JP2007302495A - 結晶配向セラミックスの製造方法 - Google Patents

結晶配向セラミックスの製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】配向度の高い結晶配向セラミックスを安定的に製造できる結晶配向セラミックスの製造方法を提供すること。
【解決手段】準備工程、混合工程、成形工程、及び焼成工程を行うことにより、等方性ペロブスカイト型化合物を主相とする多結晶体からなり、その結晶粒の特定の結晶面Aが配向する結晶配向セラミックスを製造する方法である。準備工程においては、異方形状の配向粒子からなる異方形状粉末と、その1/3以下の粒径を有する微細粉末を準備する。混合工程においては、微細粉末と異方形状粉末とを混合する。成形工程においては、成形体内における配向粒子の配向度が60%以上となるように原料混合物を成形して成形体を作製する。焼成工程においては、成形体を加熱し、等方性ペロブスカイト型化合物を主相とする多結晶体からなる結晶配向セラミックスを作製する。
【選択図】図1

Description

本発明は、等方性ペロブスカイト化合物を主相とする多結晶体からなり、該多結晶体を構成する結晶粒の特定の結晶面が配向してなる結晶配向セラミックスの製造方法に関する。
圧電材料は、圧電効果を有する材料であり、その形態は、単結晶、セラミックス、薄膜、高分子、及びコンポジット(複合材)等に分類される。これらの圧電材料の中で、特に圧電セラミックスは、高性能で、形状の自由度が大きく、さらに材料設計が比較的容易であるため、エレクトロニクスやメカトロニクスの分野で広く応用されている。
圧電セラミックスは、強誘電体セラミックスに電界を印加し、強誘電体の分域の方向を一定の方向にそろえる、いわゆる分極処理を施したものである。圧電セラミックスにおいて、分極処理により自発分極を一定方向にそろえるためには、自発分極の方向が三次元的に取りうる等方性ペロブスカイト型の結晶構造が有利である。そのため、実用化されている圧電セラミックスの大部分は、等方性ペロブスカイト型強誘電体セラミックスである。
等方性ペロブスカイト型強誘電体セラミックスとしては、例えば、Pb(Zr・Ti)O3(以下、これを「PZT」という。)、PZTに対して鉛系複合ペロブスカイトを第三成分として添加したPZT3成分系、BaTiO3、Bi0.5Na0.5TiO3(以下、これを「BNT」という。)等が知られている。
これらの中で、PZTに代表される鉛系の圧電セラミックスは、他の圧電セラミックスに比較して高い圧電特性を有しており、現在実用化されている圧電セラミックスの大部分を占めている。しかしながら、蒸気圧の高い酸化鉛(PbO)を含んでいるために、環境に対する負荷が大きいという問題がある。そのため、低鉛あるいは無鉛でPZTと同等の圧電特性を有する圧電セラミックスが求められている。
そこで、従来から様々な圧電セラミックスが提案されてきた。例えば、非鉛系の中でも相対的に高い圧電特性を示す等方性ペロブスカイト型ニオブ酸カリウムナトリウムや、その固溶体からなる圧電セラミックスがある(特許文献1〜6参照)。しかし、これらの無鉛圧電セラミックスは、PZT系の圧電セラミックスに比べてまだ充分な圧電特性を発揮できないという問題があった。
一方、形状異方性を有し、自発分極が1つの平面内に優先配向するセラミック結晶粒を含む圧電セラミックスを有する圧電素子が開発されている(特許文献7参照)。
等方性ペロブスカイト型化合物の圧電特性などは、一般に結晶軸の方向によって異なることが知られている。そのために、圧電特性などの高い結晶軸を一定の方向に配向させることができれば、圧電特性の異方性を最大限に活用することができ、圧電セラミックスの高性能化が期待できる。実際に、非鉛系強誘電体材料からなる単結晶の中には、優れた圧電特性を示すものがあることが知られている。しかし、単結晶は、製造コストが高いという問題がある。また、複雑な組成を有する固溶体の単結晶は、製造時の組成のずれを引き起こしやすく、実用材料としては不適当である、さらに、単結晶は、応力が加えられると破壊され易いという特性を有するため、高応力下での使用は困難であり、応用範囲が限られるという問題がある。
上記特許文献7に開示されているように、所定の組成を有する板状粉末を反応性テンプレートとして特定の結晶面を配向させる方法によれば、特定の結晶面が高い配向度で配向した結晶配向セラミックスを容易かつ安価に製造することができ、優れた圧電特性を有する無鉛の圧電セラミックスを得ることができる。
等方性ペロブスカイト型化合物からなる各結晶粒の特定の結晶面が配向した結晶配向セラミックスは、図2〜図5に示すごとく、例えば次のようにして作製することができる。
即ち、まず、図2に示すごとく、所定の組成を有する異方形状の板状粉末1を反応性テンプレートとして準備する。また、焼成時にこの板状粉末1と反応して等方性ペロブスカイト型化合物を生成する原料粉末2を準備する。次いで、この板状粉末1及び原料粉末2に、溶媒、バインダー、可塑剤、及び分散材等を加えて混合し、スラリー3を作製する。このスラリー3においては、溶媒、バインダー、可塑剤、及び分散材等からなる分散媒4中に板状粉末1及び原料粉末2が分散されている。
次に、図3に示すごとく、スラリー3を例えばシート状に成形して成形体5を作製する。このとき、同図に示すごとく、成形時に加わるせん断応力により、異方形状の板状粉末1を成形体5内で略一定の方向に整列させる。
次いで、成形体5を加熱して焼結させる。このとき、図4に示すごとく、焼結中の成形体6内では、上記板状粉末1が反応性テンプレートとなって周囲の上記原料粉末2と反応して上記等方性ペロブスカイト型化合物を生成しながら板状粉末1が成長する。さらに、焼結を進行させると、板状粉末1が原料粉末2と反応しながらさらに成長し、図5に示すごとく、特定の結晶面が配向した結晶粒子(配向粒子)7からなる結晶配向セラミックス8を得ることができる。
特定の結晶面をより高い配向度で配向させるためには、スラリー3を成形して成形体5を作製する際に、成形体5内で板状粉末1をできるだけ高い配向度で配向させる必要があると考えられていた。そのため、板状粉末としては比較的アスペクト比の大きなものが用いられていた(特許文献8参照)。
また、成形時に、板状粉末と、板状粉末以外の材料とをそれぞれ別々にスクリーン印刷し、両者を積層する方法も提案されていた。
さらに、異方性形状を有するセラミックス粒子を含む成形体に加熱過程において遠心力を付与する方法等が開発されている(特許文献9参照)。
しかしながら、上述のような従来の方法によって、板状粉末や異方性形状のセラミックス粒子を配向させても、焼結後に高い配向度の結晶配向セラミックスを得ることができない場合があった。また、スクリーン印刷を繰り返して積層する方法や、遠心力を付与する方法においては、操作が複雑になるおそれがあった。
このように、従来においては、配向度の高い結晶配向セラミックスを確実に製造することが困難であるという問題があった。
特開2000−313664号公報 特開2003−300776号公報 特開2003−306479号公報 特開2003−327472号公報 特開2003−342069号公報 特開2003−342071号公報 特開2004−7406号公報 特開平10−158087号公報 特開2003−146767号公報
本発明はかかる従来の問題点を鑑みてなされたものであって、配向度の高い結晶配向セラミックスを安定的に製造できる結晶配向セラミックスの製造方法を提供しようとするものである。
本発明は、等方性ペロブスカイト型化合物を主相とする多結晶体からなり、該多結晶体を構成する結晶粒の特定の結晶面Aが配向する結晶配向セラミックスの製造方法であって、
ペロブスカイト型化合物よりなり、上記特定の結晶面Aと格子整合性を有する結晶面が配向して配向面を形成している異方形状の配向粒子からなる異方形状粉末と、該異方形状粉末の1/3以下の平均粒径を有し、上記異方形状粉末と共に焼結させることにより上記等方性ペロブスカイト型化合物を生成する微細粉末とを準備する準備工程と、
上記異方形状粉末と上記微細粉末とを混合することにより原料混合物を作製する混合工程と、
上記異方形状粉末の上記配向面が略同一の方向に配向するように、上記原料混合物を成形して成形体を作製する成形工程と、
上記成形体を加熱し、上記異方形状粉末と上記微細粉末とを焼結させることにより上記結晶配向セラミックスを得る焼成工程とを有し、
上記成形工程においては、上記成形体内における上記配向粒子の上記配向面のロットゲーリング法による配向度が60%以上となるように上記原料混合物の成形を行うことを特徴とする結晶配向セラミックスの製造方法にある(請求項1)。
本発明の製造方法においては、上記準備工程と、上記混合工程と、上記成形工程と、上記焼成工程とを行うことにより、上記結晶配向セラミックスを製造する。
上記準備工程においては、ペロブスカイト型化合物よりなり、上記特定の結晶面Aと格子整合性を有する結晶面が配向して配向面を形成している異方形状の配向粒子からなる異方形状粉末と、該異方形状粉末の1/3以下の平均粒径を有し、上記異方形状粉末と共に焼結させることにより上記等方性ペロブスカイト型化合物を生成する微細粉末とを準備する。
また、上記混合工程においては、上記異方形状粉末と上記微細粉末とを混合することにより原料混合物を作製する。
上記成形工程においては、上記異方形状粉末の上記配向面が略同一の方向に配向するように、上記原料混合物を成形して成形体を作製する。
即ち、上記成形工程においては、上記原料混合粉末を、例えば上記異方形状粉末に対して一方向から力が作用するように成形すること等により、上記異方形状粉末に作用する剪断応力等によって上記異方形状粉末を上記成形体中で配向させることができる。
また、上記焼成工程においては、上記成形体を加熱し、上記異方形状粉末と上記微細粉末とを焼結させる。このように、上記異方形状粉末が配向する上記成形体を焼結させると、上記異方形状粉末の配向方位を継承した等方性ペロブスカイト型化合物からなる異方形状結晶を生成させることができる。その結果、等方性ペロブスカイト型化合物を主相とする多結晶体からなり、該多結晶体を構成する結晶粒の特定の結晶面Aが配向する上記結晶配向セラミックスを製造することができる。
また、本発明においては、上記配向粒子の上記配向面が、製造しようとする上記多結晶体を構成する上記結晶粒の上記特定の結晶面Aとの間に格子整合性を有している。そのため、上記焼成工程においては、上記異方形状粉末がテンプレート又は反応性テンプレートとして機能し、上記配向粒子の上記配向面が、焼結後に生成する上記等方性ペロブスカイト型化合物の上記特定の結晶面Aとして承継される。それ故、上記のごとく、特定の結晶面Aが一方向に配向した状態で、等方性ペロブスカイト型化合物を生成することができる。また、上記焼成工程においては、上記等方性ペロブスカイト型化合物を生成すると共に、焼結させて上記多結晶体を製造することができる。このようにして、上記結晶配向セラミックスを得ることができる。
また、本発明においては、上記成形工程において上記成形体内における上記配向粒子の上記配向面のロットゲーリング法による配向度が60%以上となるように上記原料混合物の成形を行っている。そのため、例えば配向度80%以上という高配向度の上記結晶配向セラミックスを確実に得ることができる。
即ち、従来においては、成形体の配向度と該成形体を焼成して得られる焼結体(結晶配向セラミックス)の配向度との間には、直線的な比例関係があると考えられていた。そのため、配向度の高い結晶配向セラミックスを得るために成形体の配向度をできるだけ高くすることが求められており、例えば、上述のごとく、板状粉末の形状を制御したり、また、スクリーン印刷を繰り返し行って板状粉末とその他の材料とを積層形成することが行われていた。また、成形体に遠心力を付与する方法等も行われていた。
本発明においては、成形体の配向度と結晶配向セラミックスの配向度との間の関係は、直線的な比例関係ではなく、成形体の配向度をある一定の値を越えて大きくしても焼結体(結晶配向セラミックス)の配向度はもはやほとんど向上しないことを見出した。そして、成形方法にはよらず、上記成形体内における上記配向粒子の上記配向面のロットゲーリング法による配向度が60%以上となるように上記原料混合物の成形を行うことにより、より確実に、上記焼成工程後に得られる上記結晶配向セラミックスの配向度を例えば80%以上という非常に高いものにすることができることを見出した。
このように、本発明によれば、配向度の高い結晶配向セラミックスを安定的に製造できる結晶配向セラミックスの製造方法を提供することができる。
次に、本発明の好ましい実施の形態につき説明する。
本発明の製造方法においては、等方性ペロブスカイト型化合物を主相とする多結晶体からなり、該多結晶体を構成する結晶粒の特定の結晶面Aが配向する結晶配向セラミックスを製造する。
ここで、「等方性」とは、擬立方基本格子でペロブスカイト型構造ABO3を表現したとき、軸長a、b、cの相対比が0.8〜1.2であり、軸角α、β、γが80〜100°の範囲にあることを示す。
上記等方性ペロブスカイト型化合物としては、例えば一般式(1)ABO3(ただし、Aサイト元素はK、Na、Liから選ばれる1種以上を主成分とし、Bサイト元素は、Nb、Sb、Taから選ばれる1種以上を主成分とする)で表される化合物がある(請求項2)。
上記一般式(1)において、Aサイト及び/又はBサイトには、上述の主成分元素以外にも後述の添加元素を副成分として含有させることもできる。
また、上記一般式(1)で表される化合物としては、例えばニオブ酸カリウムナトリウム(K1-yNay)NbO3を基本組成とし、Aサイト元素(K、Na)の一部が所定量のLiで置換された化合物、あるいはBサイト元素(Nb)の一部が所定量のTa及び/又はSbで置換された化合物、あるいはAサイト元素(K、Na)の一部が所定量のLiで置換されると共にBサイト元素(Nb)の一部が所定量のTa及び/又はSbで置換された化合物等がある。
また、上記等方性ペロブスカイト型化合物は、一般式(2):{Lix(K1-yNay)1-x}(Nb1-z-wTazSbw)O3(但し、0≦x≦0.2、0≦y≦1、0≦z≦0.4、0≦w≦0.2、x+z+w>0)で表されることが好ましい(請求項3)。
この場合には、圧電特性や誘電特性等が優れた上記結晶配向セラミックスを製造することができる。
上記一般式(2)において、「x+z+w>0」は、置換元素として、Li、Ta及びSbの内の少なくとも1つが含まれていればよいことを示す。
また、一般式(2)において、「y」は、等方性ペロブスカイト型化合物に含まれるKとNaの比を表す。上記一般式(2)で表される化合物においては、Aサイト元素として、K又はNaの少なくとも一方が含まれていればよい。
上記一般式(2)におけるyの範囲は、0<y≦1であることがより好ましい。
この場合には、上記一般式(2)で表される化合物において、Naが必須成分となる。そのため、この場合には、上記結晶配向セラミックスの圧電g31定数をさらに向上させることができる。
また、上記一般式(2)におけるyの範囲は、0≦y<1とすることができる。
この場合には、上記一般式(2)で表される化合物において、Kが必須成分となる。そのため、この場合には、上記結晶配向セラミックスの圧電d31定数等の圧電特性をさらに向上させることができる。また、この場合には、K添加量の増加に伴い、より低温での焼結が可能になるため、省エネルギーかつ低コストで上記結晶配向セラミックスを作製することができる。
また、上記一般式(2)において、yは、0.05≦y≦0.75であることがより好ましく、0.20≦y≦0.70であることがさらに好ましい。これらの場合には、上記結晶配向セラミックスの圧電d31定数及び電気解決合計数Kpを一層向上させることができる。さらに一層好ましくは、0.20≦y<0.70がよく、さらには0.35≦y≦0.65がよく、さらには0.35≦y<0.65がより好ましい。また、最も好ましくは、0.42≦y≦0.60がよい。
「x」は、Aサイト元素であるK及び/又はNaを置換するLiの置換量を表す。K及び/又はNaの一部をLiで置換すると、圧電特性等の向上、キュリー温度の上昇、及び/又は緻密化の促進という効果が得られる。
上記一般式(2)におけるxの範囲は、0<x≦0.2であることがより好ましい。
この場合には、上記一般式(2)で表される化合物において、Liが必須成分となるので、上記結晶配向セラミックスは、その作製時の焼成を一層容易に行うことができると共に、圧電特性がより向上し、キュリー温度(Tc)を一層高くすることができる。これは、Liを上記のxの範囲内において必須成分とすることにより、焼成温度が低下すると共に、Liが焼成助剤としての役割を果たし、空孔の少ない焼成を可能にするからである。
xの値が0.2を越えると、圧電特性(圧電d31定数、電気機械結合係数kp、圧電g31定数等)が低下するおそれがある。
また、上記一般式(2)におけるxの値は、x=0とすることができる。
この場合には、上記一般式(2)は、(K1-yNay)(Nb1-z-wTazSbw)O3で表される。そしてこの場合には、上記結晶配向セラミックスを作製する際に、その原料中に例えばLiCO3のように、最も軽量なLiを含有してなる化合物を含まないので、原料を混合し上記結晶配向セラミックスを作製するときに原料粉の偏析による特性のばらつきを小さくすることができる。また、この場合には、高い比誘電率と比較的大きな圧電g定数を実現できる。上記一般式(2)において、xの値は、0≦x≦0.15がより好ましく、0≦x≦0.10がさらに好ましい。
「z」は、Bサイト元素であるNbを置換するTaの置換量を表す。Nbの一部をTaで置換すると、圧電特性等の向上という効果が得られる。上記一般式(2)において、zの値が0.4を越えると、キュリー温度が低下し、家電や自動車用の圧電材料としての利用が困難になるおそれがある。
上記一般式(2)におけるzの範囲は、0<z≦0.4であることが好ましい。
この場合には、上記一般式(2)で表される化合物において、Taが必須成分となる。そのため、この場合には、焼結温度が低下すると共に、Taが焼結助剤の役割を果たし、上記結晶配向セラミックス中の空孔を少なくすることができる。
また、上記一般式(2)におけるzの値は、z=0とすることができる。
この場合には、上記一般式(2)は、{Lix(K1-yNay)1-x}(Nb1-wSbw)O3で表される。そして、この場合には、上記一般式(2)で表される化合物はTaを含ま
ない。そのためこの場合には、上記一般式(2)で表される化合物は、その作製時に高価なTa成分を使用することなく、優れた圧電特性を示すことができる。
上記一般式(2)において、zの値は、0≦z≦0.35がより好ましく、0≦z≦0.30がさらに好ましい。
さらに、「w」は、Bサイト元素であるNbを置換するSbの置換量を表す。Nbの一部をSbで置換すると、圧電特性等の向上という効果が得られる。wの値が0.2を越えると、圧電特性、及び/又はキュリー温度が低下するので好ましくない。
また、上記一般式(2)におけるwの値は、0<w≦0.2であることが好ましい。
この場合には、上記一般式(2)で表される化合物において、Sbが必須成分となる。そのため、この場合には、焼結温度が低下し、焼結性を向上させることができると共に、誘電損失tanδの安定性を向上させることができる。
また、上記一般式(2)におけるwの値は、w=0とすることができる。この場合には、上記一般式(2)は、{Lix(K1-yNay1-x}(Nb1-zTaz)O3で表される。そして、この場合には、上記一般式(2)で表される化合物は、Sbを含まず、比較的高いキュリー温度を示すことができる。上記一般式(2)において、wの値は、0≦w≦0.15であることがより好ましく、、0≦w≦0.10であることがさらに好ましい。
なお、上記結晶配向セラミックスは、上記一般式(2)で表される等方性ペロブスカイト型化合物のみからなることが望ましいが、等方性ペロブスカイト型の結晶構造を維持でき、かつ、焼結特性、圧電特性等の諸特性に悪影響を及ぼさないものである限り、他の元素又は他の相が含まれていても良い。
また、上記結晶配向セラミックスにおいては、該結晶配向セラミックスの多結晶体を構成する結晶粒の特定の結晶面Aが配向する。
「特定の結晶面Aが配向する」とは、上記等方性ペロブスカイト型化合物の特定の結晶面Aが互いに平行になるように、各結晶粒が配列していること(以下、このような状態を「面配向」という。)を意味する。
配向している結晶面Aの種類としては、例えば上記等方性ペロブスカイト型化合物の自発分極の方向、結晶配向セラミックスの用途、要求特性等に応じて選択することができる。即ち、上記結晶面Aは、擬立方{100}面、擬立方{110}面、擬立方{111}面等を目的に合わせて選択することができる。
「擬立方{HKL}」とは、一般に等方性ペロブスカイト型化合物は、正方晶、斜方晶、三方晶等、立方晶からわずかにゆがんだ構造をとるが、その歪みはわずかであるので、立方晶とみなしてミラー指数表示することを意味する。
また、特定の結晶面Aが面配向している場合において、面配向の程度は、次の数1の式で表されるロットゲーリング(Lotgering)法による平均配向度F(HKL)で表すことができる。
Figure 2007302495
数1の式において、ΣI(hkl)は、結晶配向セラミックスについて測定されたすべての結晶面(hkl)のX線回折強度の総和であり、ΣI0(hkl)は、結晶配向セラミックスと同一組成を有する無配向の圧電セラミックスについて測定されたすべての結晶面(hkl)のX線回折強度の総和である。また、Σ’I(HKL)は、結晶配向セラミックスについて測定された結晶学的に等価な特定の結晶面(HKL)のX線回折強度の総和であり、Σ’I0(HKL)は、結晶配向セラミックスと同一組成を有する無配向の圧電セラミックスについて測定された結晶学的に等価な特定の結晶面(HKL)のX線回折強度の総和である。
したがって、多結晶体を構成する各結晶粒が無配向である場合には、平均配向度F(HKL)は0%となる。また、多結晶体を構成するすべての結晶粒の(HKL)面が測定面に対して平行に配向している場合には、平均配向度F(HKL)は100%となる。
上記結晶配向セラミックスにおいて、配向している結晶粒の割合が多くなるほど、高い特性が得られる。
また、配向させる特定の結晶面は、分極軸に垂直な面が好ましい。また、上記ペロブスカイト型化合物の結晶系が正方晶の場合において、配向させる特定の結晶面Aは擬立方{100}面が好ましい。
上記結晶配向セラミックスは、上記等方性ペロブスカイト型化合物を主相とする多結晶体からなるので、非鉛系の圧電セラミックスの中でも高い圧電特性等を示すことができる。また、上記結晶配向セラミックスは、多結晶体を構成する各結晶粒の特定の結晶面が一方向に配向しているので、同一組成を有する無配向焼結体に比して、高い圧電特性等を示すことができる。
具体的には、その主相をなす上記等方性ペロブスカイト型化合物の組成、配向度、製造条件等を最適化することによって、室温における圧電d31定数が同一組成を有する無配向焼結体の少なくとも1.1倍以上である結晶配向セラミックスが得られる。また、これらの条件を最適化すれば、室温における圧電d31定数が同一組成を有する無配向焼結体の1.2倍以上、さらに最適化すれば1.3倍以上である結晶配向セラミックスも得られる。
例えば上記一般式(2)で表される化合物等のように複雑な組成を有する等方性ペロブスカイト型化合物からなるセラミックスは、通常、成分元素を含む単純化合物を目的の化学量論比になるように混合し、この混合物を成形・仮焼した後に解砕し、次いで、解砕粉を再成形・焼結する方法によって製造される。しかしながら、このような方法では、各結晶粒の特定の結晶面が特定の方向に配向した上記結晶配向セラミックスを製造することは極めて困難である。
本発明においては、上述のごとく、上記異方形状粉末を成形体中に配向させ、この異方形状粉末をテンプレート又は反応性テンプレートとして用いて例えば上記一般式(2)で表される化合物等の等方性ペロブスカイト型化合物の合成及びその焼結を行わせ、これによって多結晶体を構成する各結晶粒の特定の結晶面を一方向に配向させることができる。
次に、本発明の製造方法における各工程(準備工程、混合工程、成形工程、及び焼成工程)について説明する。
まず、上記準備工程は、上記異方形状粉末と上記微細粉末とを準備する工程である。
上記異方形状粉末は、ペロブスカイト型化合物よりなる配向粒子からなる。また、配向粒子は、異方形状を有し、作製しようとする上記多結晶体を構成する上記結晶粒の特定の結晶面Aと格子整合性を有する結晶面が配向して配向面を形成している。
上記格子整合性は、格子整合率で表すことができる。
格子整合性を説明するにあたり、例えば上記配向粒子が金属酸化物である場合について説明する。即ち、上記配向粒子における上記配向面の二次元結晶格子において、例えば酸素原子からなる格子点又は金属原子からなる格子点と、上記多結晶体において配向する上記特定の結晶面Aの二次元結晶格子における酸素原子からなる格子点又は金属原子からなる格子点とが、相似関係を有する場合に、両者には格子整合性が存在する。
格子整合率は、上記配向粒子における上記配向面と、上記多結晶体において配向する上記特定の結晶面Aの相似位置における格子寸法との差の絶対値を上記配向粒子における上記配向面の格子寸法で除することにより得られる値を百分率で表すものである。
格子寸法とは、一つの結晶面の二次元結晶格子における格子点間の距離のことであり、X線回折や電子線回折等により結晶構造を解析することにより測定することができる。一般に、格子整合率が小さくなるほど、上記配向粒子は、上記結晶面Aとの格子整合性が高くなり、良好なテンプレートとして機能することができる。
より高配向度の結晶配向セラミックスを得るためには、上記配向粒子の格子整合率は、20%以下が好ましく、さらに好ましくは10%以下がよく、さらにより好ましくは5%以下がよい。
また、「異方形状」とは、幅方向又は厚さ方向の寸法に比して、長手方向の寸法が大きいことをいう。具体的には、板状、柱状、鱗片状、針状等の形状が好適な例として挙げられる。また、上記配向面を構成する結晶面の種類は、種々の結晶面の中から目的に応じて選択することができる。
上記配向粒子としては、成形工程の際に一定の方向に配向させることが容易な形状を有しているものを用いることが好ましい。そのため、上記配向粒子としては、平均アスペクト比が3以上であることが好ましい。平均アスペクト比が3未満の場合には、後述の成形工程において、上記異方形状粉末を一方向に配向させることが困難になる。より高い配向度の上記結晶配向セラミックスを得るためには、上記配向粒子のアスペクト比は5以上であることがより好ましい。なお、平均アスペクト比は、上記配向粒子の最大寸法/最小寸法の平均値である。
また、上記配向粒子の平均アスペクト比が大きくなるほど、成形工程において上記配向粒子を配向させることがより容易になる傾向がある。しかし、平均アスペクト比が過大になると、上記混合工程において、上記配向粒子が破壊されてしまうおそれがある。その結果、成形工程において、上記配向粒子が配向した成形体が得られなくなるおそれがある。したがって、上記配向粒子の平均アスペクト比は、100以下であることが好ましい。より好ましくは50以下、さらには30以下が良い。
また、上記配向粒子はペロブスカイト型化合物からなる。
具体的には、上記配向粒子としては、例えば上記一般式(1)又は上記一般式(2)で表される化合物等のように目的の等方性ペロブスカイト型化合物と同一組成を有するもの等を用いることができる。
また、上記配向粒子は、必ずしも上記一般式(1)又は上記一般式(2)で表される化合物等のように目的の等方性ペロブスカイト型化合物と同一組成を有するものである必要はなく、後述の微細粉末と焼結することにより、目的とする上記一般式(1)又は上記一般式(2)で表される等方性ペロブスカイト型化合物を主成分として生成するものであればよい。したがって、上記配向粒子としては、作製しようとする等方性ペロブスカイト型化合物に含まれる陽イオン元素のうちいずれか1種以上の元素を含む化合物あるいは固溶体等から選ぶことができる。
上述のような条件を満たす配向粒子としては、例えば等方性ペロブスカイト型化合物の一種であるNaNbO3(以下、これを「NN」という。)、KNbO3(以下、これを「KN」という。)、(K1-yNay)NbO3(0<y<1)、又はこれらに所定量のLi、Ta及び/又はSbが置換・固溶したものであって、次の一般式(4)で表される化合物からなるもの等を用いることができる。
{Lix(K1-yNay)1-x}(Nb1-z-wTazSbw)O3 ・・・(4)
(但し、x、y、z、wがそれぞれ0≦x≦1、0≦y≦1、0≦z≦1、0≦w≦1)
上記一般式(4)で表される化合物は、当然に上記一般式(2)で表される等方性ペロブスカイト型化合物と良好な格子整合性を有している。そのため、上記一般式(4)で表され、かつ上記多結晶体における上記結晶面Aと格子整合性を有する面を上記配向面とする上記配向粒子からなる異方形状粉末(以下、これを特に「異方形状粉末A」という)は、上記結晶配向セラミックスを製造するための反応性テンプレートとして機能する。また、上記異方形状粉末Aは、実質的に上記一般式(2)で表される等方性ペロブスカイト型化合物に含まれる陽イオン元素から構成されているので、不純物元素の極めて少ない結晶配向セラミックスを製造することができる。これらのなかでも擬立方{100}面を配向面とする上記一般式(4)で表される化合物からなる板状の粒子が、上記配向粒子として好適である。
また、上記異方形状粉末としては、例えば層状ペロブスカイト型化合物からなり、かつ表面エネルギーの小さい結晶面が上記一般式(2)で表される化合物からなる多結晶体における上記結晶面Aと格子整合性を有しているものを用いることができる。層状ペロブスカイト型化合物は、結晶格子の異方性が大きいので、層状ペロブスカイト型化合物からなり、表面エネルギーの小さい結晶面を配向面とする異方形状粉末(以下、これを特に「異方形状粉末B」という。)を比較的容易に合成することができる。
上記異方形状粉末Bの材料として好適な層状ペロブスカイト型化合物の第1の例としては、例えば次の一般式(5)で表されるビスマス層状ペロブスカイト型化合物がある。
(Bi22)2+(Bi0.5Mem-1.5Nbm3m+1)2- ・・・(5)
(但し、mは2以上の整数、MeはLi、K及びNaから選ばれる1種以上)
上記一般式(5)で表される化合物は{001}面の表面エネルギーが他の結晶面の表面エネルギーより小さい。そのため、上記一般式(5)で表される化合物を用いることにより、{001}面を配向面とする上記異方形状粉末Bを容易に合成できる。ここで、{001}面は、上記一般式(5)で表されるビスマス層状ペロブスカイト型化合物の(Bi22)2+層に平行な面である。しかも、上記一般式(5)で表される化合物の{001}面は、一般式(2)で表される等方性ペロブスカイト型化合物の擬立方{100}面との間に極めて良好な格子整合性がある。
そのため、上記一般式(5)で表される化合物からなり、かつ{001}面を配向面とする異方形状粉末Bは、擬立方{100}面を配向面とする結晶配向セラミックスを作製するための反応性テンプレート、即ち上記異方形状粉末として好適である。また、上記一般式(5)で表される化合物を用いるときに、後述の微細粉末の組成を最適化することによって、Aサイト元素として実質的にBiを含まないように調整することができる。このような異方形状粉末Bを用いても、上記一般式(2)で表される等方性ペロブスカイト型化合物を主相とする結晶配向セラミックスを製造することができる。
また、上記異方形状粉末Bの材料として好適な層状ペロブスカイト型化合物の第2の例としては、例えばSr2Nb27がある。Sr2Nb27の{010}面は、その表面エネルギーが他の結晶面の表面エネルギーより小さく、しかも、上記一般式(2)で表される等方性ペロブスカイト型化合物の擬立方{110}面との間に極めて良好な格子整合性がある。そのため、Sr2Nb27からなり、かつ{010}面を配向面とする異方形状粉末は、{110}面を配向面とする結晶配向セラミックスを作製するための反応性テンプレートとして好適である。
異方形状粉末Bの材料として好適な層状ペロブスカイト型化合物の第3の例としては、例えばNa1.5Bi2.5Nb312、Na2.5Bi2.5Nb415、Bi3TiNbO9、Bi3TiTaO9、K0.5Bi2.5Nb29、CaBi2Nb29、SrBi2Nb29、BaBi2Nb29、BaBi3Ti2NbO12、CaBi2Ta29、SrBi2Ta29、BaBi2Ta29、Na0.5Bi2.5Ta29、Bi7Ti4NbO21、Bi5Nb315等がある。これらの化合物の{001}面は、上記一般式(2)で表される等方性ペロブスカイト型化合物の擬立方{100}面と良好な格子整合性を有している。そのため、これらの化合物からなり、かつ{001}面を配向面とする異方形状粉末は、擬立方{100}面を配向面とする結晶配向セラミックスを作製するための反応性テンプレートとして好適である。
異方形状粉末Bの材料として好適な層状ペロブスカイト型化合物の第4の例としては、例えばCa2Nb27、Sr2Ta27等がある。これらの化合物の{010}面は、上記一般式(2)で表される等方性ペロブスカイト型化合物の擬立方{110}面と良好な格子整合性を有している。そのため、これらの化合物からなり、かつ{010}面を配向面とする異方形状粉末は、擬立方{110}面を配向面とする結晶配向セラミックスを作製するための反応性テンプレートとして好適である。
次に、上記異方形状粉末の製造方法について説明する。
所定の組成、平均粒径及び/又はアスペクト比を備えた層状ペロブスカイト型化合物からなる異方形状粉末(即ち、上記異方形状粉末B)は、その成分元素を含む酸化物、炭酸塩、硝酸塩等を原料(以下、これを「異方形状粉末生成原料」という。)とし、この異方形状粉末生成原料を液体又は加熱により液体となる物質と共に加熱することにより容易に製造することができる。
上記異方形状粉末生成原料を原子の拡散が容易な液相中で加熱すると、表面エネルギーの小さい面(例えば上記一般式(5)で表される化合物の場合は{001}面)が優先的に発達した異方形状粉末Bを容易に合成することができる。この場合、異方形状粉末Bの平均アスペクト比及び平均粒径は、合成条件を適宜選択することにより、制御することができる。
異方形状粉末Bの製造方法としては、例えば上記異方形状粉末生成原料に適当なフラックス(例えば、NaCl、KCl、NaClとKClとの混合物、BaCl2、KF等)
を加えて所定の温度で加熱する方法(フラックス法)や、作製しようとする異方形状粉末Bと同一組成を有する不定形粉末をアルカリ水溶液と共にオートクレーブ中で加熱する方法(水熱合成法)等が好適な例としてあげられる。
一方、上記一般式(4)で表される化合物は、結晶格子の異方性が極めて小さいので、一般式(4)で表される化合物からなり、かつ特定の結晶面を配向面とする上記異方形状粉末(即ち、上記異方形状粉末A)を直接合成するのは困難である。しかしながら、上記異方形状粉末Aは、上述の異方形状粉末Bを反応性テンプレートとして用いて、これと所定の条件を満たす後述の反応原料Bとを、フラックス中で加熱することにより製造することができる。
なお、異方形状粉末Bを反応性テンプレートとして用いて異方形状粉末Aを合成する場合には、反応条件を最適化すれば、結晶構造の変化のみが起こり、粉末形状の変化はほとんど生じない。
成形時に一方向に配向させることが容易な異方形状粉末Aを容易に合成するためには、その合成に使用する異方形状粉末Bもまた、成形時に一方向に配向させることが容易な形状を有していることが好ましい。
すなわち、上記異方形状粉末Bを反応性テンプレートとして用いて、異方形状粉末Aを合成する場合においても、異方形状粉末Aの平均アスペクト比は、少なくとも3以上が好ましく、より好ましくは5以上、さらに好ましくは10以上がよい。また、後工程における粉砕を抑制するためには、平均アスペクト比は、100以下であることが好ましい。
上記の「反応原料B」とは、上記異方形状粉末Bと反応して、少なくとも上記一般式(4)で表される化合物からなる異方形状粉末Aを生成するものをいう。この場合、反応原料Bは、上記異方形状粉末Bとの反応によって、上記一般式(4)で表される化合物のみを生成するものであってもよく、また、上記一般式(4)で表される化合物と余剰成分の双方を生成するものであってもよい。ここで、「余剰成分」とは、目的とする上記一般式(4)で表される化合物以外の物質をいう。また、異方形状粉末Bと反応原料Bによって余剰成分が生成する場合、余剰成分は、熱的又は化学的に除去することが容易なものからなることが好ましい。
上記反応原料Bの形態としては、例えば酸化物粉末、複合酸化物粉末、炭酸塩、硝酸塩、シュウ酸塩等の塩、アルコキシド等を用いることができる。また、反応原料Bの組成は、作製しようとする上記一般式(4)で表される化合物の組成、及び上記異方形状粉末Bの組成によって決定することができる。
例えば、上記一般式(5)で表されるビスマス層状ペロブスカイト型化合物の1種であるBi2.5Na0.5Nb29(以下、これを「BINN2」という。)からなる異方形状粉末Bを用いて、上記一般式(4)で表される化合物の一種であるNaNbO3(NN)からなる異方形状粉末Aを合成する場合、上記反応原料Bとしては、Naを含む化合物(酸化物、水酸化物、炭酸塩、硝酸塩等)を用いることができる。
このような組成を有する異方形状粉末B及び反応原料Bに対して、適当なフラックス(例えば、NaCl、KCl、NaClとKClとの混合物、BaCl2、KF等)を1重量%〜500重量%加えて、共晶点・融点に加熱すると、NNとBi23とを主成分とする余剰成分が生成する。Bi23は、融点が低く、酸にも弱いので、得られた反応物から湯洗等によりフラックスを取り除いた後、これを高温で加熱するか、あるいは、酸洗浄を行えば、{100}面を配向面とするNNからなる上記異方形状粉末Aを得ることができる。
また、例えば、BINN2からなる上記異方形状粉末Bを用いて、上記一般式(4)で表される化合物の一種である(K0.5Na0.5)NbO3(以下、これを「KNN」という。)からなる異方形状粉末Aを合成する場合には、上記反応原料Bとして、Naを含む化合物(酸化物、水酸化物、炭酸塩、硝酸塩等)及びKを含む化合物(酸化物、水酸化物、炭酸塩、硝酸塩等)、又はNa及びKの双方を含む化合物を用いればよい。
このような組成を有する異方形状粉末B及び反応原料Bに対して、適当なフラックスを1重量%〜500重量%加えて、共晶点・融点に加熱すると、KNNとBi23とを主成分とする余剰成分が生成するので、得られた反応物からフラックス及びBi23を除去すれば、{100}面を配向面とするKNNからなる異方形状粉末Aを得ることができる。
上記異方形状粉末Bと上記反応原料Bとの反応によって、上記一般式(4)で表される化合物のみを生成させる場合も同様であり、所定の組成を有する異方形状粉末Bと所定の組成を有する反応原料Bとを適当なフラックス中で加熱すればよい。これにより、フラックス中において、目的とする組成を有する上記一般式(4)で表される化合物を生成することができる。また、得られた反応物からフラックスを取り除けば、上記一般式(4)からなり、かつ特定の結晶面を配向面とする異方形状粉末Aを得ることができる。
上記一般式(4)で表される化合物は、結晶格子の異方性が小さいので、異方形状粉末Aを直接合成することは困難である。また、任意の結晶面を配向面とする異方形状粉末Aを直接合成することも困難である。
これに対し、層状ペロブスカイト型化合物は、結晶格子の異方性が大きいので、異方形状粉末を直接合成することが容易にできる。また、層状ペロブスカイト型化合物からなる異方形状粉末の配向面は、上記一般式(4)で表される化合物の特定の結晶面との間に格子整合性を有しているものが多い。さらに、上記一般式(4)で表される化合物は、層状ペロブスカイト型化合物に比べて熱力学的に安定である。
そのため、層状ペロブスカイト型化合物からなり、かつその配向面が上記一般式(4)で表される化合物の特定の結晶面と格子整合性を有する異方形状粉末Bと上記反応原料Bとを、適当なフラックス中で反応させると、上記異方形状粉末Bが反応性テンプレートとして機能することができる。その結果、上記異方形状粉末Bの配向方位を継承した、上記一般式(4)で表される化合物からなる異方形状粉末Aを容易に合成することができる。
また、上記異方形状粉末B及び上記反応原料Bの組成を最適化すると、上記異方形状粉末Bに含まれていたAサイト元素(以下、これを「余剰Aサイト元素」という。)が余剰成分として排出されると共に、余剰Aサイト元素を含まない、上記一般式(4)で表される化合物からなる異方形状粉末Aが生成する。
特に、上記異方形状粉末Bが上記一般式(5)に示すビスマス層状ペロブスカイト型化合物からなる場合には、Biが余剰Aサイト元素として排出され、Bi23を主成分とする余剰成分が生成する。そのため、この余剰成分を熱的又は化学的に除去すれば、実質的にBiを含まず、上記一般式(4)で表される化合物からなり、かつ特定の結晶面を配向面とする異方形状粉末Aを得ることができる。
また、上記配向粒子は、上記配向粒子は、一般式(3)ABO3で表される等方性ペロブスカイト型化合物からなり、上記一般式(3)におけるAサイト元素はK、Na、Liから選ばれる1種以上を主成分とし、上記一般式(3)におけるBサイト元素は、Nb、Sb、Taから選ばれる1種以上を主成分とすることが好ましい(請求項4)。
この場合には、上記配向粒子を用いることにより、非鉛系の中でも相対的に高い圧電特性を示す等方性ペロブスカイト型ニオブ酸カリウムナトリウム系の結晶配向セラミックスを作製できる。
より好ましくは、上記配向粒子は、上記一般式(4)で表される化合物からなることが好ましい。
この場合には、より配向度の高い結晶配向セラミックスを作製することができる。
即ち、上述のごとく、上記一般式(4)で表される化合物は、上記一般式(2)で表される化合物と良好な格子整合性を有している。そのため、上記一般式(4)で表され、かつ特定の結晶面を上記配向面とする上記配向粒子からなる上記異方形状粉末は、上記結晶配向セラミックスを製造するための良好な反応性テンプレートとして機能することができる。
上記配向粒子の上記配向面は、擬立方{100}面であることが好ましい(請求項5)。
この場合には、配向軸と分極軸とが一致する正方晶域において、大電界下で発生する変位の温度依存性が改善された結晶配向セラミックスを得ることができる。
次に、上記微細粉末は、上記異方形状粉末の1/3以下の粒径を有する。
上記微細粉末の粒径が上記異方形状粉末の粒径の1/3を超える場合には、上記成形工程において、上記異方形状粉末の上記配向面が略同一の方向に配向するように、上記原料混合物を成形することが困難になるおそれがある。より好ましくは、1/4以下がよく、さらには1/5以下がよい。
上記微細粉末と上記異方形状粉末との粒径の比較は、上記微細粉末の平均粒径と上記異方形状粉末の平均粒径とを比較することによって行うことができる。なお、上記異方形状粉末の粒径及び上記微細粉末の粒径は、いずれも最も長尺の径のことをいう。
上記微細粉末の組成は、上記異方形状粉末の組成、及び作製しようとする例えば一般式(1)又は(2)で表される化合物等の等方性ペロブスカイト型化合物の組成に応じて決定できる。また、上記微細粉末としては、例えば酸化粉末、複合酸化物粉末、水酸化物粉末、あるいは炭酸塩、硝酸塩、主酸塩等の塩、あるいはアルコキシド等を用いることができる。
上記微細粉末としては、上記異方形状粉末と共に焼結させることにより該異方形状粉末と反応して、例えば上記一般式(1)又は上記一般式(2)で表される化合物等のように目的の等方性ペロブスカイト型化合物を生成するものを用いることができる。
また、上記微細粉末は、上記異方形状粉末との反応によって、目的の等方性ペロブスカイト型化合物のみを生成するものであってもよく、あるいは目的の等方性ペロブスカイト型化合物と余剰成分との双方を生成するものであってもよい。上記異方形状粉末と上記第微細粉末との反応によって余剰成分が生成する場合には、該余剰成分は熱的又は化学的に除去することが容易なものであることが好ましい。
次に、上記混合工程においては、上記微細粉末と上記異方形状粉末とを混合して原料混合物を作製する。
上記混合工程においては、所定の比率で配合された上記異方形状粉末、及び上記微細粉末に対して、さらにこれらの物質の反応によって得られる等方性ペロブスカイト型化合物と同一組成の化合物からなる不定形の微粉(以下、これを「化合物微粉」という。)を添加することができる。また、例えばCuO等の焼結助剤を添加することもできる。上記化合物微粉や上記焼結助剤を添加すると、焼結体の緻密化がさらに容易になるという利点がある。
また、上記化合物微粉を配合する場合には、該化合物微粉の配合比率が過大になると、必然的に原料全体に占める上記異方形状粉末の配合比率が小さくなり、特定の結晶面の配向度が低下するおそれがある。したがって、上記化合物微粉の配合比率は、要求される焼結体密度及び配向度に応じて最適な配合比率を選択することが好ましい。
上記一般式(1)で表される等方性ペロブスカイト型化合物を作製する場合には、上記異方形状粉末の配合比率は、上記異方形状粉末中の1つ乃至複数の成分元素により、上記一般式(1)のAサイトが占有される比率が、0.01〜70at%となるようにすることが好ましく、より好ましくは、0.1〜50at%がよい。さらに好ましくは、1〜10at%がよい。ここで、「at%」とは、原子の数の割合を100分率で示したものである。
また、上記原料混合物には、周期律表における2〜15族に属する金属元素、半金属元素、遷移金属元素、貴金属元素、及びアルカリ土類金属元素から選ばれる1種以上の添加元素を含有させることが好ましい(請求項7)。
この場合には、上記添加元素を含有する多結晶体からなる上記結晶配向セラミックスを作製することができる。これにより、結晶配向セラミックスの圧電d31定数、電気機械結合係数Kp、圧電g31定数等の圧電特性や比誘電率や誘電損失等を向上させることができる。上記添加元素は、上記一般式(1)で表される化合物のAサイトやBサイトに対して、置換添加されていても良いが、外添加されて上記一般式(1)で表される化合物の粒内又は粒界中に存在することもできる。
上記原料混合物に上記添加元素を含有させる具体的な方法としては、例えば次のような方法がある。
即ち、上記添加元素は、上記準備工程において、上記異方形状粉末を合成する際に添加することができる(請求項8)。
また、上記添加元素は、上記準備工程において、上記微細粉末を合成する際に添加することができる(請求項9)。
また、上記添加元素は、上記混合工程において、上記微細粉末及び上記異方形状粉末と共に添加することができる(請求項10)。
このような方法によって上記添加元素を添加することにより、上記上記添加元素を含有する上記原料混合物を簡単に得ることができる。そして、該原料混合物を成形及び焼成することにより、上記添加元素を含有する多結晶体からなる上記結晶配向セラミックスを得ることができる。
上記添加元素としては、具体的には、例えばMg、Ca、Sr、Ba、Sc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Y、Zr、Mo、Hf、W、Re、Pd、Ag、Ru、Rh、Pt、Au、Ir、Os、B、Al、Ga、In、Si、Ge、Sn、及びBi等がある。
また、上記添加元素は、添加元素単体で添加されていても良いが、上記添加元素を含む酸化物や化合物として添加されていても良い。
また、上記添加元素は、上記焼成工程後に得られる上記一般式(1)で表される上記等方性ペロブスカイト型化合物1molに対して、0.0001〜0.15molとなるような割合で添加することが好ましい(請求項11)。
上記添加元素が0.0001mol未満の場合には、上記添加元素による上記圧電特性等の向上効果を充分に得られないおそれがある。一方、0.15molを超える場合には、上記結晶配向セラミックスの圧電特性や誘電特性がかえって低下するおそれがある。
また、上記混合工程においては、上記焼成工程において上記等方性ペロブスカイト型化合物におけるAサイト元素又は/及びBサイト元素のいずれか1種以上の元素に対して、上記添加元素が0.01〜15at%の割合で置換添加されるように、上記添加元素の混合割合を調整することが好ましい(請求項12)。
この場合には、上記添加元素が上記等方性ペロブスカイト型化合物に置換添加された上記結晶配向セラミックスを得ることができる。かかる結晶配向セラミックスは、より一層優れた圧電d31定数や電気機械結合係数Kp等の圧電特性、及びより一層優れた比誘電率ε33T/ε0等の誘電特性を示すことができる。
上記添加元素が0.01at%未満の場合には、上記結晶配向セラミックスの圧電特性や誘電特性の向上効果が充分に得られないおそれがある。一方、15at%を超える場合には、上記結晶配向セラミックスの圧電特性や誘電特性がかえって低下するおそれがある。より好ましくは、0.01〜5at%がよく、さらに好ましくは、0.01〜2at%がよく、さらにより好ましくは、0.05〜2at%がよい。
ここで、「at%」とは、上記一般式(1)で表される化合物におけるLi、K、Na、Nb、Ta、及びSbの原子の数に対する置換された原子の数の割合を100分率で示したものである。
上記混合工程において、上記異方形状粉末、上記微細粉末、並びに必要に応じて配合される化合物微粉及び焼結助剤の混合は、乾式で行ってもよく、あるいは、水、アルコール等の適当な分散媒を加えて湿式で行ってもよい。さらにこのとき、必要に応じてバインダ、可塑剤、及び分散材等から選ばれる1種以上を加えることもできる。
次に、上記成形工程について説明する。
上記成形工程は、上記異方形状粉末の上記配向面が略同一の方向に配向するように、上記原料混合物を成形して成形体を作製する工程である。
成形方法については、上記異方形状粉末を配向させることが可能な方法であればよい。上記異方形状粉末を面配向させる成形方法としては、具体的にはドクターブレード法、プレス成形法、圧延法等が好適な例としてあげられる。
また、上記異方形状粉末が面配向した成形体(以下、これを「面配向成形体」という。)の厚さを増したり、配向度を上げるために、面配向成形体に対し、さらに積層圧着、プレス、圧延等の処理(以下、これを「面配向処理」という。)を行うことができる。
この場合には、上記面配向成形体に対して、いずれか1種類の面配向処理を行うこともできるが、2種以上の面配向処理を行うこともできる。また、上記面配向成形体に対して、1種類の面配向処理を繰り返し行うこともでき、また、2種以上の配向処理をそれぞれ複数回繰り返し行うこともできる。
また、上記成形工程においては、上記成形体内における上記配向粒子の上記配向面のロットゲーリング法による配向度(成形体配向度)が60%以上となるように上記原料混合物の成形を行う。
「成形体配向度」は、結晶配向セラミックスの配向度と同様に数1の式で表されるロットゲーリング(Lotgering)法による平均配向度F(HKL)で表すことができる。
但し、数1の式において、ΣI(hkl)は、成形体中の配向粒子について測定されたすべての結晶面(hkl)のX線回折強度の総和であり、ΣI0(hkl)は、配向粒子と同一組成を有するが、形状が等方的で、各粒子の結晶軸がランダムな状態で集合した微粉末について測定されたすべての結晶面(hkl)のX線回折強度の総和である。また、Σ’I(HKL)は、配向粒子について測定された結晶学的に等価な特定の結晶面(HKL)のX線回折強度の総和であり、Σ’I0(HKL)は、配向粒子と同一組成を有するが、形状が等方的で、各粒子の結晶軸がランダムな状態で集合した微粉末について測定された結晶学的に等価な特定の結晶面(HKL)のX線回折強度の総和である。
本発明においては、上記のごとく、成形体配向度が60%以上となるように成形を行う。
成形体配向度が60%を下回ると、焼結によって得られる結晶配向セラミックスの配向度が急激に低下するおそれがある。逆に60%以上であれば、高い配向度の結晶配向セラミックスが安定して得られる。さらに安定して高い配向度を得るために、好ましくは成形体配向度は65%以上がよく、より好ましくは70%以上がよい。
一方、成形体配向度が90%を越えてももはやほとんど結晶配向セラミックスの配向度を向上させることはできず、またこのような高い成形体配向度の成形体を作製するためには、従来のごとく例えばスクリーン印刷を繰り返し行ったり、遠心力を付与したりする必要が生じ、成形体の作製が複雑で困難になるおそれがある。したがって、成形体配向度は90%以下がよい。より好ましくは85%以下がよく、さらに好ましくは80%以下がよい。
また、上記成形工程においては、上記成形体を厚み30μm以上のテープ状に成形すると共に、該成形体の表面と裏面とにおける上記成形体配向度の差を10%以下にすることが好ましい(請求項6)。
厚みが30μm未満の場合には、作製時における成形体の取り扱いが非常に困難になるおそれがある。また、配向度の差が10%を超えると、焼成工程後に得られる結晶配向セラミックス内部の配向度が大きくばらつき、良好な特性が得られなくなるおそれがある。より好ましくは上記成形体配向度の差は5%以下がよく、さらにより好ましくは3%以下がよい。
次に、上記焼成工程について説明する。
上記焼成工程は、上記成形体を加熱し、上記異方形状粉末と上記微細粉末とを焼結させる工程である。上記焼成工程においては、上記成形体を加熱することにより焼結が進行し、等方性ペロブスカイト型化合物を主相とする多結晶体からなる結晶配向セラミックスを作製する。このとき、上記異方形状粉末と上記微細粉末とを反応させて、上記一般式(1)で表される上記等方性ペロブスカイト型化合物を生成させることができる。また、上記焼成工程においては、上記異方形状粉末及び/又は微細粉末の組成によっては、余剰成分も同時に生成する。
上記焼成工程における加熱温度は、反応及び/又は焼結が効率よく進行し、かつ目的とする組成を有する反応物が生成するように、使用する異方形状粉末、微細粉末、作製しようとする結晶配向セラミックスの組成等に応じて最適な温度を選択することができる。
例えば、上記異方形状粉末としてKNN組成を有する上記異方形状粉末Aを用いて、上記一般式(2)で表される化合物からなる結晶配向セラミックスを作製する場合には、上記焼成工程における加熱は、温度900℃〜1300℃で行うことができる。この温度範囲においてさらに最適な加熱温度は、目的物質である上記一般式(2)で表される化合物の組成に応じて決定できる。さらに、加熱時間は、所望の焼結体密度が得られるように、加熱温度に応じて最適な時間を選択することができる。
また、上記異方形状粉末と上記微細粉末との反応によって余剰成分が生成する場合には、焼結体中に余剰成分を副相として残留させることができる。また、焼結体から余剰成分を除去することもできる。余剰成分を除去する場合には、その方法として、上述のごとく、例えば熱的に除去する方法や化学的に除去する方法等がある。
熱的に除去する方法としては、例えば上記一般式(2)で表される化合物と余剰成分とが生成した焼結体(以下、これを「中間焼結体」という。)を所定温度で加熱し、余剰成分を揮発させる方法がある。具体的には、上記中間焼結体を減圧下もしくは酸素中において、余剰成分の揮発が生じる温度で長時間加熱する方法が好適な例として挙げられる。
余剰成分を熱的に除去する際の加熱温度は、余剰成分の揮発が効率よく進行し、かつ副生成物の生成が抑制されるように、上記一般式(2)で表される化合物及び/又は上記余剰成分の組成に応じて、最適な温度を選択すれすることができる。例えば、余剰成分が酸化ビスマス単相である場合には、加熱温度は、800℃〜1300℃であることが好ましく、さらに好ましくは1000℃〜1200℃がよい。
また、余剰成分を化学的に除去する方法としては、例えば余剰成分のみを浸食させる性質を有する処理液中に中間焼結体を浸漬し、余剰成分を抽出する方法等がある。このとき、使用する処理液としては、上記一般式(2)で表される化合物及び/又は余剰成分の組成に応じて最適なものを選択することができる。例えば、余剰成分が酸化ビスマス単相である場合には、処理液としては、硝酸、塩酸等の酸を用いることができる。特に、硝酸は、酸化ビスマスを主成分とする余剰成分を化学的に抽出する処理液として好適である。
上記異方形状粉末と上記微細粉末との反応、及び余剰成分の除去は、同時、逐次又は個別のいずれのタイミングで行ってもよい。例えば、成形体を減圧下又は真空下において、上記異方形状粉末と微細粉末との反応及び余剰成分の揮発の双方が効率よく進行する温度まで直接加熱し、反応と同時に余剰成分の除去を行うことができる。なお、上記添加元素は、上記異方形状粉末と上記微細粉末との反応の際に、目的物質である上記一般式(2)で表される化合物に置換されたり、上記のごとく結晶粒内又は/及び粒界中に配置される。
また、例えば大気中又は酸素中において、上記異方形状粉末と上記微細粉末との反応が効率よく進行する温度で成形体を加熱して上記中間焼結体を生成した後、引き続き該中間焼結体を減圧下又は真空下において、余剰成分の揮発が効率よく進行する温度で加熱し、余剰成分の除去を行うこともできる。また、上記中間焼結体を生成した後、引き続き、該中間焼結体を大気中又は酸素中において、余剰成分の揮発が効率よく進行する温度で長時間加熱し、余剰成分の除去を行うこともできる。
また、例えば上記中間焼結体を生成し、上記中間焼結体を室温まで冷却した後、該中間焼結体を処理液に浸漬して、余剰成分を化学的に除去することもできる。あるいは、上記中間焼結体を生成し、室温まで冷却した後、再度上記中間焼結体を所定の雰囲気下において所定の温度に加熱し余剰成分を熱的に除去することもできる。
上記成形工程において得られる上記成形体がバインダなどの樹脂成分を含む場合には、上記焼成工程の前に脱脂を主目的とする熱処理を行うことができる。この場合、脱脂の温度は、少なくともバインダ等を熱分解させるのに充分な温度に設定することができる。但し、原料混合物中に揮発しやすい物質(例えばNa化合物等)が含まれる場合には、脱脂は温度500℃以下で行うことが好ましい。
また、上記成形体の脱脂を行うと、該成形体中の上記異方形状粉末の配向度が低下したり、あるいは、上記成形体に体積膨張が発生したりする場合がある。このような場合には、脱脂を行った後、上記熱処理工程を行う前に、上記成形体に対して、さらに静水圧(CIP)処理を行うことが好ましい。この場合には、脱脂に伴う配向度の低下、あるいは、上記成形体の体積膨張に起因する焼結体密度の低下を抑制することができる。
また、上記異方形状粉末と上記微細粉末との反応によって余剰成分が生成する場合において、余剰成分の除去を行う時には、余剰成分を除去した中間焼結体に対し、さらに、静水圧処理を施し、これを再焼成することができる。また、焼結体密度及び配向度をさらに高めるために、上記熱処理工程後の焼結体に対してさらにホットプレスを行うことができる。さらに、上記化合物微粉を添加する方法、CIP処理、及びホットプレス等の方法を組み合わせて用いることもできる。
本発明の製造方法においては、上述のごとく、合成が容易な層状ペロブスカイト型化合物からなる上記異方形状粉末Bを反応性テンプレートに用いて、上記一般式(4)で表される化合物からなる上記異方形状粉末Aを合成し、次いで、該異方形状粉末Aを反応性テンプレートに用いて上記結晶配向セラミックスを作製することができる。この場合には、結晶格子の異方性の小さい上記一般式(2)で表される化合物であっても、任意の結晶面が配向した上記結晶配向セラミックスを容易かつ安価に製造することができる。
しかも、上記異方形状粉末B及び反応原料Bの組成を最適化すれば、余剰Aサイト元素を含まない異方形状粉末Aであっても合成することができる。そのため、Aサイト元素の組成制御が容易になり、従来の方法においては得られない組成の上記一般式(2)で表される化合物を主相とする結晶配向セラミックスを作製することができる。
また、上記異方形状粉末としては、層状ペロブスカイト型化合物からなる異方形状粉末Bを用いることができる。この場合には、上記焼成工程において、焼結と同時に上記一般式(2)で表される化合物を合成することができる。また、上記成形体に配向させる上記異方形状粉末B及びこれと反応させる上記反応原料の組成を最適化すれば、上記一般式(2)で表される目的の化合物を合成すると共に、上記異方形状粉末Bから余剰Aサイト元素を余剰成分として排出することができる。
また、熱的又は化学的な除去が容易な余剰成分を生成する上記異方形状粉末Bを上記異方形状粉末として用いた場合には、実質的に余剰Aサイト元素を含まず、上記一般式(2)で表される化合物からなり、かつ特定の結晶面が配向した結晶配向セラミックスを得ることができる。
(実施例1)
次に、本発明の実施例につき説明する。
本例は、等方性ペロブスカイト型化合物を主相とする多結晶体からなり、該多結晶体を構成する結晶粒の特定の結晶面が配向する結晶配向セラミックスを製造する例である。
本例においては、{Li0.065(K0.45Na0.55)0.935}(Nb0.83Ta0.09Sb0.08)O31molに対してMnを0.0005mol外添加した組成を有する結晶配向セラミックスを作製する。
本例の結晶配向セラミックスの製造方法においては、準備工程と、混合工程と、成形工程と、焼成工程とを行う。
準備工程においては、ペロブスカイト型化合物よりなり、上記特定の結晶面Aと格子整合性を有する結晶面が配向して配向面を形成している異方形状の配向粒子からなる異方形状粉末と、上記異方形状粉末の1/3以下の平均粒径を有し、上記異方形状粉末と共に焼結させることにより上記等方性ペロブスカイト型化合物を生成する微細粉末とを準備する。
混合工程においては、上記異方形状粉末と上記微細粉末とを混合することにより原料混合物を作製する。
成形工程においては、上記原料混合物を成形することにより、上記配向粒子の上記配向面が略同一の方向に配向した成形体を作製する。
焼成工程においては、上記成形体を加熱し、上記異方形状粉末と上記微細粉末とを焼結させることにより上記結晶配向セラミックスを得る。
以下、結晶配向セラミックスの製造方法について詳細に説明する。
(1)異方形状粉末の作製
まず、以下のようにして異方形状粉末としてNaNbO3からなる板状粉末を合成する。
即ち、まず、Bi2.5Na3.5Nb518という組成となるような化学量論比で、Bi23粉末、Na2CO3粉末及びNb25粉末を秤量し、これらを湿式混合した。次いで、この原料に対し、フラックスとしてNaClを50wt%添加し、1時間乾式混合した。次に、得られた混合物を白金るつぼに入れ、850℃×1hの条件下で加熱し、フラックスを完全に溶解させた後、さらに1100℃×2hの条件下で加熱し、Bi2.5Na3.5Nb518の合成を行った。なお、昇温速度は、200℃/hrとし、降温は炉冷とした
。冷却後、反応物から湯洗によりフラックスを取り除き、Bi2.5Na3.5Nb518粉末(異方形状粉末B)を得た。得られたBi2.5Na3.5Nb518粉末は、{001}面を配向面(最大面)とする板状粉末であった。
次いで、このBi2.5Na3.5Nb518粉末に、NaNbO3の合成に必要な量のNa2CO3粉末(反応原料)を加えて混合した。次に、この混合物に対して、NaClをフラックスとして用いて白金るつぼ中において950℃×8時間の熱処理を行った。得られた反応物には、NaNbO3粉末に加えてBi23が含まれているので、反応物からフラックスを取り除いた後、これをHNO3(1N)中に入れ、余剰成分として生成したBi23を溶解させた。さらに、この溶液を濾過してNaNbO3からなる粉末(NaNbO3粉末)を分離し、80℃のイオン交換水で洗浄した。このようにして、異方形状粉末としてのNaNbO3粉末を得た。
得られたNaNbO3粉末は、擬立方{100}面を最大面(配向面)とし、平均粒径15μmであり、かつアスペクト比が約10〜20程度の板状粉末であった。
(2)微細粉末の作製
純度99.99%以上のNa2CO3粉末、K2CO3粉末、Li2CO3粉末、Nb25粉末、Ta25粉末、Sb25粉末およびMnO2粉末を{Li0.065(K0.45Na0.55)0.935}(Nb0.83Ta0.09Sb0.08)O3+Mn0.0005molの化学量論組成1molから、NaNbO3を0.05mol差し引いた組成となるように秤量し、有機溶剤を媒体としてZrO2ボールで20時間の湿式混合を行った。その後、750℃で5Hr仮焼し、さらに有機溶剤を媒体としてZrO2ボールで20時間の湿式粉砕を行うことで平均粒径が約0.5μmの仮焼物粉体(微細粉末)を得た。
(3)結晶配向セラミックスの作製
上記のようにして作製した異方形状粉末と微細粉末とを{Li0.065(K0.45Na0.55)0.935}(Nb0.83Ta0.09Sb0.08)O3+Mn0.0005molという組成になるように秤量し、有機溶剤を媒体にして、ZrO2ボールで湿式混合を行うことにより、スラリーを得た。その後、スラリーに対してバインダ(PVB)及び可塑剤(フタル酸ジブチル)を、出発原料から合成される1molの{Li0.065(K0.45Na0.55)0.935}(Nb0.83Ta0.09Sb0.08)O3+Mn0.0005molに対して、それぞれ10.35gずつ加えた後、さらに3時間混合した。
次に、ドクターブレード装置を用いて、混合したスラリーを厚み100μmのテープ状に成形して成形体を得た。この成形体においては、板状の配向粒子からなる異方形状粉末が略同一方向に配向する。この成形体におけるテープ面と平行な面についてのロットゲーリング法による{100}面の平均配向度F(100)を上述の数1の式を用いて算出した。
次に、このテープ状の成形体をアルミナこう鉢中のPt板上に配置して酸素中、1105℃で5時間焼結を行った。このようにして結晶配向セラミックスを得た。この結晶配向セラミックスについても、そのテープ面と平行な面についてのロットゲーリング法による{100}面の平均配向度F(100)を上述の数1の式を用いて算出した。
上記結晶配向セラミックスの配向度、及びその作製に用いた成形体の配向度(成形体配向度)との関係を後述の図1にプロットした。
(実施例2)
本例は、実施例1とは成形体配向度が異なる成形体を作製し、該成形体を用いて結晶配向セラミックスを作製した例である。
まず、実施例1と同様の異方形状粉末と微細粉末を作製した。
次いで、実施例1と同様に、異方形状粉末と微細粉末とを{Li0.065(K0.45Na0.55)0.935}(Nb0.83Ta0.09Sb0.08)O3+Mn0.0005molという組成になるように秤量し、有機溶剤を媒体にして、ZrO2ボールで湿式混合を行うことにより、スラリーを得た。その後、スラリーに対してバインダ(PVB)及び可塑剤(フタル酸ジブチル)を、出発原料から合成される1molの{Li0.065(K0.45Na0.55)0.935}(Nb0.83Ta0.09Sb0.08)O3+Mn0.0005molに対して、それぞれ10.35gずつ加えた後、さらに6時間混合した。
次いで、実施例1と同様に、ドクターブレード装置を用いてスラリーを厚み100μmのテープ状に成形し、成形体をアルミナこう鉢中のPt板上に配置して酸素中、1105℃で5時間焼結を行った。このようにして結晶配向セラミックスを得た。
本例においても、結晶配向セラミックスの配向度及びその作製に用いた成形体の配向度(成形体配向度)を実施例1と同様にして測定し、両者の関係を後述の図1にプロットした。
(実施例3)
本例は、上記実施例1及び実施例2と成形体配向度が異なる成形体を作製し、該成形体を用いて結晶配向セラミックスを作製した例である。
まず、実施例1と同様の異方形状粉末と微細粉末を作製した。
次いで、実施例1と同様に、異方形状粉末と微細粉末とを{Li0.065(K0.45Na0.55)0.935}(Nb0.83Ta0.09Sb0.08)O3+Mn0.0005molという組成になるように秤量し、有機溶剤を媒体にして、ZrO2ボールで湿式混合を行うことにより、スラリーを得た。その後、スラリーに対してバインダ(PVB)及び可塑剤(フタル酸ジブチル)を、出発原料から合成される1molの{Li0.065(K0.45Na0.55)0.935}(Nb0.83Ta0.09Sb0.08)O3+Mn0.0005molに対して、それぞれ10.35gずつ加えた後、さらに6時間混合した。次に、得られたスラリーを目開き125μmのメッシュに通した。
次いで、実施例1と同様に、ドクターブレード装置を用いてスラリーを厚み100μmのテープ状に成形し、成形体をアルミナこう鉢中のPt板上に配置して酸素中、1105℃で5時間焼結を行った。このようにして結晶配向セラミックスを得た。
本例においても、結晶配向セラミックスの配向度及びその作製に用いた成形体の配向度(成形体配向度)を実施例1と同様にして測定し、両者の関係を後述の図1にプロットした。
(実施例4)
本例は、さらに上記実施例1〜3と成形体配向度が異なる成形体を作製し、該成形体を用いて結晶配向セラミックスを作製した例である。
まず、実施例1と同様の異方形状粉末と微細粉末を作製した。
次いで、実施例1と同様に、異方形状粉末と微細粉末とを{Li0.065(K0.45Na0.55)0.935}(Nb0.83Ta0.09Sb0.08)O3+Mn0.0005molという組成になるように秤量し、有機溶剤を媒体にして、ZrO2ボールで湿式混合を行うことにより、スラリーを得た。その後、スラリーに対してバインダ(PVB)及び可塑剤(フタル酸ジブチル)を、出発原料から合成される1molの{Li0.065(K0.45Na0.55)0.935}(Nb0.83Ta0.09Sb0.08)O3+Mn0.0005molに対して、それぞれ10.35gずつ加えた後、さらに24時間混合した。
次いで、実施例1と同様に、ドクターブレード装置を用いてスラリーを厚み100μmのテープ状に成形し、成形体をアルミナこう鉢中のPt板上に配置して酸素中、1105℃で5時間焼結を行った。このようにして結晶配向セラミックスを得た。
本例においても、結晶配向セラミックスの配向度及びその作製に用いた成形体の配向度(成形体配向度)を実施例1と同様にして測定し、両者の関係を後述の図1にプロットした。なお、本例においては、同様の製造方法により、2つの結晶配向セラミックスを作製し、これら2種類の結晶配向セラミックスについて、結晶配向セラミックスの配向度と成形体配向度との関係を調べた(図1参照)。
(実施例5)
本例は、さらに上記実施例1〜4と成形体配向度が異なる成形体を作製し、該成形体を用いて結晶配向セラミックスを作製した例である。
まず、実施例1と同様の異方形状粉末と微細粉末を作製した。
次いで、実施例1と同様に、異方形状粉末と微細粉末とを{Li0.065(K0.45Na0.55)0.935}(Nb0.83Ta0.09Sb0.08)O3+Mn0.0005molという組成になるように秤量し、有機溶剤を媒体にして、ZrO2ボールで湿式混合を行うことにより、スラリーを得た。その後、スラリーに対してバインダ(PVB)及び可塑剤(フタル酸ジブチル)を、出発原料から合成される1molの{Li0.065(K0.45Na0.55)0.935}(Nb0.83Ta0.09Sb0.08)O3+Mn0.0005molに対して、それぞれ10.35gずつ加えた後、さらに24時間混合した。次に、得られたスラリーを目開き125μmのメッシュに通した。
次いで、実施例1と同様に、ドクターブレード装置を用いてスラリーを厚み100μmのテープ状に成形し、成形体をアルミナこう鉢中のPt板上に配置して酸素中、1105℃で5時間焼結を行った。このようにして結晶配向セラミックスを得た。
本例においても、結晶配向セラミックスの配向度及びその作製に用いた成形体の配向度(成形体配向度)を実施例1と同様にして測定し、両者の関係を後述の図1にプロットした。
(実施例6)
本例は、さらに上記実施例1〜5と成形体配向度が異なる成形体を作製し、該成形体を用いて結晶配向セラミックスを作製した例である。
まず、実施例1と同様の異方形状粉末と微細粉末を作製した。
次いで、実施例1と同様に、異方形状粉末と微細粉末とを{Li0.065(K0.45Na0.55)0.935}(Nb0.83Ta0.09Sb0.08)O3+Mn0.0005molという組成になるように秤量し、有機溶剤を媒体にして、ZrO2ボールで湿式混合を行うことにより、スラリーを得た。その後、スラリーに対してバインダ(PVB)及び可塑剤(フタル酸ジブチル)を、出発原料から合成される1molの{Li0.065(K0.45Na0.55)0.935}(Nb0.83Ta0.09Sb0.08)O3+Mn0.0005molに対して、それぞれ10.35gずつ加えた後、さらに24時間混合した。
次いで、実施例1と同様に、ドクターブレード装置を用いてスラリーを厚み60μmのテープ状に成形し、成形体をアルミナこう鉢中のPt板上に配置して酸素中、1105℃で5時間焼結を行った。このようにして結晶配向セラミックスを得た。
本例においても、結晶配向セラミックスの配向度及びその作製に用いた成形体の配向度(成形体配向度)を実施例1と同様にして測定し、両者の関係を後述の図1にプロットした。なお、本例においては、同様の製造方法により、2つの結晶配向セラミックスを作製し、これら2種類の結晶配向セラミックスについて、結晶配向セラミックスの配向度と成形体配向度との関係を調べた(図1参照)。
(実施例7)
本例は、さらに上記実施例1〜6と成形体配向度が異なる成形体を作製し、該成形体を用いて結晶配向セラミックスを作製した例である。
まず、実施例1と同様の異方形状粉末と微細粉末を作製した。
次いで、実施例1と同様に、異方形状粉末と微細粉末とを{Li0.065(K0.45Na0.55)0.935}(Nb0.83Ta0.09Sb0.08)O3+Mn0.0005molという組成になるように秤量し、有機溶剤を媒体にして、ZrO2ボールで湿式混合を行うことにより、スラリーを得た。その後、スラリーに対してバインダ(PVB)及び可塑剤(フタル酸ジブチル)を、出発原料から合成される1molの{Li0.065(K0.45Na0.55)0.935}(Nb0.83Ta0.09Sb0.08)O3+Mn0.0005molに対して、それぞれ10.35gずつ加えた後、さらに24時間混合した。
次いで、実施例1と同様に、ドクターブレード装置を用いてスラリーを厚み30μmのテープ状に成形し、成形体をアルミナこう鉢中のPt板上に配置して酸素中、1105℃で5時間焼結を行った。このようにして結晶配向セラミックスを得た。
本例においても、結晶配向セラミックスの配向度及びその作製に用いた成形体の配向度(成形体配向度)を実施例1と同様にして測定し、両者の関係を後述の図1にプロットした。
図1から知られるごとく、成形体の配向度(成形体配向度)が増加すると、その成形体を焼結させてなる結晶配向セラミックスの配向度(結晶配向セラミックス配向度)も増加する傾向にあるが、成形体配向度と結晶配向セラミックス配向度との関係は、直線的な比例関係ではないことがわかる。また、成形体配向度が60%を越えると結晶配向セラミックスの配向度を80%以上という高いものにすることができる。
したがって、成形工程において、成形体配向度60%以上の成形体を作製することにより、80%以上という高い配向度の結晶配向セラミックスが確実に得られることがわかる。
また、図1より知られるごとく、成形体配向度を90%を越えて高くしても、もはや結晶配向セラミックス配向度はほとんど向上しない。実施例1〜7においては、成形体配向度が60%以上であれば、80%以下であってもさらには75%以下であっても、最終的に80%を大きく上回る高い配向度の結晶配向セラミックスが得られることがわかる。したがって、成形工程においては配向度90%以下の成形体を作製すれば充分であり、それ以上高い配向度の成形体を作製する必要はほとんどないことがわかる。
実施例1〜実施例7にかかる、成形体配向度と結晶配向セラミックス配向度との相関関係を示す説明図。 板状粉末と原料粉末を混合してなる従来のスラリーの構成を示す説明図。スラリーの構成を示す説明図。 板状粉末と原料粉末とを有す成形体であって、板状粉末が内部で一定方向に配向された従来の成形体を示す説明図。 焼結中の成形体において異方形状粉末が成長する様子を示す説明図。 結晶配向セラミックスの構成を示す説明図。
符号の説明
1 異方形状粉末
2 微細粉末
3 原料混合物
4 溶媒
5 成形体
8 結晶配向セラミックス

Claims (12)

  1. 等方性ペロブスカイト型化合物を主相とする多結晶体からなり、該多結晶体を構成する結晶粒の特定の結晶面Aが配向する結晶配向セラミックスの製造方法であって、
    ペロブスカイト型化合物よりなり、上記特定の結晶面Aと格子整合性を有する結晶面が配向して配向面を形成している異方形状の配向粒子からなる異方形状粉末と、該異方形状粉末の1/3以下の平均粒径を有し、上記異方形状粉末と共に焼結させることにより上記等方性ペロブスカイト型化合物を生成する微細粉末とを準備する準備工程と、
    上記異方形状粉末と上記微細粉末とを混合することにより原料混合物を作製する混合工程と、
    上記異方形状粉末の上記配向面が略同一の方向に配向するように、上記原料混合物を成形して成形体を作製する成形工程と、
    上記成形体を加熱し、上記異方形状粉末と上記微細粉末とを焼結させることにより上記結晶配向セラミックスを得る焼成工程とを有し、
    上記成形工程においては、上記成形体内における上記配向粒子の上記配向面のロットゲーリング法による配向度が60%以上となるように上記原料混合物の成形を行うことを特徴とする結晶配向セラミックスの製造方法。
  2. 請求項1において、上記等方性ペロブスカイト型化合物は、一般式(1)ABO3(ただし、Aサイト元素はK、Na、Liから選ばれる1種以上を主成分とし、Bサイト元素は、Nb、Sb、Taから選ばれる1種以上を主成分とする)で表されることを特徴とする結晶配向セラミックスの製造方法。
  3. 請求項1又は2において、上記等方性ペロブスカイト型化合物は、一般式(2):{Lix(K1-yNay)1-x}(Nb1-z-wTazSbw)O3(但し、0≦x≦0.2、0≦y≦1、0≦z≦0.4、0≦w≦0.2、x+z+w>0)で表されることを特徴とする結晶配向セラミックスの製造方法。
  4. 請求項1〜3のいずれか一項において、上記配向粒子は、一般式(3)ABO3で表される等方性ペロブスカイト型化合物からなり、上記一般式(3)におけるAサイト元素はK、Na、Liから選ばれる1種以上を主成分とし、上記一般式(3)におけるBサイト元素は、Nb、Sb、Taから選ばれる1種以上を主成分とすることを特徴とする結晶配向セラミックスの製造方法。
  5. 請求項1〜4のいずれか一項において、上記配向粒子の上記配向面は、擬立方{100}面であることを特徴とする結晶配向セラミックスの製造方法。
  6. 請求項1〜5のいずれか一項において、上記成形工程においては、上記原料混合物を厚み30μm以上のテープ状の上記成形体に成形すると共に、該成形体の表面と裏面とにおける上記配向度の差を10%以下にすることを特徴とする結晶配向セラミックスの製造方法。
  7. 請求項1〜6のいずれか一項において、上記原料混合物に、周期律表における2〜15族に属する金属元素、半金属元素、遷移金属元素、貴金属元素、及びアルカリ土類金属元素から選ばれる1種以上の添加元素を含有させることを特徴とする結晶配向セラミックスの製造方法。
  8. 請求項7において、上記添加元素は、上記準備工程において、上記異方形状粉末を合成する際に添加することを特徴とする結晶配向セラミックスの製造方法。
  9. 請求項7又は8において、上記添加元素は、上記準備工程において、上記微細粉末を合成する際に添加することを特徴とする結晶配向セラミックスの製造方法。
  10. 請求項7〜9のいずれか一項において、上記添加元素は、上記混合工程において、上記微細粉末及び上記異方形状粉末と共に添加することを特徴とする結晶配向セラミックスの製造方法。
  11. 請求項7〜10のいずれか一項において、上記添加元素は、上記焼成工程後に得られる上記等方性ペロブスカイト型化合物1molに対して、0.0001〜0.15molとなるような割合で添加することを特徴とする結晶配向セラミックスの製造方法。
  12. 請求項7〜10のいずれか一項において、上記焼成工程において上記等方性ペロブスカイト型化合物におけるAサイト元素又は/及びBサイト元素のいずれか1種以上の元素に対して、上記添加元素が0.01〜15at%の割合で置換添加されるように、上記添加元素の混合割合を調整することを特徴とする結晶配向セラミックスの製造方法。
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JP2019048749A (ja) * 2017-09-12 2019-03-28 日本特殊陶業株式会社 無鉛圧電磁器組成物、及び圧電素子

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