JP6512191B2 - 金型の設計方法およびプレス成形品の製造方法 - Google Patents
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Description
車体構造部品に用いられるプレス成形品の一つとして、例えばBピラーアウターのような長手方向に所定の曲率半径で湾曲した天板部およびフランジ部と、天板部とフランジ部をつなぐ縦壁面とを有するハット形断面部品が挙げられる。このような部品をプレス成形した場合、成形下死点の天板部に引張応力、フランジ部に圧縮応力が発生し、これらの応力差により部品長手方向でのスプリングバック(キャンバーバック)が発生する。このような部品に対して、ハイテン材を適用した場合、前述の下死点での応力差が大きくなり、スプリングバックが増加するといった課題が発生する。さらに、ハイテン材では材料強度のバラつきが大きくなるため、寸法精度のバラつきも大きくなる。つまり材料強度感受性が増加する。
特許文献1に記載のプレス成形品の製造方法では、長手方向に湾曲した天板部と、天板部の長手方向に沿った両端から湾曲内側に向かって延在する二つの側壁面とを有する成形品に対して、前工程の天板部の曲率と、天板部と前記側面部とがなす角度を変更することにより、後工程で発生する応力を低減して、スプリングバックを抑制する。
特許文献3に記載のプレス成形品の製造方法では、プレス成形時に発生する反りを見込んだ金型を生成する方法であり、この見込み形状を用いてプレス成形することによりスプリングバックを低減する。
特許文献2に記載のプレス成形品の製造方法では、圧縮応力もしくは引張応力が発生する領域により、変更する曲率の大小傾向が変化するため、金型の設計が複雑になる。
そこで本発明は、上記従来の問題点を解消することにあり、ハイテン材を使用した場合でも、キャンバーバックと部品断面のスプリングバックを精度良く低減することができ、目標の部品形状に近い高精度なハット形断面湾曲形状の部品を得ることができる形状凍結性および材料強度感受性に優れたプレス成形品の製造方法に採用可能な金型の設計方法及びそれを使用したプレス成形品の製造方法を提供することを目的とする。
上記金属板を上記第1の工程を行うことなく直接上記製品形状にプレス成形する場合に発生する部品断面方向のスプリングバック及び部品長手方向のスプリングバックを抑制可能な形状の上記中間部品に成形するための金型形状を決定する際に、上記部品断面方向のスプリングバックを抑制可能な金型形状を決定した後に、上記部品長手方向のスプリングバックを抑制可能な形状に上記金型形状を修正することを特徴とする。
これによって、長手方向に沿って湾曲があるハット形断面にプレス成形する場合で且つ超ハイテン材を使用した場合でも、精度良く部品断面方向のスプリングバックおよびキャンバーバックを低減することができ、さらに材料強度感受性に優れた高精度なハット形断面湾曲形状の部品を得ることができる。この結果、材料強度が振れた場合でも、寸法精度の高い部品が得られ、歩留まりの向上に繋がる。さらに、ハット形断面形状の部品を用いて車体構造部品とする際に、部品の組み立てを容易に行うことが可能となる。
本実施形態が目的とするプレス成形による製品形状の例を図1に示す。この例では、本体部4が、天板部1とフランジ部2とが側壁部3を介して幅方向で連続してハット形断面の部品となっていると共に、天板部1及びフランジ部2が長手方向に沿って天板部1側に凸となるように湾曲した形状となっている。図1では、湾曲部分が左側に偏って形成されている。天板部1及びフランジ部2にそれぞれ形成される、長手方向に沿った湾曲の曲率は同じでも良いが、本実施形態では異なっているとする。
さらに、天板部1に対し、補強その他を目的とした凹や凸の形状が形成される場合であっても適用できる。この場合、天板部1と対向する金型のプレス面部分にその凹や凸の形状を形成しておけばよい。
金属板としては超ハイテン材を対象とするが、鋼板やアルミニウム板などを用いてもよい。また、中間部品及び製品形状において、天板部1とフランジ部2の曲率半径の大きさは異なっていてもよい。
ここで、フランジ外周をトリムするトリム加工(不図示)を有する。トリム加工は、第1の工程の前に実施しても良いし、第1の工程と第2の工程の間で実施しても良いし、第2の工程の後に実施しても良い。本実施形態では、トリム加工を第1の工程でのプレス加工の後に実施する場合で説明する。この場合、中間部品は、フランジ外周のトリム加工が行われた状態の部品となる。
第2の工程は、第1の工程で作製した中間部品20を、図4(b)に示すような第2の金型で使用して、製品形状にプレス成形する工程である。符号21はパンチ、符号22は下型、符号23はシワ押さえ部材である。
第1の金型は、金属板10を第1の工程を行うことなく直接、製品形状にプレス成形する場合に発生する部品断面方向のスプリングバック及び部品長手方向のスプリングバックの両方を抑制可能な形状の中間部品20に成形するための金型形状に設計する。
第1の設計は、例えば次のように実施する。
第1の設計では、対象とする製品形状における長手方向に沿った湾曲がない長手方向に沿ってストレートなハット形断面形状を対象として、部品断面方向のスプリングバックを抑制可能な金型形状を決定する。
ここで、壁開きは、パンチ肩角度変化(天板部1と側壁部3との接続部の角度変化)と壁反りによって発生する。この壁開き抑制するための金型の設計としては、次のような方法が例示出来る。
また、第2の設計では、第1の設計で決定した金型形状を、部品長手方向のスプリングバックを抑制可能な形状に修正する。
すなわち、上記により部品断面のスプリングバック抑制条件を見出した後、キャンバーバック対策を実施する。
ここで、(R1’/R1o)および(R2’/R2o)が0.7よりも小さい場合、第2の工程での金型下死点において天板部1に過度の圧縮応力が、フランジ部2に過度の引張応力が発生し、成形品にスプリングゴーが発生するおそれがある。逆に、(R1’/R1o)および(R2’/R2o)が1よりも大きい場合、第2の工程の金型下死点において天板部1に引張応力が、フランジ部2に圧縮応力が残り、スプリングバックが十分抑制されない可能性がある。
同じ線長とするには、例えばフランジ部2と張出部5を接続する縦壁部6の線長を変更するように調整することで可能である。
また、第2の工程に使用する第2の金型は、製品形状若しくはそれに近似する形状を有する金型形状に設定する。
また、上記の各中間部品20に発生するスプリングバック後の各曲率半径は、CAE解析その他のシミュレーション解析をコンピュータで行うことで計算によって求めても良いし、実際に試験品を作製して実測によって求めても良い。
第1の工程で、上記のように設計した第1の金型を用いて、金属板10を中間部品20にプレス成形する。
次に、第2の工程で、上記の第2の金型を用いて、中間部品20をプレス成形して製品形状の部品を製造する。
本実施形態にあっては、先に部品断面方向のスプリングバックを抑制した形状を決定した後に、部品長手方向のスプリングバック(キャンバーバック)を抑制するように修正を加えた第1の金型で中間部品20を作製する。
なお、プレス成形に使用する金属板10は板厚t=1.4mmであって、引張強度が590MPa級〜1470MPa級の鋼板とし、第1の工程の成形をフォーム成形で成形した場合とした。
2 フランジ部
3 側壁部
10 金属板
20 中間部品
Claims (9)
- 金属板を、天板部とフランジ部とが側壁部を介して幅方向で連続していると共に上記天板部及び上記フランジ部が長手方向に沿って上記天板部側に凸や凹に湾曲したハット形断面を有する製品形状に複数工程のプレス成形で製造し、その複数工程に、ハット形断面の中間部品にプレス成形する第1の工程と、上記中間部品を上記製品形状にプレス成形する第2の工程とを有するプレス成形品の製造方法における、上記第1の工程のプレス成形で使用される金型の設計方法であって、
上記金属板を上記第1の工程を行うことなく上記製品形状にプレス成形する場合に発生する部品断面方向のスプリングバック及び部品長手方向のスプリングバックを抑制可能な形状の上記中間部品に成形するための金型形状を決定する際に、
上記部品断面方向のスプリングバックを抑制可能な金型形状を決定した後に、上記部品長手方向のスプリングバックを抑制可能な形状に上記金型形状を修正することを特徴とする金型の設計方法。 - 上記部品断面方向のスプリングバックを抑制可能な金型形状の決定は、上記製品形状における上記長手方向に沿った湾曲がないハット形断面形状を対象として、上記部品断面方向のスプリングバックを抑制可能な金型形状を決定することを特徴とする請求項1に記載した金型の設計方法。
- 上記部品長手方向のスプリングバックを抑制可能な形状への上記金型形状の修正は、上記中間部品での天板部及びフランジ部をプレスする面の部品長手方向に沿った湾曲の曲率半径を、上記製品形状での部品長手方向に沿った湾曲の曲率半径よりも小さな曲率半径に修正することを特徴とする請求項2に記載した金型の設計方法。
- 上記金型から取り出した際に発生するスプリングバック後の上記中間部品の長手方向に沿った湾曲の曲率半径が、上記製品形状での部品長手方向に沿った湾曲の曲率半径よりも小さな曲率半径となるように金型形状を修正することを特徴とする請求項3に記載した金型の設計方法。
- 上記製品形状における天板部の長手方向に沿った曲率半径をR1oと定義した場合、上記中間部品におけるスプリングバック後の天板部の長手方向に沿った曲率半径R1’が下記(1)式を満たす値となるように、上記天板部をプレスする面の長手方向の形状を修正することを特徴とする請求項4に記載した金型の設計方法。
0.70 ≦ (R1’/R1o) < 1.00・・・・(1) - 上記製品形状におけるフランジ部の長手方向に沿った曲率半径をR2oと定義した場合、上記中間部品におけるスプリングバック後のフランジ部の長手方向に沿った曲率半径R2’が下記(2)式を満たす値となるように、上記フランジ部をプレスする面の長手方向の形状を修正することを特徴とする請求項4又は請求項5に記載した金型の設計方法。
0.70 ≦ (R2’/R2o) < 1.00・・・・(2) - 上記第1の工程ではドロー成形またはフォーム成形を適用し、上記第2の工程では製品形状に成形するリストライク工程であることを想定して上記金型を設計することを特徴とする請求項1〜請求項6のいずれか1項に記載した金型の設計方法。
- 上記金属板の材料強度が590MPa以上の鋼板として上記金型を設計することを特徴とする請求項1〜請求項7のいずれか1項に記載した金型の設計方法。
- 請求項1〜請求項8のいずれか1項に記載の金型の設計方法で設計した金型を用いることを特徴とするプレス成形品の製造方法。
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