JP2001348639A - 水素吸蔵合金と当該合金を用いた水素吸蔵・放出システム - Google Patents

水素吸蔵合金と当該合金を用いた水素吸蔵・放出システム

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Abstract

(57)【要約】 【課題】エネルギー効率および装置コストの点で優れた
水素吸蔵・放出システムを構築する為、水素の吸蔵量を
保持しつつ、吸蔵開始温度を低下させた水素吸蔵合金を
調製する。 【解決手段】従来のMg2Ni合金のMgサイト及び/
またはNiサイトの一部を、α2βで表される逆CaF2
構造の合金または化合物を形成する元素α、βで置換
し、一般式(Mg1-aαa1-y(Ni1-bβbyで表され
る合金を調製し、水素の吸蔵量を保持しつつ、吸蔵開始
温度を20℃低下させた水素吸蔵合金を調製した。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は水素貯蔵、水素精
製、電池電極、熱利用システム等に適用可能な水素吸蔵
合金、並びにそれを用いた水素吸蔵・放出システムに関
する。
【0002】
【従来の技術】エネルギー問題や環境問題への有効な対
応手段として、水素の利用が有望視されている。そこで
容易かつ安全に水素を貯蔵、運搬する手段として、水素
吸蔵合金が注目されている。この水素吸蔵合金に要求さ
れる主な特性は、水素吸蔵量が多いこと、と適度な温度
で水素の吸蔵・放出が可能なことである。上記の特性を
満足すべく、希土類系、ラーベス相系、BCC固溶体
系、Mg2Ni系、等が研究されている。
【0003】各合金系の水素吸蔵量を比較すると、Mg
2Ni系が最も大きいが、反面、水素の吸蔵・放出の際
に200〜300℃の温度が必要でエネルギー効率や装
置コストの点で問題がある。そこで従来から、Mg2
i系の水素吸蔵量を維持したまま、吸蔵・放出の際の温
度を下げることが試みられてきた。
【0004】このような試みとして、たとえば、Niサ
イトを他の遷移金属で置換する方法がある(Int.
J.Hydorogen Energy、Vol18、
No.9、p705〜708、1983)。また水素化
物中のH原子とMg原子の結合エネルギーを減少させる
べく、Mgサイトをより電気陰性度の大きな元素に置換
する方法がある(特開平09−199122)。また他
の試みとして、添加剤を加えることで、水素吸蔵合金の
セル体積を変化させる方法もある(特開平09−256
098)。さらには添加剤を加え、結晶構造を塩化セシ
ウム構造やホウ化クロム構造に安定化させる方法も提案
されている(特開平11−269586)。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】しかし、いずれの方法
も、水素の吸蔵量と適度な温度での吸蔵・放出を両立さ
せるとの観点からすれば、いまだ満足すべき水準には達
していない。そこで、本発明は水素吸蔵量を維持したま
ま、水素吸蔵の際の温度を下げることが可能な水素吸蔵
合金と、当該合金を用いた水素吸蔵・放出システムの提
供を目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】第1の発明は、一般式
(Mg1-aαa1-y(Ni1-bβbyで表される合金を主
成分とし、α、βは一般式α2βで表される逆CaF2
造の合金または化合物を形成する元素であることを特徴
とする水素吸蔵合金である。
【0007】第2の発明は、a、b、y、の値はそれぞ
れ、0.01<a≦0.5、0.01<b≦0.5、
0.15≦y≦0.4であることを特徴とする第1の発
明に記載の水素吸蔵合金である。
【0008】第3の発明は、αがMg、βが14族の元
素から選ばれる少なくとも1種の元素であることを特徴
とする、第1または2の発明に記載の水素吸蔵合金であ
る。
【0009】第4の発明は、αがMg、βがSiである
ことを特徴とする、第3発明に記載の水素吸蔵合金であ
る。
【0010】第5の発明は、αがSi、βがNiである
ことを特徴とする、第1または2の発明に記載の水素吸
蔵合金である。
【0011】第6の発明は、αが1族の元素から選ばれ
る少なくとも1種の元素であり、βが16族の元素から
選ばれる少なくとも1種の元素であることを特徴とす
る、第1または2の発明に記載の水素吸蔵合金である。
【0012】第7の発明は、αがNa、βがSであるこ
とを特徴とする、第6の発明に記載の水素吸蔵合金であ
る。
【0013】第8の発明は、αがLi、βがSであるこ
とを特徴とする、第6の発明に記載の水素吸蔵合金であ
る。
【0014】第9の発明は、αがCu、βが16族の元
素から選ばれる少なくとも1種の元素であることを特徴
とする、第1または2の発明に記載の水素吸蔵合金の製
造方法である。
【0015】第10の発明は、αがCu、βがSである
ことを特徴とする、第9の発明に記載の水素吸蔵合金で
ある
【0016】第11の発明は、第1〜10のいずれかの
発明に記載の水素吸蔵合金を用いたことを特徴とする水
素の吸蔵・放出システムである。
【0017】上記第1〜11の発明を成すに当り、本発
明者はMg2Ni系の水素吸蔵合金において、水素の吸
蔵・放出の際に原子の拡散を伴う可逆的な構造変態を起
こすことに注目した。すなわち、当該合金系においては
水素の吸蔵時にはMg2NiH4という逆CaF2構造の
化合物を形成し、放出時すなわちMg2Niの状態では
CuAl2構造に類似の構造をとることが知られてい
る。
【0018】ここで、逆CaF2構造とは原子の位置関
係はフッ化カルシウム(CaF2)と同じで陽イオンと
陰イオンの位置がフッ化カルシウムとは逆になっている
結晶構造のことをいう。
【0019】水素の吸蔵時にはCuAl2類似構造から
逆CaF2構造へ、放出時にはその逆の構造変態が起こ
る。この構造変態にはエネルギーが必要なため、このこ
とが水素の吸蔵・放出時に高温度が必要な原因となって
いたのである。
【0020】そこで第1の発明は、水素放出時の、当該
合金サイトの一部をあらかじめ逆CaF2構造の合金ま
たは化合物に置換すれば、構造変態のエネルギーを減少
させ水素吸蔵開始の際の温度を下げる一方、十分な水素
吸蔵量を確保できることからなされたものである。
【0021】第2の発明は、逆CaF2構造をもつ化合
物α2βの元素αで水素吸蔵合金中のMgサイトの一部
を置換し、元素βでNiサイトの一部を置換する際、後
述の理由による好ましい置換割合を限定したものであ
る。
【0022】第3の発明は、上記第1または第2の発明
において、主に作業性の観点から元素αをMgとした場
合、元素βとしてはMgと逆CaF2構造を形成する合
金または化合物の多い14族元素が好ましいことからな
されたものである。
【0023】第4の発明は、上記第3の発明において1
4族元素の中でもSiを選択すると、水素吸蔵時の格子
定数が、Mg2Niと近く置換しやすい点、及びSiが
軽元素であるため水素吸蔵合金の重量当りの水素吸蔵量
を増やす点で好ましいことからなされたものである。
【0024】第5の発明は、上記第1または第2の発明
において、主に作業性の観点から元素βをNiとした場
合、元素αとしてはNiと逆CaF2構造を形成するS
iが好ましいことからなされたものである。またSiは
軽元素であるため水素吸蔵合金の重量当りの水素吸蔵量
を増やす点においても好ましい。
【0025】第6の発明は、上記第1または第2の発明
において、1族元素が、Mgより価電子数が1だけ小さ
く化学的性質が類似していることから、Mgサイトの置
換元素αとして好ましいことからなされたものである。
この時、Niサイトの置換元素βとしては、1族元素と
逆CaF2構造を形成する合金または化合物の多い16
族元素が好ましい。
【0026】第7の発明は、上記第6の発明において水
素吸蔵時のMg2Niと格子定数の近い逆CaF2構造を
形成するNa2Sが好ましいことから、元素αとしてN
a、元素βとしてSが好ましいことからなされたもので
ある。
【0027】第8の発明は、上記第6の発明において重
量当りの水素吸蔵量を増やすために元素αとしてLiが
好ましいが、この時、元素βとしてSが好ましいことか
らなされたものである。
【0028】第9の発明は、上記第1または第2の発明
において、Mgサイトの置換元素αとして原料コストの
安価なCuを選択した場合、Niサイトの置換元素βと
してはCuと逆CaF2構造を形成する合金または化合
物の多い16族元素が好ましいことからなされたもので
ある。
【0029】第10の発明は、上記第9の発明において
重量当りの水素吸蔵量を増やすために、元素βとしてS
が好ましいことからなされたものである。
【0030】第11の発明は下記のことからなされたも
のである。上記第1〜10のいずれかの発明に記載の水
素吸蔵合金を用いたことで、例えば後述の実施例では水
素の吸蔵開始温度が約20℃低下した。従って、該水素
吸蔵合金を用いれば、エネルギー効率が高くかつ装置コ
ストの削減が可能な水素の吸蔵・放出システムが構築で
きる。
【0031】
【発明の実施の形態】図1は本発明の実施の形態にかか
るMg2Ni系水素吸蔵合金を溶解鋳造法にて製造する
際に用いる真空溶解炉の構成の一例を示す縦部分断面、
図2は本発明の実施の形態にかかるMg2Ni系水素吸
蔵合金を製造する際に用いる真空溶解炉の構成の一例を
示す横部分断面である。当該合金の製造方法としては溶
解鋳造法の外、アーク溶解法、メルトスピニング法、ア
トマイズ法、メカニカルアロイング法等、が可能であ
る。以下においては、図1、図2を参照にしながら実施
の形態にかかるMg2Ni系水素吸蔵合金の溶解鋳造法
による製造方法を説明する。
【0032】図1、図2に示されるように、真空溶解炉
は、真空チャンバー1と、この真空チャンバー1内に設
けられた高周波加熱方式のるつぼ2、鋳型3及び原料投
入器41、42、43等で構成されている。
【0033】真空チャンバー1は、内部を真空排気する
ための真空ポンプ11を有し、また、るつぼ2および原
料投入器41、42、43に原料を供給したり、鋳型3
から鋳込まれた水素吸蔵合金を取り出したりするための
開閉自在の扉12を有している。さらに、Ar等の不活
性ガスを導入できる不活性ガス導入パイプ13及び不活
性ガスフロー雰囲気を形成するための気体排出パイプ1
4を有している。なお、これらパイプには、パイプの導
通を開閉できるコック13a,14aがそれぞれ設けら
れている。
【0034】るつぼ2は、原料を反応させる加熱炉であ
り、セラミックスの焼結体等で構成された上部に開口部
を有する容器であって、外周部には高周波加熱するため
の誘導コイル21が設けられている。また、図2に示さ
れるように、るつぼ2は、支持腕22に取りつけられて
いる。支持腕22は真空チャンバー1の壁部を気密を維
持しながら貫通して回転自在に取付られている。これに
より、外部から支持腕22を回転操作することにより、
るつぼ2を回転して内部の溶解物を鋳型3に注ぎ込むこ
とができるようになっている。
【0035】さらに図1に示されるように、るつぼ2の
上部開口部は、必要に応じて蓋体23によって密閉でき
るようになっている。この蓋体23は、支持棒23aに
取付られ、この支持棒23aは、真空チャンバー1の壁
部を気密を維持しながら貫通しつつ上下動自在に取付ら
れている。これにより、外部から支持棒23を上下操作
することにより、蓋体23を上下させてるつぼ2の上部
開口部を密閉し、また密閉を解除できるようになってい
る。
【0036】鋳型3は、るつぼ2で溶解反応した合金を
鋳込んで所定の形状の水素吸蔵合金に形成するものであ
り、Cu、C(カーボン)等で構成され、鋳型台31上
に設置される。
【0037】原料投入器41、42及び43は、るつぼ
2の加熱中、任意の時点で原料を投入するための装置
で、加熱開始後に投入する原料を装填しておく。これに
は外部から開閉できるコック41a、42a(図示され
ていない)、43a(図示されていない)が付いてお
り、蓋体23を上げてこのコックを開くことにより、加
熱中の任意の時点でるつぼ2内に原料を投入できるよう
になっている。なお、図示しないが真空チャンバー1に
は、内部を観察しながら、るつぼ2や原料投入器41、
42、43等を操作できるように、観察窓が設けられて
いる。
【0038】上述の真空溶解炉用いて次のようにして製
造する。 (1)原料の準備 るつぼ2にMg,Ni、並びに、添加元素α、βを所定
の仕込み量に合わせて装填する。尚、この際、α、βは
それぞれの単体、またはα2βのような化合物の形態の
どちらでも良い。また蒸気圧が高く溶解中に飛散する恐
れのある原料は原料投入器に装填する。上記原料の純度
は好ましくは3N以上で、形状はインゴット、ショッ
ト、粉末のいずれでも良い。
【0039】Niサイト(Ni+β)の仕込み量yは、
合金になったときに、予定した組成になるような量であ
り、原料全体に対し組成比で0.15≦y≦0.4とす
る。これは組成比が0.15以下の場合、合金中の逆C
aF2相の割合が減少して水素吸蔵温度低下の効果が少
なくなること、及び元素αがMg又は1族元素の場合、
鋳塊に粘りがでて粉砕性が著しく低下するため作業性の
点で好ましくない。一方0.4を超えた場合も合金中の
逆CaF2相の割合が減少して水素吸蔵温度低下の効果
が少なくなり、また、元素βがNi及び14族の場合、
原料の溶解のため高温が必要となり、製造コスト、作業
性の点で好ましくない。
【0040】また、Niサイト(Ni+β)の置換割合
bは0.01≦b≦0.5とする。0.01より少ない
と結晶中に十分な量の逆CaF2相が生成せず、0.5
より大きいと結晶中の水素吸蔵サイトの数が減少し水素
吸蔵量が減少するため好ましくない。
【0041】Mgサイト(Mg+α)の仕込み量1−y
も、合金になったときに、予定した組成になるような量
とする。また、Mgサイト(Mg+α)の置換割合aは
0.01≦a≦0.5とする。0.01より少ないと結
晶中に十分な量の逆CaF2相が生成せず、0.5より
大きいと結晶中の水素吸蔵サイトの数が減少し水素吸蔵
量が減少するため好ましくない。
【0042】(2)真空溶解炉内の雰囲気の置換 上記原料の装填が終了したら、真空チャンバー1の扉1
2を閉め、真空チャンバー1内部を真空ポンプ11によ
って真空度が50Pa以下になるまで真空排気する。次
に、コック13aを開き、パイプ13を通じてAr、H
e等の不活性ガスを真空チャンバー1内に導入する。真
空チャンバー1内が不活性ガスで満されて大気圧になっ
たら、コック14aを開き、真空チャンバー1内を不活
性ガスフロー雰囲気にする。ガスフロー量は、雰囲気中
の酸素ガス濃度が50ppm以下に保持できる流量とす
る。
【0043】(3)加熱反応 上記真空チャンバー1内の雰囲気置換を行なって不活性
ガスフロー雰囲気にしたら、誘導コイル21に高周波電
力を印加し、るつぼ2内の原料を加熱して所定の昇温速
度で設定温度まで昇温する。設定温度は、装填原料の溶
解温度とし、設定温度になったら保持時間は20分程度
かそれ以下で良い。
【0044】原料投入器を使用する場合は、るつぼ2を
装填原料の反応が十分進行する温度まで昇温した後、原
料投入器の原料をるつぼ2内に投入する。保持時間は2
0分程度かそれ以下で良い。
【0045】(4)鋳込み 上記所定の保持時間が過ぎたら、支持腕22を操作して
るつぼ2を回転・傾斜させ、るつぼ2内の溶解物を鋳型
3に流し込み、鋳造を行なう。鋳塊の温度が100℃以
下になったのを確認してガスフローを終了し、扉12を
開け、鋳型3内の合金を取り出す。
【0046】上述の方法で得られた水素吸蔵合金の鋳塊
を乳鉢を用いて250μm以下になるまで粉砕し、水素
吸蔵合金試料とした。図3は本発明の実施の形態にかか
る水素吸蔵合金の水素の吸蔵特性を測定する装置であ
る。以下、この図3を参照しながら当該試料の水素吸蔵
特性およびその測定方法について説明する。
【0047】試料セル51内に試料を装填後、室温のま
まバルブ55とバルブ56を開き、真空ポンプ57を用
いて圧力ゲージ58で確認しながら試料セル51内を1
00Pa以下迄真空排気する。次にバルブ56を閉じ、
バルブ54を開いて水素ボンベ53より試料セル51内
へ水素ガスを導入し、圧力ゲージ58で確認しながら試
料セル内の水素圧を2MPa程度とし、バルブ54を閉
じる。この状態で試料セル51をヒーター52を用いて
2℃/minの昇温速度で加熱し、その間の試料セル5
1内の温度と圧力の変化を測定し、圧力が低下し始める
温度を水素吸蔵開始温度とした。そして測定系内の、水
素ガスの体積と圧力の低下量から該試料の水素吸蔵量を
算出した。
【0048】その結果、上記試料においては、従来のM
2Ni合金の水素吸蔵開始より低い温度から水素の圧
力が低下し始め、水素の吸蔵が始まっていることが確認
された。一方、水素吸蔵量は従来のMg2Ni合金と比
較して、ほぼ同等であることが確認された。
【0049】
【実施例】以下、実施例に基づいて、本発明を更に詳細
に説明する。
【0050】(実施例)純度3NのMgショット、純度
3NのNiショットおよび純度2NのNa2S粉末を準
備した。仕込み組成において(Mg0.9Na0.1
0.67(Ni0.90.10.33、総量として200gとなる
ように各元素を秤量後、高周波加熱式ルツボ2内にM
g、Ni、原料投入器41内にNa2Sをそれぞれ装填
した。
【0051】真空チャンバー1を密閉後、真空度50P
a迄排気し、Arガス2l/minのガスフロー雰囲気
としたら、Niの加熱を開始する。その際、昇温速度は
22℃/min設定到達温度は850℃とした。るつぼ
2の温度が850℃となったら、蓋体23を上げ原料投
入器41内のNa2Sをるつぼ2内に投入する。その
後、蓋体23を閉めて5分間保持した後、溶解物を鋳型
3に流し込み鋳造をおこなって鋳塊を得、これを250
μm迄粉砕して(Mg0.9Na0.12(Ni0.90.1
試料とした。
【0052】この試料の水素吸蔵特性を測定したところ
図4に示す結果を得た。ここで、図4の横軸は時間(s
ec)で、左端は0sec、右端は9000secとし
た。縦軸は測定系内の水素圧(MPa)と測定系内の温
度(℃)で、水素圧の下端は0MPa、上端は2.5M
Pa、温度の下端は0℃、上端は350℃とした。
【0053】測定系内の水素圧曲線(図中、実線で表示
した。)が低下し始める温度を水素吸蔵開始温度とし
た。但し、水素圧はなだらかに低下し始めるので、その
前後の水素圧曲線の接線(図中、破線で表示した。)を
引き、これらの交点を水素圧が低下し始める点すなわち
水素吸蔵が開始される点とした。そして、その時間の温
度を温度曲線(図中、一点鎖線で表示した。)から読み
とって(図中、二点鎖線で表示した。)水素吸蔵開始温
度とした。また、水素吸蔵量は測定系内の水素ガスの体
積と水素圧の低下量から、減少した測定系内の水素量を
計算し、合金重量当たり吸蔵された水素の重量%として
算出した。図4において水素吸蔵開始温度は155℃、
水素吸蔵量は2.3wt%であった。
【0054】(比較例)純度3NのMgショット、純度
3NのNiショットを準備した。仕込み組成においてM
0.67Ni0.33、総量として200gとなるように各元
素を秤量後、高周波加熱式ルツボ2内に装填した。
【0055】真空チャンバー1を密閉後、真空度50P
a迄排気し、Arガス2l/minのガスフロー雰囲気
としたら、るつぼ2の加熱を開始する。その際、昇温速
度は15℃/min設定到達温度は900℃とした。る
つぼ2の温度が900℃となったら、5分間保持した
後、溶解物を鋳型3に流し込み鋳造をおこなって鋳塊を
得、これを250μm迄粉砕してMg2Ni試料とし
た。
【0056】この試料の水素吸蔵特性を測定したところ
図5に示す結果を得た。すなわち水素吸蔵開始温度は1
75℃、水素吸蔵量は2.3wt%であった。但し、図
5の縦軸、横軸、水素圧、温度、接線、温度の読み取り
は図4と同様である。
【0057】
【発明の効果】以上のように本発明のMg2Ni系水素
吸蔵合金は、高い水素吸蔵特性を保持したまま、吸蔵開
始温度を約20℃低下させることができた。この結果、
本発明の水素吸蔵合金を用いることで従来品を使用した
場合に比べ、エネルギー効率および装置コストの点では
るかに優れた水素吸蔵・放出システムを構築することが
可能になった。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態にかかる水素吸蔵合金を製
造する際に用いる真空溶解炉の一例の構成を示す縦部分
断面である。
【図2】本発明の実施の形態にかかる水素吸蔵合金を製
造する際に用いる真空溶解炉の一例の構成を示す横部分
断面である。
【図3】本発明の実施の形態にかかる水素吸蔵合金の水
素吸蔵特性を測定する際に用いる測定装置の構成を示す
概略図である。
【図4】本発明における水素吸蔵合金の実施例(Mg
0.9Na0.12(Ni0.90.1)の水素吸蔵特性測定結
果のグラフを示す図である。
【図5】本発明における水素吸蔵合金の比較例Mg2
iの水素吸蔵特性測定結果のグラフを示す図である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き Fターム(参考) 3E072 EA10 4G040 AA44 AA46 5H027 AA02 BA14 5H050 AA00 BA14 CB16 HA02

Claims (11)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】一般式(Mg1-aαa1-y(Ni1-bβby
    で表される合金を主成分とし、α、βは一般式α2βで
    表される逆CaF2構造の合金または化合物を形成する
    元素であることを特徴とする水素吸蔵合金。
  2. 【請求項2】a、b、y、の値はそれぞれ、0.01<
    a≦0.5、0.01<b≦0.5、0.15≦y≦
    0.4であることを特徴とする請求項1に記載の水素吸
    蔵合金。
  3. 【請求項3】αがMg、βが14族の元素から選ばれる
    少なくとも1種の元素であることを特徴とする、請求項
    1または2に記載の水素吸蔵合金。
  4. 【請求項4】αがMg、βがSiであることを特徴とす
    る、請求項3に記載の水素吸蔵合金。
  5. 【請求項5】αがSi、βがNiであることを特徴とす
    る、請求項1または2に記載の水素吸蔵合金。
  6. 【請求項6】αが1族の元素から選ばれる少なくとも1
    種の元素であり、βが16族の元素から選ばれる少なく
    とも1種の元素であることを特徴とする、請求項1また
    は2に記載の水素吸蔵合金。
  7. 【請求項7】αがNa、βがSであることを特徴とす
    る、請求項6に記載の水素吸蔵合金。
  8. 【請求項8】αがLi、βがSであることを特徴とす
    る、請求項6に記載の水素吸蔵合金。
  9. 【請求項9】αがCu、βが16族の元素から選ばれる
    少なくとも1種の元素であることを特徴とする、請求項
    1または2に記載の水素吸蔵合金。
  10. 【請求項10】αがCu、βがSであることを特徴とす
    る、請求項9に記載の水素吸蔵合金。
  11. 【請求項11】請求項1〜10のいずれかに記載の水素
    吸蔵合金を用いたことを特徴とする水素の吸蔵・放出シ
    ステム。
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