JP3571240B2 - 熱電変換材料及び熱電変換素子 - Google Patents

熱電変換材料及び熱電変換素子 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、熱電変換材料及び熱電変換素子に関し、より詳しくは室温から650℃以上にも及ぶ広い温度領域にわたって高い熱電変換特性を有する熱電変換材料及びこの熱電変換材料を用いてなる熱電変換素子に関する。
【0002】
【従来の技術】
熱電発電(熱電気発電)は、ゼーベック効果すなわち相異なる二種の金属やp型半導体とn型半導体等の相異なる熱電変換材料を熱的に並列に置き、電気的に直列に接続して接合部間に温度差を与えると両端に熱起電力が発生する熱電効果を利用して熱エネルギーを直接電力に変換する技術であり、この技術は僻地用電源、宇宙用電源、軍事用電源等として一部で実用化されている。
【0003】
図1は、その熱電変換素子の一態様を原理的に説明する模式図であり、熱電変換材料としてn型半導体とp型半導体とを組み合わせたものである。図1中、1はp型半導体、2はn型半導体、3は高温側接合部、4は低温側接合部である。Qは高温熱源、Thは高温側温度、Tcは低温側温度を示し、またSは絶縁空間である。図示のとおり高温側接合部には高温側電極5を共通に設け、低温側接合部には低温側電極6、7が別個に設けられている。この態様の熱電変換素子において、高温側接合部3と低温側接合部4との間に温度差ΔT=Th−Tcを与えると、両電極間(5と6及び7との間)に電圧が発生する。それ故低温側の両電極6と7との間に負荷(R)を接続すると電流(I)が流れ電力(W)として取り出すことができる。
【0004】
この種の熱電変換素子において、その電気出力Wは次式(1)で表わされる。ここで式(1)中、I:電流、R:負荷抵抗、S:熱電能、ΔT=Th−Tc、r:内部抵抗、m=R/rである。
【0005】
【数 1】
Figure 0003571240
【0006】
式(1)から明らかなとおり、電気出力WはΔTの2乗に比例し、高温側温度と低温側温度との差ΔTに大きく依存している。ところが、材料の一端を加熱したときにΔTがどのくらい得られるかは、材料の熱伝導率κ(及び入熱Q、材料サイズ)によって決ってしまう。このためΔTを飛躍的に大きくすることはできず、ΔTをより大きくする工夫としては、せいぜい低温側の放熱を促進させるか若しくは高温側の吸熱を促進させるぐらいのものである。
【0007】
一方、そこで用いられる熱電変換素子材料自体については、これまでPbTe系、BiTe系、CoSb系、SiーGe系、FeSi系など多くの報告がある。しかし変換効率が低いために、熱電発電用としての普及度は大きくないのが現状である。これらの熱電変換素子材料は、通常、以下に述べるとおりの性能指数Z(又は無次元性能指数ZT)によって評価される。
【0008】
まず熱電変換素子の最大効率ηmaxは次式(2)で与えられる。但し、式(2)中、Z=S/ρκ、S=ゼーベック係数、ρ=電気抵抗率、κ=熱伝導率、Th=高温側温度、Tc=低温側温度、T=(Th+Tc)/2である。
【0009】
【数 2】
Figure 0003571240
【0010】
上記式(2)において、例えばTh=1300K、Tc=300Kであるとすると、ZT=1の場合、ηmax =19.4%となり、また同じ温度差1000Kで、ZT=2の場合にはηmax =28.7%となる。図2はこれまで知られている種々の熱電変換材料についての性能指数(Z)と温度の関係を示すものであるが〔昭和63年2月28日、(社)電気学会発行「新版電気工学ハンドブック」第848頁〕、その性能は概ねZT=1の壁を超えてはいない。この理由は前記S、ρ、κは、本質的にすべてキャリヤ濃度の関数であり、独立に変化させることは極めて難しいという事情によるものである。
【0011】
実際、これまで様々な材料が熱電変換材料の候補として合成されてきたが、ZT=1を大きく上回るものは殆ど発見されていない。また、特に低温度領域すなわち室温から400℃ないし500℃程度の温度領域で有効な熱電変換材料は、何れも性能指数の温度依存性が大きいという問題点があった。例えば図2中に示されるpーBiTe(55)+SbTe(45)は優秀な熱電変換材料であるが、図2から明らかなとおり良好な特性を示す温度範囲は非常に狭い。
【0012】
熱電変換材料は、温度差から起電力を取り出したり、逆に電力を加えてヒートポンプとして冷却又は加熱に用いられる材料であるから、狭い温度範囲でしか良い特性が得られないのでは、その効果は半減してしまうことになる。熱電変換材料を特に発電に用いる場合には、前記式(2)から明らかなとおり、その熱電変換素子の最大効率は高温側と低温側との温度差に大きく依存することから、温度差を大きくとれないのでは(すなわち大きい温度差があってもそれを有効に利用できないのでは)効果が薄い。
【0013】
ところで、従来、広い温度範囲で高い熱電変換特性を得るための手法として考えられているのは、異種の材料を接合して使用する方法であり、例えば日刊工業新聞社発行、上村、西田著「熱電半導体とその応用」p.95〜100には、分割接合型熱電発電素子及びカスケード型熱電発電素子について紹介されている。これら素子は何れも高温で特性のよい材料と低温で特性のよい材料とを組み合わせて用いる素子であるが、このような素子では、その製造に手間がかかるばかりでなく、両材料の接合部分で熱抵抗が生じるほか、該接合部分の強度的な信頼性にも注意を払う必要があるなどの諸問題がある。
【0014】
これまで、Z値が最大で産業用に用いられている代表的な熱電変換材料はBiTe系のものである。この材料は融点が低く、有効温度領域はせいぜい−100℃〜+200℃程度の範囲に限られ(Zmax=3×10−3−1)、高温では高い性能を発揮できない。このためゼーベック効果を引き起こす原動力である温度差△Tを大きくとることはできず、変換効率は5〜6%にとどまっている。またこの材料に含まれるTeは毒性を有するするため好ましくない。
【0015】
上記BiTe系以外に実用化されている熱電変換材料としてはPbTe系、SiーGe系、FeSi 系などがある。このうちPbTe系にはBiTe系と同様に価格と毒性の問題があり、またSiーGe系の場合にはGeの材料費がTeより一層高価であるという問題がある。またFeSi 系の場合はそのような問題点はないものの、性能指数自体が決して高いとはいえず、このため電力を取り出す発電用の材料としては不向きである。以上のように、既知の材料は何れも一長一短があるため、普及には限度があるのが実情である。
【0016】
本発明者等は、従来における以上のような問題点を解決する熱電変換材料として、特に元素組成式ACoxOy(式中、AはLi、Na又はKであり、xは1≦x≦2、yは2≦y≦4である)で表わされる物質からなる熱電変換材料、及び、元素組成式(A1−Z)CoxOy〔式中、AはLi、Na又はK、BはMg、Ca、Sr、Ba、Sc、Y、Bi又はTeであり、zは0<z<1の範囲であり、xは1≦x≦2、yは2≦y≦4である〕で表わされる物質からなる熱電変換材料(特願平8ー158920号)及びCoサイトにMn、Fe又はCuを含む熱電変換材料(特願平9ー82273号)を先に開発している。
【0017】
これら熱電変換材料は、Z値が比較的高く、しかも液体窒素温度から650℃以上に及ぶ広い温度範囲にわたって高い熱電変換特性を有して安定に使用することができ、またその温度範囲での諸物性値もほぼ一定である。本発明者等は、上記複合酸化物系統の熱電変換材料についてさらに追求したところ、上記の元素とは異なる元素をドープした複合酸化物、また特願平9ー82273号におけるCuに加えて上記の元素とは異なる元素をドープした複合酸化物が、広い温度範囲にわたってそれら熱電変換材料以上の性能を有し、熱電変換材料として優れた特性を有することを見い出した。
【0018】
また、上記熱電変換材料は他の熱電変換材料と組み合わせて熱電変換素子として構成することができ、その際これと組み合わせる他の熱電変換材料として特に複合酸化物系の熱電変換材料を用いると、その製作上不活性雰囲気や還元雰囲気を必要とせずに製作できるなど有利であり、その使用時にも、接合面での剥離などの問題がなく、熱電変換素子として長期にわたり特性低下がなく、耐久性にも優れていることを見い出した。
【0019】
【発明が解決しようとする課題】
すなわち、本発明は、NaCoxOyで表わされる複合酸化物にAg、Li、ランタノイド、Ti、Mo、W、Zr、V、Cr及びCuから選ばれた1種又は2種以上の元素をドープした複合酸化物であって、NaCoxOyの性能以上の性能を備えてなる熱電変換材料及びこの熱電変換材料を用いてなる熱電変換素子を提供することを目的とする。
【0020】
【課題を解決するための手段】
本発明は、(1)元素組成式(Na1−P)(Co1−Z)xOyで表わされる物質からなることを特徴とする熱電変換材料〔ただし式中、xは1≦x≦2、yは2≦y≦4、pは0<p≦1、zは0<z≦1であり(pとzが共に1の場合を除く)、B又はA若しくはB及びAは、それぞれ、Ag、Li、ランタノイド、Ti、Mo、W、Zr、V、Crから選ばれた1種又は2種以上の元素を示す〕を提供する。
【0021】
また、本発明は(2)元素組成式(Na1−P)(Co1−Z−qCu)xOyで表わされる物質からなることを特徴とする熱電変換材料〔ただし式中、xは1≦x≦2、yは2≦y≦4、pは0<p≦1であり、z及びqは、0<z<1、0<q<1、z≦1−qであり(pが1で且つzが1−qの場合を除く)、B又はA若しくはB及びAは、それぞれ、Ag、Li、ランタノイド、Ti、Mo、W、Zr、V、Crから選ばれた1種又は2種以上の元素を示す〕を提供する。
【0022】
また、本発明は(3)元素組成式(Na1−p)CoxOyで表わされる物質からなることを特徴とする熱電変換材料(ただし式中、xは1≦x≦2、yは2≦y≦4、pは0<p<1であり、BはAg、Li、ランタノイドから選ばれる1種又は2種以上の元素を示す)を提供し、さらに本発明は(4)元素組成式(Na1−P)(CoCu1−Z)xOyで表わされる物質からなることを特徴とする熱電変換材料(ただし式中、xは1≦x≦2、yは2≦y≦4、pは0<p<1、zは0<z<1であり、BはAg、Li、ランタノイドから選ばれる1種又は2種以上の元素である)を提供する。
【0023】
また、本発明は(5)、上記(1)〜(4)の熱電変換材料を用いてなることを特徴とする熱電変換素子を提供し、また本発明は(6)、上記(1)〜(4)の熱電変換材料の何れかのp型熱電変換材料とn型の複合酸化物からなる熱電変換材料を用いてなることを特徴とする熱電変換素子を提供し、さらに本発明は(7)、上記(1)〜(4)の熱電変換材料の何れかのp型熱電変換材料と元素組成式NdCuOで表わされる複合酸化物に対してZrをドープしてなるn型熱電変換材料を用いてなることを特徴とする熱電変換素子を提供する。
【0024】
また、本発明は(8)、上記(1)〜(4)の熱電変換材料の何れかのp型熱電変換材料と元素組成式NdCuOで表わされる複合酸化物に対してPrをドープしてなるn型熱電変換材料を用いてなることを特徴とする熱電変換素子を提供し、また本発明は(9)、上記(1)〜(4)の熱電変換材料の何れかのp型熱電変換材料と元素組成式NdCuOで表わされる複合酸化物、またはこれに対してCeをドープしてなる複合酸化物からなるn型熱電変換材料を用いてなることを特徴とする熱電変換素子を提供する。
【0025】
さらに、本発明は(10)、上記(1)〜(4)の熱電変換材料の何れかのp型熱電変換材料と一般式Ba1−XSrPbO(0≦x≦0.6)で表わされる複合酸化物からなるn型熱電変換材料を用いてなることを特徴とする熱電変換素子を提供する。
【0026】
【発明の実施の形態】
本発明の熱電変換材料は1種の複合酸化物であり、前記式NaCoxOyで示される組成を基本とし、これにAg、Li、ランタノイド、Ti、Mo、W、Zr、V、Cr及びCuから選ばれた1種又は2種以上の元素をドープしてなる熱電変換材料である。ランタノイドは何れも用いられるが、代表例としてはLa、Ce等が挙げられる。なお前記(2)及び(4)の元素組成式に関してCuを単独に含む場合については既に成果を得ているが(特願平9ー82273号)、本発明によれば、Cuに加えて、それら元素をドープした場合にも熱電変換材料としてさらに改善され優れた特性が得られる。
【0027】
これらの元素は上記基本式中Naサイト及びCoサイトの何れか又は双方に入るが、本発明においては、基本組成NaCoxOyに対してこれられら元素をドープすることにより改善された優れた熱電変換材料が得られる。ドープ元素がNaサイト及びCoサイトの何れに入るかは、主として各元素の価数やイオン半径によって決まるが、焼成温度や焼成時間その他の諸条件に左右される場合もあり得る。それらのうちAg、Li、ランタノイドはNaサイトに入るが、Coサイトに入る場合があり得、またTi、Mo、W、Zr、V、Cr、CuはCoサイトに入るが、Naサイトに入る場合があり得る。これら何れの場合にも、本発明においては、基本組成NaCoxOyに対してこれられら元素をドープすることで改善された優れた熱電変換材料が得られる。
【0028】
本発明に係る熱電変換材料を構成する典型的態様例としては、まず前記(3)の元素組成式(Na1−p)CoxOy中におけるBがAg、Li又はランタノイドの単独、或いは2種以上(複数のランタノイド元素であってもよい)の場合があり、また前記(4)の元素組成式(Na1−P)(Co1−Z)xOy中におけるBがAg、Li又はランタノイド、或いは2種以上(複数のランタノイド元素であってもよい)であり、AとしてCuがドープされた場合がある。これら(3)及び(4)の発明において、元素組成式中のCoサイトに幾分かのAg、Li又はランタノイドがドーブされ、また(4)における元素組成式中のNaサイトに幾分かのCuがドープされている場合もあり得るが、(3)及び(4)の発明における元素組成はこれらの場合も含む意味であり、この点本明細書中これら発明に関する記載についても同じである。
【0029】
本発明における上記元素をドープした複合酸化物は、各種複合酸化物を製造する場合と同様にして製造することができ、それら元素をドープした複合酸化物に必要な元素源を含む原料を粉末等として均一に混合し、焼成することにより得られる。なお、このように焼成することから、この工程を経て得られた本発明の元素ドープ複合酸化物はセラミックの一種と云える。また、それら元素をドープした複合酸化物を単結晶として構成する場合には、その原料混合物を溶融し、その溶融物を徐冷しながら成長させることにより製造することができる。
【0030】
本発明に係る特定元素をドープした複合酸化物を製造するに際して用いられる原料としては、各成分元素、各成分元素の酸化物又はその焼成時に酸化物となる原料が使用される。Na源としては、例えば炭酸ナトリウムや酢酸ナトリウム等のナトリウム化合物が使用され、Co源としては、例えば金属(Co)、酸化物(CoO、Co等)、酸素酸塩(CoCO等)、有機酸塩〔Co(CHCO等〕、ハロゲン化物(CoCl、CoI等)等が使用され、Ag源としては、例えば金属(Ag)、酸化物(AgO )、酸素酸塩(AgCO、AgClO 等)、有機酸塩(AgCHCO等)、ハロゲン化物(AgCl、AgI等)が用いられる。
【0031】
ランタノイド源については、La源の場合、例えば金属(La)、酸化物(La)、水酸化物〔La(OH)〕、酸素酸塩〔La(CO〕、ハロゲン化物(LaCl、LaI等)、有機酸塩〔La(CHCO 〕等が用いられ、Ce源の場合、例えば金属(Ce)、酸化物(Ce)、水酸化物〔Ce(OH)〕、酸素酸塩〔Ce(CO・5HO〕、有機酸〔Ce(C・10HO〕、ハロゲン化物(CeCl、CeI等)等が用いられる。
【0032】
Ti源としては、例えば金属(Ti)、酸化物(Ti、TiO等 )、酸素酸塩〔Ti(SO〕、ハロゲン化物(TiCl、TiI等)等が用いられる。Li源としては、例えば酸化物(LiO、Li )、水酸化物(LiOH)、酸素酸塩〔LiCO等〕、ハロゲン化物(LiCl、LiI等)等が用いられる。Mo源としては、例えば金属(Mo)、酸化物(MoO、 MoO)、ハロゲン化物(MoCl、MoCl 等)、硫化物(MoS、MoS、MoS等)等が用いられる。
【0033】
W源としては、例えば金属(W)、酸化物(WO、WO等)、硫化物(WS、WS等)、ハロゲン化物(WCl、WCl、WCl、WCl等)、オキシハロゲン化物(WOCl 等)が用いられ、Zr源としては、例えば金属(Zr)、酸化物(ZrO等 )、有機酸塩〔Zr(CH3CO〕、ハロゲン化物(ZrCl、ZrCl)、オキシハロゲン化物(ZrOCl・8HO等)等が用いられる。
【0034】
V源としては、例えば金属(V)、酸化物(V、VO、V 等)、バナジウム酸(HVO、HVO等)又はその塩、ハロゲン化物(VCl、VCl等)等が用いられる。Cr源としては、例えば金属(Cr)、酸化物(Cr、CrO 等)、クロム酸(HCrO)、重クロム酸(HCr)又はそれらの塩、ハロゲン化物(CrCl 等)等が用いられる。Cu源としては、例えば金属(Cu)、酸化物(CuO、CuO等)、水酸化物〔Cu(OH)等〕、酸素酸塩(CuCO、CuSO等)、ハロゲン化物(CuCl、CuCl、CuI等)、硫化物(CuS、CuS等)、有機酸塩〔Cu(CHCO・HO等〕等が用いられる。
【0035】
本発明に係る元素ドープの複合酸化物のゼーベック係数は非常に大きい。本発明に係る熱電変換材料は、金属的な電気伝導特性を示すにも拘わらず、ゼーベック係数の大きい物質からなるp型の熱電変換材料である。通常の金属的電気伝導特性を有する酸化物はゼーベック係数の値は小さいというのが一般的であるにも拘わらず、本発明の複合酸化物では、ゼーベック係数が異常に大きいという特性を持っており、この点できわめて特異的である。
【0036】
一例として、本発明に係るAgドープ複合酸化物であるNa0.95Ag0.05Coについてみると、この材料は金属的な電気伝導を示す物質であり、通常このような物質のゼーベック係数は数μV/K程度と低いが、Na0.95Ag0.05Coのゼーベック係数は突出して大きいことが分かった。このことはNa0.95Ag0.05Coの熱起電力が従来熱電変換材料として一般的に用いられているBiTe等の縮退半導体とは異なる機構で発生していることを示唆している。
【0037】
熱電変換材料は▲1▼ゼーベック係数が高い方がよく、▲2▼電気抵抗率は低い方がよく、▲3▼熱伝導率は低い方がよく、▲4▼性能指数は高い方がよいが、本発明の複合酸化物は、基本組成NaCoxOyに対して特定元素をドープすることにより、これら▲1▼〜▲4▼の特性が改善される。本発明の熱電変換材料は、ドープ元素の種類により、該基本複合酸化物(それ自体優れた熱電変換材料である:特願平8ー158920号)に比べて、これら▲1▼〜▲4▼の各特性において差異はあるが、▲1▼〜▲4▼の各特性の如何により、所望熱電変換材料として適宜選択して使用することができる。
【0038】
本発明においては、以上の元素ドープの複合酸化物からなる熱電変換材料を用いて、温度差から起電力を取り出したり、逆に電力を加えてヒートポンプとして冷却又は加熱に用いる熱電変換素子を構成する。その熱電変換素子の構成の仕方としては、熱電変換材料を用いて熱電変換素子を構成する従来における態様と同様に構成することができる。また本材料の構成元素はNa、Co、O、Ag、La、Ce、Ti、Li、Mo、W、V、Cr、Zr、Cu等であり、これらのうち主構成元素であるNa、Co、Oは毒性がなく、材料費も比較的安価である。添加元素については、ドープであるため量も少なくてすみ、材料費、毒性も問題にならない。このため特に民生用に用いるのにも大いに有利であるなど実用上も優れた利点が得られる。
【0039】
本発明に係る元素ドープの複合酸化物からなる熱電変換材料(1)〜(4)はp型の熱電変換材料であるが、これらを用いて熱電変換素子を構成するにはn型の熱電変換材料が必要である。従来の材料としてはBiTe等の高い性能を有する非酸化物材料が知られている。例えばBiTeでは、熱処理条件やドープ元素の種類を適当に制御することにより高性能のn型熱電変換材料が得られる。本発明の熱電変換材料(1)〜(4)はこれらn型熱電変換材料とも組み合わせて用いられる。ところが、本発明のp型の熱電変換材料とn型熱電変換材料であるBiTeを組み合わせて素子化したところ、特に高温時に数々の不都合が生じてしまった。この材料は非酸化物材料であるため、高温において酸化雰囲気では悪影響を受ける。このためこの材料を使用して熱電変換素子を製作するには、不活性雰囲気や還元雰囲気などの特殊な雰囲気下で熱処理する必要がある。実際に、大気雰囲気中で熱処理を行ったところ、電気抵抗の増加だけでなく、ゼーベック係数の絶対値も低下してしまうなど、熱電性能が著しく低下してしまった。このことからして、BiTe等の非酸化物材料を熱電材料として使用する場合には、不活性雰囲気や還元雰囲気などの特殊な条件下での熱処理が必須と云える。酸化雰囲気下で熱処理可能であることは、本発明の材料の大きなメリット(利点)であるが、n型材料としてBiTe等の非酸化物材料を使用すると、このメリットが失われてしまう。
【0040】
また、n型のBiTe等を本発明の材料と組み合わせて素子化したところ、素子の耐久性自体が大幅に失われるデメリット(不利点)があることが判明した。実際に、本発明の材料とBiTeとを組み合わせて熱電変換素子を作製したところ、熱処理後に熱電材料部分と基板部分の接合部が剥がれてしまった。この理由は、一般的に酸化物材料と非酸化物材料との熱膨張率を比較した場合、酸化物材料の方が熱膨張率が低い傾向にあるためと考えられる。熱電材料間で熱膨張率が異なると、加熱時には熱膨張の差が生じ、その結果、素子内部に応力が生じるために、熱電材料と基板との界面で剥離が生じたものと考えられる。因みに本発明の材料の線膨張率は約5×10−6−1(室温)であるのに対し、非酸化物材料であるBiTeの線膨張率は約13×10−6−1(室温)と高く、この差が原因と考えられる。
【0041】
本発明に係る元素ドープの複合酸化物からなる熱電変換材料(1)〜(4)のp型の熱電変換材料と組み合わせる材料として、n型の酸化物熱電材料と組み合せたところ、数々の有利な点があることが分かった。実際に、n型の酸化物材料として、組成NdCuOで表わされる複合酸化物に対してZrをドープしてなる熱電変換材料、Prをドープしてなる熱電変換材料を用いて熱電変換素子、Ceをドープしてなる熱電変換材料を用いて熱電変換素子を製作したところ、大気雰囲気中での熱処理で熱電性能が低下することなく、さらには、素子を800℃まで加熱しても熱電材料と基板との界面に剥離が生じず、素子として使用できることが判明した。このようにn型酸化物材料を組み合わせて用いることにより、本発明の材料の熱電性能を損なうことなく、熱電変換素子を製作することができる。もちろん、本発明の熱電変換材料(1)〜(4)はBiTe等の従来のn型熱電変換材料とも組み合わせて用いられるが、特に高温での使用に供する場合などには上記のような問題を解決した上で実用化することができる。
【0042】
本発明に係る元素ドープの複合酸化物からなる熱電変換材料(1)〜(4)はp型の熱電変換材料であるが、これらを用いて熱電変換素子を構成する例としてこれら熱電変換材料の何れかの材料と、(A)元素組成式NdCuOで表わされる複合酸化物に対してZrをドープしてなるn型熱電変換材料、(B)元素組成式NdCuOで表わされる複合酸化物に対してPrをドープしてなるn型熱電変換材料、(C)元素組成式NdCuOで表わされる複合酸化物、またはこれに対してCeをドープしてなるn型熱電変換材料、あるいは(D)一般式Ba1−XSrPbO(0≦x≦0.6)で表わされるn型熱電変換材料とを用いて構成することができる。
【0043】
このうち(A)〜(B)の熱電変換材料は本発明者等により開発されたもので(特願平10ー191051号)、(A)は一般式(Nd1−XCuO(M=Zr、0<x≦1)として示され、(B)は一般式(Nd1−XCuO(M=Pr、0<x≦1)として示される。これらは常温域では例えば−160μV/K程度、440℃という高温域でも例えば−70μV/Kという値を有し、n型の熱電変換材料として広い温度にわたり優れた特性を有している。
【0044】
また(C)は一般式Nd2−XCeCuO(0≦x≦0.1)として示されるn型の熱電変換材料で、例えばx=0.01のとき、673Kという高温域で−100μV/Kという値を有している〔安川外1名「粉体および粉末冶金」第44巻第1号(1997年1月)50〜53頁〕。また(D)一般式Ba1−XSrPbO(0≦x≦0.6)で表わされるn型熱電変換材料は、例えばx=0.6のとき、673Kという高温域で−120μV/Kという値を有している〔JOURNAL OF MATERIALS SCIENCE LETTERS 16(1997)p.1731ー1734〕。
【0045】
本発明に係る元素ドープの複合酸化物からなる熱電変換材料(1)〜(4)及び(A)〜(D)の熱電変換材料は、ともに酸化物であり、大気中等の酸化雰囲気中で焼成できるという利点があり、熱電変換素子としての使用時にも高温の酸化雰囲気中でも使用できるという利点がある。また熱電変換材料(1)〜(4)及び(A)〜(D)の熱電変換材料は、ともに酸化物であるため、熱膨張率の差が小さく、熱膨張率に起因する応力が小さくなるため、熱電変換素子としての耐久性にも優れているなど非常に有利である。
【0046】
【実施例】
以下、実施例に基づき本発明をさらに詳しく説明するが、本発明がこれら実施例に限定されないことは勿論である。本実施例ではまず各種元素をドープした複合酸化物を製造し、各種性能試験を実施した。また本発明に係る熱電変換材料を用いて熱電変換素子を構成し発電実験を実施した。
【0047】
《製造例》
組成NaCoにおけるNaに対して5%Liを添加したLiドープの複合酸化物:Na0.95Li0.05Co(なお、Liの幾分かはCoサイトにドープされている可能性もあるが、典型的な形として示している)を次のようにして製造した。原料としてNaCO、Co及びLi(CO)の各粉末を使用した。この3種類の原料粉の各々をNaCoのNaに対してLiを5%添加した組成となるように秤量し、均一に混合した。この時LiとNaを少し多めにしたが、これは製造過程でNa及びLiが蒸発することを考慮したためである。
【0048】
得られた混合粉末を400kg/cm の圧力でペレット状に成型し、アルミナルツボに入れて温度800℃で10時間仮焼した。仮焼した試料を再び粉砕した後、粉砕した粉末にNaを10wt%加えて混合し、500kg/cm の圧力でロッド状の形状に成型した。その後アルミナルツボに入れて温度800℃で10時間(大気雰囲気中)焼成して試料を得た。また以上と同様にして温度860℃で10時間(大気雰囲気中)焼成して組成Na0.95Li0.05Coの試料を得た。
【0049】
Na源としてNaCOの粉末、Co源としてCoの粉末を用い、これにAg、Li、La、Ce、Ti、Mo、W、Zr、V、Cr、Cuをそれぞれの酸化物粉末として加えた各混合物から上記と同様にして温度800℃で10時間焼成して複合酸化物試料を得た。各混合物それぞれについて温度860℃で10時間(大気雰囲気中)、温度900℃で10時間(大気雰囲気中)焼成して複合酸化物試料を得た。
【0050】
上記酸化物粉末としては AgO、Li、La、CeO、TiO、MoO、WO、ZrO、V、CrO、CuOを用いた。表1にこうして得られた試料組成のうちの幾つかの例を示している。Li、La、Agについては1部がCoサイトに入っている場合があり、Zr、V、Cr、Ti、Mo、Wについては1部がNaサイトに入っている場合もあり得るが、本発明に係る熱電変換材料としての特性上変わりはなく、表1にはその典型的な形として示している。
【0051】
【表 1】
Figure 0003571240
【0052】
前記各試料について評価試験を実施した。まずX線回折法により所望の物質が得られていることを確認した。以下における性能測定1〜4は温度800℃(10時間、大気雰囲気中)で焼成して得た各試料についての測定結果であり、また性能測定5〜8は温度860℃(10時間、大気雰囲気中)で焼成して得た各試料についての測定結果であり、また、性能測定9〜10は温度900℃(10時間、大気雰囲気中)で焼成して得た各試料についての測定結果である。
【0053】
ゼーベック係数の測定は以下のようにして行った。ロッド状に焼成した試料を電気炉内に入れて所定の温度に加熱しながら、試料の下端のみを別に加熱した。これによって試料の上端と下端との間には約5℃の温度差がつき、熱起電力が発生する。この起電力を電圧計で測定し、その値を温度差で割ることによってゼーベック係数が求められる。電気抵抗率の測定はロッド状に焼成した試料を電気炉内に入れて所定の温度に加熱し、直流4端子法を用いて実施した。また、熱伝導率の測定はレーザーフラッシュ法によって行った。
【0054】
《性能測定1:ドープによるゼーベック係数の変化:試料焼成温度800℃》
図3は以上のようにして得た各複合酸化物について、各元素のドープによるゼーベック係数の変化を測定したもので、図4は図3中下方部について拡大したものである。図3〜図4には基準として上記製造例と同様にして得られたNaCoのデータも示しているが、当該NaCoはそれ自体優れた熱電変換材料である。図3〜図4のとおり基本複合酸化物NaCoに対して例えばTi、Ag、La、Li、Wをドープした試料のゼーベック係数は、既に温度50℃程度から、基本複合酸化物NaCoの値より上回っており、この傾向は温度400℃、さらには600℃以上においてもほぼ同様の傾向を示している。
【0055】
《性能測定2:ドープによる電気抵抗率の変化:試料焼成温度800℃》
図5は、各試料の電気抵抗率の変化を測定したものである。図5には基準としてNaCoのデータも示している。図5のとおり、基本複合酸化物NaCoに対し例えばCe、Li、La、Agをドープした試料の電気抵抗率は、温度50℃程度から基本複合酸化物NaCoの値より低く、温度400℃、さらには600℃以上においてもほぼ同様の傾向を示している。また図示していないが、AgとCuとをドープした試料については、図5中Agをドープした試料の場合よりさらに下回り、その傾斜についてもほぼ同様な傾向を示した。
【0056】
これらの測定結果は本発明に係る複合酸化物が室温から650℃以上にも及ぶ広い温度領域にわたって電気抵抗率が小さく、熱電変換材料として優れた特性を有することを実証している。なおMoドープの場合については、基本複合酸化物NaCoより幾分上回り、図5には示していないがTi、Zr、Wについては9×10−3Ω・cm以上という比較的高い抵抗値を示したが、図3〜4、図6等からも明らかなとおり、これらについてはゼーベック係数、熱伝導率等、他の特性で良好ないし優れており、熱電変換材料として利用し得るものである。
【0057】
《性能測定3:ドープによる熱伝導率の変化:試料焼成温度800℃》
図6は各試料における熱伝導率の変化を測定したものである。図6には基準としてNaCoのデータも示している。基本複合酸化物NaCoに対してZr、Ti、Moをドープしたものでは、温度40℃程度から基本複合酸化物NaCoの値より低下しており、この傾向は温度400℃、さらに600℃に至ってもほぼ同様の傾向を示し、良好な特性を示している。
【0058】
また、Ag、Laをドープしたものでは、熱伝導率は温度250〜300℃程度までは基本複合酸化物NaCoより小さいが、また温度250〜300℃程度より高温では幾分上回り、以後600℃以上でも同様の傾向を示している。このようにAg、Laについては、改善された良好なゼーベック係数を維持しながら、熱伝導率については基本複合酸化物NaCoとほぼ同等であり、熱電変換材料として好ましい特性を示している。
【0059】
《性能測定4:ドープによる性能指数の変化:試料焼成温度800℃》
図7は各試料についての性能指数の変化を測定したものである。図7には基準としてNaCoのデータも示している。基本複合酸化物NaCoに対してAg、Laをドープした試料の性能指数は基本複合酸化物NaCoの値より上回っている。このうちLaの場合は基本複合酸化物NaCoに対して全温度範囲にわたって上回っている。またAgの場合には400℃、さらに600℃に至っても高い性能を維持している。
【0060】
以上の各測定結果から分かるとおり、本発明において基本組成NaCoxOyに対して特定元素をドープしてなる複合酸化物は、▲1▼ゼーベック係数、▲2▼電気抵抗率、▲3▼熱伝導率及び▲4▼性能指数の各特性において、ドープ元素の種類により差はあるが、何れも熱電変換材料として有効な材料であることは明らかである。
【0061】
図3〜7の各図には基本複合酸化物であるNaCoの値も示しているが、この基本複合酸化物自体、熱電変換材料として優れた材料である。本発明における熱電変換材料は、ドープ元素の種類により、該基本複合酸化物に比べれば、上記▲1▼〜▲4▼の各特性に差異はあるが、以上のような各測定結果から、例えば▲1▼〜▲4▼の各特性の如何により、所望熱電変換材料として適宜選択し、使用し得る材料であることを示している。
【0062】
《性能測定5:ドープによるゼーベック係数の変化:試料焼成温度860℃》
図8は焼成温度860℃で得た各試料についてゼーベック係数の変化を測定したものである。図8は基本複合酸化物NaCoに対してAg、La、V、Cr、W、Liをドープした複合酸化物のゼーベック係数を示している。これらは温度40℃程度で100μVK−1程度であるが、以降高い傾斜で上昇し、温度400℃、さらに600℃以上においてもほぼ同様の傾向を示している。
【0063】
《性能測定6:ドープによる電気抵抗率の変化:試料焼成温度860℃》
図9は焼成温度860℃で得た各試料について電気抵抗率の変化を測定したものである。基本複合酸化物NaCoに対してLi、Laをドープしたものでは温度が高くなるのに伴い上昇はするが、その傾斜は緩く、例えばLaの場合では600℃においても5×10−3Ω・cm程度であるに過ぎない。またCr、Agをドープした試料の電気抵抗率は、温度50℃で5×10−3Ω・cm程度と低く、以降上昇はするが、その傾斜は緩やかである。
【0064】
《性能測定7:ドープによる熱伝導率の変化:試料焼成温度860℃》
図10は焼成温度860℃で得た各試料について熱伝導率の変化を測定したものである。基本複合酸化物NaCoに対してAgをドープした試料の熱伝導率は、温度約20℃で1.5W/mK弱程度であり、その後緩やかに上昇するに過ぎない。Liをドープした試料も同様の傾向を示し、温度約20℃で1.6W/mK弱程度であり、その後80℃程度までは幾分低下するが、以降上昇し300℃では1.7W/mK程度の値を示し、Laの場合はさらに下回っている。
【0065】
《性能測定8:ドープによる性能指数の変化:試料焼成温度860℃》
図11は焼成温度860℃で得た各試料について性能指数の変化を測定したものである。基本複合酸化物NaCoに対してLi、Laをドープしたものでは既に温度30℃程度から高い値を示し、またAg、Crの場合はそれらLi、Laより下回るが、性能指数は温度上昇とともに徐々に向上し熱電変換材料として有効な性能を示している。
【0066】
《性能測定9:ドープによるゼーベック係数の変化:試料焼成温度900℃》
図12は焼成温度900℃で得た組成Na0.95Ag0.05(Co0.95Cu0.05の試料についてゼーベック係数の変化を測定したものである。図示のとおり基本複合酸化物NaCoに対しAgとCuをドープしたものでは、温度40℃で120μVK−1という高い値を示し、以降漸次上昇し、400℃で約150μVK−1、600℃以上においてもさらに高い値を示している。
【0067】
《性能測定10:ドープによる電気抵抗率の変化:試料焼成温度900℃》
図13は焼成温度900℃で得た組成Na0.95Ag0.05(Co0.95Cu0.05の試料について電気抵抗率の変化を測定したものである。図示のとおり基本複合酸化物NaCoに対しAgとCuをドープしたものでは、温度40℃で5×10−3Ω・cm程度と低く、以降漸次高くはなるが、600℃においても4×10−3Ω・cm程度であるに過ぎない。
【0068】
《熱電変換素子としての実施例》
以下は本発明に係る熱電変換材料を用いて熱電変換素子を構成し発電実験を実施した例である。p型熱電変換材料としてNa0.95Ag0.05Coを使用し、n型熱電変換材料として(Nd0.95Zr0.05CuOを使用して発電用熱電変換素子を構成した。これら各材料は以下の製造例のとおり製造した。
【0069】
〈Na0.95Ag0.05Coの製造例〉
組成NaCoにおけるNaに対して5%(mol)Agを添加したAgドープの複合酸化物:Na0.95Ag0.05Co(なお、Agの幾分かはCoサイトにドープされている可能性もあるが、典型的な形として示している)を次のようにして製造した。原料として純度99.9%以上のNaCO、Co及びAgO を使用した。これら3種類の原料粉の各々をNaCoのNaに対してAgを5%添加した組成となるように秤量し均一に混合した。この時NaとAgを少し多めにしたが、これは製造過程でNa及びAgが蒸発することを考慮したためである。得られた混合粉末を2000kg/cmの圧力でペレット状に成型し、アルミナルツボに入れて空気雰囲気中温度900℃で10時間仮焼した。仮焼した試料を再び粉砕した後、粉砕した粉末にNaを10wt%加えて混合し、5000kg/cmの圧力でロッド状の形状に成型した。その後アルミナルツボに入れて温度900℃で10時間(大気雰囲気中)焼成してロッド状試料を得た。
【0070】
〈(Nd0.95Zr0.05CuOの製造例〉
基本組成NdCuOにおけるNdに対してZrを添加したZrドープの複合酸化物:(Nd1−XZrCuO(x=0.05)を次のようにして製造した。原料として純度99.9%以上のNd、CuO及びZrOの各粉末を使用した。これら3種の原料粉を組成式(Nd0.95Zr0.05CuOとなるようにZrを添加した組成となるように秤量し均一に混合した。得られた混合粉末を2000kg/cmの圧力でペレット状に成型し、アルミナ製ルツボに入れて空気雰囲気中、温度1150℃で10時間仮焼した。昇温速度は5℃/minとした。仮焼した試料を再び粉砕混合し、2000kg/cm の圧力でロッド状の形状に成型した。その後アルミナルツボに入れて温度1150℃で10時間(大気雰囲気中)焼成してロッド状試料を得た。
【0071】
〈熱電変換素子の製作例1〉
本実施例は1対の素子で構成した熱電変換素子の例である。図14〜15に本製作例1で製作した熱電変換素子を示し、図14は平面図、図15は図14中AーB線断面図である。前記製造例で得た各ロッド状試料を3×3×3mmのサイズのキュービック状に切り出した。一方、2枚のアルミナ基板の表面にPtペーストでスクリーン印刷によりPt電極付けを行った。その2枚のうちの1枚のアルミナ基板には電力取り出し用のPtの導線をスクリーン印刷部の2箇所のPt電極にPtペーストにより接着した。この基板及び導線の全体を大気中1000℃で10分間熱処理して強固に接合させた。次に、上部及び下部のアルミナ基板のPt電極上の接合部分(図14中アルミナ基板間に熱電材料の存在する領域)、および、3×3×3mmのサイズに切り出した各試料の上下の接合面にAgペーストを塗布した後、それらを組み合わせた。その後、全体を大気中850℃で、10分間熱処理して強固に接合させた。
【0072】
〈起電力等の測定〉
上記製作した熱電変換素子の上部のアルミナ基板の上表面にヒーターを接触させ、下部のアルミナ基板の下表面に水冷した銅板を接触させた。この接触界面には熱伝導ペーストを塗布して熱伝導性を高めるようにした。こうして素子の上下面に温度差を発生させた。図16はヒーターで加熱した時の温度差と導線間の開放起電力との関係を調べた結果を示す図である。図16のとおり、温度差と導線間の開放起電力とで線形の関係が得られ、理論通りに温度差に依存した熱起電力が生じていることが判明した。最大温度差200℃として測定したところ、開放起電力の最大値33mVが得られ、この時の最大電力として19.7μWの出力が得られた。
【0073】
〈熱電変換素子の製作例2〉
本実施例は8対の素子で構成した熱電変換素子の例である。図17〜18に本製作例2で作製した熱電変換素子を示し、図17は平面図、図18は図17中AーB線断面図である。前記製造例で得た各ロッド状試料を3×3×3mmのサイズのキュービック状に切り出した。一方、2枚のアルミナ基板の表面にPtペーストでスクリーン印刷によりPt電極付けを行った。その2枚のうちの1枚のアルミナ基板には電力取り出し用のPtの導線をスクリーン印刷部の2箇所にPtペーストにより接着した。この基板及び導線の全体を大気中1000℃で10分間熱処理して強固に接合させた。次に、上部及び下部のアルミナ基板のPt電極上の接合部分(図14中、アルミナ基板間に熱電材料の存在する領域)、および、3×3×3mmのサイズに切り出した各試料の上下の接合面にAgペーストを塗布した後それらを組み合わせた。その後、全体を大気中850℃で、10分間熱処理して強固に接合させた。
【0074】
〈起電力等の測定〉
上記製作した熱電変換素子の上部のアルミナ基板の上表面にヒーターを接触させ、下部のアルミナ基板の下表面に水冷した銅板を接触させた。この接触界面には熱伝導ペーストを塗布して熱伝導性を高めるようにした。こうして素子の上下面に温度差を発生させた。ヒーターで加熱して最大温度差200℃の時の開放起電力を測定したところ、最大値249mVが得られた。この時の最大電力としては120.5μWの出力が得られた。
【0075】
【発明の効果】
本発明に係る熱電変換材料は常温から650℃以上に及ぶ広い温度範囲にわたって、熱電変換材料として優れた特性を有している。また本発明の熱電変換材料は原材料費が安く、しかも毒性がないか少なく、安全である。このため民生用の熱電変換素子として適用できるなど、すぐれた利点が得られる。
【0076】
また、p型の熱電変換材料である本発明の熱電変換材料は各種n型熱電変換材料と組み合わせて熱電変換素子を構成することができる。その際、n型熱電変換材料として複合酸化物、例えば元素組成式NdCuOで表わされる複合酸化物に対してZr又はPrをドープしてなる熱電変換材料、一般式Nd2−XCeCuO(0≦x≦0.1)として示されるn型の熱電変換材料、或いは一般式Ba1−XSrPbO(0≦x≦0.6)として示されるn型の熱電変換材料等を用いた熱電変換素子は、ともに酸化物であるため、大気中等の酸化雰囲気中で焼成でき、熱電変換素子としての使用時にも高温の酸化雰囲気中でも使用できるという利点を有するのに加え、両者間の熱膨張率の差が小さく、熱膨張率に起因する応力が小さくなるため、熱電変換素子としての耐久性にも優れている。
【図面の簡単な説明】
【図1】熱電変換素子の一態様を原理的に説明する模式図。
【図2】従来の各種熱電変換材料についての性能指数(Z)の温度による変化を示す図。
【図3】試料複合酸化物(焼成温度800℃)について、各元素のドープによるゼーベック係数の変化を測定した図。
【図4】図3を部分的に拡大した図。
【図5】試料複合酸化物(焼成温度800℃)について、各元素のドープによる電気抵抗率の変化を測定した図。
【図6】試料複合酸化物(焼成温度800℃)について、各元素のドープによる熱伝導率の変化を測定した図。
【図7】試料複合酸化物(焼成温度800℃)について、各元素のドープによる性能指数の変化を測定した図。
【図8】試料複合酸化物(焼成温度860℃)について、各元素のドープによるゼーベック係数の変化を測定した図。
【図9】試料複合酸化物(焼成温度860℃)について、各元素のドープによる電気抵抗率の変化を測定した図。
【図10】試料複合酸化物(焼成温度860℃)について、各元素のドープによる熱伝導率の変化を測定した図。
【図11】試料複合酸化物(焼成温度860℃)について、各元素のドープによる性能指数の変化を測定した図。
【図12】基本複合酸化物に対しAgとCuをドープした試料(焼成温度900℃)についてゼーベック係数の変化を測定した図。
【図13】基本複合酸化物に対しAgとCuをドープした試料(焼成温度900℃)について電気抵抗率の変化を測定した図。
【図14】熱電変換素子製作例1で製作した熱電変換素子を示した図。
【図15】熱電変換素子製作例1で製作した熱電変換素子を示した図。
【図16】熱電変換素子製作例1で製作した熱電変換素子をセットし、上面を加熱し下面を冷却した時の温度差と導線間の開放起電力との関係を調べた結果を示す図。
【図17】熱電変換素子製作例2で製作した熱電変換素子を示した図。
【図18】熱電変換素子製作例2で製作した熱電変換素子を示した図。
【符号の説明】
1 p型半導体
2 n型半導体
3 高温側接合部
4 低温側接合部
5 高温側電極
6、7 低温側電極
S 絶縁空間

Claims (10)

  1. 元素組成式(Na1−P)(Co1−Z)xOyで表わされる物質からなることを特徴とする熱電変換材料。ただし式中、xは1≦x≦2、yは2≦y≦4、pは0<p≦1、zは0<z≦1であり(pとzが共に1の場合を除く)、B又はA若しくはB及びAは、それぞれ、Ag、Li、ランタノイド、Ti、Mo、W、Zr、V、Crから選ばれた1種又は2種以上の元素を示す。
  2. 元素組成式(Na1−P)(Co1−Z−qCu)xOy で表わされる物質からなることを特徴とする熱電変換材料。ただし式中、xは1≦x≦2、yは2≦y≦4、pは0<p≦1であり、z及びqは、0<z<1、0<q<1、z≦1−qであり(pが1で且つzが1−qの場合を除く)、B又はA若しくはB及びAは、それぞれ、Ag、Li、ランタノイド、Ti、Mo、W、Zr、V、Crから選ばれた1種又は2種以上の元素を示す。
  3. 元素組成式(Na1−p)CoxOyで表わされる物質からなることを特徴とする熱電変換材料。ただし式中、xは1≦x≦2、yは2≦y≦4、pは0<p<1であり、BはAg、Li、ランタノイドから選ばれる1種又は2種以上の元素を示す。
  4. 元素組成式(Na1−P)(CoCu1−Z)xOyで表わされる物質からなることを特徴とする熱電変換材料。ただし式中、xは1≦x≦2、yは2≦y≦4、pは0<p<1、zは0<z<1であり、BはAg、Li、ランタノイドから選ばれる1種又は2種以上の元素である。
  5. 請求項1〜4の何れか1項に記載の熱電変換材料を用いてなることを特徴とする熱電変換素子。
  6. 請求項1〜4の何れか1項に記載のp型熱電変換材料とn型の複合酸化物からなる熱電変換材料を用いてなることを特徴とする熱電変換素子。
  7. 請求項1〜4の何れか1項に記載のp型熱電変換材料と元素組成式NdCuOで表わされる複合酸化物に対してZrをドープしてなるn型熱電変換材料を用いてなることを特徴とする熱電変換素子。
  8. 請求項1〜4の何れか1項に記載のp型熱電変換材料と元素組成式NdCuOで表わされる複合酸化物に対してPrをドープしてなるn型熱電変換材料を用いてなることを特徴とする熱電変換素子。
  9. 請求項1〜4の何れか1項に記載のp型熱電変換材料と元素組成式NdCuOで表わされる複合酸化物、またはこれに対してCeをドープしてなる複合酸化物からなるn型熱電変換材料を用いてなることを特徴とする熱電変換素子。
  10. 請求項1〜4の何れか1項に記載のp型熱電変換材料と一般式Ba1−XSrPbO(0≦x≦0.6)で表わされる複合酸化物からなるn型熱電変換材料を用いてなることを特徴とする熱電変換素子。
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