JP4883752B2 - 金属酸化物粉末の製造方法及び焼結体の製造方法 - Google Patents

金属酸化物粉末の製造方法及び焼結体の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、金属酸化物粉末の製造方法及び焼結体の製造方法に関する。
熱電変換とは、ゼーベック効果やペルチェ効果を利用して、熱エネルギと電気エネルギとを相互に変換することをいう。熱電変換を利用すれば、ゼーベック効果を用いて熱流から電力を取り出したり、ペルチェ効果を用いて材料に電流を流すことで吸熱し、冷却現象を起こしたりすることが可能である。また、熱電変換は、直接変換であるがためにエネルギ変換の際に余分な老廃物を排出しないこと、排熱の有効利用が可能であること、モータやタービンのような可動装置が不要であるためメンテナンスの必要がないこと等の特徴を有しており、エネルギの高効率利用技術として注目されている。
従来は熱電変換材料として、BiTe、PbTe、CoSb、Si−Geなど金属間化合物が熱電変換材料として用いられてきた(非特許文献1参照)。しかし、これらは資源として乏しく、高温で化学的に不安定であり、毒性元素を含むため実用化が困難である。したがって無害で、化学的に安定で、資源が豊富な材料が必要である。その有力候補として層状酸化物NaCo単結晶が高い熱電特性(室温でゼーベック係数が100μV/K、抵抗率が0.2mΩcm)をもつことが報告され(非特許文献2参照)、この酸化物を用いた熱電変換材料が注目されている。また、CaCo単結晶は、700℃でゼーベック係数が240μV/K、抵抗率が2.3×10−3mΩcmを示す(非特許文献3参照)。
更に特許文献1には、CdI構造のCoO層を含む層状構造を有し且つ構成元素としてCaを含む金属酸化物粉末を含有するスラリーを磁場中で乾燥させて成形体とし、得られた成成形体を一軸加圧下に焼結させて焼結体を得る方法が開示されている。この方法によって、ゼーベック係数が大きく、電気抵抗率と熱伝導率が小さい、優れた熱電変換性能を有する金属酸化物の焼結体を効率よく製造することができる。
また更に特許文献2には、Co(OH)板状粉末及びCaCO等の層状酸化物生成原料の混合物を板状粉末が配向するように成形して加熱処理することにより焼結体を得る方法が開示されている。この方法によって、高い性能指数を有する焼結体を製造することができる。
Material Integration Vol.13 No.7 (2000). I. Terasaki et al. : Phys. Rev. B 56 (1997) R12685. Masahiro Shikano and Ryoji Funahashi Appl. Phys. Lett. 24,2003 Vol.82, Issue 12,pp.1851−1853 特開2003−277147号公報 特開2003−34576号公報
しかし、CaCo単結晶は微小な結晶しか作ることができず、実用的な大きさの素子を得るためには焼結体を作成する必要がある。ところが、特許文献2に開示されているような固相反応による作成法では焼結体中の結晶粒が不均一であることから、数多くの気孔が生じ、単結晶と比べて熱電特性が大きく下回ってしまう。また、特許文献1に開示されている方法は、磁場をかける工程を有したりと製造工程が複雑であり現実的ではない。
以上の課題に鑑み、本発明では構成元素を原子やイオンおよび分子レベルで均質に混合し、微細な板状のプリカーサー粉末を得ることが可能な金属酸化物粉末の製造方法、及び得られた金属酸化物粉末を用いた焼結体の製造方法を提供することを目的とする。
本発明はより具体的には、以下のようなものを提供する。
(1) 金属カルシウム塩及び金属コバルト塩と、これらの金属塩とキレート形成能を有する有機酸キレート剤と、をアルコール又はグリコールに溶解して前駆体溶液を得る溶液製造工程と、この前駆体溶液を焼成する焼成工程と、を有する金属酸化物粉末の製造方法。
上述のように、従来の固相反応法では、金属カルシウム塩と金属コバルト塩の相互拡散を用いた焼結により、表面自由エネルギを小さくする作用が働くため、得られた金属酸化物粉末の結晶粒は不均一であり、かつ球形に近い形である。しかし(1)に記載の発明によれば、溶液製造工程を設けたことによって構成元素を原子やイオンおよび分子レベルで均質に混合でき、微細なプリカーサー粉末を得ることが可能となる。
また、焼成工程後に出来上がった金属酸化物粉末(CaCo結晶)はアスペクト比が高く、均一で微細な板状結晶となるため、この板状結晶粉体を一軸加圧成形して、焼結して得られた焼結体には高い配向性を付与することができる。従って、この焼結体を熱電変換材料に用いれば、ゼーベック係数を増大させ、かつ、電気抵抗を小さくすることができる。なお、本発明でいう「金属酸化物粉末」とは、溶液製造工程及び焼成工程により生成したCaCo結晶をいう。
(2) 前記焼成工程の前に、前記前駆体溶液を乾燥する乾燥工程を更に有する(1)に記載の金属酸化物粉末の製造方法。
溶液製造工程によって得られた前駆体溶液を焼成工程で焼成する際、予め前駆体溶液中の溶媒やクエン酸を除去しておいた方が均一で微細な板状結晶を生成させることができる。従って(2)の発明によれば、乾燥工程を更に設けたことによって、より均一な板状結晶を生成させることができる。なお、この乾燥工程は、例えば最初に100℃付近で溶媒を除去し、次いで400℃付近でクエン酸を除去するというように複数回設けられていてもよく、焼成温度よりも低い温度で焼成する仮焼成工程を含んでいてもよい。
(3) 前記焼成工程において、焼成温度は700℃から1200℃であり、焼成時間は30分から300分である(1)又は(2)に記載の金属酸化物粉末の製造方法。
(3)の発明によれば、焼成温度を700℃から1200℃としたことによって、より微細な板状結晶を形成することができる。なお、焼成温度は700℃から1100℃であることが好ましく、700℃から900℃であることがより好ましい。更に、焼成時間は90分から300分であることが好ましく、120分から200分であることがさらに好ましい。
(4) 前記金属カルシウム塩及び金属コバルト塩は、それぞれ硝酸塩である(1)から(3)いずれかに記載の金属酸化物粉末の製造方法。
硝酸塩は、水やアルコール系溶媒に対する溶解度が高く、均質な溶媒調製が容易である。従って(4)の発明によれば、金属カルシウム塩、金属コバルト塩をそれぞれ硝酸塩としたことによって、より効率よく前駆体溶液を製造することができる。
(5) 前記有機酸キレート剤は、クエン酸である(1)から(4)いずれかに記載の金属酸化物粉末の製造方法。
(5)の発明によれば、有機酸キレート剤にクエン酸を用いたことによって、金属カルシウム塩及び金属コバルト塩と安定なキレート錯体を形成することができる。そのため、これらの金属塩を原子やイオンおよび分子レベルで均質に混合することができる。
(6) 前記金属酸化物粉末は、微細な板状結晶をなしており、このそれぞれの板状結晶は実質的に単結晶である(1)から(5)いずれかに記載の金属酸化物粉末の製造方法。
(6)の発明によれば、金属酸化物を実質的な板状結晶としたことによって、熱電特性の良好な熱電変換材料を提供することができる。ここで「実質的に単結晶」とは、焼成工程後に出来上がった金属酸化物中の結晶が凝集せずにそれぞれ独立して存在しており、かつ、高いアスペクト比を有している結晶をいう。
(7) (1)から(6)いずれかに記載の方法により製造されたCaCoの結晶からなる金属酸化物粉末を、一軸加圧成形して焼結する工程を更に有する焼結体の製造方法。
(8) (7)に記載の方法により製造された焼結体。
(9) 室温でのゼーベック係数が110μV/Kから140μV/Kであり、抵抗値が5.0mΩcmから25mΩcmである(8)に記載の焼結体。
(10) (8)又は(9)に記載の焼結体を含む熱電変換素子。
(7)から(10)の発明によれば、上述のように(1)から(6)に記載の発明により出来上がった金属酸化物粉末は高い異方性を有している。そのため、これをさらに一軸加圧成形して焼結体とすれば高い配向性を付与することができる。その結果、熱電変換材料として用いれば、優れた熱電特性を発揮することができる。なお、ゼーベック係数は、110μV/Kから140μV/Kであることが好ましく、120μV/Kから140μV/Kであることがより好ましい。更に抵抗値は5.0mΩcmから25mΩcmであることが好ましく、8.0mΩcmから25mΩcmであることがより好ましい。
ここで「熱電変換素子」とは、所定の形状に形成された焼結体セルと、この焼結体セルの加熱面として規定された面と、この加熱面の反対側の面に位置する冷却面として規定された面にそれぞれ電極を接続したものをいう。焼結体セルの形状は特に問わないが、高い熱電変換効率にするためには単純方体形状、例えば直方体又は立方体等であることが好ましい。
本発明によれば、金属酸化物粉末の製造工程において、金属カルシウム塩と金属コバルト塩とを有機酸キレート剤及びアルコール又はグリコールに溶解させ、前駆体溶液を得る溶液製造工程を設けたことによって、構成元素を原子やイオンおよび分子レベルで均質に混合できるため、扁平かつ板状の微細な板状結晶を形成することができる。
従って、焼成工程により得られた金属酸化物粉末を熱電変換材料(熱電変換素子)として用いれば、高い熱電特性を付与することができる。
以下、本発明をより詳しく説明する。
[金属酸化物粉末の製造]
本発明に係る金属酸化物粉末は、溶液製造工程と焼成工程により得られる。以下、順を追って説明する。
<溶液製造工程>
「前駆体溶液」は、金属カルシウム塩及び金属コバルト塩と、これらの金属塩とキレート形成能を有する有機酸キレート剤と、をアルコール又はグリコールに溶解して前駆体溶液を得る溶液製造工程により得られる。本発明では金属塩として、硫酸塩、硝酸塩、塩酸塩、カルボン酸塩及びこれらの水和物等を用いることが好ましく、硝酸塩又は硝酸塩の水和物を用いることがより好ましい。ここで、このような金属塩以外にも金属アルコキシドを用いることが考えられる。しかしながら反応性に優れている反面、加水分解反応が早く、不安定となり、多成分系の場合は加水分解の制御が困難であるため好ましくない。
また、金属−酸素結合を溶液段階で促進するために用いる有機酸キレート剤には、クエン酸、酒石酸、乳酸及びこれらの水和物等が挙げられるが、クエン酸又はクエン酸の水和物を用いることがより好ましい。クエン酸又はクエン酸の水和物を用いることによって溶液中に金属錯イオンを均一に分散させることができる。この有機酸キレート剤の添加量は、カルシウム原子とコバルト原子の総量に対して1.5倍から2倍の量であることが好ましい。
また、溶媒としてアルコール類又はグリコール類を用いる。アルコール類としては例えば、メタノール、エタノール、n−プロピルアルコール、iso−プロピルアルコール、n−ブタノール、sec−ブタノール、tert−ブタノール、iso−ブタノール、n−ペンタノールなどがあげられる。特に1価アルコールを用いることが好ましい。また、グリコール類としては例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ポリプロピレングリコールの他にテトラメチレンエーテルグリコール、エチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチルエーテル等が挙げられる。中でも、エチレングリコールモノメチルエーテルのように分子末端に水酸基を有し、クエン酸のカルボキシ基と重合反応するようなグリコール(以下、EGMMEとする)であることが好ましい。このEGMMEはキレート剤としても働き、化学的に安定性を有しており、かつ、金属塩の溶解度を向上させることができるためである。
<焼結工程>
得られた前駆体溶液は、焼結工程により所定の温度で所定時間焼成される。焼成温度は、700℃から1200℃で30分から300分であることが好ましく、900℃で180分であることがより好ましい。焼成温度が700℃よりも低いと酸化コバルト層が形成してしまう。また焼成温度が1200℃よりも高い場合には、分解により酸化コバルトとなってしまう。また、焼成時間が30分よりも短いと結晶成長を促進することができないためである。
なお、前駆体溶液中に含有されている溶媒を除去し、クエン酸等を分解するために、焼成温度よりも低い温度で予め乾燥又は仮焼成する乾燥工程を設けることが好ましい。乾燥はまず100℃から130℃近傍で溶媒を除去し、400℃から500℃近傍でクエン酸を分解するように2段階で行なうことが好ましい。
[焼結体の製造]
焼結体は、上記の方法により得られた金属酸化物粉末を一軸加圧成形して焼結することにより得られる。焼結方法としては、一軸加圧成形することができるような装置であれば特に限定されるものではないが、ホットプレートベーク法、超高圧合成法、放電プラズマ焼結法を用いて焼結することが好ましく、放電プラズマ焼結法を用いて行なうことがより好ましい。
放電プラズマ焼結法とは、圧粉体粒子間隙に低電圧でパルス状大電流を投下し、火花放射現象により瞬時に発生する放電プラズマ(高温プラズマ:瞬間的に数千〜1万℃の高温度場が粒子間に生じる)の高エネルギを熱拡散、電解拡散などへ効果的に応用した方法をいう。低温から2000℃以上の超高温域において、従来のホットプレス焼結法などに比べ、200℃から500℃ほどの低い温度領域で、昇温・保持時間を含め5分から20分程度の短時間で焼結を完了することができる。そのメカニズムは、ON−OFF直流パルス通電を用いた加圧焼結法の一種で、粒間結合を形成しようとする部分に高エネルギのパルスを集中させている。粒子表面のみの自己発熱による急速昇温が可能なため、出発原料の粒成長(結晶成長)を抑制することができ、短時間で緻密な焼結体を得ることができる。
また、放電プラズマ焼結装置は、長手方向へ1軸の加圧機構を有する焼結機本体と水冷却部内蔵の特殊通電機構、水冷真空チャンバー、雰囲気制御機構、真空排気装置、特殊DCパルス電源、集中操作制御盤などによって構成されている。試料を充填したダイ・パンチ型をチャンバー内の焼結ステージ上にセットして電極で挟み、加圧しながらパルス通電を行うと、数分以内で室温より一気に1000℃から2500℃へ急速昇温、数分の短時間で高品位の焼結体を得ることができる。
本発明における焼結温度としては、700℃から900℃であることが好ましく、800℃であることがより好ましい。焼結時間は1分から5分であることが好ましく、2分であることがより好ましい。また、昇温速度は50℃/minから100℃/minであることが好ましい。
[実施例1]
<試料1,2の作成>
硝酸カルシウム六水和物(Ca(NO・6HO)、硝酸コバルト六水和物(Co(NO・6HO)、エチレングリコールモノメチルエーテル(EGMME)の混合溶液に金属イオンを安定化させるためのキレート剤(クエン酸一水和物)を添加して前駆体溶液を作成した。
この前駆体溶液を115℃で8時間乾燥させ、450℃で2時間仮焼した後、700℃から1100℃で1時間焼成させて金属酸化物粉末を得た。得られた金属酸化物粉末を乳鉢で粉砕し、後述の条件のもと放電プラズマ焼結したものを試料1とし、超高圧合成法により焼結したものを試料2とした。
放電プラズマ焼結装置は、住友石炭鉱業株式会社のDr.Sinter LabSPS−515sを使用した。試料は1gから10gとした。焼結条件は圧力30MPaとして、700℃まで7分で昇温、700℃から800℃まで2分で昇温し、1分から3分保持し、冷却を行った。その後、800℃で10分間熱処理を行った。得られた試料1のモル比はCa:Co=3:4であった。
[試料の評価]
<配向性の評価>
上記の方法で得られた試料の配向性を評価するために、X線回折(XRD)測定(XRD−6100 Lab X 島津製作所)及び走査型電子顕微鏡(日本電子製JSM−T100型操作型電子顕微鏡)を用いた。測定条件は表1の通りである。
図1は試料1のa−b面方向及びc軸方向におけるX線回折パターンを示したものである。放電プラズマ焼結により、c軸方向と平行に加圧されたため、a−b面方向の結晶性が高く、全体的に(00l)面に対して、高配向であることが示された。なお、配向度の目安(粒子配向度)は、ロッドゲーリング法によりX線回折パターンを比較することで求めた。ここで、ロッドゲーリング法とは、ロッドゲーリングファクターを用いて配向度を評価する方法をいう。ロッドゲーリングファクターは、以下の式(式1)で示され、完全配向の場合は1を示す。なおpは、(式2)で示される。配向試料の配向軸がc軸であるため、(00l)面のX線回折強度の総和(ΣI(00l))を用いた。
上記の方法によって得られた配向度を表2に示す。これより配向度が最も高い試料は試料1のc軸方向であることが示された。
<熱電特性の検討>
作製した試料の電気抵抗率は直流4端子法により測定した。測定装置は、多目的物性測定装置(Quantum Design社 PPMS−6000)を使用した。試料をダイヤモンドカッターおよびサンドペーパー(三共理化学株式会社 耐水研磨紙CC−400−Cw、CC−1000−Cw)で直方体に整形した。電極にはセラソルザ半田(千住金属工業株式会社 SLD‐004)を使用し、超音波半田ごてを使用して取り付けた。また、リード線にはφ=0.05mmのポリウレタン皮膜銅線を用いている。
電気抵抗率ρ(Ωcm)は、試料の厚さd(cm)、幅w(cm)、電極間距離l(cm)、印加電流I(A)、発生した電位差V(V)とすると、(式3)で示される。
ゼーベック係数は、熱電変換素子の上下面に温度差を与え、それにより求めた電位差をS=dV/dT(S=ゼーベック係数,dV=二点間の電位差,T=二点間の温度差)外挿して算出した。これらの測定の結果を表3に示す。この結果より、放電プラズマ焼結法を用いて焼結を行なった試料1の方が試料2と比べPF値(電力因子)が低く、熱電特性が良いことが示された。
また、表3及び図2に示されるように、試料1のa−b面方向とc軸方向における熱電特性は、ゼーベック係数は同様の数値を示したものの、抵抗値及びPF値は大きく相違した。その理由として、CaCoはバンド構造と結晶構造の関係により、c軸方向には電子を移動させることのできる酸素の軌道の重なり(伝導パス)が存在しないため、a−b面内方向のみに電子を移動させることが可能な物質である。電子伝導度は抵抗率の逆数で示され、(式4)で示される。
eは電子の電荷、nはキャリアー数(電子の数)、μは移動度(電子の移動速度)を示す。c軸方向では、キャリアーが移動することができないため高抵抗を示したことが示唆された。以上のことから板状結晶のプリカーサーを用いて放電プラズマ焼結法により焼結させる方法は、高い異方性を有する試料の製造に有効な方法であることが示された。
[実施例2]
<試料の作成>
実施例1と同様の方法を用いて得られた前駆体溶液の焼結温度を900℃、焼結時間を3時間とした以外は実施例1と同様の方法で金属酸化物粉末を作成した。この金属酸化物粉末(CaCo結晶)を29.4MPaで加圧し、700℃まで7分で昇温、700℃から800℃まで2分で昇温し、800℃で2分間熱処理を行った。得られた焼結体のモル比はCa:Co=3:3.92であった。この焼結体を試料3とした。
また、炭酸カルシウム及び酸化コバルトを出発原料として、料従来の固相法により得られた金属酸化物粉末を、850℃で12時間を2回繰り返して焼結させた焼結体を試料4とした。
[試料の評価]
<金属酸化物粉末の観察>
上記試料3,4の製造に用いた金属酸化物粉末のSEM写真を図3,4に示す。図4(a),(b)に示すように、固相法を用いて合成した試料4は、結晶粒の形状が不均一で10μm以上の塊状又は層状のものが存在している。固相法の場合は、それぞれの出発原料の相互拡散を用いた焼結により、表面自由エネルギを小さくする作用が働くため、得られた金属酸化物粉末は略球形となる。
これに対して、図3に示すように、本発明では液相法を用いているため得られた金属酸化物粉末(CaCo結晶)は、扁平かつ、板状の非常に微細な粒形状を有しており、構造に依存した結晶成長をする。また、それぞれの微細板状結晶は実質的に単結晶をなしており、図4に示すように層状をなすことは無い。また、低温でCo−O−Caの結合を形成するため、安定な構造を形成し目的物を容易に得ることができる。しかし、固相反応法では、物質の拡散機構を利用して目的結晶を得るため、高温、長時間の加熱処理を必要とし、表面自由エネルギを最小にする形状となることが原因で結晶粒が球状・塊状に拡大し微細な粒はできないことが示唆される。
また、試料3のSEM写真を図5(a)から図5(c)に示す。なお、図中(a)(a’)は加圧方向に対して垂直方向に切り出した試料の断面図SEM写真であり、図中(b)(b’)は(a)(a’)の粒形を観察するための塩酸脱離を行った後のSEM写真である。また(c)は、加圧方向に対して平行方向に切り出した試料の断面のSEM写真である。(a)(a’)は非常に緻密であることが示されているが、この観察結果は、試料3の密度が4.68g/cmという高い値を示した事と一致する。また(a)(a’)(b)(b’)と(c)を比較すると、(a)(a’)(b)(b’)に対して(c)では結晶が横方向に並んでいる事が確認できることから、この焼結体は加圧方向に対して垂直方向と平行方向では極めて高い異方性を有している事が示された。
<熱電特性の検討>
実施例1と同様の方法で試料3,4の熱電特性を測定した。その結果を図6(a)(b)に示す。試料3の室温におけるゼーベック係数は、面内方向で138.3μV/K、面外方向で132.9μV/K、抵抗率が面内方向で9.68mΩcm、面外方向では22.5mΩcmとなった。さらにこれらの値から電力因子を算出したところ、室温では面内方向で1.98μW/Kcm、面外方向では0.78μW/Kcmとなった。図7にそれぞれの温度での電力因子を示す。更に試料3,4の各熱電特性及び公知の方法により製造した焼結体の熱電特性を表4に示す。これより本発明に係る製造方法を用いた焼結体は優れた熱電特性を有することが示された。
試料1のX線回折パターンを示した図である。 試料1の各軸方向における熱電特性を示した図である。 試料3の製造に用いた金属酸化物粉末のSEM写真を示した図である。 試料4の製造に用いた金属酸化物粉末のSEM写真を示した図である。 試料3のSEM写真を示した図である。 試料3,4の熱電特性を示した図である。 試料3,4の熱電特性を示した図である。

Claims (6)

  1. 金属カルシウム塩及び金属コバルト塩と、これらの金属塩とキレート形成能を有する有機酸キレート剤と、をアルコール又はグリコールに溶解して前駆体溶液を得る溶液製造工程と、
    この前駆体溶液を焼成する焼成工程と、を有する金属酸化物粉末の製造方法。
  2. 前記焼成工程の前に、前記前駆体溶液を乾燥する乾燥工程を更に有する請求項1に記載の金属酸化物粉末の製造方法。
  3. 前記焼成工程において、焼成温度は700℃から1200℃であり、焼成時間は30分から300分である請求項1又は2に記載の金属酸化物粉末の製造方法。
  4. 前記金属カルシウム塩及び金属コバルト塩は、それぞれ硝酸塩である請求項1から3いずれかに記載の金属酸化物粉末の製造方法。
  5. 前記有機酸キレート剤は、クエン酸である請求項1から4いずれかに記載の金属酸化物粉末の製造方法。
  6. 請求項1からいずれかに記載の方法により製造されたCaCoの結晶からなる金属酸化物粉末を、一軸加圧成形して焼結する工程を更に有する焼結体の製造方法。
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