JP2009114038A - 結晶配向セラミックスの製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】多結晶体の結晶粒の特定の結晶面Aが配向する結晶配向セラミックスの製造方法であり、準備工程と混合工程と成形工程と焼成工程とを行う。準備工程においては、異方形状の配向粒子からなり、ロッキングカーブ法による配向面の半値幅が10°以下の異方形状粉末1と、その1/3以下の平均粒径を有する微細粉末2とを準備する。混合工程においてはこれらを混合する。成形工程においては、異方形状粉末1の配向面が略同一の方向に配向するように原料混合物を成形する。焼成工程においては、成形体を焼成して結晶配向セラミックスを得る。
【選択図】図1
Description
一般に、等方性ペロブスカイト型化合物の圧電特性などは、結晶軸の方向によって異なることが知られている。そのために、圧電特性などの高い結晶軸を一定の方向に配向させることができれば、圧電特性の異方性を最大限に活用することができ、圧電セラミックスの高性能化が期待できる。上記特許文献7に開示されているように、所定の組成を有する板状粉末を反応性テンプレートとし、該板状粉末と原料粉末とを焼結させて特定の結晶面を配向させる方法によれば、特定の結晶面が高い配向度で配向した高性能な結晶配向セラミックスを製造することができる。
即ち、まず、図1に示すごとく、所定の組成を有する異方形状の板状粉末1を反応性テンプレートとして準備する。また、焼成時にこの板状粉末1と反応して等方性ペロブスカイト型化合物を生成する原料粉末2を準備する。次いで、この板状粉末1及び原料粉末2に、溶媒、バインダー、可塑剤、及び分散材等を加えて混合し、スラリー3を作製する。このスラリー3においては、溶媒、バインダー、可塑剤、及び分散材等からなる分散媒4中に板状粉末1及び原料粉末2が分散されている。
次に、図2に示すごとく、スラリー3を例えばシート状に成形して成形体5を作製する。このとき、同図に示すごとく、成形時に加わるせん断応力により、異方形状の板状粉末1を成形体5内で略同じ方向に整列させる。
次いで、成形体5を加熱して焼結させる。このとき、図3に示すごとく、焼結中の成形体6内では、上記板状粉末1が反応性テンプレートとなって周囲の上記原料粉末2と反応して上記等方性ペロブスカイト型化合物を生成しながら板状粉末1が成長する。さらに、焼結を進行させると、板状粉末1が原料粉末2と反応しながらさらに成長し、図4に示すごとく、特定の結晶面が配向した結晶粒子(配向粒子)7からなる結晶配向セラミックス8を得ることができる。
ペロブスカイト型化合物よりなり、上記特定の結晶面Aと格子整合性を有する結晶面が配向して配向面を形成している異方形状の配向粒子からなる異方形状粉末と、該異方形状粉末の1/3以下の平均粒径を有し、上記異方形状粉末と共に焼結させることにより上記等方性ペロブスカイト型化合物を生成する微細粉末とを準備する準備工程と、
上記異方形状粉末と上記微細粉末とを混合することにより原料混合物を作製する混合工程と、
上記異方形状粉末の上記配向面が略同一の方向に配向するように、上記原料混合物を成形して成形体を作製する成形工程と、
上記成形体を加熱し、上記異方形状粉末と上記微細粉末とを焼結させることにより上記結晶配向セラミックスを得る焼成工程とを有し、
上記準備工程においては、上記異方形状粉末について、ロッキングカーブ法による上記配向面の半値幅(FWHM)を測定し、該半値幅が10°以下の上記異方形状粉末を採用することを特徴とする結晶配向セラミックスの製造方法にある(請求項1)。
本発明において最も注目すべき点は、上記準備工程において、上記異方形状粉末について、ロッキングカーブ法による上記配向面の半値幅(FWHM)を測定し、該半値幅が10°以下の上記異方形状粉末を採用することにある。
そのため、圧電特性の優れた結晶配向セラミックスをより確実に得ることができる。
また、上記のごとく、半値幅10°以下の上記異方形状粉末を用いることにより、該異方形状粉末と上記微細粉末との焼結性を向上させることができる。そのため、より密度の高い結晶配向セラミックスを得ることができる。この観点からも、本発明においては、優れた圧電特性の結晶配向セラミックスを得ることができる。
本発明の製造方法においては、等方性ペロブスカイト型化合物を主相とする多結晶体からなり、該多結晶体を構成する結晶粒の特定の結晶面Aが配向する結晶配向セラミックスを製造する。
ここで、「等方性」とは、擬立方基本格子でペロブスカイト型構造ABO3を表現したとき、軸長a、b、cの相対比が0.8〜1.2であり、軸角α、β、γが80〜100°の範囲にあることを示す。
上記一般式(1)において、Aサイト及び/又はBサイトには、上述の主成分元素以外にも後述の添加元素を副成分として含有させることもできる。
この場合には、圧電特性や誘電特性等が優れた上記結晶配向セラミックスを製造することができる。
上記一般式(2)において、「x+z+w>0」は、置換元素として、Li、Ta及びSbの内の少なくとも1つが含まれていればよいことを示す。
上記一般式(2)におけるyの範囲は、0<y≦1であることがより好ましい。
この場合には、上記一般式(2)で表される化合物において、Naが必須成分となる。そのため、この場合には、上記結晶配向セラミックスの圧電g31定数をさらに向上させることができる。
また、上記一般式(2)におけるyの範囲は、0≦y<1とすることができる。
この場合には、上記一般式(2)で表される化合物において、Kが必須成分となる。そのため、この場合には、上記結晶配向セラミックスの圧電d33定数等の圧電特性をさらに向上させることができる。また、この場合には、K添加量の増加に伴い、より低温での焼結が可能になるため、省エネルギーかつ低コストで上記結晶配向セラミックスを作製することができる。
また、上記一般式(2)において、yは、0.05≦y≦0.75であることがより好ましく、0.20≦y≦0.70であることがさらに好ましい。これらの場合には、上記結晶配向セラミックスの圧電d33定数及び電気解決合計数Kpを一層向上させることができる。さらに一層好ましくは、0.20≦y<0.70がよく、さらには0.35≦y≦0.65がよく、さらには0.35≦y<0.65がより好ましい。また、最も好ましくは、0.42≦y≦0.60がよい。
上記一般式(2)におけるxの範囲は、0<x≦0.2であることがより好ましい。
この場合には、上記一般式(2)で表される化合物において、Liが必須成分となるので、上記結晶配向セラミックスは、その作製時の焼成を一層容易に行うことができると共に、圧電特性がより向上し、キュリー温度(Tc)を一層高くすることができる。これは、Liを上記のxの範囲内において必須成分とすることにより、焼成温度が低下すると共に、Liが焼成助剤としての役割を果たし、空孔の少ない焼成を可能にするからである。
xの値が0.2を越えると、圧電特性(圧電d33定数、電気機械結合係数kp、圧電g31定数等)が低下するおそれがある。
この場合には、上記一般式(2)は、(K1-yNay)(Nb1-z-wTazSbw)O3で表される。そしてこの場合には、上記結晶配向セラミックスを作製する際に、その原料中に例えばLiCO3のように、最も軽量なLiを含有してなる化合物を含まないので、原料を混合し上記結晶配向セラミックスを作製するときに原料粉の偏析による特性のばらつきを小さくすることができる。また、この場合には、高い比誘電率と比較的大きな圧電g定数を実現できる。上記一般式(2)において、xの値は、0≦x≦0.15がより好ましく、0≦x≦0.10がさらに好ましい。
上記一般式(2)におけるzの範囲は、0<z≦0.4であることが好ましい。
この場合には、上記一般式(2)で表される化合物において、Taが必須成分となる。そのため、この場合には、焼結温度が低下すると共に、Taが焼結助剤の役割を果たし、上記結晶配向セラミックス中の空孔を少なくすることができる。
この場合には、上記一般式(2)は、{Lix(K1-yNay)1-x}(Nb1-wSbw)O3で表される。そして、この場合には、上記一般式(2)で表される化合物はTaを含ま
ない。そのためこの場合には、上記一般式(2)で表される化合物は、その作製時に高価なTa成分を使用することなく、優れた圧電特性を示すことができる。
上記一般式(2)において、zの値は、0≦z≦0.35がより好ましく、0≦z≦0.30がさらに好ましい。
また、上記一般式(2)におけるwの値は、0<w≦0.2であることが好ましい。
この場合には、上記一般式(2)で表される化合物において、Sbが必須成分となる。そのため、この場合には、焼結温度が低下し、焼結性を向上させることができると共に、誘電損失tanδの安定性を向上させることができる。
「特定の結晶面Aが配向する」とは、上記等方性ペロブスカイト型化合物の特定の結晶面Aが互いに平行になるように、各結晶粒が配列していること(以下、このような状態を「面配向」という。)を意味する。
この場合には、ペロブスカイト型化合物の分極軸と垂直になり、配向粒子の変位方向と同方向になることから、高い変位性能を得ることができる。
また、特定の結晶面Aが面配向している場合において、面配向の程度は、次の数1の式で表されるロットゲーリング(Lotgering)法による平均配向度F(HKL)で表すことができる。
また、配向させる特定の結晶面は、分極軸に垂直な面であることが好ましい。
本発明においては、上述のごとく、上記異方形状粉末を成形体中に配向させ、この異方形状粉末をテンプレート又は反応性テンプレートとして用いて例えば上記一般式(2)で表される化合物等の等方性ペロブスカイト型化合物の合成及びその焼結を行わせることができる。これにより、多結晶体を構成する各結晶粒の特定の結晶面が一方向に配向した結晶配向セラミックスを得ることができる。
まず、上記準備工程は、上記異方形状粉末と上記微細粉末とを準備する工程である。
上記異方形状粉末は、ペロブスカイト型化合物よりなる配向粒子からなる。また、配向粒子は、異方形状を有し、作製しようとする上記多結晶体を構成する上記結晶粒の特定の結晶面Aと格子整合性を有する結晶面が配向して配向面を形成している。
格子整合性を説明するにあたり、例えば上記配向粒子が金属酸化物である場合について説明する。即ち、上記配向粒子における上記配向面の二次元結晶格子において、例えば酸素原子からなる格子点又は金属原子からなる格子点と、上記多結晶体において配向する上記特定の結晶面Aの二次元結晶格子における酸素原子からなる格子点又は金属原子からなる格子点とが、相似関係を有する場合に、両者には格子整合性が存在する。
格子整合率は、上記配向粒子における上記配向面と、上記多結晶体において配向する上記特定の結晶面Aの相似位置における格子寸法との差の絶対値を上記配向粒子における上記配向面の格子寸法で除することにより得られる値を百分率で表すものである。
より高配向度の結晶配向セラミックスを得るためには、上記配向粒子の格子整合率は、20%以下が好ましく、さらに好ましくは10%以下がよく、さらにより好ましくは5%以下がよい。
この場合には、上記結晶面Aが配向する結晶配向セラミックスを比較的簡単に作製することができる。具体的には、上記配向粒子としては、擬立方{100}面及び/又は擬立方{200}面が配向した粒子を用いることができる。この場合には、配向軸と分極軸とが一致する正方晶域において、大電界下で発生する変位の温度依存性が改善された結晶配向セラミックスを得ることができる。
具体的には、上記配向粒子としては、例えば上記一般式(1)又は上記一般式(2)で表される化合物等のように目的の等方性ペロブスカイト型化合物と同一組成を有するもの等を用いることができる。
また、上記配向粒子は、必ずしも上記一般式(1)又は上記一般式(2)で表される化合物等のように目的の等方性ペロブスカイト型化合物と同一組成を有するものである必要はなく、後述の微細粉末と焼結することにより、目的とする上記一般式(1)又は上記一般式(2)で表される等方性ペロブスカイト型化合物を主成分として生成するものであればよい。したがって、上記配向粒子としては、作製しようとする等方性ペロブスカイト型化合物に含まれる陽イオン元素のうちいずれか1種以上の元素を含む化合物あるいは固溶体等から選ぶことができる。
{Lix(K1-yNay)1-x}(Nb1-z-wTazSbw)O3 ・・・(4)
(但し、x、y、z、wがそれぞれ0≦x≦1、0≦y≦1、0≦z≦1、0≦w≦1)
(Bi2O2)2+(Bi0.5Mem-1.5NbmO3m+1)2- ・・・(5)
(但し、mは2以上の整数、MeはLi、K及びNaから選ばれる1種以上)
所定の組成、平均粒径及び/又はアスペクト比を備えた層状ペロブスカイト型化合物からなる異方形状粉末(即ち、上記異方形状粉末B)は、その成分元素を含む酸化物、炭酸塩、硝酸塩等を原料(以下、これを「異方形状粉末生成原料」という。)とし、この異方形状粉末生成原料を液体又は加熱により液体となる物質と共に加熱することにより容易に製造することができる。
を加えて所定の温度で加熱する方法(フラックス法)や、作製しようとする異方形状粉末Bと同一組成を有する不定形粉末をアルカリ水溶液と共にオートクレーブ中で加熱する方法(水熱合成法)等が好適な例としてあげられる。
すなわち、上記異方形状粉末Bを反応性テンプレートとして用いて、異方形状粉末Aを合成する場合においても、異方形状粉末Aの平均アスペクト比は、少なくとも3以上が好ましく、より好ましくは5以上、さらに好ましくは10以上がよい。また、後工程における粉砕を抑制するためには、平均アスペクト比は、100以下であることが好ましい。
これに対し、層状ペロブスカイト型化合物は、結晶格子の異方性が大きいので、異方形状粉末を直接合成することが容易にできる。また、層状ペロブスカイト型化合物からなる異方形状粉末の配向面は、上記一般式(4)で表される化合物の特定の結晶面との間に格子整合性を有しているものが多い。さらに、上記一般式(4)で表される化合物は、層状ペロブスカイト型化合物に比べて熱力学的に安定である。
この場合には、上記配向粒子を用いることにより、非鉛系の中でも相対的に高い圧電特性を示す等方性ペロブスカイト型ニオブ酸カリウムナトリウム系の結晶配向セラミックスを作製できる。
この場合には、より配向度の高い結晶配向セラミックスを作製することができる。
即ち、上述のごとく、上記一般式(4)で表される化合物は、上記一般式(2)で表される化合物と良好な格子整合性を有している。そのため、上記一般式(4)で表され、かつ特定の結晶面を上記配向面とする上記配向粒子からなる上記異方形状粉末は、上記結晶配向セラミックスを製造するための良好な反応性テンプレートとして機能することができる。
上記半値幅が10°を超える異方形状粉末を用いた場合には、最終的に得られる結晶配向セラミックスの配向度にばらつきが発生し、その結果、圧電特性の低い結晶配向セラミックスが製造されるおそれがある。
即ち、上記異方形状粉末についてX線回折を行い、上記配向面に由来するピーク位置付近にθ角を固定してさらにX線回折測定を行う。次いで、得られたX線回折パターン(山形波形)について、その最大強度が半分になる強度におけるピーク幅を求め、これを半値幅(全半値幅)とする。
即ち、上記基板上に単層で配列させた上記異方形状粉末について、ロッキングカーブ法による半値幅の測定を行うことが好ましい。
この場合には、上記異方形状粉末の半値幅の測定を正確に行うことができる。その結果、さらにより確実に圧電特性の高い結晶配向セラミックスを製造することができる。
上記基板としては、例えば平滑な硝子基板等を用いることができる。
この場合には、上記基板上に上記異方形状粉末を簡単に単層で配列させることができる。また、アルコール系有機溶媒を用いることにより、短時間で簡単に乾燥を行うことができる。アルコール系有機溶媒としては、例えばエタノール、プロパノール、イソプロピルアルコール(IPA)、ブタノール、ペンタノール等を用いることができる。
上記異方形状粉末の濃度が2wt%未満の場合には、ロッキングカーブ法によって半値幅を測定する際に、X線回折パターンのピーク強度が十分に得られなくなり、正確な半値幅の測定が困難になるおそれがある。一方、4wt%を越える場合には、上記異方形状粉末を単層で配列させることが困難になるおそれがある。
上記微細粉末の粒径が上記異方形状粉末の粒径の1/3を超える場合には、上記成形工程において、上記異方形状粉末の上記配向面が略同一の方向に配向するように、上記原料混合物を成形することが困難になるおそれがある。より好ましくは、1/4以下がよく、さらには1/5以下がよい。
上記微細粉末と上記異方形状粉末との粒径の比較は、上記微細粉末の平均粒径と上記異方形状粉末の平均粒径とを比較することによって行うことができる。なお、上記異方形状粉末の粒径及び上記微細粉末の粒径は、いずれも最も長尺の径のことをいう。
この場合には、上述のごとく、複雑な組成の結晶配向セラミックスを簡単に作製することができる。
上記混合工程においては、所定の比率で配合された上記異方形状粉末、及び上記微細粉末に対して、さらにこれらの物質の反応によって得られる等方性ペロブスカイト型化合物と同一組成の化合物からなる不定形の微粉(以下、これを「化合物微粉」という。)を添加することができる。また、例えばCuO等の焼結助剤を添加することもできる。上記化合物微粉や上記焼結助剤を添加すると、焼結体の緻密化がさらに容易になるという利点がある。
この場合には、上記添加元素を含有する多結晶体からなる上記結晶配向セラミックスを作製することができる。これにより、結晶配向セラミックスの圧電d33定数、電気機械結合係数Kp、圧電g31定数等の圧電特性や、比誘電率、誘電損失等の誘電特性を向上させることができる。上記添加元素は、上記一般式(1)で表される化合物のAサイトやBサイトに対して、置換添加されていても良いが、外添加されて上記一般式(1)で表される化合物の粒内又は粒界中に存在することもできる。
即ち、上記添加元素は、上記準備工程において、上記異方形状粉末を合成する際に添加することができる(請求項12)。
また、上記添加元素は、上記準備工程において、上記微細粉末を合成する際に添加することができる(請求項13)。
また、上記添加元素は、上記混合工程において、上記微細粉末及び上記異方形状粉末と共に添加することができる(請求項14)。
このような方法によって上記添加元素を添加することにより、上記添加元素を含有する上記原料混合物を簡単に得ることができる。そして、該原料混合物を成形及び焼成することにより、上記添加元素を含有する多結晶体からなる上記結晶配向セラミックスを得ることができる。
また、上記添加元素は、添加元素単体で添加されていても良いが、上記添加元素を含む酸化物や化合物として添加されていても良い。
上記添加元素が0.0001mol未満の場合には、上記添加元素による上記圧電特性等の向上効果を充分に得られないおそれがある。一方、0.15molを超える場合には、上記結晶配向セラミックスの圧電特性や誘電特性がかえって低下するおそれがある。
この場合には、上記添加元素が上記等方性ペロブスカイト型化合物に置換添加された上記結晶配向セラミックスを得ることができる。かかる結晶配向セラミックスは、より一層優れた圧電d33定数や電気機械結合係数Kp等の圧電特性、及びより一層優れた比誘電率ε33T/ε0等の誘電特性を示すことができる。
上記添加元素が0.01at%未満の場合には、上記結晶配向セラミックスの圧電特性や誘電特性の向上効果が充分に得られないおそれがある。一方、15at%を超える場合には、上記結晶配向セラミックスの圧電特性や誘電特性がかえって低下するおそれがある。より好ましくは、0.01〜5at%がよく、さらに好ましくは、0.01〜2at%がよく、さらにより好ましくは、0.05〜2at%がよい。
ここで、「at%」とは、上記一般式(1)で表される化合物におけるLi、K、Na、Nb、Ta、及びSbの原子の数に対する置換された原子の数の割合を100分率で示したものである。
上記成形工程は、上記異方形状粉末の上記配向面が略同一の方向に配向するように、上記原料混合物を成形して成形体を作製する工程である。
成形方法については、上記異方形状粉末を配向させることが可能な方法であればよい。上記異方形状粉末を面配向させる成形方法としては、具体的にはドクターブレード法、プレス成形法、圧延法等が好適な例としてあげられる。
この場合には、上記面配向成形体に対して、いずれか1種類の面配向処理を行うこともできるが、2種以上の面配向処理を行うこともできる。また、上記面配向成形体に対して、1種類の面配向処理を繰り返し行うこともでき、また、2種以上の面配向処理をそれぞれ複数回繰り返し行うこともできる。
厚みが30μm未満の場合には、作製時における成形体の取り扱いが非常に困難になるおそれがある。また、配向度の差が10%を超えると、焼成工程後に得られる結晶配向セラミックス内部の配向度が大きくばらつき、良好な特性が得られなくなるおそれがある。より好ましくは上記成形体配向度の差は5%以下がよく、さらにより好ましくは3%以下がよい。
上記焼成工程は、上記成形体を加熱し、上記異方形状粉末と上記微細粉末とを焼結させる工程である。上記焼成工程においては、上記成形体を加熱することにより焼結が進行し、等方性ペロブスカイト型化合物を主相とする多結晶体からなる結晶配向セラミックスを作製する。このとき、上記異方形状粉末と上記微細粉末とを反応させて、例えば上記一般式(1)又は(2)で表される上記等方性ペロブスカイト型化合物を生成させることができる。また、上記焼成工程においては、上記異方形状粉末及び/又は微細粉末の組成によっては、余剰成分も同時に生成する。
次に、本発明の実施例につき説明する。
本例は、等方性ペロブスカイト型化合物を主相とする多結晶体からなり、該多結晶体を構成する結晶粒の特定の結晶面({100}面)が配向する結晶配向セラミックスを製造する例である。
本例においては、{Li0.065(K0.45Na0.55)0.935}(Nb0.83Ta0.09Sb0.08)O31molに対してMnを0.0005mol外添加した組成を有する結晶配向セラミックスを作製する。
準備工程においては、ペロブスカイト型化合物よりなり、上記特定の結晶面Aと格子整合性を有する結晶面が配向して配向面を形成している異方形状の配向粒子からなる異方形状粉末と、上記異方形状粉末の1/3以下の平均粒径を有し、上記異方形状粉末と共に焼結させることにより上記等方性ペロブスカイト型化合物を生成する微細粉末とを準備する。上記異方形状粉末としては、ロッキングカーブ法による上記配向面の半値幅(FWHM)が10°以下の粉末を採用する。
混合工程においては、上記異方形状粉末と上記微細粉末とを混合することにより原料混合物を作製する。
成形工程においては、上記原料混合物を成形することにより、上記配向粒子の上記配向面が略同一の方向に配向した成形体を作製する。
焼成工程においては、上記成形体を加熱し、上記異方形状粉末と上記微細粉末とを焼結させることにより上記結晶配向セラミックスを得る。
(1)異方形状粉末の作製
まず、以下のようにして異方形状粉末としてNaNbO3からなる板状粉末を合成した。
即ち、まず、Bi2.5Na3.5Nb5O18という組成となるような化学量論比で、Bi2O3粉末、Na2CO3粉末及びNb2O5粉末を秤量し、これらを湿式混合した。次いで、この原料に対し、フラックスとしてNaClを50wt%添加し、1時間乾式混合した。次に、得られた混合物を白金るつぼに入れ、850℃×1hの条件下で加熱し、フラックスを完全に溶解させた後、さらに1100℃×2hの条件下で加熱し、Bi2.5Na3.5Nb5O18の合成を行った。なお、昇温速度は、200℃/hrとし、降温は炉冷とした
。冷却後、反応物から湯洗によりフラックスを取り除き、Bi2.5Na3.5Nb5O18粉末(異方形状粉末B)を得た。得られたBi2.5Na3.5Nb5O18粉末は、{001}面を配向面(最大面)とする板状粉末であった。
得られたNaNbO3粉末は、擬立方{100}面を最大面(配向面)とし、平均粒径(最大径の平均)15μmであり、かつアスペクト比が約10〜20程度の板状粉末であった。
具体的には、まず、異方形状粉末をエタノール中に投入した。異方形状粉末の投入量は3wt%とした。次いで、超音波分散機((株)島津理化製のSUS−103)を用いて、28kHzで2分間異方形状粉末を均一に分散させ、分散液を得た。次いで、表面が平滑なガラス基板上に分散液を滴下し、その後乾燥させた。これにより、ガラス基板上に異方形状粉末を単層で配列させた。
純度99.99%以上のNa2CO3粉末、K2CO3粉末、Li2CO3粉末、Nb2O5粉末、Ta2O5粉末、Sb2O5粉末およびMnO2粉末を{Li0.065(K0.45Na0.55)0.935}(Nb0.83Ta0.09Sb0.08)O3+Mn0.0005molの化学量論組成1molから、NaNbO3を0.05mol差し引いた組成となるように秤量し、有機溶剤を媒体としてZrO2ボールで20時間の湿式混合を行った。その後、750℃で5Hr仮焼し、さらに有機溶剤を媒体としてZrO2ボールで20時間の湿式粉砕を行うことで平均粒径が約0.5μmの仮焼物粉体(微細粉末)を得た(準備工程)。
上記のようにして作製した微細粉末を秤量し、有機溶剤を媒体にしてZrO2ボールで20時間湿式混合を行った。その後、目的のセラミックス組成におけるNa(Aサイト元素)量のうちの5at%が異方形状粉末のNaから供給されるような配合割合で異方形状粉末を添加し、さらに異方形状粉末と微細粉末との混合物100重量部に対して、バインダとしてのポリビニルブチラール(PVB)樹脂を10重量部、可塑剤としてのフタル酸ブチルを5重量部添加し、インペラミキサーで1時間混合して原料混合物スラリーを得た(混合工程)。
この焼成工程においては、昇温過程、保持過程、及び冷却過程という3つの過程を行った。
即ち、まず、成形体を酸素雰囲気に制御した加熱炉中に入れ、昇温速度200℃/hで加熱炉内の温度を1105℃まで昇温させた(昇温過程)。次いで、この温度1105℃を5時間保持した(保持過程)。次に、降温速度200℃/hで室温まで冷却した(冷却過程)。
このようにして、結晶配向セラミックスを得た。これを試料E1とする。
具体的には、X線回折装置((株)リガク製RINT−TTR)を用いて、Cu−Kα、50kV/300mAという条件で、試料E1のX線回折強度を測定し、上述の数1の式からロットゲーリング法による平均配向度F(100)を算出した。その結果を後述の表1に示す。
なお、ロットゲーリング法による結晶配向セラミックスの平均配向度Fの算出に用いる無配向の圧電セラミックス(後述の試料C3)は、次のようにして作製した。
次に、ドクターブレード装置を用いて、混合したスラリーを厚み100μmのテープ状に成形して無配向の成形体(無配向成形体)を得た。次いで、上記無配向成形体を上記試料E1と同条件で積層、圧着、脱脂、焼成することにより、無配向の圧電セラミックス(試料C3)を作製した。この無配向の圧電セラミックスについてもX線回折強度を測定し、数1の式から、ロットゲーリング法による結晶配向セラミックス(試料E1)の平均配向度F(100)を算出した。
これら試料E2、試料C1、及び試料C2についても上記試料E1と同様に、結晶配向セラミックスの配向度及び半値幅を測定した。その結果を後述の表1に示す。
まず、各試料の乾燥時の重量(乾燥重量)をそれぞれ測定した。また、各試料を水に浸漬して各試料の開気孔部に水を浸透させた後、各試料の重量(含水重量)を測定した。次いで、含水重量と乾燥重量との差から、各試料中に存在する開気孔の体積を算出した。また、アルキメデス法により、各試料について、開気孔を除いた部分の体積を測定した。次いで、各試料の乾燥重量を、各試料の全体積(開気孔の体積と開気孔を除いた部分の体積との合計)で除することにより、各試料の嵩密度を算出した。その結果を表1に示す。
まず、各試料を研削、研磨及び加工して、その上下面がテープ面に対して平行で、厚さ0.4〜0.7mm、直径9〜11mmの円盤状試料を作製した。次いで、その上下面にAu焼付電極ペースト(住友金属鉱山(株)製 ALP3057)を印刷し乾燥させたのち、メッシュベルト炉を用いて850℃×10minの焼付を行うことにより、厚さ0.01mmの電極を形成した。さらに、印刷により不可避に形成された電極外周部の数マイクロメートルの盛り上り部を除去する目的で、各円板状試料を円筒研削により直径8.5mmに加工した。その後、上下方向に分極処理を施し全面電極を有する5種類の圧電素子を得た。得られた各圧電素子について、室温において、d33メータ(ZJ-3D:インスティテュート オブ アカデミア シニカ(Institute of Academia Sinica)製により圧電歪定数(d33)を測定した。その結果を表1に示す。
よって、ほぼ同様の条件で作製した異方形状粉末を用いても、結晶配向セラミックスの圧電特性にばらつきが生じてしまうことがわかる。
2 微細粉末
3 原料混合物
4 溶媒
5 成形体
8 結晶配向セラミックス
Claims (16)
- 等方性ペロブスカイト型化合物を主相とする多結晶体からなり、該多結晶体を構成する結晶粒の特定の結晶面Aが配向する結晶配向セラミックスの製造方法であって、
ペロブスカイト型化合物よりなり、上記特定の結晶面Aと格子整合性を有する結晶面が配向して配向面を形成している異方形状の配向粒子からなる異方形状粉末と、該異方形状粉末の1/3以下の平均粒径を有し、上記異方形状粉末と共に焼結させることにより上記等方性ペロブスカイト型化合物を生成する微細粉末とを準備する準備工程と、
上記異方形状粉末と上記微細粉末とを混合することにより原料混合物を作製する混合工程と、
上記異方形状粉末の上記配向面が略同一の方向に配向するように、上記原料混合物を成形して成形体を作製する成形工程と、
上記成形体を加熱し、上記異方形状粉末と上記微細粉末とを焼結させることにより上記結晶配向セラミックスを得る焼成工程とを有し、
上記準備工程においては、上記異方形状粉末について、ロッキングカーブ法による上記配向面の半値幅(FWHM)を測定し、該半値幅が10°以下の上記異方形状粉末を採用することを特徴とする結晶配向セラミックスの製造方法。 - 請求項1において、上記ロッキングカーブ法による半値幅の測定は、上記異方形状粉末を基板上に単層で配列させて行うことを特徴とする結晶配向セラミックスの製造方法。
- 請求項2において、上記異方形状粉末をアルコール系有機溶媒中に超音波分散機を用いて分散させてなる分散液を準備し、該分散液を上記基板上に滴下して乾燥させることにより上記異方形状粉末を基板上に配列させることを特徴とする結晶配向セラミックスの製造方法。
- 請求項3において、上記アルコール系有機溶媒中には、上記異方形状粉末を濃度2〜4wt%で分散させることを特徴とする結晶配向セラミックスの製造方法。
- 請求項1〜4のいずれか一項において、上記結晶配向セラミックスの上記結晶面Aは、擬立方{100}面及び/又は擬立方{200}面であることを特徴とする結晶配向セラミックスの製造方法。
- 請求項1〜5のいずれか一項において、上記配向粒子の上記配向面は、上記結晶面Aと同じ面であることを特徴とする結晶配向セラミックスの製造方法。
- 請求項1〜6のいずれか一項において、上記等方性ペロブスカイト型化合物は、一般式(1)ABO3(ただし、Aサイト元素はK、Na、Liから選ばれる1種以上を主成分とし、Bサイト元素は、Nb、Sb、Taから選ばれる1種以上を主成分とする)で表されることを特徴とする結晶配向セラミックスの製造方法。
- 請求項1〜7のいずれか一項において、上記等方性ペロブスカイト型化合物は、一般式(2):{Lix(K1-yNay)1-x}(Nb1-z-wTazSbw)O3(但し、0≦x≦0.2、0≦y≦1、0≦z≦0.4、0≦w≦0.2、x+z+w>0)で表されることを特徴とする結晶配向セラミックスの製造方法。
- 請求項1〜8のいずれか一項において、上記配向粒子は、一般式(3)ABO3で表される等方性ペロブスカイト型化合物からなり、上記一般式(3)におけるAサイト元素はK、Na、Liから選ばれる1種以上を主成分とし、上記一般式(3)におけるBサイト元素は、Nb、Sb、Taから選ばれる1種以上を主成分とすることを特徴とする結晶配向セラミックスの製造方法。
- 請求項1〜9のいずれか一項において、上記異方形状粉末と上記微細粉末とは異なる組成からなり、上記焼成工程においては、上記異方形状粉末と上記微細粉末とが化学反応を起こすことにより上記等方性ペロブスカイト型化合物を生成することを特徴とする結晶配向セラミックスの製造方法。
- 請求項1〜10のいずれか一項において、上記原料混合物に、周期律表における2〜15族に属する金属元素、半金属元素、遷移金属元素、貴金属元素、及びアルカリ土類金属元素から選ばれる1種以上の添加元素を含有させることを特徴とする結晶配向セラミックスの製造方法。
- 請求項11において、上記添加元素は、上記準備工程において、上記異方形状粉末を合成する際に添加することを特徴とする結晶配向セラミックスの製造方法。
- 請求項11において、上記添加元素は、上記準備工程において、上記微細粉末を合成する際に添加することを特徴とする結晶配向セラミックスの製造方法。
- 請求項11において、上記添加元素は、上記混合工程において、上記微細粉末及び上記異方形状粉末と共に添加することを特徴とする結晶配向セラミックスの製造方法。
- 請求項11〜14のいずれか一項において、上記添加元素は、上記焼成工程後に得られる上記等方性ペロブスカイト型化合物1molに対して、0.0001〜0.15molとなるような割合で添加することを特徴とする結晶配向セラミックスの製造方法。
- 請求項11〜15のいずれか一項において、上記焼成工程において上記等方性ペロブスカイト型化合物におけるAサイト元素又は/及びBサイト元素のいずれか1種以上の元素に対して、上記添加元素が0.01〜15at%の割合で置換添加されるように、上記添加元素の混合割合を調整することを特徴とする結晶配向セラミックスの製造方法。
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