JP4310612B2 - オーバーベンド成形用金型のダイス形状の決定方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、プレス成形品の弾性回復現象に伴う角度変化量が、製品形状部位によって大きく異なる場合に、プレス成形品の寸法精度を、オーバーベンドカムを用いたプレス曲げ一工程で確保するための技術に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
例えば、自動車の足回り部品(トラックフレームのレール、クロスメンバ等)は、平面のプロファイル形状、断面形状が変化したものが多く、かつ、安全性・軽量化の要求にも十分に応えるために、ハイテンション鋼の採用例が増加している。しかしながら、ハイテンション鋼の性質上、スプリングバック、捻れなどの弾性回復現象がより顕著に製品に表れることとなり、寸法精度の確保が従来に比べ困難となっている。
図12には、トラックフレームのレール1を立体図示している。レール1は、動力伝達系統や荷台等の構造物を効率的に保持するために、上下方向の端部にフランジ部2、3を設け、なおかつ、上下方向および車幅方向に複雑に湾曲した形状を有している。したがって、フランジ部2、3は製品形状部位によって、伸びフランジとなり、または、縮みフランジとなる。この、伸びフランジまたは縮みフランジの存在により、レール1における前述の弾性回復現象の発生をより複雑なものとしている。
【0003】
そこで、従来は、(1)弾性回復による成形品の角度変化分を、曲げ工程後のリストライク工程によって修正する手法、(2)弾性回復による成形品の角度変化分を、曲げ工程後にフランジ端面を加圧するコイニング工程によって修正する手法、(3)弾性回復による成形品の角度変化分を、曲げ工程と同時に部分的にオーバーベンディングし、角度変化分を見込みによって相殺する手法(特開平8-1243号公報、特開平9-239454号公報等参照)等が採られている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記従来の対策は、スプリングバック、捻れ、フランジ反り等の弾性回復現象の全てに有効な修正を施すことが困難であった。また、上記(1)、(2)の手法は、曲げ工程とは別個に修正工程を設けるものであることから、製品のコストアップを避けることができず、かつ、プレス成形機の構造上、修正可能な部位にも制限を受けるといった問題があった。
一方、上記(3)の手法は、曲げ工程とは別個に修正工程を設けるものではないが、オーバーベンディングを行うためのオーバーベンドカムを製品の一部分に対してしか設置できず、他の部分については、曲げポンチ・ダイスのクリアランス調整、クッションパッド力の調整といった間接的な対処方法に頼ることとなり、様々な製品に対し必要な修正を施すことが困難となっていた。
【0005】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、弾性回復現象に伴う角度変化量が、製品形状部位によって大きく異なるプレス成形品の寸法精度を、オーバーベンドカムを用いたプレス曲げ一工程で確保することを可能とし、製品のコストアップを避けつつ、弾性回復現象に伴う角度変化量が、製品形状部位によって大きく異なるプレス成形品の寸法精度を確保することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するための、本発明の請求項1に係るオーバーベンド成形用金型のダイス形状の決定方法は、曲げ刃とオーバーベンド刃とを一体に有するダイスを、可動金型の開閉方向と交差する方向にスライドさせて、曲げ成形に続きオーバーベンド成形を行う金型であって、前記ダイスに、前記曲げ刃と前記オーバーベンド刃との連続面形状を異にした複数種類のダイスブロックの中から製品形状部位毎に要求量が異なるオーバーベンド角度に応じて選択したダイスブロックを、成形品のフランジ部全体に並べて、成形品のフランジ部全体へと密着するプロファイルを持たせ、かつ、各ダイスブロックのストロークが全て一律となるよう前記ダイスを一体オーバーベンドカムで支持したオーバーベンド成形用金型のダイス形状の決定方法において、製品形状部位毎の必要なオーバーベンド角度を求め、各形状部位の必要なオーバーベンド角度を有するダイス形状を、前記曲げ刃と前記オーバーベンド刃との連続面の形状を異にした、基本タイプ、減肉タイプ、増肉タイプの三種類のダイス形状のうち前記基本タイプで形成した場合における、曲げ刃とポンチとの必要クリアランスを確保するための各形状部位毎のカムストロークを求め、当該各形状部位毎のカムストロークのうち最も小さなカムストロークとなる部位を除いた、各形状部位のダイス形状を前記基本タイプから前記減肉タイプに変更した場合における、曲げ刃とポンチとの必要クリアランスを確保するための各形状部位毎のカムストロークを新たに求め、当該新たに求めた各形状部位毎のカムストロークのうち、最も大きなカムストロークとなる形状部位のカムストロークを、前記一体オーバーベンドカムのカムストロークとして決定し、各形状部位のカムストロークを一律に前記決定したカムストロークへと変更した場合に、曲げ刃とポンチとの必要クリアランスが確保されるように各形状部位のダイス形状を前記三種類のダイス形状から選択する、各ステップを含むことを特徴とするものである。
本発明によれば、前記ダイスに、前記曲げ刃と前記オーバーベンド刃との連続面形状を異にした複数種類のダイスブロックの中から製品形状部位毎に要求量が異なるオーバーベンド角度に応じて選択したダイスブロックを、成形品のフランジ部全体に並べて、成形品のフランジ部全体へと密着するプロファイルを持たせ、かつ、各ダイスブロックのストロークが全て一律となるよう前記ダイスを一体オーバーベンドカムで支持したことにより、曲げ成形に続くオーバーベンド成形を、型締めによる可動金型の動作と、所定のタイミングにおける前記一体オーバーベンドカムのスライド動作とによって、成形品のフランジ部全体へと施すことが可能となる。
また、各ダイスブロックを、前記曲げ刃と前記オーバーベンド刃との連続面形状を異にした複数種類のダイスブロックの中から、製品形状部位毎に要求量が異なるオーバーベンド角度に応じて選択することで、前記ダイスの全体において、製品形状部位毎のスプリングバックに応じたオーバーベンド角度とし、なおかつ、曲げ刃とポンチとの必要クリアランスを確保することが可能となる。
【0007】
なお、本説明において、「基本タイプ」のダイス形状とは、必要なオーバーベンド角度を持たせたオーバーベンド刃の延長上に曲げ刃を設けたダイス形状を意味する。基本タイプのダイス形状は、従来のオーバーベンド金型の一般的なダイス形状と同じである。
また、「減肉タイプ」のダイス形状とは、必要なオーバーベンド角度を持たせたオーバーベンド刃の一部を、金型の開閉方向に伸びる平面で切断、除肉し、当該平面の延長上に曲げ刃を設けたダイス形状を意味する。減肉タイプは基本タイプと比較して、曲げ刃とポンチとのクリアランスが増加することから、カムストロークを減少させても、曲げ刃とポンチとの必要なクリアランスを確保することができる。
さらに、「増肉タイプ」のダイス形状とは、必要なオーバーベンド角度を持たせたオーバーベンド刃の一部に、オーバーベンド刃よりも傾斜角度の大きな傾斜面を形成し、当該傾斜面の延長上に曲げ刃を設けたダイス形状を意味する。増肉タイプは基本タイプと比較して、曲げ刃とポンチとのクリアランスが減少することから、カムストロークを増加させても、曲げ刃とポンチとの必要なクリアランスを確保することができる。
【0008】
また、本発明の請求項2に係るオーバーベンド成形用金型のダイス形状の決定方法は、請求項1記載のオーバーベンド成形用金型のダイス形状の決定方法において、前記製品形状部位毎の必要なオーバーベンド角度を求めるステップに前後して、捻れ見込み角度をウェブ面形状に設定するステップと、前記必要なオーバーベンド角度を前記捻れ見込み角度分で補正するステップとを含むこととしたものである。
本発明によれば、前記ダイス形状を捻れにも対応したものとすることができる。
【0009】
また、本発明の請求項3に係るオーバーベンド成形用金型のダイス形状の決定方法は、請求項1または2記載のオーバーベンド成形用金型のダイス形状の決定方法において、伸びフランジ部の反り量に応じ、前記曲げ刃とポンチとの必要クリアランスを決定することとしたものである。
本発明によれば、前記ダイス形状を伸びフランジ部の反りにも対応したものとすることができる。
【0010】
また、本発明の請求項4に係るオーバーベンド成形用金型のダイス形状の決定方法は、請求項1から3のいずれか1項記載のオーバーベンド成形用金型のダイス形状の決定方法において、縮みフランジ部のシワ解消のための先行曲げを考慮して、ダイフェース面を設定するステップを含むこととしたものである。
本発明によれば、前記ダイス形状を縮みフランジ部のシワにも対応したものとすることができる。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を添付図面に基づいて説明する。ここで、従来技術と同一部分及び相当する部分については同一符号で示し、詳しい説明は省略する。
【0012】
図1には、本発明の実施の形態に係るオーバーベンド成形用金型の固定金型11およびレール1を平面図で示している。また、図2〜図4には図1のA−A線、B−B線における断面図を示しており、各図の(a)はA−A線の断面図を、各図の(b)はB−B線の断面図を示すものである。なお、説明の便宜上、図1〜図4には、レール1の2つのフランジ部2、3のうち、フランジ部2の曲げ成形およびオーバーベンド成形に係る構造部分のみ図示しているが、実際にはフランジ部3の曲げ成形およびオーバーベンド成形に係る構造部分も同様に備えている。
【0013】
固定金型11は、曲げ刃5とオーバーベンド刃6と(図5(a)参照)を一体に有する複数のダイスブロック7を成形品のフランジ部全体に並べてダイス8を形成している。また、複数のダイスブロック7からなるダイス8は、レール1のフランジ部2の全体へと密着するプロファイルを有し、かつ、一体オーバーベンドカム9に固定され、可動金型10の開閉方向と交差する方向にスライド可能に支持されている。また、一体オーバーベントカム9をスライド支持する固定金型11には、一体オーバーベントカム9の弾性ストッパー12を配置している。
【0014】
また、一体オーバーベンドカム9の後退限度位置を決定するバックアップ面13、14と、可動金型10の可動下死点付近でのみ摺接し一体オーバーベンドカム9をスライド駆動する押出し面15、16とを、一体オーバーベンドカム9と可動金型10とに設けている。これらのバックアップ面13、14および押出し面15、16は、一体オーバーベンドカム9の全体で、ダイス8の反力を均等に受けることができるように、全体のバランスを考慮した位置に設けられている。
その他、図2〜図4に示すように可動金型10はポンチ17を備え、固定金型11はクッションパッド18と、クッションパッド18を型開き方向に付勢するクッションピン19とを備えている。また、図中符号Wで示す部分は、レール1の素材または半製品を示している。
【0015】
ここで、本発明の実施の形態に係るオーバーベンド成形用金型の作動手順を、図2〜図4を参照しながら説明する。図2は、クッションパッド18上に素材Wを置き、可動金型10を固定金型11へ向けて移動させ、型締めを開始した時点における金型の状態を示している。この時点では、図2(a)に示すように、可動金型10のバックアップ面14が、一体オーバーベンドカム9のバックアップ面13と摺接しながら型締めを行うため、一体オーバーベンドカム9は、弾性ストッパー12と密着する後退限度位置に固定され、一体オーバーベンドカム9に支持されたダイス8は固定ダイスとして機能する。したがって、ダイス8の曲げ刃5とポンチ17との必要クリアランスを確実に保証し、高精度の曲げ加工を素材Wに施すことができる。なお、この時点では、図2(b)に示す押出し面15、16は、互いに離間した状態にある。
【0016】
図3は、可動金型10の可動下死点付近まで、型締めが進行した時点における金型の状態を示している。図3(b)に示すように、この時点で初めて、可動金型10の押出し面16が、一体オーバーベンドカム9の押し出し面15と当接する。一方、可動金型10のバックアップ面14と、一体オーバーベンドカム9のバックアップ面13とは、引き続き摺接状態にあり、一体オーバーベンドカム9が後退限度位置よりも更に奥方へと後退することを防いでいる。この時点で素材Wの曲げ成形工程はほぼ終了し、オーバーベンド成形工程へと移行していく。なお、クッションパッド18と下型11との間には、オーバーベンド成形工程で必要となる可動金型10の移動量に応じた隙間が生じている。
【0017】
図4は、可動金型10が可動下死点まで移動し、型締めを完了した時点における金型の状態を示している。可動金型10が図3(b)に示す状態から図4(b)に示す状態へと移動する間、一体オーバーベンドカム9は、押出し面15、16同士の摺接によってポンチ17へ向けて押出される。よって、ダイス8のオーバーベンド刃6とダイス8の側面とで素材Wを挟持して、素材Wにオーバーベンド成形を行うことができる。なお、可動金型10のバックアップ面14と、一体オーバーベンドカム9のバックアップ面13との間には、図4(a)に示すように、一体オーバーベンドカム9のカムストロークの分だけ、隙間Cを生じることとなり、一体オーバーベンドカム9と弾性ストッパー12との間にも、若干の隙間を生じる。また、クッションパッド18の下端は下型11と密着し、クッションパッド18の下死点となる。
【0018】
この後、型開きを行うことで、可動金型10の押出し面16と、一体オーバーベンドカム9の押し出し面15とは再び離間し、クッションパッド18がクッションピン19を介して下死点から上昇することにより、素材Wを介して、また、必要に応じスプリング等の付勢手段に補助的に駆動されて、一体オーバーベンドカム9は、図2、図3に示す後退限度位置へと復帰する。よって、ダイス8の曲げ刃5およびオーバーベンド刃6がポンチ17に対し負角を形成することなく、円滑に型開きおよび製品の離型を行うことができる。また、一体オーバーベンドカム9が後退限度位置へと復帰する際に、弾性ストッパー12が一体オーバーベンドカム9を受け止めることで、一体オーバーベントカム9の戻り時の衝撃吸収、騒音低下を図ることができる。
【0019】
ところで、ダイス8は一体オーバーベントカム9によってその全体が支持されていることから、ダイス8の全体のストロークは全て一律となる。かかる条件下で、製品形状部位毎のスプリングバックに応じたオーバーベンド角度を設定し、なおかつ、曲げ刃とポンチとの必要クリアランスを確保するために、本発明の実施の形態に係るオーバーベンド成形用金型のダイス8は、図5(a)〜(c)に示すように、曲げ刃5とオーバーベンド刃6との連続面形状を異にした複数種類のダイスブロック7の中から、製品形状部位毎に要求量が異なるオーバーベンド角度に応じて選択したダイスブロック7を、図1に示すように、レール1のフランジ部3全体に並べて形成している。
本説明では、図5(a)に示すダイス形状を「基本タイプ」と、図5(b)に示すダイス形状を「減肉タイプ」と、図5(c)に示すダイス形状を「増肉タイプ」と、各々称することとする。
【0020】
なお、「基本タイプ」のダイス形状とは、必要なオーバーベンド角度αを持たせたオーバーベンド刃6の延長上に曲げ刃5を設けたダイス形状を意味する。基本タイプのダイス形状は、従来のオーバーベンド金型の一般的なダイス形状と同じである。
また、「減肉タイプ」のダイス形状とは、必要なオーバーベンド角度αを持たせたオーバーベンド刃6の一部を、金型の開閉方向に伸びる平面20で切断、除肉し、平面20の延長上に曲げ刃5を設けたダイス形状を意味する。減肉タイプは基本タイプと比較して、曲げ刃5とポンチ17(図2参照)とのクリアランスが増加することから、一体オーバーベンドカム9(図2参照)のカムストロークを減少させても、曲げ刃5とポンチ17との必要なクリアランスを確保することができる。
さらに、「増肉タイプ」のダイス形状とは、必要なオーバーベンド角度αを持たせたオーバーベンド刃6の一部に、オーバーベンド刃6よりも傾斜角度の大きな傾斜面21を形成し、傾斜面21の延長上に曲げ刃5を設けたダイス形状を意味する。増肉タイプは基本タイプと比較して、曲げ刃5とポンチ17(図2参照)とのクリアランスが減少することから、一体オーバーベンドカム9(図2参照)のカムストロークを増加させても、曲げ刃5とポンチ17との必要なクリアランスを確保することができる。
【0021】
ここで、上記三種類のダイス形状の中から、適切なダイス形状を選択し、ダイス8を形成する手順について、図5〜図12を参照しながら説明する。
【0022】
ステップ1:製品形状部位毎の必要なオーバーベンド角度を求める。図6には、レール1の製品形状部位毎の必要なオーバーベンド角度を上段に、レール1の側面図を中段に、レール1の正面図を下段に示している。ステップ1では、まず、レール1の試作品を成形し、試作精度(フランジ部2、3のスプリングバック、ウェブ面22の捻れ量等)を測定する。図6の上段の細い実線および二点鎖線は、所定の基準(製品毎に夫々定められる。)に対する、フランジ部3の各製品形状部位のスプリングバック角度の実測値を示している。この実測値に基き決定された、各製品形状部位のオーバーベンド角度を、図6の上段に太い実線で示している。
そして、オーバーベンド角度に応じて、各製品形状部位の断面に(a)〜(e)で例示されるような種別分けを行う。図示の例では、断面(a)のオーバーベンド角度は4.5°、断面(b)のオーバーベンド角度は2°、断面(c)のオーバーベンド角度は4°、断面(d)のオーバーベンド角度は3°、断面(e)のオーバーベンド角度は1.5°に決定されている。なお、図6において、特に符号を付していない断面部分は、隣接する断面形状をつなぐ除変部分である。
【0023】
ステップ2:図8(a)に示すように、ウェブ面22に捩れを生ずる部位については、図8(b)に示すように、ポンチ17とクッションパッド18とに、成形品の捩れ方向と反対方向のねじれ見込み角度θを持たせる。捻れ見込み角度θは、ステップ1で測定した試作精度に基き決定する。
【0024】
ステップ3:ステップ1で決定した、製品形状部位(直線曲げ、伸び・縮みフランジ部、曲げアール部等)毎のオーバーベンド角度α(スプリングバック見込み角度)を、図7に示すようにダイスのアール終りポイントP8を基点として設定する。また、捻れ見込み角度θをウェブ面22の形状に設定する製品形状部位に関しては、図8(c)に示すように、ステップ2で設定した見込みθを考慮してフランジ3のスプリングバック見込み角度を補正し、補正後のスプリングバック見込み角度α’、β’を設定する。
【0025】
ステップ4:縮みフランジ部のシワ対策として、先行曲げを必要とする製品形状部位に対しては、その形状を考慮して図7に示すダイフェース面の高さhを設定する。
ステップ5:図7に示すダイRを決定する。
【0026】
ステップ6:各形状部位の必要なオーバーベンド角度を有するダイス形状を、図5(a)に示す基本タイプで形成した場合における、曲げ刃5とポンチ17との必要クリアランス(板厚をtとした場合、必要クリアランスは原則として1tである。)を確保するための各形状部位毎のカムストロークを求める。図9には、図6に図示したレール1の断面(a)〜(e)を、同一の符号を付して(a)〜(e)に示すと共に、説明の便宜上、各断面の主要寸法例を具体的に示している。
ステップ2〜5で決定した寸法を基本タイプのダイス形状に適用したとき、図6に示す例では、曲げ刃5とポンチ17との必要クリアランスを確保するための断面(a)のカムストロークは4.81mm、断面(b)のカムストロークは2.54mm、断面(c)のカムストロークは5.07mm、断面(d)のカムストロークは3.81mm、断面(e)のカムストロークは1.91mmとなっている。
【0027】
ステップ7:ステップ6において求めた、各断面のカムストロークのうち最小のカムストロークを把握する。図9の例では、断面(e)のカムストロークが1.91mmで最小となっている。
【0028】
ステップ8:ステップ7で把握した最小のカムストロークとなる部位を除いた、各形状部位、即ち断面(a)〜(d)のダイス形状を、図5(a)に示す基本タイプから図5(b)に示す減肉タイプに変更した場合における、曲げ刃6とポンチ17との必要クリアランスを確保するための、断面(a)〜(d)に係る形状部位毎のカムストロークを新たに求める。図10には、断面(e)のダイス形状は図9(e)から変更せず、他の断面(a)〜(d)について、図9の基本タイプから減肉タイプへとダイス形状を変更した場合の、新たなカムストロークを示している。図10に示す例では、ダイス形状を減肉タイプに変更した状態で、曲げ刃5とポンチ17との必要クリアランスを確保するための断面(d)のカムストロークは1.99mm、断面(c)のカムストロークは2.66mm、断面(b)のカムストロークは1.33mm、断面(a)のカムストロークは1.08mmとなった。
また、ステップ8において、オーバーベンド刃6の設置範囲を、フランジ部3の長さ(断面(b)〜(e)は40mm、断面(a)は26mmである。)+α(夫々5mmに設定している。)の余裕代を設け、シワ、シャクレ等の成形不良の発生を防ぐ。
【0029】
ステップ9:ステップ8において求めた、断面(a)〜(e)のカムストロークのうち最大のカムストロークを確認する。図10の例では、断面(c)のカムストロークが2.66mmで最大となっている。そして、最も大きなカムストロークとなる形状部位、即ち断面(c)のカムストローク2.66mmを、一体オーバーベンドカム9のカムストロークとして決定する。
【0030】
ステップ10:各形状部位のカムストロークを一律にステップ9で決定したカムストローク2.66mmへと変更した場合に、曲げ刃5とポンチ17との必要クリアランスが確保されるように、各形状部位のダイス形状を、図5に示す三種類のダイス形状から選択する。
図11に示す例では、全ての断面においてカムストロークを2.66mmとした状態で、断面(c)のダイス形状のみ図10(c)から変更せず、断面(a)、(b)、(d)、(e)について、ダイス形状の選択を行った形状を示している。図11では、曲げ刃5とポンチ17との必要クリアランスを確保するための断面形状として、断面(e)の断面形状を、図10(e)の基本タイプから増肉タイプに変更している。また、断面(b)の断面形状を、図10(b)の減肉タイプから増肉タイプに変更している。しかし、断面(a)および断面(d)の断面形状は、図10(a)、(d)の減肉タイプのままで変更はない。
また、本ステップにおける断面形状の決定の際には、フランジ部3のうち伸びフランジ部に生ずる反り(シャクレ)に応じ、曲げ刃5とポンチ17との必要クリアランスの調整代も考慮することとする。
【0031】
なお、上記説明では、レール1の2つのフランジ部2、3の一方のみ図示して説明しているが、実際には、2つのフランジ2、3に対し、同時に曲げ成形およびオーバーベンド成形が行われるものである。
また、上記各断面形状の変更例および各部寸法は、あくまでも一例であり、例えば、最終的に選択される断面形状が、基本タイプに戻る場合もあり得る。また、本説明では「基本タイプ」のダイス形状を、必要なオーバーベンド角度αを持たせたオーバーベンド刃6の延長上に曲げ刃5を設けたダイス形状として説明したが、必要に応じて、基本タイプのダイス形状を減肉タイプまたは増肉タイプ寄りの形状として、かかる基本タイプのダイス形状に対し更に減肉を施した断面形状を減肉タイプとし、かかる基本タイプのダイス形状に対し更に増肉を施した断面形状を増肉タイプとして、上記手順に沿って上記ダイス8を形成すことも可能である。
【0032】
上記構成をなす本発明の実施の形態によって得られる作用効果は、以下の通りである。まず、本発明の実施の形態では、ダイス8に成形品であるレール1のフランジ部3全体へと密着するプロファイルを持たせ、かつ、ダイス8を一体オーバーベンドカム9で支持したことにより、曲げ成形に続くオーバーベンド成形を、型締めによる可動金型の動作と、所定のタイミングにおける一体オーバーベンドカム9のスライド動作とによって、レール1のフランジ部3の全体へと施すことが可能となる。よって、従来のごとく、曲げ工程とは別個に、リストライク工程、コイニング工程等の修正工程を設ける必要がなくなり、製品のコストアップを避けることができる。
【0033】
また、ダイス8の全体が一体オーバーベンドカム9によって、駆動されることから、プレス成形機の構造に影響を受けることなく、確実にダイス8の全体を駆動することが容易となる。さらに、レール1のフランジ部3の全体へとオーバーベンド成形を施すことから、従来の、製品の一部分に対してのみオーバーベンド成形を施す場合と異なり、曲げポンチ・ダイスのクリアランス調整、クッションパッド力の調整といった間接的な対処方法に頼ることなく、様々な製品に対し必要な修正を施すことが可能となる。
【0034】
また、一体オーバーベントカム9をスライド支持する固定金型11に一体オーバーベントカム9の弾性ストッパー12を配置することで、一体オーバーベントカム9の戻り時の衝撃吸収、騒音低下を図ることができる。また、一体オーバーベンドカム9の後退限度位置を決定するバックアップ面13、14を、可動金型10と一体オーバーベンドカム9とに設けることで、曲げ加工の際の、曲げ刃5とポンチ17との必要クリアランスを確保することができる。なおかつ、可動金型の可動下死点付近でのみ摺接し一体オーバーベンドカム9をスライド駆動する押出し面15、16を、可動金型10と一体オーバーベンドカム9とに設けることで、可動金型10の可動下死点付近でのみ一体オーバーベンドカム9をポンチ17に接近させ、可動金型10の可動下死点で、オーバーベンド成形を行うことが可能となる。
【0035】
また、ダイス8を形成する各ダイスブロック7のストロークは、各ダイスブロック7が一体オーバーベンドカム9に支持されることから、全て一律となる。そこで、本発明の実施の形態では、これらの各ダイスブロック7を、曲げ刃5とオーバーベンド刃6との連続面形状を異にした複数種類のダイスブロック(図5(a)〜(c))の中から、製品形状部位毎に要求量が異なるオーバーベンド角度に応じて選択することで、ダイス8の全体において、製品形状部位毎のスプリングバックに応じたオーバーベンド角度αとし、なおかつ、曲げ刃5とポンチ17との必要クリアランス(原則1t)を確保することが可能となる。
さらに、ポンチ17とクッションパッド18とに、成形品の捩れ方向と反対方向に捩れた見込みを持たせることで(図8参照)、捻れに対しても曲げ工程及び曲げ成形に続くオーバーベンド成形工程において修正を施すことが可能となる。
【0036】
さらに、ダイス8の形状の決定方法として、前記ステップ1からステップ10の手順を踏むことにより、一体オーバーベンドカム9による一律のカムストロークとしながら、ダイス8の形状を、製品形状部位毎のスプリングバックに応じたオーバーベンド角度とし、なおかつ、曲げ刃5とポンチ17との必要クリアランスを確保することが可能となる。
【0037】
また、前記ステップ2およびステップ3において、必要なオーバーベンド角度αを捻れ見込み角度θの分で補正することにより、ダイス8の形状を、捻れにも対応したものとすることができる。また、前記ステップ4において、縮みフランジ部のシワ解消のための先行曲げを考慮して、ダイフェース面を設定することで、ダイス8の形状を、縮みフランジ部のシワにも対応したものとすることができる。さらに、前記ステップ10において、フランジ部3のうち、伸びフランジ部の反り量に応じ、曲げ刃5とポンチ17との必要クリアランスを決定することで、ダイス8の形状を伸びフランジ部において発生する反りにも対応したものとすることができる。
【0038】
そして、本発明の実施の形態によれば、以下のような効果を得ることも可能である。
金型の償却費負担を抑制するために、同一の金型で、軟鋼鈑と高張力鋼鈑または、板厚の異なる材料を生産することが望ましい。ここで、一般的に、板厚同一であれば、高張力鋼鈑ほど弾性回復量が大きくなり、材料が同じであれば、板厚が薄いほど、弾性回復量が大きくなるという傾向がある。
【0039】
そこで、本発明の実施の形態に係る手法によってダイス8の形状を決定する際に、高張力鋼鈑仕様で金型を製作し、軟鋼鈑に対しては、高張力鋼鈑に比して弾性回復量が小さくなることを考慮し、一体オーバーベンドカム9のカムストロークを小さく設定して曲げ加工を行うことで、金型の共用化を図ることができる。
また、本発明の実施の形態に係る手法によってダイス8の形状を決定する際に、板厚の厚い仕様で金型を製作し、板厚の薄い材料に対しては、厚い板厚に対し弾性回復量が大きくなることを考慮し、一体オーバーベンドカム9のカムストロークを大きく設定することで、金型の共用化を図ることができる。よって、本発明の実施の形態によれば、金型の償却費負担の抑制にも貢献することができる。
なお、本発明の実施の形態では、本発明を、レール1をプレス成形するための手段として説明したが、他の弾性回復現象に伴う角度変化量が、製品形状部位によって大きく異なるプレス成形品に対しても応用することが可能である。
【0040】
【発明の効果】
本発明はこのように構成したので、弾性回復現象に伴う角度変化量が、製品形状部位によって大きく異なるプレス成形品の寸法精度を、オーバーベンドカムを用いたプレス曲げ一工程で確保することを可能とし、製品のコストアップを避けつつ、弾性回復現象に伴う角度変化量が、製品形状部位によって大きく異なるプレス成形品の寸法精度を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の実施の形態に係るオーバーベンド成形用金型の固定金型およびレールを示す平面図である。
【図2】 (a)は図1のA−A線、(b)は図1のB−B線における断面図であり、型締めを開始した時点における金型の状態を示している。
【図3】 (a)は図1のA−A線、(b)は図1のB−B線における断面図であり、可動金型の可動下死点付近まで、型締めが進行した時点における金型の状態を示している。
【図4】 (a)は図1のA−A線、(b)は図1のB−B線における断面図であり、可動金型10が可動下死点まで移動し、型締めを完了した時点における金型の状態を示している。
【図5】 本発明の実施の形態に係るオーバーベンド成形用金型のダイス形状を決定する際に考慮されるダイス形状を例示する図である。
【図6】 本発明の実施の形態に係るダイス形状の決定方法において、製品形状部位毎の必要なオーバーベンド角度を求める手順を示す説明図である。
【図7】 本発明の実施の形態に係るダイス形状の決定方法において、ねじれ見込み角度θ、オーバーベンド角度α、ダイフェース面の高さh、ダイRを決定する手順に係る説明図である。
【図8】 本発明の実施の形態に係るダイス形状の決定方法において、ポンチとクッションパッドとに、成形品の捩れ方向と反対方向のねじれ見込み角度θを持たせる手順に係る説明図である。
【図9】 本発明の実施の形態に係るダイス形状の決定方法において、曲げ刃とポンチとの必要クリアランスを確保し、かつ、一定のカムストロークで各形状部位の必要なオーバーベンド角度を有するダイス形状を決定するための手順を示す説明図である。
【図10】 図9に続く手順を示す説明図である。
【図11】 図10に続く手順を示す説明図である。
【図12】 トラックフレームのレール示す立体図である。
【符号の説明】
1 レール
2、3 フランジ部
5 曲げ刃
6 オーバーベンド刃
7 ダイスブロック
8 ダイス
9 一体オーバーベンドカム
10 可動金型
11 固定金型
13、14 バックアップ面
15、16 押出し面
Claims (4)
- 曲げ刃とオーバーベンド刃とを一体に有するダイスを、可動金型の開閉方向と交差する方向にスライドさせて、曲げ成形に続きオーバーベンド成形を行う金型であって、前記ダイスに、前記曲げ刃と前記オーバーベンド刃との連続面形状を異にした複数種類のダイスブロックの中から製品形状部位毎に要求量が異なるオーバーベンド角度に応じて選択したダイスブロックを、成形品のフランジ部全体に並べて、成形品のフランジ部全体へと密着するプロファイルを持たせ、かつ、各ダイスブロックのストロークが全て一律となるよう前記ダイスを一体オーバーベンドカムで支持したオーバーベンド成形用金型のダイス形状の決定方法において、
製品形状部位毎の必要なオーバーベンド角度を求め、
各形状部位の必要なオーバーベンド角度を有するダイス形状を、前記曲げ刃と前記オーバーベンド刃との連続面の形状を異にした、基本タイプ、減肉タイプ、増肉タイプの三種類のダイス形状のうち前記基本タイプで形成した場合における、曲げ刃とポンチとの必要クリアランスを確保するための各形状部位毎のカムストロークを求め、
当該各形状部位毎のカムストロークのうち最も小さなカムストロークとなる部位を除いた、各形状部位のダイス形状を前記基本タイプから前記減肉タイプに変更した場合における、曲げ刃とポンチとの必要クリアランスを確保するための各形状部位毎のカムストロークを新たに求め、
当該新たに求めた各形状部位毎のカムストロークのうち、最も大きなカムストロークとなる形状部位のカムストロークを、前記一体オーバーベンドカムのカムストロークとして決定し、
各形状部位のカムストロークを一律に前記決定したカムストロークへと変更した場合に、曲げ刃とポンチとの必要クリアランスが確保されるように各形状部位のダイス形状を前記三種類のダイス形状から選択する、各ステップを含むことを特徴とするオーバーベンド成形用金型のダイス形状の決定方法。 - 前記製品形状部位毎の必要なオーバーベンド角度を求めるステップに前後して、捻れ見込み角度をウェブ面形状に設定するステップと、前記必要なオーバーベンド角度を前記捻れ見込み角度分で補正するステップとを含むことを特徴とする請求項1記載のオーバーベンド成形用金型のダイス形状の決定方法。
- 伸びフランジ部の反り量に応じ、前記曲げ刃とポンチとの必要クリアランスを決定することを特徴とする請求項1または2記載のオーバーベンド成形用金型のダイス形状の決定方法。
- 縮みフランジ部のシワ解消のための先行曲げを考慮して、ダイフェース面を設定するステップを含むことを特徴とする請求項1から3のいずれか1項記載のオーバーベンド成形用金型のダイス形状の決定方法。
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