JP5264673B2 - 圧電セラミックス、その製造方法、積層型圧電素子、及びその製造方法 - Google Patents
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Description
しかし、非鉛系の圧電材料は、鉛系の圧電材料に比べて圧電特性が低く、かかる圧電材料を用いた積層型圧電素子は充分な変位性能を発揮することができないという問題があった。
一般に、等方性ペロブスカイト型化合物の圧電特性などは、結晶軸の方向によって異なることが知られている。そのために、圧電特性などの高い結晶軸を一定の方向に配向させることができれば、圧電特性の異方性を最大限に活用することができ、圧電セラミックスの高性能化が期待できる。上記特許文献7に開示されているように、所定の組成を有する板状粉末を反応性テンプレートとし、該板状粉末と原料粉末とを焼結させて特定の結晶面を配向させる方法によれば、特定の結晶面が高い配向度で配向した高性能な結晶配向セラミックスを製造することができる。
即ち、上記等方性ペロブスカイト型化合物からなる、一般式ABO3で表される圧電セラミックスは、焼成時にAサイトやOサイトに結晶格子欠陥が起こりやすくなる。その結果、電気絶縁抵抗が低下するおそれがあった。
また、焼成後に上記圧電セラミックスを生成する焼成前のグリーンシートに電極を形成して一体焼成することにより上記積層型圧電素子を作製する場合には、電極からAg等の導電性金属が上記圧電セラミックス中に拡散するという問題があった。そのため、電気絶縁抵抗の低下がより顕著に表れるという問題があった。
該圧電セラミックスを構成する結晶粒は、互いに組成が異なるコア相とシェル相とを有し、該シェル相は上記コア相を取り囲むように形成されており、
カソードルミネッセンス分光分析によって測定される上記コア相中の結晶格子欠陥量をdc、カソードルミネッセンス分光分析によって測定される上記シェル相中の結晶格子欠陥量をdsとすると、ds/dc<1.2の関係式を満たすことを特徴とする圧電セラミックスにある(請求項1)。
上記圧電セラミック層は、上記第1の発明の圧電セラミックスからなることを特徴とする積層型圧電素子にある(請求項4及び5)。
ペロブスカイト型化合物からなり、上記特定の結晶面Aと格子整合性を有する結晶面が配向して配向面を形成する異方形状の配向粒子からなる異方形状粉末と、該異方形状粉末と反応して上記一般式(1)で表される上記等方性ペロブスカイト型化合物を生成する反応原料粉末とを混合することにより原料混合物を作製する混合工程と、
上記異方形状粉末の上記配向面が略同一の方向に配向するように、上記原料混合物をシート状に成形して成形体を作製する成形工程と、
上記成形体を焼成して上記圧電セラミックスを作製する焼成工程とを有し、
上記混合工程においては、上記一般式(1)で表される上記等方性ペロブスカイト型化合物1molに対する添加量がK及び/又はLiの元素換算で0.05mol以下となるように、上記原料混合物に対してさらに炭酸塩、炭酸水素塩、又はホウ酸塩からなるK原料粉末及び/又はLi原料粉末を混合し、
上記焼成工程においては、雰囲気酸素分圧PO2が50%以上かつ温度900℃以上の加熱を2時間以上行うことを特徴とする圧電セラミックスの製造方法にある(請求項7)。
Li源、K源、Na源、Nb源、Ta源、及びSb源から選ばれる1種以上を上記一般式(1)で表される化合物が生成する化学量論比で配合して原料混合物を作製し、該原料混合物を仮焼成して反応原料粉末を作製する混合工程と、
上記反応原料粉末を成形して成形体を作製する成形工程と、
上記成形体を焼成して上記圧電セラミックスを作製する焼成工程とを有し、
上記混合工程においては、上記一般式(1)で表される上記等方性ペロブスカイト型化合物1molに対する添加量がK及び/又はLiの元素換算で0.05mol以下となるように、上記反応原料粉末に対してさらに炭酸塩、炭酸水素塩、又はホウ酸塩からなるK原料粉末及び/又はLi原料粉末を混合し、
上記焼成工程においては、雰囲気酸素分圧PO2が50%以上かつ温度900℃以上の加熱を2時間以上行うことを特徴とする圧電セラミックスの製造方法にある(請求項8)。
ペロブスカイト型化合物からなり、上記特定の結晶面Aと格子整合性を有する結晶面が配向して配向面を形成する異方形状の配向粒子からなる異方形状粉末と、該異方形状粉末と反応して上記一般式(1)で表される上記等方性ペロブスカイト型化合物を生成する反応原料粉末とを混合することにより原料混合物を作製する混合工程と、
上記異方形状粉末の上記配向面が略同一の方向に配向するように、上記原料混合物をシート状に成形して成形体を作製する成形工程と、
上記成形体を焼成して上記圧電セラミックスを作製する焼成工程とを有し、
上記反応原料粉末としては、比表面積が2〜5m2/gのものを採用し、
上記焼成工程は、温度T1℃(1050<T1≦1150)まで昇温させる昇温過程と、上記温度T1℃でt1時間(t1≦5)保持する第1保持過程と、上記温度T1℃から温度T2℃(950≦T2≦1050)まで降温させる降温過程と、上記温度T2℃でt2時間(2≦t2≦20)保持する第2保持過程とを有し、
上記昇温過程における少なくとも上記温度T2℃から上記温度T1℃間の昇温速度をD1℃/時間とし、上記降温過程における降温速度をD2℃/時間とすると、(T1−T2)/t2≦D1≦200かつ(T1−T2)/t2≦D2≦200を満足することを特徴とする圧電セラミックスの製造方法にある(請求項10)。
Li源、K源、Na源、Nb源、Ta源、及びSb源から選ばれる1種以上を上記一般式(1)で表される化合物が生成する化学量論比で配合して原料混合物を作製し、該原料混合物を仮焼成して反応原料粉末を作製する混合工程と、
上記反応原料粉末を成形して成形体を作製する成形工程と、
上記成形体を焼成して上記圧電セラミックスを作製する焼成工程とを有し、
上記反応原料粉末としては、比表面積が2〜5m2/gのものを採用し、
上記焼成工程は、温度T1℃(1050<T1≦1150)まで昇温させる昇温過程と、上記温度T1℃でt1時間(t1≦5)保持する第1保持過程と、上記温度T1℃から温度T2℃(950≦T2≦1050)まで降温させる降温過程と、上記温度T2℃でt2時間(2≦t2≦20)保持する第2保持過程とを有し、
上記昇温過程における少なくとも上記温度T2℃から上記温度T1℃間の昇温速度をD1℃/時間とし、上記降温過程における降温速度をD2℃/時間とすると、(T1−T2)/t2≦D1≦200かつ(T1−T2)/t2≦D2≦200を満足することを特徴とする圧電セラミックスの製造方法にある(請求項11)。
ペロブスカイト型化合物からなり、上記特定の結晶面Aと格子整合性を有する結晶面が配向して配向面を形成する異方形状の配向粒子からなる異方形状粉末と、該異方形状粉末と反応して上記一般式(1)で表される上記等方性ペロブスカイト型化合物を生成する反応原料粉末とを混合することにより原料混合物を作製する混合工程と、
上記異方形状粉末の上記配向面が略同一の方向に配向するように、上記原料混合物をシート状に成形して成形体を作製する成形工程と、
上記成形体上に、焼成後に上記電極部となる上記導電性金属を含有する電極材料を印刷する印刷工程と、
該印刷工程後の上記成形体を積層して積層体を作製する積層工程と、
上記積層体を加熱することにより、上記圧電セラミック層と上記電極配設層とが複数交互に積層された上記積層型圧電素子を得る焼成工程とを有し、
上記混合工程においては、上記一般式(1)で表される上記等方性ペロブスカイト型化合物1molに対する添加量がK及び/又はLiの元素換算で0.05mol以下となるように、上記原料混合物に対してさらに炭酸塩、炭酸水素塩、又はホウ酸塩からなるK原料粉末及び/又はLi原料粉末を混合し、
上記焼成工程においては、雰囲気酸素分圧PO2が50%以上かつ温度900℃以上の加熱を2時間以上行うことを特徴とする積層型圧電素子の製造方法にある(請求項14)。
Li源、K源、Na源、Nb源、Ta源、及びSb源から選ばれる1種以上を上記一般式(1)で表される化合物が生成する化学量論比で配合して原料混合物を作製し、該原料混合物を仮焼成して反応原料粉末を作製する混合工程と、
上記反応原料粉末をシート状に成形して成形体を作製する成形工程と、
上記成形体上に、焼成後に上記電極部となる上記導電性金属を含有する電極材料を印刷する印刷工程と、
該印刷工程後の上記成形体を積層して積層体を作製する積層工程と、
上記積層体を加熱することにより、上記圧電セラミック層と上記電極配設層とが複数交互に積層された上記積層型圧電素子を得る焼成工程とを有し、
上記混合工程においては、上記一般式(1)で表される上記等方性ペロブスカイト型化合物1molに対する添加量がK及び/又はLiの元素換算で0.05mol以下となるように、上記反応原料粉末に対してさらに炭酸塩、炭酸水素塩、又はホウ酸塩からなるK原料粉末及び/又はLi原料粉末を混合し、
上記焼成工程においては、雰囲気酸素分圧PO2が50%以上かつ温度900℃以上の加熱を2時間以上行うことを特徴とする積層型圧電素子の製造方法にある(請求項15)。
ペロブスカイト型化合物からなり、上記特定の結晶面Aと格子整合性を有する結晶面が配向して配向面を形成する異方形状の配向粒子からなる異方形状粉末と、該異方形状粉末と反応して上記一般式(1)で表される上記等方性ペロブスカイト型化合物を生成する反応原料粉末とを混合することにより原料混合物を作製する混合工程と、
上記異方形状粉末の上記配向面が略同一の方向に配向するように、上記原料混合物をシート状に成形して成形体を作製する成形工程と、
上記成形体上に、焼成後に上記電極部となる上記導電性金属を含有する電極材料を印刷する印刷工程と、
該印刷工程後の上記成形体を積層して積層体を作製する積層工程と、
上記積層体を加熱することにより、上記圧電セラミック層と上記電極配設層とが複数交互に積層された上記積層型圧電素子を得る焼成工程とを有し、
上記反応原料粉末としては、比表面積が2〜5m2/gのものを採用し、
上記焼成工程は、温度T1℃(1050<T1≦1150)まで昇温させる昇温過程と、上記温度T1℃でt1時間(t1≦5)保持する第1保持過程と、上記温度T1℃から温度T2℃(950≦T2≦1050)まで降温させる降温過程と、上記温度T2℃でt2時間(2≦t2≦20)保持する第2保持過程とを有し、
上記昇温過程における少なくとも上記温度T2℃から上記温度T1℃間の昇温速度をD1℃/時間とし、上記降温過程における降温速度をD2℃/時間とすると、(T1−T2)/t2≦D1≦200かつ(T1−T2)/t2≦D2≦200を満足することを特徴とする積層型圧電素子の製造方法にある(請求項17)。
Li源、K源、Na源、Nb源、Ta源、及びSb源から選ばれる1種以上を上記一般式(1)で表される化合物が生成する化学量論比で配合して原料混合物を作製し、該原料混合物を仮焼成して反応原料粉末を作製する混合工程と、
上記反応原料粉末をシート状に成形して成形体を作製する成形工程と、
上記成形体上に、焼成後に上記電極部となる上記導電性金属を含有する電極材料を印刷する印刷工程と、
該印刷工程後の上記成形体を積層して積層体を作製する積層工程と、
上記積層体を加熱することにより、上記圧電セラミック層と上記電極配設層とが複数交互に積層された上記積層型圧電素子を得る焼成工程とを有し、
上記反応原料粉末としては、比表面積が2〜5m2/gのものを採用し、
上記焼成工程は、温度T1℃(1050<T1≦1150)まで昇温させる昇温過程と、上記温度T1℃でt1時間(t1≦5)保持する第1保持過程と、上記温度T1℃から温度T2℃(950≦T2≦1050)まで降温させる降温過程と、上記温度T2℃でt2時間(2≦t2≦20)保持する第2保持過程とを有し、
上記昇温過程における少なくとも上記温度T2℃から上記温度T1℃間の昇温速度をD1℃/時間とし、上記降温過程における降温速度をD2℃/時間とすると、(T1−T2)/t2≦D1≦200かつ(T1−T2)/t2≦D2≦200を満足することを特徴とする積層型圧電素子の製造方法にある(請求項18)。
そのため、上記圧電セラミックスは、圧電特性に優れ、優れた変位性能を示すことができる。
かかる関係式を満たすため、上記圧電セラミックスは、高い電気絶縁抵抗を示すことができる。そして、上記圧電セラミックスに電極を形成する場合においても、上記圧電セラミックスの電気絶縁抵抗が低下することを抑制することができ、優れた絶縁性能を示すことができる。そのため、上記圧電セラミックスは、電子デバイスに最適である。
また、上記ペロブスカイト型化合物は、一般式ABO3で表されるが、焼成工程においてにおいてAサイト及び/又はOサイトに結晶格子欠陥を生じることが知られている。この結晶格子欠陥が圧電セラミックスの電気絶縁抵抗を低下させており、かつ、上記シェル相に結晶格子欠陥が集中することにより電気絶縁抵抗の低下が顕著になることが明らかになった。この事実に基づき、上記のごとく、上記コア相中の結晶格子欠陥量をdc、上記シェル相中の結晶格子欠陥量をdsとしたとき、ds/dc<1.2の関係式を満たすことにより、十分な電気絶縁抵抗を得ることができる。
そのため、上記第1の発明の圧電セラミックスの優れた特徴を生かして、上記積層型圧電素子は、優れた変位性能を示すことができ、優れた絶縁性能を示すことができる。
該製造方法においては、上記混合工程と、上記成形工程と、上記焼成工程とを行う。
上記第3及び上記第4の発明の上記混合工程においては、上記一般式(1)で表される上記等方性ペロブスカイト型化合物1molに対する添加量がK及び/又はLiの元素換算で0.05mol以下となるように、上記原料混合物又は上記反応原料粉末に対してさらにK原料粉末及び/又はLi原料粉末を混合する。
このようにして作製される上記圧電セラミックスは、上記一般式(1)で表される等方性ペロブスカイト型化合物を主相とする多結晶体からなり、その結晶粒は、互いに組成が異なるコア相とシェル相とを有し、該シェル相は上記コア相を取り囲むように形成されている。そして、上記コア相中の結晶格子欠陥量をdc、上記シェル相中の結晶格子欠陥量をdsとすると、ds/dc<1.2の関係式を満たす。即ち、上記第3及び上記第4の発明の製造方法によれば、上記第1の発明の上記圧電セラミックスを製造することができる。
上記第3及び上記第4の発明の製造方法においては、上記混合工程において、所定量の上記K原料粉末及び/又は上記Li原料粉末を添加している。そのため、上記焼成工程におけるAサイト元素の結晶格子欠陥を抑制することができる。
また、上記第3及び上記第4の発明の製造方法においては、上記焼成工程において、雰囲気酸素分圧PO2が50%以上かつ温度900℃以上の加熱を2時間以上行っている。そのため、上記焼成工程におけるOサイトの結晶格子欠陥を抑制することができる。
その結果、上記焼成工程において、上記圧電セラミックス中における結晶格子欠陥量が増大することを抑制することができる。結晶格子欠陥は、上記シェル相に多く出現することから、上記シェル相の結晶格子欠陥量をより小さくすることができる。
したがって、上記圧電セラミックスの結晶粒を構成する上記コア相中の結晶格子欠陥量をdc、上記シェル相中の結晶格子欠陥量をdsとすると、ds/dc<1.2という関係を満足する上記第1の発明の上記圧電セラミックスを製造することができる。
上記圧電セラミックスは、変位性能に優れると共に、高い電気絶縁抵抗を示すことができる。そして、上記圧電セラミックスに電極を形成する場合においても、上記圧電セラミックスの絶縁抵抗が低下することを抑制することができ、優れた絶縁性能を示すことができる。そのため、上記圧電セラミックスは、電子デバイスに最適である。
特に、上記第5及び上記第6の発明においては、上記反応原料粉末として上記特定の比表面積のものを採用し、(T1−T2)/t2≦D1≦200かつ(T1−T2)/t2≦D2≦200という関係式を満足するように上記焼成工程を行う。これにより、Aサイト元素およびOサイトの結晶格子欠陥を抑制することができる。
上記圧電セラミックスは、変位性能に優れると共に、高い電気絶縁抵抗を示すことができる。そして、上記圧電セラミックスに電極を形成する場合においても、上記圧電セラミックスの絶縁抵抗が低下することを抑制することができ、優れた絶縁性能を示すことができる。そのため、上記圧電セラミックスは、電子デバイスに最適である。
そのため、上記焼成工程において上記成形体を焼成すると、多結晶体を構成する結晶粒の特定の結晶面Aが配向する結晶配向セラミックスからなる圧電セラミックスを得ることができる。
そのため、上記焼成工程において上記成形体を焼成すると、無配向体からなる圧電セラミックスを得ることができる。
上記第7及び第8の発明の製造方法においては、上記混合工程と、上記成形工程と、上記印刷工程と、上記積層工程と、上記焼成工程とを行う。これにより、上記一般式(1){Lix(K1-yNay)1-x}a(Nb1-z-wTazSbw)O3(但し、0≦x≦0.2、0≦y≦1、0≦z≦0.4、0≦w≦0.2、x+z+w>0、0.95≦a≦1)で表される等方性ペロブスカイト型化合物を主相とする多結晶体からなる圧電セラミック層と、導電性金属を含有する内部電極を構成する電極部を含む電極配設層とを複数交互に積層してなる積層型圧電素子を製造する。
上記第7及び上記第8の発明の上記混合工程においては、上記第3及び上記第4の発明と同様に、上記一般式(1)で表される上記等方性ペロブスカイト型化合物1molに対する添加量がK及び/又はLiの元素換算で0.05mol以下となるように、上記原料混合物又は上記反応原料粉末に対してさらにK原料粉末及び/又はLi原料粉末を混合する。
上記積層工程においては、印刷工程後の上記成形体を積層して積層体を作製する。これにより、電極材料と、上記原料混合物からなる成形体とが交互に積層された上記積層体を得ることができる。
そのため、上記第7及び上記第8の発明においては、上記第3及び上記第4の発明と同様に、上記圧電セラミック層の結晶粒を構成する結晶格子欠陥量が増大することを抑制することができる。それ故、上記圧電セラミック層の結晶粒を構成する上記コア相中の結晶格子欠陥量をdc、上記シェル相中の結晶格子欠陥量をdsとすると、ds/dc<1.2という関係を満足する上記第1の発明の上記圧電セラミックスを上記圧電セラミック層とする上記積層型圧電素子を製造することができる。上記積層型圧電素子は、優れた変位性能を示すことができると共に、優れた絶縁性能を示すことができる。
特に、上記第9及び上記第10の発明においては、上記第5及び上記第6の発明と同様に、上記反応原料粉末として、上記特定の比表面積のものを採用し、(T1−T2)/t2≦D1≦200かつ(T1−T2)/t2≦D2≦200という関係式を満足するように上記焼成工程を行う。これにより、Aサイト元素およびOサイトの結晶格子欠陥を抑制することができる。
そのため、上記焼成工程において上記成形体を焼成すると、多結晶体を構成する結晶粒の特定の結晶面Aが配向する結晶配向セラミックスからなる上記圧電セラミック層を形成ことができる。
そのため、上記焼成工程において上記積層体を焼成すると、無配向体からなる上記圧電セラミック層を形成することができる。
本発明において、上記圧電セラミックスは、一般式(1){Lix(K1-yNay)1-x}a(Nb1-z-wTazSbw)O3(但し、0≦x≦0.2、0≦y≦1、0≦z≦0.4、0≦w≦0.2、x+z+w>0、0.95≦a≦1)で表される等方性ペロブスカイト型化合物を主相とする多結晶体からなる。
ここで、「等方性」とは、擬立方基本格子でペロブスカイト型構造ABO3を表現したとき、軸長a、b、cの相対比が0.8〜1.2であり、軸角α、β、γが80〜100°の範囲にあることを示す。
上記一般式(1)におけるyの範囲は、0<y≦1であることがより好ましい。
この場合には、上記一般式(1)で表される化合物において、Naが必須成分となる。そのため、この場合には、上記圧電セラミックスの圧電g31定数をさらに向上させることができる。
また、上記一般式(1)におけるyの範囲は、0≦y<1とすることができる。
この場合には、上記一般式(1)で表される化合物において、Kが必須成分となる。そのため、この場合には、上記圧電セラミックスの圧電d31定数等の圧電特性をさらに向上させることができる。また、この場合には、K添加量の増加に伴い、より低温での焼結が可能になるため、省エネルギーかつ低コストで上記圧電セラミックスを作製することができる。
また、上記一般式(1)において、yは、0.05≦y≦0.75であることがより好ましく、0.20≦y≦0.70であることがさらに好ましい。これらの場合には、上記圧電セラミックスの圧電d31定数及び電気解決合計数Kpを一層向上させることができる。さらに一層好ましくは、0.20≦y<0.70がよく、さらには0.35≦y≦0.65がよく、さらには0.35≦y<0.65がより好ましい。また、最も好ましくは、0.42≦y≦0.60がよい。
上記一般式(1)におけるxの範囲は、0<x≦0.2であることが好ましい。
この場合には、上記一般式(1)で表される化合物において、Liが必須成分となるので、上記圧電セラミックスは、その作製時の焼成を一層容易に行うことができると共に、圧電特性がより向上し、キュリー温度(Tc)を一層高くすることができる。これは、Liを上記のxの範囲内において必須成分とすることにより、焼成温度が低下すると共に、Liが焼成助剤としての役割を果たし、空孔の少ない焼成を可能にするからである。
xの値が0.2を越えると、圧電特性(圧電d31定数、電気機械結合係数kp、圧電g31定数等)が低下するおそれがある。
この場合には、上記一般式(1)は、(K1-yNay)a(Nb1-z-wTazSbw)O3で表される。そしてこの場合には、上記圧電セラミックスを作製する際に、その原料中に例えばLiCO3のように、最も軽量なLiを含有してなる化合物を含まないので、原料を混合し上記圧電セラミックスを作製するときに原料粉の偏析による特性のばらつきを小さくすることができる。また、この場合には、高い比誘電率と比較的大きな圧電g定数を実現できる。上記一般式(1)において、xの値は、0≦x≦0.15がより好ましく、0≦x≦0.10がさらに好ましい。
上記一般式(1)におけるzの範囲は、0<z≦0.4であることが好ましい。
この場合には、上記一般式(1)で表される化合物において、Taが必須成分となる。そのため、この場合には、焼結温度が低下すると共に、Taが焼結助剤の役割を果たし、上記圧電セラミックス中の空孔を少なくすることができる。
この場合には、上記一般式(1)は、{Lix(K1-yNay)1-x}a(Nb1-wSbw)O3で表される。そして、この場合には、上記一般式(1)で表される化合物はTaを含まない。そのためこの場合には、上記一般式(1)で表される化合物は、その作製時に高価なTa成分を使用することなく、優れた圧電特性を示すことができる。
上記一般式(1)において、zの値は、0≦z≦0.35がより好ましく、0≦z≦0.30がさらに好ましい。
また、上記一般式(1)におけるwの値は、0<w≦0.2であることが好ましい。
この場合には、上記一般式(1)で表される化合物において、Sbが必須成分となる。そのため、この場合には、焼結温度が低下し、焼結性を向上させることができると共に、誘電損失tanδの安定性を向上させることができる。
上記コア相は、上記等方性ペロブスカイト型化合物からなる上記圧電セラミックス全体の平均組成よりも、例えば成分元素Na、Ta、及びSbの含有量が多い上記等方性ペロブスカイト型化合物からなる。一方、上記シェル相は、上記圧電セラミックス全体の平均組成よりも、例えば成分元素K及びNbの含有量が多い上記一般式(1)で表される上記等方性ペロブスカイト型化合物からなる。
また、上記コア相の組成と上記シェル相の組成とを比較すると、同じ元素の組成について例えば3〜25%程度の組成差がある。
即ち、例えば、組成分析をX線マイクロアナライザ(EPMA:Electron Probe Micro−Analysis)を用い、15kVの加速電圧にてEPMA分析(元素マッピング分析)を行い、その後ZAF補正を施し、組成を求めることができる。元素マッピング分析を行い、元素分布からコア相、シェル相を同定した後、各々の粒子の元素分析結果を得る。なおさらに精密な分析値を得るためには、各相についてEPMA点分析を実施し、ZAF補正の後、各粒子の正確な組成を得る。
また、簡便に上記コア相と上記シェル相とを見分ける方法としては、走査型電子顕微鏡(SEM)の反射電子(BSE)像による顕微鏡観察を利用できる。SEM観察により、上記コア相と上記シェル相とは明確に区別することができる。
ds/dc≧1.2の場合には、上記圧電セラミックスの電気絶縁抵抗が低下するおそれがある。
即ち、上記圧電セラミックスにおいては、結晶配向セラミックスであっても、無配向体であっても、ds/dc<1.2の関係式を満足することにより、電気絶縁抵抗の高い圧電セラミックスを実現することができる。
この場合には、上記圧電セラミックスの圧電特性をより向上させることができる。また、好ましくは、上記結晶面Aは、{100}面であることがよい。{100}面が配向する場合には、ペロブスカイト型化合物の分極軸と垂直になり、配向粒子の変位方向と同方向になることから、より高い変位性能を得ることができる。
「特定の結晶面Aが配向する」とは、上記等方性ペロブスカイト型化合物の特定の結晶面Aが互いに平行になるように、各結晶粒が配列していること(以下、このような状態を「面配向」という。)を意味する。
また、特定の結晶面Aが面配向している場合において、面配向の程度は、次の数1の式で表されるロットゲーリング(Lotgering)法による平均配向度F(HKL)で表すことができる。
また、配向させる特定の結晶面は、分極軸に垂直な面であることが好ましい。
結晶配向セラミックスからなる上記圧電セラミックスは、上記異方形状粉末を成形体中に配向させ、この異方形状粉末をテンプレート又は反応性テンプレートとして用いて例えば上記一般式(1)で表される化合物等の等方性ペロブスカイト型化合物の合成及びその焼結を行わせることができる。これにより、多結晶体を構成する各結晶粒の特定の結晶面が一方向に配向した結晶配向セラミックスを得ることができる。上記圧電セラミックスが上記結晶配向セラミックスからなる場合の製造方法については、後述する。
この場合には、上記圧電セラミックスの製造時に原料の調整が容易になり、上記圧電セラミックスを容易に製造することができる。
当該製造方法の上記混合工程においては、上記一般式(1)で表される化合物が生成する化学量論比で、異方形状粉末と反応原料粉末とを混合して原料混合物を作製するか、Li源、K源、Na源、Nb源、Ta源、及びSb源から選ばれる1種以上を混合して仮焼し、反応原料粉末を作製する。仮焼は、例えば温度600〜750℃で2〜5時間行うことができる。
また、上記混合工程においては、上記一般式(1)で表される上記等方性ペロブスカイト型化合物1molに対する添加量がK及び/又はLiの元素換算で0.05mol以下となるように、上記原料混合物又は上記反応原料粉末に対してさらにK原料粉末及び/又はLi原料粉末を混合する。即ち、上記K原料粉末及び/又は上記Li原料粉末を、上記K原料粉末中のK元素量及び/又は上記Li原料粉末中のLi元素量が上記等方性ペロブスカイト型化合物1molに対して0.05mol以下となるように混合する。
上記K原料粉末及び/又はLi原料粉末の添加量がK及び/又はLiの元素換算で0.05molを越える場合には、生成する上記等方性ペロブスカイト型化合物の組成が所望の組成からずれたり、異相を析出したりするおそれがある。その結果、上記圧電セラミックスの圧電特性が低下するおそれがある。
この場合には、上記K原料粉末及び/又は上記Li原料粉末は、Aサイト元素の結晶格子欠陥を補充できるという役割だけでなく、焼結助剤としての役割を兼ね備えることができ、焼結温度を低下させることができる。
上記成形工程においては、上記原料混合物を厚み30μm以上で成形することが好ましい。
厚みが30μm未満の場合には、上記成形体の取り扱いが非常に困難になるおそれがある。
雰囲気酸素分圧PO2が50%未満の場合、又は温度900℃未満の場合、又は加熱時間が2時間未満の場合には、焼成後に生成する上記圧電セラミックスのOサイトの結晶格子欠陥が増大し、上記圧電セラミックスの電気絶縁抵抗が低下するおそれがある。
当該製造方法においては、上記反応原料粉末として比表面積が2〜5m2/gのものを採用する。
上記反応原料粉末の比表面積が2m2/g未満の場合には、焼成温度が低下し、上記圧電セラミックスの結晶粒が大きくなるおそれがある。その結果、圧電特性が劣化するおそれがある。また、この場合にはds/dc<1.2の圧電セラミックスを得ることが困難になるおそれがある。一方、5m2/gを超える場合には、焼成温度が高くなるおそれがある。その結果、例えば積層型圧電素子の製造する際において、焼成中に内部電極が溶融してしまうおそれがある。
上記第1保持過程においては、主として上記圧電セラミックスの上記コア相を成長させることができ、上記第2保持過程においては、主として上記圧電セラミックスの上記シェル相を成長させることができる。
また、上記第1保持過程における保持時間t1が5hを超える場合にも、欠陥が増大するおそれがある。また、好ましくはt1≧0.1hがよい。
また、上記第2保持過程における保持時間t2が2h未満の場合には、上記シェル相の形成が不十分になるおそれがある。一方、保持時間t2が20hを超える場合には、シェル相の厚みが大きくなりすぎて、圧電特性の温度に対するバラツキが大きくなるおそれがある。即ち、圧電特性の温度依存性が悪くなるおそれがある。
この場合には、上記多結晶体を構成する上記結晶粒の特定の結晶面Aが配向する結晶配向セラミックスからなる上記圧電セラミックスを製造することができる。かかる圧電セラミックスは、圧電特性により優れたものになる。
上記異方形状粉末は、ペロブスカイト型化合物よりなる配向粒子の粉末を採用することができる。また、配向粒子は、異方形状を有し、作製しようとする上記多結晶体を構成する上記結晶粒の特定の結晶面Aと格子整合性を有する結晶面が配向して配向面を形成している。
格子整合性を説明するにあたり、例えば上記配向粒子が金属酸化物である場合について説明する。即ち、上記配向粒子における上記配向面の二次元結晶格子において、例えば酸素原子からなる格子点又は金属原子からなる格子点と、上記多結晶体において配向する上記特定の結晶面Aの二次元結晶格子における酸素原子からなる格子点又は金属原子からなる格子点とが、相似関係を有する場合に、両者には格子整合性が存在する。
格子整合率は、上記配向粒子における上記配向面と、上記多結晶体において配向する上記特定の結晶面Aの相似位置における格子寸法との差の絶対値を上記配向粒子における上記配向面の格子寸法で除することにより得られる値を百分率で表すものである。
より高配向度の結晶配向セラミックスを得るためには、上記配向粒子の格子整合率は、20%以下が好ましく、さらに好ましくは10%以下がよく、さらにより好ましくは5%以下がよい。
この場合には、上記結晶面Aが配向する上記結晶配向セラミックスからなる上記圧電セラミックスを比較的簡単に作製することができる。具体的には、上記配向粒子としては、擬立方{100}面及び/又は擬立方{200}面が配向した粒子を用いることができる。この場合には、配向軸と分極軸とが一致する正方晶域において、大電界下で発生する変位の温度依存性が改善された結晶配向セラミックスを得ることができる。
具体的には、上記配向粒子としては、例えば上記一般式(1)で表される化合物等のように目的の等方性ペロブスカイト型化合物と同一組成を有するもの等を用いることができる。
また、上記配向粒子は、必ずしも上記一般式(1)で表される化合物等のように目的の等方性ペロブスカイト型化合物と同一組成を有するものである必要はなく、後述の反応原料粉末と焼結することにより、目的とする上記一般式(1)で表される等方性ペロブスカイト型化合物を主成分として生成するものであればよい。したがって、上記配向粒子としては、作製しようとする等方性ペロブスカイト型化合物に含まれる陽イオン元素のうちいずれか1種以上の元素を含む化合物あるいは固溶体等から選ぶことができる。
{Lix(K1-yNay)1-x}(Nb1-z-wTazSbw)O3 ・・・(2)
(但し、x、y、z、wがそれぞれ0≦x≦1、0≦y≦1、0≦z≦1、0≦w≦1)
(Bi2O2)2+(Bi0.5Mem-1.5NbmO3m+1)2- ・・・(3)
(但し、mは2以上の整数、MeはLi、K及びNaから選ばれる1種以上)
所定の組成、平均粒径及び/又はアスペクト比を備えた層状ペロブスカイト型化合物からなる異方形状粉末(即ち、上記異方形状粉末B)は、その成分元素を含む酸化物、炭酸塩、硝酸塩等を原料(以下、これを「異方形状粉末生成原料」という。)とし、この異方形状粉末生成原料を液体又は加熱により液体となる物質と共に加熱することにより容易に製造することができる。
を加えて所定の温度で加熱する方法(フラックス法)や、作製しようとする異方形状粉末Bと同一組成を有する不定形粉末をアルカリ水溶液と共にオートクレーブ中で加熱する方法(水熱合成法)等が好適な例としてあげられる。
すなわち、上記異方形状粉末Bを反応性テンプレートとして用いて、異方形状粉末Aを合成する場合においても、異方形状粉末Aの平均アスペクト比は、少なくとも3以上が好ましく、より好ましくは5以上、さらに好ましくは10以上がよい。また、後工程における粉砕を抑制するためには、平均アスペクト比は、100以下であることが好ましい。
これに対し、層状ペロブスカイト型化合物は、結晶格子の異方性が大きいので、異方形状粉末を直接合成することが容易にできる。また、層状ペロブスカイト型化合物からなる異方形状粉末の配向面は、上記一般式(2)で表される化合物の特定の結晶面との間に格子整合性を有しているものが多い。さらに、上記一般式(2)で表される化合物は、層状ペロブスカイト型化合物に比べて熱力学的に安定である。
この場合には、上記配向粒子を用いることにより、非鉛系の中でも相対的に高い圧電特性を示す等方性ペロブスカイト型ニオブ酸カリウムナトリウム系の結晶配向セラミックスを作製できる。
この場合には、より配向度の高い結晶配向セラミックスを作製することができる。
即ち、上述のごとく、上記一般式(2)で表される化合物は、上記一般式(1)で表される化合物と良好な格子整合性を有している。そのため、上記一般式(2)で表され、かつ特定の結晶面を上記配向面とする上記配向粒子からなる上記異方形状粉末は、上記結晶配向セラミックスを製造するための良好な反応性テンプレートとして機能することができる。
上記反応原料粉末は、上記異方形状粉末の1/3以下の粒径を有することが好ましい。
上記反応原料粉末の粒径が上記異方形状粉末の粒径の1/3を超える場合には、上記成形工程において、上記異方形状粉末の上記配向面が略同一の方向に配向するように、上記原料混合物を成形することが困難になるおそれがある。より好ましくは、上記反応原料粉末の粒径は、上記異方形状粉末の粒径の1/4以下がよく、さらには1/5以下がよい。
上記反応原料粉末と上記異方形状粉末との粒径の比較は、上記反応原料粉末の平均粒径と上記異方形状粉末の平均粒径とを比較することによって行うことができる。なお、上記異方形状粉末の粒径及び上記反応原料粉末の粒径は、いずれも最も長尺の径のことをいう。
この場合には、上述のごとく、複雑な組成の結晶配向セラミックスを簡単に作製することができる。
この場合には、上記焼成工程において上記反応原料粉末と上記異方形状粉末とを良好な反応性で反応させることができる。また、副生成物が生成することを抑制することができる。
仮焼は、例えば温度600〜750℃で2〜5時間行うことができる。
またLi源、K源、Na源、Nb源、Ta源、及びSb源の各元素源としては、Li、K、Na、Nb、Ta、及びSbから選ばれる1種以上の元素を含有する上述の酸化物粉末、炭酸塩粉末等を用いることができる。好ましくは、各酸化物粉末、炭酸塩粉末等は、それぞれLi、K、Na、Nb、Ta、及びSbから選ばれる1種類又は2種類の元素を含むことがよい。この場合には、反応原料粉末の調製が容易になる。上記反応原料粉末としては、これらの元素を含有する各粉末の混合物を仮焼してなる仮焼粉を用いることができる。そして、上記異方形状粉末と上記反応原料粉末との焼結により、目的のペロブスカイト型化合物が生成するように、上述の各元素を含む粉末を組み合わせて使用することができる。
上記混合工程においては、所定の比率で配合された上記異方形状粉末、及び上記反応原料粉末に対して、さらにこれらの物質の反応によって得られる等方性ペロブスカイト型化合物と同一組成の化合物からなる不定形の微粉(以下、これを「化合物微粉」という。)を添加することができる。また、例えばCuO等の焼結助剤を添加することもできる。上記化合物微粉や上記焼結助剤を添加すると、焼結体の緻密化がさらに容易になるという利点がある。
この場合には、上記添加元素を含有する結晶配向セラミックスからなる上記圧電セラミックスを作製することができる。これにより、上記圧電セラミックスの圧電d33定数、電気機械結合係数Kp、圧電g31定数等の圧電特性や、比誘電率、誘電損失等の誘電特性を向上させることができる。上記添加元素は、上記一般式(1)で表される化合物のAサイトやBサイトに対して、置換添加されていても良いが、外添加されて上記一般式(1)で表される化合物の粒内又は粒界中に存在することもできる。
即ち、上記添加元素は、上記異方形状粉末を合成する際に添加することができる。
また、上記添加元素は、上記反応原料粉末を合成する際に添加することができる。
また、上記添加元素は、上記混合工程において、上記反応原料粉末及び上記異方形状粉末と共に添加することができる。
このような方法によって上記添加元素を添加することにより、上記添加元素を含有する上記原料混合物を簡単に得ることができる。そして、該原料混合物を成形及び焼成することにより、上記添加元素を含有する上記結晶配向セラミックスからなる上記圧電セラミックスを得ることができる。
また、上記添加元素は、添加元素単体で添加されていても良いが、上記添加元素を含む酸化物や化合物として添加されていても良い。
上記添加元素が0.0001mol未満の場合には、上記添加元素による上記圧電特性等の向上効果を充分に得られないおそれがある。一方、0.15molを超える場合には、上記圧電セラミックスの圧電特性や誘電特性がかえって低下するおそれがある。
この場合には、上記添加元素が上記等方性ペロブスカイト型化合物に置換添加された上記結晶配向セラミックスを得ることができる。かかる結晶配向セラミックスは、より一層優れた圧電d33定数や電気機械結合係数Kp等の圧電特性、及びより一層優れた比誘電率ε33T/ε0等の誘電特性を示すことができる。
上記添加元素が0.01at%未満の場合には、上記結晶配向セラミックスの圧電特性や誘電特性の向上効果が充分に得られないおそれがある。一方、15at%を超える場合には、上記結晶配向セラミックスの圧電特性や誘電特性がかえって低下するおそれがある。より好ましくは、0.01〜5at%がよく、さらに好ましくは、0.01〜2at%がよく、さらにより好ましくは、0.05〜2at%がよい。
ここで、「at%」とは、上記一般式(1)で表される化合物におけるLi、K、Na、Nb、Ta、及びSbの原子の数に対する置換された原子の数の割合を100分率で示したものである。
この場合においては、上記第3の発明及び上記第5の発明に示すごとく、上記成形工程において、上記異方形状粉末の上記配向面が略同一の方向に配向するように、上記原料混合物をシート状に成形して上記成形体を作製する。
成形方法については、上記異方形状粉末を配向させることが可能な方法であればよい。上記異方形状粉末を面配向させる成形方法としては、具体的にはドクターブレード法、プレス成形法、圧延法等が好適な例としてあげられる。これらの成形方法によれば、異方形状粉末に作用するせん断応力等によって、異方形状粉末を成形体内で略同一の方向に配向させることができる。
厚みが30μm未満の場合には、上記成形体の取り扱いが非常に困難になるおそれがある。一方、200μmを越える場合には、上記成形体中で上記異方形状粉末を略同一方向に配向させることが困難になるおそれがある。
この場合には、上記面配向成形体に対して、いずれか1種類の面配向処理を行うこともできるが、2種以上の面配向処理を行うこともできる。また、上記面配向成形体に対して、1種類の面配向処理を繰り返し行うこともでき、また、2種以上の面配向処理をそれぞれ複数回繰り返し行うこともできる。
この場合には、上記焼成工程において、上記異方形状粉末と上記反応原料粉末とを焼結させる。
ただし、上記第3の発明においては、上述のごとく、電気絶縁抵抗の低下を抑制するという観点から、上記焼成工程において、雰囲気酸素分圧PO2が50%以上かつ温度900℃以上の加熱を2時間以上行う。
無配向体からなる上記圧電セラミックスを製造する場合においては、上記Li源、上記K源、上記Na源、上記Nb源、上記Ta源、及び上記Sb源から選ばれる1種以上の上記原料粉末を、所望の組成の上記等方性ペロブスカイト型化合物となる配合比で混合して上記原料混合物を作製することができる。そして、該原料混合物を仮焼してなる仮焼粉(反応原料粉末)を作製し、該仮焼粉を用いて成形工程及び焼成工程を行う。
また、上記Li源、上記K源、上記Na源、上記Nb源、上記Ta源、及び上記Sb源としては、Li、K、Na、Nb、Ta、及びSbから選ばれる1種又は2種以上の金属元素を含有するものを採用することもできる。
上記積層型圧電素子は、圧電セラミック層と、導電性金属を含有する内部電極を構成する電極部を含む電極配設層とを複数交互に積層してなる。
上記積層型圧電素子において、上記圧電セラミック層は、上記第1の発明の上記圧電セラミックスからなる。
上記積層型圧電素子において、上記圧電セラミック層としては、無配向体又は特定の結晶面が配向した配向体(結晶配向セラミックス)からなる上記圧電セラミックスを採用することができる。
この場合には、電気絶縁抵抗の低下を抑制できるという本発明の作用効果をより顕著に発揮することができる。
即ち、上記積層型圧電素子の作製時に上記電極配設層と上記圧電セラミック層とを一体焼成により形成する場合には、上記導電性金属が上記圧電セラミック層に拡散しやすくなる。本発明においては、上記圧電セラミックス層として、ds/dc<1.2を満足する上記圧電セラミックスを採用しているため、上記導電性金属が上記圧電セラミック層に拡散した場合においても、上記圧電セラミック層の電気絶縁抵抗の低下を充分に抑制することができる。
上記第7及び上記第9の発明においては、上記混合工程、上記成形工程、上記印刷工程、上記積層工程、及び上記焼成工程を行って上記積層型圧電素子を製造することができる。
上記第7及び上記第9の発明の上記混合工程においては、上記異方形状粉末と上記反応原料粉末とを混合して上記原料混合物を作製する。この混合工程は、上記第3及び上記第5の発明と同様にして行うことができる。
また、上記第3及び上記第5の発明と同様に、上記第7及び上記第9の発明においては、上記反応原料粉末としては、Li源、K源、Na源、Nb源、Ta源、及びSb源から選ばれる1種以上を混合し仮焼して得られる仮焼粉を採用し、各元素源は、上記仮焼粉からなる上記反応原料粉末と上記異方形状粉末とから上記一般式(1)で表される化合物が生成する化学量論比で配合することが好ましい(請求項19)。
上記第7及び第8の発明においても、上記K原料粉末及び/又は上記Li原料粉末は、炭酸塩、炭酸水素塩、又はホウ酸塩からなることが好ましい。
また、上記第8及び上記第10の発明においては、上記反応原料粉末をシート状に成形して成形体を作製する。
上記成形工程においては上記成形体の厚みを30〜200μmにすることが好ましい(請求項20及び請求項21)。
電極材料としては、例えばペースト状のAg/Pd合金を用いることができる。これ以外にも、Ag、Pd、Cu、Ni等の単体、Cu/Ni等の合金を用いることもできる。
この場合には、電気絶縁抵抗の低下を抑制できるという本発明の作用効果をより顕著に発揮することができる。
即ち、一般に、Ag/Pd合金を含有する上記電極材料を用いた場合には、焼成時に、Agが圧電セラミック層中に拡散し、該圧電セラミック層の電気絶縁抵抗が低下し易くなる。本発明においては、上記混合工程において、上記K原料粉末及び/又は上記Li原料粉末を用い、さらに上記焼成工程において雰囲気酸素分圧PO2が50%以上かつ温度900℃以上の加熱を2時間以上行っている(上記第7及び上記第8の発明)。また、上記特定比表面積の上記反応原料粉末を用い、さらに上記焼成工程において上述の(T1−T2)/t2≦D1≦200かつ(T1−T2)/t2≦D2≦200という関係を満足する温度制御を行っている。そのため、上述のごとく結晶格子欠陥を抑制し、上記電極材料からAgが圧電セラミック層中に拡散しても上記圧電セラミック層の電気絶縁抵抗の低下を抑制することができる。
具体的には、焼成後の積層型圧電素子の圧電セラミック層間に全面電極を形成させるように、電極材料を印刷することもできるし、また、圧電セラミック層間に部分電極を形成させるように、電極材料を印刷することもできる。部分電極を形成する場合には、電極部の一部を積層型圧電素子の側面から後退させて電極非形成部が形成されるように電極材料を上記グリーンシート上の所望の領域に印刷する。
上記積層体の積層方向における両端には、必要に応じて電極材料が印刷されていない上記グリーンシートを配設することができる。これにより、焼成後に圧電セラミックスからなるダミー層が積層方向の両端に形成された積層型圧電素子を得ることができる。ダミー層形成用のグリーンシートは上記積層体の積層方向の両端にそれぞれ1層又は2層以上形成することができる。
また、焼成前に上記積層体を脱脂し、バインダー等の有機成分を除去することができる。
上記第7及び上記第8の発明の上記焼成工程は、上記第3及び上記第4の発明と同様にして行うことができる。
また、上記第9及び上記第10の発明の上記焼成工程は、上記第5及び上記第6の発明と同様にして行うことができる。
次に、本発明の実施例につき、説明する。
本例においては、図1(a)及び(b)に示すごとく、圧電セラミックスよりなる圧電セラミック層2と、導電性金属を含有する内部電極を構成する電極部31を含む電極配設層3とを複数交互に積層してなる積層型圧電素子1を製造する。
圧電セラミック層2は、一般式(1){Lix(K1-yNay)1-x}a(Nb1-z-wTazSbw)O3(但し、0≦x≦0.2、0≦y≦1、0≦z≦0.4、0≦w≦0.2、x+z+w>0、0.95≦a≦1)で表される等方性ペロブスカイト型化合物を主相とする多結晶体からなる。本例においては、圧電セラミック層2は、特に、{Li0.08(K0.5Na0.5)0.92}
(Nb0.84Ta0.1Sb0.06)O3で表される等方性ペロブスカイト型化合物を主相とする多結晶体からなる。
また、図1(a)、(b)及び図(2)に示すごとく、電極配設層3の電極部31は、AgPd合金からなる。
混合工程においては、原料粉末を上記一般式(1)で表される上記等方性ペロブスカイト型化合物が生成する配合比で配合して原料混合物を作製する。このとき、上記一般式(1)で表される上記等方性ペロブスカイト型化合物1molに対する添加量が0.05mol以下となるように、上記原料混合物に対してさらにK原料粉末及び/又はLi原料粉末を混合する。本例においては、特に、K原料粉末(K2CO3)を0.05mol添加する。
印刷工程においては、グリーンシート上に、焼成後に上記電極部となる上記導電性金属を含有する電極材料を印刷する。本例においては、導電性金属としてAgPd合金を含有する電極材料を採用する。
焼成工程においては、積層体を加熱することにより、圧電セラミック層2と電極配設層3とが複数交互に積層された積層型圧電素子1を得る(図1(a)及び(b)参照)。このとき、異方形状粉末と反応原料粉末とが反応して上記等方性ペロブスカイト型化合物を生成する。
また、焼成工程においては、雰囲気酸素分圧PO2が50%以上かつ温度900℃以上の加熱を2時間以上行う。
(1)異方形状粉末の作製
まず、以下のようにして異方形状粉末として、特定の結晶面が配向してなる配向面を有し、該配向面が目的の多結晶体を構成する特定の結晶面A({100}面)と格子整合性を有する配向粒子からなる異方形状粉末を作製する。具体的には、本例においては、Bi2.5Na3.5Nb5O18からなる上記異方形状粉末Bを作製し、この異方形状粉末Bを用いて、NaNbO3からなる板状の異方形状粉末(上記異方形状粉末A)を作製する。
次に、得られた混合物を白金るつぼに入れ、850℃×1hの条件下で加熱し、フラックスを完全に溶解させた後、さらに1100℃×2hの条件下で加熱することにより、BINN5を合成した。なお、昇温速度は、200℃/hrとし、降温は炉冷とした。冷却後、反応物から湯洗によりフラックスを取り除き、BINN5粉末(異方形状粉末B)を得た。得られたBINN5粉末は、{001}面を配向面とする板状粉末であった。
得られた反応物には、NaNbO3粉末に加えてBi2O3が含まれているので、反応物からフラックスを取り除いた後、これをHNO3水溶液中に入れ、余剰成分として生成したBi2O3を溶解させた。さらに、この溶液を濾過してNN粉末を分離し、80℃のイオン交換水で洗浄した。このようにして、異方形状粉末としてのNN粉末(異方形状粉末)を得た。
得られたNaNbO3粉末は、擬立方{100}面を配向面とし、平均粒径15μmであり、かつアスペクト比が約10〜20程度の板状粉末であった。
次に、以下のようにして、異方形状粉末の平均粒子の1/3以下の平均粒径を有し、異方形状粉末と焼結させることにより上記等方性ペロブスカイト型化合物を生成する反応原料粉末を作製する。
本例においては、目的のセラミックスの組成{Li0.08(K0.5Na0.5)0.92}(Nb0.84Ta0.1Sb0.06)O3におけるAサイト元素の5mol%がNN粉末(異方形状粉末)の元素から供給されるように、NN粉末を配合する。
したがって、反応原料粉末の作製にあたっては、まず、目的のセラミックスの組成{Li0.08(K0.5Na0.5)0.92}(Nb0.84Ta0.1Sb0.06)O3から、NN粉末の配合分を差し引いた組成となるように、純度99.99%以上のNa2CO3粉末、K2CO3粉末、Li2CO3粉末、Nb2O5粉末、Ta2O5粉末、及びSb2O5粉末を秤量し、有機溶剤を媒体としてZrO2ボールで20時間湿式混合した。
次に、上記のように作製した異方形状粉末と反応原料粉末とを、目的のセラミックスの組成{Li0.08(K0.5Na0.5)0.92}(Nb0.84Ta0.1Sb0.06)O3で表される等方性ペロブスカイト型化合物を生成する配合比で配合し、原料混合物を得た。このとき、目的のセラミックスの組成{Li0.08(K0.5Na0.5)0.92}(Nb0.84Ta0.1Sb0.06)O3におけるAサイト元素の5mol%が異方形状粉末の元素から供給されるように、配合を行った。
さらに、目的のセラミックスの組成{Li0.08(K0.5Na0.5)0.92}(Nb0.84Ta0.1Sb0.06)O3で表される上記等方性ペロブスカイト型化合物1molに対する添加量が0.05モルとなるように、原料混合物に対してK原料粉末(K2CO3)を添加して混合した。
次いで、原料混合物に、ポリオキシアルキレン系高分子分散剤を1重量%添加し、有機溶剤を媒体としてZrO2ボールで20時間湿式混合を行い、スラリー状の原料混合物を得た。
その後、スラリーに対してバインダーとしてのポリビニルブチラール樹脂(PVB)及び可塑剤としてのフタル酸ジブチルを、粉末試料重量に対して15重量%加えてさらにインペラミキサーで1時間混合した。
次に、ドクターブレード装置を用いてスラリー状の原料混合物を、厚さ約100μmのテープ状に成形し、成形体(グリーンシート)を得た。このとき、異方形状粉末に作用するせん断応力等によって、異方形状粉末をグリーンシート内で略同一方向に配向させることができる。
次に、Pdを30mol%含有するAgPd合金粉末を準備した。このAgPd合金粉末と、上述の反応原料粉末とをそれぞれ体積比9:1で混合し、さらにエチルセルロースとテルピネオールとを加え、ペースト状の電極材料を作製した。この電極材料をグリーンシート上の上記電極部を形成する領域に印刷した。
本例においては、後述の焼成工程後に得られる積層型圧電素子1において、圧電セラミック層2間の全面に電極部31が形成されるように電極材料を印刷した(図1(a)及び(b)参照)。
なお、電極部の一部を積層型圧電素子の側面から後退させて電極非形成部が形成されるように電極材料を上記グリーンシート上の所望の領域に印刷することもできる。この場合には、所謂部分電極を形成することができる。
次いで、電極材料を印刷したグリーンシートを積層して圧着することにより、積層方向の厚さが1.5mmの板状の成形体を得た。また、積層時には、積層体の積層方向の両端部に電極材料が印刷されていないグリーンシートを配置した。このグリーンシートは、焼成後にダミー層30を形成する(図1(a)及び(b)参照)。
次に、脱脂後の積層体を焼成し、積層型圧電素子を得た。
具体的には、まず、酸素分圧PO2が100%に雰囲気制御された加熱炉内に、脱脂後の積層体を配置し、昇温速度200℃/hで温度1120℃(焼成温度)まで昇温させた。次いで、1120℃の温度で1時間保持した。次に、降温速度75℃/hで温度900℃まで冷却した。その後、降温速度200℃/hで室温まで冷却し、積層型圧電素子を取り出した。
なお、焼成工程における温度900℃以上の加熱時間は5時間であった。
このようにして、結晶配向セラミックスからなる圧電セラミック層2と、AgPd合金からなる全面電極31(電極配設層3)とが交互に積層された積層型圧電素子1を得た(図1(a)及び(b)参照)。これを試料E1とする。
試料E1の作製にあたって、混合工程におけるK原料粉末(K2CO3)の添加量、焼成工程における酸素分圧PO2、焼成温度、温度900℃以上の加熱時間(以下、適宜「規定条件焼成時間」という)を後述の表1に示す。
また、焼成工程は、酸素分圧PO2が50%に雰囲気制御された加熱炉内で行った。焼成は、昇温速度200℃/hで温度1100℃(焼成温度)まで昇温させ、この温度で1時間保持した。その後、降温速度200℃/hで室温まで冷却し、積層型圧電素子(試料E2)を取り出した。このときの、上記規定条件焼成時間は3時間であった。
また、焼成工程は、酸素分圧PO2が20%に雰囲気制御された加熱炉内で行った。焼成は、昇温速度200℃/hで温度1140℃(焼成温度)まで昇温させ、この温度で2時間半保持した。その後、降温速度200℃/hで室温まで冷却し、積層型圧電素子(試料C1)を取り出した。このときの、上記規定条件焼成時間は5時間であった。
また、焼成工程は、酸素分圧PO2が0%に雰囲気制御された加熱炉内で行った。焼成は、昇温速度200℃/hで温度1140℃(焼成温度)まで昇温させ、この温度で1時間保持した。その後、降温速度30℃/hで温度900℃まで冷却し、さらに降温速度200℃/hで室温まで冷却して積層型圧電素子(試料C2)を取り出した。このときの、上記規定条件焼成時間は10時間であった。
次に、本例においては、上記試料E1、試料E2、及び試料C1〜試料C3の積層型圧電素子の特性を調べる。
まず、各試料の積層型圧電素子について、走査型電子顕微鏡((株)日立ハイテクノロジーズ製の「S−4300SE」)を用いて、圧電セラミック層における結晶粒の構造を観察した。そのSEM写真の一例(試料E1)を図3に示す。
図3より知られるごとく、電極部31間に形成された圧電セラミック層2を構成する結晶粒20は、コア相21とシェル相22を有している。図3を部分的に模式的に表したものが図2であり、同図より知られるごとく、電極部31間に形成された圧電セラミック層2においては、その結晶粒20がコア相21とシェル相22とから構成されている。
圧電セラミック層におけるコア相とシェル相の結晶格子欠陥量は、カソードルミネッセンス(CL)分光分析により測定した。測定装置としては、Jobin Yvon(ジョバンイボン)社製のカソードルミネッセンス装置を用いた。
測定は、温度;RT(室温)、スリット;1mm、Cレンズ;2、対物絞り;2、加速電圧;15kV、倍率;3000倍、W.D.;10mm、露光時間;5s(1ポイント当たり)という条件で行った。
コア相とシェル相の結晶格子欠陥量は、500〜700nmの波長域にあるピークトップの強度で比較することができる。
また、図5に、CL分光分析の結果として、コア相とシェル相におけるCL強度と測定波長との関係を示す。CL分光分析の測定は、コア相及びシェル相についてそれぞれ2ヵ所ずつ行い、これらのピークトップの強度の平均をもって結晶格子欠陥量(CL分光分析のピークトップ強度)とした(図5参照)。
コア相の結晶格子欠陥量dc、シェル相の結晶格子欠陥量ds、及び両者の比ds/dcを後述の表2に示す。
次に、各試料(試料E1、試料E2、及び試料C1〜試料C3)の嵩密度を測定した。
即ち、まず、各試料の乾燥時の重量(乾燥重量)をそれぞれ測定した。また、各試料を水に浸漬して各試料の開気孔部に水を浸透させた後、各試料の重量(含水重量)を測定した。次いで、含水重量と乾燥重量との差から、各試料中に存在する開気孔の体積を算出した。また、アルキメデス法により、各試料について、開気孔を除いた部分の体積を測定した。次いで、各試料の乾燥重量を、各試料の全体積(開気孔の体積と開気孔を除いた部分の体積との合計)で除することにより、各試料の嵩密度を算出した。その結果を後述の表2に示す。
次に、各試料(試料E1、試料E2、及び試料C1〜試料C3)における圧電セラミック層の電気絶縁抵抗を比較するために、比抵抗を測定した。
具体的には、まず、各試料の積層型圧電素子について、その側面から内層電極を取り出し、電極間距離に対して2kV/mmになるよう電圧を印加し、抵抗測定装置により比抵抗を測定した。その結果を表2に示す。
その結果、試料C1〜試料C3においては、圧電セラミック層のds/dcが1.2以上に大きくなっており、上記試料E1及び上記試料E2に比べて比抵抗が大きく低下していた。
この場合にも、実施例1と同様の作用効果を得ることができる。
実施例1においては、コア相とシェル相との結晶格子欠陥量の比ds/dcがds/dc<1.2という関係を満足する圧電セラミックスからなる圧電セラミック層を有する式積層型圧電素子(上記試料E1及び試料E2)を作製したが、本例においては、ds/dc<1.2という関係を満足する上記圧電セラミックス自体を作製する例である。
本例においては、化学式{Li0.08(K0.5Na0.5)0.92}
(Nb0.84Ta0.1Sb0.06)O3で表される等方性ペロブスカイト型化合物を主相とする多結晶体からなる圧電セラミックスを作製する。また、本例においては、圧電セラミックスとして、上記多結晶体を構成する結晶粒の特定の結晶面A({100}面)が配向する結晶配向セラミックスを作製する。
混合工程においては、原料粉末を上記等方性ペロブスカイト型化合物が生成する配合比で配合して原料混合物を作製する。このとき、上記等方性ペロブスカイト型化合物1molに対する添加量が0.05mol以下となるように、上記原料混合物に対してさらにK原料粉末及び/又はLi原料粉末を混合する。また、混合工程においては、ペロブスカイト型化合物からなり、上記特定の結晶面A({100}面)と格子整合性を有する結晶面が配向して配向面を形成している異方形状の配向粒子からなる異方形状粉末と、該異方形状粉末と反応して上記等方性ペロブスカイト型化合物を生成する反応原料粉末とを混合する。
また、上記焼成工程においては、上記成形体を焼成して上記圧電セラミックスを作製する。このとき、異方形状粉末と反応原料粉末とが反応して上記等方性ペロブスカイト型化合物を生成する。
また、焼成工程においては、雰囲気酸素分圧PO2が50%以上かつ温度900℃以上の加熱を2時間以上行う。
まず、実施例1と同様に、異方形状粉末及び反応原料粉末を作製した。
次いで、これらの異方形状粉末と反応原料粉末とを実施例1と同様にして混合し、スラリー状の原料混合物を得た。この原料混合物には、上記等方性ペロブスカイト型化合物1molに対する添加量が0.05モルとなるように、K原料粉末(K2CO3)を添加した。
具体的には、実施例1と同様に、まず、酸素分圧PO2が100%に雰囲気制御された加熱炉内に、脱脂後の成形体を配置し、昇温速度200℃/hで温度1120℃(焼成温度)まで昇温させた。次いで、1120℃の温度で1時間保持した。次に、降温速度75℃/hで温度900℃まで冷却した。その後、降温速度200℃/hで室温まで冷却し、圧電セラミックスを取り出した。なお、焼成工程における温度900℃以上の加熱時間は5時間であった。
このようにして得られた圧電セラミックスを試料e1とする。
この結晶格子欠陥が圧電セラミックスの電気絶縁抵抗を低下させており、かつ、上記シェル相に結晶格子欠陥が集中することにより電気絶縁抵抗の低下が顕著になる。本例のように、上記コア相中の結晶格子欠陥量をdc、上記シェル相中の結晶格子欠陥量をdsとしたとき、ds/dc<1.2の関係式を満たすことにより、圧電セラミックスは十分な電気絶縁抵抗を示すことができる。
本例は、ds/dc<1.2という関係を満足する圧電セラミックスからなる圧電セラミック層を実施例1とは異なる方法で形成して積層型圧電素子を製造する例である。また、実施例1においては結晶配向セラミックスからなる圧電セラミック層を形成したが、本例においては無配向体からなる圧電セラミック層を形成する。
本例においては、圧電セラミック層は、化学式{Li0.08(K0.5Na0.5)0.92} (Nb0.84Ta0.1Sb0.06)O3で表される等方性ペロブスカイト型化合物を主相とする多結晶体からなる。多結晶体を構成する結晶粒の結晶面は配向しておらず、無配向体である。その他の構成は、実施例1と同様である。
混合工程においては、Li源、K源、Na源、Nb源、Ta源、及びSb源から選ばれる1種以上を上記一般式(1)で表される化合物が生成する化学量論比で配合し、原料混合物を作製し、該原料混合物を仮焼成して反応原料粉末を作製する。本例において反応原料粉末としては、比表面積が2〜5m2/gのものを採用する。
成形工程においては、反応原料粉末をシート状に成形して成形体(グリーンシート)を作製する。
積層工程においては、印刷工程後の上記成形体を積層して積層体を作製する。
焼成工程においては、成形体を焼成して上記圧電セラミックスを作製する。また、焼成工程においては、図7に示すごとく、温度T1℃(1050<T1≦1150)まで昇温させる昇温過程と、温度T1℃でt1時間(t1≦5)保持する第1保持過程と、温度T1℃から温度T2℃(950≦T2≦1050)まで降温させる降温過程と、温度T2℃でt2時間(2≦t2≦20)保持する第2保持過程とを行う。そして、昇温過程における少なくとも温度T2℃から温度T1℃間の昇温速度をD1℃/時間とし、降温過程における降温速度をD2℃/時間とすると、(T1−T2)/t2≦D1≦200かつ(T1−T2)/t2≦D2≦200を満足するように焼成温度を制御する(図7参照)。
まず、目的のセラミックスの組成{Li0.08(K0.5Na0.5)0.92}(Nb0.84Ta0.1Sb0.06)O3となるように、純度99.99%以上のNa2CO3粉末、K2CO3粉末、Li2CO3粉末、Nb2O5粉末、Ta2O5粉末、及びSb2O5粉末を秤量し、有機溶剤を媒体としてZrO2ボールで20時間湿式混合して原料混合物を得た。その後、原料混合物を温度700℃で5時間仮焼し、さらに有機溶媒を媒体としてZrO2ボールで20時間湿式粉砕を行うことにより、平均粒径が約0.5μmで、比表面積が3.2m2/gの仮焼物粉末(反応原料粉末)を得た(混合工程)。
その後、スラリーに対してバインダーとしてのポリビニルブチラール樹脂(PVB)及び可塑剤としてのフタル酸ジブチルを、粉末試料重量に対して15重量%加えてさらにインペラミキサーで1時間混合した。
次に、Pdを30mol%含有するAgPd合金粉末を準備した。このAgPd合金粉末と、上述の反応原料粉末とをそれぞれ体積比9:1で混合し、さらにエチルセルロースとテルピネオールとを加え、ペースト状の電極材料を作製した。この電極材料をグリーンシート上の上記電極部を形成する領域に印刷した(印刷工程)。印刷は、実施例1と同様のパターンで行った。
次いで、実施例1と同様に積層工程及び脱脂工程を行った。
具体的には、図7に示すごとく、まず、加熱炉内に積層体を配置し、昇温速度200℃/h以下の所定の昇温速度で温度T2℃(本例においてはT2=1000)まで昇温した。このときの昇温速度は任意に設定することができる。
次に、温度T2℃から温度T1℃(本例においてはT1=1100)まで昇温速度D1℃/h(本例においてはD1=50)昇温させ(昇温過程)、この温度T1℃でt1時間(本例においてはt1=1)保持した(第1保持過程)。次いで、温度T1℃から温度T2℃まで降温速度D2℃/h(本例においてはD2=100)で降温させ(降温過程)、この温度T2℃でt2時間(本例においてはt2=5)保持した(第2保持過程)。
その後、降温速度200℃/h以下の所定の降温速度で室温まで冷却し、得られた積層型圧電素子を加熱炉から取出した。このときの降温速度は任意に設定することができる。
このようにして得られた積層型圧電素子を試料E3とする。
試料E3の作製にあたって、使用した反応原料粉末の比表面積、昇温過程における昇温速度D1、第1保持過程における保持温度T1、保持時間t1、降温過程における降温速度D2、第2保持過程における保持温度T2、保持時間t2、及び(T1−T2)/t2の値を後述の表3に示す。
なお各試料のうち試料C5の作製にあたっては、第2保持過程を設けなかった。
即ち、試料C5の作製にあたっては、焼成工程において、まず、室温から昇温速度D1で温度T1℃まで昇温し(昇温過程)、この温度T1℃でt1時間保持した(第1保持過程)。次いで、降温速度D2℃/hで温度T1℃から室温まで降温させた(降温過程)。
次に、実施例3において作製した各試料(試料E3、試料E4、及び試料C4〜試料C6)の積層型圧電素子の特性を調べた。
まず、実験例1と同様にして、各試料についてコア相とシェル相の結晶格子欠陥量の測定を行った。
各試料について、コア相の結晶格子欠陥量dc、シェル相の結晶格子欠陥量ds、及び両者の比ds/dcを後述の表4に示す。
実験例1の場合(図4参照)と同様に、白〜灰色の濃淡で表示されている部分が圧電セラミックス2(圧電セラミック層2)である。圧電セラミックス2において、より白く表示されている部分ほど結晶格子欠陥が多くなっている部分である。同図より知られるごとく、コア相21に比べて、シェル相22がより白く表示されており、コア相21よりシェル相22に結晶格子欠陥が多くなっていることがわかる。
また、試料E3について、コア相とシェル相におけるCL強度と測定波長との関係を図9に示す。
その結果を表4に示す。
これに対し、上記の条件を満足しない製造条件で作製した試料C4〜試料C7においては、ds/dcが1.2以上まで大きくなっており、比抵抗が大きく低下していた。
2 圧電セラミック層
20 結晶粒
21 コア相
22 シェル相
3 電極配設層
31 電極部
Claims (22)
- 一般式(1){Lix(K1-yNay)1-x}a(Nb1-z-wTazSbw)O3(但し、0≦x≦0.2、0≦y≦1、0≦z≦0.4、0≦w≦0.2、x+z+w>0、0.95≦a≦1)で表される等方性ペロブスカイト型化合物を主相とする多結晶体からなる圧電セラミックスにおいて、
該圧電セラミックスを構成する結晶粒は、互いに組成が異なるコア相とシェル相とを有し、該シェル相は上記コア相を取り囲むように形成されており、
カソードルミネッセンス分光分析によって測定される上記コア相中の結晶格子欠陥量をdc、カソードルミネッセンス分光分析によって測定される上記シェル相中の結晶格子欠陥量をdsとすると、ds/dc<1.2の関係式を満たすことを特徴とする圧電セラミックス。 - 請求項1において、上記圧電セラミックスは、上記多結晶体を構成する上記結晶粒の特定の結晶面Aが配向する結晶配向セラミックスからなることを特徴とする圧電セラミックス。
- 請求項1において、上記圧電セラミックスは無配向体であることを特徴とする圧電セラミックス。
- 圧電セラミック層と、導電性金属を含有する内部電極を構成する電極部を含む電極配設層とを複数交互に積層してなる積層型圧電素子であって、
上記圧電セラミック層は、請求項2に記載の圧電セラミックスからなることを特徴とする積層型圧電素子。 - 圧電セラミック層と、導電性金属を含有する内部電極を構成する電極部を含む電極配設層とを複数交互に積層してなる積層型圧電素子であって、
上記圧電セラミック層は、請求項3に記載の圧電セラミックスからなることを特徴とする積層型圧電素子。 - 請求項4又は5において、上記導電性金属は、AgPd合金であることを特徴とする積層型圧電素子。
- 請求項2に記載の圧電セラミックスを製造する方法において、
ペロブスカイト型化合物からなり、上記特定の結晶面Aと格子整合性を有する結晶面が配向して配向面を形成する異方形状の配向粒子からなる異方形状粉末と、該異方形状粉末と反応して上記一般式(1)で表される上記等方性ペロブスカイト型化合物を生成する反応原料粉末とを混合することにより原料混合物を作製する混合工程と、
上記異方形状粉末の上記配向面が略同一の方向に配向するように、上記原料混合物をシート状に成形して成形体を作製する成形工程と、
上記成形体を焼成して上記圧電セラミックスを作製する焼成工程とを有し、
上記混合工程においては、上記一般式(1)で表される上記等方性ペロブスカイト型化合物1molに対する添加量がK及び/又はLiの元素換算で0.05mol以下となるように、上記原料混合物に対してさらに炭酸塩、炭酸水素塩、又はホウ酸塩からなるK原料粉末及び/又はLi原料粉末を混合し、
上記焼成工程においては、雰囲気酸素分圧PO2が50%以上かつ温度900℃以上の加熱を2時間以上行うことを特徴とする圧電セラミックスの製造方法。 - 請求項3に記載の圧電セラミックスを製造する方法において、
Li源、K源、Na源、Nb源、Ta源、及びSb源から選ばれる1種以上を上記一般式(1)で表される化合物が生成する化学量論比で配合して原料混合物を作製し、該原料混合物を仮焼成して反応原料粉末を作製する混合工程と、
上記反応原料粉末を成形して成形体を作製する成形工程と、
上記成形体を焼成して上記圧電セラミックスを作製する焼成工程とを有し、
上記混合工程においては、上記一般式(1)で表される上記等方性ペロブスカイト型化合物1molに対する添加量がK及び/又はLiの元素換算で0.05mol以下となるように、上記反応原料粉末に対してさらに炭酸塩、炭酸水素塩、又はホウ酸塩からなるK原料粉末及び/又はLi原料粉末を混合し、
上記焼成工程においては、雰囲気酸素分圧PO2が50%以上かつ温度900℃以上の加熱を2時間以上行うことを特徴とする圧電セラミックスの製造方法。 - 請求項7又は8において、上記K原料粉末はK2CO3であり、上記Li原料粉末はLiBO2であることを特徴とする圧電セラミックスの製造方法。
- 請求項2に記載の圧電セラミックスを製造する方法において、
ペロブスカイト型化合物からなり、上記特定の結晶面Aと格子整合性を有する結晶面が配向して配向面を形成する異方形状の配向粒子からなる異方形状粉末と、該異方形状粉末と反応して上記一般式(1)で表される上記等方性ペロブスカイト型化合物を生成する反応原料粉末とを混合することにより原料混合物を作製する混合工程と、
上記異方形状粉末の上記配向面が略同一の方向に配向するように、上記原料混合物をシート状に成形して成形体を作製する成形工程と、
上記成形体を焼成して上記圧電セラミックスを作製する焼成工程とを有し、
上記反応原料粉末としては、比表面積が2〜5m2/gのものを採用し、
上記焼成工程は、温度T1℃(1050<T1≦1150)まで昇温させる昇温過程と、上記温度T1℃でt1時間(t1≦5)保持する第1保持過程と、上記温度T1℃から温度T2℃(950≦T2≦1050)まで降温させる降温過程と、上記温度T2℃でt2時間(2≦t2≦20)保持する第2保持過程とを有し、
上記昇温過程における少なくとも上記温度T2℃から上記温度T1℃間の昇温速度をD1℃/時間とし、上記降温過程における降温速度をD2℃/時間とすると、(T1−T2)/t2≦D1≦200かつ(T1−T2)/t2≦D2≦200を満足することを特徴とする圧電セラミックスの製造方法。 - 請求項3に記載の圧電セラミックスを製造する方法において、
Li源、K源、Na源、Nb源、Ta源、及びSb源から選ばれる1種以上を上記一般式(1)で表される化合物が生成する化学量論比で配合して原料混合物を作製し、該原料混合物を仮焼成して反応原料粉末を作製する混合工程と、
上記反応原料粉末を成形して成形体を作製する成形工程と、
上記成形体を焼成して上記圧電セラミックスを作製する焼成工程とを有し、
上記反応原料粉末としては、比表面積が2〜5m2/gのものを採用し、
上記焼成工程は、温度T1℃(1050<T1≦1150)まで昇温させる昇温過程と、上記温度T1℃でt1時間(t1≦5)保持する第1保持過程と、上記温度T1℃から温度T2℃(950≦T2≦1050)まで降温させる降温過程と、上記温度T2℃でt2時間(2≦t2≦20)保持する第2保持過程とを有し、
上記昇温過程における少なくとも上記温度T2℃から上記温度T1℃間の昇温速度をD1℃/時間とし、上記降温過程における降温速度をD2℃/時間とすると、(T1−T2)/t2≦D1≦200かつ(T1−T2)/t2≦D2≦200を満足することを特徴とする圧電セラミックスの製造方法。 - 請求項7又は10において、上記反応原料粉末としては、Li源、K源、Na源、Nb源、Ta源、及びSb源から選ばれる1種以上を混合し仮焼して得られる仮焼粉を採用し、各元素源は、上記仮焼粉からなる上記反応原料粉末と上記異方形状粉末とから上記一般式(1)で表される化合物が生成する化学量論比で配合することを特徴とする圧電セラミックスの製造方法。
- 請求項7又は10において、上記成形工程においては、上記原料混合物を30μm〜200μmの厚みのシート状に成形することを特徴とする圧電セラミックスの製造方法。
- 請求項4に記載の積層型圧電素子を製造する方法において、
ペロブスカイト型化合物からなり、上記特定の結晶面Aと格子整合性を有する結晶面が配向して配向面を形成する異方形状の配向粒子からなる異方形状粉末と、該異方形状粉末と反応して上記一般式(1)で表される上記等方性ペロブスカイト型化合物を生成する反応原料粉末とを混合することにより原料混合物を作製する混合工程と、
上記異方形状粉末の上記配向面が略同一の方向に配向するように、上記原料混合物をシート状に成形して成形体を作製する成形工程と、
上記成形体上に、焼成後に上記電極部となる上記導電性金属を含有する電極材料を印刷する印刷工程と、
該印刷工程後の上記成形体を積層して積層体を作製する積層工程と、
上記積層体を加熱することにより、上記圧電セラミック層と上記電極配設層とが複数交互に積層された上記積層型圧電素子を得る焼成工程とを有し、
上記混合工程においては、上記一般式(1)で表される上記等方性ペロブスカイト型化合物1molに対する添加量がK及び/又はLiの元素換算で0.05mol以下となるように、上記原料混合物に対してさらに炭酸塩、炭酸水素塩、又はホウ酸塩からなるK原料粉末及び/又はLi原料粉末を混合し、
上記焼成工程においては、雰囲気酸素分圧PO2が50%以上かつ温度900℃以上の加熱を2時間以上行うことを特徴とする積層型圧電素子の製造方法。 - 請求項5に記載の積層型圧電素子を製造する方法において、
Li源、K源、Na源、Nb源、Ta源、及びSb源から選ばれる1種以上を上記一般式(1)で表される化合物が生成する化学量論比で配合して原料混合物を作製し、該原料混合物を仮焼成して反応原料粉末を作製する混合工程と、
上記反応原料粉末をシート状に成形して成形体を作製する成形工程と、
上記成形体上に、焼成後に上記電極部となる上記導電性金属を含有する電極材料を印刷する印刷工程と、
該印刷工程後の上記成形体を積層して積層体を作製する積層工程と、
上記積層体を加熱することにより、上記圧電セラミック層と上記電極配設層とが複数交互に積層された上記積層型圧電素子を得る焼成工程とを有し、
上記混合工程においては、上記一般式(1)で表される上記等方性ペロブスカイト型化合物1molに対する添加量がK及び/又はLiの元素換算で0.05mol以下となるように、上記反応原料粉末に対してさらに炭酸塩、炭酸水素塩、又はホウ酸塩からなるK原料粉末及び/又はLi原料粉末を混合し、
上記焼成工程においては、雰囲気酸素分圧PO2が50%以上かつ温度900℃以上の加熱を2時間以上行うことを特徴とする積層型圧電素子の製造方法。 - 請求項14又は15において、上記K原料粉末はK2CO3であり、上記Li原料粉末はLiBO2であることを特徴とする積層型圧電素子の製造方法。
- 請求項4に記載の積層型圧電素子を製造する方法において、
ペロブスカイト型化合物からなり、上記特定の結晶面Aと格子整合性を有する結晶面が配向して配向面を形成する異方形状の配向粒子からなる異方形状粉末と、該異方形状粉末と反応して上記一般式(1)で表される上記等方性ペロブスカイト型化合物を生成する反応原料粉末とを混合することにより原料混合物を作製する混合工程と、
上記異方形状粉末の上記配向面が略同一の方向に配向するように、上記原料混合物をシート状に成形して成形体を作製する成形工程と、
上記成形体上に、焼成後に上記電極部となる上記導電性金属を含有する電極材料を印刷する印刷工程と、
該印刷工程後の上記成形体を積層して積層体を作製する積層工程と、
上記積層体を加熱することにより、上記圧電セラミック層と上記電極配設層とが複数交互に積層された上記積層型圧電素子を得る焼成工程とを有し、
上記反応原料粉末としては、比表面積が2〜5m2/gのものを採用し、
上記焼成工程は、温度T1℃(1050<T1≦1150)まで昇温させる昇温過程と、上記温度T1℃でt1時間(t1≦5)保持する第1保持過程と、上記温度T1℃から温度T2℃(950≦T2≦1050)まで降温させる降温過程と、上記温度T2℃でt2時間(2≦t2≦20)保持する第2保持過程とを有し、
上記昇温過程における少なくとも上記温度T2℃から上記温度T1℃間の昇温速度をD1℃/時間とし、上記降温過程における降温速度をD2℃/時間とすると、(T1−T2)/t2≦D1≦200かつ(T1−T2)/t2≦D2≦200を満足することを特徴とする積層型圧電素子の製造方法。 - 請求項5に記載の積層型圧電素子を製造する方法において、
Li源、K源、Na源、Nb源、Ta源、及びSb源から選ばれる1種以上を上記一般式(1)で表される化合物が生成する化学量論比で配合して原料混合物を作製し、該原料混合物を仮焼成して反応原料粉末を作製する混合工程と、
上記反応原料粉末をシート状に成形して成形体を作製する成形工程と、
上記成形体上に、焼成後に上記電極部となる上記導電性金属を含有する電極材料を印刷する印刷工程と、
該印刷工程後の上記成形体を積層して積層体を作製する積層工程と、
上記積層体を加熱することにより、上記圧電セラミック層と上記電極配設層とが複数交互に積層された上記積層型圧電素子を得る焼成工程とを有し、
上記反応原料粉末としては、比表面積が2〜5m2/gのものを採用し、
上記焼成工程は、温度T1℃(1050<T1≦1150)まで昇温させる昇温過程と、上記温度T1℃でt1時間(t1≦5)保持する第1保持過程と、上記温度T1℃から温度T2℃(950≦T2≦1050)まで降温させる降温過程と、上記温度T2℃でt2時間(2≦t2≦20)保持する第2保持過程とを有し、
上記昇温過程における少なくとも上記温度T2℃から上記温度T1℃間の昇温速度をD1℃/時間とし、上記降温過程における降温速度をD2℃/時間とすると、(T1−T2)/t2≦D1≦200かつ(T1−T2)/t2≦D2≦200を満足することを特徴とする積層型圧電素子の製造方法。 - 請求項14又は17において、上記反応原料粉末としては、Li源、K源、Na源、Nb源、Ta源、及びSb源から選ばれる1種以上を混合し仮焼して得られる仮焼粉を採用し、各元素源は、上記仮焼粉からなる上記反応原料粉末と上記異方形状粉末とから上記一般式(1)で表される化合物が生成する化学量論比で配合することを特徴とする積層型圧電素子の製造方法。
- 請求項14又は17において、上記成形工程においては、上記原料混合物を30μm〜200μmの厚みのシート状に成形することを特徴とする積層型圧電素子の製造方法。
- 請求項15又は18において、上記成形工程においては、上記反応原料粉末を30μm〜200μmの厚みのシート状に成形することを特徴とする積層型圧電素子の製造方法。
- 請求項14〜21のいずれか一項において、上記導電性金属は、AgPd合金であることを特徴とする積層型圧電素子の製造方法。
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