JP3585696B2 - 熱電変換材料及び熱電変換素子 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、熱電変換材料及び熱電変換素子に関し、より詳しくは室温から650℃前後までの広い温度領域にわたって高い熱電変換特性を有する熱電変換材料及びこの熱電変換材料を用いてなる熱電変換素子に関する。
【0002】
【従来の技術】
熱電発電(熱電気発電)は、ゼーベック効果すなわち相異なる二種の金属やp型半導体とn型半導体等の相異なる熱電変換材料を熱的に並列に置き、電気的に直列に接続して、接合部間に温度差を与えると、両端に熱起電力が発生する熱電効果を利用して、熱エネルギーを直接電力に変換する技術であり、外部に負荷を接続して閉回路を構成することにより回路に電流が流れ、電力を取り出すことができる。そしてこの技術は僻地用電源、宇宙用電源、軍事用電源等として一部で実用化されている。
【0003】
図1は、その熱電変換素子の一態様を原理的に説明する模式図であり、熱電変換材料としてn型半導体とp型半導体とを組み合わせたものである。図1中、1はp型半導体、2はn型半導体、3は高温側接合部、4は低温側接合部であり、Qは高温熱源、Thは高温側温度、Tcは低温側温度を示し、またSは絶縁空間である。図示のとおり高温側接合部には高温側電極5を共通に設け、低温側接合部には低温側電極6、7が別個に設けられている。この態様の熱電変換素子において、高温側接合部3と低温側接合部4との間に温度差ΔT=Th−Tcを与えると、両電極間(5と6及び7との間)に電圧が発生する。それ故低温側の両電極6と7との間に負荷(R)を接続すると電流(I)が流れ電力(W)として取り出すことができる。
【0004】
この種の熱電変換素子において、その電気出力Wは次式(1)で表わされる。ここで式(1)中、I:電流、R:負荷抵抗、S:熱電能、ΔT=Th−Tc、r:内部抵抗、m=R/rである。
【数 1】
Figure 0003585696
【0005】
式(1)から明らかなとおり、電気出力Wは、高温側温度と低温側温度との差に大きく依存し、ΔTの2乗に比例している。ところが材料の一端を加熱したときにΔTがどのくらい得られるかは、材料の熱伝導率κ(及び入熱Q、材料サイズ)によって決ってしまう。このためΔTを飛躍的に大きくすることはできず、ΔTをより大きくする工夫としては、せいぜい低温側の放熱を促進させるぐらいのものである。
【0006】
一方、そこで用いられる熱電変換素子材料自体については、これまでnーBi88Sb12、nーPbTe(0.055mol%PbI )、pーBiTe(55)+SbTe(45)その他各種のものが知られているが、これらの熱電変換素子材料は、通常、以下に述べるとおりの性能指数Z(又は無次元性能指数ZT)によって評価される。
【0007】
まず熱電変換素子の最大効率ηmaxは次式(2)で与えられる。但し、式(2)中、Z=S/ρκ、S=ゼーベック係数、ρ=電気抵抗率、κ=熱伝導率、Th=高温側温度、Tc=低温側温度、T=(Th+Tc)/2である。
【数 2】
Figure 0003585696
【0008】
上記式(2)において、例えばTh=1300K、Tc=300Kであるとすると、ZT=1の場合、ηmax =19.4%となり、また同じ温度差1000Kで、ZT=2の場合にはηmax =28.7%となる。図2はこれまで知られている種々の熱電変換材料についての性能指数(Z)と温度変化の関係を示すものであるが〔昭和63年2月28日、(社)電気学会発行「新版電気工学ハンドブック」第848頁〕、その性能は概ねZT=1の壁を超えてはいない。この理由は前記S、ρ、κは、本質的にすべてキャリヤ濃度の関数であり、独立に変化させることは極めて難しいという事情によるものである。
【0009】
実際、これまで様々な材料が熱電変換材料の候補として合成されてきたが、ZT=1を大きく上回るものは未だ発見されていない。また、特に低温度領域すなわち室温から400℃ないし500℃程度の温度領域で有効な熱電変換材料は、何れも性能指数の温度依存性が大きいという問題点があった。例えば図2中に示されるpーBiTe(55)+SbTe(45)は優秀な熱電変換材料であるが、図2から明らかなとおり良好な特性を示す温度範囲は非常に狭い。
【0010】
熱電変換材料は、温度差から起電力を取り出したり、逆に電力を加えてヒートポンプとして冷却又は加熱に用いられる材料であるから、狭い温度範囲でしか良い特性が得られないのでは、その効果は半減してしまうことになる。熱電変換材料を特に発電に用いる場合には、前記式(2)から明らかなとおり、その熱電変換素子の最大効率は高温側と低温側との温度差に大きく依存することから、温度差を大きくとれないのでは(すなわち大きい温度差があってもそれを有効に利用できないのでは)効果が薄い。
【0011】
ところで、従来、広い温度範囲で高い熱電変換特性を得るための手法として考えられているのは、異種の材料を接合して使用する方法であり、例えば日刊工業新聞社発行、上村、西田著「熱電半導体とその応用」p.95〜100には、分割接合型熱電発電素子及びカスケード型熱電発電素子について紹介されている。これら素子は何れも高温で特性のよい材料と低温で特性のよい材料とを組み合わせて用いる素子であるが、このような素子では、その製造に手間がかかるばかりでなく、両材料の接合部分で熱抵抗が生じるほか、該接合部分の強度的な信頼性にも注意を払う必要があるなどの諸問題がある。
【0012】
これまで、Z値が最大で産業用に用いられている代表的な熱電変換材料はBiTe系のものであるが、この材料は融点が低く、有効温度領域は−100℃〜+200℃程度で、300℃程度以上の高温域で用いることはできない。したがって、ゼーベック効果を引き起こす原動力である温度差△Tを大きくとることはできず、変換効率は5〜6%にとどまっている。また構成元素であるTeの価格がやや高価であるという問題点があり、さらにはそのドーパントとしてSb等の有毒な元素を必要とするため、その製造上及び使用上、毒性に関する注意が必要であるばかりか、製品が使用終了後に廃棄された場合における環境への影響の点からしても好ましいものではない。
【0013】
上記BiTe系以外に実用化されている熱電変換材料としてはPbTe系、SiーGe系、FeSi 系などがある。このうちPbTe系にはBiTe系と同様に価格と毒性の問題があり、またSiーGe系の場合にはGeの材料費がTeより一層高価であるという問題がある。またFeSi 系の場合はそのような問題点はないものの、性能指数自体が決して高いとはいえず、このため電力を取り出す発電用の材料としては不向きである。以上のように、既知の材料は何れも一長一短があるため、普及には限度があるのが実情である。
【0014】
本発明者等は、従来における以上のような問題点を解決する熱電変換材料として、特に元素組成式ACoxOy(式中、AはLi、Na又はKであり、xは1≦x≦2、yは2≦y≦4である)で表わされる物質からなる熱電変換材料、及び、元素組成式(A1−Z)CoxOy〔式中、AはLi、Na又はK、BはMg、Ca、Sr、Ba、Sc、Y、Bi又はTeであり、zは0<z<1の範囲であり、xは1≦x≦2、yは2≦y≦4である〕で表わされる物質からなる熱電変換材料を先に開発し出願している(特願平8ー158920号)。
【0015】
上記熱電変換材料は、Z値が比較的高く、しかも液体窒素温度から650℃以上に及ぶ広い温度範囲にわたって高い熱電変換特性を有して安定に使用することができ、またその温度範囲での諸物性値もほぼ一定であるが、熱電変換材料としては未だ変換効率の点で不充分であり、なお一層の改善が必要である。本発明者等は、それとは異なる4種の元素複合酸化物又は5種の元素からなる複合酸化物が広い温度範囲にわたって高いZ値を有し、熱電変換材料として上記開発に係る熱電変換材料よりもさらに有効であることを見い出し、本発明に到達するに至ったものである。
【0016】
【発明が解決しようとする課題】
すなわち、本発明は、(a)▲1▼Na、▲2▼Co、▲3▼Mn、Fe及びCuから選ばれた元素の何れか一種並びに▲4▼酸素からなる複合酸化物、または(b)▲1▼Na、▲2▼Ca、Sr、Ba、Bi及びYから選ばれた元素の何れか一種、▲3▼Co、▲4▼Mn、Fe及びCuから選ばれた元素の何れか一種並びに▲5▼酸素からなる複合酸化物からなり、室温から650℃前後までの広い温度領域にわたって高い熱電変換特性を有する熱電変換材料及び(c)この熱電変換材料を用いてなる熱電変換素子を提供することを目的とする。
【0017】
【課題を解決するための手段】
本発明は、(a)元素組成式Na(Co1−Zで表わされる物質からなることを特徴とする熱電変換材料(ただし、式中、xは1≦x≦2、yは2≦y≦4、zは0<z<1であり、AはMn、Fe又はCuである)を提供する。以下、該元素組成式Na(Co1−Zを適宜「式I」と指称する。
【0018】
また本発明は、(b)元素組成式Na1−P(Co1−Zで表わされる物質からなることを特徴とする熱電変換材料(ただし、式中、xは1≦x≦2、yは2≦y≦4、pは0<p<1、zは0<z<1であり、AはMn、Fe又はCuであり、BはCa、Sr、Ba、Bi又はYである)を提供し、さらに本発明は(c)上記両熱電変換材料を用いてなることを特徴とする熱電変換素子を提供するものである。以下、該元素組成式Na1−P(Co1−Zを適宜「式II」と指称する。
【0019】
【発明の実施の形態】
本発明に係る複合酸化物は各種複合酸化物を製造する場合と同様にして製造することができ、当該複合酸化物に必要な元素源を含む原料を均一に混合し、焼成することにより得られる。一部に元素置換を施したコバルト系酸化物を得る場合には、原料組成中置換元素を含む化合物(例えばSrを置換する場合には炭酸ストロンチウム等)を添加して製造される。また、当該複合酸化物を単結晶として構成する場合には、その原料混合物を溶融し、その溶融物を徐冷しながら成長させることにより製造することができる。なお、元素Mn、Fe又はCuは式I又は式II中Aの部分に入り、また元素Ca、Sr、Ba、Bi又はYは式II中Bの部分に入るが、これら何れの部分に入るかは各元素の価数やイオン半径により決まるものである。
【0020】
本発明に係る複合酸化物を製造するに際して用いられる原料としては、Na源としては例えば炭酸ナトリウムや酢酸ナトリウム等のナトリウム化合物が使用され、Co源としては例えば酸化コバルト、炭酸コバルト等のコバルト化合物が使用され、Mn源としては例えば一酸化マンガン、二酸化マンガン、水酸化マンガン〔Mn(OH)、MnO・HO等〕、炭酸マンガン等のマンガン化合物が使用され、Fe源としては例えば各種酸化鉄、水酸化鉄、炭酸鉄等の鉄化合物が用いられ、Cu源としては例えば金属銅、或いは酸化銅(CuO、CuO、Cu)、水酸化銅、酢酸銅等の銅化合物が用いられる。
【0021】
またCa源としては例えば生石灰、消石灰、炭酸カルシウム、酢酸カルシウム等のカルシウム化合物が用いられ、Sr源としては例えば酸化ストロンチウム、水酸化ストロンチウム、炭酸ストロンチウム、酢酸ストロンチウム等のストロンチウム化合物が用いられ、Ba源としては例えば酸化バリウム、炭酸バリウム、水酸化バリウム、酢酸バリウム等のバリウム化合物が用いられ、Bi源としては例えば酸化ビスマス(Bi)、その水化物(Bi・HO )、硝酸ビスマス等のビスマス化合物が用いられ、Y源としては例えば酸化イットリウム(Y)、水酸化イットリウム、炭酸イットリウム等のイットリウム化合物が用いられる。
【0022】
本発明に係る複合酸化物のゼーベック係数は非常に大きい。本発明に係る上記熱電変換材料は、金属的な伝導特性を示すにも拘わらず、ゼーベック係数の大きい物質からなる熱電変換材料である。通常の金属的伝導特性を有する酸化物はゼーベック係数の値は小さいというのが一般的であるにも拘わらず、本発明の複合酸化物では、ゼーベック係数が異常に大きいという特性を持っており、この点できわめて特異的である。
【0023】
例えば、一例として本発明に係る4成分複合酸化物の一つであるNa(Co0.95Cu0.05についてみると、この材料は金属的な電気伝導を示す物質であり、通常、このような物質のゼーベック係数は数μV/K程度と低いものであるが、Na(Co0.95Cu0.05のゼーベック係数は突出して大きいことが分かった。このことはNa(Co0.95Cu0.05の熱起電力が従来熱電変換材料として一般的に用いられているBiTe等の縮退半導体とは異なる機構で発生していることを示唆している。
【0024】
表1は、式I中AがCuの場合であるNa(CoCu1−Zで示される化合物についての実測特性値をBiTe及びNaCoxOyの実測特性値と対比して示したものである。本発明の複合酸化物のゼーベック係数は、性能指数が最も大きいBiTe系熱電変換材料のピーク値の約55%であるが、室温から650℃前後という広い温度範囲にわたってほぼ一定の値を示し、このため熱電変換材料として用いる場合にはBiTe系熱電変換材料以上に有効である。
【0025】
例えば有効温度差(ΔT=Th−Tc)及びZ値から求められる変換効率についてみると、BiTe系市販品(最高品)では5.6%、またNaCoでもほぼ同等であるのに対して、本発明に係るNa(Co0.95Cu0.05では8.8%もの効率が得られる。なお、表1中「Th/Tc」とは有効高温度と有効低温度を示し、両温度の差が有効温度差ΔT=Th−Tcとなる。
【0026】
【表 1】
Figure 0003585696
【0027】
また、本発明においては、以上の4成分複合酸化物及び4成分複合酸化物からなる熱電変換材料を用いて、温度差から起電力を取り出したり、逆に電力を加えてヒートポンプとして冷却又は加熱に用いる熱電変換素子を構成する。その熱電変換素子の構成の仕方としては、熱電変換材料を用いて熱電変換素子を構成する従来における態様と同様に構成することができる。また、本材料の構成元素は酸素、Co、Mn、Fe、Cu、Na、Ca、Sr等であり、これらは原材料費が安く、毒性もなく安全であるため、特に民生用に用いるのにも大いに有利であるなど、実用上も優れた効果が得られる。
【0028】
【実施例】
以下、本発明の実施例を説明するが、本発明がこの実施例に限定されないことは勿論である。実施例1〜7では式I又は式II中の元素A又はBの種類如何による特性について記載し、実施例8では代表例として組成 Na(Co0.95Cu0.05 からなる4成分複合酸化物の場合について記載している。
【0029】
《実施例1〜7》
本実施例1〜7は前記式I〔Na(Co1−Z〕及び式II〔Na1−P(Co1−Z〕中、元素A又はBに相当する各種元素を含む複合酸化物を後述実施例8と同様にして製造し、そのそれぞれについてゼーベック係数(μV/K)を実測した。表2はその結果である。表2中比較例1は前掲特願平8ー158920号の発明に相当するものである。
【0030】
また、表2中実施例1〜3におけるMn、Fe及びCu、比較例2〜4におけるTe、Ni及びZnは、式I〔Na(Co1−Z〕におけるA元素に相当するもので、z=0.95の場合である。また実施例4〜7におけるCa、Ba、Bi及びYは式II〔Na1−P(Co1−Z〕におけるB元素に相当するもので、p=0.95の場合であり、ともにMnを式II中A元素として1−z=0.01(z=0.99)に相当する量加えたものである。また何れの場合もX=2、Y=4である。
【0031】
【表 2】
Figure 0003585696
【0032】
表2のとおり、比較例1でも比較的高いZ値を示すが、実施例1〜7ではさらに改善されていることが分かる。例えばA元素としてMnを含む実施例1では温度100℃でゼーベック係数122μV/K、400℃で174μV/Kもの値を示し、比較例1における値(温度100℃で101μV/K、400℃で123μV/K)に比べて格段の改善が見られる。この改善効果は、含有元素の種類により幾分の差異はあるが、実施例2(Fe)〜実施例7(Y)でもほぼ同様である。この点、比較例2(Te)〜比較例4(Zn)では、温度如何により比較例1に比べて改善される場合もあるが、顕著な増加は見られない。
【0033】
《実施例8》
組成Na(Co0.95Cu0.05の4成分複合酸化物を次のようにして製造した。原料としてNaCO、Co及びCuOの各粉末を使用した。この3種類の原料粉をNa:Co:Cu=1.2:0.95:0.05の組成比となるように均一に混合した。Naを多めにしたのは、製造過程でNaが蒸発することを考慮したためである。得られた混合粉末を400kg/cm の圧力でペレット状に成型し、アルミナルツボに入れて温度860℃で8時間仮焼した。仮焼した試料を再び粉砕した後、粉砕した粉末にNaを10wt%加えて混合し、500kg/cm の圧力でロッド状の形状に成型した。その後アルミナルツボに入れて温度860℃で10時間焼成して試料を得た。
【0034】
上記サンプルについて評価試験を実施した。まずX線回折法により所望の物質が得られていることを確認した。次に、室温から650℃までの温度範囲において、ゼーベック係数及び電気抵抗率を測定した。ゼーベック係数の測定は以下のようにして行った。ロッド状に焼成した試料を電気炉内に入れて所定の温度に加熱しながら、試料の上端のみを別に加熱した。これによって試料の上端と下端との間には約5℃の温度差がつき、熱起電力が発生する。この起電力を電圧計で測定し、その値を温度差で割ることによってゼーベック係数が求められる。電気抵抗率の測定はロッド状に焼成した試料を電気炉内に入れて所定の温度に加熱し、直流4端子法を用いて行った。また、熱伝導率の測定はレーザーフラッシュ法によって行った。
【0035】
図3〜図5は、以上の試料についての評価試験の結果である。図3は性能指数Zであり、比較対照としてNaCoの試料についての値も示している。図3のとおり、本発明に係る試料の性能指数Zは室温における5.4×10−4/K程度から徐々に上昇し、温度500℃では7.7×10−4/Kというピーク値を示し、650℃ても7.4×10−4/Kという高い値を示している。これに対してNaCoの場合には室温で3.4×10−4/Kであり、200℃では4.3×10−4/Kというピーク値を示すが、以降徐々に低下し、650℃では3.0×10−4/Kにまで低下している。このようにNaCoの場合にも広い温度範囲にわたって有効な性能指数を有するが、Na(Co0.95Cu0.05の場合には、さらに優れた特性を示している。
【0036】
図4は本発明に係る複合酸化物:Na(Co0.95Cu0.05の上記試料の電気抵抗率及びゼーベック係数を示すものである。図4のとおり、電気抵抗率については上記と同じ温度範囲(室温〜650℃)で2.3mΩ・cmから3.7mΩ・cmへと緩やかに変化している。これらの測定結果は、本発明に係る複合酸化物が室温から650℃以上までの広い温度領域にわたって電気抵抗率が小さく、良好な電気伝導性を有することを実証している。一方、ゼーベック係数は室温〜650℃の温度範囲で115μV/Kから168μV/Kへと1.5倍近くも増加している。さらに、図5は上記試料の熱伝導率であるが、図示のとおり本複合酸化物が良好な、低い熱伝導率を有することが分かる。
【0037】
【発明の効果】
以上のとおり、本発明に係る熱電変換材料は常温から650℃以上に及ぶ広い温度範囲にわたって高い性能指数を有し、また本材料の構成元素は酸素、Co、Mn、Fe、Cu、Na、Ca、Sr等であり、これらは原材料費が安く、毒性がなく安全であるため、民生用の熱電変換素子として適用する場合にもきわめて有利であるなど、すぐれた効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】熱電変換素子の一態様を原理的に説明する模式図。
【図2】従来の各種熱電変換材料についての性能指数(Z)の温度による変化を示す図。
【図3】実施例1における組成Na(Co0.95Cu0.05の性能指数を示す図(比較例としてNaCoの値を含む)。
【図4】実施例1における組成Na(Co0.95Cu0.05の電気抵抗率及びゼーベック係数を示す図。
【図5】実施例1における組成Na(Co0.95Cu0.05の熱伝導率を示す図。
【符号の説明】
1 p型半導体
2 n型半導体
3 高温側接合部
4 低温側接合部
5 高温側電極
6、7 低温側電極
S 絶縁空間

Claims (3)

  1. 元素組成式Na(Co1−Zで表わされる物質からなることを特徴とする熱電変換材料。ただし式中、xは1≦x≦2、yは2≦y≦4、zは0<z<1であり、AはMn、Fe又はCuである。
  2. 元素組成式Na1−P(Co1−Zで表わされる物質からなることを特徴とする熱電変換材料。ただし式中、xは1≦x≦2、yは2≦y≦4、pは0<p<1、zは0<z<1であり、AはMn、Fe又はCuであり、BはCa、Sr、Ba、Bi又はYである。
  3. 請求項1又は2に記載の熱電変換材料を用いてなることを特徴とする熱電変換素子。
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