WO2019111386A1

WO2019111386A1 - プレス金型

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Publication number: WO2019111386A1
Application number: PCT/JP2017/044050
Authority: WO
Inventors: 数則大岡; 敏光麻生; 吉田　博司; 田中　康治; 隆司宮城; 淳一郎鈴木; 山本　忍
Original assignee: 日本製鉄株式会社
Priority date: 2017-12-07
Filing date: 2017-12-07
Publication date: 2019-06-13
Also published as: CN111448009A; EP3722018A1; US20210178446A1; KR20200090898A; WO2019112022A1; KR102335028B1; US11400505B2; CN111448009B; EP3722018A4; JPWO2019112022A1; CA3084758A1; MX2020005893A; JP6597941B1

Abstract

プレス部品２８を、高いサイクル速度で、しかも設備のコンパクト化を図りながら、離型時に損傷することなく金型から取り出して、製造できるプレス金型２０は、ブランクホルダ２４に配置され、かつ揺れ動くことができるディスタンスバー２９と、パンチ２３またはブランクホルダ２４に取り付けられる押し込み装置３０を備える。ディスタンスバー２９は、第１の工程では、原位置にあって、かつパッドから離れ、第２の工程では、搖れ動き、または、回転しながら動き、第３の工程および第４の工程では、パッド２５とブランクホルダ２４の間のホールド位置に位置することにより、パッド２５とブランクホルダ２４の間のプレス方向距離を成形高さ以上に保ち、第５の工程では、搖れ動き、または、回転しながら動いて原位置に戻る。

Description

プレス金型

　本発明は、プレス金型に関する。

　例えばフロントサイドメンバ，クロスメンバ，Ａピラー，Ｂピラー等が自動車車体の骨格を構成する構造部材として使われる。素材金属板であるブランクをプレス成形して作られるプレス部品がこれらの構造部材として用いられる。

　これらの構造部材は複雑な形状を有する。このため、前記プレス部品は絞り成形によりプレス成形される。絞り成形には、一般的には、ダイからなる上金型と、パンチとブランクホルダからなる下金型を備えるプレス金型が用いられる。

　絞り成形は、ブランクの端部もしくは外縁部をブランクホルダによりダイに押し付けながら、ブランクの中央部をパンチにより押し込むことにより、所望の形状のプレス部品に成形する。

　絞り成形の過程では、流入抵抗がブランクホルダの押し付け力によりブランクの端部もしくは外縁部に発生する。このため、ブランクに張力を付加した状態でブランクを伸ばしながら成形でき、成形時の材料余りによるしわの発生が抑制される。

　近年、車体軽量化によるＣＯ_２排出量の削減や衝突安全性の向上を図るため、５９０ＭＰａ以上あるいは９８０ＭＰａ以上の引張強度を有する高張力鋼板が、前記構造部材をなすプレス部品のブランクとして用いられる。

　しかし、ブランクの成形性はブランクの高強度化に伴って低下する。そのため、高強度材からなるブランクに絞り成形を行う場合、ブランクホルダの押し付け力による流入抵抗が大きいと、割れがブランクに発生する。一方、割れを抑制するためにブランクホルダの押し付け力を下げること等により流入抵抗を小さくすると、ブランクを十分に伸ばすことができないため、材料余りによるしわがブランクに発生する。

　このように高強度材からなりかつ複雑な形状を有するプレス部品の成形中に、ブランクに十分な張力を与えられない場合には、ブランクにおけるしわが発生し易い個所をパッドによりパンチに押し付けて成形することにより、しわの発生を抑制できる。

　例えば、本出願人は、特許文献１により、ダイ、パンチ、パッドおよびブランクホルダを備え、長手方向へ湾曲したハット断面部品を製造する装置を開示した。また、本出願人は、特許文献２により、ダイ、パンチ、パッドおよびブランクホルダを備え、Ｌ字状ハット断面形状を有するプレス部品を製造する装置を開示した。

　ダイ、パンチ、パッドおよびブランクホルダを備える製造装置では、パッドがダイに配置される。パンチおよびブランクホルダが、ダイおよびパッドに対向して配置される。パッド、ブランクホルダが、それぞれ、成形されるブランクに加圧される。このため、パッドおよびブランクホルダは、ブランクを反対方向から加圧した状態でプレス成形する。

　プレス成形後にプレス金型内のプレス部品をプレス金型から取り出すために、ダイおよびパッドとパンチおよびブランクホルダを離して離型する。しかし、プレス成形後にもパッドおよびブランクホルダがプレス部品を反対方向から加圧し続けているため、プレス成形品が離型時に潰れる。これを防ぐため、ダイおよびパッドとパンチおよびブランクホルダを離す際には、パッドおよびブランクホルダ間の型締め方向距離を成形高さ以上に維持する必要がある。

　例えば、特許文献１の製造装置は加圧制限装置を備える。加圧制限装置は、成形されたハット断面を有するプレス部品が離型時にパッドおよびブランクホルダの間で同時に加圧されることを、制限する。

　加圧制限装置はホルダ側制限部または制御部を含む。ホルダ側制限部は、ブランクホルダに装着されてブランクホルダの型締め方向（プレス方向）への動きを機械的に制限する。制御部は、ブランクホルダ加圧装置のストロークおよび加圧力の少なくともいずれかを制御する。

　加圧制限装置を用いることにより、プレス部品を、離型時の損傷を防止して金型から取り出すことができる。

　特許文献２では、離型時にブランクホルダを、パンチに設けられたピンを用いるロック機構により、パンチに固定することによって、離型時のプレス部品の損傷を防止する。

国際公開第２０１５／０４６０２３号パンフレット国際公開第２０１４／１０６９３２号パンフレット

　特許文献１，２により開示された製造装置では、ホルダ側制限部や制御部、さらにはロック機構の動作に時間を要する。このため、プレス工程のサイクル速度が低下し、プレス部品の生産性が低下する。

　本発明者らの検討結果によれば、特許文献１，２により開示された製造装置のプレスのサイクル速度は、速くても１分間に１５回（１５ＳＰＭ）程度である。さらに、これらの製造装置は、ホルダ側制限部や制御部、ロック機構を設ける必要があるため、大型化し、またその制御装置も必要になる。さらに、設備費が上昇する。

　本発明は、プレス素材の第１の部分をパンチおよびダイにより加圧され、かつプレス素材の第２の部分をブランクホルダおよびパッドにより加圧された状態でプレス成形するためのプレス金型を対象とする。

　本発明の目的は、プレス素材の第１の部分をパンチおよびダイにより加圧され、かつプレス素材の第２の部分をブランクホルダおよびパッドにより加圧された状態でプレス成形されるプレス部品を、高いサイクル速度でプレス成形し、しかも設備のコンパクト化を図りながら、離型時に損傷することなく金型から取り出すことができるプレス金型を提供することである。

　本発明は以下に列記の通りである。
（１）パンチとブランクホルダを備える第１の金型と、パッドとダイを備える第２の金型を備えるプレス金型であって、
　前記第１の金型および前記第２の金型は対向して配置され、
　前記プレス金型を用いるプレス成形工程は、
　前記第１の金型と前記第２の金型の間にプレス素材を配置する第１の工程と、
　前記第１の金型、前記第２の金型もしくは前記第１の金型および前記第２の金型の両方は、前記第１の金型および前記第２の金型が相対的に接近するプレス方向へ動くことにより、前記第１の金型および前記第２の金型は前記プレス素材に成形を行い、
　前記成形の過程の一部もしくは全部において、
　前記パッドは、前記第１の金型から前記第２の金型へ向かう方向へ押されて前記パンチとともに前記プレス素材の第１の部分を加圧しながら挟んで保持するとともに、前記ブランクホルダは、前記第２の金型から前記第１の金型へ向かう方向へ押されて前記ダイとともに前記プレス素材の前記第１の部分とは異なる第２の部分を加圧しながら挟んで保持する第２の工程と、
　前記プレス素材を所定の成形高さを有するプレス部品にする第３の工程と、
　前記第２の金型と前記ブランクホルダが前記成形高さと同じプレス方向距離まで移動する第４の工程と、
　前記第１の金型と前記第２の金型が前記プレス部品を取り出すためにさらに離れる第５の工程を含み、
　前記ブランクホルダに配置されるディスタンスバーと、前記パンチまたは前記ブランクホルダに配置される押し込み装置を備え、
　当該ディスタンスバーは、
　揺れ動くこと（揺動）、または、回転しながら動くこと（回動）ができ、
　前記第１の工程では、原位置にあって、かつ前記パッドから離れ、
　前記第２の工程では、搖れ動き、または、回転しながら動き、
　前記第３の工程および第４の工程では、前記パッドと前記ブランクホルダの間のホールド位置に位置することにより、前記パッドと前記ブランクホルダの間のプレス方向距離を前記所定の成形高さ以上に保ち、
　前記第５の工程では、搖れ動く、または、回転しながら動いて前記原位置に戻り、
　前記押し込み装置は、
　前記第２の工程では、前記ディスタンスバーを搖れ動かし、または、回転しながら動かし、
　前記第３の工程では、前記ディスタンスバーを前記ホールド位置に位置させる、
プレス金型。
　本明細書において「成形」とは、パンチ、ダイ、ブランクホルダおよびパッドを用いてブランクを変形させることを意味する。

（２）前記押し込み装置は、バネを内蔵する押し込み棒である、（１）項に記載のプレス金型。

（３）さらに、前記ディスタンスバーを、前記ホールド位置から前記原位置に戻す戻し装置を有する、（１）または（２）項に記載のプレス金型。

（４）前記パッドに取り付けられ、該パッドと連動して動くキャッチャーを備え、
　当該ディスタンスバーは、
　前記第３の工程および第４の工程では、前記キャッチャーと前記ブランクホルダの間のホールド位置に位置することにより、前記パッドと前記ブランクホルダの間のプレス方向距離を前記成形高さ以上に保つ、（１）～（３）項のいずれかに記載のプレス金型。

（５）さらに、ストッパ装置を備え、該ストッパ装置は、
　前記第３の工程および前記第４の工程において、前記ディスタンスバーが搖れ動くこと、または、回転しながら動くことを防止する、（１）～（４）項のいずれかに記載のプレス金型。

　本発明によれば、本発明が対象とする上述したプレス部品を、高いサイクル速度で、しかも設備のコンパクト化を図りながら、離型時に損傷することなく、金型から取り出して製造できる。

図１は、本発明により製造されるプレス部品を例示する説明図である。図２は、本発明に係るプレス金型の動作を示す説明図である。図３は、本発明に係るプレス金型の動作を示す説明図である。図４は、本発明に係るプレス金型の動作を示す説明図である。図５は、本発明に係るプレス金型の動作を示す説明図である。図６は、本発明に係るプレス金型の動作を示す説明図である。図７は、本発明に係るプレス金型の動作を示す説明図である。図８は、本発明に係る他のプレス金型の動作を示す説明図である。図９は、本発明に係る他のプレス金型の動作を示す説明図である。図１０は、本発明に係る他のプレス金型の動作を示す説明図である。図１１は、本発明に係る他のプレス金型の動作を示す説明図である。図１２は、本発明に係る他のプレス金型の動作を示す説明図である。図１３は、本発明に係る他のプレス金型の動作を示す説明図である。図１４は、本発明に係る他のプレス金型を示す斜視図である。図１５は、ドーナッツ形状部品を示す説明図である。図１６は、円筒部品を示す説明図である。図１７は、球状部品を示す説明図である。図１８は、リング形状部品を示す説明図である。図１９は、リング形状部品を示す説明図である。図２０は、リング形状部品を示す説明図である。図２１は、リング形状部品を示す説明図である。図２２は、Ｂピラーを示す説明図である。図２３は、Ａピラーロアーを示す説明図である。図２４は、フロントサイドメンバを示す説明図である。図２５は、ルーフレールを示す説明図である。

　本発明を、添付図面を参照しながら説明する。
　本発明は、プレス部品の形状やプレス工法、さらにはブランクの材質によらずに適用できる。以降の説明では、高強度材からなるブランクを成形素材とし、かつ成形時のしわの発生を抑制することが難しいプレス部品を例にとる。

１．本発明により製造されるプレス部品１０
　図１は、本発明により製造されるプレス部品１０の一例を示す説明図である。

　プレス部品１０はハット断面部品である。ハット断面は、天板１１、二つの凸稜線１４ａ，１４ｂ、二つの縦壁１２ａ，１２ｂ、二つの凹稜線１５ａ，１５ｂおよび二つのフランジ１３ａ，１３ｂにより構成される。

　図１に示すように、プレス部品１０は、天板１１に平行な側面視で、縦壁１２ａ，１２ｂの高さ方向へ湾曲する湾曲部１６，１７を有する。

　図１に示すように長手方向へ湾曲したプレス部品１０は、一般的に、ダイを有する上金型と、パンチおよびブランクホルダを有する下金型を備える金型により、絞り成形によりプレス成形される。しかし、素材であるブランクが高強度材、例えば引張強度が５９０ＭＰａ以上の鋼板からなる場合、成形の過程で天板１１の湾曲部１７における凹形状部で材料が余り、しわが発生する。

２．本発明に係るプレス金型２０
　図２～図７は、プレス金型２０の動作を経時的に示す説明図である。ブランクの符号２７は、図１に付し、図３～７では省略する。

　プレス金型２０は第１の金型２１および第２の金型２２を備える。第１の金型２１および第２の金型２２は対向して配置される。第１の金型は、パンチ２３とブランクホルダ２４を備える。

　パンチ２３は、プレス部品１０の外面形状に一致する外面形状を有する。ブランクホルダ２４は、プレス機のダイクッション装置により、第１の金型２１から第２の金型２２に向かう方向へ加圧される。ダイクッション装置を用いずに、パンチ２３に内蔵されるガスクッションやコイルバネなどにより加圧してもよい。

　第２の金型２２は、パッド２５とダイ２６を備える。ダイ２６は、プレス部品１０の外面形状に一致する内面形状を有する。パッド２５はガススプリング３５やバネ（図示しない）により第２の金型２２から第１の金型２１へ向かう方向へ加圧される。

　プレス金型２０を用いるプレス成形工程は、以下に列記の第１～５の工程を含む。

（第１の工程）
　図２は、成形前の初期の状態を示す。図２に示すように、第１の金型２１と第２の金型２２の間にブランク（プレス素材）２７を配置する。第１の金型２１と第２の金型２２はプレス方向（上下方向）に離れた状態にある。ブランク２７は、第１の金型２１の上面に搭載され、後述するディスタンスバー２９は原位置に位置する。

（第２の工程）
　図３，４に示すように、第１の金型２１、第２の金型２２、もしくは第１の金型２１および第２の金型２２の両方は、第１の金型２１および第２の金型２２が相対的に接近する型締め方向（プレス方向）へ動く。これにより、第１の金型２１および第２の金型２２はブランク２７に成形を行う。

　図３は、第１の金型２１と第２の金型２２が相対的に接近するプレス方向へ動き、ブランク２７が第１の金型２１と第２の金型２２に挟まれた状態（ブランクホールド時）を示す。この時、ディスタンスバー２９はまだ原位置にある。

　図４は、成形の途中の状態を示す。さらに、第１の金型２１と第２の金型２２が相対的に接近するプレス方向へ動くと、パッド２５とブランクホルダ２４がそれぞれの加圧方向と反対の方向へ押し込まれ、ブランク２７に対する成形が進行する。

　このように、図３，４により示す第２の工程では、成形の過程の一部もしくは全部において、パッド２５は、第１の金型２１から第２の金型２２へ向かう方向へ押され、これにより、パンチ２３とともにブランク２７の第１の部分２７－１を高い加圧力で加圧しながら挟んで保持する。

　さらに、第２の工程では、前記成形の過程の一部もしくは全部において、ブランクホルダ２４は、第２の金型２２から第１の金型２１へ向かう方向へ押され、これにより、ダイ２６とともにブランク２７の第１の部分２７－１とは異なる第２の部分２７－２を加圧しながら挟んで保持する。

（第３の工程）
　図５に示すように、ブランク２７を所定の成形高さ（ブランク２７に対する成形が開始された図３に示す時から図４に示す成形下死点に到達した時までの間にダイ２６がプレス方向へ移動した長さ）を有するプレス部品２８に成形する。

（第４の工程）
　第１の金型２１と第２の金型２２がプレス方向について離れ始め、図６に示すように、第２の金型２２とブランクホルダ２４が前記成形高さと同じプレス方向距離まで移動する。

（第５の工程）
　図７に示すように、第１の金型２１と第２の金型２２がプレス部品２８を取り出すためにさらに離れる。

　プレス金型２０は、ディスタンスバー２９と、押し込み装置３０を備える。図２～７では、ディスタンスバー２９および押し込み装置３０は、プレス金型２０にそれぞれ２本設けられているが、これに限定されるものではなく、１本または３本以上設けられていてもよい。

　ディスタンスバー２９は、ブランクホルダ２４に配置される。押し込み装置３０は、パンチ２３またはブランクホルダ２４に配置される。

　ディスタンスバー２９は、ブランクホルダ２４上で、揺れ動くこと（揺動）、または、回転しながら動くこと（回動）ができる。

　ディスタンスバー２９は、前記第１～５の工程で以下に列記のように動作する。
（第１の工程）
　原位置（図２に示す位置）にあって、かつパッド２５から離れて位置する。

（第２の工程）
　図３、４に示すように、搖れ動き、または、回転しながら動く。しかし、パッド２５とブランクホルダ２４の間に、ディスタンスバー２９が進入できる間隔がない。このため、ディタンスバー２９は、パッド２５に接触し、ホールド位置に進入することができない。

（第３の工程）
　図５は、第１の金型２１と第２の金型２２がストロークエンドの成形完了位置（成形下死点）まで動き、ディスタンスバー２９がホールド位置に進入した状態を示す。

　すなわち、さらに成形が進み、第１の金型２１と第２の金型２２が成形下死点まで動くと、パッド２５とブランクホルダ２４は十分に押し込まれて、ブランク２７の成形は完了する。

　この時、パッド２５とブランクホルダ２５は十分に押し込まれてパッド２５とブランクホルダ２４の間にディスタンスバー２９が進入できる間隔が生じる。このため、ディスタンスバー２９は、押し込み装置３０が発生する押し込み力により、ホールド位置に位置するように押し込まれる。

　ディスタンスバー２９は、パッド２５とブランクホルダ２４の間のホールド位置（図５，６に示す位置）に位置することにより、パッド２５とブランクホルダ２４の間のプレス方向距離を前記成形高さ以上に保つ。
（第４の工程）

　その後、第１の金型２１と第２の金型２２が離れる方向へ動き、パンチ２３とダイ２６が離れていく。

　この時、パッド２５とブランクホルダ２４はそれぞれの加圧力がプレス部品２８を潰す方向へ作用する。しかし、パッド２５とブランクホルダ２４の間のホールド位置にディスタンスバー２９が存在する。このため、パッド２５およびブランクホルダ２４それぞれの加圧力をディタンスバー２９が負担する。これにより、パッド２５とブランクホルダ２４の間隔を一定に保ち、プレス部品２８が潰れることを防止する。

　図６は、第１の金型２１と第２の金型２２が離れ、パッド２５とブランクホルダ２４がストロークエンドまで伸び切った状態を示す。

　図６に示すように、パッド２５とブランクホルダ２４がストロークエンドまで伸び切り、パッド２５とブランクホルダ２４の加圧力がなくなるまでディタンスバー２９がホールド位置に位置し、パッド２５とブランクホルダ２４の間隔を一定に保つ。

（第５の工程）
　図６に示す状態から第１の金型２１と第２の金型２２がさらに離れる方向へ動くと、パッド２５とブランクホルダ２４がストロークエンドまで伸び切っているため、プレス部品２８は、パッド２５とブランクホルダ２４により加圧されなくなる。

　第１の金型２１と第２の金型２２が十分に離れることにより、プレス部品２８をプレス金型２０の外に取り出すことが可能になる。この時、ディスタンスバー２９は原位置に戻り、プレス金型２０は図２に示す初期の状態に戻る。

　図７は、第１の金型２１と第２の金型２２が十分に離れ、ディスタンスバー２９が搖れ動く、または、回転しながら動いて原位置に戻った状態を示す。

　押し込み装置３０は、バネ（圧縮コイルバネ）を内蔵する押し込み棒であることがプレス金型２０のサイクル速度を高めるために望ましい。押し込み装置３０として、引張バネ、捻りバネ、板バネ、ゴム、アキュームレータおよびシリンダの組み合わせ、またはガススプリング等を用いることもできる。

　押し込み装置３０は、前記第２の工程および第３の工程で以下に列記のように動作する。
（第２の工程）
　図４に示すように、ディスタンスバー２９を搖れ動かし、または、回転しながら動かす。この時、押し込み装置３０は、ディスタンスバー２９を揺り動かしてホールド位置に押し込む力を発生する。

（第３の工程）
　図５に示すように第１の金型２１と第２の金型２２がストロークエンドの成形完了位置（成形下死点）まで動き、ディスタンスバー２９が押し込み装置３０の押し込む力によりホールド位置に進入し、ディスタンスバー２９が、パッド２５がプレス部品２８の天板１１に与える荷重を、ホールド位置で負担できるようになる。

　ディスタンスバー２９が揺れ動くこと、あるいは、回転しながら移動することに要する時間は短い。このため、ディスタンスバー２９が、パッド２５がプレス部品２８の天板１１に与える荷重を、ホールド位置で負担できるようになるまでに必要な時間を短くすることができる。

　このため、プレス部品２８の製造のサイクルタイム（成形上死点から成形下死点を介して成形上死点に戻るまでに要する時間）を短くしてサイクル速度を高め、プレス部品２８の生産性を高めることができる。本発明によれば、１分間に３０回（３０ＳＰＭ）を超えるサイクル速度を得られる。

　さらに、製造装置２０は、コンパクトなディスタンスバー２９を用いるため、設備のコンパクト化を図ることもできる。

　このようにして、製造装置２０により、引張強度が例えば５９０～１６００ＭＰａの高強度材からなり、比較的複雑な形状を有するプレス部品１０を、高いサイクル速度で、しかも設備のコンパクト化を図りながら、離型時に損傷することなくプレス金型２０から取り出すことができる。

３．本発明に係る別のプレス金型２０－１
　図８～１３は、本発明に係る別のプレス金型２０－１の動作を経時的に示す説明図である。プレス金型２０－１は、プレス金型２０に戻し装置３１、キャッチャー３２およびストッパ装置３３をさらに設けたものである。なお、プレス金型２０には、戻し装置３１、キャッチャー３２およびストッパ装置３３から選ばれた１つ以上を設けることができる。

　図８～１３に示すプレス金型２０－１の構成および動作を説明する。ブランクの符号２７は、図８に付し、図９～１３では省略する。
　プレス金型２０－１は、戻し装置３１をさらに備えてもよい。プレス金型２０のように、戻し装置３１を設けずに、ディスタンスバー２９は、その自重により、ホールド位置から、搖れ動き、または、回転しながら動き、原位置に戻ることとしてよい。

　しかし、戻し装置３１を設けることにより、ホールド位置から原位置へディスタンスバー２９を迅速に移動させることができ、プレス金型２０－１のサイクル速度を高めることができる。

　戻し装置３１としては、戻りバネ３４が例示されるが、これには限定されず、ディスタンスバー２９を原位置に戻すことができる機構であればよい。

　プレス金型２０－１は、さらにキャッチャー３２を備えてもよい。キャッチャー３２はパッド２５に取り付けられ、パッド２５と連動して動く。キャッチャー３２は、ホールド位置に存在するディスタンスバー２９の一端を確実に収容する。

　プレス金型２０－１のディスタンスバー２９は、第３の工程および第４の工程において、キャッチャー３２とブランクホルダ２４の間のホールド位置に位置することにより、パッド２５とブランクホルダ２４の間のプレス方向距離を前記成形高さ以上に保つ。

　プレス金型２０－１は、さらに、ストッパ装置３３を備えてもよい。ストッパ装置３３は、第３の工程および第４の工程において、ディスタンスバー２９が搖れ動くこと、または、回転しながら動くことによってホールド位置からずれることを、確実に防止する。

　図８～１３を参照しながらプレス金型２０－１の動作を説明する。

（第１の工程）
　図８は、成形前の初期の状態を示す。第１の金型２１と第２の金型２２は離れた状態にある。ブランク２７は、第１の金型２１と第２の金型２２の間に配置されている。ディスタンスバー２９は原位置に位置する。この時、ディスタンスバー２９には、戻りバネ３４により、原位置に押し付ける力が作用している。

（第２の工程）
　図９は、第１の金型２１と第２の金型２２が相対的に接近するプレス方向へ動き、ブランク２７が第１の金型２１と第２の金型２２に挟まれた状態を示す。この時、ディスタンスバー２９はまだ原位置にある。パッド２５に備えられたストッパ装置３３は、パッド２５が第１の金型２１に接近するに伴って、ディスタンスバー２９に接近して押し付けられる。

　図１０は、成形の途中の状態を示す。第１の金型２１と第２の金型２２が相対的に接近するプレス方向へさらに動くと、パッド２５とブランクホルダ２４がそれぞれの加圧方向と反対の方向へ押し込まれ、ブランク２７の成形が進む。

　この時、押し込み装置３０により、ディスタンスバー２９を揺り動かしてホールド位置に押し込もうとする力が働く。押し込み装置３０は、戻りバネ３４がディスタンスバー２９を原位置に戻そうとする力に勝って、ディスタンスバー２９をパッド２５に押し付ける。

　しかし、パッド２５とブランクホルダ２４の間にディスタンスバー２９が進入できる間隔がない。このため、押し込み装置３０はディタンスバー２９を押し込むことができず、ディタンスバー２９はホールド位置に位置することができない。

（第３の工程）
　図１１は、第１の金型２１と第２の金型２２がストロークエンドの成形完了位置（成形下死点）まで動き、ディスタンスバー２９がキャッチャー３２に当たるまで押し込まれてホールド位置に位置し、ストッパ装置３３がストップ位置まで移動してディスタンスバー２９を拘束している状態を示す。

　図１１に示すように、第１の金型２１と第２の金型２２がストロークエンドの成形完了位置（成形下死点）まで動くと、パッド２５とブランクホルダ２４は十分に押し込まれて、ブランク２７の成形は完了する。

　この時、パッド２５とブランクホルダ２４は十分に押し込まれてパッド２５とブランクホルダ２４の間にディスタンスバー２９が入る間隔が生じる。このため、ディスタンスバー２９は、押し込み装置３０が発生する押し込み力により、キャッチャー３２に当たるまで押し込まれ、ホールド位置に位置する。また、ディスタンスバー２９がホールド位置に位置すると、スットパ装置３３がストップ位置まで移動し、原位置側へ戻らないようにディスタンスバー２９を拘束する。

（第４の工程）
　図１２は、第１の金型２１と第２の金型２２が離れ、パッド２５とブランクホルダ２４がストロークエンドまで伸び切った状態を示す。

　第１の金型２１と第２の金型２２が離れる方向へ動き、パンチ２３とダイ２６が離れていく。この時、パッド２５およびブランクホルダ２４それぞれの加圧力はプレス部品２８を潰す方向へ作用する。

　しかし、パッド２５とブランクホルダ２４の間のホールド位置にディスタンスバー２９が存在する。このため、パッド２５およびブランクホルダ２４それぞれの加圧力をディタンスバー２９が負担して、パッド２５とブランクホルダ２４の間隔を一定に保つ。これにより、プレス部品２８が潰れることを防止する。

　パッド２５とブランクホルダ２４がストロークエンドまで伸び切り、パッド２５およびブランクホルダ２４それぞれの加圧力がなくなるまで、ディタンスバー２９がホールド位置に位置する。これにより、パッド２５とブランクホルダ２４のプレス方向距離が前記成形高さ以上に保たれる。この時、ディスタンスバー２９はキャッチャー３２およびストッパ装置３３により拘束され、安定してホールド位置に位置する。

（第５の工程）
　図１３は、図１２に示す状態より第１の金型２１と第２の金型２２が離れる方向へさらに動き、ディスタンスバー２９は原位置に戻った状態を示す。図１３に示す状態では、押し込み装置３０による押し込み力がなくなる。

　また、ブランンクホルダー２４からパッド２５が離れることにより、パッド２５に備えられたストッパ装置３３もディスタンスバー２９から離れて、ディスタンスバー２９の拘束を解除する。このため、ディスタンスバー２９は戻りバネ３４により原位置に戻る。

　この状態では、パッド２５とブランクホルダ２４がストロークエンドまで伸び切っているため、プレス部品２８を加圧することはない。第１の金型２１と第２の金型２２が十分に離れることにより、プレス部品２８をプレス金型２０の外に取り出すことが可能になる。

　さらに、製造装置２０－１は、コンパクトなディスタンスバー２９を用いるため、設備のコンパクト化を図ることもできる。

　このようにして、製造装置２０－１により、ダイ、パンチ、パッドおよびブランクホルダを備えた金型で成形することが必要なプレス部品（例えば引張強度が例えば５９０ＭＰａ以上、好ましくは９８０ＭＰａ以上、さらに好ましくは１１８０ＭＰａ以上であって１６００ＭＰａ以下の高強度材からなり、比較的複雑な形状を有するプレス部品１０）を、高いサイクル速度で、しかも設備のコンパクト化を図りながら、離型時に損傷することなくプレス金型２０－１から取り出すことができる。

　図１４は、プレス金型２０－１の一例を示す斜視図である。図１４に示すプレス金型２０－１は、パンチ２３およびブランクホルダ２４を備える第１の金型２１と、パッド２５およびダイ２６を備える第２の金型２２とを備える。

　プレス金型２０－１は、さらに、ディスタンスバー２９、押し込み装置３０、戻し装置３１、キャッチャー３２およびストッパ装置３３の組み合わせを、プレス金型２０－１の４隅部近傍それぞれ１組ずつ合計４組備える。

　以上の説明では、プレス部品２８がハット断面部品である場合を例にとった。しかし、本発明は、プレス部品の断面形状には限定されない。本発明は、成形時のしわの抑制のために、プレス加工工程のブランクホールド時のブランク２７が、パッド２５およびパンチ２３により加圧して支持される第１の部分２７－１と、ダイ２６およびブランクホルダ２４により加圧して支持される第２の部分２７－２を有するプレス部品２８に等しく適用される。

　本発明は、ハット断面部品以外に、例えば、図１５に示すドーナッツ形状部品、図１６に示す円筒形状部品、図１７に示す球状部品、図１８～図２１に示すリング形状部品、Ａピラー、図２２に示すＢピラー、図２３に示すＡピラーロアー、図２４に示すフロントサイドメンバ、リアサイドメンバ、リアフロアサイドメンバ、さらには図２５に示すルーフレールにも、等しく適用される。

１０　プレス部品
１１　天板
１２ａ，１２ｂ　縦壁
１３ａ，１３ｂ　フランジ
１４ａ，１４ｂ　凸稜線
１５ａ，１５ｂ　凹稜線
２０　プレス金型
２１　第１の金型
２２　第２の金型
２３　パンチ
２４　ブランクホルダ
２５　パッド
２６　ダイ
２７　ブランク（プレス素材）
２７－１　第１の部分
２７－２　第２の部分
２８　プレス部品
２９　ディスタンスバー
３０　押し込み装置
３１　戻し装置
３２　キャッチャー
３３　ストッパ装置
３４　戻りバネ
３５　ガススプリング

Claims

　パンチとブランクホルダを備える第１の金型と、パッドとダイを備える第２の金型を備えるプレス金型であって、
　前記第１の金型および前記第２の金型は対向して配置され、
　前記プレス金型を用いるプレス成形工程は、
　前記第１の金型と前記第２の金型の間にプレス素材を配置する第１の工程と、
　前記第１の金型、前記第２の金型もしくは前記第１の金型および前記第２の金型の両方は、前記第１の金型および前記第２の金型が相対的に接近するプレス方向へ動くことにより、前記第１の金型および前記第２の金型は前記プレス素材に成形を行い、
　前記成形の過程の一部もしくは全部において、
　前記パッドは、前記第１の金型から前記第２の金型へ向かう方向へ押されて前記パンチとともに前記プレス素材の第１の部分を加圧しながら挟んで保持するとともに、前記ブランクホルダは、前記第２の金型から前記第１の金型へ向かう方向へ押されて前記ダイとともに前記プレス素材の前記第１の部分とは異なる第２の部分を加圧しながら挟んで保持する第２の工程と、
　前記プレス素材を所定の成形高さを有するプレス部品にする第３の工程と、
　前記第２の金型と前記ブランクホルダが前記成形高さと同じプレス方向距離まで移動する第４の工程と、
　前記第１の金型と前記第２の金型が前記プレス部品を取り出すためにさらに離れる第５の工程を含み、
　前記ブランクホルダに配置されるディスタンスバーと、前記パンチまたは前記ブランクホルダに配置される押し込み装置を備え、
　当該ディスタンスバーは、
　揺れ動くこと、または、回転しながら動くことができ、
　前記第１の工程では、原位置にあって、かつ前記パッドから離れ、
　前記第２の工程では、搖れ動き、または、回転しながら動き、
　前記第３の工程および第４の工程では、前記パッドと前記ブランクホルダの間のホールド位置に位置することにより、前記パッドと前記ブランクホルダの間のプレス方向距離を前記所定の成形高さ以上に保ち、
　前記第５の工程では、搖れ動き、または、回転しながら動いて前記原位置に戻り、
　前記押し込み装置は、
　前記第２の工程では、前記ディスタンスバーを搖れ動かし、または、回転しながら動かし、
　前記第３の工程では、前記ディスタンスバーを前記ホールド位置に位置させる、
プレス金型。
　前記押し込み装置は、バネを内蔵する押し込み棒である、請求項１に記載のプレス金型。
　さらに、前記ディスタンスバーを、前記ホールド位置から前記原位置に戻す戻し装置を有する、請求項１または２に記載のプレス金型。
　前記パッドに取り付けられ、該パッドと連動して動くキャッチャーを備え、
　当該ディスタンスバーは、
　前記第３の工程および第４の工程では、前記キャッチャーと前記ブランクホルダの間のホールド位置に位置することにより、前記パッドと前記ブランクホルダの間のプレス方向距離を前記成形高さ以上に保つ、請求項１～３のいずれかに記載のプレス金型。
　さらに、ストッパ装置を備え、該ストッパ装置は、
　前記第３の工程および前記第４の工程において、前記ディスタンスバーが搖れ動くこと、または、回転しながら動くことを防止する、請求項１～４のいずれかに記載のプレス金型。