JP2010222193A - 結晶配向セラミックスの製造方法 - Google Patents

結晶配向セラミックスの製造方法 Download PDF

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洋介 鈴木
Masaya Nakamura
雅也 中村
Daisuke Shibata
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Hiroki Fujii
宏紀 藤井
Hirotaka Yamaguchi
裕隆 山口
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Abstract

【課題】緻密性に優れた結晶配向セラミックスを製造することができる結晶配向セラミックスの製造方法を提供すること。
【解決手段】異方形状粉末2と微細粉末3とを混合して原料混合物1を作製し、次いで原料混合物を成形し、焼成してなる結晶配向セラミックスの製造方法である。その製造にあたっては、異方形状粉末2として、平均粒径が2倍以上異なる少なくとも2種類の粉末21、22を採用する。また、異方形状粉末2は、平均粒径が10μm〜14μmの第1配向粒子からなる第1異方形状粉末21と、平均粒径が5μm〜7μmの第2配向粒子からなる第2異方形状粉末22との少なくとも2種類の粉末を主成分とすることが好ましい。また、全異方形状粉末量を100重量部とすると、第1異方形状粉末21を50〜90重量部、及び第2異方形状粉末22を10〜50重量部含有する異方形状粉末2を採用することが好ましい。
【選択図】図1

Description

本発明は、等方性ペロブスカイト型化合物を主相とする多結晶体からなり、該多結晶体を構成する結晶粒の特定の結晶面が配向する結晶配向セラミックスの製造方法に関する。
圧電材料は、圧電効果を有する材料であり、その形態は、単結晶、セラミックス、薄膜、高分子及びコンポジット(複合材)に分類される。これらの圧電材料の中で、特に、圧電セラミックスは、高性能で、形状の自由度が大きく、材料設計が比較的容易なため、広くエレクトロニクスやメカトロニクスの分野で応用されているものである。
圧電セラミックスは、強誘電体セラミックスに電界を印加し、強誘電体の分域の方向を一定の方向にそろえる、いわゆる分極処理を施したものである。圧電セラミックスにおいて、分極処理により自発分極を一定方向にそろえるためには、自発分極の方向が三次元的に取りうる等方性ペロブスカイト型の結晶構造が有利である。そのため、実用化されている圧電セラミックスの大部分は、等方性ペロブスカイト型強誘電体セラミックスである。
等方性ペロブスカイト型強誘電体セラミックスとしては、例えば、Pb(Zr・Ti)O3(以下、これを「PZT」という。)、PZTに対して鉛系複合ペロブスカイトを第三成分として添加したPZT3成分系、BaTiO3、Bi0.5Na0.5TiO3(以下、これを「BNT」という。)等が知られている。
これらの中で、PZTに代表される鉛系の圧電セラミックスは、他の圧電セラミックスに比較して高い圧電特性を有しており、現在実用化されている圧電セラミックスの大部分を占めている。しかしながら、蒸気圧の高い酸化鉛(PbO)を含んでいるために、環境に対する負荷が大きいという問題がある。そのため、低鉛あるいは無鉛でPZTと同等の圧電特性を有する圧電セラミックスが求められている。
一方、BaTiO3セラミックスは、鉛を含まない圧電材料の中では比較的高い圧電特性を有しており、ソナーなどに利用されている。また、BaTiO3と他の非鉛系ペロブスカイト化合物(例えば、BNTなど)との固溶体の中にも、比較的高い圧電特性を示すものが知られている。しかしながら、これらの無鉛圧電セラミックスは、PZTに比して、圧電特性が低いという問題がある。
そこで、この問題を解決するために、従来から種々の提案がなされている。
例えば、非鉛系の中でも相対的に高い圧電特性を示す等方性ペロブスカイト型ニオブ酸カリウムナトリウムや、その固溶体からなる圧電セラミックスがある(特許文献1〜5)。しかし、これらの無鉛圧電セラミックスも、PZT系の圧電セラミックスに比べるとまだ充分な圧電特性を発揮できないという問題があった。
このような背景の中、形状異方性を有し、自発分極が1つの平面内に優先配向するセラミック結晶粒を含む圧電セラミックスを有する圧電素子が開示されている(特許文献7参照)。
等方性ペロブスカイト型化合物の圧電特性などは、一般に結晶軸の方向によって異なることが知られている。そのために、圧電特性などの高い結晶軸を一定の方向に配向させることができれば、圧電特性の異方性を最大限に活用することができ、圧電セラミックスの高性能化が期待できる。実際に、非鉛系強誘電体材料からなる単結晶の中には、優れた圧電特性を示すものがあることが知られている。
特許文献7に開示されているように、所定の組成を有する板状粉末(異方形状粉末)を反応性テンプレートとして特定の結晶面を配向させる方法によれば、特定の結晶面が高い配向度で配向した結晶配向セラミックスを容易かつ安価に製造することができ、優れた圧電特性を有する無鉛の圧電セラミックスを得ることができる。具体的には、板状粉末と反応原料とを混合して得られる混合物をシート成形し、得られるシートを複数枚積層して積層体を作製し、その後、積層体の圧延、脱脂、及び静水圧(CIP)処理等を行い、酸素中で加熱することにより結晶配向セラミックスを作製することができる。
特開2000−313664号公報 特開2003−300776号公報 特開2003−306479号公報 特開2003−327472号公報 特開2003−342069号公報 特開2003−342071号公報 特開2004−7406号公報
しかしながら、板状粉末と反応原料とを焼結させてセラミックスからなる多結晶体(結晶配向セラミックス)を作製する場合においては、板状粉末と反応原料との反応性が異なるため、緻密な多結晶体を得ることが困難である問題があった。その結果、目的組成の結晶配向セラミックスから予想される圧電特性よりも、圧電特性が劣化するという問題があった。
本発明はかかる問題点に鑑みてなされたものであって、緻密性に優れた結晶配向セラミックスを製造することができる結晶配向セラミックスの製造方法を提供しようとするものである。
本発明は、等方性ペロブスカイト型化合物を主相とする多結晶体からなり、該多結晶体を構成する結晶粒の特定の結晶面Aが配向する結晶配向セラミックスの製造方法であって、
ペロブスカイト型化合物よりなり、上記特定の結晶面Aと格子整合性を有する結晶面が配向して配向面を形成する異方形状の配向粒子からなる異方形状粉末を準備する第1準備工程と、
上記異方形状粉末と共に焼結させることにより上記結晶配向セラミックスの目的組成の上記等方性ペロブスカイト型化合物を生成する平均粒径2μm以下の微細粉末を準備する第2準備工程と、
上記異方形状粉末と上記微細粉末とを混合することにより原料混合物を作製する混合工程と、
上記異方形状粉末の上記配向面が略同一の方向に配向するように、上記原料混合物を成形して成形体を作製する成形工程と、
上記成形体を加熱し、上記異方形状粉末と上記微細粉末とを焼結させることにより上記結晶配向セラミックスを得る焼成工程とを有し、
上記第1準備工程においては、上記異方形状粉末として、平均粒径が2倍以上異なる少なくとも2種類の粉末を採用することを特徴とする結晶配向セラミックスの製造方法にある(請求項1)。
本発明において最も注目すべき点は、上記異方形状粉末として、平均粒径が2倍以上異なる少なくとも2種類の粉末を採用することにある。
そのため、上記焼成工程において、上記異方形状粉末と上記微細粉末との反応性を高め、緻密化し易くすることができる。その結果、緻密性に優れた結晶配向セラミックスを製造することができる。
具体的には、上記第1準備工程においては、ペロブスカイト型化合物よりなり、上記特定の結晶面Aと格子整合性を有する結晶面が配向して配向面を形成する異方形状の配向粒子からなる異方形状粉末を準備する。また、上記第2準備工程においては、上記異方形状粉末と共に焼結させることにより上記結晶配向セラミックスの目的組成の上記等方性ペロブスカイト型化合物を生成する平均粒径2μm以下の微細粉末を準備する。
そして、上記第1準備工程においては、平均粒径が互いに2倍以上異なる少なくとも2種類の異方形状粉末を準備するため、少なくとも一方の上記異方形状粉末の平均粒径を、上記微細粉末の平均粒径に近づけることができる。
そのため、上記混合工程及び上記成形工程行い、上記原料混合物の成形体を作製し、上記焼成工程において、上記原料混合物の焼成を行ったときに、上記異方形状粉末と上記微細粉末との反応性を向上させることができる。それ故、上記焼成工程において緻密化が進行し易くなり、緻密性に優れた密度の高い結晶配向セラミックスを得ることができる。
また、少なくとも2種類の異方形状粉末のうち一方の異方形状粉末を上記微細粉末の粒径に近づけることができると共に、もう一方は、より大きな平均粒径の異方形状粉末を採用することができる。そのため、得られる結晶配向セラミックスの配向度を大きく低下させることなく、上記結晶配向セラミックスの緻密性を向上させることができる。
このように、本発明によれば、緻密性に優れた結晶配向セラミックスを製造することができる結晶配向セラミックスの製造方法を提供することができる。
実施例にかかる、平均粒径が2倍以上異なる2種類の異方形状粉末と微細粉末とを混合してなる原料混合物の構成を示す説明図。 実施例にかかる、単一の平均粒径を有する異方形状粉末と微細粉末とを混合してなる原料混合物の構成を示す説明図。
本発明においては、上記第1準備工程、上記第2準備工程、上記混合工程、上記成形工程、及び上記焼成工程を行って、等方性ペロブスカイト型化合物を主相とする多結晶体からなり、該多結晶体を構成する結晶粒の特定の結晶面Aが配向する結晶配向セラミックスを製造する。
上記混合工程においては、一般式(1):{Lix(K1-yNay)1-x}(Nb1-z-wTazSbw)O3(但し、0≦x≦0.2、0≦y≦1、0≦z≦0.4、0≦w≦0.2、x+z+w>0)で表される等方性ペロブスカイト型化合物が生成するように上記異方形状粉末と上記微細粉末とを混合することが好ましい(請求項6)。
この場合には、鉛を含まず、圧電特性や誘電特性に優れた結晶配向セラミックスを製造することができる。
また、上記焼成工程後に得られる実際の結晶配向セラミックスの組成は、上記一般式(1)で表される組成から若干ずれる場合がある。具体的には、例えば上記一般式(1)で表される組成をペロブスカイト構造の組成式ABO3にあてはめたときに、Aサイト原子とBサイト原子の構成比が1:1である組成に対して、Aサイト欠陥が生じてAサイト原子の構成比が5%程度減少した組成になる場合がある。即ち、例えば一般式(1’){Lix(K1-yNay)1-x}a(Nb1-z-wTazSbw)O3(但し、0≦x≦0.2、0≦y≦1、0≦z≦0.4、0≦w≦0.2、x+z+w>0、0.95≦a≦1.0)で表される等方性ペロブスカイト型化合物を得ることができる。好ましくは、0.97≦a≦1.0がよい。
上述の「等方性」とは、擬立方基本格子でペロブスカイト型構造ABO3を表現したとき、軸長a、b、cの相対比が0.8〜1.2であり、軸角α、β、γが80〜100°の範囲にあることを示す。
上記一般式(1)において、「x+z+w>0」は、置換元素として、Li、Ta及びSbの内の少なくとも1つが含まれていればよいことを示す。
また、一般式(1)において、「y」は、等方性ペロブスカイト型化合物に含まれるKとNaの比を表す。上記等方性ペロブスカイト型化合物は、Aサイト元素として、K又はNaの少なくとも一方が含まれていればよい。
上記一般式(1)におけるyの範囲は、0<y≦1であることがより好ましい。
この場合には、上記一般式(1)で表される化合物において、Naが必須成分となる。そのため、この場合には、上記結晶配向セラミックスの圧電g31定数をさらに向上させることができる。
また、上記一般式(1)におけるyの範囲は、0≦y<1とすることができる。
この場合には、上記一般式(1)で表される化合物において、Kが必須成分となる。そのため、この場合には、上記結晶配向セラミックスの圧電d31定数等の圧電特性をさらに向上させることができる。また、この場合には、K添加量の増加に伴い、より低温での焼結が可能になるため、省エネルギーかつ低コストで上記結晶配向セラミックスを作製することができる。
また、上記一般式(1)において、yは、0.05≦y≦0.75であることがより好ましく、0.20≦y≦0.70であることがさらに好ましい。これらの場合には、上記結晶配向セラミックスの圧電d31定数及び電気解決合計数Kpを一層向上させることができる。さらに一層好ましくは、0.20≦y<0.70がよく、さらには0.35≦y≦0.65がよく、さらには0.35≦y<0.65がより好ましい。また、最も好ましくは、0.42≦y≦0.60がよい。
「x」は、Aサイト元素であるK及び/又はNaを置換するLiの置換量を表す。K及び/又はNaの一部をLiで置換すると、圧電特性等の向上、キュリー温度の上昇、及び/又は緻密化の促進という効果が得られる。
上記一般式(1)におけるxの範囲は、0<x≦0.2であることが好ましい。
この場合には、上記一般式(1)で表される化合物において、Liが必須成分となるので、上記結晶配向セラミックスは、その作製時の焼成を一層容易に行うことができると共に、圧電特性がより向上し、キュリー温度(Tc)を一層高くすることができる。これは、Liを上記のxの範囲内において必須成分とすることにより、焼成温度が低下すると共に、Liが焼成助剤としての役割を果たし、空孔の少ない焼成を可能にするからである。
xの値が0.2を越えると、圧電特性(圧電d31定数、電気機械結合係数kp、圧電g31定数等)が低下するおそれがある。
また、上記一般式(1)におけるxの値は、x=0とすることができる。
この場合には、上記一般式(1)は、(K1-yNay)a(Nb1-z-wTazSbw)O3で表される。そしてこの場合には、上記結晶配向セラミックスを作製する際に、その原料中に例えばLiCO3のように、最も軽量なLiを含有してなる化合物を含まないので、原料を混合し上記結晶配向セラミックスを作製するときに原料粉の偏析による特性のばらつきを小さくすることができる。また、この場合には、高い比誘電率と比較的大きな圧電g定数を実現できる。上記一般式(1)において、xの値は、0≦x≦0.15がより好ましく、0≦x≦0.10がさらに好ましい。
「z」は、Bサイト元素であるNbを置換するTaの置換量を表す。Nbの一部をTaで置換すると、圧電特性等の向上という効果が得られる。上記一般式(1)において、zの値が0.4を越えると、キュリー温度が低下し、家電や自動車用の圧電材料としての利用が困難になるおそれがある。
上記一般式(1)におけるzの範囲は、0<z≦0.4であることが好ましい。
この場合には、上記一般式(1)で表される化合物において、Taが必須成分となる。そのため、この場合には、焼結温度が低下すると共に、Taが焼結助剤の役割を果たし、上記結晶配向セラミックス中の空孔を少なくすることができる。
上記一般式(1)におけるzの値は、z=0とすることができる。
この場合には、上記一般式(1)は、{Lix(K1-yNay)1-x}a(Nb1-wSbw)O3で表される。そして、この場合には、上記一般式(1)で表される化合物はTaを含まない。そのためこの場合には、上記一般式(1)で表される化合物は、その作製時に高価なTa成分を使用することなく、優れた圧電特性を示すことができる。
上記一般式(1)において、zの値は、0≦z≦0.35がより好ましく、0≦z≦0.30がさらに好ましい。
さらに、「w」は、Bサイト元素であるNbを置換するSbの置換量を表す。Nbの一部をSbで置換すると、圧電特性等の向上という効果が得られる。wの値が0.2を越えると、圧電特性、及び/又はキュリー温度が低下するので好ましくない。
また、上記一般式(1)におけるwの値は、0<w≦0.2であることが好ましい。
この場合には、上記一般式(1)で表される化合物において、Sbが必須成分となる。そのため、この場合には、焼結温度が低下し、焼結性を向上させることができると共に、誘電損失tanδの安定性を向上させることができる。
また、上記一般式(1)におけるwの値は、w=0とすることができる。この場合には、上記一般式(1)は、{Lix(K1-yNay)1-x}a(Nb1-zTaz)O3で表される。そして、この場合には、上記一般式(1)で表される化合物は、Sbを含まず、比較的高いキュリー温度を示すことができる。上記一般式(1)において、wの値は、0≦w≦0.15であることがより好ましく、0≦w≦0.10であることがさらに好ましい。
また、上記結晶配向セラミックスは、高温から低温になるにつれて、結晶相が立方晶→正方晶(第1の結晶相転移温度=キュリー温度)、正方晶→斜方晶(第2の結晶相転移温度)、斜方結晶→菱面体晶(第3の結晶相転移温度)と変化する。第1の結晶相転移温度より高い温度領域では立方晶となるため変位特性が消滅し、また、第2の結晶相転移温度より低い温度領域では斜方結晶となり、変位ならびに見かけの動的静電容量の温度依存性が大きくなる。従って、第1の結晶相転移温度は使用温度範囲より高く、第2の結晶相転移温度は使用温度範囲より低くすることで使用温度範囲全域にわたって正方晶であることが望ましい。
ところが、上記結晶配向セラミクスの基本組成であるニオブ酸カリウムナトリウム(K1-yNayNbO3)は、「ジャーナル・オブ・アメリカン・セラミック・ソサイエティ“Journal of American Ceramic Society”」、米国、1959年、第42巻[9]p.438−442、ならびに米国特許2976246号明細書によれば、高温から低温になるにつれて、結晶相が立方晶→正方晶(第1の結晶相転移温度=キュリー温度)、正方晶→斜方晶(第2の結晶相転移温度)、斜方結晶→菱面体晶(第3の結晶相転移温度)と変化する。また、「y=0.5」における第1の結晶相転移温度は約420℃、第2の結晶相転移温度は約190℃、第3の結晶相転移温度は約−150℃である。従って、正方晶である温度領域は190〜420℃の範囲であり、一般的な工業製品の使用温度範囲である−40〜160℃と一致しない。
一方、上記結晶配向セラミックスは、基本組成であるニオブ酸カリウムナトリウム(K1-yNayNbO3)に対して、Li、Ta、Sb等の置換元素の量を変化させることにより、第1の結晶相転移温度ならびに第2の結晶相転移温度を自由に変えることができる。
圧電特性が最も大きくなるy=0.4〜0.6において、Li,Ta,Sbの置換量と
結晶相転移温度実測値の重回帰分析を行った結果を下記の式B1、式B2に示す。
式B1及び式B2から、Li置換量は第1の結晶相転移温度を上昇させ、かつ、第2の
結晶相転移温度を低下させる作用を有することがわかる。また、TaならびにSbは第1
の結晶相転移温度を低下させ、かつ、第2の結晶相転移温度を低下させる作用を有するこ
とがわかる。
第1の結晶相転移温度=(388+9x−5z−17w)±50[℃]・・・(式B1)
第2の結晶相転移温度=(190−18.9x−3.9z−5.8w)±50[℃]・・・(式B2)
第1の結晶相転移温度は、圧電性が完全に消失する温度であり、かつその近傍で動的容量が急激に大きくなることから、(製品の使用環境上限温度+60℃)以上が望ましい。第2の結晶相転移温度は、単に結晶相転移する温度であり、圧電性は消失しないため変位、あるいは動的容量の温度依存性に悪影響が出ない範囲に設定すればよいため、(製品の使用環境下限温度+40℃)以下が望ましい。
一方、製品の使用環境上限温度は、用途により異なり、60℃、80℃、100℃、120℃、140℃、160℃などである。製品の使用環境下限温度は−30℃、−40℃などである。
従って、上記式B1に示す第1の結晶相転移温度は120℃以上が望ましいため、「x」、「z」、「w」は(388+9x−5z−17w)+50≧120を満足することが望ましい。
また、式B2に示す第2の結晶相転移温度は、10℃以下が望ましいため、「x」、「z」、「w」は(190−18.9x−3.9z−5.8w)−50≦10を満足することが望ましい。
即ち、上記一般式(1)は、9x−5z−17w≧−318、及び−18.9x−3.9z−5.8w≦−130という関係を満足することが好ましい。
なお、上記結晶配向セラミックスは、例えば上記一般式(1)で表される等方性ペロブスカイト型化合物のみからなることが望ましいが、等方性ペロブスカイト型の結晶構造を維持でき、かつ、焼結特性、圧電特性等の諸特性に悪影響を及ぼさないものである限り、他の元素又は他の相が含まれていても良い。
上記結晶配向セラミックスにおいては、上記多結晶体を構成する結晶粒の特定の結晶面Aが配向する。
「特定の結晶面Aが配向する」とは、上記等方性ペロブスカイト型化合物の特定の結晶面Aが互いに平行になるように、各結晶粒が配列していること(以下、このような状態を「面配向」という。)を意味する。
配向している結晶面Aの種類としては、上記等方性ペロブスカイト型化合物の自発分極の方向、結晶配向セラミックスの用途、要求特性等に応じて選択することができる。即ち、上記結晶面Aは、擬立方{100}面、擬立方{110}面、擬立方{111}面等、目的に合わせて選択することができる。
「擬立方{HKL}」とは、一般に等方性ペロブスカイト型化合物は、正方晶、斜方晶、三方晶等、立方晶からわずかにゆがんだ構造をとるが、その歪みはわずかであるので、立方晶とみなしてミラー指数表示することを意味する。
また、特定の結晶面Aが面配向している場合において、面配向の程度は、次の数1の式で表されるロットゲーリング(Lotgering)法による平均配向度F(HKL)で表すことができる。
Figure 2010222193
数1の式において、ΣI(hkl)は、結晶配向セラミックスについて測定されたすべての結晶面(hkl)のX線回折強度の総和であり、ΣI0(hkl)は、結晶配向セラミックスと同一組成を有する無配向の圧電セラミックスについて測定されたすべての結晶面(hkl)のX線回折強度の総和である。また、Σ’I(HKL)は、結晶配向セラミックスについて測定された結晶学的に等価な特定の結晶面(HKL)のX線回折強度の総和であり、Σ’I0(HKL)は、結晶配向セラミックスと同一組成を有する無配向の圧電セラミックスについて測定された結晶学的に等価な特定の結晶面(HKL)のX線回折強度の総和である。
したがって、多結晶体を構成する各結晶粒が無配向である場合には、平均配向度F(HKL)は0%となる。また、多結晶体を構成するすべての結晶粒の(HKL)面が測定面に対して平行に配向している場合には、平均配向度F(HKL)は100%となる。
上記結晶配向セラミックスにおいて、配向している結晶粒の割合が多くなるほど、高い特性が得られる。例えば、特定の結晶面を面配向させる場合において、高い圧電特性等を得るためには、上記数1の式で表されるロットゲーリング法による平均配向度F(HKL)は、30%以上であることが好ましい。より好ましくは、50%以上がよい。
また、配向させる特定の結晶面は、分極軸に垂直な面であることが好ましく、上記ペロブスカイト型化合物の結晶系が正方晶の場合において、配向させる特定の結晶面は擬立方{100}面が好ましい。この場合には、上記結晶配向セラミックスの圧電特性等をより向上させることができる。
上記結晶配向セラミックスは、上記等方性ペロブスカイト型化合物を主相とする多結晶体からなるので、非鉛系の圧電セラミックスの中でも高い圧電特性等を示すことができる。また、上記結晶配向セラミックスは、多結晶体を構成する各結晶粒の特定の結晶面が一方向に配向しているので、同一組成を有する無配向焼結体に比して、高い圧電特性等を示すことができる。
上記結晶配向セラミックスは、上記第1準備工程と上記第2準備工程と上記混合工程と上記成形工程と上記焼成工程とを行って得ることができる。
上記第1準備工程においては、ペロブスカイト型化合物よりなり、上記特定の結晶面Aと格子整合性を有する結晶面が配向して配向面を形成する異方形状の配向粒子からなる異方形状粉末を準備する。
格子整合性は、格子整合率で表すことができる。
格子整合性を説明するにあたり、例えば上記配向粒子が金属酸化物である場合について説明する。即ち、上記配向粒子における上記配向面の二次元結晶格子において、例えば酸素原子からなる格子点又は金属原子からなる格子点と、上記多結晶体において配向する上記特定の結晶面Aの二次元結晶格子における酸素原子からなる格子点又は金属原子からなる格子点とが、相似関係を有する場合に、両者には格子整合性が存在する。
格子整合率は、上記配向粒子における上記配向面と、上記多結晶体において配向する上記特定の結晶面Aの相似位置における格子寸法との差の絶対値を上記配向粒子における上記配向面の格子寸法で除することにより得られる値を百分率で表すものである。
格子寸法とは、一つの結晶面の二次元結晶格子における格子点間の距離のことであり、X線回折や電子線回折等により結晶構造を解析することにより測定することができる。一般に、格子整合率が小さくなるほど、上記配向粒子は、上記結晶面Aとの格子整合性が高くなり、良好なテンプレートとして機能することができる。
より高配向度の結晶配向セラミックスを得るためには、上記配向粒子の格子整合率は、20%以下が好ましく、さらに好ましくは10%以下がよく、さらにより好ましくは5%以下がよい。
本発明においては、上記異方形状粉末として、平均粒径が2倍以上異なる少なくとも2種類の粉末を採用する。平均粒径の違いが2倍未満の場合には、上記焼成工程において、上記異方形状粉末と上記微細粉末との反応性を充分に向上させることができなくなるおそれがある。その結果、得られる結晶配向セラミックスの緻密性を充分に高めることが困難になる。
また、上記異方形状粉末としては、平均粒径の異なる少なくとも2種のものを採用することができ、3種以上のものを採用することもできる。この場合には、平均粒径が異なる3種以上の異方形状粉末のうち少なくとも2種類の異方形状粉末の平均粒径が互いに2倍以上の関係になっていればよい。
本発明において、「異方形状」とは、幅方向又は厚さ方向の寸法に比して、長手方向の寸法が大きいことをいう。具体的には、板状、柱状、鱗片状、針状等の形状が好適な例として挙げられる。
上記異方形状粉末の平均粒径は、該異方形状粉末の長手方向の長さ(最大寸法)の平均値で表すことができる。
上記配向粒子としては、上記成形工程の際に一定の方向に配向させることが容易な形状を有しているものを用いることが好ましい。そのため、上記配向粒子としては、平均アスペクト比が3以上であることが好ましい。平均アスペクト比が3未満の場合には、後述の成形工程において、上記異方形状粉末を一方向に配向させることが困難になる。より高い配向度の上記結晶配向セラミックスを得るためには、上記配向粒子のアスペクト比は5以上であることがより好ましい。なお、平均アスペクト比は、上記配向粒子の最大寸法/最小寸法の平均値である。
また、上記配向粒子の平均アスペクト比が大きくなるほど、成形工程において上記配向粒子を配向させることがより容易になる傾向がある。しかし、平均アスペクト比が過大になると、上記混合工程において、上記配向粒子が破壊されてしまうおそれがある。その結果、成形工程において、上記配向粒子が配向した成形体が得られなくなるおそれがある。したがって、上記配向粒子の平均アスペクト比は、100以下であることが好ましい。より好ましくは50以下、さらには30以下が良い。
また、上記配向粒子からなる上記異方形状粉末を用いて結晶配向セラミックスを作製する場合には、焼成工程において、上記配向粒子と微細粉末が反応焼結することにより結晶粒子が形成されるため、配向粒子が大きすぎると結晶粒子が大きくなり、得られる結晶配向セラミックスの強度が低下するおそれがある。従って、上記配向粒子の長手方向の最大寸法は、30μm以下であることが好ましい。より好ましくは20μm以下、さらには15μm以下が良い。また、配向粒子が小さすぎると、上記成形工程において、上記異方形状粉末を配向させることが困難になり、上記結晶配向セラミックスの配向度が低下するおそれがある。従って、上記配向粒子の長手方向の最大寸法は、上記微細粉末の平均粒径の3倍以上であることが好ましい。具体的には、例えば2μm超過が好ましく、より好ましくは3μm以上さらには5μm以上が良い。
また、上記第1準備工程においては、上記異方形状粉末の粉砕を行うことにより、平均粒径が異なる少なくとも2種類の上記異方形状粉末を作製することが好ましい(請求項2)。
この場合には、平均粒径の異なる上記異方形状粉末を簡単に作製することができる。
また、上記第1準備工程においては、平均粒径が10μm〜14μmの第1配向粒子からなる第1異方形状粉末と、平均粒径が5μm〜7μmの第2配向粒子からなる第2異方形状粉末との少なくとも2種類の粉末を主成分とする上記異方形状粉末を準備することが好ましい(請求項3)。
この場合には、上記焼結工程後に得られる上記結晶配向セラミックスの緻密性をより向上させつつ配向度を高めることができる。
上記第1配向粒子の平均粒径が10μm未満の場合又は上記第2配向粒子の平均粒径が5μm未満の場合には、上記結晶配向セラミックスの配向度が低下するおそれがある。一方、上記第1配向粒子の平均粒径が14μmを越える場合又は上記第2配向粒子の平均配向度が7μmを越える場合には、上記結晶配向セラミックスの緻密性を向上させることが困難になるおそれがある。
また、上記異方形状粉末としては、上記第1異方形状粉末と上記第2異方形状粉末のみからなる粉末を採用することもできるが、さらに平均粒径の異なる複数の粉末を採用することもできる。この場合においては、平均粒径の異なる全異方形状粉末において上記第1異方形状粉末と上記第2異方形状粉末とが主成分となることが好ましい。
次に、上記第1準備工程においては、全異方形状粉末量を100重量部とすると、上記第1異方形状粉末を50〜90重量部、及び上記第2異方形状粉末を10〜50重量部含有する上記異方形状粉末を作製することが好ましい(請求項4)。
この場合には、優れた緻密性と高い配向度とを兼ね備えた結晶配向セラミックスを製造することができる。
上記第1異方形状粉末が50重量部未満の場合、又は上記第2異方形状粉末が50重量部を越える場合には、上記結晶配向セラミックスの配向度が低下するおそれがある。一方、上記第1異方形状粉末が90重量部を越える場合、又は上記第2異方形状粉末が10重量部未満の場合には、緻密性の向上効果が充分に得られなくなるおそれがある。
また、上記異方形状粉末の上記配向面は、擬立方{100}面であることが好ましい(請求項5)。
この場合には、{100}面が配向する結晶配向セラミックスを容易に製造することができる。かかる結晶配向セラミックスは、優れた圧電特性及び誘電特性を示し、各種圧電素子などに好適に用いることができる。
また、上記配向粒子はペロブスカイト型化合物からなる。
具体的には、上記配向粒子としては、例えば上記一般式(1)で表される化合物等のように目的の等方性ペロブスカイト型化合物と同一組成を有するもの等を用いることができる。
また、上記配向粒子は、必ずしも上記一般式(1)で表される化合物等のように目的の等方性ペロブスカイト型化合物と同一組成を有するものである必要はなく、後述の微細粉末と焼結することにより、目的とする等方性ペロブスカイト型化合物を生成するものであればよい。したがって、上記配向粒子としては、作製しようとする等方性ペロブスカイト型化合物に含まれる陽イオン元素のうちいずれか1種以上の元素を含む化合物あるいは固溶体等から選ぶことができる。
上述のような条件を満たす配向粒子としては、例えば等方性ペロブスカイト型化合物の一種であるNaNbO3(以下、これを「NN」という。)、KNbO3(以下、これを[KN]という。)、若しくは(K1-yNay)NbO3(0<y<1)、又はこれらに所定量のLi、Ta及び/又はSbが置換・固溶したものであって、次の一般式(2)で表される化合物からなるものを用いることができる。
{Lix’(K1-y’Nay’)1-x’}(Nb1-z’-w’Taz’Sbw’)O3 ・・・(2)
(但し、x、y、z、wがそれぞれ0≦x’≦1、0≦y’≦1、0≦z’≦1、0≦w’≦1)
上記一般式(2)で表される化合物は、当然に上記一般式(1)で表される等方性ペロブスカイト型化合物と良好な格子整合性を有している。そのため、上記一般式(2)で表され、かつ上記多結晶体における上記結晶面Aと格子整合性を有する面を上記配向面とする上記配向粒子からなる異方形状粉末(以下、これを特に「異方形状粉末A」という)は、上記結晶配向セラミックスを製造するための反応性テンプレートとして機能する。
また、上記異方形状粉末Aは、実質的に上記一般式(1)で表される等方性ペロブスカイト型化合物に含まれる陽イオン元素から構成されているので、不純物元素の極めて少ない結晶配向セラミックスを製造することができる。これらのなかでも擬立方{100}面を配向面とする上記一般式(2)で表される化合物からなる板状の粒子が、上記配向粒子として好適である。また、擬立方{100}面を配向面とするNNもしくはKNからなる板状の粒子は、特に好適である。
また、上記異方形状粉末としては、例えば層状ペロブスカイト型化合物からなり、かつ表面エネルギーの小さい結晶面が、最終的に得られる上記多結晶体における上記結晶面Aと格子整合性を有しているものを用いることができる。層状ペロブスカイト型化合物は、結晶格子の異方性が大きいので、表面エネルギーの小さい結晶面を配向面とする異方形状粉末(以下、これを特に「異方形状粉末B」という。)を比較的容易に合成することができる。
上記異方形状粉末Bの材料として好適な層状ペロブスカイト型化合物の第1の例としては、例えば次の一般式(3)又は(4)で表されるビスマス層状ペロブスカイト型化合物がある。
(Bi222+(Bi0.5Mem-1.5Nbm3m+12- ・・・(3)
(但し、mは2〜10の整数、MeはLi、K及びNaから選ばれる1種以上)
(Bi22)2+{Bi0.5(KaNa1-a)m-1.5(Nb1-bTab)m3m+1}2- ・・・(4)
(但し、mは2〜10の整数、0≦a≦0.8、0.02≦b≦0.4)
上記一般式(3)及び(4)で表される化合物は{001}面の表面エネルギーが他の結晶面の表面エネルギーより小さいので、これらの化合物を用いることにより、{001}面を配向面とする上記異方形状粉末(異方形状粉末B)を容易に合成できる。ここで、{001}面とは、上記一般式(3)及び(4)で表されるビスマス層状ペロブスカイト型化合物の(Bi222+層に平行な面である。しかも、上記一般式(3)及び(4)で表される化合物の{001}面は、上記一般式(1)で表される等方性ペロブスカイト型化合物の擬立方{100}面との間に極めて良好な格子整合性がある。
そのため、上記一般式(3)又は(4)で表される化合物から得られ、かつ{001}面を配向面とする異方形状粉末Bは、擬立方{100}面を配向面とする結晶配向セラミックスを作製するための反応性テンプレート、即ち上記異方形状粉末として好適である。また、上記一般式(3)又は(4)で表される化合物を用いるときに、後述の微細粉末の組成を最適化することによって、Aサイト元素として実質的にBiを含まないように、上記一般式(1)で表される等方性ペロブスカイト型化合物を主相とする結晶配向セラミックスを製造することができる。
また、上記異方形状粉末Bの材料として好適な層状ペロブスカイト型化合物の第2の例としては、例えばSr2Nb27がある。Sr2Nb27の{010}面は、その表面エネルギーが他の結晶面の表面エネルギーより小さく、しかも、上記一般式(1)で表される等方性ペロブスカイト型化合物の擬立方{110}面との間に極めて良好な格子整合性がある。そのため、Sr2Nb27からなり、かつ{010}面を配向面とする異方形状粉末は、{110}面を配向面とする結晶配向セラミックスを作製するための反応性テンプレートとして好適である。
異方形状粉末Bの材料として好適な層状ペロブスカイト型化合物の第3の例としては、例えばNa1.5Bi2.5Nb312、Na2.5Bi2.5Nb415、Bi3TiNbO9、Bi3TiTaO9、K0.5Bi2.5Nb29、CaBi2Nb29、SrBi2Nb29、BaBi2Nb29、BaBi3Ti2NbO12、CaBi2Ta29、SrBi2Ta29、BaBi2Ta29、Na0.5Bi2.5Ta29、Bi7Ti4NbO21、Bi5Nb315等がある。これらの化合物の{001}面は、上記一般式(1)で表される等方性ペロブスカイト型化合物の擬立方{100}面と良好な格子整合性を有している。そのため、これらの化合物からなり、かつ{001}面を配向面とする異方形状粉末は、擬立方{100}面を配向面とする結晶配向セラミックスを作製するための反応性テンプレートとして好適である。
異方形状粉末Bの材料として好適な層状ペロブスカイト型化合物の第4の例としては、例えばCa2Nb27、Sr2Ta27等がある。これらの化合物の{010}面は、上記一般式(1)で表される等方性ペロブスカイト型化合物の擬立方{110}面と良好な格子整合性を有している。そのため、これらの化合物からなり、かつ{010}面を配向面とする異方形状粉末は、擬立方{110}面を配向面とする結晶配向セラミックスを作製するための反応性テンプレートとして好適である。
次に、上記異方形状粉末の製造方法について説明する。
所定の組成、平均粒径及び/又はアスペクト比を備えた層状ペロブスカイト型化合物からなる異方形状粉末(即ち、上記異方形状粉末B)は、その成分元素を含む酸化物、炭酸塩、硝酸塩等を原料(以下、これを「異方形状粉末生成原料」という。)とし、この異方形状粉末生成原料を液体又は加熱により液体となる物質と共に加熱することにより容易に製造することができる。
上記異方形状粉末生成原料を原子の拡散が容易な液相中で加熱すると、表面エネルギーの小さい面(例えば上記一般式(3)及び(4)で表される化合物の場合は{001}面)が優先的に発達した異方形状粉末Bを容易に合成することができる。この場合、異方形状粉末Bの平均アスペクト比及び平均粒径は、合成条件を適宜選択することにより、制御することができる。
異方形状粉末Bの製造方法としては、例えば上記異方形状粉末生成原料に適当なフラックス(例えば、NaCl、KCl、NaClとKClとの混合物、BaCl2、KF等)を加えて所定の温度で加熱する方法(フラックス法)や、作製しようとする異方形状粉末Bと同一組成を有する不定形粉末をアルカリ水溶液と共にオートクレーブ中で加熱する方法(水熱合成法)等が好適な例としてあげられる。
一方、上記一般式(2)で表される化合物は、結晶格子の異方性が極めて小さいので、一般式(2)で表される化合物からなり、かつ特定の結晶面を配向面とする上記異方形状粉末(即ち、上記異方形状粉末A)を直接合成するのは困難である。しかしながら、上記異方形状粉末Aは、上述の異方形状粉末Bを反応性テンプレートとして用いて、これと所定の条件を満たす後述の反応原料Bとを、フラックス中で加熱することにより製造することができる。
なお、異方形状粉末Bを反応性テンプレートとして用いて異方形状粉末Aを合成する場合には、反応条件を最適化すれば、結晶構造の変化のみが起こり、粉末形態、平均粒径、アスペクト比等の変化はほとんど生じない。
成形時に一方向に配向させることが容易な異方形状粉末Aを容易に合成するためには、その合成に使用する異方形状粉末Bもまた、成形時に一方向に配向させることが容易な形状を有していることが好ましい。
すなわち、上記異方形状粉末Bを反応性テンプレートとして用いて、異方形状粉末Aを合成する場合においても、異方形状粉末Aの平均アスペクト比は、少なくとも3以上が好ましく、より好ましくは5以上、さらに好ましくは10以上がよい。また、後工程における粉砕を抑制するためには、平均アスペクト比は、100以下であることが好ましい。
上記の「反応原料B」とは、上記異方形状粉末Bと反応して、少なくとも上記一般式(2)で表される化合物からなる異方形状粉末Aを生成するものをいう。この場合、反応原料Bは、上記異方形状粉末Bとの反応によって、上記一般式(2)で表される化合物のみを生成するものであってもよく、また、上記一般式(2)で表される化合物と余剰成分の双方を生成するものであってもよい。ここで、「余剰成分」とは、目的とする上記一般式(2)で表される化合物以外の物質をいう。また、異方形状粉末Bと反応原料Bによって余剰成分が生成する場合、余剰成分は、熱的又は化学的に除去することが容易なものからなることが好ましい。
上記反応原料Bの形態としては、例えば酸化物粉末、複合酸化物粉末、炭酸塩、硝酸塩、シュウ酸塩等の塩、アルコキシド等を用いることができる。また、反応原料Bの組成は、作製しようとする上記一般式(2)で表される化合物の組成、及び上記異方形状粉末Bの組成によって決定することができる。
例えば、上記一般式(3)で表されるビスマス層状ペロブスカイト型化合物の1種であるBi2.5Na0.5Nb29(以下、これを「BINN2」という。)からなる異方形状粉末Bを用いて、上記一般式(2)で表される化合物の一種であるNNからなる異方形状粉末Aを合成する場合、上記反応原料Bとしては、Naを含む化合物(酸化物、水酸化物、炭酸塩、硝酸塩等)を用いることができる。この場合、1molのBINN2に対して、Na原子1.5molに相当するNa含有化合物を上記反応原料Bとして添加すればよい。
このような組成を有する異方形状粉末B及び反応原料Bに対して、適当なフラックス(例えば、NaCl、KCl、NaClとKClとの混合物、BaCl2、KF等)を1重量%〜500重量%加えて、共晶点・融点に加熱すると、NNとBi23とを主成分とする余剰成分が生成する。Bi23は、融点が低く、酸にも弱いので、得られた反応物から湯洗等によりフラックスを取り除いた後、これを高温で加熱するか、あるいは、酸洗浄を行えば、{100}面を配向面とするNNからなる上記異方形状粉末Aを得ることができる。
また、例えば、BINN2からなる上記異方形状粉末Bを用いて、上記一般式(2)で表される化合物の一種である(K0.5Na0.5)NbO3(以下、これを「KNN」という。)からなる異方形状粉末Aを合成する場合には、上記反応原料Bとして、Naを含む化合物(酸化物、水酸化物、炭酸塩、硝酸塩等)及びKを含む化合物(酸化物、水酸化物、炭酸塩、硝酸塩等)、又はNa及びKの双方を含む化合物を用いればよい。この場合には、1molのBINN2に対して、Na原子0.5molに相当するNa含有化合物、及びK原子1molに相当するK含有化合物を反応原料Bとして添加すればよい。
このような組成を有する異方形状粉末B及び反応原料Bに対して、適当なフラックスを1重量%〜500重量%加えて、共晶点・融点に加熱すると、KNNとBi23とを主成分とする余剰成分が生成するので、得られた反応物からフラックス及びBi23を除去すれば、{100}面を配向面とするKNNからなる異方形状粉末Aを得ることができる。
上記異方形状粉末Bと上記反応原料Bとの反応によって、上記一般式(2)で表される化合物のみを生成させる場合も同様であり、所定の組成を有する異方形状粉末Bと所定の組成を有する反応原料Bとを適当なフラックス中で加熱すればよい。これにより、フラックス中において、目的とする組成を有する上記一般式(2)で表される化合物を生成することができる。また、得られた反応物からフラックスを取り除けば、上記一般式(2)からなり、かつ特定の結晶面を配向面とする異方形状粉末Aを得ることができる。
上記一般式(2)で表される化合物は、結晶格子の異方性が小さいので、異方形状粉末Aを直接合成することは困難である。また、任意の結晶面を配向面とする異方形状粉末Aを直接合成することも困難である。
これに対し、層状ペロブスカイト型化合物は、結晶格子の異方性が大きいので、異方形状粉末を直接合成することが容易にできる。また、層状ペロブスカイト型化合物からなる異方形状粉末の配向面は、上記一般式(2)で表される化合物の特定の結晶面との間に格子整合性を有しているものが多い。さらに、上記一般式(2)で表される化合物は、層状ペロブスカイト型化合物に比べて熱力学的に安定である。
そのため、層状ペロブスカイト型化合物からなり、かつその配向面が上記一般式(2)で表される化合物の特定の結晶面と格子整合性を有する異方形状粉末Bと上記反応原料Bとを、適当なフラックス中で反応させると、上記異方形状粉末Bが反応性テンプレートとして機能することができる。その結果、上記異方形状粉末Bの配向方位を継承した、上記一般式(2)で表される化合物からなる異方形状粉末Aを容易に合成することができる。
また、上記異方形状粉末B及び上記反応原料Bの組成を最適化すると、上記異方形状粉末Bに含まれていたAサイト元素(以下、これを「余剰Aサイト元素」という。)が余剰成分として排出されると共に、余剰Aサイト元素を含まない、上記一般式(2)で表される化合物からなる異方形状粉末Aが生成する。
特に、上記異方形状粉末Bが上記一般式(3)又は(4)に示すビスマス層状ペロブスカイト型化合物からなる場合には、Biが余剰Aサイト元素として排出され、Bi23を主成分とする余剰成分が生成する。そのため、この余剰成分を熱的又は化学的に除去すれば、実質的にBiを含まず、上記一般式(2)で表される化合物からなり、かつ特定の結晶面を配向面とする異方形状粉末Aを得ることができる。
したがって、上記準備工程においては、一般式(3):(Bi22)2+(Bi0.5Mem-1.5Nbm3m+1)2-(但し、mは2〜10の整数、MeはNa、K、及びLiから選ばれる1種以上)又は一般式(4):(Bi22)2+{Bi0.5(KaNa1-a)m-1.5(Nb1-bTab)m3m+1}2-(但し、mは2〜10の整数、0≦a≦0.8、0.02≦b≦0.4)で表されるビスマス層状ペロブスカイト型化合物よりなり、表面エネルギーの最も小さい結晶面が上記配向粒子の上記配向面と格子整合性を有する前駆体配向粒子からなる異方形状前駆体粉末を準備する前駆体準備過程と、上記異方形状前駆体粉末と反応することにより上記異方形状粉末を生成する前駆体反応原料粉末を準備する前駆体反応原料準備過程と、上記前駆体反応原料粉末と上記異方形状前駆体粉末とをフラックス中にて加熱する熱処理過程とを行うことにより、上記異方形状粉末を作製することができる。
また、上記熱処理過程の前には、上記異方形状前駆体粉末を酸処理する酸処理過程を行うことができる。即ち、上記異方形状前駆体粉末を酸処理し、上記熱処理過程においては、酸処理後の上記異方形状前駆体粉末と上記異方形状前駆体粉末とをフラックス中にて加熱することができる。この場合には、ビスマス残存量の低い上記異方形状粉末を得ることができる。
また、本発明の上記第1準備工程においては、上述のごとく平均粒径の異なる2種以上の上記異方形状粉末を準備する。
平均粒径の異なる2種以上の上記異方形状粉末は、上記熱処理過程後に得られる上記異方形状粉末を例えばジェットミル等により粉砕することにより得ることができる。即ち、粉砕条件を変えて粉砕を行うことにより、平均粒径の異なる上記異方形状粉末を得ることができる。
また、上記異方形状前駆体粉末の粉砕を行って、予め平均粒径の異なる少なくとも2種類の上記異方形状前駆体粉末を作製し、これらの異方形状前駆体粉末を用いて上記のごとく異方形状粉末を作製することにより、平均粒径の異なる異方形状粉末を作製することもできる。
また、上記異方形状粉末の合成時における上記熱処理過程の加熱条件を変更することによっても、上記異方形状粉末の平均粒径を調整することができる。
また、粉砕時には、上記配向粒子の形状を板状等にしたり、上記配向粒子の平均粒径やアスペクト比等を制御したりすることができる。
また、例えば粒径の異なる二つの異方形状粉末のうち、一方を第1異方形状粉末、もう一方を第2異方形状粉末とすると、上記第1異方形状粉末の平均粒径が10μm〜14μmとなり、第2異方形状粉末の平均粒径が第1異方形状粒子の1/2以下となるように、上記異方形状粉末を粉砕することが好ましい。
この場合には、優れた緻密性と高い配向度とを兼ね備えた結晶配向セラミックスを得ることができる。
また、上記配向粒子においては、その配向面を、上記配向粒子において最も広い面積を占める面である最大面とすることが好ましい。
この場合には、上記配向粒子を、上記結晶配向セラミックスを製造するためのより良好な反応性テンプレートとすることができる。
次に、第2準備工程においては、上記異方形状粉末と共に焼結させることにより上記結晶配向セラミックスの目的組成の上記等方性ペロブスカイト型化合物を生成する平均粒径2μm以下の微細粉末を準備する。
上記微細粉末の平均粒径が2μmを越える場合には、上記成形工程において、上記異方形状粉末と上記微細粉末との混合物からなる上記原料混合物を、上記異方形状粉末の配向面が略同一方向に配向するように成形することが困難になるおそれがある。より好ましくは、上記微細粉末の平均粒径は1μm以下がよい。
また、上記異方形状粉末として、例えば上記一般式(1)で表される化合物等のように目的の等方性ペロブスカイト型化合物と同一組成を有するものを用いる場合には、上記微細粉末としても、上記異方形状粉末と同一組成、即ち目的の等方性ペロブスカイト型化合物と同一組成を有するものを用いることができる。
また、上記微細粉末としては、上記異方形状粉末と共に焼結させることにより該異方形状粉末と反応して、例えば上記一般式(1)で表される化合物等のように目的の等方性ペロブスカイト型化合物を生成するものを用いることができる。
この場合、上記微細粉末は、上記異方形状粉末との反応によって、目的の等方性ペロブスカイト型化合物のみを生成するものであってもよく、あるいは目的の等方性ペロブスカイト型化合物と余剰成分との双方を生成するものであってもよい。また、上記異方形状粉末と上記第微細粉末との反応によって余剰成分が生成する場合には、該余剰成分は熱的又は化学的に除去することが容易なものであることが好ましい。
上記微細粉末の組成は、上記異方形状粉末の組成、及び作製しようとする、例えば一般式(1)で表される等方性ペロブスカイト型化合物の組成に応じて決定できる。また、上記微細粉末としては、例えば酸化粉末、複合酸化物粉末、水酸化物粉末、あるいは炭酸塩、硝酸塩、主酸塩等の塩、あるいはアルコキシド等を用いることができる。
具体的には、例えば上記異方形状粉末としてKNN組成又はNN組成を有する上記異方形状粉末Aを用いて、上記一般式(1)で表される等方性ペロブスカイト型化合物からなる結晶配向セラミックスを作製する場合には、上記微細粉末として、Li、K、Na、Nb、Ta及びSbのうちの少なくとも1つの元素を含む複数の化合物の混合物を用いることができる。そして、上記異方形状粉末Aと上記微細粉末とから目的とする組成を有する上記一般式(1)で表される等方性ペロブスカイト型化合物が生成するような化学量論比で、これらを配合すればよい。
また、例えば上記異方形状粉末として、上記一般式(3)で表される組成を有する異方形状粉末Bを用いて、上記一般式(1)で表される等方性ペロブスカイト型化合物からなる結晶配向セラミックスを作製する場合には、上記微細粉末として、Li、K、Na、Nb、Ta及びSbのうちの少なくとも1つの元素を含む複数の化合物の混合物を用い、上記異方形状粉末Bと上記微細粉末から目的とする組成を有する上記一般式で表される化合物が生成するような化学量論比で、これらを配合すればよい。他の組成を有する結晶配向セラミックスを作製する場合も同様である。
具体的には、上記微細粉末としては、Li源、K源、Na源、Nb源、Ta源、及びSb源から選ばれる1種以上の原料源を混合し、得られる混合物を採用することができる。また、該混合物を仮焼してなる仮焼粉を採用することもできる。
また、上記原料源を例えば一般式(5){Lip(K1-qNaq)1-p}(Nb1-r-sTarSbs)O3(但し、0≦p≦1、0≦q≦1、0≦r≦1、0≦s≦1)で表される等方性ペロブスカイト型化合物が生成する混合比で混合し、得られる混合物を仮焼してなる仮焼粉を採用することができる。
この場合には、目的組成の上記結晶配向セラミックスを簡単に製造することができる。
また、上記原料源は、上記のごとく、上記一般式(5)で表される等方性ペロブスカイト型化合物が生成する配合比で混合を行うことができるが、仮焼後に得られる実際の組成は一般式(5)の組成からずれる場合がある。例えば上記一般式(5)のAサイトとBサイト比が1:1からはずれ、一般式(5’){Lip(K1-qNaq)1-p}e(Nb1-r-sTarSbs)O3(但し、0≦p≦1、0≦q≦1、0≦r≦1、0≦s≦1、0.95≦e≦1.0)で表される組成を生成することができる。
次に、上記混合工程においては、上記異方形状粉末と上記微細粉末とを混合することにより原料混合物を作製する。
上記混合工程においては、所定の比率で配合された上記異方形状粉末、及び上記微細粉末に対して、さらにこれらの物質の反応によって得られる例えば上記一般式(1)で表される化合物等の等方性ペロブスカイト型化合物と同一組成を有する化合物からなる不定形の微粉(以下、これを「化合物微粉」という。)、及び/又は例えばCuO等の焼結助剤を添加することもできる。上記化合物微粉や上記焼結助剤を添加すると、焼結体の緻密化がさらに容易化するという利点がある。
また、上記化合物微粉を配合する場合においては、上記化合物微粉の配合比率が過大になると、必然的に原料全体に占める上記異方形状粉末の配合比率が小さくなり、特定の結晶面の配向度が低下するおそれがある。したがって、上記化合物微粉の配合比率は、要求される焼結体密度及び配向度に応じて最適な配合比率を選択することが好ましい。
上記一般式(1)で表される等方性ペロブスカイト型化合物を作製する場合には、上記異方形状粉末の配合比率は、上記異方形状粉末中の1つ乃至複数の成分元素により、ABO3で表される上記一般式(1)の化合物のAサイトが占有される比率が、0.01〜70at%となるようにすることが好ましく、より好ましくは、0.1〜50at%がよい。さらに好ましくは、1〜10at%がよい。ここで、「at%」とは、原子の数の割合を100分率で示したものである。
また、上記原料混合物には、周期律表における2〜15族に属する金属元素、半金属元素、遷移金属元素、貴金属元素、及びアルカリ土類金属元素から選ばれる1種以上の添加元素を含有させることが好ましい。
この場合には、上記添加元素を含有する多結晶体からなる上記結晶配向セラミックスを作製することができる。これにより、結晶配向セラミックスの圧電d33定数、電気機械結合係数Kp、圧電g31定数等の圧電特性や、比誘電率、誘電損失等の誘電特性を向上させることができる。上記添加元素は、上記結晶配向セラミックスにおける上記一般式(1)で表される化合物のAサイトやBサイトに対して、置換添加されていても良いが、外添加されて上記一般式(1)で表される化合物の粒内又は粒界中に存在することもできる。
上記原料混合物に上記添加元素を含有させる具体的な方法としては、例えば次のような方法がある。
即ち、上記添加元素は、上記異方形状粉末を合成する際に添加することができる。
また、上記添加元素は、上記微細粉末を合成する際に添加することができる。
また、上記添加元素は、上記混合工程において、上記微細粉末及び上記異方形状粉末と共に添加することができる。
このような方法によって上記添加元素を添加することにより、上記添加元素を含有する上記原料混合物を簡単に得ることができる。そして、該原料混合物を成形及び焼成することにより、上記添加元素を含有する多結晶体からなる上記結晶配向セラミックスを得ることができる。
上記添加元素としては、具体的には、例えばMg、Ca、Sr、Ba、Sc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Y、Zr、Mo、Hf、W、Re、Pd、Ag、Ru、Rh、Pt、Au、Ir、Os、B、Al、Ga、In、Si、Ge、Sn、及びBi等がある。
また、上記添加元素は、添加元素単体で添加されていても良いが、上記添加元素を含む酸化物や化合物として添加されていても良い。
また、上記添加元素は、上記焼成工程後に得られる例えば上記一般式(1)で表される上記等方性ペロブスカイト型化合物1molに対して、0.0001〜0.15molとなるような割合で添加することが好ましい。
上記添加元素が0.0001mol未満の場合には、上記添加元素による上記圧電特性等の向上効果を充分に得られないおそれがある。一方、0.15molを超える場合には、上記結晶配向セラミックスの圧電特性や誘電特性がかえって低下するおそれがある。
また、上記混合工程においては、上記焼成工程において上記等方性ペロブスカイト型化合物におけるAサイト元素又は/及びBサイト元素のいずれか1種以上の元素に対して、上記添加元素が0.01〜15at%の割合で置換添加されるように、上記添加元素の混合割合を調整することができる。
この場合には、上記添加元素が上記等方性ペロブスカイト型化合物に置換添加された上記結晶配向セラミックスを得ることができる。かかる結晶配向セラミックスは、より一層優れた圧電d33定数や電気機械結合係数Kp等の圧電特性、及びより一層優れた比誘電率ε33T/ε0等の誘電特性を示すことができる。
上記添加元素が0.01at%未満の場合には、上記結晶配向セラミックスの圧電特性や誘電特性の向上効果が充分に得られないおそれがある。一方、15at%を超える場合には、上記結晶配向セラミックスの圧電特性や誘電特性がかえって低下するおそれがある。より好ましくは、0.01〜5at%がよく、さらに好ましくは、0.01〜2at%がよく、さらにより好ましくは、0.05〜2at%がよい。
ここで、「at%」とは、上記一般式(1)で表される化合物におけるLi、K、Na、Nb、Ta、及びSbの原子の数に対する置換された原子の数の割合を100分率で示したものである。
上記混合工程において、上記異方形状粉末、上記微細粉末、並びに必要に応じて配合される化合物微粉及び焼結助剤等の混合は、乾式で行ってもよく、あるいは、水、アルコール等の適当な分散媒を加えて湿式で行ってもよい。さらにこのとき、必要に応じてバインダ及び/又は可塑剤を加えることもできる。
次に、上記成形工程においては、上記異方形状粉末の上記配向面が略同一の方向に配向するように、上記原料混合物を成形して成形体を作製する。
この場合、上記異方形状粉末が面配向するように成形してもよく、あるいは、上記異方形状粉末が軸配向するように成形してもよい。
成形方法については、上記異方形状粉末を配向させることが可能な方法であればよい。上記異方形状粉末を面配向させる成形方法としては、具体的にはドクターブレード法、プレス成形法、圧延法等が好適な例としてあげられる。また、上記異方形状粉末を軸配向させる成形方法としては、具体的には押出成形法、遠心成形法等が好適な例として挙げられる。
また、上記異方形状粉末が面配向した成形体(以下、これを「面配向成形体」という。)の厚さを増したり、配向度を上げるために、面配向成形体に対し、さらに積層圧着、プレス、圧延等の処理(以下、これを「面配向処理」という。)を行うことができる。
この場合には、上記面配向成形体に対して、いずれか1種類の面配向処理を行うこともできるが、2種以上の面配向処理を行うこともできる。また、上記面配向成形体に対して、1種類の面配向処理を繰り返し行うこともでき、また、2種以上の配向処理をそれぞれ複数回繰り返し行うこともできる。
上記成形工程においては、上記原料混合物を厚み200μm以下のシート状に成形することが好ましい。
厚みが200μmを越えると、上記成形体中で上記異方形状粉末を略同一方向に配向させることが困難になるおそれがある。
また、上記成形工程においては、上記成形体を厚み30μm以上のシート状に成形することが好ましい。
厚みが30μm未満の場合には、作製時における成形体の取り扱いが非常に困難になるおそれがある。
上記成形工程において得られる上記成形体は、焼成の前に、脱脂を主目的とする熱処理を行うことができる。この場合、脱脂の温度は、少なくとも上記成形助剤(バインダ)等の有機成分を熱分解させるのに充分な温度に設定することができる。但し、上記成形体に揮発しやすい物質(例えばNa化合物等)が含まれる場合には、脱脂は500℃以下で行うことが好ましい。
また、上記成形体の脱脂を行うと、該成形体中の上記異方形状粉末の配向度が低下したり、あるいは、上記成形体に体積膨張が発生したりする場合がある。このような場合には、脱脂を行った後、焼成を行う前に、上記成形体に対して、さらに静水圧(CIP)処理を行うことができる。この場合には、脱脂に伴う配向度の低下、あるいは、上記成形体の体積膨張に起因する焼結体密度の低下を抑制することができる。
次に、上記焼成工程においては、上記成形体を加熱し、上記異方形状粉末と上記微細粉末とを焼結させることにより上記結晶配向セラミックスを得る。
上記焼成工程においては、上記成形体を加熱することにより焼結が進行し、等方性ペロブスカイト型化合物を主相とする多結晶体からなる結晶配向セラミックスを作製する。このとき、上記異方形状粉末と上記微細粉末とを反応させて、例えば上記一般式(1)で表される化合物等の上記等方性ペロブスカイト型化合物を生成させることができる。
また、上記焼成工程においては、上記異方形状粉末及び/又は微細粉末の組成によっては、余剰成分も同時に生成する。
上記焼成工程における加熱温度は、反応及び/又は焼結が効率よく進行し、かつ目的とする組成を有する反応物が生成するように、使用する異方形状粉末、微細粉末、作製しようとする結晶配向セラミックスの組成等に応じて最適な温度を選択することができる。
例えば、上記異方形状粉末としてKNN組成を有する上記異方形状粉末Aを用いて、上記一般式(1)で表される化合物からなる結晶配向セラミックスを作製する場合には、上記焼成工程における加熱温度は、900℃以上かつ1300℃以下にすることができる。この温度範囲においてさらに最適な加熱温度は、目的物質である例えば上記一般式(1)で表される化合物の組成に応じて決定できる。さらに、加熱時間は、所望の焼結体密度が得られるように、加熱温度に応じて最適な時間を選択することができる。
また、上記異方形状粉末と上記微細粉末との反応によって余剰成分が生成する場合、焼結体中に余剰成分を副相として残留させることができる。また、焼結体から余剰成分を除去することもできる。余剰成分を除去する場合には、その方法として、上述のごとく、例えば熱的に除去する方法や化学的に除去する方法等がある。
熱的に除去する方法としては、例えば上記一般式(1)で表される化合物と余剰成分とが生成した焼結体(以下、これを「中間焼結体」という。)を所定温度で加熱し、余剰成分を揮発させる方法がある。具体的には、上記中間焼結体を減圧下もしくは酸素中において、余剰成分の揮発が生じる温度で長時間加熱する方法が好適な例として挙げられる。
余剰成分を熱的に除去する際の加熱温度は、余剰成分の揮発が効率よく進行し、かつ副生成物の生成が抑制されるように、上記一般式(1)で表される化合物及び/又は上記余剰成分の組成に応じて、最適な温度を選択すれすることができる。例えば、余剰成分が酸化ビスマス単相である場合には、加熱温度は、800℃以上で、かつ1300℃以下であることが好ましく、さらに好ましくは1000℃以上で、かつ1200℃以下がよい。
また、余剰成分を化学的に除去する方法としては、例えば余剰成分のみを浸食させる性質を有する処理液中に中間焼結体を浸漬し、余剰成分を抽出する方法等がある。このとき、使用する処理液としては、上記一般式(1)で表される化合物及び/又は余剰成分の組成に応じて最適なものを選択することができる。例えば、余剰成分が酸化ビスマス単相である場合には、処理液としては、硝酸、塩酸等の酸を用いることができる。特に、硝酸は、酸化ビスマスを主成分とする余剰成分を化学的に抽出する処理液として好適である。
上記異方形状粉末と上記微細粉末との反応、及び余剰成分の除去は、同時、逐次又は個別のいずれのタイミングで行ってもよい。例えば、成形体を減圧下又は真空下において、上記異方形状粉末と微細粉末との反応及び余剰成分の揮発の双方が効率よく進行する温度まで直接加熱し、反応と同時に余剰成分の除去を行うことができる。なお、上記添加元素は、上記異方形状粉末と上記微細粉末との反応の際に、目的物質である例えば上記一般式(1)で表される化合物に置換されたり、上記のごとく結晶粒内又は/及び粒界中に配置される。
また、例えば大気中又は酸素中において、上記異方形状粉末と上記微細粉末との反応が効率よく進行する温度で成形体を加熱して上記中間焼結体を生成した後、引き続き該中間焼結体を減圧下又は真空下において、余剰成分の揮発が効率よく進行する温度で加熱し、余剰成分の除去を行うこともできる。また、上記中間焼結体を生成した後、引き続き、該中間焼結体を大気中又は酸素中において、余剰成分の揮発が効率よく進行する温度で長時間加熱し、余剰成分の除去を行うこともできる。
また、例えば上記中間焼結体を生成し、上記中間焼結体を室温まで冷却した後、該中間焼結体を処理液に浸漬して、余剰成分を化学的に除去することもできる。あるいは、上記中間焼結体を生成し、室温まで冷却した後、再度上記中間焼結体を所定の雰囲気下において所定の温度に加熱し余剰成分を熱的に除去することもできる。
また、余剰成分の除去を行う際には、余剰成分を除去した中間焼結体に対し、さらに、静水圧処理を施し、これを再焼成することができる。また、焼結体密度及び配向度をさらに高めるために、上記熱処理工程後の焼結体に対してさらにホットプレスを行うことができる。さらに、上記化合物微粉を添加する方法、CIP処理、及びホットプレス等の方法を組み合わせて用いることもできる。
(実施例1)
次に、本発明の実施例につき、説明する。
本例においては、第1準備工程と第2準備工程と混合工程と成形工程と焼成工程とを行って、一般式(1):{Lix(K1-yNay)1-x}a(Nb1-z-wTazSbw)b3(但し、0≦x≦0.2、0≦y≦1、0≦z≦0.4、0≦w≦0.2、x+z+w>0、0.95≦a、b≦1)で表される等方性ペロブスカイト型化合物を主相とする多結晶体からなり、該多結晶体を構成する結晶粒の{100}面が配向する結晶配向セラミックスを製造する。本例においては、特に、{Li0.065(K0.45Na0.55)0.935}{Nb0.83Ta0.09Sb0.08}O3という組成の等方性ペロブスカイト型化合物を主相とする多結晶体からなる結晶配向セラミックスを製造する。
第1準備工程においては、ペロブスカイト型化合物よりなり、{100}面が配向して配向面を形成する異方形状の配向粒子からなる異方形状粉末を準備する。本例においては、後述の前駆体準備過程と、前駆体反応原料準備過程と、熱処理過程とを行うことにより、ビスマス層状ペロブスカイト型化合物よりなる異方形状前駆体粉末から異方形状粉末を作製する。そして、異方形状粉末2としては、平均粒径が2倍以上異なる少なくとも2種類の粉末(第1異方形状粉末21及び第2異方形状粉末22)を採用する(図1参照)。
第2準備工程においては、異方形状粉末2と共に焼結させることにより結晶配向セラミックスの目的組成の上記等方性ペロブスカイト型化合物を生成する平均粒径2μm以下の微細粉末を準備する。
混合工程においては、異方形状粉末2(第1異方形状粉末21及び第2異方形状粉末22)と微細粉末3とを混合することにより原料混合物1を作製する(図1参照)。
成形工程においては、異方形状粉末の配向面({100}面)が略同一の方向に配向するように、原料混合物を成形して成形体を作製する。
また、焼成工程においては、成形体を加熱し、異方形状粉末と微細粉末とを焼結させることにより結晶配向セラミックスを得る。
以下、本例の製造方法につき、詳細に説明する。
まず、以下のようにして第1準備工程を行ってNaNbO3からなる異方形状粉末を作製する。
即ち、まず、Bi2.5Na3.5Nb518という組成となるような化学量論比で、Bi23粉末、Na2CO3粉末、及びNb25粉末を秤量し、これらを湿式混合した。次いで、この原料に対し、フラックスとしてNaClを50wt%添加し、1時間乾式混合した。次に、得られた混合物を白金るつぼに入れ、850℃×1hの条件下で加熱し、フラックスを完全に溶解させた後、さらに1100℃×2hの条件下で加熱し、Bi2.5Na3.5Nb518の合成を行った(前駆体準備過程)。なお、昇温速度は、200℃/hrとし、降温は炉冷とした。冷却後、反応物から湯洗によりフラックスを取り除き、Bi2.5Na3.5Nb518粉末(異方形状前駆体粉末)を得た。得られたBi2.5Na3.5Nb518粉末は、平均粒径が約15μmであり、かつアスペクト比がおよそ3〜6程度の、{001}面を発達面とする板状粉末であった。
次いで、このBi2.5Na3.5Nb518板状粉末に対し、NaNbO3の合成に必要な量のNa2CO3粉末(前駆体反応原料粉末)を準備した(前駆体反応原料準備過程)。
そして、これらのBi2.5Na3.5Nb518板状粉末とNa2CO3粉末とを混合し、NaClをフラックスとして、白金るつぼ中において、950℃×8時間の熱処理を行った(熱処理過程)。
得られた反応物には、NaNbO3粉末に加えてBi23が含まれているので、反応物からフラックスを取り除いた後、これをHNO3(1N)中に入れ、余剰成分として生成したBi23を溶解させた。さらに、この溶液を濾過してNaNbO3粉末を分離し、80℃のイオン交換水で洗浄した。このようにして、NaNbO3粉末からなる異方形状粉末を得た。
得られた異方形状粉末は、擬立方{100}面を発達面とし、平均粒径が15μmであり、かつアスペクト比がおよそ3〜6程度の板状粉末であった。
次に、異方形状粉末をジェットミルにより粉砕し、平均粒径12μmと平均粒径6μmの粒径の異なる2種類の異方形状粉末を得た。これらのうち、平均粒径の大きな方を第1異方形状粉末21及び小さな方を第2異方形状粉末22とする(図1参照)。
次に、以下のようにして第2準備工程を行って微細粉末を作製する。
即ち、まず、純度99.99%以上のNa2CO3粉末、K2CO3粉末、Li2CO3粉末、Nb25粉末、Ta25粉末、Sb25粉末を{Li0.065(K0.45Na0.55)0.935}{Nb0.83Ta0.09Sb0.08}O3の化学量論組成1molから、NaNbO3を0.05mol差し引いた組成となるように秤量し、有機溶剤を媒体としてZrO2ボールで20時間の湿式混合を行った。その後、750℃で5Hr仮焼し、さらに有機溶剤を媒体としてZrO2ボールで20時間の湿式粉砕を行った。これにより、平均粒径が約0.5μmの仮焼物粉体(微細粉末)を得た。
次に、以下のようにして、混合工程、成形工程、及び焼成工程を行って、結晶配向セラミックスを製造する。
即ち、まず、異方形状粉末2(第1異方形状粉末21及び第2異方形状粉末22)と微細粉末3とを、焼結後の組成が{Li0.065(K0.45Na0.55)0.935}{Nb0.83Ta0.09Sb0.08}O3になるような化学量論比で秤量した(図1参照)。具体的には、異方形状粉末2と微細粉末3とをモル比で0.05:0.95(異方形状粉末:反応原料)となるように秤量した。また、第1異方形状粉末21と第2異方形状粉末22との混合比は、重量比でそれぞれ90:10とした。
秤量後、これらの粉末をスクリュー管瓶に移した後、回転架台を用いて2時間混合を行って原料混合物1を得た(混合工程)。
次いで、原料混合物を金型中に充填し、3MPaで一軸プレスを行った(成形工程)。その結果、厚さ2.0mmの板状の成形体を得た。
次いで、成形体を、アルミナこう鉢中のPt板上に配置して大気中、1120℃で5時間焼結を行った(焼成工程)。このようにして結晶配向セラミックスを得た。これを試料E1とする。
また、本例においては、上記試料E1とは、第1異方形状粉末と第2異方形状粉末との混合比率の異なる異方形状粉末を用いて、その他は上記試料E1と同様にしてさらに3種類の結晶配向セラミックスを作製した。これらを試料E2〜試料E4とする。試料E2〜試料E4は、上記試料E1と同様に、異方形状粉末2として、平均粒径が2倍以上異なる第1異方形状粉末21と第2異方形状粉末22とを採用し、これらの異方形状粉末2と微細粉末3とを混合してなる原料混合物1を用いて作製した結晶配向セラミックスである(図1参照)。
また、異方形状粉末として、上記試料E1と同様の第1異方形状粉末のみを用いて、その他は上記試料E1と同様にして結晶配向セラミックスを作製した。これを試料C1とする。
また、異方形状粉末として、上記試料E1と同様の第2異方形状粉末のみを用いて、その他は上記試料E1と同様にして結晶配向セラミックスを作製した。これを試料C2とする。
試料C1及び試料C2は、異方形状粉末91として単一の平均粒径の粉末を用い、この異方形状粉末91と微細粉末92とを混合してなる原料混合物9を用いて作製した結晶配向セラミックスである(図2参照)。
さらに、試料E1とは、第1異方形状粉末及び第2異方形状粉末の平均粒径及び混合比率が異なる異方形状粉末を用いて、その他は上記試料E1と同様にしてさらに6種類の結晶配向セラミックスを作製した。これらを試料C3〜試料C8とする。
試料C3〜試料C8は、試料E1と同様に、平均粒径の異なる2種類の異方形状粉末(第1異方形状粉末及び第2異方形状粉末)を用いてはいるが、両者の平均粒径に2倍以上の差がない2種類の異方形状粉末を用いて作製した結晶配向セラミックスである。
上記のようにして作製した各試料(試料E1〜試料E3及び試料C1〜試料C8)の作製に用いた2種類の異方形状粉末(第1異方形状粉末及び第2異方形状粉末)の平均粒径(μ)及び混合比率(%)を後述の表1に示す。
また、本例において、平均粒径は、次のようにして測定した。
即ち、まず、異方形状粉末をエタノール中に投入した。投入量は0.1〜0.15wt%とした。次いで、超音波分散機((株)島津理化製のSUS−103)を用いて、28kHzで3分間、異方形状粉末を均一に分散させ、分散液を得た。そして、レーザ回折式粒度分布測定装置((株)島津製作所のSALD―7000)を用いて、分散液中の異方形状粉末の平均1次粒径(D50)の測定を行った。
次に、各試料(試料E1〜試料E4及び試料C1〜試料C8)について、その緻密性を調べるために、かさ密度を測定した。
具体的には、まず各試料の乾燥時の重量(乾燥重量)を測定した。次いで、各試料を水に浸漬して開口部に水を浸透させた後、各試料の重量(含水重量)を測定した。次いで、含水重量と乾燥重量との差から、各試料中に存在する開気孔の体積を算出した。また、アルキメデス法により、各試料について、開気孔を除いた部分の体積を測定した。次に、各試料の乾燥重量を全体積(開気孔の体積と開気孔を除いた部分の体積との合計)で除することにより、各試料の嵩密度を算出した。その結果を表1に示す。
Figure 2010222193
表1より知られるごとく、平均粒径が2倍以上異なる少なくとも2種類の異方形状粉末を用いて作製した試料E1〜試料E4は、4.5g/cm3以上という高いかさ密度を示し、緻密性に優れていることがわかる。
これに対し、12μmという平均粒径の比較的大きな第1異方形状粉末のみを用いて作製した試料C1、及び第1異方形状粉末の平均粒径の1/2を越える平均粒径を有する第2異方形状粉末を用いて作製した試料C3〜試料C5は、かさ密度が低く、充分に緻密化されていなかった。
また、平均粒径が比較的小さな異方形状粉末を用いて作製した試料C2、試料C6〜試料C8は、比較的かさ密度が高くなっていた。
次に、上記のごとく、比較的高い密度を示した試料E1〜試料E4、試料C2、及び試料C6〜試料C8と同様の異方形状粉末を用いて、上述の作製方法とは成形方法を変更して配向度測定用の結晶配向セラミックス(試料Ea1〜試料Ea4、試料Ca2、及び試料Ca6〜試料Ca8)を作製した。
具体的には、まず、各試料E1〜試料E4、試料C2、及び試料C6〜試料C8の場合と同様の配合割合で異方形状粉末と微細粉末とを秤量し、有機溶剤を媒体にして、ZrO2ボールで20時間の湿式混合を行うことでスラリーを得た。その後、スラリーに対してバインダ(PVB)及び可塑剤(フタル酸ジブチル)を、出発原料から合成される1molの{Li0.065(K0.45Na0.55)0.935}{Nb0.83Ta0.09Sb0.08}O3に対して、それぞれ、10.35g及び10.35g加えた後、さらに2時間混合した。
次に、ドクターブレード装置を用いて、混合したスラリーを厚さ100μmのテープ状(シート状)に成形した。さらに、この成形体を積層、圧着及び圧延することにより、厚さ1.5mmの板状の成形体を得た。次いで、得られた成形体を、大気中において温度400℃で加熱することにより脱脂を行った。脱脂後の成形体をアルミナ鉢中のPt版上に配置し、大気中で温度1120℃で5時間加熱することにより焼成し、その後冷却することにより、結晶配向セラミックスを得た。なお、焼成時の加熱及び冷却は、昇温速度200℃/h、冷却速度200℃/hの焼成パターンで行った。本例の焼成は、横軸に時間及び縦軸に温度をプロットしたときに単純な台形型の焼成パターンを示す。
このようにして、試料Ea1〜試料Ea4、試料Ca2、及び試料Ca6〜試料Ca8という8種類の結晶配向セラミックスを得た。
各試料Ea1〜試料Ea4、試料Ca2、及び試料Ca6〜試料Ca8は、それぞれ上述の試料E1〜試料E4、試料C2、及び試料C6〜試料C8と同様の異方形状粉末(第1異方形状粉末及び第2異方形状粉末)を用いて作製したものである。
試料Ea1〜試料Ea4、試料Ca2、及び試料Ca6〜試料Ca8の作製に用いた2種類の異方形状粉末(第1異方形状粉末及び第2異方形状粉末)の平均粒径(μ)及び混合比率(%)を後述の表2に示す。
次に、各試料Ea1〜試料Ea4、試料Ca2、及び試料Ca6〜試料Ca8について、その配向度を調べた。配向度は、テープ面と平行な面についてのロットゲーリング法による{100}面の平均配向度F(100)を上述の数1の式を用いて算出した。
その結果を表2に示す。
Figure 2010222193
表2より知られるごとく、擬立方{100}面は、テープ面に対して平行に配向しており、試料Ea1〜試料Ea4の中でも第2異方形状粉末の混合比率(重量比)を50%以下にして作製した試料Ea1〜試料Ea3は、ロットゲーリング法による擬立方{100}面の平均配向度が80%以上であり、その他の試料に比べて非常に高い配向度を示した。
したがって、緻密性に加えてさらに配向度を向上させるためには、異方形状粉末のうち、平均粒径の小さい方(大きい方の1/2以下の平均粒径を有するもの)の配合割合を50重量%以下にすることが好ましいことがわかる。
次に、80%以上の配高度が得られた試料Ea1〜試料Ea3の結晶配向セラミックスについて、その圧電特性を調べた。
具体的には、まず、各試料(試料Ea1〜試料Ea3)を研削、研磨、加工して、上下面がテープ面に対して平行で、厚さ0.485mm、直径11mmの円盤状の試料に成形した。次いで、その上下面にAu焼付電極ペースト(住友金属鉱山(株)製 ALP3057)を印刷し、乾燥した後、メッシュベルト炉を用いて温度850℃で10分間焼付を行い、厚さ0.01mmの電極を形成した。さらに、印刷により不可避に形成された電極外周部の数マイクロメートルの盛り上り部を除去する目的で、得られた円板状の試料を円筒研削により直径8.5mmに加工した。その後、上下方向に分極処理を施し全面電極を有する3種類の結晶配向セラミックス(圧電素子)を得た。
次いで、電極を形成した各試料(試料Ea1〜試料Ea3)について、共振反共振法(室温)により、圧電歪み定数(d31)を測定した。その結果を上述の表2に示す。
表2より知られるごとく、高い緻密性及び配向度を示す試料Ea1〜試料Ea3の結晶配向セラミックスは、圧電特性も高く、圧電素子として好適であることがわかる。
1 原料混合物
2 異方形状粉末
21 第1異方形状粉末
22 第2異方形状粉末
3 微細粉末

Claims (6)

  1. 等方性ペロブスカイト型化合物を主相とする多結晶体からなり、該多結晶体を構成する結晶粒の特定の結晶面Aが配向する結晶配向セラミックスの製造方法であって、
    ペロブスカイト型化合物よりなり、上記特定の結晶面Aと格子整合性を有する結晶面が配向して配向面を形成する異方形状の配向粒子からなる異方形状粉末を準備する第1準備工程と、
    上記異方形状粉末と共に焼結させることにより上記結晶配向セラミックスの目的組成の上記等方性ペロブスカイト型化合物を生成する平均粒径2μm以下の微細粉末を準備する第2準備工程と、
    上記異方形状粉末と上記微細粉末とを混合することにより原料混合物を作製する混合工程と、
    上記異方形状粉末の上記配向面が略同一の方向に配向するように、上記原料混合物を成形して成形体を作製する成形工程と、
    上記成形体を加熱し、上記異方形状粉末と上記微細粉末とを焼結させることにより上記結晶配向セラミックスを得る焼成工程とを有し、
    上記第1準備工程においては、上記異方形状粉末として、平均粒径が2倍以上異なる少なくとも2種類の粉末を採用することを特徴とする結晶配向セラミックスの製造方法。
  2. 請求項1において、上記第1準備工程においては、上記異方形状粉末の粉砕を行うことにより、平均粒径が異なる少なくとも2種類の上記異方形状粉末を作製することを特徴とする結晶配向セラミックスの製造方法。
  3. 請求項1又は2において、上記第1準備工程においては、平均粒径が10μm〜14μmの第1配向粒子からなる第1異方形状粉末と、平均粒径が5μm〜7μmの第2配向粒子からなる第2異方形状粉末との少なくとも2種類の粉末を主成分とする上記異方形状粉末を準備することを特徴とする結晶配向セラミックスの製造方法。
  4. 請求項3において、上記第1準備工程においては、全異方形状粉末量を100重量部とすると、上記第1異方形状粉末を50〜90重量部、及び上記第2異方形状粉末を10〜50重量部含有する上記異方形状粉末を作製することを特徴とする結晶配向セラミックスの製造方法。
  5. 請求項1〜4のいずれか一項において、上記異方形状粉末の上記配向面は、擬立方{100}面であることを特徴とする結晶配向セラミックスの製造方法。
  6. 請求項1〜5のいずれか一項において、上記混合工程においては、一般式(1):{Lix(K1-yNay)1-x}(Nb1-z-wTazSbw)O3(但し、0≦x≦0.2、0≦y≦1、0≦z≦0.4、0≦w≦0.2、x+z+w>0)で表される等方性ペロブスカイト型化合物が生成するように上記異方形状粉末と上記微細粉末とを混合することを特徴とする結晶配向セラミックスの製造方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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JP2014168055A (ja) * 2013-01-29 2014-09-11 Canon Inc 圧電材料、圧電素子および電子機器

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