JP7153273B2 - 車両用メンバー部品のプレス成形方法及びそのプレス金型 - Google Patents
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(1)略ハット断面形状に形成された下型ポンチと当該下型ポンチの縦壁成形部の外周側にフランジ押え部が形成され上下動可能に加圧支持された下型クッションとを有する下型と、前記下型ポンチに対向して形成された上型曲げ刃と当該上型曲げ刃の内周側に配置され鋼板を前記下型ポンチに押圧可能に形成された上型パッドとを有する上型とを備え、
前記下型と対向する前記上型が上死点から下死点まで下降するとき、前記下型ポンチと前記上型曲げ刃とが近接して前記鋼板を曲げ加工することによって、中央部とその両側に起立する縦壁部とを備えた略ハット断面形状に形成する車両用メンバー部品のプレス成形方法であって、
前記下型クッションには、前記フランジ押え部の内周縁に起立し前記下型ポンチの縦壁成形部より板外側へステップ状に突出する凸成形部を備え、前記上型曲げ刃には、ダイR部の上部で前記凸成形部と協働して前記鋼板を狭圧する凹成形部を備え、
前記上型が下死点の直前まで下降したとき、前記凸成形部と前記凹成形部とが前記鋼板の先端フランジ部をステップ状に屈曲させて前記縦壁部の先端側に段差形状部を形成し、前記凸成形部と前記凹成形部とが前記段差形状部を把持した状態で前記上型が下死点まで下降することを特徴とする。
前記段差形状部には、前記縦壁部から板外側へ開き角が鈍角で屈曲する第1屈曲部と、前記第1屈曲部から板内側へ開き角が鈍角で屈曲する第2屈曲部とを備え、
前記凸成形部と前記凹成形部との間における曲げクリアランスは、前記鋼板の板厚と略同一であることを特徴とする。
前記凸成形部の肩R部と前記凹成形部のダイR部とが、それぞれ同程度の曲率半径で形成され、前記凸成形部と前記凹成形部とが前記段差形状部を略S字状に湾曲させて把持することを特徴とする。
前記上型が下死点の直前から下死点まで下降したとき、前記凸成形部と前記凹成形部とが前記段差形状部を把持した状態で前記縦壁部を塑性変形域まで延伸させることを特徴とする。
前記段差形状部の先端部には、前記縦壁部に対して板外側へ延設されたフランジ部が形成されていることを特徴とする。
前記下型クッションには、前記凸成形部と前記フランジ押え部とが連結された下型曲げ刃を固定したクッション板を備え、前記上型には、前記上型曲げ刃を固定した曲げ刃固定ブロックを備え、
前記下型には、下型本体と、当該下型本体に固定され、前記クッション板の外側端部と前記曲げ刃固定ブロックの外側端部とを、少なくとも下死点直前から下死点まで、上下方向にガイドする案内部材とを備えることを特徴とする。
前記下型ポンチには、前記縦壁成形部が形成された下型ポンチ頭部と、前記下型本体に固定され前記下型ポンチ頭部に対して幅が狭く一体に形成された下型ポンチ脚部とを備え、
前記下型ポンチ脚部には、前記凸成形部の内側端面と当接して前記凸成形部の板内側への撓みを規制する規制面が形成されていることを特徴とする。
前記下型ポンチには、前記縦壁成形部が形成された下型ポンチ頭部と、前記下型本体に固定され前記下型ポンチ頭部に対して幅が狭く分割して形成された複数の下型ポンチ脚部とを備え、
前記下型ポンチ頭部と前記下型ポンチ脚部とが締結されていると共に、前記下型曲げ刃と前記クッション板には、各下型ポンチ脚部を貫通する貫通孔が形成されていることを特徴とする。
前記案内部材には、前記クッション板の上下動ストローク量を規制するストッパピンを備え、
前記クッション板には、前記凸成形部と前記凹成形部とが前記段差形状部を形成する当該クッション板の上昇位置にて、前記ストッパピンが当接する規制ブロックが形成されていることを特徴とする。
まず、本実施形態に係るプレス成形方法によって形成した車両用メンバー部品の構造を、図1、図2を用いて説明する。図1に、本発明の実施形態に係るプレス成形方法によって形成した車両用メンバー部品の概略斜視図を示す。図2に、図1に示す車両用メンバー部品のA-A断面図を示す。
次に、本実施形態に係る車両用メンバー部品のプレス成形方法及びプレス金型について、図3~図7を用いて説明する。図3に、図1に示す車両用メンバー部品のプレス成形方法における、加工手順を示すプレス金型の部分断面図を示す。図3(a)に、上型曲げ刃が下型ポンチに近接して縦壁部の曲げ加工を開始したときの断面図を示し、図3(b)に、上型が下死点の直前まで下降して下型クッションに備える凸成形部と上型曲げ刃に備える凹成形部とが段差形状部を形成したときの断面図を示し、図3(c)に、上型が下死点まで下降して縦壁部に縦方向の張力を付与したときの断面図を示す。図4に、図3(b)のB部詳細断面図を示す。図5に、図3(c)のC部詳細断面図を示す。図6に、図3に示す車両用メンバー部品のプレス成形方法に使用するプレス金型(第1実施例)の下死点における部分断面図を示す。図7に、図3に示す車両用メンバー部品のプレス成形方法に使用するプレス金型(第2実施例)の下死点における部分断面図を示す。
次に、本プレス成形方法による曲げ加工後の車両用メンバー部品の評価結果として、応力分布とスプリングバック量、反り量のCAE解析結果を、図8、図9を用いて説明する。図8に、本プレス成形方法によって成形した車両用メンバー部品(除荷前)の板外側の引張り応力から板内側の引張り応力を差し引いた応力分布を表すCAE解析図を示す。図9に、本プレス成形方法によって成形した車両用メンバー部品の正規断面形状に対する除荷後の断面形状を表すCAE解析図を示す。なお、CAE解析に用いた鋼板Wは、引張強度が590Mpaであり、板厚が2.6mmである。
図8に示すように、曲げ加工後の中央部M1、縦壁部M2、段差形状部M3、フランジ部M4における除荷前の引張り応力に対する板内外差の分布状態を、ドットの濃淡で表示している。ドットの濃淡表示は、-10から+10までの複数段階に区分されている。ドットの濃度が、0から+10まで濃くなるに従って、板外側の引張り応力が板内側より大きくなる。反対に、ドットの濃度が、0から-10まで淡くなるに従って、板内側の引張り応力が板外側より大きくなる。
また、図9に示すように、本プレス成形方法によって成形した車両用メンバー部品Mの正規断面形状(点線)に対する除荷後の断面形状(実線)を表すCAE解析図によれば、本車両用メンバー部品の縦壁部M2におけるスプリングバック量、反り量は略零であった。ただし、段差形状部M3とフランジ部M4において僅かなスプリングバックが生じていた。これは、図8に示す除荷前の引張り応力に対する板内外差の分布状態と附合する。
次に、前述した本実施形態に係る車両用メンバー部品のプレス成形方法と対比するため、比較例のプレス成形方法における加工手順及びプレス金型について、図10を用いて説明する。図10に、図3に示す車両用メンバー部品のプレス成形方法に対する比較例における、加工手順を示すプレス金型の部分断面図を示す。図10(a)は、上型曲げ刃が下型ポンチに近接して縦壁部の曲げ加工を開始したときの断面図を示し、図10(b)は、上型が下死点の直前まで下降して下型ポンチに備える凸成形部と上型曲げ刃に備える凹成形部とが縦壁部の先端に段差形状部を形成し始めたときの断面図を示し、図10(c)は、上型が下死点まで下降して縦壁部に縦方向の張力を付与したときの断面図を示す。
次に、比較例による曲げ加工後の車両用メンバー部品の評価結果として、応力分布とスプリングバック量、反り量のCAE解析結果を、図11、図12を用いて説明する。図11に、図10に示す比較例のプレス成形方法によって成形した車両用メンバー部品(除荷前)の板外側の引張り応力から板内側の引張り応力を差し引いた応力分布を表すCAE解析図を示す。図12に、図10に示す比較例のプレス成形方法によって成形した車両用メンバー部品の正規断面形状に対する除荷後の断面形状を表すCAE解析図を示す。なお、CAE解析に用いた鋼板Wは、引張強度が590Mpaであり、板厚が2.6mmである。
図11に示すように、略ハット断面形状の中央部M1、縦壁部M2、段差形状部M3、フランジ部M4における除荷前の引張り応力に対する板内外差の分布状態を、ドットの濃淡で表示している。ドットの濃淡表示は、図8に示す場合と同様に、-10から+10までの複数段階に区分されている。ドットの濃度が、0から+10まで濃くなるに従って、板外側の引張り応力が板内側より大きくなる。反対に、ドットの濃度が、0から-10まで淡くなるに従って、板内側の引張り応力が板外側より大きくなる。
また、図12に示すように、比較例のプレス成形方法によって成形した車両用メンバー部品Mの正規断面形状(点線)に対する除荷後の断面形状(実線)を表すCAE解析図によれば、車両用メンバー部品の縦壁部M2におけるスプリングバック量αは約1.7度程度であった。また、縦壁部M2の中間部には、板厚程度の反り量βが生じていた。これは、図11に示す除荷前の引張り応力に対する板内外差の分布状態と附合する。
以上、詳細に説明したように、本実施形態に係る車両用メンバー部品のプレス成形方法によれば、下型クッション12には、フランジ押え部121の内周縁に起立し下型ポンチ11の縦壁成形部111より板外側へステップ状に突出する凸成形部122を備え、上型曲げ刃21には、ダイR部21Rの上部で凸成形部122と協働して鋼板Wを狭圧する凹成形部212を備え、上型2が下死点の直前まで下降したとき、凸成形部122と凹成形部212とが鋼板Wの先端フランジ部W1をステップ状に屈曲させて縦壁部M2の先端側に段差形状部M3を形成し、凸成形部122と凹成形部212とが段差形状部M3を把持した状態で上型2が下死点まで下降するので、上型曲げ刃21による鋼板Wの曲げ・曲げ戻しに伴って縦壁部M2の板内側と板外側に発生する残留応力の差異を、縦壁部M2の先端側に形成した段差形状部M3を介して作用する縦方向の張力Fによって効果的に解消させて、縦壁部M2を正規の断面形状に形状凍結させることができる。そのため、車両用メンバー部品Mの縦壁部M2に生じるスプリングバックや反り等を、縦壁部M2全体に亘って解消させることができる。
上述した実施形態は、本発明の要旨を変更しない範囲で、適宜変更することができる。例えば、本実施形態によれば、段差形状部M3の先端部M33には、縦壁部M2に対して板外側へ延設されたフランジ部M4が形成されているが、必ずしも、フランジ部M4は形成されていなくてもよい。
2 上型
10A、10B プレス金型
11、11A、11B 下型ポンチ
12、12A、12B 下型クッション
13 下型本体
14A、14B クッション板
15A、15B 下型曲げ刃
16A、16B 案内部材
21 上型曲げ刃
21R ダイR部
22 上型パッド
23 曲げ刃固定ブロック
111 縦壁成形部
112a、112b 下型ポンチ頭部
113a、113b 下型ポンチ脚部
121、121a、121b フランジ押え部
122、122a、122b 凸成形部
122R 肩R部
141A、141B 外側端部
142B、152B 貫通孔
143B 規制ブロック
162B ストッパピン
212 凹成形部
212R ダイR部
231 外側端部
1131a 規制面
1221a 内側端面
M 車両用メンバー部品
M1 中央部
M2 縦壁部
M3 段差形状部
M31 第1屈曲部
M32 第2屈曲部
M33 先端部
M4 フランジ部
W 鋼板
W1 先端フランジ部
d1 上下動ストローク量
d2 曲げクリアランス
r1、r2 曲率半径
θ1、θ2 開き角
Claims (9)
- 略ハット断面形状に形成された下型ポンチと当該下型ポンチの縦壁成形部の外周側にフランジ押え部が形成され上下動可能に加圧支持された下型クッションとを有する下型と、前記下型ポンチに対向して形成された上型曲げ刃と当該上型曲げ刃の内周側に配置され鋼板を前記下型ポンチに押圧可能に形成された上型パッドとを有する上型とを備え、
前記下型と対向する前記上型が上死点から下降する際、前記上型パッドが前記鋼板を前記下型ポンチに押圧した状態で、車両用メンバー部品の中央部を形成した後、前記下型ポンチと前記上型曲げ刃とが近接して前記鋼板を曲げ加工することによって、前記中央部とその両側に起立する縦壁部とを備えた略ハット断面形状に形成する車両用メンバー部品のプレス成形方法であって、
前記下型クッションには、前記フランジ押え部の内周縁に起立し前記下型ポンチの縦壁成形部より板外側へステップ状に突出する凸成形部を備え、前記上型曲げ刃には、ダイR部の上部で前記凸成形部と協働して前記鋼板を狭圧する凹成形部を備え、
前記上型が前記下型クッションの上昇位置である下死点の直前まで下降するとき、前記下型ポンチの前記縦壁成形部に沿って前記縦壁部を形成すること、
前記上型が下死点の直前まで下降したとき、前記凸成形部と前記凹成形部とが前記鋼板の先端フランジ部をステップ状に屈曲させて前記縦壁部の先端側に段差形状部を形成して、前記凸成形部と前記凹成形部とが前記段差形状部を板内外の両側から把持すること、
前記凸成形部と前記凹成形部とが前記段差形状部を把持した状態で前記上型が下死点まで下降することを特徴とする車両用メンバー部品のプレス成形方法。 - 請求項1に記載された車両用メンバー部品のプレス成形方法において、
前記段差形状部には、前記縦壁部から板外側へ開き角が鈍角で屈曲する第1屈曲部と、前記第1屈曲部から板内側へ開き角が鈍角で屈曲する第2屈曲部とを備え、
前記凸成形部と前記凹成形部との間における曲げクリアランスは、前記鋼板の板厚と略同一であることを特徴とする車両用メンバー部品のプレス成形方法。 - 請求項1又は請求項2に記載された車両用メンバー部品のプレス成形方法において、
前記凸成形部の肩R部と前記凹成形部のダイR部とが、それぞれ同程度の曲率半径で形成され、前記凸成形部と前記凹成形部とが前記段差形状部を略S字状に湾曲させて把持することを特徴とする車両用メンバー部品のプレス成形方法。 - 請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載された車両用メンバー部品のプレス成形方法において、
前記上型が下死点の直前から下死点まで下降したとき、前記凸成形部と前記凹成形部とが前記段差形状部を把持した状態で前記縦壁部を塑性変形域まで延伸させることを特徴とする車両用メンバー部品のプレス成形方法。 - 請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載された車両用メンバー部品のプレス成形方法において、
前記段差形状部の先端部には、前記縦壁部に対して板外側へ延設されたフランジ部が形成されていることを特徴とする車両用メンバー部品のプレス成形方法。 - 請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載された車両用メンバー部品のプレス成形方法に使用するプレス金型であって、
前記下型クッションには、前記凸成形部と前記フランジ押え部とが連結された下型曲げ刃を固定したクッション板を備え、前記上型には、前記上型曲げ刃を固定した曲げ刃固定ブロックを備え、
前記下型には、下型本体と、当該下型本体に固定され、前記クッション板の外側端部と前記曲げ刃固定ブロックの外側端部とを、少なくとも下死点直前から下死点まで、上下方向にガイドする案内部材とを備えることを特徴とするプレス金型。 - 請求項6に記載されたプレス金型であって、
前記下型ポンチには、前記縦壁成形部が形成された下型ポンチ頭部と、前記下型本体に固定され前記下型ポンチ頭部に対して幅が狭く一体に形成された下型ポンチ脚部とを備え、
前記下型ポンチ脚部には、前記凸成形部の内側端面と当接して前記凸成形部の板内側への撓みを規制する規制面が形成されていることを特徴とするプレス金型。 - 請求項6に記載されたプレス金型であって、
前記下型ポンチには、前記縦壁成形部が形成された下型ポンチ頭部と、前記下型本体に固定され前記下型ポンチ頭部に対して幅が狭く分割して形成された複数の下型ポンチ脚部とを備え、
前記下型ポンチ頭部と前記下型ポンチ脚部とが締結されていると共に、前記下型曲げ刃と前記クッション板には、各下型ポンチ脚部を貫通する貫通孔が形成されていることを特徴とするプレス金型。 - 請求項8に記載されたプレス金型であって、
前記案内部材には、前記クッション板の上下動ストローク量を規制するストッパピンを備え、
前記クッション板には、前記凸成形部と前記凹成形部とが前記段差形状部を形成する当該クッション板の上昇位置にて、前記ストッパピンが当接する規制ブロックが形成されていることを特徴とするプレス金型。
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