JP2009114037A - 結晶配向セラミックスの製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】配向度の高い結晶配向セラミックスを安定的に製造できる結晶配向セラミックスの製造方法を提供すること。
【解決手段】多結晶体の結晶粒の特定の結晶面Aが配向する結晶配向セラミックスの製造方法であり、準備工程と混合工程と成形工程と評価工程と焼成工程とを行う。準備工程においては、異方形状の配向粒子からなる異方形状粉末と、その1/3以下の平均粒径を有する微細粉末とを準備する。混合工程においてはこれらを混合する。成形工程においては、異方形状粉末の配向面が略同一の方向に配向するように原料混合物を成形する。評価工程においては、成形体内における配向粒子の配向面について、ロットゲーリング法による配向度及びロッキングカーブ法による半値幅(FWHM)を測定し、配向度80%以上かつ半値幅15°以下である成形体を選択する。焼成工程においては、成形体を焼成して結晶配向セラミックスを得る。
【選択図】図1

Description

本発明は、等方性ペロブスカイト化合物を主相とする多結晶体からなり、該多結晶体を構成する結晶粒の特定の結晶面が配向した結晶配向セラミックスの製造方法に関する。
セラミックスからなる多結晶体は、例えば温度、熱、ガス、及びイオン等の各種センサ等に利用されている。また、コンデンサ、抵抗体、及び集積回路用基板等の電子回路部品や、光学的又は磁器的記録素子等に利用されている。特に、圧電効果を有するセラミックス(以下、適宜「圧電セラミックス」という)からなる多結晶体は、高性能で、形状の自由度が大きく、材料設計が比較的容易なため、広くエレクトロニクスやメカトロニクスの分野で応用されている。
圧電セラミックスは、強誘電体セラミックスに電界を印加し、強誘電体の分域の方向を一定の方向にそろえる、いわゆる分極処理を施したものである。圧電セラミックスにおいて、分極処理により自発分極を一定方向にそろえるためには、自発分極の方向が三次元的に取りうる等方性ペロブスカイト型の結晶構造が有利である。そのため、実用化されている圧電セラミックスの大部分は、等方性ペロブスカイト型強誘電体セラミックスである。
等方性ペロブスカイト型強誘電体セラミックスとしては、例えば、Pb(Zr・Ti)O3(以下、これを「PZT」という。)、PZTに対して鉛系複合ペロブスカイトを第三成分として添加したPZT3成分系、BaTiO3、Bi0.5Na0.5TiO3(以下、これを「BNT」という。)等が知られている。
これらの中で、PZTに代表される鉛系の圧電セラミックスは、他の圧電セラミックスに比較して高い圧電特性を有しており、現在実用化されている圧電セラミックスの大部分を占めている。しかしながら、蒸気圧の高い酸化鉛(PbO)を含んでいるために、環境に対する負荷が大きいという問題がある。そのため、低鉛あるいは無鉛でPZTと同等の圧電特性を有する圧電セラミックスが求められている。
一方、BaTiO3セラミックスは、鉛を含まない圧電材料の中では比較的高い圧電特性を有しており、ソナー等に利用されている。また、BaTiO3と他の非鉛系ペロブスカイト化合物(例えばBNT等)との固溶体の中にも、比較的高い圧電特性を示すものがある。しかしながら、これらの無鉛圧電セラミックスは、PZTに比して、圧電特性が低いという問題があった。
このような問題を解決するために、従来から様々な圧電セラミックスが提案されてきた。例えば、非鉛系の中でも相対的に高い圧電特性を示す等方性ペロブスカイト型ニオブ酸カリウムナトリウムや、その固溶体からなる圧電セラミックスがある(特許文献1〜6参照)。しかし、これらの無鉛圧電セラミックスは、PZT系の圧電セラミックスに比べてまだ充分な圧電特性を発揮できないという問題があった。
このような背景の中、形状異方性を有し、自発分極が1つの平面内に優先配向するセラミック結晶粒を含む圧電セラミックスを有する圧電素子が開発されている(特許文献7参照)。
一般に、等方性ペロブスカイト型化合物の圧電特性などは、結晶軸の方向によって異なることが知られている。そのために、圧電特性などの高い結晶軸を一定の方向に配向させることができれば、圧電特性の異方性を最大限に活用することができ、圧電セラミックスの高性能化が期待できる。上記特許文献7に開示されているように、所定の組成を有する板状粉末を反応性テンプレートとし、該板状粉末と原料粉末とを焼結させて特定の結晶面を配向させる方法によれば、特定の結晶面が高い配向度で配向した高性能な結晶配向セラミックスを製造することができる。
結晶配向セラミックスは、図3〜図6に示すごとく、例えば次のようにして作製することができる。
即ち、まず、図3に示すごとく、所定の組成を有する異方形状の板状粉末1を反応性テンプレートとして準備する。また、焼成時にこの板状粉末1と反応して等方性ペロブスカイト型化合物を生成する原料粉末2を準備する。次いで、この板状粉末1及び原料粉末2に、溶媒、バインダー、可塑剤、及び分散材等を加えて混合し、スラリー3を作製する。このスラリー3においては、溶媒、バインダー、可塑剤、及び分散材等からなる分散媒4中に板状粉末1及び原料粉末2が分散されている。
次に、図4に示すごとく、スラリー3を例えばシート状に成形して成形体5を作製する。このとき、同図に示すごとく、成形時に加わるせん断応力により、異方形状の板状粉末1を成形体5内で略同じ方向に整列させる。
次いで、成形体5を加熱して焼結させる。このとき、図5に示すごとく、焼結中の成形体6内では、上記板状粉末1が反応性テンプレートとなって周囲の上記原料粉末2と反応して上記等方性ペロブスカイト型化合物を生成しながら板状粉末1が成長する。さらに、焼結を進行させると、板状粉末1が原料粉末2と反応しながらさらに成長し、図6に示すごとく、特定の結晶面が配向した結晶粒子(配向粒子)7からなる結晶配向セラミックス8を得ることができる。
特開2000−313664号公報 特開2003−300776号公報 特開2003−306479号公報 特開2003−327472号公報 特開2003−342069号公報 特開2003−342071号公報 特開2004−7406号公報
しかしながら、上述のような従来の製造方法によって、板状粉末を配向させて結晶配向セラミックスを作製しても、焼結後の配向度にばらつきが発生し、配向度の高い結晶配向セラミックスを得ることができない場合があった。
また、板状粉末と原料粉末とを焼結させてセラミックスからなる多結晶体(結晶配向セラミックス)を作製する場合においては、粒径の異なる板状粉末と原料粉末とを焼結させるため、緻密な多結晶体を得ることが困難であるという問題があった。
本発明はかかる従来の問題点を鑑みてなされたものであって、配向度の高い結晶配向セラミックスを安定的に製造できる結晶配向セラミックスの製造方法を提供しようとするものである。
等方性ペロブスカイト型化合物を主相とする多結晶体からなり、該多結晶体を構成する結晶粒の特定の結晶面Aが配向する結晶配向セラミックスの製造方法であって、
ペロブスカイト型化合物よりなり、上記特定の結晶面Aと格子整合性を有する結晶面が配向して配向面を形成している異方形状の配向粒子からなる異方形状粉末と、該異方形状粉末の1/3以下の平均粒径を有し、上記異方形状粉末と共に焼結させることにより上記等方性ペロブスカイト型化合物を生成する微細粉末とを準備する準備工程と、
上記異方形状粉末と上記微細粉末とを混合することにより原料混合物を作製する混合工程と、
上記異方形状粉末の上記配向面が略同一の方向に配向するように、上記原料混合物を成形して成形体を作製する成形工程と、
上記成形体内における上記配向粒子の上記配向面について、ロットゲーリング法による配向度及びロッキングカーブ法による半値幅(FWHM)を測定し、上記配向度が80%以上かつ上記半値幅(FWHM)が15°以下である上記成形体を選択する評価工程と、
上記評価工程において選択された上記成形体を加熱し、上記異方形状粉末と上記微細粉末とを焼結させることにより上記結晶配向セラミックスを得る焼成工程とを有することを特徴とする結晶配向セラミックスの製造方法にある。
本発明の製造方法においては、上記準備工程、上記混合工程、上記成形工程、上記評価工程、及び上記焼成工程を行うことにより、上記結晶配向セラミックスを製造する。
本発明において最も注目すべき点は、上記評価工程にある。
即ち、本発明においては、上記成形体内における上記配向粒子の上記配向面について、ロットゲーリング法による配向度及びロッキングカーブ法による半値幅(FWHM)を測定する。そして、上記配向度が80%以上かつ上記半値幅(FWHM)が15°以下である上記成形体を選択し、該成形体を用いて上記焼成工程を行う。
そのため、非常に配向度の高い上記結晶配向セラミックスをより確実に得ることができる。
即ち、上記成形工程においては、例えばドクターブレード法等により上記原料混合物にせん断応力を加え、上記異方形状粉末の上記配向面が略同一の方向に配向するように上記原料混合物を成形して上記成形体を作製する。しかし、上記異方形状粉末の配向面を完全に同一方向に配向させることは非常に困難であり、該成形体における上記異方形状粉末の配向状態が最終的な結晶配向セラミックスの特性に大きな影響を及ぼす。そこで、上記成形体の段階で、その配向状態を評価することが求められる。
本発明においては、上記成形体内における上記配向粒子の上記配向面について、ロットゲーリング法による配向度を測定し、該配向度が80%以上の成形体を採用している(上記評価工程)。これにより、より確実に配向度の高い結晶配向セラミックスを得ることができる。しかしながら、焼成前の成形体のロットゲーリング法による配向度と、最終的な結晶配向セラミックスの配向度との間には、必ずしも直線的な比例関係を示さず、特に、配向度の高い成形体については、この傾向が顕著となることが明らかになった。
これは、上記成形体内の各配向粒子自体の傾きにばらつきがあることに起因していると考えられた。そこで、本発明においては、上記評価工程において、ロットゲーリング法による配向度だけでなくロッキングカーブ法による半値幅にも着目し、該半値幅が15°以下である成形体を選択することにより、配向度が高く、配向粒子自体の傾きのばらつきも少ない成形体を選択することができる。かかる成形体を用いて上記焼成工程を行うと、上記配向粒子の配向方位を継承した等方性ペロブスカイト型化合物からなる異方形状結晶を生成させることができるため、配向度が非常に高い上記結晶配向セラミックスをさらにより確実に作製することができる。また、この場合には、緻密性の高い結晶配向セラミックスを得ることができる。このようにして得られる緻密性及び配向度の高い結晶配向セラミックスは、圧電d33定数等の圧電特性及び誘電損失等の誘電特性に優れると共に、圧電特性及び誘電特性の温度変化によるばらつきが小さくなる。それ故、該結晶配向セラミックスは、高性能な圧電素子又は誘電素子等として利用することができる。
以上のように、本発明によれば、配向度の高い結晶配向セラミックスを安定的に製造できる結晶配向セラミックスの製造方法を提供することができる。
次に、本発明の好ましい実施の形態について説明する。
本発明の製造方法においては、等方性ペロブスカイト型化合物を主相とする多結晶体からなり、該多結晶体を構成する結晶粒の特定の結晶面Aが配向する結晶配向セラミックスを製造する。
ここで、「等方性」とは、擬立方基本格子でペロブスカイト型構造ABO3を表現したとき、軸長a、b、cの相対比が0.8〜1.2であり、軸角α、β、γが80〜100°の範囲にあることを示す。
上記等方性ペロブスカイト型化合物としては、例えば一般式(1)ABO3(ただし、Aサイト元素はK、Na、Liから選ばれる1種以上を主成分とし、Bサイト元素は、Nb、Sb、Taから選ばれる1種以上を主成分とする)で表される化合物がある(請求項4)。
上記一般式(1)において、Aサイト及び/又はBサイトには、上述の主成分元素以外にも後述の添加元素を副成分として含有させることもできる。
また、上記一般式(1)で表される化合物としては、例えばニオブ酸カリウムナトリウム(K1-yNay)NbO3を基本組成とし、Aサイト元素(K、Na)の一部が所定量のLiで置換された化合物、あるいはBサイト元素(Nb)の一部が所定量のTa及び/又はSbで置換された化合物、あるいはAサイト元素(K、Na)の一部が所定量のLiで置換されると共にBサイト元素(Nb)の一部が所定量のTa及び/又はSbで置換された化合物等がある。
また、上記等方性ペロブスカイト型化合物は、一般式(2):{Lix(K1-yNay)1-x}(Nb1-z-wTazSbw)O3(但し、0≦x≦0.2、0≦y≦1、0≦z≦0.4、0≦w≦0.2、x+z+w>0)で表されることが好ましい(請求項5)。
この場合には、圧電特性や誘電特性等が優れた上記結晶配向セラミックスを製造することができる。
上記一般式(2)において、「x+z+w>0」は、置換元素として、Li、Ta及びSbの内の少なくとも1つが含まれていればよいことを示す。
また、一般式(2)において、「y」は、等方性ペロブスカイト型化合物に含まれるKとNaの比を表す。上記一般式(2)で表される化合物においては、Aサイト元素として、K又はNaの少なくとも一方が含まれていればよい。
上記一般式(2)におけるyの範囲は、0<y≦1であることがより好ましい。
この場合には、上記一般式(2)で表される化合物において、Naが必須成分となる。そのため、この場合には、上記結晶配向セラミックスの圧電g31定数をさらに向上させることができる。
また、上記一般式(2)におけるyの範囲は、0≦y<1とすることができる。
この場合には、上記一般式(2)で表される化合物において、Kが必須成分となる。そのため、この場合には、上記結晶配向セラミックスの圧電d33定数等の圧電特性をさらに向上させることができる。また、この場合には、K添加量の増加に伴い、より低温での焼結が可能になるため、省エネルギーかつ低コストで上記結晶配向セラミックスを作製することができる。
また、上記一般式(2)において、yは、0.05≦y≦0.75であることがより好ましく、0.20≦y≦0.70であることがさらに好ましい。これらの場合には、上記結晶配向セラミックスの圧電d33定数及び電気解決合計数Kpを一層向上させることができる。さらに一層好ましくは、0.20≦y<0.70がよく、さらには0.35≦y≦0.65がよく、さらには0.35≦y<0.65がより好ましい。また、最も好ましくは、0.42≦y≦0.60がよい。
「x」は、Aサイト元素であるK及び/又はNaを置換するLiの置換量を表す。K及び/又はNaの一部をLiで置換すると、圧電特性等の向上、キュリー温度の上昇、及び/又は緻密化の促進という効果が得られる。
上記一般式(2)におけるxの範囲は、0<x≦0.2であることがより好ましい。
この場合には、上記一般式(2)で表される化合物において、Liが必須成分となるので、上記結晶配向セラミックスは、その作製時の焼成を一層容易に行うことができると共に、圧電特性がより向上し、キュリー温度(Tc)を一層高くすることができる。これは、Liを上記のxの範囲内において必須成分とすることにより、焼成温度が低下すると共に、Liが焼成助剤としての役割を果たし、空孔の少ない焼成を可能にするからである。
xの値が0.2を越えると、圧電特性(圧電d33定数、電気機械結合係数kp、圧電g31定数等)が低下するおそれがある。
また、上記一般式(2)におけるxの値は、x=0とすることができる。
この場合には、上記一般式(2)は、(K1-yNay)(Nb1-z-wTazSbw)O3で表される。そしてこの場合には、上記結晶配向セラミックスを作製する際に、その原料中に例えばLiCO3のように、最も軽量なLiを含有してなる化合物を含まないので、原料を混合し上記結晶配向セラミックスを作製するときに原料粉の偏析による特性のばらつきを小さくすることができる。また、この場合には、高い比誘電率と比較的大きな圧電g定数を実現できる。上記一般式(2)において、xの値は、0≦x≦0.15がより好ましく、0≦x≦0.10がさらに好ましい。
「z」は、Bサイト元素であるNbを置換するTaの置換量を表す。Nbの一部をTaで置換すると、圧電特性等の向上という効果が得られる。上記一般式(2)において、zの値が0.4を越えると、キュリー温度が低下し、家電や自動車用の圧電材料としての利用が困難になるおそれがある。
上記一般式(2)におけるzの範囲は、0<z≦0.4であることが好ましい。
この場合には、上記一般式(2)で表される化合物において、Taが必須成分となる。そのため、この場合には、焼結温度が低下すると共に、Taが焼結助剤の役割を果たし、上記結晶配向セラミックス中の空孔を少なくすることができる。
また、上記一般式(2)におけるzの値は、z=0とすることができる。
この場合には、上記一般式(2)は、{Lix(K1-yNay)1-x}(Nb1-wSbw)O3で表される。そして、この場合には、上記一般式(2)で表される化合物はTaを含ま
ない。そのためこの場合には、上記一般式(2)で表される化合物は、その作製時に高価なTa成分を使用することなく、優れた圧電特性を示すことができる。
上記一般式(2)において、zの値は、0≦z≦0.35がより好ましく、0≦z≦0.30がさらに好ましい。
さらに、「w」は、Bサイト元素であるNbを置換するSbの置換量を表す。Nbの一部をSbで置換すると、圧電特性等の向上という効果が得られる。wの値が0.2を越えると、圧電特性、及び/又はキュリー温度が低下するので好ましくない。
また、上記一般式(2)におけるwの値は、0<w≦0.2であることが好ましい。
この場合には、上記一般式(2)で表される化合物において、Sbが必須成分となる。そのため、この場合には、焼結温度が低下し、焼結性を向上させることができると共に、誘電損失tanδの安定性を向上させることができる。
また、上記一般式(2)におけるwの値は、w=0とすることができる。この場合には、上記一般式(2)は、{Lix(K1-yNay1-x}(Nb1-zTaz)O3で表される。そして、この場合には、上記一般式(2)で表される化合物は、Sbを含まず、比較的高いキュリー温度を示すことができる。上記一般式(2)において、wの値は、0≦w≦0.15であることがより好ましく、0≦w≦0.10であることがさらに好ましい。
なお、上記結晶配向セラミックスは、上記一般式(2)で表される等方性ペロブスカイト型化合物のみからなることが望ましいが、等方性ペロブスカイト型の結晶構造を維持でき、かつ、焼結特性、圧電特性等の諸特性に悪影響を及ぼさないものである限り、他の元素又は他の相が含まれていても良い。
また、上記結晶配向セラミックスにおいては、該結晶配向セラミックスの多結晶体を構成する結晶粒の特定の結晶面Aが配向する。
「特定の結晶面Aが配向する」とは、上記等方性ペロブスカイト型化合物の特定の結晶面Aが互いに平行になるように、各結晶粒が配列していること(以下、このような状態を「面配向」という。)を意味する。
配向している結晶面Aの種類としては、例えば上記等方性ペロブスカイト型化合物の自発分極の方向、結晶配向セラミックスの用途、要求特性等に応じて選択することができる。即ち、上記結晶面Aとしては、擬立方{100}面、擬立方{200}面、擬立方{110}面、擬立方{111}面等から目的に合わせて選択することができる。
好ましくは、上記結晶配向セラミックスの上記結晶面Aは、擬立方{100}面及び/又は擬立方{200}面であることがよい(請求項2)。
この場合には、ペロブスカイト型化合物の分極軸と垂直になり、配向粒子の変位方向と同方向になることから、上記結晶配向セラミックスの変位性能をより向上させることができる。
「擬立方{HKL}」とは、一般に等方性ペロブスカイト型化合物は、正方晶、斜方晶、三方晶等、立方晶からわずかにゆがんだ構造をとるが、その歪みはわずかであるので、立方晶とみなしてミラー指数表示することを意味する。
また、特定の結晶面Aが面配向している場合において、面配向の程度は、次の数1の式で表されるロットゲーリング(Lotgering)法による平均配向度F(HKL)で表すことができる。
Figure 2009114037
数1の式において、ΣI(hkl)は、結晶配向セラミックスについて測定されたすべての結晶面(hkl)のX線回折強度の総和であり、ΣI0(hkl)は、結晶配向セラミックスと同一組成を有する無配向の圧電セラミックスについて測定されたすべての結晶面(hkl)のX線回折強度の総和である。また、Σ’I(HKL)は、結晶配向セラミックスについて測定された結晶学的に等価な特定の結晶面(HKL)のX線回折強度の総和であり、Σ’I0(HKL)は、結晶配向セラミックスと同一組成を有する無配向の圧電セラミックスについて測定された結晶学的に等価な特定の結晶面(HKL)のX線回折強度の総和である。
したがって、多結晶体を構成する各結晶粒が無配向である場合には、平均配向度F(HKL)は0%となる。また、多結晶体を構成するすべての結晶粒の(HKL)面が測定面に対して平行に配向している場合には、平均配向度F(HKL)は100%となる。
上記結晶配向セラミックスにおいて、配向している結晶粒の割合が多くなるほど、高い特性が得られる。
また、配向させる特定の結晶面は、分極軸に垂直な面であることが好ましい。
上記結晶配向セラミックスは、上記等方性ペロブスカイト型化合物を主相とする多結晶体からなるので、非鉛系の圧電セラミックスの中でも高い圧電特性等を示すことができる。また、上記結晶配向セラミックスは、多結晶体を構成する各結晶粒の特定の結晶面が一方向に配向しているので、同一組成を有する無配向焼結体に比して、高い圧電特性等を示すことができる。
上記一般式(2)で表される化合物等のように複雑な組成を有する等方性ペロブスカイト型化合物からなるセラミックスは、例えば目的組成の成分元素を含む単純な組成の複数の化合物を目的の化学量論比になるように混合し、この混合物を成形・仮焼した後に解砕し、次いで、解砕粉を再成形・焼結する方法等によって製造することができる。しかしながら、このような方法では、各結晶粒の特定の結晶面が特定の方向に配向した上記結晶配向セラミックスを製造することは極めて困難である。
本発明においては、上述のごとく、上記異方形状粉末を成形体中に配向させ、この異方形状粉末をテンプレート又は反応性テンプレートとして用いて例えば上記一般式(2)で表される化合物等の等方性ペロブスカイト型化合物の合成及びその焼結を行わせ、これによって多結晶体を構成する各結晶粒の特定の結晶面を一方向に配向させることができる。
次に、本発明の製造方法における各工程(準備工程、混合工程、成形工程、評価工程、及び焼成工程)について説明する。
まず、上記準備工程は、上記異方形状粉末と上記微細粉末とを準備する工程である。
上記異方形状粉末は、ペロブスカイト型化合物よりなる配向粒子からなる。また、配向粒子は、異方形状を有し、作製しようとする上記多結晶体を構成する上記結晶粒の特定の結晶面Aと格子整合性を有する結晶面が配向して配向面を形成している。
上記格子整合性は、格子整合率で表すことができる。
格子整合性を説明するにあたり、例えば上記配向粒子が金属酸化物である場合について説明する。即ち、上記配向粒子における上記配向面の二次元結晶格子において、例えば酸素原子からなる格子点又は金属原子からなる格子点と、上記多結晶体において配向する上記特定の結晶面Aの二次元結晶格子における酸素原子からなる格子点又は金属原子からなる格子点とが、相似関係を有する場合に、両者には格子整合性が存在する。
格子整合率は、上記配向粒子における上記配向面と、上記多結晶体において配向する上記特定の結晶面Aの相似位置における格子寸法との差の絶対値を上記配向粒子における上記配向面の格子寸法で除することにより得られる値を百分率で表すものである。
格子寸法とは、一つの結晶面の二次元結晶格子における格子点間の距離のことであり、X線回折や電子線回折等により結晶構造を解析することにより測定することができる。一般に、格子整合率が小さくなるほど、上記配向粒子は、上記結晶面Aとの格子整合性が高くなり、良好なテンプレートとして機能することができる。
より高配向度の結晶配向セラミックスを得るためには、上記配向粒子の格子整合率は、20%以下が好ましく、さらに好ましくは10%以下がよく、さらにより好ましくは5%以下がよい。
また、上記配向粒子の上記配向面は、上記結晶面Aと同じ面であることが好ましい(請求項3)。
この場合には、上記結晶面Aが配向する結晶配向セラミックスを比較的簡単に作製することができる。具体的には、上記配向粒子としては、擬立方{100}面及び/又は擬立方{200}面が配向した粒子を用いることができる。この場合には、配向軸と分極軸とが一致する正方晶域において、大電界下で発生する変位の温度依存性が改善された結晶配向セラミックスを得ることができる。
また、「異方形状」とは、幅方向又は厚さ方向の寸法に比して、長手方向の寸法が大きいことをいう。具体的には、板状、柱状、鱗片状、針状等の形状が好適な例として挙げられる。また、上記配向面を構成する結晶面の種類は、種々の結晶面の中から目的に応じて選択することができる。
上記配向粒子としては、成形工程の際に一定の方向に配向させることが容易な形状を有しているものを用いることが好ましい。そのため、上記配向粒子の平均アスペクト比は3以上であることが好ましい。平均アスペクト比が3未満の場合には、後述の成形工程において、上記異方形状粉末を一方向に配向させることが困難になる。より高い配向度の上記結晶配向セラミックスを得るためには、上記配向粒子のアスペクト比は5以上であることがより好ましい。なお、平均アスペクト比は、上記配向粒子の最大寸法/最小寸法の平均値である。
また、上記配向粒子の平均アスペクト比が大きくなるほど、成形工程において上記配向粒子を配向させることがより容易になる傾向がある。しかし、平均アスペクト比が過大になると、上記混合工程において、上記配向粒子が破壊されてしまうおそれがある。その結果、成形工程において、上記配向粒子が配向した成形体が得られなくなるおそれがある。したがって、上記配向粒子の平均アスペクト比は、100以下であることが好ましい。より好ましくは50以下、さらには30以下が良い。
また、上記配向粒子はペロブスカイト型化合物からなる。
具体的には、上記配向粒子としては、例えば上記一般式(1)又は上記一般式(2)で表される化合物等のように目的の等方性ペロブスカイト型化合物と同一組成を有するもの等を用いることができる。
また、上記配向粒子は、必ずしも上記一般式(1)又は上記一般式(2)で表される化合物等のように目的の等方性ペロブスカイト型化合物と同一組成を有するものである必要はなく、後述の微細粉末と焼結することにより、目的とする上記一般式(1)又は上記一般式(2)で表される等方性ペロブスカイト型化合物を主成分として生成するものであればよい。したがって、上記配向粒子としては、作製しようとする等方性ペロブスカイト型化合物に含まれる陽イオン元素のうちいずれか1種以上の元素を含む化合物あるいは固溶体等から選ぶことができる。
上述のような条件を満たす配向粒子としては、例えば等方性ペロブスカイト型化合物の一種であるNaNbO3(以下、これを「NN」という。)、KNbO3(以下、これを「KN」という。)、(K1-yNay)NbO3(0<y<1)、又はこれらに所定量のLi、Ta及び/又はSbが置換・固溶したものであって、次の一般式(4)で表される化合物からなるもの等を用いることができる。
{Lix(K1-yNay)1-x}(Nb1-z-wTazSbw)O3 ・・・(4)
(但し、x、y、z、wがそれぞれ0≦x≦1、0≦y≦1、0≦z≦1、0≦w≦1)
上記一般式(4)で表される化合物は、当然に上記一般式(2)で表される等方性ペロブスカイト型化合物と良好な格子整合性を有している。そのため、上記一般式(4)で表され、かつ上記多結晶体における上記結晶面Aと格子整合性を有する面を上記配向面とする上記配向粒子からなる異方形状粉末(以下、これを特に「異方形状粉末A」という)は、上記結晶配向セラミックスを製造するための反応性テンプレートとして機能する。また、上記異方形状粉末Aは、実質的に上記一般式(2)で表される等方性ペロブスカイト型化合物に含まれる陽イオン元素から構成されているので、不純物元素の極めて少ない結晶配向セラミックスを製造することができる。
また、上記異方形状粉末としては、例えば層状ペロブスカイト型化合物からなり、かつ表面エネルギーの小さい結晶面が上記一般式(2)で表される化合物からなる多結晶体における上記結晶面Aと格子整合性を有しているものを用いることができる。層状ペロブスカイト型化合物は、結晶格子の異方性が大きいので、層状ペロブスカイト型化合物からなり、表面エネルギーの小さい結晶面を配向面とする異方形状粉末(以下、これを特に「異方形状粉末B」という。)を比較的容易に合成することができる。
上記異方形状粉末Bの材料として好適な層状ペロブスカイト型化合物の第1の例としては、例えば次の一般式(5)で表されるビスマス層状ペロブスカイト型化合物がある。
(Bi22)2+(Bi0.5Mem-1.5Nbm3m+1)2- ・・・(5)
(但し、mは2以上の整数、MeはLi、K及びNaから選ばれる1種以上)
上記一般式(5)で表される化合物は{001}面の表面エネルギーが他の結晶面の表面エネルギーより小さい。そのため、上記一般式(5)で表される化合物を用いることにより、{001}面を配向面とする上記異方形状粉末Bを容易に合成できる。ここで、{001}面は、上記一般式(5)で表されるビスマス層状ペロブスカイト型化合物の(Bi22)2+層に平行な面である。しかも、上記一般式(5)で表される化合物の{001}面は、一般式(2)で表される等方性ペロブスカイト型化合物の擬立方{100}面との間に極めて良好な格子整合性がある。
そのため、上記一般式(5)で表される化合物からなり、かつ{001}面を配向面とする異方形状粉末Bは、擬立方{100}面を配向面とする結晶配向セラミックスを作製するための反応性テンプレート、即ち上記異方形状粉末として好適である。また、上記一般式(5)で表される化合物を用いるときに、後述の微細粉末の組成を最適化することによって、Aサイト元素として実質的にBiを含まないように調整することができる。このような異方形状粉末Bを用いても、上記一般式(2)で表される等方性ペロブスカイト型化合物を主相とする結晶配向セラミックスを製造することができる。
また、上記異方形状粉末Bの材料として好適な層状ペロブスカイト型化合物の第2の例としては、例えばSr2Nb27がある。Sr2Nb27の{010}面は、その表面エネルギーが他の結晶面の表面エネルギーより小さく、しかも、上記一般式(2)で表される等方性ペロブスカイト型化合物の擬立方{110}面との間に極めて良好な格子整合性がある。そのため、Sr2Nb27からなり、かつ{010}面を配向面とする異方形状粉末は、{110}面を配向面とする結晶配向セラミックスを作製するための反応性テンプレートとして好適である。
異方形状粉末Bの材料として好適な層状ペロブスカイト型化合物の第3の例としては、例えばNa1.5Bi2.5Nb312、Na2.5Bi2.5Nb415、Bi3TiNbO9、Bi3TiTaO9、K0.5Bi2.5Nb29、CaBi2Nb29、SrBi2Nb29、BaBi2Nb29、BaBi3Ti2NbO12、CaBi2Ta29、SrBi2Ta29、BaBi2Ta29、Na0.5Bi2.5Ta29、Bi7Ti4NbO21、Bi5Nb315等がある。これらの化合物の{001}面は、上記一般式(2)で表される等方性ペロブスカイト型化合物の擬立方{100}面と良好な格子整合性を有している。そのため、これらの化合物からなり、かつ{001}面を配向面とする異方形状粉末は、擬立方{100}面を配向面とする結晶配向セラミックスを作製するための反応性テンプレートとして好適である。
異方形状粉末Bの材料として好適な層状ペロブスカイト型化合物の第4の例としては、例えばCa2Nb27、Sr2Ta27等がある。これらの化合物の{010}面は、上記一般式(2)で表される等方性ペロブスカイト型化合物の擬立方{110}面と良好な格子整合性を有している。そのため、これらの化合物からなり、かつ{010}面を配向面とする異方形状粉末は、擬立方{110}面を配向面とする結晶配向セラミックスを作製するための反応性テンプレートとして好適である。
次に、上記異方形状粉末の製造方法について説明する。
所定の組成、平均粒径及び/又はアスペクト比を備えた層状ペロブスカイト型化合物からなる異方形状粉末(即ち、上記異方形状粉末B)は、その成分元素を含む酸化物、炭酸塩、硝酸塩等を原料(以下、これを「異方形状粉末生成原料」という。)とし、この異方形状粉末生成原料を液体又は加熱により液体となる物質と共に加熱することにより容易に製造することができる。
上記異方形状粉末生成原料を原子の拡散が容易な液相中で加熱すると、表面エネルギーの小さい面(例えば上記一般式(5)で表される化合物の場合は{001}面)が優先的に発達した異方形状粉末Bを容易に合成することができる。この場合、異方形状粉末Bの平均アスペクト比及び平均粒径は、合成条件を適宜選択することにより、制御することができる。
異方形状粉末Bの製造方法としては、例えば上記異方形状粉末生成原料に適当なフラックス(例えば、NaCl、KCl、NaClとKClとの混合物、BaCl2、KF等)
を加えて所定の温度で加熱する方法(フラックス法)や、作製しようとする異方形状粉末Bと同一組成を有する不定形粉末をアルカリ水溶液と共にオートクレーブ中で加熱する方法(水熱合成法)等が好適な例としてあげられる。
一方、上記一般式(4)で表される化合物は、結晶格子の異方性が極めて小さいので、一般式(4)で表される化合物からなり、かつ特定の結晶面を配向面とする上記異方形状粉末(即ち、上記異方形状粉末A)を直接合成するのは困難である。しかしながら、上記異方形状粉末Aは、上述の異方形状粉末Bを反応性テンプレートとして用いて、これと所定の条件を満たす後述の反応原料Bとを、フラックス中で加熱することにより製造することができる。
なお、異方形状粉末Bを反応性テンプレートとして用いて異方形状粉末Aを合成する場合には、反応条件を最適化すれば、結晶構造の変化のみが起こり、粉末形状の変化はほとんど生じない。
成形時に一方向に配向させることが容易な異方形状粉末Aを容易に合成するためには、その合成に使用する異方形状粉末Bもまた、成形時に一方向に配向させることが容易な形状を有していることが好ましい。
すなわち、上記異方形状粉末Bを反応性テンプレートとして用いて、異方形状粉末Aを合成する場合においても、異方形状粉末Aの平均アスペクト比は、少なくとも3以上が好ましく、より好ましくは5以上、さらに好ましくは10以上がよい。また、後工程における粉砕を抑制するためには、平均アスペクト比は、100以下であることが好ましい。
上記の「反応原料B」とは、上記異方形状粉末Bと反応して、少なくとも上記一般式(4)で表される化合物からなる異方形状粉末Aを生成するものをいう。この場合、反応原料Bは、上記異方形状粉末Bとの反応によって、上記一般式(4)で表される化合物のみを生成するものであってもよく、また、上記一般式(4)で表される化合物と余剰成分の双方を生成するものであってもよい。ここで、「余剰成分」とは、目的とする上記一般式(4)で表される化合物以外の物質をいう。また、異方形状粉末Bと反応原料Bによって余剰成分が生成する場合、余剰成分は、熱的又は化学的に除去することが容易なものからなることが好ましい。
上記反応原料Bの形態としては、例えば酸化物粉末、複合酸化物粉末、炭酸塩、硝酸塩、シュウ酸塩等の塩、アルコキシド等を用いることができる。また、反応原料Bの組成は、作製しようとする上記一般式(4)で表される化合物の組成、及び上記異方形状粉末Bの組成によって決定することができる。
例えば、上記一般式(5)で表されるビスマス層状ペロブスカイト型化合物の1種であるBi2.5Na0.5Nb29(以下、これを「BINN2」という。)からなる異方形状粉末Bを用いて、上記一般式(4)で表される化合物の一種であるNaNbO3(NN)からなる異方形状粉末Aを合成する場合、上記反応原料Bとしては、Naを含む化合物(酸化物、水酸化物、炭酸塩、硝酸塩等)を用いることができる。
このような組成を有する異方形状粉末B及び反応原料Bに対して、適当なフラックス(例えば、NaCl、KCl、NaClとKClとの混合物、BaCl2、KF等)を1重量%〜500重量%加えて、共晶点・融点に加熱すると、NNとBi23とを主成分とする余剰成分が生成する。Bi23は、融点が低く、酸にも弱いので、得られた反応物から湯洗等によりフラックスを取り除いた後、これを高温で加熱するか、あるいは、酸洗浄を行えば、{100}面を配向面とするNNからなる上記異方形状粉末Aを得ることができる。
また、例えば、BINN2からなる上記異方形状粉末Bを用いて、上記一般式(4)で表される化合物の一種である(K0.5Na0.5)NbO3(以下、これを「KNN」という。)からなる異方形状粉末Aを合成する場合には、上記反応原料Bとして、Naを含む化合物(酸化物、水酸化物、炭酸塩、硝酸塩等)及びKを含む化合物(酸化物、水酸化物、炭酸塩、硝酸塩等)、又はNa及びKの双方を含む化合物を用いればよい。
このような組成を有する異方形状粉末B及び反応原料Bに対して、適当なフラックスを1重量%〜500重量%加えて、共晶点・融点に加熱すると、KNNとBi23とを主成分とする余剰成分が生成するので、得られた反応物からフラックス及びBi23を除去すれば、{100}面を配向面とするKNNからなる異方形状粉末Aを得ることができる。
上記異方形状粉末Bと上記反応原料Bとの反応によって、上記一般式(4)で表される化合物のみを生成させる場合も同様であり、所定の組成を有する異方形状粉末Bと所定の組成を有する反応原料Bとを適当なフラックス中で加熱すればよい。これにより、フラックス中において、目的とする組成を有する上記一般式(4)で表される化合物を生成することができる。また、得られた反応物からフラックスを取り除けば、上記一般式(4)からなり、かつ特定の結晶面を配向面とする異方形状粉末Aを得ることができる。
上記一般式(4)で表される化合物は、上述のごとく、結晶格子の異方性が小さいので、異方形状粉末Aを直接合成することは困難である。また、任意の結晶面を配向面とする異方形状粉末Aを直接合成することも困難である。
これに対し、層状ペロブスカイト型化合物は、結晶格子の異方性が大きいので、異方形状粉末を直接合成することが容易にできる。また、層状ペロブスカイト型化合物からなる異方形状粉末の配向面は、上記一般式(4)で表される化合物の特定の結晶面との間に格子整合性を有しているものが多い。さらに、上記一般式(4)で表される化合物は、層状ペロブスカイト型化合物に比べて熱力学的に安定である。
そのため、層状ペロブスカイト型化合物からなり、かつその配向面が上記一般式(4)で表される化合物の特定の結晶面と格子整合性を有する異方形状粉末Bと上記反応原料Bとを、適当なフラックス中で反応させると、上記異方形状粉末Bが反応性テンプレートとして機能することができる。その結果、上記異方形状粉末Bの配向方位を継承した、上記一般式(4)で表される化合物からなる異方形状粉末Aを容易に合成することができる。
また、上記異方形状粉末B及び上記反応原料Bの組成を最適化すると、上記異方形状粉末Bに含まれていたAサイト元素(以下、これを「余剰Aサイト元素」という。)が余剰成分として排出されると共に、余剰Aサイト元素を含まない、上記一般式(4)で表される化合物からなる異方形状粉末Aが生成する。
特に、上記異方形状粉末Bが上記一般式(5)に示すビスマス層状ペロブスカイト型化合物からなる場合には、Biが余剰Aサイト元素として排出され、Bi23を主成分とする余剰成分が生成する。そのため、この余剰成分を熱的又は化学的に除去すれば、実質的にBiを含まず、上記一般式(4)で表される化合物からなり、かつ特定の結晶面を配向面とする異方形状粉末Aを得ることができる。
上記配向粒子は、一般式(3)ABO3で表される等方性ペロブスカイト型化合物からなり、上記一般式(3)におけるAサイト元素はK、Na、Liから選ばれる1種以上を主成分とし、上記一般式(3)におけるBサイト元素は、Nb、Sb、Taから選ばれる1種以上を主成分とすることが好ましい(請求項6)。
この場合には、上記配向粒子を用いることにより、非鉛系の中でも相対的に高い圧電特性を示す等方性ペロブスカイト型ニオブ酸カリウムナトリウム系の結晶配向セラミックスを作製できる。
より好ましくは、上記配向粒子は、上記一般式(4)で表される化合物からなることが好ましい。
この場合には、より配向度の高い結晶配向セラミックスを作製することができる。
即ち、上述のごとく、上記一般式(4)で表される化合物は、上記一般式(2)で表される化合物と良好な格子整合性を有している。そのため、上記一般式(4)で表され、かつ特定の結晶面を上記配向面とする上記配向粒子からなる上記異方形状粉末は、上記結晶配向セラミックスを製造するための良好な反応性テンプレートとして機能することができる。
次に、上記微細粉末は、上記異方形状粉末の1/3以下の粒径を有する。
上記微細粉末の粒径が上記異方形状粉末の粒径の1/3を超える場合には、上記成形工程において、上記異方形状粉末の上記配向面が略同一の方向に配向するように、上記原料混合物を成形することが困難になるおそれがある。より好ましくは、1/4以下がよく、さらには1/5以下がよい。
上記微細粉末と上記異方形状粉末との粒径の比較は、上記微細粉末の平均粒径と上記異方形状粉末の平均粒径とを比較することによって行うことができる。なお、上記異方形状粉末の粒径及び上記微細粉末の粒径は、いずれも最も長尺の径のことをいう。
上記微細粉末の組成は、上記異方形状粉末の組成、及び作製しようとする例えば一般式(1)又は(2)で表される化合物等の等方性ペロブスカイト型化合物の組成に応じて決定できる。また、上記微細粉末としては、例えば酸化物粉末、複合酸化物粉末、水酸化物粉末、あるいは炭酸塩、硝酸塩、主酸塩等の塩、あるいはアルコキシド等を用いることができる。
上記微細粉末としては、上記異方形状粉末と共に焼結させることにより該異方形状粉末と反応して、例えば上記一般式(1)又は上記一般式(2)で表される化合物等のように目的の等方性ペロブスカイト型化合物を生成するものを用いることができる。
また、上記異方形状粉末と上記微細粉末とは異なる組成からなり、上記焼成工程においては、上記異方形状粉末と上記微細粉末とが化学反応を起こすことにより上記等方性ペロブスカイト型化合物を生成することが好ましい(請求項7)。
この場合には、上述のごとく、複雑な組成の結晶配向セラミックスを簡単に作製することができる。
また、上記微細粉末は、上記異方形状粉末との反応によって、目的の等方性ペロブスカイト型化合物のみを生成するものであってもよく、あるいは目的の等方性ペロブスカイト型化合物と余剰成分との双方を生成するものであってもよい。上記異方形状粉末と上記第微細粉末との反応によって余剰成分が生成する場合には、該余剰成分は熱的又は化学的に除去することが容易なものであることが好ましい。
次に、上記混合工程においては、上記微細粉末と上記異方形状粉末とを混合して原料混合物を作製する。
上記混合工程においては、所定の比率で配合された上記異方形状粉末、及び上記微細粉末に対して、さらにこれらの物質の反応によって得られる等方性ペロブスカイト型化合物と同一組成の化合物からなる不定形の微粉(以下、これを「化合物微粉」という。)を添加することができる。また、例えばCuO等の焼結助剤を添加することもできる。上記化合物微粉や上記焼結助剤を添加すると、焼結体の緻密化がさらに容易になるという利点がある。
また、上記化合物微粉を配合する場合には、該化合物微粉の配合比率が過大になると、必然的に原料全体に占める上記異方形状粉末の配合比率が小さくなり、特定の結晶面の配向度が低下するおそれがある。したがって、上記化合物微粉の配合比率は、要求される焼結体密度及び配向度に応じて最適な配合比率を選択することが好ましい。
上記一般式(1)で表される等方性ペロブスカイト型化合物を作製する場合には、上記異方形状粉末の配合比率は、上記異方形状粉末中の1つ乃至複数の成分元素により、上記一般式(1)のAサイトが占有される比率が、0.01〜70at%となるようにすることが好ましく、より好ましくは、0.1〜50at%がよい。さらに好ましくは、1〜10at%がよい。ここで、「at%」とは、原子の数の割合を100分率で示したものである。
また、上記原料混合物には、周期律表における2〜15族に属する金属元素、半金属元素、遷移金属元素、貴金属元素、及びアルカリ土類金属元素から選ばれる1種以上の添加元素を含有させることが好ましい(請求項8)。
この場合には、上記添加元素を含有する多結晶体からなる上記結晶配向セラミックスを作製することができる。これにより、結晶配向セラミックスの圧電d33定数、電気機械結合係数Kp、圧電g31定数等の圧電特性、比誘電率、誘電損失等の誘電特性を向上させることができる。上記添加元素は、上記一般式(1)で表される化合物のAサイトやBサイトに対して、置換添加されていても良いが、外添加されて上記一般式(1)で表される化合物の粒内又は粒界中に存在することもできる。
上記原料混合物に上記添加元素を含有させる具体的な方法としては、例えば次のような方法がある。
即ち、上記添加元素は、上記準備工程において、上記異方形状粉末を合成する際に添加することができる(請求項9)。
また、上記添加元素は、上記準備工程において、上記微細粉末を合成する際に添加することができる(請求項10)。
また、上記添加元素は、上記混合工程において、上記微細粉末及び上記異方形状粉末と共に添加することができる(請求項11)。
このような方法によって上記添加元素を添加することにより、上記添加元素を含有する上記原料混合物を簡単に得ることができる。そして、該原料混合物を成形及び焼成することにより、上記添加元素を含有する多結晶体からなる上記結晶配向セラミックスを得ることができる。
上記添加元素としては、具体的には、例えばMg、Ca、Sr、Ba、Sc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Y、Zr、Mo、Hf、W、Re、Pd、Ag、Ru、Rh、Pt、Au、Ir、Os、B、Al、Ga、In、Si、Ge、Sn、及びBi等がある。
また、上記添加元素は、添加元素単体で添加されていても良いが、上記添加元素を含む酸化物や化合物として添加されていても良い。
また、上記添加元素は、上記焼成工程後に得られる上記一般式(1)で表される上記等方性ペロブスカイト型化合物1molに対して、0.0001〜0.15molとなるような割合で添加することが好ましい(請求項12)。
上記添加元素が0.0001mol未満の場合には、上記添加元素による上記圧電特性等の向上効果を充分に得られないおそれがある。一方、0.15molを超える場合には、上記結晶配向セラミックスの圧電特性や誘電特性がかえって低下するおそれがある。
また、上記混合工程においては、上記焼成工程において上記等方性ペロブスカイト型化合物におけるAサイト元素又は/及びBサイト元素のいずれか1種以上の元素に対して、上記添加元素が0.01〜15at%の割合で置換添加されるように、上記添加元素の混合割合を調整することが好ましい(請求項13)。
この場合には、上記添加元素が上記等方性ペロブスカイト型化合物に置換添加された上記結晶配向セラミックスを得ることができる。かかる結晶配向セラミックスは、より一層優れた圧電d33定数や電気機械結合係数Kp等の圧電特性、及びより一層優れた比誘電率ε33T/ε0等の誘電特性を示すことができる。
上記添加元素が0.01at%未満の場合には、上記結晶配向セラミックスの圧電特性や誘電特性の向上効果が充分に得られないおそれがある。一方、15at%を超える場合には、上記結晶配向セラミックスの圧電特性や誘電特性がかえって低下するおそれがある。より好ましくは、0.01〜5at%がよく、さらに好ましくは、0.01〜2at%がよく、さらにより好ましくは、0.05〜2at%がよい。
ここで、「at%」とは、上記一般式(1)で表される化合物におけるLi、K、Na、Nb、Ta、及びSbの原子の数に対する置換された原子の数の割合を100分率で示したものである。
上記混合工程において、上記異方形状粉末、上記微細粉末、並びに必要に応じて配合される化合物微粉及び焼結助剤の混合は、乾式で行ってもよく、あるいは、水、アルコール等の適当な分散媒を加えて湿式で行ってもよい。さらにこのとき、必要に応じてバインダ、可塑剤、及び分散材等から選ばれる1種以上を加えることもできる。
次に、上記成形工程について説明する。
上記成形工程は、上記異方形状粉末の上記配向面が略同一の方向に配向するように、上記原料混合物を成形して成形体を作製する工程である。
成形方法については、上記異方形状粉末を配向させることが可能な方法であればよい。上記異方形状粉末を面配向させる成形方法としては、具体的にはドクターブレード法、プレス成形法、圧延法等が好適な例としてあげられる。
また、上記異方形状粉末が面配向した成形体(以下、これを適宜「面配向成形体」という。)の厚さを増したり、配向度を上げるために、面配向成形体に対し、さらに積層圧着、プレス、圧延等の処理(以下、これを適宜「面配向処理」という。)を行うことができる。
この場合には、上記面配向成形体に対して、いずれか1種類の面配向処理を行うこともできるが、2種以上の面配向処理を行うこともできる。また、上記面配向成形体に対して、1種類の面配向処理を繰り返し行うこともでき、また、2種以上の面配向処理をそれぞれ複数回繰り返し行うこともできる。
また、上記成形工程においては、上記成形体を厚み30μm以上のテープ状に成形すると共に、該成形体の表面と裏面とにおける上記成形体配向度の差を10%以下にすることが好ましい。
厚みが30μm未満の場合には、作製時における成形体の取り扱いが非常に困難になるおそれがある。また、配向度の差が10%を超えると、焼成工程後に得られる結晶配向セラミックス内部の配向度が大きくばらつき、良好な特性が得られなくなるおそれがある。より好ましくは上記成形体配向度の差は5%以下がよく、さらにより好ましくは3%以下がよい。
次に、上記評価工程においては、上記成形体内における上記配向粒子の上記配向面について、ロットゲーリング法による配向度及びロッキングカーブ法による半値幅(FWHM)を測定し、上記配向度が80%以上かつ上記半値幅(FWHM)が15°以下である上記成形体を選択する。
上記成形体における配向度が80%未満の場合又は上記成形体における半値幅が15°を越える場合には、焼結によって得られる結晶配向セラミックスの配向度が急激に低下するおそれがある。逆に、配向度80%以上かつ半値幅15°以下であれば、高い配向度の結晶配向セラミックスを確実に得ることができる。
上記成形体における配向度は、結晶配向セラミックスの配向度と同様に数1の式で表されるロットゲーリング(Lotgering)法による平均配向度F(HKL)で表すことができる。
但し、数1の式において、ΣI(hkl)は、成形体中の配向粒子について測定されたすべての結晶面(hkl)のX線回折強度の総和であり、ΣI0(hkl)は、配向粒子と同一組成を有するが、形状が等方的で、各粒子の結晶軸がランダムな状態で集合した微粉末について測定されたすべての結晶面(hkl)のX線回折強度の総和である。また、Σ’I(HKL)は、配向粒子について測定された結晶学的に等価な特定の結晶面(HKL)のX線回折強度の総和であり、Σ’I0(HKL)は、配向粒子と同一組成を有するが、形状が等方的で、各粒子の結晶軸がランダムな状態で集合した微粉末について測定された結晶学的に等価な特定の結晶面(HKL)のX線回折強度の総和である。
また、上記成形体における半値幅は、ロッキングカーブ法により得ることができる。即ち、上記成形体中の上記配向粒子における特定の上記配向面に由来するピーク位置付近にθ角を固定してX線回折測定を行う。次いで、得られたX線回折パターン(山形波形)について、その最大強度が半分になる強度におけるピーク幅を求め、これを半値幅とする。
次に、上記焼成工程について説明する。
上記焼成工程は、上記成形体を加熱し、上記異方形状粉末と上記微細粉末とを焼結させる工程である。上記焼成工程においては、上記成形体を加熱することにより焼結が進行し、等方性ペロブスカイト型化合物を主相とする多結晶体からなる結晶配向セラミックスを作製する。このとき、上記異方形状粉末と上記微細粉末とを反応させて、例えば上記一般式(1)又は(2)で表される上記等方性ペロブスカイト型化合物を生成させることができる。また、上記焼成工程においては、上記異方形状粉末及び/又は微細粉末の組成によっては、余剰成分も同時に生成する。
上記焼成工程における加熱温度は、反応及び/又は焼結が効率よく進行し、かつ目的とする組成を有する反応物が生成するように、使用する異方形状粉末、微細粉末、作製しようとする結晶配向セラミックスの組成等に応じて最適な温度を選択することができる。
例えば、上記異方形状粉末として上述のKNN組成を有する上記異方形状粉末Aを用いて、上記一般式(2)で表される化合物からなる結晶配向セラミックスを作製する場合には、上記焼成工程における加熱は、温度900℃〜1300℃で行うことができる。この温度範囲においてさらに最適な加熱温度は、目的物質である上記一般式(2)で表される化合物の組成に応じて決定できる。さらに、加熱時間は、所望の焼結体密度が得られるように、加熱温度に応じて最適な時間を選択することができる。
また、上記異方形状粉末と上記微細粉末との反応によって余剰成分が生成する場合には、焼結体中に余剰成分を副相として残留させることができる。また、焼結体から余剰成分を除去することもできる。余剰成分を除去する場合には、その方法として、上述のごとく、例えば熱的に除去する方法や化学的に除去する方法等がある。
熱的に除去する方法としては、例えば上記一般式(2)で表される化合物と余剰成分とが生成した焼結体(以下、これを「中間焼結体」という。)を所定温度で加熱し、余剰成分を揮発させる方法がある。具体的には、上記中間焼結体を減圧下もしくは酸素中において、余剰成分の揮発が生じる温度で長時間加熱する方法が好適な例として挙げられる。
余剰成分を熱的に除去する際の加熱温度は、余剰成分の揮発が効率よく進行し、かつ副生成物の生成が抑制されるように、上記一般式(2)で表される化合物及び/又は上記余剰成分の組成に応じて、最適な温度を選択すれすることができる。例えば、余剰成分が酸化ビスマス単相である場合には、加熱温度は、800℃〜1300℃であることが好ましく、さらに好ましくは1000℃〜1200℃がよい。
また、余剰成分を化学的に除去する方法としては、例えば余剰成分のみを浸食させる性質を有する処理液中に中間焼結体を浸漬し、余剰成分を抽出する方法等がある。このとき、使用する処理液としては、上記一般式(2)で表される化合物及び/又は余剰成分の組成に応じて最適なものを選択することができる。例えば、余剰成分が酸化ビスマス単相である場合には、処理液としては、硝酸、塩酸等の酸を用いることができる。特に、硝酸は、酸化ビスマスを主成分とする余剰成分を化学的に抽出する処理液として好適である。
上記異方形状粉末と上記微細粉末との反応、及び余剰成分の除去は、同時、逐次又は個別のいずれのタイミングで行ってもよい。例えば、成形体を減圧下又は真空下において、上記異方形状粉末と微細粉末との反応及び余剰成分の揮発の双方が効率よく進行する温度まで直接加熱し、反応と同時に余剰成分の除去を行うことができる。なお、上記添加元素は、上記異方形状粉末と上記微細粉末との反応の際に、目的物質である上記一般式(2)で表される化合物に置換されたり、上記のごとく結晶粒内又は/及び粒界中に配置される。
また、例えば大気中又は酸素中において、上記異方形状粉末と上記微細粉末との反応が効率よく進行する温度で成形体を加熱して上記中間焼結体を生成した後、引き続き該中間焼結体を減圧下又は真空下において、余剰成分の揮発が効率よく進行する温度で加熱し、余剰成分の除去を行うこともできる。また、上記中間焼結体を生成した後、引き続き、該中間焼結体を大気中又は酸素中において、余剰成分の揮発が効率よく進行する温度で長時間加熱し、余剰成分の除去を行うこともできる。
また、例えば上記中間焼結体を生成し、上記中間焼結体を室温まで冷却した後、該中間焼結体を処理液に浸漬して、余剰成分を化学的に除去することもできる。あるいは、上記中間焼結体を生成し、室温まで冷却した後、再度上記中間焼結体を所定の雰囲気下において所定の温度に加熱し余剰成分を熱的に除去することもできる。
上記成形工程において得られる上記成形体がバインダなどの樹脂成分を含む場合には、上記焼成工程の前に脱脂を主目的とする熱処理を行うことができる。この場合、脱脂の温度は、少なくともバインダ等を熱分解させるのに充分な温度に設定することができる。但し、原料混合物中に揮発しやすい物質(例えばNa化合物等)が含まれる場合には、脱脂は温度500℃以下で行うことが好ましい。
また、上記成形体の脱脂を行うと、該成形体中の上記異方形状粉末の配向度が低下したり、あるいは、上記成形体に体積膨張が発生したりする場合がある。このような場合には、脱脂を行った後、上記熱処理工程を行う前に、上記成形体に対して、さらに静水圧(CIP)処理を行うことが好ましい。この場合には、脱脂に伴う配向度の低下、あるいは、上記成形体の体積膨張に起因する焼結体密度の低下を抑制することができる。
また、上記異方形状粉末と上記微細粉末との反応によって余剰成分が生成する場合において、余剰成分の除去を行う時には、余剰成分を除去した中間焼結体に対し、さらに、静水圧処理を施し、これを再焼成することができる。また、焼結体密度及び配向度をさらに高めるために、上記熱処理工程後の焼結体に対してさらにホットプレスを行うことができる。さらに、上記化合物微粉を添加する方法、CIP処理、及びホットプレス等の方法を組み合わせて用いることもできる。
本発明の製造方法においては、上述のごとく、合成が容易な層状ペロブスカイト型化合物からなる上記異方形状粉末Bを反応性テンプレートに用いて、上記一般式(4)で表される化合物からなる上記異方形状粉末Aを合成し、次いで、該異方形状粉末Aを反応性テンプレートに用いて上記結晶配向セラミックスを作製することができる。この場合には、結晶格子の異方性の小さい上記一般式(2)で表される化合物であっても、任意の結晶面が配向した上記結晶配向セラミックスを容易かつ安価に製造することができる。
しかも、上記異方形状粉末B及び反応原料Bの組成を最適化すれば、余剰Aサイト元素を含まない異方形状粉末Aであっても合成することができる。そのため、Aサイト元素の組成制御が容易になり、従来の方法においては得られない組成の上記一般式(2)で表される化合物を主相とする結晶配向セラミックスを作製することができる。
また、上記異方形状粉末としては、層状ペロブスカイト型化合物からなる異方形状粉末Bを用いることができる。この場合には、上記焼成工程において、焼結と同時に上記一般式(2)で表される化合物を合成することができる。また、上記成形体に配向させる上記異方形状粉末B及びこれと反応させる上記反応原料の組成を最適化すれば、上記一般式(2)で表される目的の化合物を合成すると共に、上記異方形状粉末Bから余剰Aサイト元素を余剰成分として排出することができる。
また、熱的又は化学的な除去が容易な余剰成分を生成する上記異方形状粉末Bを上記異方形状粉末として用いた場合には、実質的に余剰Aサイト元素を含まず、上記一般式(2)で表される化合物からなり、かつ特定の結晶面が配向した結晶配向セラミックスを得ることができる。
(実施例1)
次に、本発明の実施例につき説明する。
本例は、等方性ペロブスカイト型化合物を主相とする多結晶体からなり、該多結晶体を構成する結晶粒の特定の結晶面({100}面)が配向する結晶配向セラミックスを製造する例である。
本例においては、{Li0.065(K0.45Na0.55)0.935}(Nb0.83Ta0.09Sb0.08)O31molに対してMnを0.0005mol外添加した組成を有する結晶配向セラミックスを作製する。
本例の結晶配向セラミックスの製造方法においては、準備工程と、混合工程と、成形工程と、評価工程と、焼成工程とを行う。
準備工程においては、ペロブスカイト型化合物よりなり、上記特定の結晶面Aと格子整合性を有する結晶面が配向して配向面を形成している異方形状の配向粒子からなる異方形状粉末と、上記異方形状粉末の1/3以下の平均粒径を有し、上記異方形状粉末と共に焼結させることにより上記等方性ペロブスカイト型化合物を生成する微細粉末とを準備する。
混合工程においては、上記異方形状粉末と上記微細粉末とを混合することにより原料混合物を作製する。
成形工程においては、上記原料混合物を成形することにより、上記配向粒子の上記配向面が略同一の方向に配向した成形体を作製する。
評価工程においては、上記成形体内における上記配向粒子の上記配向面について、ロットゲーリング法による配向度及びロッキングカーブ法による半値幅(FWHM)を測定し、上記配向度が80%以上かつ上記半値幅(FWHM)が15°以下である上記成形体を選択する。
焼成工程においては、上記成形体を加熱し、上記異方形状粉末と上記微細粉末とを焼結させることにより上記結晶配向セラミックスを得る。
以下、結晶配向セラミックスの製造方法について詳細に説明する。
(1)異方形状粉末の作製
まず、以下のようにして異方形状粉末としてNaNbO3からなる板状粉末を合成した。
即ち、まず、Bi2.5Na3.5Nb518という組成となるような化学量論比で、Bi23粉末、Na2CO3粉末及びNb25粉末を秤量し、これらを湿式混合した。次いで、この原料に対し、フラックスとしてNaClを50wt%添加し、1時間乾式混合した。次に、得られた混合物を白金るつぼに入れ、850℃×1hの条件下で加熱し、フラックスを完全に溶解させた後、さらに1100℃×2hの条件下で加熱し、Bi2.5Na3.5Nb518の合成を行った。なお、昇温速度は、200℃/hrとし、降温は炉冷とした
。冷却後、反応物から湯洗によりフラックスを取り除き、Bi2.5Na3.5Nb518粉末(異方形状粉末B)を得た。得られたBi2.5Na3.5Nb518粉末は、{001}面を配向面(最大面)とする板状粉末であった。
次いで、このBi2.5Na3.5Nb518粉末に、NaNbO3の合成に必要な量のNa2CO3粉末(反応原料)を加えて混合した。次に、この混合物に対して、NaClをフラックスとして用いて白金るつぼ中において950℃×8時間の熱処理を行った。得られた反応物には、NaNbO3粉末に加えてBi23が含まれているので、反応物からフラックスを取り除いた後、これをHNO3(1N)中に入れ、余剰成分として生成したBi23を溶解させた。さらに、この溶液を濾過してNaNbO3からなる粉末(NaNbO3粉末)を分離し、80℃のイオン交換水で洗浄した。このようにして、異方形状粉末としてのNaNbO3粉末を得た(準備工程)。
得られたNaNbO3粉末は、擬立方{100}面を最大面(配向面)とし、平均粒径(最大径の平均)15μmであり、かつアスペクト比が約10〜20程度の板状粉末であった。
(2)微細粉末の作製
純度99.99%以上のNa2CO3粉末、K2CO3粉末、Li2CO3粉末、Nb25粉末、Ta25粉末、Sb25粉末およびMnO2粉末を{Li0.065(K0.45Na0.55)0.935}(Nb0.83Ta0.09Sb0.08)O3+Mn0.0005molの化学量論組成1molから、NaNbO3を0.05mol差し引いた組成となるように秤量し、有機溶剤を媒体としてZrO2ボールで20時間の湿式混合を行った。その後、750℃で5Hr仮焼し、さらに有機溶剤を媒体としてZrO2ボールで20時間の湿式粉砕を行うことで平均粒径が約0.5μmの仮焼物粉体(微細粉末)を得た(準備工程)。
(3)結晶配向セラミックスの作製
上記のようにして作製した微細粉末を秤量し、有機溶剤を媒体にしてZrO2ボールで20時間湿式混合を行った。その後、目的のセラミックス組成におけるNa(Aサイト元素)量のうちの5at%が異方形状粉末のNaから供給されるような配合割合で異方形状粉末を添加し、さらに異方形状粉末と微細粉末との混合物100重量部に対して、バインダとしてのポリビニルブチラール(PVB)樹脂を10重量部、可塑剤としてのフタル酸ブチルを5重量部添加し、インペラミキサーで1時間混合して原料混合物スラリーを得た(混合工程)。
次に、ドクターブレード装置を用いて、混合したスラリーを厚み100μmのテープ状に成形して成形体を得た(成形工程)。この成形体においては、板状の配向粒子からなる異方形状粉末が略同一方向に配向する。
次に、成形体におけるテープ面と平行な面について、ロットゲーリング法による{100}面の平均配向度Fを求めた(評価工程)。平均配向度の測定に当たっては、X線回折装置((株)リガク製のRINT−TTR、測定条件:CuKα線、50kV/300mA)を用いて、X線回折(2θ法)により、任意の角度0〜180°(本例においては20°〜50°)の範囲でX線回折強度を測定し、その結果から上述の数1の式から平均配向度Fを算出した。成形体のX線回折パターンを図1(a)に示す。
図1(a)より知られるごとく、本例の成形体のX線回折パターンにおいては、後述の無配向の成形体のX線回折パターンに比べて、{110}面のピークにほとんど変化はないものの、異方形状粉末の配向粒子{100}面由来のピークが顕著になっている。したがって、{100}面が配向していることがわかる。
なお、ロットゲーリング法による平均配向度Fの算出に用いる無配向の成形体は、次のようにして作製した。
即ち、まず、{Li0.065(K0.45Na0.55)0.935}(Nb0.83Ta0.09Sb0.08)O3+Mn0.0005molという組成になるように、Na2CO3粉末、K2CO3粉末、Li2CO3粉末、Nb25粉末、Ta25粉末、Sb25粉末およびMnO2粉末を秤量し、有機溶剤を媒体としてZrO2ボールで20時間の湿式混合を行った。その後、750℃で5Hr仮焼し、さらに有機溶剤を媒体としてZrO2ボールで20時間の湿式粉砕を行うことで平均粒径が約0.5μmの仮焼物粉体を得た。さらに有機溶剤を媒体にして、上述の各粉末(微細粉末)の合計量100重量部に対して、バインダとしてのポリビニルブチラール(PVB)樹脂を10重量部、可塑剤としてのフタル酸ジブチルを5重量部添加し、ZrO2ボールで湿式混合を行うことにより、原料混合物スラリーを得た。
次に、ドクターブレード装置を用いて、混合したスラリーを厚み100μmのテープ状に成形して無配向の成形体(無配向成形体)を得た。
なお、無配向成型体のX線回折パターンを図1(b)に示す。図1(b)より知られるごとく、無配向成形体のX線回折パターンは、微細粉末のみの無配向状態を示している。これに対し、図1(a)に示す成形体のX線回折パターンは、{100}面及び{200}面のピーク位置において配向粒子由来のピークが顕著になっている。したがって、図1のXRDパターンのピーク強度から、図2のXRDパターンのピーク強度を減算することにより配向粒子のみに相当するピーク(図1(c)参照)が得られる。この配向粒子のXRDのピーク強度と微細粉末のみのXRDのピーク強度とから、ロットゲーリング法により、成形体の配向度を求めた。その結果、成形体の平均配向度は91%であった。
また、成形体について、ロッキングカーブ法により、半値幅を求めた。半値幅は、上述の配向度の測定によって得られたX線回折パターンにおいて、配向粒子{100}面に由来するピークの位置(θ=約22°の位置)にθ角を固定してX線回折(θ法)を行い、得られる山形波形(ロッキングカーブ)の最大強度が半分になる強度におけるピーク幅を求めることにより得ることができる。その結果、半値幅は8°であった。
次いで、得られたテープ状の成形体を積層、圧着及び圧延することにより、厚さ1.5mmの板状の成形体を得た。次いで、得られた板状成形体の脱脂を行った。脱脂は、大気中において、加熱温度:600℃、加熱時間:5時間、昇温速度50℃/h、冷却速度:炉冷という条件で行った。さらに、脱脂後の板状成形体に圧力300MPaでCIP処理を施した。
次に、上記のようにして得られた成形体を焼成し、多結晶体を作製する(焼成工程)。
この焼成工程においては、昇温過程、保持過程、及び冷却過程という3つの過程を行った。
即ち、まず、成形体を酸素雰囲気に制御した加熱炉中に入れ、昇温速度200℃/hで加熱炉内の温度を1105℃まで昇温させた(昇温過程)。次いで、この温度1105℃を5時間保持した(保持過程)。次に、降温速度200℃/hで室温まで冷却した(冷却過程)。
このようにして、結晶配向セラミックスを得た。これを試料E1とする。
この結晶配向セラミックス(試料E1)についても、そのテープ面と平行な面について、ロットゲーリング法による{100}面の平均配向度F(100)を上述の数1の式を用いて算出した。
ロットゲーリング法による結晶配向セラミックスの平均配向度Fの算出に用いる無配向の圧電セラミックス(試料C3)は、上記無配向成形体を上記試料E1と同条件で焼成して作製した。また、試料E1の半値幅を上述の成形体と同様にして測定した。その結果を後述の表1に示す。
また、本例においては、上記試料E1と同様にしてさらに2種類の上記結晶配向セラミックス(試料E2及び試料C1)を作製した。これらについても上記試料E1と同様に、成形体の配向度及び半値幅、結晶配向セラミックスの配向度及び半値幅を測定した。その結果を後述の表1に示す。
また、上記試料E1とは異なる製造条件で結晶配向セラミックス(試料C2)を作製した。
具体的には、試料C2は、混合工程におけるインペラミキサーでの1時間の混合をボールミルでの6時間の混合に変更して作製した。さらに、成形工程においては、テープ状の成形体に成形する際の厚みを200μmに変更して作製した。これらの変更点を除いては、試料C2は、上記試料E1と同様の操作を行うことにより作製した。
このようにして作製した試料C2についても、上記試料E1と同様にして成形体と結晶配向セラミックスについて、配向度及び半値幅をそれぞれ測定した。その結果を後述の表1に示す。
さらに、本例においては、ロットゲーリング法による配向度の測定に用いた無配向の圧電セラミックス(試料C3)の配向度を0%とし、その半値幅を上記試料E1と同様にして求めた。その結果を後述の表1に示す。
次に、上記のようにして作製した試料E1、試料E2、及び試料C1〜試料C3について、嵩密度及び圧電d33定数の測定を行った。
「嵩密度」
まず、各試料の乾燥時の重量(乾燥重量)をそれぞれ測定した。また、各試料を水に浸漬して各試料の開気孔部に水を浸透させた後、各試料の重量(含水重量)を測定した。次いで、含水重量と乾燥重量との差から、各試料中に存在する開気孔の体積を算出した。また、アルキメデス法により、各試料について、開気孔を除いた部分の体積を測定した。次いで、各試料の乾燥重量を、各試料の全体積(開気孔の体積と開気孔を除いた部分の体積との合計)で除することにより、各試料の嵩密度を算出した。その結果を表1に示す。
「圧電d33定数」
まず、各試料を研削、研磨及び加工して、その上下面がテープ面に対して平行で、厚さ0.4〜0.7mm、直径9〜11mmの円盤状試料を作製した。次いで、その上下面にAu焼付電極ペースト(住友金属鉱山(株)製 ALP3057)を印刷し乾燥させたのち、メッシュベルト炉を用いて850℃×10minの焼付を行うことにより、厚さ0.01mmの電極を形成した。さらに、印刷により不可避に形成された電極外周部の数マイクロメートルの盛り上り部を除去する目的で、各円板状試料を円筒研削により直径8.5mmに加工した。その後、上下方向に分極処理を施し全面電極を有する5種類の圧電素子を得た。得られた各圧電素子について、室温において、d33メータ(ZJ-3D:インスティテュート オブ アカデミア シニカ(Institute of Academia Sinica)製により圧電歪定数(d33)を測定した。その結果を表1に示す。
Figure 2009114037
表1より知られるごとく、配向度80%以上かつ半値幅15°以下の成型体を用いて作製した結晶配向セラミックス(試料E1及び試料E2)は、配向度が非常に高く、密度も高い。かかる結晶配向セラミックスは、非常に優れた圧電d33定数を示すことができる。これに対し、配向度が80%未満又は半値幅が15°を超える成型体を用いて作製した結晶配向セラミックス(試料C1〜試料C3)は、配向度が十分ではなく、圧電d33定数も比較的小さくなっていた。また、試料E1、試料E2、試料C1の作製に用いた成形体はほぼ同様の条件で作製したものであるが、配向度だけでなく、半値幅にもばらつきが生じており、その結果、最終的な結晶配向セラミックスの配向度にも差が生じている。したがって、同条件で成形体を作製しても、その配向度や半値幅にはばらつきが生じてしまうことがわかる。
図2に、ロットゲーリング法による成形体の配向度と、ロッキングカーブ法による成形体の半値幅との関係を示す。同図より知られるごとく、ロットゲーリング法による配向度が80%以上の領域において、ロッキングカーブによる半値幅にばらつきが生じていることがわかる。これは、成形体内において、各配向粒子自体の傾きにばらつきがあるためであると考えられる。そこで、ロットゲーリング法による配向度だけでなくロッキングカーブ法による半値幅にも着目することが、配向度の高い結晶配向セラミックスを確実に得るために重要となる。
本例のように、成形体の作製後、配向度80%以上かつ半値幅が15°以下である成形体を選択することにより、非常に高い配向度の結晶配向セラミックス確実に製造することができる。
実施例にかかる、配向粒子が配向した成形体のX線回折パターンを示す説明図(a)、無配向の成形体のX線回折パターンを示す説明図(b)、図(a)のX線回折パターンのピーク強度から図(b)のX線回折パターンのピーク強度を引いた場合のX線回折パターンを示す説明図(c)。 実施例にかかる、ロットゲーリング法による成形体の配向度と、ロッキングカーブ法による成形体の半値幅との関係を示す説明図。 板状粉末と原料粉末を混合してなる従来のスラリーの構成を示す説明図。スラリーの構成を示す説明図。 板状粉末と原料粉末とを有す成形体であって、板状粉末が内部で略一定方向に配向された従来の成形体を示す説明図。 焼結中の成形体において異方形状粉末が成長する様子を示す説明図。 結晶配向セラミックスの構成を示す説明図。
符号の説明
1 異方形状粉末
2 微細粉末
3 原料混合物
4 溶媒
5 成形体
8 結晶配向セラミックス

Claims (13)

  1. 等方性ペロブスカイト型化合物を主相とする多結晶体からなり、該多結晶体を構成する結晶粒の特定の結晶面Aが配向する結晶配向セラミックスの製造方法であって、
    ペロブスカイト型化合物よりなり、上記特定の結晶面Aと格子整合性を有する結晶面が配向して配向面を形成している異方形状の配向粒子からなる異方形状粉末と、該異方形状粉末の1/3以下の平均粒径を有し、上記異方形状粉末と共に焼結させることにより上記等方性ペロブスカイト型化合物を生成する微細粉末とを準備する準備工程と、
    上記異方形状粉末と上記微細粉末とを混合することにより原料混合物を作製する混合工程と、
    上記異方形状粉末の上記配向面が略同一の方向に配向するように、上記原料混合物を成形して成形体を作製する成形工程と、
    上記成形体内における上記配向粒子の上記配向面について、ロットゲーリング法による配向度及びロッキングカーブ法による半値幅(FWHM)を測定し、上記配向度が80%以上かつ上記半値幅(FWHM)が15°以下である上記成形体を選択する評価工程と、
    上記評価工程において選択された上記成形体を加熱し、上記異方形状粉末と上記微細粉末とを焼結させることにより上記結晶配向セラミックスを得る焼成工程とを有することを特徴とする結晶配向セラミックスの製造方法。
  2. 請求項1において、上記結晶配向セラミックスの上記結晶面Aは、擬立方{100}面及び/又は擬立方{200}面であることを特徴とする結晶配向セラミックスの製造方法。
  3. 請求項1又は2において、上記配向粒子の上記配向面は、上記結晶面Aと同じ面であることを特徴とする結晶配向セラミックスの製造方法。
  4. 請求項1〜3のいずれか一項において、上記等方性ペロブスカイト型化合物は、一般式(1)ABO3(ただし、Aサイト元素はK、Na、Liから選ばれる1種以上を主成分とし、Bサイト元素は、Nb、Sb、Taから選ばれる1種以上を主成分とする)で表されることを特徴とする結晶配向セラミックスの製造方法。
  5. 請求項1〜4のいずれか一項において、上記等方性ペロブスカイト型化合物は、一般式(2):{Lix(K1-yNay)1-x}(Nb1-z-wTazSbw)O3(但し、0≦x≦0.2、0≦y≦1、0≦z≦0.4、0≦w≦0.2、x+z+w>0)で表されることを特徴とする結晶配向セラミックスの製造方法。
  6. 請求項1〜5のいずれか一項において、上記配向粒子は、一般式(3)ABO3で表される等方性ペロブスカイト型化合物からなり、上記一般式(3)におけるAサイト元素はK、Na、Liから選ばれる1種以上を主成分とし、上記一般式(3)におけるBサイト元素は、Nb、Sb、Taから選ばれる1種以上を主成分とすることを特徴とする結晶配向セラミックスの製造方法。
  7. 請求項1〜6のいずれか一項において、上記異方形状粉末と上記微細粉末とは異なる組成からなり、上記焼成工程においては、上記異方形状粉末と上記微細粉末とが化学反応を起こすことにより上記等方性ペロブスカイト型化合物を生成することを特徴とする結晶配向セラミックスの製造方法。
  8. 請求項1〜7のいずれか一項において、上記原料混合物に、周期律表における2〜15族に属する金属元素、半金属元素、遷移金属元素、貴金属元素、及びアルカリ土類金属元素から選ばれる1種以上の添加元素を含有させることを特徴とする結晶配向セラミックスの製造方法。
  9. 請求項8において、上記添加元素は、上記準備工程において、上記異方形状粉末を合成する際に添加することを特徴とする結晶配向セラミックスの製造方法。
  10. 請求項8において、上記添加元素は、上記準備工程において、上記微細粉末を合成する際に添加することを特徴とする結晶配向セラミックスの製造方法。
  11. 請求項8において、上記添加元素は、上記混合工程において、上記微細粉末及び上記異方形状粉末と共に添加することを特徴とする結晶配向セラミックスの製造方法。
  12. 請求項8〜11のいずれか一項において、上記添加元素は、上記焼成工程後に得られる上記等方性ペロブスカイト型化合物1molに対して、0.0001〜0.15molとなるような割合で添加することを特徴とする結晶配向セラミックスの製造方法。
  13. 請求項8〜12のいずれか一項において、上記焼成工程において上記等方性ペロブスカイト型化合物におけるAサイト元素又は/及びBサイト元素のいずれか1種以上の元素に対して、上記添加元素が0.01〜15at%の割合で置換添加されるように、上記添加元素の混合割合を調整することを特徴とする結晶配向セラミックスの製造方法。
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