JP6515961B2 - プレス成形品の製造方法 - Google Patents
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Description
車体構造部品に用いられるプレス成形品の一つとして、例えばBピラーアウターのような、長手方向に沿って所定の曲率半径で湾曲した天板部およびフランジ部を有するハット形断面部品が挙げられる。このような部品にプレス成形した場合、成形下死点で、天板部に引張応力が発生すると共にフランジ部に圧縮応力が発生し、これらの応力差によりスプリングバック(キャンバーバック)が発生する。このような部品に対して、ハイテン材を適用した場合、前述の下死点での応力差が大きくなり、スプリングバックが増加するといった課題が発生する。さらに、ハイテン材では材料強度のバラツキが大きくなるため、寸法精度のバラツキも大きくなる、すなわち材料強度感受性が大きい。
特許文献1に記載の方法では、長手方向に湾曲した天板部と、天板部の長手方向に沿った両端から湾曲内側に向かって延在する二つの側壁部とを有する成形品に対して、前工程の天板部の曲率と天板部と側面部とがなす角度を変更する。これによって、特許文献1に記載の方法では、後工程で発生する応力を低減し、スプリングバックを抑制する。
特許文献3に記載の方法は、プレス成形時に発生する反りを見込んだ金型を生成する方法であり、この見込み形状を用いてプレス成形することによりスプリングバックを低減する。
特許文献2に記載の方法では、圧縮応力もしくは引張応力が発生する領域により、変更する曲率の大小傾向が変化するため、金型の設計が複雑になる。
本発明は、上記のような課題に鑑みてなされたものであり、ハイテン材を使用した場合でも、金型を複雑にすることなく、側面視のスプリングバック、すなわちキャンバーバックとキャンバーバックの材料強度感受性を大きく低減することができるプレス成形品の製造方法を提供する。
天板部1の幅方向両側が側壁部3を介してフランジ部2に連続しているハット形断面部品であって、長手方向に沿って天板部1側に凸となるように湾曲したハット形断面部品に、ブランク材からなる金属板をプレス成形すると、図1(a)に示すように、湾曲部分の天板部1において引張残留応力が発生すると共に、フランジ部2において圧縮残留応力が発生する。そして、プレス金型から部品を外して、これらの応力が開放されることによって、図1(b)に示すようなスプリングバックが発生する。このとき、金属板の材料強度の増加に伴い、この残留応力が増加して、スプリングバック量が大きくなる傾向がある。すなわち、590MPa以上のハイテン材を採用するとスプリングバックが大きくなる。
本実施形態のプレス成形品の製造方法は、平板状の金属板を上記の製品形状に成形するための加工として、図4に示すように、第1の工程と、第2の工程とを有する。プレス成形品の製造のためのプレス工程を2段階以上の多工程とすることで、製品のスプリングバック抑制などの寸法精度を向上させることができる。
天板部1の第2の曲率半径と、フランジ部2の第2の曲率半径は大きさが異なるように設定される場合が多い。
例えば、製品形状における天板部1の長手方向に沿った天板部1の曲率半径をR1oと定義した場合、中間部品におけるスプリングバック後の天板部1の長手方向に沿った曲率半径R1’が下記(1)式を満たす値となるように、天板部1での第2の曲率半径の値を設定することが好ましい。すなわち、スプリングバック後の中間部品では、製品形状と比較してスプリングゴー側となる曲率半径となるように設定する。
0.70 ≦ (R1’/R1o) < 1.00・・・・(1)
0.70 ≦ (R2’/R2o) < 1.00・・・・(2)
上記の各中間部品に発生するスプリングバック後の各曲率半径は、CAE解析その他のシミュレーション解析をコンピュータで行うことで計算によって求めても良いし、実際に試験品を作製して実測によって求めても良い。
また本実施形態では、第1の工程での上記プレス成形後に、フランジ外周のトリム加工を施す。トリム加工には、せん断加工やレーザ切断加工などの公知の加工方法を採用すれば良い。
例えば、製品形状における天板部1の長手方向に沿った天板部1の曲率半径をR3oと定義した場合、第2の工程における金型の天板部の長手方向に沿った曲率半径R3o’が下記(3)式を満たす値となるように、第2の工程の天板部1での曲率半径の値を設定することが好ましい。
1.00 < (R3o’/R3o) ≦ 3.00・・・・(3)
1.00 < (R4o’/R4o) ≦ 3.00・・・・(4)
本実施形態のプレス成形品の製造方法では、スプリングバックを低減するために、第1の工程で、天板部1とフランジ部2の曲率半径をそれぞれ、製品形状の曲率半径よりも小さくなるようにプレス成形し、第2の工程で、第1の工程で得られた中間部品を、製品形状よりも大きい曲率半径にプレス成形して目標の成形形状の部品を得る。
第1の工程の成形において、スプリングバック後の中間部品の天板部1とフランジ部2の各曲率半径を、製品形状での曲率半径以下になるように成形することより、第2の工程でのリストライク成形において天板部1に小さい圧縮応力、フランジ部2に小さい引張応力を発生させる。これにより、天板部1においては、小さい圧縮応力が残留するか、第1の工程において発生した引張応力と第2の工程において発生した圧縮応力が打ち消しあうことで、長手方向の応力がゼロに近づく。同様に、フランジ部2においては、小さい引張応力が残留するか、第1の工程において発生した圧縮応力と第2の工程において発生した引張応力が打ち消しあうことで、長手方向の応力がゼロに近づく。これにより応力差が低減もしくはゼロとなり、製品形状でのスプリングバック量が低減すると共に、材料強度が振れた場合において、材料強度の感受性を向上させることが可能となる。
ここで、(R1’/R1o)および(R2’/R2o)が0.7よりも小さい場合、第2の工程での金型下死点において天板部1に過度の圧縮応力が、フランジ部2に過度の引張応力が発生し、プレス成形品に大きなスプリングゴーが発生するおそれがある。逆に、(R1’/R1o)および(R2’/R2o)が1よりも大きい場合、第2の工程の金型下死点において天板部1に引張応力が、フランジ部2に圧縮応力が残り、スプリングバックが十分抑制されない可能性がある。
この結果、本実施形態によれば、材料強度が振れた場合でも、寸法精度の高い部品が得られ、歩留りの向上に繋がる。さらに、ハット形断面形状の部品を用いて車体構造部品とする際に、部品の組立てを容易に行うことが可能となる。
本実施例では図2(a)、(b)に示す長手方向に湾曲したハット形断面部品をプレス成形する場合を対象とした。
表1にプレス条件および評価結果をまとめて示す。
なお、プレス成形に使用する金属板は、板厚t=1.4mmであって、引張強度(材料強度)が590MPa級〜1180MPa級の鋼板とした。
No.1〜No.3(従来工法)では、製品のパンチ底曲率R1600の金型で1工程だけで成形した結果であり、プレス成形解析とスプリングバック解析とを実施し、スプリングバック前後の天板部1のスプリングバック量(曲率半径)を測定した。
このとき、各材料強度のスプリングバック後の曲率半径は製品形状よりも大きくなり、さらに材料強度の増加に伴い曲率半径が大きくなる。また、下限の590MPa材と1180MPa材の曲率半径の差を求めたところ、206[mm]の差が発生した。
No.4〜No.6では、第1の工程のスプリングバック後の曲率半径が製品曲率R1600より小さくなるようにR1100の金型で成形し、第2の工程は製品曲率R1600でリストライクをする条件で、プレス成形解析を行った。
本発明に基づいたNo.7〜No.9では、第1の工程のスプリングバック後の曲率半径が製品曲率R1600より小さくなるようにR1200の金型で成形し、第2の工程は製品曲率R1600よりも大きいR1700で成形するプレス成形解析を行った。
この場合には、第1の工程のスプリングバック後の曲率半径は、すべての材料強度で製品曲率R1600よりも小さくなった。この形状を第2の工程において、R1700で成形すると、すべての材料強度で製品曲率R1600と同じ曲率になり、すべての材料強度でほぼ同じ曲率半径になる。また、下限の590MPa材と1180MPa材の曲率半径の差を求めたところ、2[mm]の差となり、従来工法と比較して大幅に曲率半径の差が低減した。また、No.4〜No.6と比較しても、曲率半径の差が低減した。
2 フランジ部
3 側壁部
4 本体部
5 張出部
6 縦壁部
Claims (6)
- 天板部とフランジ部とが側壁部を介して幅方向で連続していると共に、上記天板部及び上記フランジ部が長手方向に沿って上記天板部側に凸若しくは凹に湾曲したハット形断面を有する製品形状に、金属板をプレス成形して製造する際に、
上記天板部及びフランジ部について、それぞれ長手方向に沿った湾曲を上記製品形状での曲率半径よりも小さい第2の曲率半径のハット形断面を有する部品形状にプレス成形して中間部品を製造する第1の工程と、
上記中間部品の長手方向に沿った湾曲を、上記製品形状よりも大きい曲率半径にプレス成形する第2の工程と、を有することを特徴とするプレス成形品の製造方法。 - 上記天板部及びフランジ部の上記各第2の曲率半径は、それぞれ上記第1の工程で成形した後に上記中間部品に発生するスプリングバック後の曲率半径が、上記製品形状での曲率半径以下となる値に設定することを特徴とする請求項1に記載したプレス成形品の製造方法。
- 上記製品形状における天板部の長手方向に沿った天板部の曲率半径をR1oと定義した場合、上記中間部品におけるスプリングバック後の天板部の長手方向に沿った曲率半径R1’が下記(1)式を満たす値となるように、上記天板部での上記第2の曲率半径の値を設定することを特徴とする請求項1に記載したプレス成形品の製造方法。
0.70 ≦ (R1’/R1o) < 1.00・・・・(1) - 上記製品形状におけるフランジ部の長手方向に沿った曲率半径をR2oと定義した場合、上記中間部品におけるスプリングバック後のフランジ部の長手方向に沿った曲率半径R2’が下記(2)式を満たす値となるように、上記フランジ部での上記第2の曲率半径の値を設定することを特徴とする請求項1又は請求項3に記載したプレス成形品の製造方法。
0.70 ≦ (R2’/R2o) < 1.00・・・・(2) - 第1の工程の成形にドロー成形またはフォーム成形を適用し、第2の工程の成形にリストライク加工を適用することを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載したプレス成形品の製造方法。
- 金属板の材料強度が590MPa以上の鋼板とすることを特徴とする請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載したプレス成形品の製造方法。
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