JP6176429B1 - プレス成形品の製造方法 - Google Patents
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Abstract
Description
車体構造部品に用いられるプレス成形品の一つとして、Bピラーアウターがある。このような部品は、長手方向に所定の曲率半径で天板部側に湾曲した湾曲部分を有する天板部およびフランジ部と、長手方向端部側に天板部とフランジ部をつなぐ縦壁部とを有し、上記湾曲部分が上記の縦壁部に対向して延在するハット形断面となっているハット形断面部品である。このようなハット形断面部品に金属板を単純にプレス成形した場合、金型の成形下死点で天板部に引張応力が発生すると共にフランジ部に圧縮応力が発生し、これらの応力差によりスプリングバック(キャンバーバック)が発生する。このような部品への成形にハイテン材からなる金属板を適用した場合、前述の下死点での応力差が大きくなり、スプリングバックが増加するといった課題がある。
特許文献1に記載のプレス成形方法は、長手方向の面内で湾曲した形状を有するプレス成形品に成形する方法である。特許文献1に記載のプレス成形方法では、プレス成形品に形成される複数湾曲部のうち、少なくとも一つの湾曲部について、第1成形工程において曲率半径が最終製品の曲率半径よりも小さくなるように成形しておき、第2成形工程において、第1成形工程で得られた部品の曲率半径より大きい曲率半径として成形する。これによって、特許文献1では、第1成形工程で発生する応力を第2成形工程で発生する応力でキャンセルすることにより、スプリングバックを抑制する。
また特許文献2に記載のプレス成形方法では、第1成形工程と第2成形工程の幅が異なる。このため、第2成形工程において第1成形工程で成形された際のパンチ肩の曲げ癖が残り、開き量に悪影響を与える可能性がある。
この結果、本発明の一態様によれば、寸法精度の高い部品が得られ、歩留まりの向上に繋がる。さらに、ハット形断面形状の部品を用いて車体構造部品とする際に、部品の組立てを容易に行うことが可能となる。
天板部1の幅方向両側が側壁部3を介してフランジ部2に連続しているハット形断面部品であって、長手方向に沿って天板部1側が凸となるように湾曲したハット形断面部品に、ブランク材からなる金属板をプレス成形すると、図1(a)に示すように、湾曲部分の天板部1において引張残留応力が発生すると共に、フランジ部2において圧縮残留応力が発生する。そして、プレス金型から部品を外して、これらの応力が開放されることによって、図1(b)に示すようなスプリングバックが発生する。このとき、金属板の材料強度の増加に伴い、この残留応力が増加して、スプリングバック量が大きくなる傾向がある。すなわち、590MPa以上のハイテン材を金属板として採用するとスプリングバックが大きくなる。
ここで、本実施形態が目的とするプレス成形により製造する製品形状は、図2に示すように、本体部4と、その本体部4の長手方向端部に形成された張出部5とを有する。
本体部4は、天板部1とフランジ部2とが側壁部3を介して幅方向で連続してハット形断面の部品となっていると共に、天板部1及びフランジ部2が長手方向に沿って天板部1側に凸となるように湾曲した形状となっている。
なお、L字形状の場合には、幅方向の片側にだけ縦壁部6が存在するか、若しくは一方の縦壁部6は張出部5に接続していない構造となっている。
ここで、フランジ外周をトリムするトリム加工(不図示)を有する。トリム加工は、第1の工程の前に実施しても良いし、第1の工程と第2の工程の間で実施しても良いし、第2の工程の後に実施しても良い。本実施形態では、トリム加工を第1の工程でのプレス加工の後に実施する場合で説明する。この場合、中間部品は、フランジ外周のトリム加工が行われた状態の部品となる。
ここで、図2のように、フランジ部2の長手方向端部が左右両側にある場合には、両端部にそれぞれ上記線長を短くする予備成形を適用しても良いが、本体部4の湾曲によるひずみの影響が大きい側の長手方向端部側だけ線長を短くなるように、予備成形を実施しても良い。
図4(b)において、第1の工程での成形後の連続部分をL2で示し、対応する位置の第2の工程での成形後の連続部分をL1で示している。この例では、予備成形時に、接続部Sでのアール(曲率半径)を大きくすることで連続部分の線長を短く設定した場合の例である。なお、図4(b)において、一点鎖線は、第2の工程後の形状を示し、図4(b)では、L1,L2で連続部分の位置と長さ(線長)を示している。
また本実施形態では、第1の工程での上記プレス成形後に、フランジ外周のトリム加工を施す。トリム加工には、せん断加工やレーザ切断加工などの公知の加工方法を採用すれば良い。
第2の工程は、第1の工程で予備成形された部品形状を目的の製品形状にプレス成形する本成形の工程である。第2の工程における製品形状への成形は、例えば公知の加工方法であるリストライク加工を採用すれば良い。
予備成形(第1の工程)において製品形状に対して連続部分の線長を短くすれば、スプリングバック抑制の効果はあるが、その短くする線長は例えば、次のようにして求めれば良い。
金属板をプレスで製品形状とするシミュレーション解析(応力解析などのCAE解析)をコンピュータで行うことで、フランジ部2の湾曲部分に発生する長手方向圧縮応力領域での上記長手方向の線長Loと長手方向平均ひずみ量εoとを求める。
そして、連続部分における、製品形状での線長をL1、上記予備成形後の線長をL2と定義した場合、最低限短く成形した方が好ましい線長短縮分ΔLはΔL=Lo×εoで表される。したがって例えば、下記(1)式を満足するように、予備成形において線長を短くする量を設定する。
L1−L2 ≧ Lo×εo ・・・・(1)
(Lo×εo) ≦ L1−L2 ≦ 3×(Lo×εo)・・・・(2)
ここで、ΔL(=L1−L2)がΔLoよりも小さい場合、第2の工程において、フランジ部2に十分な張力が加わらないために圧縮応力が低減せず、スプリングバックが十分抑制されないおそれがある。
一方、ΔLが3×ΔLoよりも大きい場合、第2の工程において、フランジ部2に発生する張力が過大になり、割れが発生する可能性がある。
ここで、割れを考慮すると、(Lo×εo) ≦ L1−L2 ≦ 3×(Lo×εo)の範囲が好ましい。
この結果、本実施形態によれば、寸法精度の高い部品が得られ、歩留まりの向上に繋がる。さらに、本実施形態によれば、ハット形断面形状の部品を用いて車体構造部品とする際に、部品の組立てを容易に行うことが可能となる。
その結果について以下に説明する。
本実施例では図2に示す長手方向に沿って湾曲したハット形断面部品を目的とする製品形状として、プレス成形する場合を対象とした。
なお、プレス成形に使用する金属板は板厚t=1.4mmであって、引張強度が590MPa級〜1470MPa級の鋼板とした。
従来法では、第1の工程を行うこと無く、第2の工程だけで金属板を製品形状にプレス成形するという条件とした。
表1にプレス成形条件および評価結果をまとめて示す。
一方、本発明の例であるNo.5〜8では、第1の工程で連続部分の線長短縮分(L1−L2)をΔLoとして変更して、プレス成形およびスプリングバックの解析を実施した場合、最大スプリングバック量は1470MPa材で7.3mmに低減した。
更に、本発明の例であるNo.9〜12では、第1の工程での線長短縮分(L1−L2)を3・ΔLoとして変更して、プレス成形およびスプリングバックの解析を実施した場合、最大スプリングバック量は1470MPa材で4.1mmに低減した。
以上、本願が優先権を主張する、日本国特許出願2016−027116(2016年2月16日出願)の全内容は、参照により本開示の一部をなす。
ここでは、限られた数の実施形態を参照しながら説明したが、権利範囲はそれらに限定されるものではなく、上記の開示に基づく各実施形態の改変は当業者にとって自明なことである。
2 フランジ部
3 側壁部
4 本体部
5 張出部
6 縦壁部
L1、L2 連続部分の線長
Claims (5)
- 天板部とフランジ部とが側壁部を介して幅方向で連続していると共に、上記天板部及び上記フランジ部が長手方向に沿って上記天板部側に凸となるように湾曲し、上記天板部の長手方向端部に上記天板部よりも幅方向の寸法が大きい張出部が連続し、更に上記フランジ部の長手方向端部に連続して上記天板部側に立ち上がって上端が上記張出部に連続する縦壁部を有する製品形状に、金属板をプレス成形して製造する際に、
上記フランジ部の長手方向端部と上記縦壁部との連続部分の線長を上記製品形状での線長よりも短くした形状に予備成形する第1の工程と、
上記第1の工程の後に、目的とする上記製品形状にプレス成形する第2の工程を有することを特徴とするプレス成形品の製造方法。 - 上記金属板をプレスで上記製品形状とするシミュレーション解析をコンピュータで行うことで、上記フランジ部に発生する長手方向圧縮応力領域での上記長手方向の線長Loと長手方向平均ひずみ量εoとを求め、
上記連続部分の、上記製品形状での線長をL1、上記予備成形後の線長をL2と定義した場合、
上記第1の工程で、下記(1)式を満足するように線長を短くすることを特徴とする請求項1に記載したプレス成形品の製造方法。
L1−L2 ≧ Lo×εo ・・・・(1) - 上記第1の工程で、下記(2)式を満足するように線長を短くすることを特徴とする請求項2に記載したプレス成形品の製造方法。
(Lo×εo) ≦ L1−L2 ≦ 3×(Lo×εo)・・・・(2) - 上記第1の工程での予備成形をドロー成形またはフォーム成形で行い、その後の上記第2の工程での製品形状へのプレス成形をリストライクによる加工で行うことを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載したプレス成形品の製造方法。
- 上記金属板の材料強度が590MPa以上の鋼板であることを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載したプレス成形品の製造方法。
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