCaサイトの一部を高原子価元素に置換した
り、あるいはSrTiO3系酸化物に対して酸素欠損を
導入する方法は、キャリア濃度を増大させ、電気抵抗率
ρを下げる方法として有効である。
リア濃度と負の相関があるので、単純に電気抵抗率ρを
下げるためにキャリア濃度を増大させると、ゼーベック
係数Sを減少させるという問題がある。そのため、上述
した従来の方法では、到達可能な性能指数Zに限界があ
る。
温で長時間の還元処理が必要であり、生産効率が低いと
いう問題がある。さらに、酸素欠損を有する酸化物半導
体を高温大気中で使用すると、使用中に酸素を吸収し、
電気抵抗率ρが急激に増加するという問題がある
ーベック係数Sと、低い電気抵抗率ρとを同時に示すマ
ンガン酸化物熱電変換材料を提供することにある。ま
た、本発明が解決しようとする他の課題は、高温大気中
においても安定して高い性能指数を示すマンガン酸化物
熱電変換材料を提供することにある。
に本発明に係るマンガン酸化物熱電変換材料は、ペロブ
スカイト(ABO3)構造を有し、その組成が、 一般式:(AE1−yM1y)(Mn1−zM2z)O
3−δ(但し、AEは、2種以上のアルカリ土類金属元
素、M1は、希土類元素並びにBi、Sn、Sb、In
及びPbの内の1種又は2種以上の元素、M2は、R
u、Nb、Mo、W及びTaの内の1種又は2種以上の
元素、0≦y≦0.5、0≦z≦0.5、y+z>0、
−0.5≦δ≦+0.5) で表されるマンガン酸化物からなり、かつ寛容因子が
0.7以上1.0以下であることを要旨とするものであ
る。
換材料の2番目は、ペロブスカイト(ABO3)構造を
有し、その組成が、 一般式:(CaxSr1−x−yM1y)MnO3−δ (但し、M1は、希土類元素並びにBi、Sn、Sb、
In及びPbの内の1種又は2種以上の元素、0<x<
1、x+y<1、0<y≦0.5、−0.5≦δ≦+
0.5) で表されるマンガン酸化物からなり、かつ寛容因子が
0.7以上1.0以下であることを要旨とするものであ
る。
変換材料の3番目は、立方晶系、正方晶系又は斜方晶系
に属するペロブスカイト(ABO3)構造を有し、Aサ
イト元素として2種以上のアルカリ土類金属元素を含む
マンガン酸化物からなり、かつ室温〜1000℃におい
て、電気抵抗率が0.01Ωcm以下、ゼーベック係数
が負でその絶対値が50μV/K以上、及び熱伝導率が
6W/mK以下であることを要旨とするものである。
類金属元素を含むペロブスカイト型マンガン酸化物にお
いて、Aサイト元素及び/又はBサイト元素の一部を高
原子価元素で置換すると、キャリア濃度を増加させるこ
とができる。また、これと同時に、ペロブスカイト型構
造の寛容因子が最適となるように、置換元素の種類及び
量に応じてアルカリ土類金属元素の種類及び量を制御す
ると、キャリア濃度を一定にしたまま、キャリア移動度
を増大させることができる。
電気抵抗率ρとを同時に達成することができる。また、
酸素欠損のみを用いてキャリアを導入する方法に比し
て、高温大気中において、安定して高い性能指数を示
す。
いて詳細に説明する。本発明の第1の実施の形態に係る
マンガン酸化物熱電変換材料は、ペロブスカイト(AB
O3)構造を有し、その組成が、次の化1の式に示す一
般式で表されるマンガン酸化物からなる。
1は、希土類元素並びにBi、Sn、Sb、In及びP
bの内の1種又は2種以上の元素、M2は、Ru、N
b、Mo、W及びTaの内の1種又は2種以上の元素、
0≦y≦0.5、0≦z≦0.5、y+z>0、−0.
5≦δ≦+0.5)
であるアルカリ土類金属元素AE(2価)の置換元素で
あり、マンガン酸化物中において3〜5価の価数を示
す。また、M2は、Bサイト元素であるMn(4価)の
置換元素であり、マンガン酸化物中において5価又は6
価の価数を示す。
酸化物にキャリアを導入するための元素であり、少なく
とも一方が添加されていればよい。また、置換元素M1
及びM2の置換量をそれぞれ表すy及びzの値は、いず
れも0.5以下が好ましい。y及び/又はzの値が0.
5を超えると、ホールがドープされp型半導体となるの
で好ましくない。さらに、各置換元素M1、M2は、そ
れぞれ単独で用いても良く、あるいは2種以上を組み合
わせて用いても良い。
般式で表されるが、製造条件によっては、酸素が過剰と
なったり、あるいは酸素欠損が生ずる場合がある。本発
明に係るマンガン酸化物熱電変換材料は、このような過
剰酸素又は酸素欠損が含まれていても良い。
表すδの値は、具体的には、−0.5以上+0.5以下
が好ましい。マンガン酸化物に酸素欠損が発生すると、
Bサイト元素であるMnの価数が変わって3価と4価の
混合原子価状態となり、キャリアが導入されるが、δの
値が、−0.5未満であると、キャリア濃度が過大とな
り、ゼーベック係数Sが低下するので好ましくない。一
方、δの値が+0.5を超えると、高原子価元素が過剰
酸素によって電気的に中和されるために、キャリア濃度
が低下し、電気抵抗率ρが増大するので好ましくない。
ン酸化物を高温大気中に曝すと、酸素の放出又は吸収が
起こり、熱電特性が経時変化する。従って、高温大気中
において安定して高い熱電特性を示す熱電変換材料を得
るためには、δの値は、−0.05以上+0.05以下
が好ましく、さらに好ましくは、−0.02以上+0.
02以下である。
材料は、寛容因子が所定の範囲内にあることを特徴とす
る。ここで、ペロブスカイト型化合物の結晶構造は、理
想的には立方晶であるが、Aサイト元素、Bサイト元素
及びこれらの置換元素の種類、並びに置換元素の量に応
じて、正方晶、斜方晶、単斜晶など、立方格子から歪ん
だ構造をとる場合がある。「寛容因子(t)」とは、こ
のようなペロブスカイト構造の立方格子からの歪の大き
さや結晶格子の対称性と密接な関係があるパラメータを
いい、次の数1の式で定義される。
在するキャリアの移動度とも密接な関係があり、寛容因
子tを最適化することによって、キャリア濃度を一定に
保ったまま、キャリア移動度のみを増加させることがで
きる。この点は、本願発明者らによって初めて見出され
たものである。
において、rA及びrBとして、それぞれ、酸素−6配
位イオン半径を用いた場合、寛容因子tは、0.7以上
1.0以下が好ましい。また、高いキャリア移動度を得
るためには、寛容因子tは、特に、0.85以上1.0
以下が好ましく、さらに好ましくは、0.91以上0.
94以下である。
は、主に置換元素M1、M2の種類及び含有量によって
制御することができる。これに対し、置換元素M1、M
2の種類及び含有量が与えられた場合において、寛容因
子tは、イオン半径の異なる2種以上のアルカリ土類金
属元素AEの種類及び含有量を制御することによって最
適化することができる。すなわち、化1の式において、
アルカリ土類金属元素AEの種類及び含有量は、寛容因
子tが所定の範囲内となるように、その種類及び添加量
を任意に選択することができる。
換材料において、その微構造は、特に限定されるもので
はなく、緻密質又は多孔質のいずれであっても良い。一
般に、熱電変換材料の性能指数Zは、熱伝導率κに依存
し、熱伝導率κが小さい材料ほど、高い熱電特性を示
す。また、材料の熱伝導率κは、材料の組成と微構造
(すなわち、気孔率、気孔径等)に依存し、組成が同一
である場合には、緻密質よりも多孔質である方が高い熱
電特性を示す。但し、多孔質構造を有する材料の場合、
その気孔率は、30%以下が好ましい。気孔率が30%
を超えると、材料の強度が低下するので好ましくない。
したように、立方晶、正方晶、斜方晶、単斜晶など、種
々の結晶構造をとるが、本発明に係るマンガン酸化物熱
電変換材料は、いずれの結晶系に属するものであっても
良く、特に限定されるものではない。但し、対称性の高
い結晶構造を有しているほど、大きなキャリア移動度が
得やすいという利点がある。マンガン酸化物の結晶構造
は、具体的には、立方晶系、正方晶系又は斜方晶系のい
ずれかに属していることが望ましい。
換元素M1、M2及びアルカリ土類金属元素AEの種類
及び含有量に応じて、熱電特性の異なる種々の熱電変換
材料となる。特に、立方晶系、正方晶系又は斜方晶系に
属するペロブスカイト(ABO3)構造を有し、Aサイ
ト元素として2種以上のアルカリ土類金属元素AEを含
むマンガン酸化物は、寛容因子tを最適化することによ
って、室温〜1000℃において、電気抵抗率ρが0.
01Ωcm以下、ゼーベック係数Sが負でその絶対値が
50μV/K以上、及び熱伝導率が6W/mK以下の値
を示すn型の熱電変換材料となる。
ンガン酸化物熱電変換材料について説明する。本実施の
形態に係るマンガン酸化物熱電変換材料は、第1の実施
の形態に係るマンガン酸化物熱電変換材料において、寛
容因子tを最適化するためのアルカリ土類金属元素AE
として、Ca及びSrを選択した点を特徴とするもので
ある。アルカリ土類金属元素AEとしてCa及びSrを
用いたペロブスカイト型マンガン酸化物は、熱電特性に
優れたn型の熱電変換材料となる。
O3)構造を有し、その組成が、次の化2の式に示す一
般式で表されるマンガン酸化物からなるものは、特に優
れた熱電特性を示す。
In及びPbの内の1種又は2種以上の元素、0<x<
1、x+y<1、0<y≦0.5、−0.5≦δ≦+
0.5)
は、0.7以上1.0以下が好ましい点、高いキャリア
移動度を得るためには、寛容因子tは、特に、0.85
以上1.0以下が好ましく、さらに好ましくは、0.9
1以上0.94以下である点、及び結晶構造は、立方
晶、正方晶又は斜方晶が好ましい点は、第1の実施の形
態に係るマンガン酸化物熱電変換材料と同様である。
は、単独で用いても良く、あるいは2種以上を組み合わ
せて用いても良い点、及び、高温における化学的安定性
に優れた熱電変換材料を得るためには、δの値は、−
0.05以上+0.05以下が好ましく、さらに好まし
くは、−0.02以上−0.02以下である点は、上述
した化1の式と同様である。
換材料の作用について説明する。ABO3で表されるペ
ロブスカイト構造を有する遷移金属酸化物半導体は、多
くの場合、アルカリ土類金属元素により構成されるAイ
オン、又は遷移金属元素により構成されるBイオンを高
原子価のイオンで置換することにより、キャリアである
電子が導入され、導電性を示す。
係数S、電気抵抗率ρ(又は電気抵抗率ρの逆数である
電気伝導率σ)、及び熱伝導率κに依存する。これらの
内、ゼーベック係数Sと電気伝導率σとは、導入された
キャリア濃度nとの間に、それぞれ、次の数2の式及び
数3の式で表される関係がある。
ャリア濃度nとの間には正の相関があるので、酸化物半
導体中のキャリア濃度nが高くなるほど、電気伝導率σ
は大きくなる。一方、数2の式に示すように、ゼーベッ
ク係数Sとキャリア濃度nとの間には負の相関があるの
で、酸化物半導体中のキャリア濃度nが高くなるほど、
ゼーベック係数Sは、低下する。従って、酸化物半導体
の性能指数Zを高くするために、単にキャリア濃度nを
増加させ、電気伝導率σを高くする方法では、到達可能
な性能指数Zに限界がある。
に、電気伝導率σは、キャリア移動度μとの間に正の相
関がある。また、ペロブスカイト構造中のキャリア移動
度μは、BO6八面体のB−O−B結合角及びB−O結
合距離に依存し、ある一定のキャリア濃度で比較した場
合には、B−O−B結合角が180゜に近づくほど、及
び/又はB−O結合距離がある一定の値に近づくほど、
キャリア移動度μは増加する。
ま、B−O−B結合角及び/又はB−O結合距離を適切
に制御することができれば、キャリア移動度μのみ、す
なわち電気伝導率σのみを増加させることができる。
れたものであり、B−O−B結合角及びB−O結合距離
を最適化し、キャリア移動度μのみを増加させるため
に、寛容因子tというパラメータを用いた点に特徴があ
る。また、キャリア濃度nを低く抑えたまま、寛容因子
tを最適化するために、キャリアを発生しない2種以上
のアルカリ土類金属元素AEを組み合わせて用いた点に
特徴がある。
ロブスカイト構造マンガン酸化物半導体に高原子価の置
換元素M1、M2を固溶させると、所定量のキャリアを
導入することができる。また、これと同時に、寛容因子
tが最適となるように、イオン半径の異なる2種以上の
アルカリ土類金属元素AEの種類及び含有量を制御する
と、キャリア濃度nを増加させることなく、キャリア移
動度μが最大となる構造を安定化させることができる。
さらに、ペロブスカイト構造の中でも、立方晶系、正方
晶系又は斜方晶系に属するものは、結晶格子の歪が小さ
いために、B−O−B結合角及びB−O結合距離の最適
化が容易であり、キャリア移動度μの高い構造を安定化
させやすい。
は困難であった、高いゼーベック係数Sと、低い電気抵
抗率ρ(又は高い電気伝導率σ)とを同時に示す高性能
な熱電変換材料が得られる。また、酸素欠損のみを用い
てキャリア濃度nを制御する従来の方法に比して、高温
における化学的安定性が増し、800〜1000℃程度
の高温度環境でも優れた熱電特性を示す。
(CaxSr1−x−yM1y)MnO3で表される組成
を有するペロブスカイト構造マンガン酸化物を作製し
た。まず、出発原料として、SrCO3、CaCO3,
M12O3(但し、M1=Sm、Gd、Dy)及びMn
2O3(いずれも、(株)高純度科学研究所製)を用
い、それぞれ所定の組成となるようにこれらを配合し、
ボールミルで24時間混合した。
温度:1300℃、保持時間:5時間の条件下で、仮焼
を行った。次いで、仮焼した粉末を解砕した後、加圧
力:50MPaの条件下で金型成形した。さらに、得ら
れた成形体を大気中において、温度:1550℃、保持
時間:5時間の条件下で焼結した。
定及び粉末X線回折を行った。その結果、焼結体の相対
密度は、いずれも90%以上であった。また、いずれの
焼結体とも、生成相は、ペロブスカイト単相であった。
し、373Kにおける電気伝導率(1/ρ)及びゼーベ
ック係数Sを測定した。また、数1の式を用いて、各試
料について、それぞれ寛容因子tを算出した。なお、寛
容因子tを算出する際には、イオン半径として、シャノ
ンの報告値(R.D.Shannon、Acta Cryst. A32, 751(197
6)参照)を用いた。また、Aサイトイオンは、正確には
12配位であるが、近似的にA、B両サイトとも6配位
でのイオン半径を用いた。表1に、各試料の組成、寛容
因子t、電気伝導率(1/ρ)、ゼーベック係数S及び
出力因子S2/ρを示す。
(x=0)を用い、キャリア濃度をほぼ一定(y=0.
08〜0.10)とした実験番号1〜4の場合、置換元
素M1(Sm、Gd、Dy)のイオン半径が小さくなる
ほど、寛容因子tは減少した。また、この範囲では、寛
容因子tが減少するに伴い、ゼーベック係数Sは僅かに
減少するが、電気伝導率(1/ρ)は著しく増加した。
その結果、実験番号4の出力因子は、実験番号1の約
2.6倍に増加した。
ャリア濃度を一定(y=0.08)とし、かつアルカリ
土類金属元素AEとしてCa及びSrを用いた実験番号
5〜10の場合、イオン半径の小さいCaの含有量が多
くなるほど、寛容因子tは減少した。しかしながら、電
気伝導率(1/ρ)は、x=0.4の時に極大となり、
ゼーベック係数Sは、x=0.3の時に極小となった。
その結果、出力因子S 2/ρは、x=0.4の時に極大
となった。
アルカリ土類金属元素AEとしてCaのみを用いた実験
番号11の場合、実験番号10に比して、ゼーベック係
数Sは増大したが、電気伝導率(1/ρ)は低下した。
また、これによって、出力因子S2/ρは、実験番号1
0より低下した。
関係を示す。なお、図1には、上述したM.Ohtakiらによ
って報告されている材料組成、電気伝導率σ及びゼーベ
ック係数Sに基づいて算出した寛容因子tと出力因子S
2/ρの関係も併せて示した。図1より、寛容因子tが
0.88を超えると、出力因子S2/ρが急激に増加す
ることがわかる。また、寛容因子tが0.91〜0.9
4の範囲で出力因子S 2/ρが極大となり、さらに寛容
因子tが0.96を超えると、再び出力因子S 2/ρが
急激に低下することがわかる。
る場合において、キャリアを発生させないアルカリ土類
金属元素の種類及び量を最適化すると、熱電特性が向上
することがわかった。また、寛容因子tと熱電特性との
間に密接な関係があり、寛容因子tを適切に制御するこ
とによって、高いゼーベック係数と低い電気抵抗率とを
同時に達成できることがわかった。
い、x=0.5、y=0.04(実験番号21)又は
0.03(実験番号22)とした以外は、実施例1と同
一の手順に従い、焼結体を作製した。得られた各焼結体
について、焼結体密度の測定及び粉末X線回折を行い、
いずれも相対密度が90%以上であること、及び生成相
がペロブスカイト単相であることを確認した。
3Kにおける電気伝導率(1/ρ)及びゼーベック係数
を測定した。また、実施例1と同一の手法を用いて、寛
容因子tを算出した。表2に、各試料の組成、寛容因子
t、電気伝導率(1/ρ)、ゼーベック係数S及び出力
因子S2/ρを示す。
実験番号9に比して、置換元素M1の量を表すyの値
(すなわち、キャリア濃度)が半分以下になっているに
もかかわらず、電気伝導率(1/ρ)は、実験番号9と
ほぼ同等であった。これは、寛容因子tが最適値(約
0.93)に制御されたことによって、結晶構造が最適
化され、キャリア移動度が増大したためと考えられる。
係数Sは、キャリア濃度が半分以下になっているため
に、実験番号9に比して大幅に増加した。その結果、実
験番号21及び22の出力因子S2/ρは、いずれも実
験番号9より増大した。
2/ρが得られた実験番号21の焼結体について、47
3K〜1123Kの高温域で電気伝導率(1/ρ)及び
ゼーベック係数Sを測定し、出力因子S2/ρを算出し
た。図2に、測定温度と出力因子S2/ρの関係を示
す。なお、図2には、上述したM.Ohtakiらによって測定
された、Ca0.9Bi0.1MnO3の出力因子S2
/ρの値も併せて示した。
の出力因子S2/ρは、全測定温度範囲において、Ca
0.9Bi0.1MnO3の1.5倍以上であり、M.Oh
takiらによって報告された最高データを遙かに上回る特
性を示していることがわかる。
説明したが、本発明は上記実施の形態に何ら限定される
ものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の
改変が可能である。
土類金属元素並びに置換元素M1として、それぞれ、C
a及びSr、並びにGdを用いた例について主に説明し
たが、Mg、Ba等の他のアルカリ土類金属元素及び/
又はLa、Sm等の他の希土類元素を用いた場合も同様
に、寛容因子を適切に制御することによって、キャリア
移動度が最大となる構造を安定化させることができる。
物に限られるものではなく、従来抵抗率が高いことが問
題となっている同様な構成元素と骨格構造を有する層状
ペロブスカイト系に対しても適用可能であり、これによ
ってさらに高性能な熱電変換材料を開発することができ
る。
料は、置換元素M1、M2によってキャリア濃度を比較
的低い値に維持したまま、アルカリ土類金属元素AEの
種類及び含有量を最適化することによってキャリア移動
度が最大となる構造を安定化させているので、高いゼー
ベック係数と低い電気抵抗率とを同時に達成できるとい
う効果がある。また、高温における化学的安定性が高
く、高温大気中において、安定して高い熱電特性を示す
という効果がある。
係を示す図である。
す図である。
Claims (3)
- 【請求項1】 ペロブスカイト(ABO3)構造を有
し、その組成が、 一般式:(AE1−yM1y)(Mn1−zM2z)O
3−δ (但し、AEは、2種以上のアルカリ土類金属元素、M
1は、希土類元素並びにBi、Sn、Sb、In及びP
bの内の1種又は2種以上の元素、M2は、Ru、N
b、Mo、W及びTaの内の1種又は2種以上の元素、
0≦y≦0.5、0≦z≦0.5、y+z>0、−0.
5≦δ≦+0.5)で表されるマンガン酸化物からな
り、かつ寛容因子が0.7以上1.0以下であるマンガ
ン酸化物熱電変換材料。 - 【請求項2】 ペロブスカイト(ABO3)構造を有
し、その組成が、 一般式:(CaxSr1−x−yM1y)MnO3−δ (但し、M1は、希土類元素並びにBi、Sn、Sb、
In及びPbの内の1種又は2種以上の元素、0<x<
1、x+y<1、0<y≦0.5、−0.5≦δ≦+
0.5)で表されるマンガン酸化物からなり、かつ寛容
因子が0.7以上1.0以下であるマンガン酸化物熱電
変換材料。 - 【請求項3】 立方晶系、正方晶系又は斜方晶系に属す
るペロブスカイト(ABO3)構造を有し、 Aサイト元素として2種以上のアルカリ土類金属元素を
含むマンガン酸化物からなり、かつ室温〜1000℃に
おいて、電気抵抗率が0.01Ωcm以下、ゼーベック
係数が負でその絶対値が50μV/K以上、及び熱伝導
率が6W/mK以下であるマンガン酸化物熱電変換材
料。
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