JP2011045905A5 - - Google Patents
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Description
本発明は、プレス成形方法に関し、特に、プレス成形後のスプリングバックを低減する技術に関する。
平板状のブランクを用いて、長手方向に向けた湾曲形状を有し、かつ、箱型又はハット型の断面形状を有する金属部品をプレス成形する場合、プレス成形用の金型から離型後、金型から加えられる曲げ応力が解放され、当該曲げ応力が解放される方向に向けて金属部品が反り戻る不具合(スプリングバック)が生じる。特に、金属部品の湾曲部分にスプリングバックが生じ易く、金属部品を湾曲形状に成形した後に寸法精度が悪化することが広く知られている。
従来、上記のような問題を解消するために、予め成形後のスプリングバック量を金型に見込んで、金型形状を調整することによって所望の寸法精度を確保していた。しかし、近年の金属部品の軽量化、高強度化の要請により、金属部品の材料として高強度鋼板の適用が進んでいる。高強度鋼板は、プレス成形後のスプリングバック量が多いため、寸法精度確保が非常に困難であり、金型の調整回数が数回では収まらないという問題がある。また、金型の調整回数の増加に伴い、製作期間・コストの増大に繋がっていた。
上記のような問題を解消する手段として、以下に示す特許文献1、及び特許文献2のような技術が開示されている。
従来、上記のような問題を解消するために、予め成形後のスプリングバック量を金型に見込んで、金型形状を調整することによって所望の寸法精度を確保していた。しかし、近年の金属部品の軽量化、高強度化の要請により、金属部品の材料として高強度鋼板の適用が進んでいる。高強度鋼板は、プレス成形後のスプリングバック量が多いため、寸法精度確保が非常に困難であり、金型の調整回数が数回では収まらないという問題がある。また、金型の調整回数の増加に伴い、製作期間・コストの増大に繋がっていた。
上記のような問題を解消する手段として、以下に示す特許文献1、及び特許文献2のような技術が開示されている。
特許文献1では、長手方向に向けて湾曲する形状を有する金属部品を成形するプレス成形方法であって、第一成形工程でエンボスを天板面に設けた中間品を成形し、第二成形工程で前記エンボスがなくなるように押圧しつつ、製品形状へ成形する方法が開示されている。これによれば、長手方向の引張応力を低減でき、スプリングバック量を低減できる。
しかしながら、特許文献1に記載のプレス成形方法によって成形される製品は、フラットな天板面を有するため、図14(a)に示すように、前記第一成形工程で金属部品100の天板面110に付与されるエンボス120を前記第二成形工程で押圧する際に、金属部品100の長手方向に直交する方向(幅方向)に板厚表裏面の応力差が新たに発生し、この応力差に起因して幅方向にスプリングバックが生じる。この幅方向のスプリングバックは、図14(b)に示すように、金属部品100の長手方向におけるスプリングバックの要因となるため、寸法精度の確保が困難となる点で不利である。
しかしながら、特許文献1に記載のプレス成形方法によって成形される製品は、フラットな天板面を有するため、図14(a)に示すように、前記第一成形工程で金属部品100の天板面110に付与されるエンボス120を前記第二成形工程で押圧する際に、金属部品100の長手方向に直交する方向(幅方向)に板厚表裏面の応力差が新たに発生し、この応力差に起因して幅方向にスプリングバックが生じる。この幅方向のスプリングバックは、図14(b)に示すように、金属部品100の長手方向におけるスプリングバックの要因となるため、寸法精度の確保が困難となる点で不利である。
また、特許文献2では、仕上げポンチを用いた仕上げ加工前に、仕上げポンチより径の小さい予備加工ポンチで天板面部分及び壁面部分を予備加工するプレス成形方法が開示されている。これによれば、予備加工ポンチにより壁面部分に製品形状と反対向きの曲げ加工を施すことができ、仕上げ加工後の壁面に生じる反りを低減できる。
さらに、前記仕上げ加工に際して、天板面部分に凹部を設けた所定の断面形状を得るためのポンチと、該ポンチの凹部に応じた凸部を有する天板面成形工具を前記ポンチと対向するダイス側の部位に設けた加工工具を用いて、成形ストロークの下死点到達直前で前記天板面となる部分を内側に向かって凸形状に成形する技術が開示されている。
しかしながら、特許文献2に開示されるプレス成形方法では、図15に示すように、予備加工ポンチ150による予備加工後の仕上げポンチ160による仕上げ加工時に、壁面170全体を金型180で拘束できないため、成形後の金属部品にしわ発生、素材割れ等の成形不良が生じ得る点で不利である。特に、図15に示すように、壁面170と天板面190との境界部分175でしわ・割れが発生し易い点で不利である。
さらに、前記仕上げ加工に際して、天板面部分に凹部を設けた所定の断面形状を得るためのポンチと、該ポンチの凹部に応じた凸部を有する天板面成形工具を前記ポンチと対向するダイス側の部位に設けた加工工具を用いて、成形ストロークの下死点到達直前で前記天板面となる部分を内側に向かって凸形状に成形する技術が開示されている。
しかしながら、特許文献2に開示されるプレス成形方法では、図15に示すように、予備加工ポンチ150による予備加工後の仕上げポンチ160による仕上げ加工時に、壁面170全体を金型180で拘束できないため、成形後の金属部品にしわ発生、素材割れ等の成形不良が生じ得る点で不利である。特に、図15に示すように、壁面170と天板面190との境界部分175でしわ・割れが発生し易い点で不利である。
本発明は、寸法精度を向上するとともに、金型補正回数の低減等を通じて量産準備のためのコストを低減することが可能なプレス成形方法を提供することを課題とする。
請求項1に記載のプレス成形方法は、成形素材を、ハット型断面が長手方向に連続するとともに、該長手方向に頂面側に突出した湾曲部分を含む、所定の形状を有する製品に成形するプレス成形方法であって、前記製品の湾曲部分の一部に、当該製品の頂面よりも高い位置に突出する余肉を有する中間製品を、前記中間製品の壁部全体を拘束しつつ、前記余肉を、当該余肉の突出方向と反対向きに突出するまで成形し、前記中間製品を前記所定の形状に成形する。
前記プレス成形方法において、前記中間製品の余肉は、前記製品の頂面の範囲内のみに付与されることが好ましい。
請求項2に記載のように、プレス成形方法において、前記中間製品に前記余肉が付与される領域内で、前記中間製品の長手方向に対して直交する任意位置断面における前記余肉の開始点から終了点までの線長と、当該任意位置断面における前記製品の余肉開始点相当位置から余肉終了点相当位置までの線長と、が略等しいことが好ましい。
請求項3に記載のように、プレス成形方法において、前記中間製品に前記余肉が付与される領域内で、前記中間製品の長手方向断面における、前記余肉の頂点のプロフィールと、前記製品の長手方向断面における、前記余肉の突出方向と反対向きに突出して成形される凹部の底点のプロフィールと、が略相似形状であることが好ましい。
本発明のプレス成形方法によれば、寸法精度を向上できるとともに、金型補正回数の低減等を通じて量産準備のためのコストを低減できる。
以下では、添付の図面を参照して、本実施形態に係るプレス成形方法について説明する。プレス成形方法は、プレス成形用の金型である各金型1・2を用いて所定の形状を有する製品5を成形する多段プレス成形方法である。
第一金型1は、成形素材であるブランク3を、所定形状を有する中間製品4に成形し、第二金型2は、中間製品4を、所定形状を有する製品5に成形する。
なお、以下において、中間製品4及び製品5の長手方向と直交する方向を、中間製品4及び製品5の幅方向として説明する。
第一金型1は、成形素材であるブランク3を、所定形状を有する中間製品4に成形し、第二金型2は、中間製品4を、所定形状を有する製品5に成形する。
なお、以下において、中間製品4及び製品5の長手方向と直交する方向を、中間製品4及び製品5の幅方向として説明する。
ブランク3は、高い引張強度(例えば980MPa程度)を有する高強度鋼板であり、所定の大きさを有する薄板状の部材である。
製品5は、ハット形状を有する金属部品であり、幅方向の断面視において、ハット型断面が長手方向に連続する形状を有し、長手方向において、頂面側に突出した湾曲形状を有する部材である。製品5は、金型1・2により得られる最終製品であり、第一金型1により成形される中間製品4を、さらに第二金型2により成形することにより得られる。製品5は、例えばセンターアウターピラー、補強材等の自動車部品である。
製品5は、ハット形状を有する金属部品であり、幅方向の断面視において、ハット型断面が長手方向に連続する形状を有し、長手方向において、頂面側に突出した湾曲形状を有する部材である。製品5は、金型1・2により得られる最終製品であり、第一金型1により成形される中間製品4を、さらに第二金型2により成形することにより得られる。製品5は、例えばセンターアウターピラー、補強材等の自動車部品である。
図1及び図2に示すように、製品5は、金型1・2のプレス方向に対向する天板面51と、天板面51の幅方向の両端部から連続して成形される略直立状の壁面52・52と、壁面52・52の天板面51と対向する側の端部(図1において下端部)に成形されるフランジ面53・53とを有する。ここで、天板面51は、ハット型断面を有する製品5の頂面として成形される部位であり、詳細には、製品5の頂面側(図1において上面側)の曲げ稜線の一側壁面52側のR止まり52a(図7、図11等参照)から、対向する壁面52側のR止まり52aまでに成形される部位である。壁面52・52は天板面51に対して同じ方向に屈曲されており、フランジ面53・53は壁面52・52の端部から幅方向外側に延出している。
図1及び図2に示すように、天板面51は、長手方向の一部(より厳密には、天板面51の長手方向の中途部から一端部に亘る部位であり、図示において「曲面」として示される領域)に天板面51側に突出して湾曲する曲面54を有する。ただし、天板面51の曲面54以外の部分(図示において「平面」として示される領域)は、曲率を有さない平面として成形されているものとする。
図1及び図2に示すように、天板面51は、長手方向の一部(より厳密には、天板面51の長手方向の中途部から一端部に亘る部位であり、図示において「曲面」として示される領域)に天板面51側に突出して湾曲する曲面54を有する。ただし、天板面51の曲面54以外の部分(図示において「平面」として示される領域)は、曲率を有さない平面として成形されているものとする。
図3に示すように、第一金型1は、ダイ10、パンチ11、しわ押さえ12・12を具備する。図4に示すように、第一金型1では、ダイ10としわ押さえ12・12とでブランク3を挟持し、パンチ11によりブランク3を所定形状に成形する。
ダイ10は、所定形状を有する凹部10aを有し、パンチ11は、ダイ10の凹部10aと所定間隔を空けて(より厳密には、ブランク3の厚みに略等しい間隔を空けて)凹部10a内に収容可能な凸部11aを有する。また、ダイ10、パンチ11、及びしわ押さえ12・12は、互いに相対移動可能である。
ダイ10は、所定形状を有する凹部10aを有し、パンチ11は、ダイ10の凹部10aと所定間隔を空けて(より厳密には、ブランク3の厚みに略等しい間隔を空けて)凹部10a内に収容可能な凸部11aを有する。また、ダイ10、パンチ11、及びしわ押さえ12・12は、互いに相対移動可能である。
図4に示すように、第一金型1を用いた第一プレス成形工程では、(a)ブランク3を載置したしわ押さえ12・12をダイ10に対して移動させることにより、(b)しわ押さえ12・12とダイ10とによりブランク3を挟持し、(c)パンチ11をブランク3に対して移動させることにより、ブランク3をダイ10の凹部10aとパンチ11の凸部11aとにより形成される所定の空間形状に曲げ成形し、中間製品4を得る。
第一プレス成形工程を経た後、中間製品4を第一金型1から離型し、第二金型2による第二プレス成形工程に移行する。
なお、第一金型1を用いた第一プレス成形工程は、本実施形態のものに限定されず、所定形状を有する中間製品4を成形可能であれば適用可能である。つまり、最終的に製品5を成形する予備成形として、製品5の曲面(湾曲部分)54の一部に、製品5の天板面(頂面)51よりも高い位置に突出する余肉45を有する中間製品4を成形するものであれば良い。
第一プレス成形工程を経た後、中間製品4を第一金型1から離型し、第二金型2による第二プレス成形工程に移行する。
なお、第一金型1を用いた第一プレス成形工程は、本実施形態のものに限定されず、所定形状を有する中間製品4を成形可能であれば適用可能である。つまり、最終的に製品5を成形する予備成形として、製品5の曲面(湾曲部分)54の一部に、製品5の天板面(頂面)51よりも高い位置に突出する余肉45を有する中間製品4を成形するものであれば良い。
図5及び図6に示すように、第一金型1により成形される中間製品4はハット型断面を有するとともに、その頂面に成形される天板部41と、天板部41の幅方向端部から連続して成形される略直立状の壁部42・42と、壁部42・42の天板部41と対向する側の端部(図5において下端部)に成形されるフランジ部43・43とを有する。
天板部41は、長手方向に曲率を有する形状に成形されており、壁部42及びフランジ部43は、製品5の壁面52及びフランジ面53と略同形状に成形されている。言い換えれば、中間製品4と製品5とは、頂面部分(天板部41と天板面51)の成形形状に大きな差異を有する。
天板部41は、長手方向に曲率を有する形状に成形されており、壁部42及びフランジ部43は、製品5の壁面52及びフランジ面53と略同形状に成形されている。言い換えれば、中間製品4と製品5とは、頂面部分(天板部41と天板面51)の成形形状に大きな差異を有する。
図1及び図5に示すように、中間製品4は、天板部41において、製品5における天板面51の曲面54の端部(より厳密には、曲面54の開始点又はその近傍を含む位置)から中途部にかけて、製品5の天板面51より高い位置に成形される余肉45が付与された形状を有する。
より具体的には、図7に示すように、中間製品4における天板部41は、製品5の天板面51と壁面52・52との境界部分(R止まり52a・52a)から、部品高さ方向(図7において上方向)に向けて隆起して成形されている。このように中間製品4において、製品5の天板面51より上方に突出している部分が、天板部41に付与されている余肉45である。つまり、中間製品4は、頂面部分に金型1・2のプレス方向に向けて突出する余肉45が成形されている点で製品5と大きく異なっている。
より具体的には、図7に示すように、中間製品4における天板部41は、製品5の天板面51と壁面52・52との境界部分(R止まり52a・52a)から、部品高さ方向(図7において上方向)に向けて隆起して成形されている。このように中間製品4において、製品5の天板面51より上方に突出している部分が、天板部41に付与されている余肉45である。つまり、中間製品4は、頂面部分に金型1・2のプレス方向に向けて突出する余肉45が成形されている点で製品5と大きく異なっている。
図8に示すように、第二金型2は、パンチ20、曲げ刃21、パッド22を具備する。図9に示すように、第二金型2では、パンチ20とパッド22とで中間製品4を挟持し、曲げ刃21により中間製品4の天板部41を所定形状に成形する。
パンチ20は、所定形状を有する凹部20aを有し、曲げ刃21は、パンチ20の凹部20aと所定間隔を空けて(より厳密には、中間製品4の厚みに略等しい間隔を空けて)凹部20a内に収容可能な凸部21aを有する。パッド22は、パンチ20のフランジ部43及び壁部42と所定間隔を空けて(より厳密には、中間製品4の厚みに略等しい間隔を空けて)係合可能に構成されており、特に、中間製品4に付与された余肉45以外の部分を拘束可能に構成されている。また、パンチ20、曲げ刃21、及びパッド22は、互いに相対移動可能である。
パンチ20は、所定形状を有する凹部20aを有し、曲げ刃21は、パンチ20の凹部20aと所定間隔を空けて(より厳密には、中間製品4の厚みに略等しい間隔を空けて)凹部20a内に収容可能な凸部21aを有する。パッド22は、パンチ20のフランジ部43及び壁部42と所定間隔を空けて(より厳密には、中間製品4の厚みに略等しい間隔を空けて)係合可能に構成されており、特に、中間製品4に付与された余肉45以外の部分を拘束可能に構成されている。また、パンチ20、曲げ刃21、及びパッド22は、互いに相対移動可能である。
図9に示すように、第二金型2を用いた第二プレス成形工程では、(a)中間製品4をパンチ20に載置し、(b)パッド22をパンチ20に対して移動させることにより、パッド22とパンチ20とにより、中間製品4の余肉45以外の部位(特に、中間製品4の壁部42・42全体)を拘束し、(c)曲げ刃21を中間製品4に対して移動させることにより、中間製品4の余肉45を潰しつつ、余肉45の突出形状(凸形状)が当該突出方向と反対向きの突出形状(凹形状)になるまで曲げ成形し、製品5を得る。
なお、本実施形態では、第二金型2の曲げ刃21とパッド22とが別体として構成されているが、中間製品4又は製品5の形状等の必要に応じて、これらを一体的に設けても良く、第二金型2によって、中間製品4の余肉45以外の部位を適宜拘束可能な構成であれば良い。前記「中間製品4又は製品5の形状に応じて」とは、例えば、製品5が箱型断面を有し、中間製品4にフランジ部43がない場合である。
なお、本実施形態では、第二金型2の曲げ刃21とパッド22とが別体として構成されているが、中間製品4又は製品5の形状等の必要に応じて、これらを一体的に設けても良く、第二金型2によって、中間製品4の余肉45以外の部位を適宜拘束可能な構成であれば良い。前記「中間製品4又は製品5の形状に応じて」とは、例えば、製品5が箱型断面を有し、中間製品4にフランジ部43がない場合である。
図9及び図10に示すように、第二金型2により成形される製品5の天板面51の一部(幅方向略中央部)には、中間製品4に付与される余肉45の突出方向(図示において上向き)と反対向き(図示において下向き)に突出する凹部55が成形されている。この凹部55は、中間製品4において余肉45が付与されていた部位の長手方向全域に亘って成形されており、凹部55の底面は、略平坦な面として成形されている。つまり、製品5において、天板面51の曲面54の一部には、長手方向に沿って略平坦な凹部55が成形されている。
以上のように、プレス成形工程は、第一金型1を用いてブランク3を、余肉45が付与された中間製品4に成形する第一プレス成形工程と、第二金型2を用いて中間製品4の余肉45を押圧し、突出方向が反対向きになるまで曲げ成形して製品5に成形する第二プレス成形工程とを含む。
第一金型1を用いた第一プレス成形工程により得られる中間製品4は、長手方向に向けた曲率を有する天板部41の曲面部分の一部に余肉45が付与された形状を有する(図10(a)参照)。
第二金型2を用いた第二プレス成形工程により得られる製品5は、その天板面51の曲面54に、略平坦な底面を含む凹部55を有する形状となる(図10(b)参照)。
第一金型1を用いた第一プレス成形工程により得られる中間製品4は、長手方向に向けた曲率を有する天板部41の曲面部分の一部に余肉45が付与された形状を有する(図10(a)参照)。
第二金型2を用いた第二プレス成形工程により得られる製品5は、その天板面51の曲面54に、略平坦な底面を含む凹部55を有する形状となる(図10(b)参照)。
このように、第二プレス成形工程において、中間製品4に付与される余肉45に残留する長手方向の引張応力に対して、中間製品4の天板部41の曲面部分に付与される余肉45を圧縮して反対向きに突出するまで成形することによって、長手方向に対する圧縮応力を付加して、天板面51の長手方向への残留引張応力を緩和できる。これにより、製品5の長手方向へのスプリングバックを低減できる。
さらに、余肉45を圧縮して反対向きに突出することにより、余肉45を平面に潰す過程で生じる幅方向の板厚表裏面の応力差が緩和されることで、余肉45の幅方向の曲げ癖が除去され、特許文献1のように余肉を平面に潰す場合に生じる製品5の幅方向のスプリングバックの弊害(余肉潰しに伴う長手方向のスプリングバック発生)を低減できる。
さらに、余肉45を圧縮して反対向きに突出することにより、余肉45を平面に潰す過程で生じる幅方向の板厚表裏面の応力差が緩和されることで、余肉45の幅方向の曲げ癖が除去され、特許文献1のように余肉を平面に潰す場合に生じる製品5の幅方向のスプリングバックの弊害(余肉潰しに伴う長手方向のスプリングバック発生)を低減できる。
また、第一プレス成形工程において、中間製品4に付与される余肉45は、製品5の天板面51の範囲内のみに成形されていることによって、第二プレス成形工程において、余肉45を曲げ成形により潰す際に、第二金型2により余肉45以外の部分を十分に拘束することができる。
これにより、第二プレス成形工程において、成形素材が天板面51以外に逃げて(移動して)、天板面51への圧縮応力の付加が不十分となることを防止でき、天板面51の残留引張応力を十分に低減できる。従って、これに起因するスプリングバックの発生を効果的に防止でき、余剰な素材によるしわの発生も防止できる。また、天板面51以外の成形素材が天板面51に流入し、天板面51の応力低減が不十分になることに起因するスプリングバックの発生も防止できる。ひいては、これらに起因する成形不良を防止できる。
これにより、第二プレス成形工程において、成形素材が天板面51以外に逃げて(移動して)、天板面51への圧縮応力の付加が不十分となることを防止でき、天板面51の残留引張応力を十分に低減できる。従って、これに起因するスプリングバックの発生を効果的に防止でき、余剰な素材によるしわの発生も防止できる。また、天板面51以外の成形素材が天板面51に流入し、天板面51の応力低減が不十分になることに起因するスプリングバックの発生も防止できる。ひいては、これらに起因する成形不良を防止できる。
以上のように、製品5の長手方向及び幅方向へのスプリングバックを低減できるので、製品5の成形素材の種類を問わず、最終的に製品5に発生するスプリングバック量を容易に金型1・2に見込むことができ、製品5の寸法精度を向上できる。ひいては金型補正回数の低減等を通じて量産準備のためのコストを低減できる。
このように、本実施形態によれば、箱型又はハット型断面を有し、かつ、長手方向に曲率を有する金属部品をプレス成形により成形する際に、プレス成形の寸法精度を向上できるとともに、金型補正回数の低減等を通じて量産準備のためのコストを低減できる。
このように、本実施形態によれば、箱型又はハット型断面を有し、かつ、長手方向に曲率を有する金属部品をプレス成形により成形する際に、プレス成形の寸法精度を向上できるとともに、金型補正回数の低減等を通じて量産準備のためのコストを低減できる。
また、前記プレス成形工程によって得られる製品5の天板面51は、上述のように曲面54において凹部55を有する。この凹部55は、天板面51の頂面から製品5の内側に向けた突出形状を有するため、製品5を自動車車体等に組み付ける際に他の部材と干渉することを防止できる。また、凹部55の底面は平坦な面として成形されているため、製品5を他の部材と溶接して固定する際に、溶接作業性は損なわれず、作業性は確保される。
このように、第一プレス成形工程で付与される余肉45は、天板面51の頂面から上方に向かって突出する形状に成形され、製品5に付与される凹部55の底面は平坦な面として成形されることが好ましい。
このように、第一プレス成形工程で付与される余肉45は、天板面51の頂面から上方に向かって突出する形状に成形され、製品5に付与される凹部55の底面は平坦な面として成形されることが好ましい。
また、中間製品4に付与される余肉45は、製品5の天板面51の形状に応じた位置に適宜付与されていれば良く、長手方向の曲げ応力が最も大きい位置に付与されていれば良い。例えば製品5が長手方向の全体に亘って曲面を有する形状である場合は、その曲面の曲率の変化する箇所(長手方向断面における変曲点)を含むように余肉45の付与位置を設定する。これにより、長手方向に向けた残留引張応力を最大限に低減できるので、長手方向のスプリングバック量を効果的に低減できる。
以下では、図11及び図12を参照して、中間製品4に対する余肉45の付与形態(付与量、付与形状)について詳細に説明する。
まず、幅方向の余肉45の付与量について、中間製品4に付与される余肉45の幅方向任意位置の断面における線長H1と、同一断面における製品5の天板面51の線長H2との幅方向線長比H2/H1を用いて示す。
図11に示すように、線長H1は、一側の壁面52のR止まり52aを開始点とし、その壁面52に対向する壁面52のR止まり52aを終了点として設定される余肉45の断面の長さであり、線長H2は、同じく一側の壁面52のR止まり52aを開始点とし、その壁面52に対向する壁面52のR止まり52aを終了点として設定される天板面51の断面の長さである。
まず、幅方向の余肉45の付与量について、中間製品4に付与される余肉45の幅方向任意位置の断面における線長H1と、同一断面における製品5の天板面51の線長H2との幅方向線長比H2/H1を用いて示す。
図11に示すように、線長H1は、一側の壁面52のR止まり52aを開始点とし、その壁面52に対向する壁面52のR止まり52aを終了点として設定される余肉45の断面の長さであり、線長H2は、同じく一側の壁面52のR止まり52aを開始点とし、その壁面52に対向する壁面52のR止まり52aを終了点として設定される天板面51の断面の長さである。
幅方向線長比H2/H1は、第二プレス成形工程において余肉45を曲げ成形する際の圧縮作用及び成形素材の流入量/流出量を考慮して、1.0程度とすることが好ましく、1.1以下とすることがより好ましい。
これにより、余肉45を凹形状に曲げ成形する際に、製品5に長手方向の引張応力を緩和する圧縮作用と、幅方向に適度な引張作用とを付与することができる。従って、製品5の天板面51の新たな応力発生を最低限に抑えることができ、製品5の寸法精度を向上できる。
ただし、余肉45を付与する領域は、製品5の曲面54の長手方向端部(特に、曲率の変化の大きい箇所)をその内部に含むように設定されているため、余肉45の長手方向端部においては、必ずしも上記幅方向線長比の値を満たす必要はない。
これにより、余肉45を凹形状に曲げ成形する際に、製品5に長手方向の引張応力を緩和する圧縮作用と、幅方向に適度な引張作用とを付与することができる。従って、製品5の天板面51の新たな応力発生を最低限に抑えることができ、製品5の寸法精度を向上できる。
ただし、余肉45を付与する領域は、製品5の曲面54の長手方向端部(特に、曲率の変化の大きい箇所)をその内部に含むように設定されているため、余肉45の長手方向端部においては、必ずしも上記幅方向線長比の値を満たす必要はない。
図12に示すように、中間製品4の幅方向の余肉45の頂点を長手方向断面で見たプロフィールP1と、製品5の凹部55の底点(底面)を長手方向断面で見たプロフィールP2とが略相似形状(より厳密には、余肉45の長手方向両端部を除いて相似形状)となるように余肉45を付与することが好ましい。従って、第二プレス成形工程において、中間製品4に付与される余肉45を押圧する際に、製品5の天板面51の新たな応力発生を抑制でき、寸法精度を向上できるとともに、製品5の凹部55の底面でのしわの発生を抑制できる。
プロフィールP1・P2を略相似形状に構成する具体例としては、長手方向断面で見た場合に曲面として構成されている凹部55の底面形状を、多面体で構成する等が挙げられる。このように凹部55を多面体として構成することにより、溶接面の精度管理を容易にでき、量産工程に適用し易いという効果を奏する。
プロフィールP1・P2を略相似形状に構成する具体例としては、長手方向断面で見た場合に曲面として構成されている凹部55の底面形状を、多面体で構成する等が挙げられる。このように凹部55を多面体として構成することにより、溶接面の精度管理を容易にでき、量産工程に適用し易いという効果を奏する。
また、長手方向の余肉45の付与量について、中間製品4に付与される余肉45の長手方向と直交する断面の頂点部分の長手方向断面における線長L1と、製品5の凹部55の底面の長手方向断面における線長L2との長手方向線長比L2/L1を用いて示す(図12参照)。図12に示すように、線長L1・L2は、プロフィールP1・P2の線長である。
長手方向線長比L2/L1は、第二プレス成形工程において余肉45を曲げ成形する際の圧縮作用及び成形素材の流入量/流出量を考慮して、1.0以下とすることが好ましい。
また、幅方向線長比H2/H1と長手方向線長比L2/L1との積が1.0程度となるように設定しても良い。例えば、幅方向線長比H2/H1を1.1とした場合でも、長手方向線長比L2/L1を0.9とすることで、余肉45の表面積と余肉45が成形されていた部分の天板面51の表面積とを略等しくできるため、余肉45の曲げ成形の際に余肉45内で材料の流入及び流出を行うこととなり、成形素材のしわ・割れの発生をより確実に防止することができる。
長手方向線長比L2/L1は、第二プレス成形工程において余肉45を曲げ成形する際の圧縮作用及び成形素材の流入量/流出量を考慮して、1.0以下とすることが好ましい。
また、幅方向線長比H2/H1と長手方向線長比L2/L1との積が1.0程度となるように設定しても良い。例えば、幅方向線長比H2/H1を1.1とした場合でも、長手方向線長比L2/L1を0.9とすることで、余肉45の表面積と余肉45が成形されていた部分の天板面51の表面積とを略等しくできるため、余肉45の曲げ成形の際に余肉45内で材料の流入及び流出を行うこととなり、成形素材のしわ・割れの発生をより確実に防止することができる。
なお、第一金型1によって中間製品4に付与される余肉は、その一部が製品5の天板面51の成形高さより高い位置に突出して付与されていれば良く、例えば、図13に示すような余肉65としても良い。この余肉65は、天板面51の凹部55の壁部56・56の頂部57・57から上方に向けて天板面51よりも突出するように滑らかに成形されている。つまり、中間製品4の頂面である天板部41と余肉65とが滑らかに接続されるように成形されている。
このような場合でも、第二金型2により余肉65を反対向きに圧縮して潰す際に、幅方向の残留引張応力が解消され、幅方向へのスプリングバック量を低減することができる。また、同様に長手方向へのスプリングバック量を低減できる。
このような場合でも、第二金型2により余肉65を反対向きに圧縮して潰す際に、幅方向の残留引張応力が解消され、幅方向へのスプリングバック量を低減することができる。また、同様に長手方向へのスプリングバック量を低減できる。
1 第一金型
2 第二金型
3 ブランク(成形素材)
4 中間製品
5 製品
41 天板部(中間製品の頂面)
45 余肉
51 天板面(製品の頂面)
55 凹部
2 第二金型
3 ブランク(成形素材)
4 中間製品
5 製品
41 天板部(中間製品の頂面)
45 余肉
51 天板面(製品の頂面)
55 凹部
Claims (3)
- 成形素材を、ハット型断面が長手方向に連続するとともに、該長手方向に頂面側に突出した湾曲部分を含む、所定の形状を有する製品に成形するプレス成形方法であって、
前記製品の湾曲部分の一部に、当該製品の頂面よりも高い位置に突出し、かつ、前記製品の頂面の範囲内のみに付与される余肉を有する中間製品を、
前記中間製品の壁部全体を拘束しつつ、前記余肉を、当該余肉の突出方向と反対向きに突出するまで成形し、前記中間製品を前記所定の形状に成形するプレス成形方法。 - 前記中間製品に前記余肉が付与される領域内で、
前記中間製品の長手方向に対して直交する任意位置断面における前記余肉の開始点から終了点までの線長と、
当該任意位置断面における前記製品の余肉開始点相当位置から余肉終了点相当位置までの線長と、が略等しい請求項1に記載のプレス成形方法。 - 前記中間製品に前記余肉が付与される領域内で、
前記中間製品の長手方向断面における、前記余肉の頂点のプロフィールと、
前記製品の長手方向断面における、前記余肉の突出方向と反対向きに突出して成形される凹部の底点のプロフィールと、が略相似形状である請求項1又は請求項2に記載のプレス成形方法。
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