JP4013245B2 - 結晶配向セラミックス及びその製造方法、結晶配向セラミックス製造用板状粉末、並びに熱電変換素子 - Google Patents

結晶配向セラミックス及びその製造方法、結晶配向セラミックス製造用板状粉末、並びに熱電変換素子 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、結晶配向セラミックス及びその製造方法、結晶配向セラミックス製造用板状粉末、並びに熱電変換素子に関し、さらに詳しくは、太陽熱発電器、海水温度差熱電発電器、化石燃料熱電発電器等の各種の熱電発電器、光検出素子、レーザーダイオード、電界効果トランジスタ、光電子増倍管、分光光度計のセル、クロマトグラフィーのカラム等の精密温度制御装置、恒温装置、冷暖房装置、冷蔵庫、時計用電源等に用いられる熱電変換素子を構成する熱電変換材料として好適な結晶配向セラミックス及びその製造方法、結晶配向セラミックス製造用板状粉末、並びに、このような結晶配向セラミックスを熱電変換材料として用いた熱電変換素子に関する。
【0002】
【従来の技術】
熱電変換とは、セーベック効果やペルチェ効果を利用して、電気エネルギーを冷却や加熱に、また逆に熱エネルギーを電気エネルギーに直接変換することをいう。熱電変換は、(1)エネルギー変換の際に余分な老廃物を排出しない、(2)排熱の有効利用が可能である、(3)材料が劣化するまで継続的に発電を行うことができる、(4)モータやタービンのような可動装置が不要であり、メンテナンスの必要がない、等の特徴を有していることから、エネルギーの高効率利用技術として注目されている。
【0003】
熱を電気に変換できる材料、すなわち、熱電変換材料の特性を評価する指標としては、一般に、性能指数Z(=Sσ/κ、但し、S:ゼーベック係数、σ:電気伝導率、κ:熱伝導率)、又は、性能指数Zと、その値を示す絶対温度Tの積として表される無次元性能指数ZTが用いられる。ゼーベック係数は、1Kの温度変化によって生じる起電力の大きさを表す。熱電変換材料は、それぞれ固有のゼーベック係数を持っており、ゼーベック係数が正であるもの(p型)と、負であるもの(n型)に大別される。
【0004】
また、熱電変換材料は、通常、p型の熱電変換材料とn型の熱電変換材料とを接合した状態で使用される。このような接合対は、一般に、熱電変換素子と呼ばれている。熱電変換素子の性能指数は、p型熱電変換材料の性能指数Z、n型熱電変換材料の性能指数Z、並びに、p型及びn型熱電変換材料の形状に依存し、また、形状が最適化されている場合には、Z及び/又はZが大きくなるほど、熱電変換素子の性能指数が大きくなることが知られている。従って、性能指数の高い熱電変換素子を得るためには、性能指数Z、Zの高い熱電変換材料を用いることが重要である。
【0005】
このような熱電変換材料としては、例えば、Bi−Te系、Pb−Te系、Si−Ge系、酸化物セラミックス系等の種々の材料が知られている。これらの中で、Bi−Te系及びPb−Te系の化合物半導体は、それぞれ、室温近傍及び300〜500℃の中温域において、優れた熱電特性(ZT〜0.8)を示す。しかしながら、これらの化合物半導体は、高温域での使用は困難である。また、材料中には高価な稀少元素(例えば、Te、Sb、Seなど)や、毒性の強い環境負荷物質(例えば、Te、Sb、Se、Pbなど)を含むという問題がある。
【0006】
一方、Si−Ge系の化合物半導体は、1000℃付近の高温域において優れた熱電特性(ZT〜1.0)を示し、また、材料中に環境負荷物質を含まないという特徴がある。しかしながら、Si−Ge系の化合物半導体は、高温大気中において長時間使用するためには、材料表面を保護する必要があり、熱的耐久性が低いという問題がある。
【0007】
これに対し、酸化物セラミックス系の熱電変換材料は、材料中に稀少元素や環境負荷物質を必ずしも含まない。また、高温大気中において長時間使用しても熱電特性の劣化が少なく、熱的耐久性に優れるという特徴がある。そのため、酸化物セラミックス系の熱電変換材料は、化合物半導体に代わる材料として注目されており、熱電特性の高い新材料やその製造方法について、従来から種々の提案がなされている。
【0008】
例えば、A.C.Massetらは、コバルトを含有する層状酸化物の一種であるCaCoの多結晶体及び単結晶を作製し、その結晶構造と熱電特性の評価を行っている(A.C.Masset et al., Phys. Rev. B, 62(1), pp.166-175, 2000参照)。同文献には、CaCoは、岩塩型の結晶構造を有するCaCoO層と、CdI型の結晶構造を有するCoO層が、所定の周期でc軸方向に積層された格子不整合層状酸化物である点が記載されている。
【0009】
また、同文献には、CaCoの比抵抗に異方性があり、{00l}面内の比抵抗は、{00l}面に垂直な方向(すなわち、c軸方向)の比抵抗より格段に小さくなる点が記載されている。さらに、CaCo単結晶の{00l}面方向のゼーベック係数は、300K近傍において約125μV/Kに達し、ゼーベック係数の温度依存性も小さい点が記載されている。
【0010】
なお、コバルトを含有する層状酸化物の「{00l}面」とは、熱電特性が高い面、すなわち、CoO層と平行な面をいう。コバルトを含有する層状酸化物は、結晶構造が明らかになっていないものが多く、また、単位格子の取り方によって結晶軸及び結晶面の定義が異なるが、本発明においては、{00l}面を上述のように定義する。
【0011】
また、例えば、特開2001−19544号公報には、BiSr2−xCaCo、Bi2−yPbSrCo、BiSr2−zLaCo等の一般式(但し、0≦x≦2、0≦y≦0.5、0<z≦0.5)で表される組成を有し、層状の結晶構造を有し、かつ1.0×10S/m以上の電気伝導度を有する複合酸化物焼結体が開示されている。また、同公報には、Bi供給源、Sr供給源、Ca供給源、Co供給源等の原料を加圧成形し、この成形体を一軸加圧しながら酸素雰囲気中で加熱することによって原料の一部を部分溶融させた後、徐冷する複合酸化物の製造方法が開示されている。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
CaCo、BiSr2−xCaCo等のコバルトを含有する層状酸化物は、相対的に大きなゼーベック係数を有するp型の熱電変換材料であり、しかも、その熱電特性には、結晶方位に応じた異方性がある。従って、熱電特性の高い結晶面({00l}面)が一方向に配向した材料を用いれば、熱電特性の異方性を最大限に利用することができ、性能指数の向上が期待できる。また、これを用いた熱電変換素子の性能指数の向上も期待できる。
【0013】
しかしながら、CaCO、Co等の成分元素を含む単純化合物の混合物を仮焼し、これを成形・焼結する通常のセラミックス製造プロセスでは、熱電特性の高い結晶面が一方向に配向したコバルト層状酸化物の焼結体は得られない。
【0014】
一方、特開2001−19544号公報には、成形体を一軸加圧しながら原料の一部を部分溶融させた後、徐冷すると、冷却過程において再結晶が起こり、加圧面に平行な方向に沿って{00l}面が成長した結晶粒からなる焼結体が得られる点が記載されている。しかしながら、この方法では、再結晶によって所望の結晶が得られる物質系や組成のみに限られ、例えば、結晶化の際に分相や結晶構造の変化を生ずる系には適用できないという問題がある。
【0015】
さらに、熱電特性の高い結晶面を配向させるために、コバルトを含有する層状酸化物を単結晶化することも考えられる。しかしながら、単結晶は、製造コストが高いという問題がある。また、一般に、小さな単結晶は得られるが、熱電変換に用いるミリメートルオーダーサイズのバルク材料の作製は困難である。
【0016】
本発明が解決しようとする課題は、優れた熱電特性を示すコバルトを含有する層状酸化物からなり、かつ、高い性能指数を有する結晶配向セラミックスを提供することにある。また、本発明が解決しようとする他の課題は、物質系によらず広範囲な系の結晶配向セラミックスに適用でき、かつ、これを効率よく製造することが可能な結晶配向セラミックスの製造方法を提供することにある。
【0017】
また、本発明が解決しようとする他の課題は、このような結晶配向セラミックスの製造に適した結晶配向セラミックス製造用板状粉末を提供することにある。さらに、本発明が解決しようとする他の課題は、このような結晶配向セラミックスを熱電変換材料として用いた熱電変換素子を提供することにある。
【0018】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために本発明に係る結晶配向セラミックスは、コバルトを含有する層状酸化物の多結晶体からなり、該多結晶体を構成する各結晶粒の{00l}面の配向度が50%以上であることを要旨とするものである。
【0019】
本発明に係る結晶配向セラミックスは、優れた熱電特性を示すコバルトを含有する層状酸化物の多結晶体からなり、しかも、各結晶粒の{00l}面が高い配向度で配向しているので、{00l}面が配向している方向と平行な方向の性能指数は、同一組成を有する無配向焼結体の性能指数より高い値を示す。
【0020】
また、本発明に係る結晶配向セラミックスの製造方法は、その発達面がコバルトを含有する層状酸化物のCoO層と格子整合性を有する板状粉末と、該板状粉末と反応して前記層状酸化物となる層状酸化物生成原料とを混合する混合工程と、該混合工程で得られた混合物を前記板状粉末が配向するように成形する成形工程と、該成形工程で得られた成形体を加熱し、前記板状粉末と前記層状酸化物生成原料とを反応させる焼結工程とを備えていることを要旨とするものである。
【0021】
その発達面がコバルトを含有する層状酸化物のCoO層({00l}面)と格子整合性を有する板状粉末と、所定の組成を有する層状酸化物生成原料とを反応させると、板状粉末の配向方位を承継したコバルトを含有する層状酸化物の板状結晶が生成する。そのため、このような板状粉末を成形体中に配向させ、所定の温度で加熱すれば、{00l}面の発達したコバルトを含有する層状酸化物の板状結晶が一方向に配向した結晶配向セラミックスが得られる。
【0022】
また、本発明に係る結晶配向セラミックスの製造用板状粉末は、Co(OH)からなり、かつ、{00l}面を発達面とする板状粉末、Coからなり、かつ{111}面を発達面とする板状粉末、及びCoOからなり、かつ{111}面を発達面とする板状粉末から選ばれる1種又は2種以上の板状粉末からなる。Co(OH)、Co及びCoOは、それぞれ、{00l}面、{111}面及び{111}面を発達面とする板状粉末の製造が比較的容易である。また、これらの結晶面は、コバルト層状酸化物のCoO層と極めて良好な格子整合性を有している。そのため、これらの板状粉末を反応性テンプレートとして用いれば、請求項1からまでのいずれかに記載の結晶配向セラミックスを容易に製造することができる。
【0023】
さらに、本発明に係る熱電変換素子は、熱電変換材料として本発明に係る結晶配向セラミックスを用いたことを要旨とするものである。本発明に係る結晶配向セラミックスは、同一組成を有する無配向焼結体の性能指数より高い性能指数を有しているので、これを用いた熱電変換素子は、同一組成を有する無配向焼結体を用いた熱電変換素子よりも高い性能指数を示す。
【0024】
【発明の実施の形態】
以下に本発明の実施の形態について詳細に説明する。本発明に係る結晶配向セラミックスは、コバルトを含有する層状酸化物(以下、これを「コバルト層状酸化物」という。)の多結晶体からなり、多結晶体を構成する各結晶粒の{00l}面の配向度が50%以上であることを特徴とする。
【0025】
ここで、「コバルト層状酸化物」とは、構造は明確にされていないが、CoO層からなる第1副格子と、CoO層とは異なる層からなる第2副格子とが所定の周期で堆積した層状化合物、すなわち、CoO層を副格子とする層状化合物をいう。これらの内、第一副格子(CoO層)は電導層であり、第2副格子は絶縁層であると現在のところ考えられている。
【0026】
第1副格子は、1層又は2層以上のCoO層からなる。また、「CoO層」とは、正八面体の中心に1個のCo原子があり、かつ、その頂点に合計6個の酸素原子があるCoO八面体が、酸素を共有する形で二次元的に連結したものをいう。この場合、CoO層に含まれるCo原子の一部は、他の金属元素(例えば、Cu等)に置換されていても良い。
【0027】
一方、第2副格子は、CoO層とは異なる層であれば良く、その組成や構造については、特に限定されるものではない。すなわち、第2副格子は、1種類の層からなるものであっても良く、あるいは、組成や副格子構造の異なる2種以上の層が規則的又は不規則的に組み合わされたものであっても良い。但し、高い熱電特性を得るためには、第2副格子は、岩塩構造又は歪んだ岩塩構造を有するものが特に好適である。
【0028】
また、第1副格子と第2副格子は、交互に堆積していれば良く、その堆積周期は、特に限定されるものではない。すなわち、コバルト層状酸化物は、1層又は2層以上のCoO層(第1副格子)と、1層又は2層以上の他の層(第2副格子)とが、短周期もしくは長周期で規則的に堆積したものであっても良く、あるいは、これらが不規則的に堆積したものであっても良い。
【0029】
コバルト層状酸化物としては、具体的には、CaCo、BiCaCo、BiSrCo、BiBaCo等、及び、これらの層状酸化物を構成する陽イオン元素の一部が他の元素に置換された層状酸化物が好適な一例として挙げられる。これらの中でも、カルシウムを含有するコバルト層状酸化物(以下、これを「カルシウムコバルト層状酸化物」という。)、特に、次の化1の一般式で表されるカルシウムコバルト層状酸化物は、高い熱電特性を有しているので、結晶方位を一方向に揃えることによって、高い性能指数を有する熱電変換材料となる。
【0030】
【化1】
{(Ca1−xCoO3+α}(CoO2+β
(但し、Aは、アルカリ金属、アルカリ土類金属及びBiから選ばれる1種又は2種以上の元素、0≦x≦0.3、0.5≦y≦2.0、0.85≦{3+α+(2+β)y}/(3+2y)≦1.15)
【0031】
なお、化1の式において、「0.85≦{3+α+(2+β)y}/(3+2y)≦1.15」は、基本組成({(Ca1−x)CoO}(CoO) )を有するカルシウムコバルト層状酸化物に含まれる酸素の化学量論量(3+2y)に対し、最大で±15atm%の範囲で酸素が過剰となったり、あるいは、酸素の欠損を生ずる場合があることを示す。この場合、増減する酸素は、第1副格子に含まれる酸素(β)又は第2副格子に含まれる酸素(α)のいずれか一方であっても良く、あるいは、双方の酸素であっても良い。
【0032】
化1の式に示すカルシウムコバルト層状酸化物において、Caの一部を元素Aで置換すると、層状酸化物の電気伝導率が向上するという効果がある。但し、元素AによるCaの置換量が過大になると、大気中の水分と反応するなど化学的に不安定になるので、置換量は30atm%以下が好ましい。
【0033】
また、化1の式に示すカルシウムコバルト層状酸化物において、第1副格子及び/又は第2副格子に含まれるCoの一部をCu、Sn、Mn、Ni、Fe、Zr及びCrから選ばれる1種又は2種以上の元素Cで置換しても良い。Coの一部を元素Cで置換すると、層状酸化物のゼーベック係数が向上するという効果がある。この場合、元素CによるCoの置換量は、25atm%以下が好ましい。
【0034】
高い熱電特性を示すコバルト層状酸化物の他の具体例としては、次の化2の一般式で表されるものが好適な一例として挙げられる。化2の式で表されるコバルト層状酸化物もまた、結晶方位を一方向に揃えることによって、高い性能指数を有する熱電変換材料となる。
【0035】
【化2】
(Bi1−xーyCo1+α)(CoO2+β
(但し、Bは、アルカリ金属及びアルカリ土類金属から選ばれる1種又は2種以上の元素、0.2≦x≦0.8、0≦y<0.5、0.2≦x+y≦1、0.25≦z≦0.5、0.85≦{1+α+(2+β)z}/(1+2z)≦1.15)
【0036】
なお、化2の式において、「0.85≦{1+α+(2+β)z}/(1+2z)≦1.15」は、基本組成( (Bi1−xーyCoO)(CoO))を有するコバルト層状酸化物に含まれる酸素の化学量論量(1+2z)に対し、最大で±15atm%の範囲で酸素が過剰となったり、あるいは、酸素の欠損を生ずる場合があることを示す。この場合、増減する酸素は、第1副格子に含まれる酸素(β)又は第2副格子に含まれる酸素(α)のいずれか一方であっても良く、あるいは、双方の酸素であっても良い。
【0037】
また、化2の式に示すコバルト層状酸化物において、第1副格子及び/又は第2副格子に含まれるCoの一部を元素Cで置換しても良い。Coの一部を元素Cで置換すると、層状酸化物のゼーベック係数及び/又は電気伝導度が向上するという効果がある。この場合、元素CによるCoの置換量は、25atm%以下が好ましい。
【0038】
また、各結晶粒の「配向度」とは、次の数1の式で表されるロットゲーリング(Lotgering)法による平均配向度Q(HKL)をいう。
【0039】
【数1】
Figure 0004013245
【0040】
なお、数1の式において、ΣI(hkl)は、結晶配向セラミックスについて測定されたすべての結晶面(hkl)のX線回折強度の総和であり、ΣI(hkl)は、結晶配向セラミックスと同一組成を有する無配向セラミックスについて測定されたすべての結晶面(hkl)のX線回折強度の総和である。また、Σ'I(HKL)は、結晶配向セラミックスについて測定された結晶学的に等価な特定の結晶面(HKL)のX線回折強度の総和であり、Σ'I(HKL)は、結晶配向セラミックスと同一組成を有する無配向セラミックスについて測定された結晶学的に等価な特定の結晶面(HKL)のX線回折強度の総和である。
また、本発明において、平均配向度Q(HKL)の算出には、X線源としてCu−Kα線を用いて2θ−θ測定を行った時に得られる回折ピークであって、2θ=5°〜60°の範囲にあるものを用いた。
【0041】
従って、多結晶体を構成する各結晶粒が無配向である場合には、平均配向度Q(HKL)は0%となり、すべての結晶粒の(HKL)面が一方向に配向している場合には100%となる。
【0042】
本発明に係る結晶配向セラミックスにおいて、高い性能指数を得るためには、{00l}面の配向度は高いほど良い。{00l}面の配向度は、具体的には、50%以上が好ましく、さらに好ましくは、80%以上である。
【0043】
次に、本発明に係る結晶配向セラミックスの作用について説明する。コバルト層状酸化物は、相対的に大きなゼーベック係数を有するp型の熱電変換材料である。また、コバルト層状酸化物は、電気伝導率の大きい電導層であるCoO層と、絶縁層と考えられる他の層が所定の周期で積層された層状構造を有し、しかもこの2つの層の界面に格子不整合があることが知られている。コバルト層状酸化物の熱電特性に結晶方位に応じた異方性があるのは、層状の結晶構造を有していることに加え、電導層と絶縁層の界面に存在する格子不整合によって、キャリアやフォノンの散乱状況が異なるためと考えられている。
【0044】
本発明に係る結晶配向セラミックスは、このような優れた熱電特性を示すコバルト層状酸化物の多結晶体からなり、しかも、熱電特性の高い{00l}面が一方向に配向するように、多結晶体を構成する各結晶粒が高い配向度で配向しているので、{00l}面が配向している方向と平行な方向の性能指数は、同一組成を有する無配向焼結体の性能指数より高い値を示す。特に、化1の式で表されるカルシウムコバルト層状酸化物及び化2の式で表されるコバルト層状酸化物からなる結晶配向セラミックスは、良好な熱電特性を示す。そのため、これを用いた熱電変換素子は、同一組成を有する無配向焼結体を用いた熱電変換素子よりも高い性能指数を示す。
【0045】
次に、本発明に係る結晶配向セラミックス製造用板状粉末について説明する。コバルト層状酸化物のような複雑な組成を有するセラミックスは、通常、成分元素を含む単純化合物を化学量論比になるように混合し、この混合物を成形・仮焼した後に解砕し、次いで解砕粉を再成形・焼結する方法によって製造される。しかしながら、このような方法では、各結晶粒の特定の結晶面が特定の方向に配向した配向焼結体を得るのは極めて困難である。
【0046】
本発明は、この問題を解決するために、特定の条件を満たす板状粉末を成形体中に配向させ、この板状粉末を反応性テンプレートとして用いてコバルト層状酸化物の合成及びその焼結を行わせ、これによって多結晶体を構成する各結晶粒の{00l}面を一方向に配向させた点に特徴がある。本発明において、板状粉末には、以下の条件を満たすものが用いられる。
【0047】
第1に、板状粉末には、成形時に一定の方向に配向させることが容易な形状を有しているものが用いられる。そのためには、板状粉末の平均アスペクト比(=板状粉末の直径/厚さの平均値)は、3以上であることが望ましい。平均アスペクト比が3未満であると、成形時に板状粉末を一方向に配向させるのが困難となる。板状粉末の平均アスペクト比は、さらに好ましくは5以上である。
【0048】
一般に、板状粉末の平均アスペクト比が大きくなるほど、板状粉末の配向が容易化される傾向がある。但し、平均アスペクト比が過大になると、後述する混合工程において板状粉末が破砕され、板状粉末が配向した成形体が得られない場合がある。従って、板状粉末の平均アスペクト比は、100以下が好ましく、さらに好ましくは20以下である。
【0049】
また、板状粉末の直径の平均値(平均粒径)は、0.05μm以上20μm以下が好ましい。板状粉末の平均粒径が0.05μm未満であると、成形時に作用する剪断応力によって板状粉末を一定の方向に配向させるのが困難になる。一方、板状粉末の平均粒径が20μmを超えると、焼結性が低下する。板状粉末の平均粒径は、さらに好ましくは、0.1μm以上5μm以下である。
【0050】
第2に、板状粉末には、その発達面(最も広い面積を占める面)がコバルト層状酸化物のCoO層と格子整合性を有しているものが用いられる。所定の形状を有する板状粉末であっても、その発達面がコバルト層状酸化物のCoO層と格子整合性を有していない場合には、本発明に係る結晶配向セラミックスを製造するための反応性テンプレートとして機能しない場合があるので好ましくない。
【0051】
格子整合性の良否は、板状粉末の発達面の格子寸法とコバルト層状酸化物のCoO層の対応する格子寸法の差の絶対値を板状粉末の発達面の対応する格子寸法で割った値(以下、この値を「格子整合率」という。)で表すことができる。格子整合率が小さくなるほど、その板状粉末は、良好な反応性テンプレートとして機能することを示す。高配向度の結晶配向セラミックスを製造するためには、板状粉末の格子整合率は、20%以下が好ましく、さらに好ましくは10%以下である。
【0052】
第3に、板状粉末には、後述する層状酸化物生成原料と反応して、コバルト層状酸化物を生成するものが用いられる。従って、板状粉末そのものは、必ずしもコバルト層状酸化物である必要はない。また、板状粉末は、コバルト層状酸化物に含まれる陽イオン元素の内のいずれか1種以上の元素を含む化合物あるいは個溶体の中から選ばれることになる。
【0053】
以上のような条件を満たす板状粉末であれば、いずれも本発明に係る結晶配向セラミックスを製造するための反応性テンプレートとして機能する。このような条件を満たす材料としては、具体的には、Co(OH)、CoO、CoO(OH)、Co等のコバルト化合物が好適な一例として挙げられる。
【0054】
Co(OH)は、CdI型の結晶構造を有している。Co(OH)の{00l}面は、他の結晶面に比して表面エネルギーが小さいので、{00l}面を発達面とする板状粉末の製造は比較的容易である。また、Co(OH)の{00l}面は、コバルト層状酸化物のCoO層との間に極めて良好な格子整合性を有している。そのため、{00l}面を発達面とするCo(OH)板状粉末は、本発明に係る結晶配向セラミックスを製造するための板状粉末として特に好適である。
【0055】
{00l}面を発達面とするCo(OH)板状粉末は、沈殿法により合成することができる。具体的には、CoCl、Co(NO)等のコバルト塩を含む水溶液中に、アルカリ水溶液(NaOH、KOH、アンモニア水等)を滴下すればよい。あるいは、コバルト塩を含む水溶液に尿素を加え、加温するという方法でも良い。これにより、水溶液中に、{00l}面が発達したCo(OH)の板状粉末を析出させることができる。また、この時、合成条件を適宜制御すれば、板状粉末の形状制御も比較的容易に行うことができる。
【0056】
また、CoOは、岩塩型の結晶構造を有し、その{111}面は、コバルト層状酸化物のCoO層との間に極めて良好な格子整合性を有している。そのため、{111}面を発達面とするCoO板状粉末は、本発明に係る結晶配向セラミックスを製造するための板状粉末として好適である。
【0057】
沈殿法でCo(OH)粉末を合成した後、この水溶液を大気中で長時間撹拌すると、Co(OH)板状粉末が徐々に酸化される。この時、酸化条件を最適化すると、Co(OH)の{00l}面がCoOの{111}面として承継され、{111}面を発達面とするCoO板状粉末が得られる。
【0058】
また、Coは、スピネル型の結晶構造を有し、その{111}面は、コバルト層状酸化物のCoO層との間に極めて良好な格子整合性を有している。そのため、{111}面を発達面とするCo板状粉末は、本発明に係る結晶配向セラミックスを製造するための板状粉末として好適である。
【0059】
また、CoO(OH)の{00l}面は、コバルト層状酸化物のCoO層との間に極めて良好な格子整合性を有している。そのため、{00l}面を発達面とするCoO(OH)板状粉末は、本発明に係る結晶配向セラミックスを製造するための反応性テンプレートとして好適である。
【0060】
次に、本発明に係る結晶配向セラミックスの製造方法について説明する。本発明に係る結晶配向セラミックスの製造方法は、混合工程と、成形工程と、焼結工程とを備えている。
【0061】
初めに、混合工程について説明する。混合工程は、上述した板状粉末と層状酸化物生成原料とを混合する工程である。この場合、板状粉末は、1種類の化合物からなる板状粉末を用いても良くあるいは、2種以上の化合物からなる板状粉末の混合物を用いても良い。
【0062】
また、「層状酸化物生成原料」とは、板状粉末と反応してコバルト層状酸化物となる化合物をいう。層状酸化物生成原料の組成及び配合比率は、合成しようとするコバルト層状酸化物の組成、及び、反応性テンプレートとして使用する板状粉末の組成に応じて定まる。また、層状酸化物生成原料の形態については、特に限定されるものではなく、水酸化物、酸化物粉末、複合酸化物粉末、炭酸塩、硝酸塩、シュウ酸塩、酢酸塩などの塩、アルコキシド等を用いることができる。
【0063】
例えば、コバルト層状酸化物が、化1の一般式で表されるカルシウムコバルト層状酸化物(例えば、CaCo等)であり、板状粉末として、Co(OH)、CoO、CoO(OH)及び/又はCoを用いる場合には、層状酸化物生成原料として、1種又は2種以上のアルカリ土類金属元素(この場合は、Ca)を含有する第2化合物と、必要に応じて、アルカリ土類金属元素及びCo以外の第3元素(この場合は、アルカリ金属及びBiの内の1種又は2種以上の元素)を含有する第3化合物を用いれば良い。
【0064】
第2化合物は、焼成によってアルカリ土類金属元素の酸化物を形成し得るものであればよく、アルカリ土類金属元素を含有する酸化物、水酸化物、塩、アルコキシド等、種々の化合物を用いることができる。
【0065】
Caを含有する第2化合物としては、具体的には、酸化カルシウム(CaO)、水酸化カルシウム(Ca(OH))、塩化カルシウム(CaCl)、炭酸カルシウム(CaCO)、硝酸カルシウム(Ca(NO))、カルシウムジメトキシド(Ca(OCH))、カルシウムジエトキシド(Ca(OC))、カルシウムジイソプロポキシド(Ca(OC))等が好適な一例として挙げられる。また、第2化合物は、上述した化合物の内、いずれか1種類のみを用いても良く、あるいは、2種以上の化合物を組み合わせて用いても良い。
【0066】
第2化合物が固体である場合又は固体状態のまま混合を行う場合、第2化合物の平均粒径は、10μm以下が好ましい。平均粒径が10μmを超えると、反応が不均一となったり、焼結性が低下するので好ましくない。第2化合物の平均粒径は、さらに好ましくは5μm以下である。第2化合物の平均粒径は、成形性や取扱性が低下しない限りにおいて、小さいほど良い。
【0067】
第3化合物は、焼成によって第3元素を含む酸化物を形成し得るものであればよく、第3元素を含有する酸化物、水酸化物、塩、アルコキシド等、種々の化合物を用いることができる。
【0068】
Naのみを含有する第3化合物としては、具体的には、炭酸ナトリウム(NaCO)、硝酸ナトリウム(NaNO)、ナトリウムイソプロポキシド(Na(OC))等が好適な一例として挙げられる。
【0069】
Kのみを含有する第3化合物としては、具体的には、炭酸カリウム(KCO)、酢酸カリウム(CHCOOK)、硝酸カリウム(KNO)、カリウムイソプロポキシド(K(OC))等が好適な一例として挙げられる。
【0070】
Biのみを含有する第3化合物としては、具体的には、酸化ビスマス(Bi)、硝酸ビスマス(Bi(NO))、塩化ビスマス(BiCl)、水酸化ビスマス(Bi(OH))、ビスマストリイソプロポキシド(Bi(OC))、Bi金属単体等が好適な一例として挙げられる。
【0071】
さらに、第3化合物は、2種以上の第3元素を含む複合化合物であっても良い。また、層状酸化物生成原料として、上述した第3化合物の内、1種類のみを用いても良く、あるいは、2種以上の第3化合物を組み合わせて用いても良い。
【0072】
なお、第3化合物が固体である場合又は固体状態のまま混合を行う場合、第3化合物の平均粒径は、10μm以下が好ましく、さらに好ましくは5μm以下である点は、第2化合物と同様である。
【0073】
また、例えば、コバルト層状酸化物が、化1の一般式で表され、かつ、Coの一部が元素Cで置換されたカルシウムコバルト層状酸化物であり、板状粉末として、Co(OH)、CoO、CoO(OH)及び/又はCoを用いる場合には、層状酸化物生成原料として、上述した第2化合物及び第3化合物に加えて、元素Cを含有する1種又は2種以上の第4化合物を用いれば良い。
【0074】
第4化合物は、焼成によって元素Cを含む酸化物を形成し得るものであればよく、元素Cを含有する酸化物、水酸化物、塩、アルコキシド等、種々の化合物を用いることができる。Cuを含有する第4化合物としては、具体的には、酸化銅(CuO、CuO)、炭酸銅(CuCO)、塩化銅(CuCl、CuCl)、Cu金属単体等が好適な一例として挙げられる。また、第4化合物は、上述した化合物の内、いずれか1種類のみを用いても良く、あるいは、2種以上の化合物を組み合わせて用いても良い。
【0075】
なお、第4化合物が固体である場合又は固体状態のまま混合を行う場合、第4化合物の平均粒径は、10μm以下が好ましく、さらに好ましくは5μm以下である点は、第2化合物及び第3化合物と同様である。
【0076】
また、本発明に係る製造方法は、カルシウムコバルト層状酸化物以外にも、CoO層を副格子層に有すると考えられるコバルト層状酸化物に対しても適用できる。例えば、コバルト層状酸化物が化2の一般式で表されるもの(例えば、BiSrCo、BiBaCo等)であり、板状粉末として、Co(OH)、CoO、CoO(OH)及び/又はCoを用いる場合には、層状酸化物生成原料として、1種又は2種以上のアルカリ土類金属元素(この場合は、Sr、Ba等)を含有する1種又は2種以上の第2化合物と、必要に応じて、アルカリ金属及びBiを含有する1種又は2種以上の第3化合物を用いればよい。
【0077】
さらに、コバルト層状酸化物が、化2の一般式で表され、かつ、Coの一部が元素Cで置換されたものであり、板状粉末として、Co(OH)、CoO、CoO(OH)及び/又はCoを用いる場合には、層状酸化物生成原料として、上述した第2化合物及び第3化合物に加えて、元素Cを含有する1種又は2種以上の第4化合物を用いれば良い。他の組成を有するコバルト層状酸化物からなる結晶配向セラミックスを製造する場合も同様である。
【0078】
なお、混合工程においては、所定の比率で配合された板状粉末及び層状酸化物生成原料に対して、さらに、これらの反応によって得られるコバルト層状酸化物と同一組成を有する化合物からなる非板状の微粉(以下、これを「層状酸化物微粉」という。)を添加しても良い。原料中に層状酸化物微粉を添加すると、焼結体密度が向上するという効果がある。
【0079】
この場合、層状酸化物微粉の配合比率が過大になると、必然的に原料全体に占める板状粉末の配合比率が小さくなり、結晶配向セラミックスの{00l}面の配向度が低下するおそれがある。従って、層状酸化物微粉の配合比率は、要求される{00l}面の配向度が得られるように、最適な値を選択するのが好ましい。
【0080】
また、板状粉末及び層状酸化物生成原料並びに必要に応じて添加される層状酸化物微粉の混合は、乾式で行っても良く、あるいは、水、アルコール等の適当な分散媒を加えて湿式で行っても良い。さらに、この時、必要に応じてバインダ及び/又は可塑剤を加えても良い。
【0081】
次に、成形工程について説明する。成形工程は、混合工程で得られた混合物を板状粉末が配向するように成形する工程である。ここで、「板状粉末が配向する」とは、各板状粉末の発達面が互いに平行に配列(以下、このような状態を「面配向」という。)すること、又は、各板状粉末の発達面が成形体を貫通する1つの軸に対して平行に配列(以下、このような状態を「軸配向」という。)することをいう。
【0082】
なお、軸配向の場合には、その配向の程度は、面配向と同様の配向度(数1の式)では定義できない。しかしながら、配向軸に垂直な面に対してX線回折を行った場合の{00l}回折に関するLotgering法による平均配向度(以下、これを「軸配向度」という。)を用いて、軸配向の程度を表すことができる。板状粉末が軸配向している成形体の場合、軸配向度は負の値となる。また、板状粉末がほぼ完全に軸配向している成形体の軸配向度は、板状粉末がほぼ完全に面配向している成形体について測定された軸配向度と同程度になる。
【0083】
成形方法については、板状粉末を配向させることが可能な方法であれば良く、特に限定されるものではない。板状粉末を面配向させる成形方法としては、具体的には、ドクターブレード法、プレス成形法、圧延法、押出法(テープ状)等が好適な一例として挙げられる。また、板状粉末を軸配向させる方法としては、具体的には、押出成形法(非テープ状)が好適な一例として挙げられる。
【0084】
また、板状粉末が面配向した成形体(以下、これを「面配向成形体」という。)の厚さを増したり、配向度を上げるために、面配向成形体に対し、さらに、積層圧着、プレス、圧延などの処理(以下、これを「面配向処理」という。)を行っても良い。この場合、面配向成形体に対して、いずれか1種類の面配向処理を行っても良く、あるいは、2種以上の面配向処理を行っても良い。また、面配向成形体に対して、1種類の面配向処理を複数回繰り返して行っても良く、あるいは、2種以上の面配向処理をそれぞれ複数回繰り返し行っても良い。
【0085】
次に、焼結工程について説明する。焼結工程は、成形工程で得られた成形体を加熱し、板状粉末と層状酸化物生成原料とを反応させる工程である。板状粉末と層状酸化物生成原料とを含む成形体を所定の温度に加熱すると、これらの反応によってコバルト層状酸化物が生成すると同時に、生成したコバルト層状酸化物の焼結も進行する。
【0086】
加熱温度は、反応及び焼結が効率よく進行するように、使用する板状粉末、層状酸化物生成原料、作製しようとする結晶配向セラミックスの組成等に応じて最適な温度を選択すればよいが、800℃以上1200℃以下が好ましい。例えば、Co(OH)板状粉末とCaCOから、CaCo組成を有する結晶配向セラミックスを作製する場合、加熱温度は、異相が生じない930℃以下が好ましい。また、加熱時間は、所定の焼結体密度が得られるように、加熱温度に応じて最適な値を選択すればよい。
【0087】
さらに、加熱方法としては、室温から所定温度に徐々に昇温する方法や、あらかじめ所定温度に加熱した炉内に配向成形体を導入し、一気に加熱する方法など、作製しようとする結晶配向セラミックスの組成などに応じて、最適な方法を選択すればよい。
【0088】
また、焼結工程は、酸素が存在する雰囲気下(すなわち、大気中又は酸素中)で行うのが好ましい。酸素を含まない雰囲気下で成形体を加熱すると、得られる結晶配向セラミックス中の酸素量が減少し、熱電特性が低下する場合があるので好ましくない。特に、酸素中において成形体を加熱すると、高い熱電特性を有する結晶配向セラミックスが得られる。
【0089】
なお、バインダを含む成形体の場合、焼結工程の前に、脱脂を主目的とする熱処理を行っても良い。この場合、脱脂の温度は、特に限定されるものではなく、少なくともバインダを熱分解させるに十分な温度であれば良い。但し、出発原料として、Na等の低融点金属を含む化合物を用いる場合には、Na等の蒸発を防ぐために、500℃以下で脱脂を行うのが好ましい。また、脱脂は、酸素が存在する雰囲気下で行うのが好ましい。
【0090】
また、配向成形体の脱脂を行うと、配向成形体中の板状粉末の配向度が低下したり、あるいは、反応が進行して配向成形体が膨張する場合がある。このような場合には、脱脂を行った後、焼結を行う前に、配向成形体に対して、さらに静水圧(CIP)処理を行うのが好ましい。脱脂後の配向成形体に対して、さらに静水圧処理を行うと、脱脂に伴う配向度の低下、あるいは、配向成形体の密度低下に起因する焼結体密度の低下を抑制できるという利点がある。
【0091】
次に、本発明に係る結晶配向セラミックスの製造方法の作用について説明する。板状粉末及び層状酸化物生成原料を混合し、これを板状粉末に対して剪断応力が作用するような成形方法を用いて成形すると、板状粉末が成形体中に配向する。このような配向成形体を所定の温度で加熱すると、板状粉末と層状酸化物生成原料とが反応し、コバルト層状酸化物が生成する。
【0092】
この時、板状粉末の発達面とコバルト層状酸化物のCoO層との間には格子整合性があるので、板状粉末の発達面が、生成したコバルト層状酸化物の{00l}面として承継される。その結果、焼結体中には、{00l}面が一方向に配向した状態で、コバルト層状酸化物の板状結晶が成長し、各結晶粒の{00l}面が高い配向度で配向した結晶配向セラミックスが得られる。
【0093】
本発明に係る製造方法は、通常のセラミックスプロセスをそのまま用いることができるので、低コストである。また、{00l}面の配向度が高いだけでなく、配向度及び組成が均一な結晶配向セラミックスが得られる。さらに、本発明に係る製造方法により得られる結晶配向セラミックスは、多結晶体であるので、単結晶より破壊靱性が大きく、また、粒界や空孔でフォノンが散乱されるので、単結晶より熱伝導率が低くなる。一方、本発明に係る製造方法により得られる結晶配向セラミックスは、電気伝導度の高い面が配向しているため、無配向セラミックスより高い電気伝導度を示す。そのため、本発明に係る製造方法により得られた結晶配向セラミックスを熱電変換材料として用いれば、耐久性及び熱電特性に優れた熱電変換素子を作製することができる。
【0094】
【実施例】
(実施例1)
以下の手順に従い、Co(OH)板状粉末を合成した。まず、濃度0.1mol/lのCoCl水溶液、及び、濃度0.4mol/lのNaOH水溶液を調製した。次いで、600mlのCoCl水溶液に対し、300mlのNaOH水溶液を100ml/hの速度で滴下した。これにより、溶液中には、青色の沈殿物(Co(OH))が生成した。
【0095】
NaOH水溶液の滴下が終了した後、Nバブリングしながら溶液を撹拌し、室温で24時間熟成させることによりピンク色の結晶(Co(OH))が得られた。この結晶を吸引濾過し、室温でNガスにより24時間乾燥させた。図1に、得られた粉末のSEM写真を示す。本実施例で得られたCo(OH)粉末は、六角形を呈する板状粉末であった。また、板状粉末の平均粒径は0.5μmであり、平均アスペクト比は約5であった。
【0096】
(実施例2)
図2に示す手順に従い、CaCo組成を有する結晶配向セラミックスを作製した。まず、ステップ1(以下、これを単に「S1」という。)において、CaCO粉末(平均粒径0.2μm)、実施例1で合成したCo(OH)板状粉末、トルエン及び無水エタノールをそれぞれ容器に所定量計り取った。次いで、これらの原料をボールミルに入れ、24時間湿式混合した(S2)。混合終了後、スラリーに所定量のバインダー及び可塑剤を添加し(S3)、さらにボールミルで3時間湿式混合した(S4)。表1に、各原料の仕込量を示す。
【0097】
【表1】
Figure 0004013245
【0098】
次に、スラリーをポットから取り出し、テープキャストにより厚さ約100μmのシート状に成形した(S5)。さらに、得られたシートを重ね合わせ、温度:80℃、圧力:10MPaの条件で圧着した(S6)。
【0099】
次に、得られた成形体を、大気中において、温度:700℃、加熱時間:2時間の条件下で脱脂した(S7)。次いで、脱脂後の成形体を圧力:300MPaの条件下で加圧成形(静水圧処理)した(S8)。さらに、この成形体を、酸素中において、温度:920℃、加熱時間:48hrの条件下で焼結した(S9)。
【0100】
(実施例3)
まず、実施例2と同一の手順(図2のS1からS7まで)に従い、Co(OH)板状粉末を面配向させた成形体を作製し、これを脱脂した。次に、得られた脱脂体に対して静水圧処理を行うことなく、そのまま焼結炉に入れ、酸素中において加圧焼結を行った。なお、加圧焼結は、圧力:2MPa、加熱温度:920℃、加熱時間:48hrの条件下で行った。また、圧力は、テープ面に対して垂直な方向から印加した。
【0101】
(実施例4)
層状酸化物生成原料として、CaCO粉末及びNaCO粉末(平均粒径0.2μm)を用い、Caの5atm%がNaに置換されるようにこれらを配合した以外は、実施例3と同一の手順に従い、{Ca0.95Na0.05}Co組成を有する結晶配向セラミックスを作製した。
【0102】
(実施例5)
層状酸化物生成原料として、CaCO粉末及びNaCO粉末(平均粒径0.2μm)を用い、Caの10atm%がNaに置換されるようにこれらを配合した以外は、実施例3と同一の手順に従い、{Ca0.9Na0.1}Co組成を有する結晶配向セラミックスを作製した。
【0103】
(比較例1)
まず、実施例2と同一の手順(図2のS1からS7まで)に従い、Co(OH)板状粉末を面配向させた成形体を作製し、これを脱脂した。次に、得られた脱脂体を乳鉢で粉砕し、解砕粉を金型で予備成形した後、圧力:300MPaでCIP成形を行った。さらに、得られた成形体を、酸素中において、加熱温度:920℃、加熱時間:48hrの条件下で焼結した。
【0104】
実施例2、3及び比較例1で得られた焼結体について、テープ面と平行な面に対してX線回折を行った。図3に、X線回折パターンを示す。なお、CaCoの結晶構造の詳細は明らかではないが、図3においては、上述したA.C.Massetらによる報告(A.C.Masset et al., Phys. Rev. B, 62(1), pp.166-175, 2000)に従い、面指数を表示した。図3より、実施例2、3で得られた焼結体は、比較例1に比して、{00l}面が高い配向度で配向していることがわかる。
【0105】
また、図3の結果及び数1の式を用いて、{00l}面のロットゲーリング法による平均配向度を求めた。その結果、比較例1の平均配向度は2%であるのに対し、実施例2の平均配向度は73%であり、実施例3の平均配向度は92%であった。
【0106】
次に、実施例3〜5及び比較例1で得られた焼結体から、テープ面と平行な方向に沿って棒状試料を切り出した。次いで、この棒状試料を用いて、180℃〜700℃の温度範囲において、テープ面と平行な方向について、ゼーベック係数、熱伝導率及び電気伝導率を測定した。なお、本発明の実施例において、ゼーベック係数及び電気伝導率は、熱電特性評価装置(オザワ科学(株)製、RZ2001)、熱伝導率は、レーザーフラッシュ法熱定数測定装置(真空理工(株)製、TC−7000)を用いて測定した。さらに、得られたゼーベック係数、電気伝導率及び熱伝導率を用いて、無次元性能指数ZTを算出した。図4に、その結果を示す。
【0107】
図4より、実施例3で得られた配向焼結体の無次元性能指数ZTは、全温度域において、比較例1の無配向焼結体より大きいことがわかる。これは、電気伝導率の高い{00l}面を一方向に配向させることによって、テープ面と平行な方向の電気伝導率が向上し、これによって性能指数Zが向上したためである。
【0108】
また、図4より、CaCoに含まれるCaの一部をNaを置換すると無次元性能指数ZTが向上し、しかも、Na置換量が多くなるほど無次元性能指数ZTが大きくなることがわかる。Na置換量が10atm%である実施例4の場合、700℃における無次元性能指数ZTは、0.27に達した。これは、絶縁層に含まれるCaの一部をNaで置換することによって、電導層の電気伝導率、すなわち、テープ面と平行な方向の電気伝導率が向上したためである。
【0109】
(実施例6)
実施例1で得られたCo(OH)板状粉末、CaCO粉末(平均粒径0.2μm)及びBi粉末(平均粒径0.3μm)を用い、これらを化学量論比となるように配合した以外は、実施例2と同一の手順に従い、{Ca0.9Bi0.1}Co組成を有する結晶配向セラミックスを作製した。
【0110】
得られた結晶配向セラミックスについて、実施例3と同一条件下で、{00l}面の平均配向度及び無次元性能指数を測定した。その結果、{00l}面の平均配向度は82%、600Kにおける無次元性能指数ZTは0.158であった。
【0111】
(比較例2)
Co(OH)板状粉末に代えて、無定形のCo(OH)粉末(平均粒径0.1μm)を用いた以外は、実施例6と同一の手順に従い、{Ca0.9Bi0.1}Co組成を有する無配向セラミックスを作製した。
【0112】
得られた無配向セラミックスについて、実施例2と同一条件下で、{00l}面の平均配向度及び無次元性能指数を測定した。その結果、{00l}面の平均配向度は10%、600Kにおける無次元性能指数ZTは0.091であった。
【0113】
(実施例7)
実施例1で得られたCo(OH)板状粉末、Bi粉末(平均粒径0.3μm)及びSrCO粉末(平均粒径0.3μm)を用い、これらを化学量論比となるように配合した以外は、実施例2と同一の手順に従い、BiSrCo組成を有する結晶配向セラミックスを作製した。
【0114】
得られた結晶配向セラミックスについて、実施例3と同一条件下で、{00l}面の平均配向度及び無次元性能指数を測定した。その結果、{00l}面の平均配向度は71%、600Kにおける無次元性能指数ZTは0.097であった。
【0115】
(比較例2)
Co(OH)板状粉末に代えて、無定形のCo(OH)粉末(平均粒径0.1μm)を用いた以外は、実施例7と同一の手順に従い、BiSrCo組成を有する無配向セラミックスを作製した。
【0116】
得られた無配向セラミックスについて、実施例2と同一条件下で、{00l}面の平均配向度及び無次元性能指数を測定した。その結果、{00l}面の平均配向度は8%、600Kにおける無次元性能指数ZTは0.035であった。
【0117】
以上、本発明の実施の形態について詳細に説明したが、本発明は上記実施の形態に何ら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の改変が可能である。
【0118】
例えば、上記実施例2では、焼結法として常圧焼結法が用いられているが、常圧焼結後に、さらにHIP処理あるいはホットプレス処理を行っても良い。特に、ホットプレス処理を行った場合には、緻密な結晶配向セラミックスが得られることに加え、ホットプレス時の一軸加圧によって{00l}面配向度をさらに向上させることができる。
【0119】
また、例えば、上記実施例では、ドクターブレード法によるテープキャストによって板状粉末を面配向させているが、押出成形法を用いて、板状粉末を軸配向させても良い。板状粉末をこのように軸配向させた場合であっても、無配向焼結体より高い性能指数を有する結晶配向セラミックスが得られる。また、押出成形法を用いると、ある程度の厚さを有する焼結体を低コストで作製できるという利点がある。
【0120】
また、上記実施の形態では、板状粉末としてコバルト化合物を用い、層状酸化物生成原料として、第2化合物、第3化合物及び第4化合物を用いた例について主に説明したが、層状酸化物生成原料としてさらに不定形のコバルト化合物粉末を用いても良い。この場合、目的とする結晶配向セラミックスが得られるように、コバルト化合物の板状粉末、並びに、コバルト化合物の不定形粉末、第2化合物、第3化合物及び第4化合物を所定の比率で配合すれば良い。
【0121】
さらに、本発明に係る結晶配向セラミックスは、高い性能指数を示すので、熱電発電器、精密温度制御装置、恒温装置、冷暖房装置、冷蔵庫、時計用電源等に用いられる熱電発電素子を構成する熱電変換材料として特に好適であるが、本発明の用途はこれに限定されるものではなく、巨大磁気抵抗効果を利用した各種の電子素子(例えば、磁気ヘッド)にも応用することができる。
【0122】
【発明の効果】
本発明に係る結晶配向セラミックスは、コバルト層状酸化物の多結晶体からなり、かつ、各結晶粒の{00l}面が高い配向度で配向しているので、同一組成を有する無配向セラミックスに比して高い性能指数を示すという効果がある。
【0123】
また、本発明に係る結晶配向セラミックスの製造方法は、成形体中に配向させた板状粉末及び層状酸化物生成原料が反応してコバルト層状酸化物が生成する際に、板状粉末の発達面がコバルト層状酸化物の{00l}面として承継されるので、{00l}面の発達したコバルト層状酸化物の板状結晶が高い配向度で配向した結晶配向セラミックスを容易に製造できるという効果がある。
【0124】
また、Co(OH)、Co、CoO(OH)又はCoOからなり、かつ、所定の結晶面を発達面とする板状粉末は、その発達面とコバルト層状酸化物のCoO層との間に極めて良好な格子整合性があるので、コバルト層状酸化物を合成する際に、極めて優れた反応性テンプレートとして機能し、本発明に係る結晶配向セラミックスを容易に製造できるという効果がある。
【0125】
さらに、本発明に係る結晶配向セラミックスは、同一組成を有する無配向セラミックスに比して高い性能指数を示すので、これを用いて熱電変換素子を構成すれば、高い性能指数を有する熱電変換素子が得られるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】 沈殿法で合成されたCo(OH)板状粉末の走査型電子顕微鏡(SEM)写真である。
【図2】 本発明の一実施の形態に係る結晶配向セラミックスの製造方法を示す工程図である。
【図3】 実施例2、3で得られた結晶配向セラミックス及び比較例1で得られた無配向セラミックスのX線回折パターンである。
【図4】 実施例3〜5で得られた結晶配向セラミックス及び比較例1で得られた無配向セラミックスの温度と無次元性能指数との関係を示す図である。

Claims (21)

  1. コバルトを含有する層状酸化物の多結晶体からなり、該多結晶体を構成する各結晶粒の{00l}面の配向度が73%以上であって、
    前記層状酸化物は、一般式:
    {(Ca1−xCoO3+α}(CoO2+β
    (但し、Aは、アルカリ金属、アルカリ土類金属及びBiから選ばれる1種又は2種以上の元素、0≦x≦0.3、0.5≦y≦2.0、0.85≦{3+α+(2+β)y}/(3+2y)≦1.15)
    で表されるものである結晶配向セラミックス。
  2. コバルトを含有する層状酸化物の多結晶体からなり、該多結晶体を構成する各結晶粒の{00l}面の配向度が50%以上であって、
    前記層状酸化物は、一般式:
    (Bi1−xーyCo1+α)(CoO2+β
    (但し、Bは、アルカリ金属から選ばれる1種又は2種以上の元素、0.2≦x≦0.8、0≦y<0.5、0.2≦x+y≦1、0.25≦z≦0.5、0.85≦{1+α+(2+β)z}/(1+2z)≦1.15)
    で表されるものである結晶配向セラミックス。
  3. 前記層状酸化物は、Coの一部が、Cu、Sn、Mn、Ni、Fe、Zr及びCrから選ばれる1種又は2種以上の元素Cに置換されており、前記元素CによるCoの置換量は、25atm%以下である請求項1又は2に記載の結晶配向セラミックス。
  4. コバルトを含有する層状酸化物の多結晶体からなり、該多結晶体を構成する各結晶粒の{00l}面の配向度が50%以上であって、
    前記層状酸化物は、一般式:
    (Bi1−xーyCo1+α)(CoO2+β
    (但し、Bは、アルカリ金属及びアルカリ土類金属から選ばれる1種又は2種以上の元素、0.2≦x≦0.8、0≦y<0.5、0.2≦x+y≦1、0.25≦z≦0.5、0.85≦{1+α+(2+β)z}/(1+2z)≦1.15)
    で表され、かつ、
    前記層状酸化物は、Coの一部が、Cu、Sn、Mn、Ni、Fe、Zr及びCrから選ばれる1種又は2種以上の元素Cに置換されており、前記元素CによるCoの置換量は、25atm%以下である結晶配向セラミックス。
  5. その発達面がコバルトを含有する層状酸化物のCoO層と格子整合性を有する板状粉末と、該板状粉末と反応して前記層状酸化物となる層状酸化物生成原料とを混合する混合工程と、
    該混合工程で得られた混合物を前記板状粉末が配向するように成形する成形工程と、
    該成形工程で得られた成形体を加熱し、前記板状粉末と前記層状酸化物生成原料とを反応させる焼結工程とを備え、
    前記層状酸化物は、一般式:
    {(Ca1−xCoO3+α}(CoO2+β
    (但し、Aは、アルカリ金属、アルカリ土類金属及びBiから選ばれる1種又は2種以上の元素、0≦x≦0.3、0.5≦y≦2.0、0.85≦{3+α+(2+β)y}/(3+2y)≦1.15)
    で表されるものである結晶配向セラミックスの製造方法。
  6. その発達面がコバルトを含有する層状酸化物のCoO層と格子整合性を有する板状粉末と、該板状粉末と反応して前記層状酸化物となる層状酸化物生成原料とを混合する混合工程と、
    該混合工程で得られた混合物を前記板状粉末が配向するように成形する成形工程と、
    該成形工程で得られた成形体を加熱し、前記板状粉末と前記層状酸化物生成原料とを反応させる焼結工程とを備え、
    前記層状酸化物は、一般式:
    (Bi1−xーyCo1+α)(CoO2+β
    (但し、Bは、アルカリ金属及びアルカリ土類金属から選ばれる1種又は2種以上の元素、0.2≦x≦0.8、0≦y<0.5、0.2≦x+y≦1、0.25≦z≦0.5、0.85≦{1+α+(2+β)z}/(1+2z)≦1.15)
    で表されるものである結晶配向セラミックスの製造方法。
  7. 前記層状酸化物は、Coの一部が、Cu、Sn、Mn、Ni、Fe、Zr及びCrから選ばれる1種又は2種以上の元素Cに置換されており、前記元素CによるCoの置換量は、25atm%以下である請求項5又は6に記載の結晶配向セラミックスの製造方法。
  8. 前記板状粉末は、Co(OH)、CoO、CoO(OH)及びCoの内の1種又は2種以上のコバルト化合物からなる請求項5又は6に記載の結晶配向セラミックスの製造方法。
  9. 前記板状粉末は、平均アスペクト比が3以上である請求項5又は6に記載の結晶配向セラミックスの製造方法。
  10. 前記板状粉末は、平均粒径が0.05μm以上20μm以下である請求項5又は6に記載の結晶配向セラミックスの製造方法。
  11. 前記層状酸化物生成原料は、1種又は2種以上のアルカリ土類金属元素を含有する1種又は2種以上の第2化合物を含むものである請求項8に記載の結晶配向セラミックスの製造方法。
  12. 前記第2化合物は、1種又は2種以上のアルカリ土類金属元素を含有する酸化物、水酸化物、塩又はアルコキシドである請求項11に記載の結晶配向セラミックスの製造方法。
  13. 前記第2化合物は、その平均粒径が10μm以下である請求項12に記載の結晶配向セラミックスの製造方法。
  14. 前記層状酸化物生成原料は、さらに、アルカリ金属及びBiの内の1種又は2種以上の第3元素を含有する1種又は2種以上の第3化合物を含むものである請求項11に記載の結晶配向セラミックスの製造方法。
  15. 前記第3化合物は、1種又は2種以上の前記第3元素を含有する酸化物、水酸化物、塩又はアルコキシドである請求項14に記載の結晶配向セラミックスの製造方法。
  16. 前記第3化合物は、その平均粒径が10μm以下である請求項15に記載の結晶配向セラミックスの製造方法。
  17. 前記層状酸化物生成原料は、さらに、Cu、Sn、Mn、Ni、Fe、Zr及びCrから選ばれる1種又は2種以上の元素Cを含有する1種又は2種以上の第4化合物を含むものである請求項11に記載の結晶配向セラミックスの製造方法。
  18. 前記第4化合物は、前記元素Cを含有する酸化物、水酸化物、塩又はアルコキシドである請求項17に記載の結晶配向セラミックスの製造方法。
  19. 前記第4化合物は、その平均粒径が10μm以下である請求項18に記載の結晶配向セラミックスの製造方法。
  20. 前記焼結工程は、酸素が存在する雰囲気下において、前記成形体を加熱するものである請求項5又は6に記載の結晶配向セラミックスの製造方法。
  21. 請求項1から4までのいずれかに記載の結晶配向セラミックスを用いた熱電変換素子。
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