JP2004134454A - 熱電変換材料及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】環境負荷物質を含まず、高温大気中においても高い熱電特性を安定して示す熱電変換材料及びその製造方法を提供すること。
【解決手段】本発明に係る熱電変換材料は、YbFe2O4類縁型層状構造を有し、一般式:ABOy(CO)m(但し、2<y<4;1≦m≦19;Aサイト元素は、IIIb族元素、Sc、Y及び/又はランタノイド元素;Bサイト元素は、IIIb族元素及び/又はFe;Cサイト元素は、Zn、IIa族元素及び/又は2価の3d、4d若しくは5d遷移金属元素。)で表され、さらに前記Aサイト元素及び/若しくは前記Bサイト元素の0.001at%以上20at%以下が、IVa族元素からなる第1置換元素により置換され、並びに/又は前記Cサイト元素の0.001at%以上20at%以下が、IIIa族元素及び/又はIIIb族元素からなる第2置換元素により置換された複合酸化物からなる。
【選択図】 図3
【解決手段】本発明に係る熱電変換材料は、YbFe2O4類縁型層状構造を有し、一般式:ABOy(CO)m(但し、2<y<4;1≦m≦19;Aサイト元素は、IIIb族元素、Sc、Y及び/又はランタノイド元素;Bサイト元素は、IIIb族元素及び/又はFe;Cサイト元素は、Zn、IIa族元素及び/又は2価の3d、4d若しくは5d遷移金属元素。)で表され、さらに前記Aサイト元素及び/若しくは前記Bサイト元素の0.001at%以上20at%以下が、IVa族元素からなる第1置換元素により置換され、並びに/又は前記Cサイト元素の0.001at%以上20at%以下が、IIIa族元素及び/又はIIIb族元素からなる第2置換元素により置換された複合酸化物からなる。
【選択図】 図3
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、熱電変換材料及びその製造方法に関し、さらに詳しくは、太陽熱発電器、海水温度差熱電発電器、化石燃料熱電発電器、工場排熱や自動車排熱の回生発電器等の各種の熱電発電器、光検出素子、レーザーダイオード、電界効果トランジスタ、光電子増倍管、分光光度計のセル、クロマトグラフィーのカラム等の精密温度制御装置、恒温装置、冷暖房装置、冷蔵庫、時計用電源等に用いられる熱電変換素子を構成するn型熱電変換材料として好適な熱電変換材料及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
熱電変換とは、ゼーベック効果やペルチェ効果を利用して、電気エネルギーを冷却や加熱のための熱エネルギーに、また逆に熱エネルギーを電気エネルギーに直接変換することをいう。熱電変換は、(1)エネルギー変換の際に余分な老廃物を排出しない、(2)排熱の有効利用が可能である、(3)材料が劣化するまで継続的に発電を行うことができる、(4)モータやタービンのような可動装置が不要であり、メンテナンスの必要がない、等の特徴を有していることから、エネルギーの高効率利用技術として注目されている。
【0003】
熱エネルギと電気エネルギとを相互に変換できる材料、すなわち、熱電変換材料の特性を評価する指標としては、一般に、性能指数Z(=S2σ/κ、但し、S:ゼーベック係数、σ:電気伝導度、κ:熱伝導度)、又は、性能指数Zと、その値を示す絶対温度Tの積として表される無次元性能指数ZTが用いられる。ゼーベック係数は、1Kの温度差によって生じる起電力の大きさを表す。熱電変換材料は、それぞれ固有のゼーベック係数を持っており、ゼーベック係数が正であるもの(p型)と、負であるもの(n型)に大別される。
【0004】
また、熱電変換材料は、通常、p型の熱電変換材料とn型の熱電変換材料とを接合した状態で使用される。このような接合対は、一般に、熱電変換素子と呼ばれている。熱電変換素子の性能指数は、p型熱電変換材料の性能指数Zp、n型熱電変換材料の性能指数Zn、並びに、p型及びn型熱電変換材料の形状に依存し、また、形状が最適化されている場合には、Zp及び/又はZnが大きくなるほど、熱電変換素子の性能指数が大きくなることが知られている。従って、性能指数の高い熱電変換素子を得るためには、性能指数Zp、Znの高い熱電変換材料を用いることが重要である。
【0005】
このような熱電変換材料としては、例えば、Bi−Te系、Pb−Te系、Si−Ge系、酸化物セラミックス系等の種々の材料が知られている。これらの中で、Bi−Te系及びPb−Te系の化合物半導体は、それぞれ、室温近傍及び300〜500℃の中温域において、優れた熱電特性(ZT〜0.8)を示す。しかしながら、これらの化合物半導体は、高温域での使用は困難である。また、材料中には高価な稀少元素(例えば、Te、Sb、Seなど)や、毒性の強い環境負荷物質(例えば、Te、Sb、Se、Pbなど)を含むという問題がある。
【0006】
一方、Si−Ge系の化合物半導体は、1000℃付近の高温域において優れた熱電特性を示し、また、材料中に環境負荷物質を含まないという特徴がある。しかしながら、Si−Ge系の化合物半導体は、高温大気中において長時間使用するためには、材料表面を保護する必要があり、熱的耐久性が低いという問題がある。
【0007】
これに対し、酸化物セラミックス系の熱電変換材料は、材料中に稀少元素や環境負荷物質を必ずしも含まない。また、高温大気中において長時間使用しても熱電特性の劣化が少なく、熱的耐久性に優れるという特徴がある。そのため、酸化物セラミックス系の熱電変換材料は、化合物半導体に代わる材料として注目されており、熱電特性の高い新材料やその製造方法について、従来から種々の提案がなされている。
【0008】
例えば、特許文献1には、Zn−In−O系酸化物であって、ZnとInとの組成比率がZnO/In2O3モル比で5〜19である熱電変換材料が開示されている。同文献には、Inサイトの一部をIn3+イオンより大きなイオン半径を持つ3価陽イオンにより置換するか、あるいはZnサイトの一部をZn2+イオンより小さなイオン半径を持つ2価陽イオンにより置換することによって、結晶構造の変化が起こり、熱電性能が向上する点が記載されている。
【0009】
また、特許文献2には、YbFe2O4類縁型層状構造を有し、一般式ABOy(CO)m(2<y<3、1≦m≦19)で表される化合物に酸素欠陥を導入した熱電変換材料、及びYbFe2O4類縁型層状構造を有し、一般式ABOy(CO)m(2<y<3、1≦m≦19)で表される化合物のAサイト又はBサイトの少なくとも一方を、IVb族元素で置換した熱電変換材料が開示されている。同文献には、酸素欠陥及びIVb族元素を導入することによって、化合物にキャリアが導入され、電気抵抗率が低下する点が記載されている。
【0010】
さらに、M.Oritaらは、透明InGaZnO4の電気伝導機構の検討を行っている(非特許文献1参照)。同文献には、InO2層とGaZnO2層が所定の周期で積層された層状構造を有するInGaZnO4において、電気伝導は主にInの5s軌道が担っているいる点、すなわちInO2層が伝導パスとして機能する点が記載されている。さらに、同文献には、GaZnO2層にドーパントイオンを導入することによって、InO2層内を移動する電子の散乱が抑制される可能性がある点が示唆されている。
【0011】
【特許文献1】
特開2000−012915号公報(段落番号「0039」〜「0045」)
【特許文献2】
特開2001−085751号公報(段落番号「0021」〜「0034」)
【非特許文献1】
M.Orita et al., Phys. Rev. B, 61(3), pp.1181−1186
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
In2O3(ZnO)mやInGaO3(ZnO)mに代表されるYbFe2O4類縁型層状構造を有する複合酸化物は、相対的に低い電気伝導度σと、相対的に大きな負のゼーベック係数Sを有している。そのため、この複合酸化物に電子キャリアをドープすれば、電気伝導度σが高くなり、高い性能指数Zを示すn型熱電変換材料として機能する。
【0013】
しかしながら、電子キャリアとして酸素欠陥を導入する方法は、還元雰囲気下において長時間の熱処理を行う必要があるために、生産性が低いという問題がある。また、導入される酸素欠陥の量を厳密に制御するのが困難であり、熱電特性の再現性に乏しいという問題がある。さらに、酸素欠陥が導入された複合酸化物を高温大気中において使用すると、酸素欠陥が徐々に消滅し、熱電特性が不安定になるという問題がある。
【0014】
一方、非特許文献1には、GaZnO2層にドーパントイオンを導入することによって、InO2層内を移動する電子の散乱が抑制される点が示唆されている。しかしながら、GaZnO2層にドーパントイオンが導入された熱電変換材料が実際に作製された例は、従来にはない。
【0015】
本発明が解決しようとする課題は、環境負荷物質を含まず、高温大気中においても高い熱電特性を安定して示す熱電変換材料を提供することにある。また、本発明が解決しようとする他の課題は、このような優れた熱電特性を有する熱電変換材料を再現性良く、かつ高い生産性で製造することが可能な熱電変換材料の製造方法を提供することにある。
【0016】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために本発明に係る熱電変換材料の1番目は、YbFe2O4類縁型層状構造を有し、
一般式:ABOy(CO)m
(但し、2<y<4; 1≦m≦19; Aサイト元素は、IIIb族元素、並びにSc、Y及びランタノイド元素から選ばれる少なくとも1種類の元素; Bサイト元素は、IIIb族元素及びFeから選ばれる少なくとも1種類の元素; Cサイト元素は、Zn及びIIa族元素、並びに2価の3d遷移金属元素、4d遷移金属元素及び5d遷移金属元素から選ばれる少なくとも1種類の元素。)
で表され、さらに前記Aサイト元素及び/若しくは前記Bサイト元素の0.001at%以上20at%以下が、IVa族元素から選ばれる少なくとも1種類の第1置換元素により置換され、並びに/又は前記Cサイト元素の0.001at%以上20at%以下が、IIIa族元素及びIIIb族元素から選ばれる少なくとも1種類の第2置換元素により置換された複合酸化物からなることを要旨とする。
【0017】
また、本発明に係る熱電変換材料の2番目は、YbFe2O4類縁型層状構造を有し、
一般式:ABOy(CO)m
(但し、2<y<4; 1≦m≦19; Aサイト元素は、IIIb族元素、並びにSc、Y及びランタノイド元素から選ばれる少なくとも1種類の元素; Bサイト元素は、IIIb族元素及びFeから選ばれる少なくとも1種類の元素; Cサイト元素は、Zn及びIIa族元素、並びに2価の3d遷移金属元素、4d遷移金属元素及び5d遷移金属元素から選ばれる少なくとも1種類の元素。)
で表され、さらに前記Aサイト元素及び/若しくは前記Bサイト元素の0.001at%以上20at%以下が、IVa族元素及びIVb族元素から選ばれる少なくとも1種類の第1置換元素により置換され、並びに/又は前記Cサイト元素の0.001at%以上20at%以下が、IIIa族元素及びIIIb族元素から選ばれる少なくとも1種類の第2置換元素により置換された複合酸化物の多結晶体からなり、該多結晶体を構成する各結晶粒のab面が一方向に配向していることを要旨とする。
【0018】
複合酸化物を構成するAサイト元素若しくはBサイト元素を特定の4価陽イオンで置換するか、又はCサイト元素を特定の3価陽イオンで置換すると、電子キャリアが導入され、電気伝導度が増加する。特に、Cサイト元素を特定の3価陽イオンで置換した場合には、キャリア移動度を低下させることなく電子キャリアを導入できるので、高い電気伝導度が得られる。さらに、複合酸化物の多結晶体において、各結晶粒のab面を一方向に配向させると、ab面内方向での高いキャリア移動度と電子有効質量の増加をもたらし、高い熱電性能が実現される。
【0019】
また、本発明に係る熱電変換材料の製造方法は、請求項1又は2に記載の複合酸化物を生成可能な組成を有し、かつ前記複合酸化物を構成するAサイト元素、Bサイト元素、Cサイト元素、第1置換元素及び第2置換元素から選ばれる少なくとも1種類の元素を含む、少なくとも1種類の粉末を含む原料を調製する原料調製工程と、前記原料を成形する成形工程と、該成形工程で得られた成形体を焼成する焼結工程とを備えていることを要旨とする。
【0020】
この場合、前記焼結工程は、前記成形体を、前記Cサイト元素から選ばれる少なくとも1種類の元素を含む酸化物の蒸気が外部から供給される雰囲気下において焼成するものが好ましい。また、前記原料調製工程は、前記複合酸化物のAO2層又はCO層と格子整合性を有する結晶面Xを発達面とする異方形状粉末を含む原料を調製するものであり、前記成形工程は、前記結晶面Xが一方向に配向するように、前記原料を成形するものが好ましい。
【0021】
Aサイト元素、Bサイト元素、Cサイト元素、第1置換元素及び第2置換元素を所定の比率で含む原料を成形し、所定の条件下で焼成すると、所定の組成を有する複合酸化物からなる熱電変換材料が得られる。また、焼成時にCサイト元素を含む酸化物の蒸気を含む雰囲気下で焼成すると、成形体からのCサイト元素の揮発が抑制され、健全な焼結体が得られる。さらに、出発原料として所定の条件を満たす異方形状粉末を用い、これを成形体中に配向させると、ab面が配向した焼結体が得られる。
【0022】
【発明の実施の形態】
以下に本発明の実施の形態について詳細に説明する。本発明の第1の実施の形態に係る熱電変換材料は、YbFe2O4類縁型層状構造を有し、次の化1の式に示す一般式で表される複合酸化物を基本組成とする。
【0023】
【化1】
ABOy(CO)m
(但し、2<y<4; 1≦m≦19; Aサイト元素は、IIIb族元素、並びにSc、Y及びランタノイド元素から選ばれる少なくとも1種類の元素; Bサイト元素は、IIIb族元素及びFeから選ばれる少なくとも1種類の元素; Cサイト元素は、Zn及びIIa族元素、並びに2価の3d遷移金属元素、4d遷移金属元素及び5d遷移金属元素から選ばれる少なくとも1種類の元素。)
【0024】
YbFe2O4は、YbO2層とFe2O2層とがc軸方向に所定の周期で積層された層状構造を備えている。化1の式で表される複合酸化物は、YbFe2O4のYbO2層がAO2層に置き換わり、かつFe2O2層がBCmOm+1層に置き換わったものと考えられている。
【0025】
化1の式において、「y」は、複合酸化物に含まれる酸素量を示す。酸素量yは、理想的には「3」であるが、製造条件、使用条件等に応じて、複合酸化物中に若干の過剰酸素又は酸素欠損が導入される場合がある。酸素量yに幅があるのは、本発明に係る熱電変換材料には、このような不可避的に導入される過剰酸素又は酸素欠損が含まれていても良いことを示す。
【0026】
「m」は、BCmOm+1層に含まれるCO層の層数であり、CO層の層数mが大きくなるほど、BCmOm+1層が厚くなることを意味する。層数mは、1以上であれば良い。また、異なる積層周期が1種以上混在する場合もあり得る。但し、層数mが19を越えると、複合酸化物を安定して作製するのが困難となるので、層数mは、19以下が好ましい。一般に、層数mが大きくなるほど、電気伝導度σは小さくなるが、ゼーベック係数Sは大きくなり、かつ熱伝導度κは小さくなる傾向があるので、層数mは、複合酸化物の組成に応じて最適なものを選択する。
【0027】
Aサイト元素は、3価の金属元素の内、IIIb族元素(B、Al、Ga、In、Tl)、並びにSc、Y、及びランタノイド元素(57La〜71Lu)から選ばれる少なくとも1種類の元素からなる。また、Bサイト元素は、3価の金属元素の内、IIIb族元素、及びFeから選ばれる少なくとも1種類の元素からなる。さらに、Cサイト元素は、Zn、及びIIa族元素(Be、Mg、Ca、Sr、Ba、Ra)、並びに3d遷移金属元素(21Sc〜29Cu)、4d遷移金属元素(39Y〜47Ag)、及び5d遷移金属元素(72Hf〜79Au)の内の2価の価数を取るものから選ばれる少なくとも1種類の元素からなる。
【0028】
Aサイト元素、Bサイト元素及びCサイト元素は、これらの内のいずれかであれば良く、各元素の組み合わせ、比率等は、特に限定されるものではない。特に、Cサイト元素としてZnを含む複合酸化物は、優れた熱電特性を示す熱電変換材料となる。Cサイトに占めるZnの割合は、具体的には、10at%以上が好ましく、さらに好ましくは、20at%以上である。
【0029】
図1に、化1の式で表される複合酸化物の一種であるInGaZnO4の結晶構造を示す。InGaZnO4は、InO2層と、GaZnO2層とがc軸方向に所定の周期で積層された層状構造を備えている。これらの内、InO2層は、正八面体の中心に1個のIn原子があり、かつ、その頂点に合計6個のO原子があるInO6八面体が、稜を共有する形で二次元的に連結したものからなる。一方、GaZnO2層は、2重三角錐(bipyramid)の中心にGa原子又はZn原子があり、かつ、その頂点に合計5個のO原子があるMO52重三角錐が、頂点を共有する形で二次元的に連結したものからなる。
【0030】
本実施の形態に係る熱電変換材料は、化1の式で表される複合酸化物を構成するAサイト元素、Bサイト元素及びCサイト元素の少なくとも1つが、所定の置換元素により置換されたものからなる。
【0031】
3価の金属元素からなるAサイト元素又はBサイト元素を置換する置換元素(以下、これを「第1置換元素」という。)は、IVa属元素(Ti、Zr、Hf)から選ばれる少なくとも1種類の元素が好ましい。この場合、Aサイト元素又はBサイト元素のいずれか一方が第1置換元素により置換されていても良く、あるいは、双方が置換されていても良い。また、Aサイト元素及びBサイト元素の双方を置換する場合において、Aサイト元素を置換する第1置換元素とBサイト元素を置換する第1置換元素とは、同一元素であっても良く、あるいは、異なる元素であっても良い。
【0032】
第1置換元素によりAサイト元素を置換する場合、その置換量は、Aサイトの0.001at%以上20at%以下が好ましい。また、第1置換元素によりBサイト元素を置換する場合、その置換量は、Bサイトの0.001at%以上20at%以下が好ましい。
【0033】
第1置換元素によるAサイト元素及び/又はBサイト元素の置換量が0.001at%未満になると、キャリア濃度が低くなり、電気伝導度σが低下する。一方、置換量が20at%を越えると、散乱によってキャリア移動度が低下し、電気伝導度σが低下する。第1置換元素によるAサイト元素の置換量は、さらに好ましくは、0.1at%以上10at%以下である。また、第1置換元素によるBサイト元素の置換量は、さらに好ましくは、0.1at%以上10at%以下である。
【0034】
2価の金属元素からなるCサイト元素を置換する置換元素(以下、これを「第2置換元素」という。)は、IIIa属元素(Sc、Y、ランタノイド元素(57La〜71Lu)、アクチノイド元素(89Ac〜103Lr))及びIIIb属元素(B、Al、Ga、In、Tl)から選ばれる少なくとも1種類の元素が好ましい。
【0035】
第2置換元素によりCサイト元素を置換する場合、その置換量は、Cサイトの0.001at%以上20at%以下が好ましい。第2置換元素によるCサイト元素の置換量が0.001at%未満になると、キャリア濃度が低くなり、電気伝導度σが低下する。一方、置換量が20at%を越えると、散乱によってキャリア移動度が低下し、電気伝導度σが低下する。第2置換元素によるCサイト元素の置換量は、さらに好ましくは、0.1at%以上10at%以下である。
【0036】
さらに、第1置換元素によりAサイト元素及び/又はBサイト元素を置換すると同時に、第2置換元素によりCサイト元素を置換しても良い。この場合、各元素の置換量は、それぞれ、上述した範囲内にあればよい。また、Aサイト、Bサイト及びCサイトの内、少なくとも1つのサイトの0.001at%以上が所定の置換元素により置換されている場合には、他のサイトの置換量は、0.001at%未満であっても良い。
【0037】
Aサイト元素、Bサイト元素及び/又はCサイト元素を、それぞれ上述した置換元素で置換すると、電子キャリアが導入され、複合酸化物の電気伝導度σが向上する。特に、Cサイト元素を第2置換元素で置換すると、キャリア移動度を低下させることなくキャリア濃度を高めることができるので、高い電気伝導度σが得られる。
【0038】
本実施の形態に係る熱電変換材料を構成する複合酸化物は、次の化2の式に示す一般式で表すこともできる。なお、化2の式において、「0.00001≦max(u、v、w)」は、u、v及びwの内の最大値が0.00001(0.001at%)以上であればよいことを示す。
【0039】
【化2】
(A1−uM1u)(B1−vM1’v)Oy{(C1−wM2w)O}m
(但し、2<y<4; 1≦m≦19; 0≦u≦0.2; 0≦v≦0.2;
0≦w≦0.2; 0.00001≦max(u、v、w);
Aは、IIIb族元素、並びにSc、Y及びランタノイド元素から選ばれる少なくとも1種類の元素;
Bは、IIIb族元素及びFeから選ばれる少なくとも1種類の元素;
Cは、Zn及びIIa族元素、並びに2価の3d遷移金属元素、4d遷移金属元素及び5d遷移金属元素から選ばれる少なくとも1種類の元素;
M1、M1’は、IVa族元素から選ばれる少なくとも1種類の元素;
M2は、IIIa族元素及びIIIb族元素から選ばれる少なくとも1種類の元素。)
【0040】
なお、本実施の形態に係る熱電変換材料は、単結晶又は多結晶体のいずれであっても良い。但し、(1)製造が容易で、かつ製造時に組成のずれが生じにくい、(2)実用に耐えうる大きさを有するものの製造が容易である、(3)単結晶より破壊靱性が大きい、(4)粒界や空孔でフォノンが散乱されるため、単結晶より熱伝導度が低い、等の理由から、多結晶体の方が好ましい。また、多結晶体である場合、各結晶粒は、無配向であっても良く、あるいは、後述するようにab面が配向しているものであっても良い。
【0041】
次に、本発明の第2の実施の形態に係る熱電変換材料について説明する。本実施の形態に係る熱電変換材料は、YbFe2O3類縁型層状構造を有し、化1の式に示す一般式で表される複合酸化物を基本組成とし、これに含まれるAサイト元素及び/若しくはBサイト元素が第1置換元素により置換され、並びに/又はCサイト元素が第2置換元素により置換されたものからなる。
【0042】
本実施の形態において、第1置換元素は、IVa族元素及びIVb族元素(C、Si、Ge、Sn、Pb)から選ばれる少なくとも1種類の元素からなる。すなわち、第1置換元素には、IVa族元素に加えて、IVb族元素が用いられる。この点が、第1の実施の形態に係る熱電変換材料とは異なる。本実施の形態に係る熱電変換材料の組成に関するその他の点については、第1の実施の形態に係る熱電変換材料と同一であるので、説明を省略する。
【0043】
本実施の形態に係る熱電変換材料を構成する複合酸化物は、次の化3の式に示す一般式で表すこともできる。なお、化3の式において、「0.00001≦max(u、v、w)」は、u、v及びwの内の最大値が0.00001(0.001at%)以上であればよいことを示す。
【0044】
【化3】
(A1−uM1u)(B1−vM1’v)Oy{(C1−wM2w)O}m
(但し、2<y<4; 1≦m≦19; 0≦u≦0.2; 0≦v≦0.2;0≦w≦0.2; 0.00001≦max(u、v、w);
Aは、IIIb族元素、並びにSc、Y及びランタノイド元素から選ばれる少なくとも1種類の元素;
Bは、IIIb族元素及びFeから選ばれる少なくとも1種類の元素;
Cは、Zn及びIIa族元素、並びに2価の3d遷移金属元素、4d遷移金属元素及び5d遷移金属元素から選ばれる少なくとも1種類の元素;
M1、M1’は、IVa族元素及びIVb族元素から選ばれる少なくとも1種類の元素;
M2は、IIIa族元素及びIIIb族元素から選ばれる少なくとも1種類の元素。)
【0045】
また、本実施の形態に係る熱電変換材料は、化3の式で表される複合酸化物の多結晶体からなり、この多結晶体を構成する各結晶粒のab面が一方向に配向していることを特徴とする。
【0046】
本発明において、「ab面」とは、AO2層と平行な面(電気伝導度σの高い面)をいう。また、「ab面が配向する」とは、各結晶粒のab面が互いに平行に配列すること(以下、これを「面配向」という。)、及び各結晶粒のab面が多結晶体を貫通する1つの軸に対して平行に配列すること(以下、これを「軸配向」という。)の双方を意味する。高い熱電特性を備えた熱電変換材料を得るためには、各結晶粒のab面は、面配向していることが望ましい。
【0047】
ab面の面配向の程度は、次の数1の式に示すロットゲーリング(Lotgering)法による平均配向度Q(HKL)により表すことができる。
【0048】
【数1】
【0049】
なお、数1の式において、ΣI(hkl)は、配向焼結体について測定されたすべての結晶面(hkl)のX線回折強度の総和であり、ΣI0(hkl)は、配向焼結体と同一組成を有する無配向焼結体について測定されたすべての結晶面(hkl)のX線回折強度の総和である。また、Σ’I(HKL)は、配向焼結体について測定された結晶学的に等価な特定の結晶面(HKL)のX線回折強度の総和であり、Σ’I0(HKL)は、配向焼結体と同一組成を有する無配向焼結体について測定された結晶学的に等価な特定の結晶面(HKL)のX線回折強度の総和である。
【0050】
また、本発明において、平均配向度Q(HKL)の算出には、X線源としてCu−Kα線を用いてX線回折を行ったときに得られる回折ピークであって、2θ=5°〜60°の範囲にあるものを用いた。
【0051】
従って、多結晶体を構成する各結晶粒が無配向である場合には、平均配向度Q(HKL)は0%となる。また、多結晶体を構成するすべての結晶粒の(HKL)面が測定面に対して平行に配向している場合には、平均配向度Q(HKL)は100%となる。
【0052】
本実施の形態に係る熱電変換材料において、高い性能指数を得るためには、ab面の配向度は高いほど良い。ab面の配向度は、具体的には、50%以上が好ましく、さらに好ましくは、80%以上である。
【0053】
なお、ab面を軸配向させる場合には、その配向の程度は、数1の式では定義できない。しかしながら、配向軸に垂直な面に対してX線回折を行った場合の(HKL)回折に関するLotgering法による平均配向度(以下、これを「軸配向度」という。)を用いて、軸配向の程度を表すことができる。ab面が軸配向している多結晶体の場合、軸配向度は負の値となる。また、ab面がほぼ完全に軸配向している多結晶体の軸配向度は、ab面がほぼ完全に面配向している多結晶体について測定された軸配向度と同程度になる。
【0054】
次に、本発明に係る熱電変換材料の作用について説明する。熱電変換材料の性能指数Zは、上述したように、電気伝導度σに比例しており、電気伝導度σが大きくなるほど、性能指数Zは大きくなる。一方、電気伝導度σは、キャリア濃度ncと、キャリア移動度μcの積に比例することが知られている。
【0055】
従って、化1の式で表される複合酸化物において、3価のAサイト元素及び/又はBサイト元素を4価の第1置換元素(M1、M1’)で置換するか、あるいは、2価のCサイト元素を3価の第2置換元素(M2)で置換すれば、複合酸化物のキャリア濃度ncが増大し、性能指数Zを向上させることができる。しかも、化2又は化3の式で表される複合酸化物は、毒性が少なく、構成元素の存在量が高く、かつ高温でも安定に作動するため、環境に調和した実用性の高い熱電変換材料となる。
【0056】
また、YbFe2O4類縁型層状構造を有する熱電変換材料として、これまでにIn2O3(ZnO)mとInGa3(ZnO)mが報告されている。これらの複合酸化物において、いずれも電気伝導は、主にInの5s軌道が担っていると考えられている(非特許文献1参照)。また、これらの複合酸化物に電子キャリアをドープすると、電気伝導度σが高くなり、熱電変換材料として機能する。
【0057】
しかしながら、これらの複合酸化物に対し、酸素欠陥を導入したり、あるいは、In3+を4価の陽イオンで置換ドープする方法を用いて電子キャリアを導入する場合、キャリア濃度ncが大きくなるほど、伝導面(InO2層と平行な面)におけるキャリアの散乱が増加し、キャリア移動度μcが低下する。その結果、到達可能な電気伝導度σ(すなわち、性能指数Z)には、限界がある。この点は、本発明に係る熱電変換材料も同様である。
【0058】
これに対し、伝導層と考えられるAO2層に含まれる3価のAサイト元素(例えば、In)を4価の第1置換元素(M1)に置換することに加えて又はこれに代えて、BCmOm+1層に含まれるBサイト元素を第1置換元素(M1’)で置換するか、あるいは2価のCサイト元素を3価の第2置換元素(M2)で置換すると、伝導面(AO2層と平行な面)におけるキャリアの散乱を増加させることなく、キャリア濃度ncを増加させることができる。特に、Cサイト元素を第2置換元素(M2)で置換した場合には、高いキャリア移動度μcが得られ、これに応じて性能指数Zも向上する。
【0059】
さらに、熱電変換材料の性能指数Zは、「物質因子β」と呼ばれる定数と相関があり、物質因子βが大きくなるほど、到達可能な性能指数の最大値Zmaxが大きくなることが知られている。また、物質因子βは、キャリアの有効質量m*、キャリア移動度μc及び格子の熱伝導度κphと相関があり、キャリアの有効質量m*が大きくなるほど、キャリア移動度μcが大きくなるほど、及び/又は格子の熱伝導度κphが小さくなるほど、大きくなることが知られている。
【0060】
一方、化1〜化3の式で表される複合酸化物は、電気伝導を担う伝導面がab面に沿って配列しているため、電気伝導に異方性がある。特に、CO層の層数mを増加させていくと、電気伝導の2次元性が強くなり、キャリアの有効質量m*を増加させることができる。しかしながら、CO層の層数mが増加すると、同時に伝導層の厚さも相対的に薄くなる。そのため、化3の式で表される複合酸化物からなる多結晶体において、各結晶粒が無配向状態である場合には、CO層の層数mが増加するほど、伝導面が不連続となるために、キャリア移動度μcが低下し、高い性能指数Zは得られない。
【0061】
これに対し、化3の式で表される複合酸化物からなる多結晶体において、各結晶粒のab面を配向させると、伝導面が連続となり、ab面内方向のキャリア移動度μcが増加する。特に、ab面を面配向させた場合には、高いキャリア移動度μcが得られる。また、これと同時に、CO層の層数mを増加させると、キャリアの有効質量m*も増加する。そのため、層数mを最適化することによって、高い性能指数Zを示す熱電変換材料が得られる。
【0062】
次に、本発明に係る熱電変換材料の内、ab面が配向した配向焼結体の製造に用いられる異方形状粉末について説明する。化3の式で表される複合酸化物のような複雑な組成を有するセラミックスは、通常、成分元素を含む単純化合物を化学量論比になるように混合し、この混合物を成形・仮焼した後に解砕し、次いで解砕粉を再成形・焼結する方法によって製造される。しかしながら、このような方法では、各結晶粒の特定の結晶面が特定の方向に配向した配向焼結体を得るのは極めて困難である。
【0063】
後述する製造方法においては、この問題を解決するために、特定の条件を満たす針状、板状等の異方形状粉末を成形体中に配向させ、この異方形状粉末をテンプレート又は反応性テンプレートとして用いて複合酸化物の合成及びその焼結を行わせ、これによって多結晶体を構成する各結晶粒のab面を一方向に配向させた点に特徴がある。本発明において、異方形状粉末には、以下の条件を満たすものが用いられる。
【0064】
第1に、異方形状粉末には、成形時に一定の方向に配向させることが容易な形状を有しているものが用いられる。そのためには、異方形状粉末の平均アスペクト比(=異方形状粉末の最大寸法/最小寸法の平均値)は、3以上であることが望ましい。平均アスペクト比が3未満であると、成形時に異方形状粉末を一方向に配向させるのが困難となる。異方形状粉末の平均アスペクト比は、さらに好ましくは5以上である。
【0065】
一般に、異方形状粉末の平均アスペクト比が大きくなるほど、異方形状粉末の配向が容易化される傾向がある。但し、平均アスペクト比が過大になると、後述する原料調製工程において原料の均一な混合が妨げられる場合がある。従って、異方形状粉末の平均アスペクト比は、100以下が好ましく、さらに好ましくは20以下である。
【0066】
また、異方形状粉末の平均粒径(=異方形状粉末の最大寸法の平均値)は、0.05μm以上20μm以下が好ましい。異方形状粉末の平均粒径が0.05μm未満であると、成形時に作用する剪断応力によって異方形状粉末を一定の方向に配向させるのが困難になる。一方、異方形状粉末の平均粒径が20μmを超えると、焼結性が低下する。異方形状粉末の平均粒径は、さらに好ましくは、0.1μm以上10μm以下である。
【0067】
第2に、異方形状粉末には、その発達面(最も広い面積を占める面)が化3の式に示す複合酸化物のAO2層又はCO層と格子整合性を有する結晶面(以下、これを「結晶面X」という。)であるものが用いられる。所定の形状を有する異方形状粉末であっても、その発達面が複合酸化物のAO2層又はCO層と格子整合性を有していない場合には、本発明に係る熱電変換材料を製造するためのテンプレートとして機能しない場合があるので好ましくない。
【0068】
格子整合性の良否は、異方形状粉末の発達面の格子寸法(例えば、陽イオンが作る三角格子における陽イオン間距離)と複合酸化物のAO2層又はCO層の格子寸法(例えば、陽イオンが作る三角格子における陽イオン間距離)の差の絶対値を異方形状粉末の発達面の格子寸法で割った値(以下、この値を「格子整合率」という。)で表すことができる。この格子整合率は、格子をとる方向によって若干異なる場合がある。一般に、平均格子整合率(各方向について算出された格子整合率の平均値)が小さくなるほど、その異方形状粉末は、良好なテンプレートとして機能することを示す。高配向度の熱電変換材料を製造するためには、異方形状粉末の平均格子整合率は、20%以下が好ましく、さらに好ましくは10%以下である。
【0069】
第3に、異方形状粉末は、必ずしも化3の式に示す複合酸化物と同一組成を有するものである必要はなく、後述する第2粉末と反応して、目的とする組成を有する複合酸化物を生成するもの(以下、これを「複合酸化物の前駆体」という。)であっても良い。従って、異方形状粉末は、作製しようとする複合酸化物に含まれる陽イオン元素の内のいずれか1種以上の元素を含む化合物あるいは固溶体の中から選ばれることになる。
【0070】
以上のような条件を満たす異方形状粉末であれば、いずれも本発明に係る熱電変換材料を製造するためのテンプレート又は反応性テンプレートとして機能する。このような条件を満たす材料としては、具体的には、(1)化1の式で表される複合酸化物、(2)化3の式で表される複合酸化物であって、作製しようとする熱電変換材料と同一又は異なる組成を有するもの、(3)AO2層と同様な構造であって、Aサイト元素を含む酸化物又は水酸化物、(4)CO層と同様な構造であって、Cサイト元素を含む酸化物又は水酸化物等が好適である。これらは、いずれも、結晶面Xを発達面とする板状粉末を比較的容易に合成することができる。
【0071】
例えば、(ZnO)mIn2O3(m=1〜19)からなり、かつab面を発達面とする板状粉末は、当然にAO2層又はCO層と格子整合性を有しているので、本発明に係る熱電変換材料を製造するための反応性テンプレートとして機能する。このような板状粉末は、その構成元素を含む酸化物等をフラックスと共に加熱するフラックス法、その構成元素を含む酸化物等をアルカリ水溶液と共にオートクレーブ中で加熱する水熱合成法、溶液からの沈殿法等を用いて合成することができる。また、この時、合成条件を適宜制御すれば、板状粉末の形状制御も比較的容易に行うことができる。
【0072】
化1の式で表される複合酸化物であって、(ZnO)mIn2O3以外の組成を有する板状粉末、又は化3の式で表される複合酸化物であって、ab面を発達面とする板状粉末もまた、これらと同様の方法により製造することができる。Aサイト元素を含む酸化物又は水酸化物の板状粉末としては、例えば、水熱法で作製した六方晶In2O3あるいはIn(OH)3の板状粉末等が挙げられる。また、Cサイト元素を含む酸化物又は水酸化物の板状粉末としては、例えば、ZnOの板状粉末、塩基性硫酸亜鉛の板状粉末等が挙げられる。
【0073】
次に、本発明の一実施の形態に係る熱電変換材料の製造方法について説明する。本実施の形態に係る製造方法は、原料調製工程と、成形工程と、焼結工程とを備えている。
【0074】
初めに、原料調製工程について説明する。原料調製工程は、化2の式又は化3の式で表される複合酸化物を生成可能な組成を有し、かつ複合酸化物を構成するAサイト元素、Bサイト元素、Cサイト元素、第1置換元素及び第2置換元素から選ばれる少なくとも1種類の元素を含む、少なくとも1種類の粉末を含む原料を調製する工程である。
【0075】
例えば、無配向焼結体を製造する場合、出発原料として、作製しようとする複合酸化物と同一組成及び同一結晶構造を有する1種類の微粉末を用いても良い。あるいは、化1の式で表される複合酸化物の微粉末に対し、所定の陽イオン元素を含む単純化合物からなる1種又は2種以上の微粉末を化学量論組成となるように配合し、これを出発原料として用いても良い。
【0076】
また、相対的に少数の陽イオン元素を含む単純化合物のみを化学量論組成となるように秤量し、これを出発原料として用いても良い。あるいは、化学量論組成に配合された単純化合物の仮焼及び粉砕を所定回数繰り返し、これを出発原料として用いても良い。
【0077】
この場合、複合酸化物以外の原料の形態は、特に限定されるものではなく、焼成によって陽イオン元素を含む酸化物を形成可能なものであれば良い。具体的には、水酸化物、酸化物、塩類(例えば、炭酸塩、硝酸塩、シュウ酸塩、酢酸塩など)、アルコキシド等を用いることができる。また、各微粉末の平均粒径は、10μm以下が好ましく、さらに好ましくは、5μm以下である。各微粉末の平均粒径は、成形性や取扱性が低下しない限りにおいて、小さい程良い。
【0078】
一方、配向焼結体を作製する場合には、出発原料として、少なくとも化3の式に示す複合酸化物のAO2層又はCO層と格子整合性を有する「結晶面X」を備えた粉末(以下、これを「第1粉末」という。)を用いる。第1粉末は、その発達面が結晶面Xからなる異方形状粉末が好ましく、特に、その発達面が結晶面Xからなる板状粉末が好ましい。また、第1粉末は、作製しようとする複合酸化物と同一組成を有するものであっても良く、あるいは、複合酸化物の前駆体であっても良い。さらに、第1粉末は、1種類の化合物からなるものであっても良く、あるいは、2種以上の化合物の混合物であっても良い。
【0079】
また、第1粉末が複合酸化物の前駆体である場合、第1粉末と、第2粉末とを所定の比率で混合する。「第2粉末」とは、前駆体である第1粉末と反応して化3の式に示す複合酸化物となる化合物をいう。第2粉末の組成及び配合比率は、合成しようとする熱電変換材料の組成、及び、反応性テンプレートとして使用する第1粉末の組成に応じて定まる。また、第2粉末の形態は、特に限定されるものではなく、焼成によって陽イオン元素を含む酸化物を形成可能なものであれば良い。具体的には、第2粉末として、水酸化物、酸化物、塩類(例えば、炭酸塩、硝酸塩、シュウ酸塩、酢酸塩など)、アルコキシド等を用いることができる。
【0080】
例えば、AlドープInGaZnO4配向焼結体を作製する場合において、第1粉末として(ZnO)5In2O3板状粉末を用いるときには、第2粉末として、ZnO粉末、Al2O3粉末、In2O3粉末及びGa2O3粉末を用い、これらを化学量論組成となるように配合すれば良い。他の組成を有する複合酸化物を作製する場合も同様である。
【0081】
また、所定の比率で配合された第1粉末及び第2粉末に対して、さらに、作製しようとする複合酸化物と同一組成を有する複合酸化物からなる微粉(以下、これを「第3粉末」という。)を添加しても良い。原料中に第3粉末を添加すると、焼結体密度が向上するという効果がある。
【0082】
第2粉末及び第3粉末が固体である場合、又は固体状態のまま混合を行う場合、第2粉末及び第3粉末の平均粒径は、それぞれ、10μm以下が好ましい。平均粒径が10μmを超えると、反応が不均一となったり、焼結性が低下するので好ましくない。第2粉末及び第3粉末の平均粒径は、さらに好ましくは5μm以下である。第2粉末及び第3粉末の平均粒径は、成形性や取扱性が低下しない限りにおいて、小さいほど良い。
【0083】
また、第2粉末及び/又は第3粉末の配合比率が過大になると、必然的に原料全体に占める第1粉末の配合比率が小さくなり、ab面の配向度が低下するおそれがある。従って、第2粉末及び/又は第3粉末の配合比率は、要求されるab面の配向度及び焼結体密度が得られるように、最適な値を選択するのが好ましい。原料全体に占める第1粉末の割合は、具体的には、0.1重量%以上80重量%以下が好ましく、さらに好ましくは、1重量%以上40重量%以下である。
【0084】
なお、出発原料として2種以上の原料を用いる場合、原料調製工程において、これらを混合する。この場合、その混合は、乾式で行っても良く、あるいは、水、アルコール等の適当な分散媒を加えて湿式で行っても良い。さらに、この時、必要に応じてバインダ及び/又は可塑剤を加えても良い。
【0085】
次に、成形工程について説明する。成形工程は、原料調製工程で得られた原料を所定の形状に成形する工程である。無配向焼結体を作製する場合、原料の成形方法は、特に限定されるものではなく、種々の方法を用いて、所定の形状に成形すれば良い。
【0086】
一方、配向焼結体を作製する場合には、結晶面Xが一方向に配向するように原料を成形する。結晶面Xを面配向させる成形方法としては、具体的には、ドクターブレード法、プレス成形法、圧延法、押出法(シート状)等が好適である。一方、結晶面Xを軸配向させる方法としては、具体的には、押出成形法(非シート状)が好適である。
【0087】
また、結晶面Xを成形体中に面配向させる場合において、結晶面Xの配向度を高めるためには、ドクターブレード(テープキャスト)法、押出法、プレス成形等を用いて成形体を作製し、次いで得られた成形体を圧延(ロールプレス)するのが好ましい。あるいは、シート状の成形体の積層圧着及び圧延を複数回繰り返しても良い。結晶面Xの配向度の高い配向焼結体を得るためには、成形体中の結晶面Xの配向度は、高い程良い。
【0088】
さらに、成形方法として磁場中成形法を用いても良い。結晶面Xを発達面とする異方形状粉末を含む原料に対して強力な磁場を作用させながら成形する場合において、磁場の組み合わせを最適化すると、成形体中に結晶面Xを高い配向度で配向させることができる。
【0089】
次に、焼結工程について説明する。焼結工程は、成形工程で得られた成形体を所定の条件下で焼成する工程である。所定の組成を有する原料を含む成形体を所定の温度に加熱すると、原料組成に応じて、複合酸化物が成長及び/又は生成すると同時に、複合酸化物の焼結も進行する。
【0090】
複合酸化物の場合、焼結は、通常、600℃以上1700℃以下で行われる。最適な加熱温度は、反応及び焼結が効率よく進行し、かつ異相の生成や、成分元素の揮発が生じないように、使用する原料及び作製しようとする複合酸化物の組成、焼結方法等に応じて選択する。例えば、(ZnO)5In2O3板状粉末、ZnO粉末、Al2O3粉末、In2O3粉末及びGa2O3粉末を用いてAlドープInGaZnO4配向焼結体を作製する場合には、焼結温度は、1000℃以上1600℃以下が好ましい。また、加熱時間は、所定の焼結体密度が得られるように、焼結温度に応じて最適な値を選択すればよい。
【0091】
加熱方法としては、室温から所定温度に徐々に昇温する方法や、あらかじめ所定温度に加熱した炉内に配向成形体を導入し、一気に加熱する方法などがあり、作製しようとする複合酸化物の組成などに応じて、最適な方法を選択すればよい。また、焼結は、常圧で行っても良く、あるいは、ホットプレス、ホットフォージング、HIP等、加圧下で行っても良い。
【0092】
また、焼結工程においては、Cサイト元素から選ばれる少なくとも1種類の元素を含む酸化物の蒸気が外部から供給される雰囲気下において、成形体を焼成するのが好ましい。Cサイト元素の酸化物は、蒸気圧の高いものが多いために、焼成中にCサイト元素が酸化物の蒸気となって成形体から揮発する場合がある。焼成中にCサイト元素が揮発すると、特に焼結体の表面近傍の組成が目的とする組成からずれ、熱電特性の低下や製品歩留まりの低下の原因となる。
【0093】
これに対し、Cサイト元素を含む酸化物の蒸気が外部から供給される雰囲気下で焼成すると、Cサイト元素の揮発が抑制され、熱電特性の低下や製品歩留まりの低下を抑制することができる。この方法は、特に、Cサイト元素としてZnを含む場合に有効な方法となる。
【0094】
このような雰囲気を形成する方法には、種々の方法がある。第1の方法は、Cサイト元素の酸化物を含む粉末(詰め粉)中に成形体を埋設し、この状態で焼成する方法である。この場合、詰め粉は、Cサイト元素の酸化物のみからなるものであっても良く、あるいは、Cサイト元素の酸化物と他の粉末(例えば、Aサイト元素の酸化物、Bサイト元素の酸化物など)との混合物であっても良い。詰め粉中に含まれるCサイト元素の酸化物の割合は、成形体の形状、組成等に応じて、最適なものを選択する。
【0095】
第2の方法は、Cサイト元素の酸化物を含むバルク材料を成形体の周囲に配置する方法である。この場合、バルク材料は、Cサイト元素の酸化物のみからなるものであっても良く、あるいは、Cサイト元素の酸化物と他の材料(例えば、Aサイト元素の酸化物、Bサイト元素の酸化物など)との複合体であっても良い。また、「バルク材料」は、Cサイト元素の酸化物を含む粉末の成形体、単結晶、あるいは焼結体のいずれであっても良い。さらに、成形体の周囲に配置するバルク材料の大きさ、個数、位置等は、成形体の形状、組成等に応じて、最適なものを選択する。
【0096】
第3の方法は、Cサイト元素の酸化物の蒸気を含むガスを成形体の周囲に供給する方法である。具体的には、成形体を焼結するための焼結手段とは別個の加熱手段を用いてCサイト元素の酸化物の蒸気を発生させ、この蒸気を単独で又は適当な搬送ガスを用いて成形体の周囲に搬送すればよい。
【0097】
なお、バインダを含む成形体の場合、焼結工程の前に、脱脂を主目的とする熱処理を行っても良い。この場合、脱脂の温度は、特に限定されるものではなく、少なくともバインダを熱分解させるに十分な温度であれば良い。また、脱脂は、酸素が存在する雰囲気下で行うのが好ましい。
【0098】
また、配向焼結体を作製する場合において、成形体の脱脂を行うと、成形体中に配向させた結晶面Xの配向度が低下したり、あるいは、反応が進行して成形体が膨張する場合がある。このような場合には、脱脂を行った後、焼結を行う前に、成形体に対して、さらに静水圧(CIP)処理を行うのが好ましい。脱脂後の成形体に対して、さらに静水圧処理を行うと、脱脂に伴う配向度の低下、あるいは、成形体の密度低下に起因する焼結体密度の低下を抑制できるという利点がある。
【0099】
次に、本実施の形態に係る熱電変換材料の製造方法の作用について説明する。出発原料として複合酸化物のみを含む成形体を所定の温度で焼成すると、出発原料の焼結が進行し、所定の密度を有する焼結体が得られる。また、出発原料として複合酸化物の前駆体又は単純化合物を含む成形体を所定の温度で焼成すると、複合酸化物の生成及び成長と同時に、焼結が進行する。
【0100】
また、第1粉末、並びに、必要に応じて添加された第2粉末及び/又は第3粉末を含む原料を調製し、これを第1粉末に対して剪断応力が作用するような成形方法を用いて成形すると、結晶面Xが成形体中に配向する。このような配向成形体を所定の温度で加熱すると、第1粉末、第2粉末及び第3粉末が反応し、複合酸化物が成長及び/又は生成する。
【0101】
この時、結晶面Xと複合酸化物のAO2層又はCO層との間には格子整合性があるので、結晶面Xが、複合酸化物のab面として承継される。その結果、焼結体中には、ab面が一方向に配向した状態で、複合酸化物の板状結晶が成長し、各結晶粒のab面が高い配向度で配向した熱電変換材料が得られる。
【0102】
また、このような工程を経て得られた焼結体中の複合酸化物のab面の配向度(特に、高配向度領域におけるab面の配向度)は、成形体に含まれる第1粉末の結晶面Xの配向度に強く依存する。そのため、異方形状を有する第1粉末に強い剪断力を作用させることによって、結晶面Xの配向度が所定の値以上である成形体を作製し、これを焼結すれば、各結晶粒のab面が極めて高い配向度で配向した熱電変換材料が得られる。
【0103】
本実施の形態に係る製造方法は、無配向焼結体を作製する場合に限らず、配向焼結体を作製する場合であっても、通常のセラミックスプロセスをそのまま用いることができるので、低コストである。また、この方法により得られる熱電変換材料は、多結晶体であるので、単結晶より破壊靱性が大きく、また、粒界や空孔でフォノンが散乱されるので、単結晶より熱伝導率が低くなる。
【0104】
また、テンプレート又は反応性テンプレートを用いて配向焼結体を作製する場合には、ab面の配向度が高いだけでなく、配向度及び組成が均一であり、しかも断面積の大きな熱電変換材料が得られる。さらに、この方法により得られる熱電変換材料は、電気伝導度の高いab面が高い配向度で配向しているため、同一組成を有する無配向焼結体より高い性能指数を示す。そのため、これを熱電変換材料として用いれば、耐久性及び熱電特性に優れた熱電変換素子を作製することができる。
【0105】
【実施例】
(実施例1)
化1の式で表される複合酸化物の一種であるInGaO3(ZnO)に対し、Sn又はAlを置換ドープする際に必要な形成エネルギ(△H)を第一原理計算によって求めた。図2に、その結果を示す。図2より、Snは、Inサイトにドープされやすく、Alは、Znサイトにドープされやすいことがわかる。Alは、伝導面でないZnサイトに安定にキャリアドープできるため、高い電気伝導度σが実現できることがわかった。
【0106】
(実施例2)
以下の手順に従い、In(Ga0.94Zr0.06)ZnO4組成を有する無配向焼結体を作製した。まず、In2O3粉末(平均粒径1μm)、Ga2O3粉末(平均粒径1μm)、ZnO粉末(平均粒径0.5μm)及びZrO2粉末(平均粒径1μm)を化学量論組成となるように秤量し、これらをボールミルで混合した。
【0107】
次に、この原料粉を大気中において、1150℃で12時間仮焼した。次いで、この仮焼粉を粉砕した後、これを金型プレス(圧力100MPa)により、φ10mm×5mmの大きさに成形した。さらに、この成形体をZnO粉末中に埋設し、大気中において、1550℃で2時間焼成した。
【0108】
(実施例3)
出発原料として、ZrO2粉末に代えてAl2O3粉末(平均粒径1μm)を用い、InGa(Zn0.96Al0.04)O4組成(m=1、Al=4at%)となるように配合した以外は実施例2と同一の手順に従い、InGa(Zn0.96Al0.04)O4組成を有する無配向焼結体を作製した。
【0109】
(比較例1)
出発原料として、In2O3粉末、Ga2O3粉末、及びZnO粉末を用い、InGaZnO4組成(m=1、pure)となるように配合した以外は実施例2と同一の手順に従い、InGaZnO4組成を有する無配向焼結体を作製した。
【0110】
(実施例4)
以下の手順に従い、InGa(Zn0.96Al0.04)O4+δ組成を有する配向焼結体を作製した。まず、フラックス法を用いて合成した(ZnO)5In2O3板状粉末(平均粒径10μm、アスペクト比10)、並びに実施例3で用いたZnO粉末、Al2O3粉末及びGa2O3粉末を、モル比で(ZnO)5In2O3:ZnO:Al2O3:In2O3:Ga2O3=1:4.6:0.2:4:5となるように、すなわち反応後にInGa(Zn0.96Al0.04)O4+δ(−1<δ<+1)が合成される比となるように秤量し、これらを湿式ボールミル混合した。次いで、このスラリーにバインダと可塑剤を加え、さらにボールミル混合した。
【0111】
次に、得られたスラリーをドクターブレード法により、厚さ約0.2mmのテープ状に成形した。次いで、得られたシート状成形体を、80℃、10MPaで積層圧着し、厚さ約10mmの板状成形体を作製した。この板状成形体を、400℃で脱脂した後、大気中において、1400℃×10時間の加圧焼結(圧力:100MPa)により、焼結体を作製した。
【0112】
(比較例2)
以下の手順に従い、InGaZnO4組成を有する配向焼結体を作製した。まず、実施例4で用いた(ZnO)5In2O3板状粉末、In2O3粉末及びGa2O3粉末を、モル比で(ZnO)5In2O3:In2O3:Ga2O3=2:3:5となるように、すなわち反応後にInGaZnO4が合成される比となるように秤量し、これらを湿式ボールミル混合した。次いで、このスラリにバインダと可塑剤を加え、さらにボールミル混合した。
【0113】
次に、得られたスラリーをドクターブレード法により、厚さ約0.2mmのテープ状に成形した。次いで、得られたシート状成形体を、80℃、10MPaで積層圧着し、厚さ約5mmの板状成形体を作製した。この板状成形体を、400℃で脱脂した後、ZnO粉末中に埋設し、大気中において、1550℃×2時間の常圧焼結により、焼結体を作製した。
【0114】
実施例2〜4及び比較例1、2で得られた焼結体について、その表面を研削除去した後、元のシート面(テープキャスト面)又はプレス成形面に平行な面にX線を照射することによりX線回折を行い、ロットゲーリング法による{00l}面(ab面)の平均配向度を算出した。その結果、実施例2、3及び比較例1で得られた無配向焼結体の平均配向度は、それぞれ、7%、16%及び10%であった。これに対し、実施例4及び比較例2で得られた配向焼結体の平均配向度は、それぞれ、93%及び90%に達した。
【0115】
次に、実施例2〜4及び比較例1、2で得られた焼結体から、元のシート面又はプレス成形面に平行な方向を長手方向とする矩形試料を加工し、250℃〜800℃における電気伝導度σ及びゼーベック係数Sを測定した。さらに、得られた電気伝導度σ及びゼーベック係数Sから出力因子PF(=S2σ)を算出した。図3(a)、図3(b)及び図3(c)に、それぞれ、ゼーベック係数S、電気伝導度σ及び出力因子PFの温度依存性を示す。
【0116】
無配向焼結体の場合、ゼーベック係数Zの絶対値は、置換元素をドープしないInGaZnO4(比較例1)が最も高く、次いで、ZrをドープしたInGa0.94Zr0.06ZnO4(実施例2)、及びAlをドープしたInGaZn0.96Al0.04O4(実施例3)の順に低下した。一方、電気伝導度σは、InGaZnO4が最も低くなり、InGa0.94Zr0.06ZnO4及びInGaZn0.96Al0.04O4の電気伝導度σは、それぞれ、InGaZnO4の約2倍及び約6倍に向上した。
【0117】
その結果、出力因子PFは、InGaZn0.96Al0.04O4無配向焼結体が最も高く、次いでInGa0.94Zr0.06ZnO4無配向焼結体、及びInGaZnO4無配向焼結体の順に低下した。特に、InGaZn0.96Al0.04O4無配向焼結体の800℃における出力因子は、約350×10−6W/K2mに達した。Zrをドープする場合に比べて、Alをドープすることによって電気伝導度σが著しく向上するのは、AlがZnサイトに入り、伝導面におけるキャリアの散乱が抑制されたためと考えられる。
【0118】
InGaZnO4配向焼結体(比較例2)の場合、ゼーベック係数Zの絶対値は、同一組成を有する無配向焼結体(比較例1)とほぼ同等であった。一方、配向焼結体の電気伝導度σは、無配向焼結体に比べて約20S/cm増加した。その結果、配向焼結体の出力因子PFは、無配向焼結体の約1.2〜1.5倍に向上した。また、また、InGaZnO4配向焼結体の800℃における出力因子は、約290×10−6W/K2mであった。
【0119】
これに対し、InGaZn0.96Al0.04O4配向焼結体(実施例4)の場合、ゼーベック係数Zの絶対値は、同一組成を有する無配向焼結体(実施例3)とほぼ同等であった。一方、配向焼結体の電気伝導度σは、無配向焼結体に比べて約200S/cm増加した。その結果、配向焼結体の出力因子PFは、無配向焼結体の約1.3〜1.5倍に向上した。また、InGaZn0.96Al0.04O4配向焼結体の800℃における出力因子は、約500×10−6W/K2m達した。
【0120】
(実施例5)
出発原料をInGaO3{(Zn0.99Al0.01)O}3組成(m=3、Al=1at%)となるように配合した以外は、実施例3と同一の手順に従い、InGaO3{(Zn0.99Al0.01)O}3組成を有する無配向焼結体を作製した。
【0121】
(実施例6)
出発原料として、Al2O3に代えて、SnO2粉末(平均粒径1μm)を用い、(In0.94Sn0.06)GaZnO4組成(m=1、Sn=6at%)となるように配合した以外は、実施例5と同一の手順に従い、(In0.94Sn0.06)GaZnO4組成を有する無配向焼結体を作製した。
【0122】
(実施例7)
出発原料を(In0.94Sn0.06)GaO3(ZnO)3組成(m=3、Sn=6at%)となるように配合した以外は、実施例6と同一の手順に従い、(In0.94Sn0.06)GaO3(ZnO)3組成を有する無配向焼結体を作製した。
【0123】
(比較例3)
出発原料をInGaO3(ZnO)3組成(m=3、pure)となるように配合した以外は比較例1と同一の手順に従い、InGaO3(ZnO)3組成を有する無配向焼結体を作製した。
【0124】
実施例5〜7及び比較例3で得られた焼結体から、実施例2〜4と同一の手順に従い、矩形状試料を切り出し、出力因子PFを算出した。また、得られた焼結体について、レーザーフラッシュ法を用いて、室温〜800℃の熱伝導度κを測定した。図4(a)及び図4(b)に、それぞれ、出力因子PF及び熱伝導度κの温度依存性を示す。また、図4(a)及び図4(b)には、実施例3(m=1、Al=4at%)及び比較例1(m=1、pure)の結果も併せて示した。
【0125】
CO層の層数mが1である場合、Alドープ無配向焼結体の出力因子PFは、低温域ではSnドープ無配向焼結体とほぼ同等であるが、高温域ではSnドープ無配向焼結体より高い値を示した。一方、CO層の層数mが3である場合、Alドープ無配向焼結体の出力因子PFは、すべての温度域においてSnドープ無配向焼結体より高い値を示した。さらに、CO層の層数mが3である無配向焼結体の熱伝導度κは、CO層の層数mが1である無配向焼結体より低い値を示した。
【0126】
その結果、InGaO3{(Zn0.99Al0.01)O}3無配向焼結体において最大の熱電特性が得られ、1000Kにおける出力因子PFは、390×10−6W/K2mに、また、無次元性能指数ZTは、0.16に達した。
【0127】
以上、本発明の実施の形態について詳細に説明したが、本発明は上記実施の形態に何ら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の改変が可能である。
【0128】
例えば、上記実施例において、焼結方法として、常圧焼結法又はホットプレス法が用いられているが、これに代えて、常圧焼結+HIP処理等、他の焼結法を用いても良い。また、上記実施例において、成形体中の結晶面Xの配向度を高くするためにドクターブレード法が用いられているが、結晶面Xの配向度を高めることができる限り、他の成形方法を用いても良い。
【0129】
また、例えば、上記実施例では、ドクターブレード法によって板状粉末を面配向させているが、押出成形法を用いて、板状粉末を軸配向させても良い。板状粉末をこのように軸配向させた場合であっても、無配向焼結体より高い性能指数を有する熱電変換材料が得られる。また、押出成形法を用いると、ある程度の厚さを有する焼結体を低コストで作製できるという利点がある。
【0130】
また、複合酸化物の前駆体からなる第1粉末に対して第2粉末を添加し、複合酸化物を生成させる場合において、第2粉末として、第1粉末と同一組成を有する前駆体からなる微粉末を用いても良い。この場合、目的とする熱電変換材料が得られるように、他の粉末の組成及び配合比率に応じて、前駆体微粉末を所定の比率で配合すれば良い。
【0131】
また、第1粉末として、化3の式に示す複合酸化物からなる異方形状粉末を用いる場合には、第1粉末のみを単独で用いても良い。あるいは、第1粉末に対して、さらに、作製しようとする複合酸化物を生成可能な組成比を有する第2粉末、及び/又は、作製しようとする複合酸化物と同一組成を有する微粒状の第3粉末を所定の比率で配合しても良い。
【0132】
【発明の効果】
本発明に係る熱電変換材料は、YbFe2O4類縁型層状構造を有し、一般式ABOy(CO)mで表される複合酸化物を構成する陽イオン元素のいずれか1以上を高原子価元素で置換しているので、高い電気伝導度が得られ、性能指数が向上するという効果がある。特に、Cサイト元素を所定の第2置換元素で置換した場合には、キャリア移動度を低下させることなくキャリア濃度を増加させることができ、高い電気伝導度を示すという効果がある。
【0133】
また、本発明に係る熱電変換材料は、このような複合酸化物のab面を一方向に配向させているので、ab面内方向におけるキャリア移動度とキャリアの有効質量が増加し、高い熱電特性が実現されるという効果がある。さらに、本発明に係る熱電変換材料は、構成元素の存在量が高いので低コストであり、毒性が少なく、しかも高温でも安定に作動するという効果がある。
【0134】
また、本発明に係る熱電変換材料の製造方法は、このような優れた熱電特性を示す複合酸化物からなる熱電変換材料を低コストで作製できるという効果がある。また、所定の条件を満たす異方形状粉末を出発原料として用いた場合には、この異方形状粉末がテンプレート又は反応性テンプレートとして機能し、ab面が高い配向度で配向した配向焼結体を低コストで製造できるという効果がある。
【0135】
さらに、Cサイト元素を含む酸化物の蒸気が外部から供給される雰囲気下で焼結を行った場合には、成形体からのCサイト元素の揮発が抑制され、優れた熱電特性を示す熱電変換材料を低コストで製造できるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】InGaZnO4の結晶構造を示す模式図である。
【図2】第一原理計算によって求めた、InGaZnO4にSn又はAlを置換ドープする際に必要な形成エネルギーを示す図である。
【図3】図3(a)、図3(b)及び図3(c)は、それぞれ、実施例2〜4及び比較例1、2で得られた複合酸化物のゼーベック係数S、電気伝導度σ及び出力因子PFと温度との関係を示す図である。
【図4】図4(a)及び図4(b)は、それぞれ、実施例3、5〜7及び比較例1、3で得られた複合酸化物の出力因子PF及び熱伝導度κと温度との関係を示す図である。
【発明の属する技術分野】
本発明は、熱電変換材料及びその製造方法に関し、さらに詳しくは、太陽熱発電器、海水温度差熱電発電器、化石燃料熱電発電器、工場排熱や自動車排熱の回生発電器等の各種の熱電発電器、光検出素子、レーザーダイオード、電界効果トランジスタ、光電子増倍管、分光光度計のセル、クロマトグラフィーのカラム等の精密温度制御装置、恒温装置、冷暖房装置、冷蔵庫、時計用電源等に用いられる熱電変換素子を構成するn型熱電変換材料として好適な熱電変換材料及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
熱電変換とは、ゼーベック効果やペルチェ効果を利用して、電気エネルギーを冷却や加熱のための熱エネルギーに、また逆に熱エネルギーを電気エネルギーに直接変換することをいう。熱電変換は、(1)エネルギー変換の際に余分な老廃物を排出しない、(2)排熱の有効利用が可能である、(3)材料が劣化するまで継続的に発電を行うことができる、(4)モータやタービンのような可動装置が不要であり、メンテナンスの必要がない、等の特徴を有していることから、エネルギーの高効率利用技術として注目されている。
【0003】
熱エネルギと電気エネルギとを相互に変換できる材料、すなわち、熱電変換材料の特性を評価する指標としては、一般に、性能指数Z(=S2σ/κ、但し、S:ゼーベック係数、σ:電気伝導度、κ:熱伝導度)、又は、性能指数Zと、その値を示す絶対温度Tの積として表される無次元性能指数ZTが用いられる。ゼーベック係数は、1Kの温度差によって生じる起電力の大きさを表す。熱電変換材料は、それぞれ固有のゼーベック係数を持っており、ゼーベック係数が正であるもの(p型)と、負であるもの(n型)に大別される。
【0004】
また、熱電変換材料は、通常、p型の熱電変換材料とn型の熱電変換材料とを接合した状態で使用される。このような接合対は、一般に、熱電変換素子と呼ばれている。熱電変換素子の性能指数は、p型熱電変換材料の性能指数Zp、n型熱電変換材料の性能指数Zn、並びに、p型及びn型熱電変換材料の形状に依存し、また、形状が最適化されている場合には、Zp及び/又はZnが大きくなるほど、熱電変換素子の性能指数が大きくなることが知られている。従って、性能指数の高い熱電変換素子を得るためには、性能指数Zp、Znの高い熱電変換材料を用いることが重要である。
【0005】
このような熱電変換材料としては、例えば、Bi−Te系、Pb−Te系、Si−Ge系、酸化物セラミックス系等の種々の材料が知られている。これらの中で、Bi−Te系及びPb−Te系の化合物半導体は、それぞれ、室温近傍及び300〜500℃の中温域において、優れた熱電特性(ZT〜0.8)を示す。しかしながら、これらの化合物半導体は、高温域での使用は困難である。また、材料中には高価な稀少元素(例えば、Te、Sb、Seなど)や、毒性の強い環境負荷物質(例えば、Te、Sb、Se、Pbなど)を含むという問題がある。
【0006】
一方、Si−Ge系の化合物半導体は、1000℃付近の高温域において優れた熱電特性を示し、また、材料中に環境負荷物質を含まないという特徴がある。しかしながら、Si−Ge系の化合物半導体は、高温大気中において長時間使用するためには、材料表面を保護する必要があり、熱的耐久性が低いという問題がある。
【0007】
これに対し、酸化物セラミックス系の熱電変換材料は、材料中に稀少元素や環境負荷物質を必ずしも含まない。また、高温大気中において長時間使用しても熱電特性の劣化が少なく、熱的耐久性に優れるという特徴がある。そのため、酸化物セラミックス系の熱電変換材料は、化合物半導体に代わる材料として注目されており、熱電特性の高い新材料やその製造方法について、従来から種々の提案がなされている。
【0008】
例えば、特許文献1には、Zn−In−O系酸化物であって、ZnとInとの組成比率がZnO/In2O3モル比で5〜19である熱電変換材料が開示されている。同文献には、Inサイトの一部をIn3+イオンより大きなイオン半径を持つ3価陽イオンにより置換するか、あるいはZnサイトの一部をZn2+イオンより小さなイオン半径を持つ2価陽イオンにより置換することによって、結晶構造の変化が起こり、熱電性能が向上する点が記載されている。
【0009】
また、特許文献2には、YbFe2O4類縁型層状構造を有し、一般式ABOy(CO)m(2<y<3、1≦m≦19)で表される化合物に酸素欠陥を導入した熱電変換材料、及びYbFe2O4類縁型層状構造を有し、一般式ABOy(CO)m(2<y<3、1≦m≦19)で表される化合物のAサイト又はBサイトの少なくとも一方を、IVb族元素で置換した熱電変換材料が開示されている。同文献には、酸素欠陥及びIVb族元素を導入することによって、化合物にキャリアが導入され、電気抵抗率が低下する点が記載されている。
【0010】
さらに、M.Oritaらは、透明InGaZnO4の電気伝導機構の検討を行っている(非特許文献1参照)。同文献には、InO2層とGaZnO2層が所定の周期で積層された層状構造を有するInGaZnO4において、電気伝導は主にInの5s軌道が担っているいる点、すなわちInO2層が伝導パスとして機能する点が記載されている。さらに、同文献には、GaZnO2層にドーパントイオンを導入することによって、InO2層内を移動する電子の散乱が抑制される可能性がある点が示唆されている。
【0011】
【特許文献1】
特開2000−012915号公報(段落番号「0039」〜「0045」)
【特許文献2】
特開2001−085751号公報(段落番号「0021」〜「0034」)
【非特許文献1】
M.Orita et al., Phys. Rev. B, 61(3), pp.1181−1186
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
In2O3(ZnO)mやInGaO3(ZnO)mに代表されるYbFe2O4類縁型層状構造を有する複合酸化物は、相対的に低い電気伝導度σと、相対的に大きな負のゼーベック係数Sを有している。そのため、この複合酸化物に電子キャリアをドープすれば、電気伝導度σが高くなり、高い性能指数Zを示すn型熱電変換材料として機能する。
【0013】
しかしながら、電子キャリアとして酸素欠陥を導入する方法は、還元雰囲気下において長時間の熱処理を行う必要があるために、生産性が低いという問題がある。また、導入される酸素欠陥の量を厳密に制御するのが困難であり、熱電特性の再現性に乏しいという問題がある。さらに、酸素欠陥が導入された複合酸化物を高温大気中において使用すると、酸素欠陥が徐々に消滅し、熱電特性が不安定になるという問題がある。
【0014】
一方、非特許文献1には、GaZnO2層にドーパントイオンを導入することによって、InO2層内を移動する電子の散乱が抑制される点が示唆されている。しかしながら、GaZnO2層にドーパントイオンが導入された熱電変換材料が実際に作製された例は、従来にはない。
【0015】
本発明が解決しようとする課題は、環境負荷物質を含まず、高温大気中においても高い熱電特性を安定して示す熱電変換材料を提供することにある。また、本発明が解決しようとする他の課題は、このような優れた熱電特性を有する熱電変換材料を再現性良く、かつ高い生産性で製造することが可能な熱電変換材料の製造方法を提供することにある。
【0016】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために本発明に係る熱電変換材料の1番目は、YbFe2O4類縁型層状構造を有し、
一般式:ABOy(CO)m
(但し、2<y<4; 1≦m≦19; Aサイト元素は、IIIb族元素、並びにSc、Y及びランタノイド元素から選ばれる少なくとも1種類の元素; Bサイト元素は、IIIb族元素及びFeから選ばれる少なくとも1種類の元素; Cサイト元素は、Zn及びIIa族元素、並びに2価の3d遷移金属元素、4d遷移金属元素及び5d遷移金属元素から選ばれる少なくとも1種類の元素。)
で表され、さらに前記Aサイト元素及び/若しくは前記Bサイト元素の0.001at%以上20at%以下が、IVa族元素から選ばれる少なくとも1種類の第1置換元素により置換され、並びに/又は前記Cサイト元素の0.001at%以上20at%以下が、IIIa族元素及びIIIb族元素から選ばれる少なくとも1種類の第2置換元素により置換された複合酸化物からなることを要旨とする。
【0017】
また、本発明に係る熱電変換材料の2番目は、YbFe2O4類縁型層状構造を有し、
一般式:ABOy(CO)m
(但し、2<y<4; 1≦m≦19; Aサイト元素は、IIIb族元素、並びにSc、Y及びランタノイド元素から選ばれる少なくとも1種類の元素; Bサイト元素は、IIIb族元素及びFeから選ばれる少なくとも1種類の元素; Cサイト元素は、Zn及びIIa族元素、並びに2価の3d遷移金属元素、4d遷移金属元素及び5d遷移金属元素から選ばれる少なくとも1種類の元素。)
で表され、さらに前記Aサイト元素及び/若しくは前記Bサイト元素の0.001at%以上20at%以下が、IVa族元素及びIVb族元素から選ばれる少なくとも1種類の第1置換元素により置換され、並びに/又は前記Cサイト元素の0.001at%以上20at%以下が、IIIa族元素及びIIIb族元素から選ばれる少なくとも1種類の第2置換元素により置換された複合酸化物の多結晶体からなり、該多結晶体を構成する各結晶粒のab面が一方向に配向していることを要旨とする。
【0018】
複合酸化物を構成するAサイト元素若しくはBサイト元素を特定の4価陽イオンで置換するか、又はCサイト元素を特定の3価陽イオンで置換すると、電子キャリアが導入され、電気伝導度が増加する。特に、Cサイト元素を特定の3価陽イオンで置換した場合には、キャリア移動度を低下させることなく電子キャリアを導入できるので、高い電気伝導度が得られる。さらに、複合酸化物の多結晶体において、各結晶粒のab面を一方向に配向させると、ab面内方向での高いキャリア移動度と電子有効質量の増加をもたらし、高い熱電性能が実現される。
【0019】
また、本発明に係る熱電変換材料の製造方法は、請求項1又は2に記載の複合酸化物を生成可能な組成を有し、かつ前記複合酸化物を構成するAサイト元素、Bサイト元素、Cサイト元素、第1置換元素及び第2置換元素から選ばれる少なくとも1種類の元素を含む、少なくとも1種類の粉末を含む原料を調製する原料調製工程と、前記原料を成形する成形工程と、該成形工程で得られた成形体を焼成する焼結工程とを備えていることを要旨とする。
【0020】
この場合、前記焼結工程は、前記成形体を、前記Cサイト元素から選ばれる少なくとも1種類の元素を含む酸化物の蒸気が外部から供給される雰囲気下において焼成するものが好ましい。また、前記原料調製工程は、前記複合酸化物のAO2層又はCO層と格子整合性を有する結晶面Xを発達面とする異方形状粉末を含む原料を調製するものであり、前記成形工程は、前記結晶面Xが一方向に配向するように、前記原料を成形するものが好ましい。
【0021】
Aサイト元素、Bサイト元素、Cサイト元素、第1置換元素及び第2置換元素を所定の比率で含む原料を成形し、所定の条件下で焼成すると、所定の組成を有する複合酸化物からなる熱電変換材料が得られる。また、焼成時にCサイト元素を含む酸化物の蒸気を含む雰囲気下で焼成すると、成形体からのCサイト元素の揮発が抑制され、健全な焼結体が得られる。さらに、出発原料として所定の条件を満たす異方形状粉末を用い、これを成形体中に配向させると、ab面が配向した焼結体が得られる。
【0022】
【発明の実施の形態】
以下に本発明の実施の形態について詳細に説明する。本発明の第1の実施の形態に係る熱電変換材料は、YbFe2O4類縁型層状構造を有し、次の化1の式に示す一般式で表される複合酸化物を基本組成とする。
【0023】
【化1】
ABOy(CO)m
(但し、2<y<4; 1≦m≦19; Aサイト元素は、IIIb族元素、並びにSc、Y及びランタノイド元素から選ばれる少なくとも1種類の元素; Bサイト元素は、IIIb族元素及びFeから選ばれる少なくとも1種類の元素; Cサイト元素は、Zn及びIIa族元素、並びに2価の3d遷移金属元素、4d遷移金属元素及び5d遷移金属元素から選ばれる少なくとも1種類の元素。)
【0024】
YbFe2O4は、YbO2層とFe2O2層とがc軸方向に所定の周期で積層された層状構造を備えている。化1の式で表される複合酸化物は、YbFe2O4のYbO2層がAO2層に置き換わり、かつFe2O2層がBCmOm+1層に置き換わったものと考えられている。
【0025】
化1の式において、「y」は、複合酸化物に含まれる酸素量を示す。酸素量yは、理想的には「3」であるが、製造条件、使用条件等に応じて、複合酸化物中に若干の過剰酸素又は酸素欠損が導入される場合がある。酸素量yに幅があるのは、本発明に係る熱電変換材料には、このような不可避的に導入される過剰酸素又は酸素欠損が含まれていても良いことを示す。
【0026】
「m」は、BCmOm+1層に含まれるCO層の層数であり、CO層の層数mが大きくなるほど、BCmOm+1層が厚くなることを意味する。層数mは、1以上であれば良い。また、異なる積層周期が1種以上混在する場合もあり得る。但し、層数mが19を越えると、複合酸化物を安定して作製するのが困難となるので、層数mは、19以下が好ましい。一般に、層数mが大きくなるほど、電気伝導度σは小さくなるが、ゼーベック係数Sは大きくなり、かつ熱伝導度κは小さくなる傾向があるので、層数mは、複合酸化物の組成に応じて最適なものを選択する。
【0027】
Aサイト元素は、3価の金属元素の内、IIIb族元素(B、Al、Ga、In、Tl)、並びにSc、Y、及びランタノイド元素(57La〜71Lu)から選ばれる少なくとも1種類の元素からなる。また、Bサイト元素は、3価の金属元素の内、IIIb族元素、及びFeから選ばれる少なくとも1種類の元素からなる。さらに、Cサイト元素は、Zn、及びIIa族元素(Be、Mg、Ca、Sr、Ba、Ra)、並びに3d遷移金属元素(21Sc〜29Cu)、4d遷移金属元素(39Y〜47Ag)、及び5d遷移金属元素(72Hf〜79Au)の内の2価の価数を取るものから選ばれる少なくとも1種類の元素からなる。
【0028】
Aサイト元素、Bサイト元素及びCサイト元素は、これらの内のいずれかであれば良く、各元素の組み合わせ、比率等は、特に限定されるものではない。特に、Cサイト元素としてZnを含む複合酸化物は、優れた熱電特性を示す熱電変換材料となる。Cサイトに占めるZnの割合は、具体的には、10at%以上が好ましく、さらに好ましくは、20at%以上である。
【0029】
図1に、化1の式で表される複合酸化物の一種であるInGaZnO4の結晶構造を示す。InGaZnO4は、InO2層と、GaZnO2層とがc軸方向に所定の周期で積層された層状構造を備えている。これらの内、InO2層は、正八面体の中心に1個のIn原子があり、かつ、その頂点に合計6個のO原子があるInO6八面体が、稜を共有する形で二次元的に連結したものからなる。一方、GaZnO2層は、2重三角錐(bipyramid)の中心にGa原子又はZn原子があり、かつ、その頂点に合計5個のO原子があるMO52重三角錐が、頂点を共有する形で二次元的に連結したものからなる。
【0030】
本実施の形態に係る熱電変換材料は、化1の式で表される複合酸化物を構成するAサイト元素、Bサイト元素及びCサイト元素の少なくとも1つが、所定の置換元素により置換されたものからなる。
【0031】
3価の金属元素からなるAサイト元素又はBサイト元素を置換する置換元素(以下、これを「第1置換元素」という。)は、IVa属元素(Ti、Zr、Hf)から選ばれる少なくとも1種類の元素が好ましい。この場合、Aサイト元素又はBサイト元素のいずれか一方が第1置換元素により置換されていても良く、あるいは、双方が置換されていても良い。また、Aサイト元素及びBサイト元素の双方を置換する場合において、Aサイト元素を置換する第1置換元素とBサイト元素を置換する第1置換元素とは、同一元素であっても良く、あるいは、異なる元素であっても良い。
【0032】
第1置換元素によりAサイト元素を置換する場合、その置換量は、Aサイトの0.001at%以上20at%以下が好ましい。また、第1置換元素によりBサイト元素を置換する場合、その置換量は、Bサイトの0.001at%以上20at%以下が好ましい。
【0033】
第1置換元素によるAサイト元素及び/又はBサイト元素の置換量が0.001at%未満になると、キャリア濃度が低くなり、電気伝導度σが低下する。一方、置換量が20at%を越えると、散乱によってキャリア移動度が低下し、電気伝導度σが低下する。第1置換元素によるAサイト元素の置換量は、さらに好ましくは、0.1at%以上10at%以下である。また、第1置換元素によるBサイト元素の置換量は、さらに好ましくは、0.1at%以上10at%以下である。
【0034】
2価の金属元素からなるCサイト元素を置換する置換元素(以下、これを「第2置換元素」という。)は、IIIa属元素(Sc、Y、ランタノイド元素(57La〜71Lu)、アクチノイド元素(89Ac〜103Lr))及びIIIb属元素(B、Al、Ga、In、Tl)から選ばれる少なくとも1種類の元素が好ましい。
【0035】
第2置換元素によりCサイト元素を置換する場合、その置換量は、Cサイトの0.001at%以上20at%以下が好ましい。第2置換元素によるCサイト元素の置換量が0.001at%未満になると、キャリア濃度が低くなり、電気伝導度σが低下する。一方、置換量が20at%を越えると、散乱によってキャリア移動度が低下し、電気伝導度σが低下する。第2置換元素によるCサイト元素の置換量は、さらに好ましくは、0.1at%以上10at%以下である。
【0036】
さらに、第1置換元素によりAサイト元素及び/又はBサイト元素を置換すると同時に、第2置換元素によりCサイト元素を置換しても良い。この場合、各元素の置換量は、それぞれ、上述した範囲内にあればよい。また、Aサイト、Bサイト及びCサイトの内、少なくとも1つのサイトの0.001at%以上が所定の置換元素により置換されている場合には、他のサイトの置換量は、0.001at%未満であっても良い。
【0037】
Aサイト元素、Bサイト元素及び/又はCサイト元素を、それぞれ上述した置換元素で置換すると、電子キャリアが導入され、複合酸化物の電気伝導度σが向上する。特に、Cサイト元素を第2置換元素で置換すると、キャリア移動度を低下させることなくキャリア濃度を高めることができるので、高い電気伝導度σが得られる。
【0038】
本実施の形態に係る熱電変換材料を構成する複合酸化物は、次の化2の式に示す一般式で表すこともできる。なお、化2の式において、「0.00001≦max(u、v、w)」は、u、v及びwの内の最大値が0.00001(0.001at%)以上であればよいことを示す。
【0039】
【化2】
(A1−uM1u)(B1−vM1’v)Oy{(C1−wM2w)O}m
(但し、2<y<4; 1≦m≦19; 0≦u≦0.2; 0≦v≦0.2;
0≦w≦0.2; 0.00001≦max(u、v、w);
Aは、IIIb族元素、並びにSc、Y及びランタノイド元素から選ばれる少なくとも1種類の元素;
Bは、IIIb族元素及びFeから選ばれる少なくとも1種類の元素;
Cは、Zn及びIIa族元素、並びに2価の3d遷移金属元素、4d遷移金属元素及び5d遷移金属元素から選ばれる少なくとも1種類の元素;
M1、M1’は、IVa族元素から選ばれる少なくとも1種類の元素;
M2は、IIIa族元素及びIIIb族元素から選ばれる少なくとも1種類の元素。)
【0040】
なお、本実施の形態に係る熱電変換材料は、単結晶又は多結晶体のいずれであっても良い。但し、(1)製造が容易で、かつ製造時に組成のずれが生じにくい、(2)実用に耐えうる大きさを有するものの製造が容易である、(3)単結晶より破壊靱性が大きい、(4)粒界や空孔でフォノンが散乱されるため、単結晶より熱伝導度が低い、等の理由から、多結晶体の方が好ましい。また、多結晶体である場合、各結晶粒は、無配向であっても良く、あるいは、後述するようにab面が配向しているものであっても良い。
【0041】
次に、本発明の第2の実施の形態に係る熱電変換材料について説明する。本実施の形態に係る熱電変換材料は、YbFe2O3類縁型層状構造を有し、化1の式に示す一般式で表される複合酸化物を基本組成とし、これに含まれるAサイト元素及び/若しくはBサイト元素が第1置換元素により置換され、並びに/又はCサイト元素が第2置換元素により置換されたものからなる。
【0042】
本実施の形態において、第1置換元素は、IVa族元素及びIVb族元素(C、Si、Ge、Sn、Pb)から選ばれる少なくとも1種類の元素からなる。すなわち、第1置換元素には、IVa族元素に加えて、IVb族元素が用いられる。この点が、第1の実施の形態に係る熱電変換材料とは異なる。本実施の形態に係る熱電変換材料の組成に関するその他の点については、第1の実施の形態に係る熱電変換材料と同一であるので、説明を省略する。
【0043】
本実施の形態に係る熱電変換材料を構成する複合酸化物は、次の化3の式に示す一般式で表すこともできる。なお、化3の式において、「0.00001≦max(u、v、w)」は、u、v及びwの内の最大値が0.00001(0.001at%)以上であればよいことを示す。
【0044】
【化3】
(A1−uM1u)(B1−vM1’v)Oy{(C1−wM2w)O}m
(但し、2<y<4; 1≦m≦19; 0≦u≦0.2; 0≦v≦0.2;0≦w≦0.2; 0.00001≦max(u、v、w);
Aは、IIIb族元素、並びにSc、Y及びランタノイド元素から選ばれる少なくとも1種類の元素;
Bは、IIIb族元素及びFeから選ばれる少なくとも1種類の元素;
Cは、Zn及びIIa族元素、並びに2価の3d遷移金属元素、4d遷移金属元素及び5d遷移金属元素から選ばれる少なくとも1種類の元素;
M1、M1’は、IVa族元素及びIVb族元素から選ばれる少なくとも1種類の元素;
M2は、IIIa族元素及びIIIb族元素から選ばれる少なくとも1種類の元素。)
【0045】
また、本実施の形態に係る熱電変換材料は、化3の式で表される複合酸化物の多結晶体からなり、この多結晶体を構成する各結晶粒のab面が一方向に配向していることを特徴とする。
【0046】
本発明において、「ab面」とは、AO2層と平行な面(電気伝導度σの高い面)をいう。また、「ab面が配向する」とは、各結晶粒のab面が互いに平行に配列すること(以下、これを「面配向」という。)、及び各結晶粒のab面が多結晶体を貫通する1つの軸に対して平行に配列すること(以下、これを「軸配向」という。)の双方を意味する。高い熱電特性を備えた熱電変換材料を得るためには、各結晶粒のab面は、面配向していることが望ましい。
【0047】
ab面の面配向の程度は、次の数1の式に示すロットゲーリング(Lotgering)法による平均配向度Q(HKL)により表すことができる。
【0048】
【数1】
【0049】
なお、数1の式において、ΣI(hkl)は、配向焼結体について測定されたすべての結晶面(hkl)のX線回折強度の総和であり、ΣI0(hkl)は、配向焼結体と同一組成を有する無配向焼結体について測定されたすべての結晶面(hkl)のX線回折強度の総和である。また、Σ’I(HKL)は、配向焼結体について測定された結晶学的に等価な特定の結晶面(HKL)のX線回折強度の総和であり、Σ’I0(HKL)は、配向焼結体と同一組成を有する無配向焼結体について測定された結晶学的に等価な特定の結晶面(HKL)のX線回折強度の総和である。
【0050】
また、本発明において、平均配向度Q(HKL)の算出には、X線源としてCu−Kα線を用いてX線回折を行ったときに得られる回折ピークであって、2θ=5°〜60°の範囲にあるものを用いた。
【0051】
従って、多結晶体を構成する各結晶粒が無配向である場合には、平均配向度Q(HKL)は0%となる。また、多結晶体を構成するすべての結晶粒の(HKL)面が測定面に対して平行に配向している場合には、平均配向度Q(HKL)は100%となる。
【0052】
本実施の形態に係る熱電変換材料において、高い性能指数を得るためには、ab面の配向度は高いほど良い。ab面の配向度は、具体的には、50%以上が好ましく、さらに好ましくは、80%以上である。
【0053】
なお、ab面を軸配向させる場合には、その配向の程度は、数1の式では定義できない。しかしながら、配向軸に垂直な面に対してX線回折を行った場合の(HKL)回折に関するLotgering法による平均配向度(以下、これを「軸配向度」という。)を用いて、軸配向の程度を表すことができる。ab面が軸配向している多結晶体の場合、軸配向度は負の値となる。また、ab面がほぼ完全に軸配向している多結晶体の軸配向度は、ab面がほぼ完全に面配向している多結晶体について測定された軸配向度と同程度になる。
【0054】
次に、本発明に係る熱電変換材料の作用について説明する。熱電変換材料の性能指数Zは、上述したように、電気伝導度σに比例しており、電気伝導度σが大きくなるほど、性能指数Zは大きくなる。一方、電気伝導度σは、キャリア濃度ncと、キャリア移動度μcの積に比例することが知られている。
【0055】
従って、化1の式で表される複合酸化物において、3価のAサイト元素及び/又はBサイト元素を4価の第1置換元素(M1、M1’)で置換するか、あるいは、2価のCサイト元素を3価の第2置換元素(M2)で置換すれば、複合酸化物のキャリア濃度ncが増大し、性能指数Zを向上させることができる。しかも、化2又は化3の式で表される複合酸化物は、毒性が少なく、構成元素の存在量が高く、かつ高温でも安定に作動するため、環境に調和した実用性の高い熱電変換材料となる。
【0056】
また、YbFe2O4類縁型層状構造を有する熱電変換材料として、これまでにIn2O3(ZnO)mとInGa3(ZnO)mが報告されている。これらの複合酸化物において、いずれも電気伝導は、主にInの5s軌道が担っていると考えられている(非特許文献1参照)。また、これらの複合酸化物に電子キャリアをドープすると、電気伝導度σが高くなり、熱電変換材料として機能する。
【0057】
しかしながら、これらの複合酸化物に対し、酸素欠陥を導入したり、あるいは、In3+を4価の陽イオンで置換ドープする方法を用いて電子キャリアを導入する場合、キャリア濃度ncが大きくなるほど、伝導面(InO2層と平行な面)におけるキャリアの散乱が増加し、キャリア移動度μcが低下する。その結果、到達可能な電気伝導度σ(すなわち、性能指数Z)には、限界がある。この点は、本発明に係る熱電変換材料も同様である。
【0058】
これに対し、伝導層と考えられるAO2層に含まれる3価のAサイト元素(例えば、In)を4価の第1置換元素(M1)に置換することに加えて又はこれに代えて、BCmOm+1層に含まれるBサイト元素を第1置換元素(M1’)で置換するか、あるいは2価のCサイト元素を3価の第2置換元素(M2)で置換すると、伝導面(AO2層と平行な面)におけるキャリアの散乱を増加させることなく、キャリア濃度ncを増加させることができる。特に、Cサイト元素を第2置換元素(M2)で置換した場合には、高いキャリア移動度μcが得られ、これに応じて性能指数Zも向上する。
【0059】
さらに、熱電変換材料の性能指数Zは、「物質因子β」と呼ばれる定数と相関があり、物質因子βが大きくなるほど、到達可能な性能指数の最大値Zmaxが大きくなることが知られている。また、物質因子βは、キャリアの有効質量m*、キャリア移動度μc及び格子の熱伝導度κphと相関があり、キャリアの有効質量m*が大きくなるほど、キャリア移動度μcが大きくなるほど、及び/又は格子の熱伝導度κphが小さくなるほど、大きくなることが知られている。
【0060】
一方、化1〜化3の式で表される複合酸化物は、電気伝導を担う伝導面がab面に沿って配列しているため、電気伝導に異方性がある。特に、CO層の層数mを増加させていくと、電気伝導の2次元性が強くなり、キャリアの有効質量m*を増加させることができる。しかしながら、CO層の層数mが増加すると、同時に伝導層の厚さも相対的に薄くなる。そのため、化3の式で表される複合酸化物からなる多結晶体において、各結晶粒が無配向状態である場合には、CO層の層数mが増加するほど、伝導面が不連続となるために、キャリア移動度μcが低下し、高い性能指数Zは得られない。
【0061】
これに対し、化3の式で表される複合酸化物からなる多結晶体において、各結晶粒のab面を配向させると、伝導面が連続となり、ab面内方向のキャリア移動度μcが増加する。特に、ab面を面配向させた場合には、高いキャリア移動度μcが得られる。また、これと同時に、CO層の層数mを増加させると、キャリアの有効質量m*も増加する。そのため、層数mを最適化することによって、高い性能指数Zを示す熱電変換材料が得られる。
【0062】
次に、本発明に係る熱電変換材料の内、ab面が配向した配向焼結体の製造に用いられる異方形状粉末について説明する。化3の式で表される複合酸化物のような複雑な組成を有するセラミックスは、通常、成分元素を含む単純化合物を化学量論比になるように混合し、この混合物を成形・仮焼した後に解砕し、次いで解砕粉を再成形・焼結する方法によって製造される。しかしながら、このような方法では、各結晶粒の特定の結晶面が特定の方向に配向した配向焼結体を得るのは極めて困難である。
【0063】
後述する製造方法においては、この問題を解決するために、特定の条件を満たす針状、板状等の異方形状粉末を成形体中に配向させ、この異方形状粉末をテンプレート又は反応性テンプレートとして用いて複合酸化物の合成及びその焼結を行わせ、これによって多結晶体を構成する各結晶粒のab面を一方向に配向させた点に特徴がある。本発明において、異方形状粉末には、以下の条件を満たすものが用いられる。
【0064】
第1に、異方形状粉末には、成形時に一定の方向に配向させることが容易な形状を有しているものが用いられる。そのためには、異方形状粉末の平均アスペクト比(=異方形状粉末の最大寸法/最小寸法の平均値)は、3以上であることが望ましい。平均アスペクト比が3未満であると、成形時に異方形状粉末を一方向に配向させるのが困難となる。異方形状粉末の平均アスペクト比は、さらに好ましくは5以上である。
【0065】
一般に、異方形状粉末の平均アスペクト比が大きくなるほど、異方形状粉末の配向が容易化される傾向がある。但し、平均アスペクト比が過大になると、後述する原料調製工程において原料の均一な混合が妨げられる場合がある。従って、異方形状粉末の平均アスペクト比は、100以下が好ましく、さらに好ましくは20以下である。
【0066】
また、異方形状粉末の平均粒径(=異方形状粉末の最大寸法の平均値)は、0.05μm以上20μm以下が好ましい。異方形状粉末の平均粒径が0.05μm未満であると、成形時に作用する剪断応力によって異方形状粉末を一定の方向に配向させるのが困難になる。一方、異方形状粉末の平均粒径が20μmを超えると、焼結性が低下する。異方形状粉末の平均粒径は、さらに好ましくは、0.1μm以上10μm以下である。
【0067】
第2に、異方形状粉末には、その発達面(最も広い面積を占める面)が化3の式に示す複合酸化物のAO2層又はCO層と格子整合性を有する結晶面(以下、これを「結晶面X」という。)であるものが用いられる。所定の形状を有する異方形状粉末であっても、その発達面が複合酸化物のAO2層又はCO層と格子整合性を有していない場合には、本発明に係る熱電変換材料を製造するためのテンプレートとして機能しない場合があるので好ましくない。
【0068】
格子整合性の良否は、異方形状粉末の発達面の格子寸法(例えば、陽イオンが作る三角格子における陽イオン間距離)と複合酸化物のAO2層又はCO層の格子寸法(例えば、陽イオンが作る三角格子における陽イオン間距離)の差の絶対値を異方形状粉末の発達面の格子寸法で割った値(以下、この値を「格子整合率」という。)で表すことができる。この格子整合率は、格子をとる方向によって若干異なる場合がある。一般に、平均格子整合率(各方向について算出された格子整合率の平均値)が小さくなるほど、その異方形状粉末は、良好なテンプレートとして機能することを示す。高配向度の熱電変換材料を製造するためには、異方形状粉末の平均格子整合率は、20%以下が好ましく、さらに好ましくは10%以下である。
【0069】
第3に、異方形状粉末は、必ずしも化3の式に示す複合酸化物と同一組成を有するものである必要はなく、後述する第2粉末と反応して、目的とする組成を有する複合酸化物を生成するもの(以下、これを「複合酸化物の前駆体」という。)であっても良い。従って、異方形状粉末は、作製しようとする複合酸化物に含まれる陽イオン元素の内のいずれか1種以上の元素を含む化合物あるいは固溶体の中から選ばれることになる。
【0070】
以上のような条件を満たす異方形状粉末であれば、いずれも本発明に係る熱電変換材料を製造するためのテンプレート又は反応性テンプレートとして機能する。このような条件を満たす材料としては、具体的には、(1)化1の式で表される複合酸化物、(2)化3の式で表される複合酸化物であって、作製しようとする熱電変換材料と同一又は異なる組成を有するもの、(3)AO2層と同様な構造であって、Aサイト元素を含む酸化物又は水酸化物、(4)CO層と同様な構造であって、Cサイト元素を含む酸化物又は水酸化物等が好適である。これらは、いずれも、結晶面Xを発達面とする板状粉末を比較的容易に合成することができる。
【0071】
例えば、(ZnO)mIn2O3(m=1〜19)からなり、かつab面を発達面とする板状粉末は、当然にAO2層又はCO層と格子整合性を有しているので、本発明に係る熱電変換材料を製造するための反応性テンプレートとして機能する。このような板状粉末は、その構成元素を含む酸化物等をフラックスと共に加熱するフラックス法、その構成元素を含む酸化物等をアルカリ水溶液と共にオートクレーブ中で加熱する水熱合成法、溶液からの沈殿法等を用いて合成することができる。また、この時、合成条件を適宜制御すれば、板状粉末の形状制御も比較的容易に行うことができる。
【0072】
化1の式で表される複合酸化物であって、(ZnO)mIn2O3以外の組成を有する板状粉末、又は化3の式で表される複合酸化物であって、ab面を発達面とする板状粉末もまた、これらと同様の方法により製造することができる。Aサイト元素を含む酸化物又は水酸化物の板状粉末としては、例えば、水熱法で作製した六方晶In2O3あるいはIn(OH)3の板状粉末等が挙げられる。また、Cサイト元素を含む酸化物又は水酸化物の板状粉末としては、例えば、ZnOの板状粉末、塩基性硫酸亜鉛の板状粉末等が挙げられる。
【0073】
次に、本発明の一実施の形態に係る熱電変換材料の製造方法について説明する。本実施の形態に係る製造方法は、原料調製工程と、成形工程と、焼結工程とを備えている。
【0074】
初めに、原料調製工程について説明する。原料調製工程は、化2の式又は化3の式で表される複合酸化物を生成可能な組成を有し、かつ複合酸化物を構成するAサイト元素、Bサイト元素、Cサイト元素、第1置換元素及び第2置換元素から選ばれる少なくとも1種類の元素を含む、少なくとも1種類の粉末を含む原料を調製する工程である。
【0075】
例えば、無配向焼結体を製造する場合、出発原料として、作製しようとする複合酸化物と同一組成及び同一結晶構造を有する1種類の微粉末を用いても良い。あるいは、化1の式で表される複合酸化物の微粉末に対し、所定の陽イオン元素を含む単純化合物からなる1種又は2種以上の微粉末を化学量論組成となるように配合し、これを出発原料として用いても良い。
【0076】
また、相対的に少数の陽イオン元素を含む単純化合物のみを化学量論組成となるように秤量し、これを出発原料として用いても良い。あるいは、化学量論組成に配合された単純化合物の仮焼及び粉砕を所定回数繰り返し、これを出発原料として用いても良い。
【0077】
この場合、複合酸化物以外の原料の形態は、特に限定されるものではなく、焼成によって陽イオン元素を含む酸化物を形成可能なものであれば良い。具体的には、水酸化物、酸化物、塩類(例えば、炭酸塩、硝酸塩、シュウ酸塩、酢酸塩など)、アルコキシド等を用いることができる。また、各微粉末の平均粒径は、10μm以下が好ましく、さらに好ましくは、5μm以下である。各微粉末の平均粒径は、成形性や取扱性が低下しない限りにおいて、小さい程良い。
【0078】
一方、配向焼結体を作製する場合には、出発原料として、少なくとも化3の式に示す複合酸化物のAO2層又はCO層と格子整合性を有する「結晶面X」を備えた粉末(以下、これを「第1粉末」という。)を用いる。第1粉末は、その発達面が結晶面Xからなる異方形状粉末が好ましく、特に、その発達面が結晶面Xからなる板状粉末が好ましい。また、第1粉末は、作製しようとする複合酸化物と同一組成を有するものであっても良く、あるいは、複合酸化物の前駆体であっても良い。さらに、第1粉末は、1種類の化合物からなるものであっても良く、あるいは、2種以上の化合物の混合物であっても良い。
【0079】
また、第1粉末が複合酸化物の前駆体である場合、第1粉末と、第2粉末とを所定の比率で混合する。「第2粉末」とは、前駆体である第1粉末と反応して化3の式に示す複合酸化物となる化合物をいう。第2粉末の組成及び配合比率は、合成しようとする熱電変換材料の組成、及び、反応性テンプレートとして使用する第1粉末の組成に応じて定まる。また、第2粉末の形態は、特に限定されるものではなく、焼成によって陽イオン元素を含む酸化物を形成可能なものであれば良い。具体的には、第2粉末として、水酸化物、酸化物、塩類(例えば、炭酸塩、硝酸塩、シュウ酸塩、酢酸塩など)、アルコキシド等を用いることができる。
【0080】
例えば、AlドープInGaZnO4配向焼結体を作製する場合において、第1粉末として(ZnO)5In2O3板状粉末を用いるときには、第2粉末として、ZnO粉末、Al2O3粉末、In2O3粉末及びGa2O3粉末を用い、これらを化学量論組成となるように配合すれば良い。他の組成を有する複合酸化物を作製する場合も同様である。
【0081】
また、所定の比率で配合された第1粉末及び第2粉末に対して、さらに、作製しようとする複合酸化物と同一組成を有する複合酸化物からなる微粉(以下、これを「第3粉末」という。)を添加しても良い。原料中に第3粉末を添加すると、焼結体密度が向上するという効果がある。
【0082】
第2粉末及び第3粉末が固体である場合、又は固体状態のまま混合を行う場合、第2粉末及び第3粉末の平均粒径は、それぞれ、10μm以下が好ましい。平均粒径が10μmを超えると、反応が不均一となったり、焼結性が低下するので好ましくない。第2粉末及び第3粉末の平均粒径は、さらに好ましくは5μm以下である。第2粉末及び第3粉末の平均粒径は、成形性や取扱性が低下しない限りにおいて、小さいほど良い。
【0083】
また、第2粉末及び/又は第3粉末の配合比率が過大になると、必然的に原料全体に占める第1粉末の配合比率が小さくなり、ab面の配向度が低下するおそれがある。従って、第2粉末及び/又は第3粉末の配合比率は、要求されるab面の配向度及び焼結体密度が得られるように、最適な値を選択するのが好ましい。原料全体に占める第1粉末の割合は、具体的には、0.1重量%以上80重量%以下が好ましく、さらに好ましくは、1重量%以上40重量%以下である。
【0084】
なお、出発原料として2種以上の原料を用いる場合、原料調製工程において、これらを混合する。この場合、その混合は、乾式で行っても良く、あるいは、水、アルコール等の適当な分散媒を加えて湿式で行っても良い。さらに、この時、必要に応じてバインダ及び/又は可塑剤を加えても良い。
【0085】
次に、成形工程について説明する。成形工程は、原料調製工程で得られた原料を所定の形状に成形する工程である。無配向焼結体を作製する場合、原料の成形方法は、特に限定されるものではなく、種々の方法を用いて、所定の形状に成形すれば良い。
【0086】
一方、配向焼結体を作製する場合には、結晶面Xが一方向に配向するように原料を成形する。結晶面Xを面配向させる成形方法としては、具体的には、ドクターブレード法、プレス成形法、圧延法、押出法(シート状)等が好適である。一方、結晶面Xを軸配向させる方法としては、具体的には、押出成形法(非シート状)が好適である。
【0087】
また、結晶面Xを成形体中に面配向させる場合において、結晶面Xの配向度を高めるためには、ドクターブレード(テープキャスト)法、押出法、プレス成形等を用いて成形体を作製し、次いで得られた成形体を圧延(ロールプレス)するのが好ましい。あるいは、シート状の成形体の積層圧着及び圧延を複数回繰り返しても良い。結晶面Xの配向度の高い配向焼結体を得るためには、成形体中の結晶面Xの配向度は、高い程良い。
【0088】
さらに、成形方法として磁場中成形法を用いても良い。結晶面Xを発達面とする異方形状粉末を含む原料に対して強力な磁場を作用させながら成形する場合において、磁場の組み合わせを最適化すると、成形体中に結晶面Xを高い配向度で配向させることができる。
【0089】
次に、焼結工程について説明する。焼結工程は、成形工程で得られた成形体を所定の条件下で焼成する工程である。所定の組成を有する原料を含む成形体を所定の温度に加熱すると、原料組成に応じて、複合酸化物が成長及び/又は生成すると同時に、複合酸化物の焼結も進行する。
【0090】
複合酸化物の場合、焼結は、通常、600℃以上1700℃以下で行われる。最適な加熱温度は、反応及び焼結が効率よく進行し、かつ異相の生成や、成分元素の揮発が生じないように、使用する原料及び作製しようとする複合酸化物の組成、焼結方法等に応じて選択する。例えば、(ZnO)5In2O3板状粉末、ZnO粉末、Al2O3粉末、In2O3粉末及びGa2O3粉末を用いてAlドープInGaZnO4配向焼結体を作製する場合には、焼結温度は、1000℃以上1600℃以下が好ましい。また、加熱時間は、所定の焼結体密度が得られるように、焼結温度に応じて最適な値を選択すればよい。
【0091】
加熱方法としては、室温から所定温度に徐々に昇温する方法や、あらかじめ所定温度に加熱した炉内に配向成形体を導入し、一気に加熱する方法などがあり、作製しようとする複合酸化物の組成などに応じて、最適な方法を選択すればよい。また、焼結は、常圧で行っても良く、あるいは、ホットプレス、ホットフォージング、HIP等、加圧下で行っても良い。
【0092】
また、焼結工程においては、Cサイト元素から選ばれる少なくとも1種類の元素を含む酸化物の蒸気が外部から供給される雰囲気下において、成形体を焼成するのが好ましい。Cサイト元素の酸化物は、蒸気圧の高いものが多いために、焼成中にCサイト元素が酸化物の蒸気となって成形体から揮発する場合がある。焼成中にCサイト元素が揮発すると、特に焼結体の表面近傍の組成が目的とする組成からずれ、熱電特性の低下や製品歩留まりの低下の原因となる。
【0093】
これに対し、Cサイト元素を含む酸化物の蒸気が外部から供給される雰囲気下で焼成すると、Cサイト元素の揮発が抑制され、熱電特性の低下や製品歩留まりの低下を抑制することができる。この方法は、特に、Cサイト元素としてZnを含む場合に有効な方法となる。
【0094】
このような雰囲気を形成する方法には、種々の方法がある。第1の方法は、Cサイト元素の酸化物を含む粉末(詰め粉)中に成形体を埋設し、この状態で焼成する方法である。この場合、詰め粉は、Cサイト元素の酸化物のみからなるものであっても良く、あるいは、Cサイト元素の酸化物と他の粉末(例えば、Aサイト元素の酸化物、Bサイト元素の酸化物など)との混合物であっても良い。詰め粉中に含まれるCサイト元素の酸化物の割合は、成形体の形状、組成等に応じて、最適なものを選択する。
【0095】
第2の方法は、Cサイト元素の酸化物を含むバルク材料を成形体の周囲に配置する方法である。この場合、バルク材料は、Cサイト元素の酸化物のみからなるものであっても良く、あるいは、Cサイト元素の酸化物と他の材料(例えば、Aサイト元素の酸化物、Bサイト元素の酸化物など)との複合体であっても良い。また、「バルク材料」は、Cサイト元素の酸化物を含む粉末の成形体、単結晶、あるいは焼結体のいずれであっても良い。さらに、成形体の周囲に配置するバルク材料の大きさ、個数、位置等は、成形体の形状、組成等に応じて、最適なものを選択する。
【0096】
第3の方法は、Cサイト元素の酸化物の蒸気を含むガスを成形体の周囲に供給する方法である。具体的には、成形体を焼結するための焼結手段とは別個の加熱手段を用いてCサイト元素の酸化物の蒸気を発生させ、この蒸気を単独で又は適当な搬送ガスを用いて成形体の周囲に搬送すればよい。
【0097】
なお、バインダを含む成形体の場合、焼結工程の前に、脱脂を主目的とする熱処理を行っても良い。この場合、脱脂の温度は、特に限定されるものではなく、少なくともバインダを熱分解させるに十分な温度であれば良い。また、脱脂は、酸素が存在する雰囲気下で行うのが好ましい。
【0098】
また、配向焼結体を作製する場合において、成形体の脱脂を行うと、成形体中に配向させた結晶面Xの配向度が低下したり、あるいは、反応が進行して成形体が膨張する場合がある。このような場合には、脱脂を行った後、焼結を行う前に、成形体に対して、さらに静水圧(CIP)処理を行うのが好ましい。脱脂後の成形体に対して、さらに静水圧処理を行うと、脱脂に伴う配向度の低下、あるいは、成形体の密度低下に起因する焼結体密度の低下を抑制できるという利点がある。
【0099】
次に、本実施の形態に係る熱電変換材料の製造方法の作用について説明する。出発原料として複合酸化物のみを含む成形体を所定の温度で焼成すると、出発原料の焼結が進行し、所定の密度を有する焼結体が得られる。また、出発原料として複合酸化物の前駆体又は単純化合物を含む成形体を所定の温度で焼成すると、複合酸化物の生成及び成長と同時に、焼結が進行する。
【0100】
また、第1粉末、並びに、必要に応じて添加された第2粉末及び/又は第3粉末を含む原料を調製し、これを第1粉末に対して剪断応力が作用するような成形方法を用いて成形すると、結晶面Xが成形体中に配向する。このような配向成形体を所定の温度で加熱すると、第1粉末、第2粉末及び第3粉末が反応し、複合酸化物が成長及び/又は生成する。
【0101】
この時、結晶面Xと複合酸化物のAO2層又はCO層との間には格子整合性があるので、結晶面Xが、複合酸化物のab面として承継される。その結果、焼結体中には、ab面が一方向に配向した状態で、複合酸化物の板状結晶が成長し、各結晶粒のab面が高い配向度で配向した熱電変換材料が得られる。
【0102】
また、このような工程を経て得られた焼結体中の複合酸化物のab面の配向度(特に、高配向度領域におけるab面の配向度)は、成形体に含まれる第1粉末の結晶面Xの配向度に強く依存する。そのため、異方形状を有する第1粉末に強い剪断力を作用させることによって、結晶面Xの配向度が所定の値以上である成形体を作製し、これを焼結すれば、各結晶粒のab面が極めて高い配向度で配向した熱電変換材料が得られる。
【0103】
本実施の形態に係る製造方法は、無配向焼結体を作製する場合に限らず、配向焼結体を作製する場合であっても、通常のセラミックスプロセスをそのまま用いることができるので、低コストである。また、この方法により得られる熱電変換材料は、多結晶体であるので、単結晶より破壊靱性が大きく、また、粒界や空孔でフォノンが散乱されるので、単結晶より熱伝導率が低くなる。
【0104】
また、テンプレート又は反応性テンプレートを用いて配向焼結体を作製する場合には、ab面の配向度が高いだけでなく、配向度及び組成が均一であり、しかも断面積の大きな熱電変換材料が得られる。さらに、この方法により得られる熱電変換材料は、電気伝導度の高いab面が高い配向度で配向しているため、同一組成を有する無配向焼結体より高い性能指数を示す。そのため、これを熱電変換材料として用いれば、耐久性及び熱電特性に優れた熱電変換素子を作製することができる。
【0105】
【実施例】
(実施例1)
化1の式で表される複合酸化物の一種であるInGaO3(ZnO)に対し、Sn又はAlを置換ドープする際に必要な形成エネルギ(△H)を第一原理計算によって求めた。図2に、その結果を示す。図2より、Snは、Inサイトにドープされやすく、Alは、Znサイトにドープされやすいことがわかる。Alは、伝導面でないZnサイトに安定にキャリアドープできるため、高い電気伝導度σが実現できることがわかった。
【0106】
(実施例2)
以下の手順に従い、In(Ga0.94Zr0.06)ZnO4組成を有する無配向焼結体を作製した。まず、In2O3粉末(平均粒径1μm)、Ga2O3粉末(平均粒径1μm)、ZnO粉末(平均粒径0.5μm)及びZrO2粉末(平均粒径1μm)を化学量論組成となるように秤量し、これらをボールミルで混合した。
【0107】
次に、この原料粉を大気中において、1150℃で12時間仮焼した。次いで、この仮焼粉を粉砕した後、これを金型プレス(圧力100MPa)により、φ10mm×5mmの大きさに成形した。さらに、この成形体をZnO粉末中に埋設し、大気中において、1550℃で2時間焼成した。
【0108】
(実施例3)
出発原料として、ZrO2粉末に代えてAl2O3粉末(平均粒径1μm)を用い、InGa(Zn0.96Al0.04)O4組成(m=1、Al=4at%)となるように配合した以外は実施例2と同一の手順に従い、InGa(Zn0.96Al0.04)O4組成を有する無配向焼結体を作製した。
【0109】
(比較例1)
出発原料として、In2O3粉末、Ga2O3粉末、及びZnO粉末を用い、InGaZnO4組成(m=1、pure)となるように配合した以外は実施例2と同一の手順に従い、InGaZnO4組成を有する無配向焼結体を作製した。
【0110】
(実施例4)
以下の手順に従い、InGa(Zn0.96Al0.04)O4+δ組成を有する配向焼結体を作製した。まず、フラックス法を用いて合成した(ZnO)5In2O3板状粉末(平均粒径10μm、アスペクト比10)、並びに実施例3で用いたZnO粉末、Al2O3粉末及びGa2O3粉末を、モル比で(ZnO)5In2O3:ZnO:Al2O3:In2O3:Ga2O3=1:4.6:0.2:4:5となるように、すなわち反応後にInGa(Zn0.96Al0.04)O4+δ(−1<δ<+1)が合成される比となるように秤量し、これらを湿式ボールミル混合した。次いで、このスラリーにバインダと可塑剤を加え、さらにボールミル混合した。
【0111】
次に、得られたスラリーをドクターブレード法により、厚さ約0.2mmのテープ状に成形した。次いで、得られたシート状成形体を、80℃、10MPaで積層圧着し、厚さ約10mmの板状成形体を作製した。この板状成形体を、400℃で脱脂した後、大気中において、1400℃×10時間の加圧焼結(圧力:100MPa)により、焼結体を作製した。
【0112】
(比較例2)
以下の手順に従い、InGaZnO4組成を有する配向焼結体を作製した。まず、実施例4で用いた(ZnO)5In2O3板状粉末、In2O3粉末及びGa2O3粉末を、モル比で(ZnO)5In2O3:In2O3:Ga2O3=2:3:5となるように、すなわち反応後にInGaZnO4が合成される比となるように秤量し、これらを湿式ボールミル混合した。次いで、このスラリにバインダと可塑剤を加え、さらにボールミル混合した。
【0113】
次に、得られたスラリーをドクターブレード法により、厚さ約0.2mmのテープ状に成形した。次いで、得られたシート状成形体を、80℃、10MPaで積層圧着し、厚さ約5mmの板状成形体を作製した。この板状成形体を、400℃で脱脂した後、ZnO粉末中に埋設し、大気中において、1550℃×2時間の常圧焼結により、焼結体を作製した。
【0114】
実施例2〜4及び比較例1、2で得られた焼結体について、その表面を研削除去した後、元のシート面(テープキャスト面)又はプレス成形面に平行な面にX線を照射することによりX線回折を行い、ロットゲーリング法による{00l}面(ab面)の平均配向度を算出した。その結果、実施例2、3及び比較例1で得られた無配向焼結体の平均配向度は、それぞれ、7%、16%及び10%であった。これに対し、実施例4及び比較例2で得られた配向焼結体の平均配向度は、それぞれ、93%及び90%に達した。
【0115】
次に、実施例2〜4及び比較例1、2で得られた焼結体から、元のシート面又はプレス成形面に平行な方向を長手方向とする矩形試料を加工し、250℃〜800℃における電気伝導度σ及びゼーベック係数Sを測定した。さらに、得られた電気伝導度σ及びゼーベック係数Sから出力因子PF(=S2σ)を算出した。図3(a)、図3(b)及び図3(c)に、それぞれ、ゼーベック係数S、電気伝導度σ及び出力因子PFの温度依存性を示す。
【0116】
無配向焼結体の場合、ゼーベック係数Zの絶対値は、置換元素をドープしないInGaZnO4(比較例1)が最も高く、次いで、ZrをドープしたInGa0.94Zr0.06ZnO4(実施例2)、及びAlをドープしたInGaZn0.96Al0.04O4(実施例3)の順に低下した。一方、電気伝導度σは、InGaZnO4が最も低くなり、InGa0.94Zr0.06ZnO4及びInGaZn0.96Al0.04O4の電気伝導度σは、それぞれ、InGaZnO4の約2倍及び約6倍に向上した。
【0117】
その結果、出力因子PFは、InGaZn0.96Al0.04O4無配向焼結体が最も高く、次いでInGa0.94Zr0.06ZnO4無配向焼結体、及びInGaZnO4無配向焼結体の順に低下した。特に、InGaZn0.96Al0.04O4無配向焼結体の800℃における出力因子は、約350×10−6W/K2mに達した。Zrをドープする場合に比べて、Alをドープすることによって電気伝導度σが著しく向上するのは、AlがZnサイトに入り、伝導面におけるキャリアの散乱が抑制されたためと考えられる。
【0118】
InGaZnO4配向焼結体(比較例2)の場合、ゼーベック係数Zの絶対値は、同一組成を有する無配向焼結体(比較例1)とほぼ同等であった。一方、配向焼結体の電気伝導度σは、無配向焼結体に比べて約20S/cm増加した。その結果、配向焼結体の出力因子PFは、無配向焼結体の約1.2〜1.5倍に向上した。また、また、InGaZnO4配向焼結体の800℃における出力因子は、約290×10−6W/K2mであった。
【0119】
これに対し、InGaZn0.96Al0.04O4配向焼結体(実施例4)の場合、ゼーベック係数Zの絶対値は、同一組成を有する無配向焼結体(実施例3)とほぼ同等であった。一方、配向焼結体の電気伝導度σは、無配向焼結体に比べて約200S/cm増加した。その結果、配向焼結体の出力因子PFは、無配向焼結体の約1.3〜1.5倍に向上した。また、InGaZn0.96Al0.04O4配向焼結体の800℃における出力因子は、約500×10−6W/K2m達した。
【0120】
(実施例5)
出発原料をInGaO3{(Zn0.99Al0.01)O}3組成(m=3、Al=1at%)となるように配合した以外は、実施例3と同一の手順に従い、InGaO3{(Zn0.99Al0.01)O}3組成を有する無配向焼結体を作製した。
【0121】
(実施例6)
出発原料として、Al2O3に代えて、SnO2粉末(平均粒径1μm)を用い、(In0.94Sn0.06)GaZnO4組成(m=1、Sn=6at%)となるように配合した以外は、実施例5と同一の手順に従い、(In0.94Sn0.06)GaZnO4組成を有する無配向焼結体を作製した。
【0122】
(実施例7)
出発原料を(In0.94Sn0.06)GaO3(ZnO)3組成(m=3、Sn=6at%)となるように配合した以外は、実施例6と同一の手順に従い、(In0.94Sn0.06)GaO3(ZnO)3組成を有する無配向焼結体を作製した。
【0123】
(比較例3)
出発原料をInGaO3(ZnO)3組成(m=3、pure)となるように配合した以外は比較例1と同一の手順に従い、InGaO3(ZnO)3組成を有する無配向焼結体を作製した。
【0124】
実施例5〜7及び比較例3で得られた焼結体から、実施例2〜4と同一の手順に従い、矩形状試料を切り出し、出力因子PFを算出した。また、得られた焼結体について、レーザーフラッシュ法を用いて、室温〜800℃の熱伝導度κを測定した。図4(a)及び図4(b)に、それぞれ、出力因子PF及び熱伝導度κの温度依存性を示す。また、図4(a)及び図4(b)には、実施例3(m=1、Al=4at%)及び比較例1(m=1、pure)の結果も併せて示した。
【0125】
CO層の層数mが1である場合、Alドープ無配向焼結体の出力因子PFは、低温域ではSnドープ無配向焼結体とほぼ同等であるが、高温域ではSnドープ無配向焼結体より高い値を示した。一方、CO層の層数mが3である場合、Alドープ無配向焼結体の出力因子PFは、すべての温度域においてSnドープ無配向焼結体より高い値を示した。さらに、CO層の層数mが3である無配向焼結体の熱伝導度κは、CO層の層数mが1である無配向焼結体より低い値を示した。
【0126】
その結果、InGaO3{(Zn0.99Al0.01)O}3無配向焼結体において最大の熱電特性が得られ、1000Kにおける出力因子PFは、390×10−6W/K2mに、また、無次元性能指数ZTは、0.16に達した。
【0127】
以上、本発明の実施の形態について詳細に説明したが、本発明は上記実施の形態に何ら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の改変が可能である。
【0128】
例えば、上記実施例において、焼結方法として、常圧焼結法又はホットプレス法が用いられているが、これに代えて、常圧焼結+HIP処理等、他の焼結法を用いても良い。また、上記実施例において、成形体中の結晶面Xの配向度を高くするためにドクターブレード法が用いられているが、結晶面Xの配向度を高めることができる限り、他の成形方法を用いても良い。
【0129】
また、例えば、上記実施例では、ドクターブレード法によって板状粉末を面配向させているが、押出成形法を用いて、板状粉末を軸配向させても良い。板状粉末をこのように軸配向させた場合であっても、無配向焼結体より高い性能指数を有する熱電変換材料が得られる。また、押出成形法を用いると、ある程度の厚さを有する焼結体を低コストで作製できるという利点がある。
【0130】
また、複合酸化物の前駆体からなる第1粉末に対して第2粉末を添加し、複合酸化物を生成させる場合において、第2粉末として、第1粉末と同一組成を有する前駆体からなる微粉末を用いても良い。この場合、目的とする熱電変換材料が得られるように、他の粉末の組成及び配合比率に応じて、前駆体微粉末を所定の比率で配合すれば良い。
【0131】
また、第1粉末として、化3の式に示す複合酸化物からなる異方形状粉末を用いる場合には、第1粉末のみを単独で用いても良い。あるいは、第1粉末に対して、さらに、作製しようとする複合酸化物を生成可能な組成比を有する第2粉末、及び/又は、作製しようとする複合酸化物と同一組成を有する微粒状の第3粉末を所定の比率で配合しても良い。
【0132】
【発明の効果】
本発明に係る熱電変換材料は、YbFe2O4類縁型層状構造を有し、一般式ABOy(CO)mで表される複合酸化物を構成する陽イオン元素のいずれか1以上を高原子価元素で置換しているので、高い電気伝導度が得られ、性能指数が向上するという効果がある。特に、Cサイト元素を所定の第2置換元素で置換した場合には、キャリア移動度を低下させることなくキャリア濃度を増加させることができ、高い電気伝導度を示すという効果がある。
【0133】
また、本発明に係る熱電変換材料は、このような複合酸化物のab面を一方向に配向させているので、ab面内方向におけるキャリア移動度とキャリアの有効質量が増加し、高い熱電特性が実現されるという効果がある。さらに、本発明に係る熱電変換材料は、構成元素の存在量が高いので低コストであり、毒性が少なく、しかも高温でも安定に作動するという効果がある。
【0134】
また、本発明に係る熱電変換材料の製造方法は、このような優れた熱電特性を示す複合酸化物からなる熱電変換材料を低コストで作製できるという効果がある。また、所定の条件を満たす異方形状粉末を出発原料として用いた場合には、この異方形状粉末がテンプレート又は反応性テンプレートとして機能し、ab面が高い配向度で配向した配向焼結体を低コストで製造できるという効果がある。
【0135】
さらに、Cサイト元素を含む酸化物の蒸気が外部から供給される雰囲気下で焼結を行った場合には、成形体からのCサイト元素の揮発が抑制され、優れた熱電特性を示す熱電変換材料を低コストで製造できるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】InGaZnO4の結晶構造を示す模式図である。
【図2】第一原理計算によって求めた、InGaZnO4にSn又はAlを置換ドープする際に必要な形成エネルギーを示す図である。
【図3】図3(a)、図3(b)及び図3(c)は、それぞれ、実施例2〜4及び比較例1、2で得られた複合酸化物のゼーベック係数S、電気伝導度σ及び出力因子PFと温度との関係を示す図である。
【図4】図4(a)及び図4(b)は、それぞれ、実施例3、5〜7及び比較例1、3で得られた複合酸化物の出力因子PF及び熱伝導度κと温度との関係を示す図である。
Claims (7)
- YbFe2O4類縁型層状構造を有し、
一般式:ABOy(CO)m
(但し、2<y<4; 1≦m≦19; Aサイト元素は、IIIb族元素、並びにSc、Y及びランタノイド元素から選ばれる少なくとも1種類の元素; Bサイト元素は、IIIb族元素及びFeから選ばれる少なくとも1種類の元素; Cサイト元素は、Zn及びIIa族元素、並びに2価の3d遷移金属元素、4d遷移金属元素及び5d遷移金属元素から選ばれる少なくとも1種類の元素。)
で表され、さらに
前記Aサイト元素及び/若しくは前記Bサイト元素の0.001at%以上20at%以下が、IVa族元素から選ばれる少なくとも1種類の第1置換元素により置換され、並びに/又は
前記Cサイト元素の0.001at%以上20at%以下が、IIIa族元素及びIIIb族元素から選ばれる少なくとも1種類の第2置換元素により置換された複合酸化物からなる熱電変換材料。 - YbFe2O4類縁型層状構造を有し、
一般式:ABOy(CO)m
(但し、2<y<4; 1≦m≦19; Aサイト元素は、IIIb族元素、並びにSc、Y及びランタノイド元素から選ばれる少なくとも1種類の元素; Bサイト元素は、IIIb族元素及びFeから選ばれる少なくとも1種類の元素; Cサイト元素は、Zn及びIIa族元素、並びに2価の3d遷移金属元素、4d遷移金属元素及び5d遷移金属元素から選ばれる少なくとも1種類の元素。)
で表され、さらに
前記Aサイト元素及び/若しくは前記Bサイト元素の0.001at%以上20at%以下が、IVa族元素及びIVb族元素から選ばれる少なくとも1種類の第1置換元素により置換され、並びに/又は
前記Cサイト元素の0.001at%以上20at%以下が、IIIa族元素及びIIIb族元素から選ばれる少なくとも1種類の第2置換元素により置換された複合酸化物の多結晶体からなり、
該多結晶体を構成する各結晶粒のab面が一方向に配向していることを特徴とする熱電変換材料。 - 前記Cサイト元素は、Znである請求項1又は2に記載の熱電変換材料。
- 請求項1又は2に記載の複合酸化物を生成可能な組成を有し、かつ前記複合酸化物を構成するAサイト元素、Bサイト元素、Cサイト元素、第1置換元素及び第2置換元素から選ばれる少なくとも1種類の元素を含む、少なくとも1種類の粉末を含む原料を調製する原料調製工程と、
前記原料を成形する成形工程と、
該成形工程で得られた成形体を焼成する焼結工程とを備えた熱電変換材料の製造方法。 - 前記焼結工程は、前記Cサイト元素から選ばれる少なくとも1種類の元素を含む酸化物の蒸気が外部から供給される雰囲気下において、前記成形体を焼成するものである請求項4に記載の熱電変換材料の製造方法。
- 前記原料調製工程は、前記複合酸化物のAO2層又はCO層と格子整合性を有する結晶面Xを発達面とする異方形状粉末を含む原料を調製するものであり、
前記成形工程は、前記結晶面Xが一方向に配向するように、前記原料を成形するものである請求項4又は5に記載の熱電変換材料の製造方法。 - 前記Cサイト元素は、Znである請求項4から6までのいずれかに記載の熱電変換材料の製造方法。
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