JP7356023B2 - 縮みフランジを有する冷間プレス部品 - Google Patents

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Description

本発明は、縮みフランジを有する冷間プレス部品に関する。
近年の燃費規制の厳格化により、自動車車体の軽量化が求められており、車体を構成する各部品についても同様に軽量化が求められている。しかしながら、部品の材料を単純に高強度で板厚が薄いものに置き換えるだけでは、剛性の低下が懸念されることから、材料の高強度化と共に部品の形状や構造の改良を行うことによって軽量化の要求に対応することが望ましい。
図1は自動車の車体骨格を示す図である。自動車の車体骨格においては、例えばフロントサイドメンバーやリアサイドメンバー、クロスメンバー等の中空部品がある。このような中空部品の内方には、例えば図2のような補強部材がバルクヘッドとして配置されることがある。図2の例における補強部材80は、矩形状の板の四辺のうちの一対の辺に第1のフランジ80aが設けられ、残りの一対の辺に第2のフランジ80bが設けられた形状となっている。このような補強部材80は、第1のフランジ80aおよび第2のフランジ80bが中空部品の内面に接合されることによって、中空部品の剛性を高めることができる。図2の例では、第1のフランジ80aと第2のフランジ80bが連続的に繋がっていないが、車体の衝突性能および剛性向上の観点からは、図3のように第1のフランジ80aと第2のフランジ80bが連続的に繋がっていることが好ましい。
第1のフランジ80aと第2のフランジ80bの間の第3のフランジ80cは、第1のフランジ80a側または第2のフランジ80b側からの圧縮応力が作用しながら材料が変形して形成された、いわゆる縮みフランジ変形によって形成されたフランジである。このような縮みフランジを有する補強部材80によれば、第1のフランジ80aと第2のフランジ80bが独立して存在する図2のような補強部材80よりも高い強度が得られるが、軽量化の要求に対応するためには、さらに強度を向上させることが望まれる。
縮みフランジを有する部品に関連する技術として、特許文献1には、中間製品を成形する第1成形工程と、中間製品から製品形状のフランジを成形する第2成形工程とを有するプレス成形方法が開示されている。特許文献2には、ブランクに複数の溝形状部を成形する溝付きブランク成形工程と、複数の溝形状部の間に凸形状部を有する縦壁部を成形する縦壁成形工程とを有するプレス成形方法が開示されている。
特許第5569609号 特開2018-079491号公報
特許文献1および特許文献2には、成形時にフランジに発生するしわを抑えることを目的としたプレス成形方法について開示されているが、部品の強度を向上させる手段については開示されていない。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、縮みフランジを有する冷間プレス部品の強度を向上させることを目的とする。
上記課題を解決する本発明の一態様は、金属板の冷間プレス加工によって成形された冷間プレス部品であって、外周縁の一部が外方に湾曲した面と、前記面の湾曲した部分において該面と交差する方向に延在したフランジと、前記面と前記フランジとを接続する稜線とを有し、前記面に垂直な方向から見た平面視における前記フランジの曲率半径方向に沿って切断された断面において、前記稜線の前記フランジ側の端部を起点とする前記フランジの長さの1/3の位置を境界点と定義し、前記稜線の前記面側の端部から前記境界点までの領域を第1の領域と定義したときに、前記第1の領域の平均ビッカース硬さが、前記フランジの先端のビッカース硬さの90%以上であることを特徴としている。
本発明によれば、縮みフランジを有する冷間プレス部品の強度を向上させることができる。
自動車の車体骨格の一例を示す図である。 バルクヘッドの形状例を示す図である。 バルクヘッドの形状例を示す図である。 縮みフランジを有する部品の一例を示す図である。 縮みフランジを有する部品の平面図である。 図5のZ-Z断面を示す図である。 図5のZ-Z断面を示す図である。 本発明の一実施形態に係る縮みフランジを有する部品の製造過程における部品形状を示す図である。(a)はブランクの形状、(b)は予成形工程後の中間製品形状、(c)はフランジ成形工程後の部品形状を示している。 プレス成形設備のプレス金型の配置例を示す図である。 予成形工程における第1のプレス金型の構成例を示す図である。 第1のプレス金型のパンチを示す図である。 第1のプレス金型の断面を示す図である。 予成形工程における中間製品の成形過程を示す図である。 図8(b)中のY-Y断面を示す図である。なお、図14中の二点鎖線はフランジ成形工程後の部品形状を示している。 フランジ成形工程における第2のプレス金型の構成例を示す図である。 第2のプレス金型のパンチを示す図である。 第2のプレス金型の断面を示す図である。 フランジ成形工程における部品の成形過程を示す図である。 縮みフランジを有する部品の製造過程における部品形状を示す図である。(a)はブランクの形状、(b)は予成形工程後の部品形状、(c)はトリム工程後の部品形状、(d)はフランジ成形工程後の部品形状を示している。 比較例1のモデルに生じた相当塑性ひずみの分布を示す図である。 実施例1のモデルに生じた相当塑性ひずみの分布を示す図である。 シミュレーション結果として得られた、比較例1および実施例1のモデルにおけるフランジ先端からの距離に対する相当応力の分布を示す図である。 シミュレーション(2)の条件を説明するための図である。 シミュレーション結果として得られた中空部品の耐力を示す図である。 実施例1のモデルに生じた相当応力の分布を示す図である。 シミュレーション(3)の解析モデルを説明するための図である。 シミュレーション結果として得られた、各解析モデルにおける中空部品の耐力を示す図である。
以下、本発明の一実施形態について、図面を参照しながら説明する。なお、本明細書および図面において、実質的に同一の機能構成を有する要素においては、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
図4および図5に示されるように、本実施形態の縮みフランジを有する部品1は、外周縁の一部が外方に湾曲した面2と、面2の湾曲した部分において面2と交差する方向に延在するフランジ3と、面2とフランジ3とを接続する稜線4を有している。フランジ3は、面2に垂直な方向から見て(以下“平面視”)、面2と同様に外方に凸となるように湾曲しており、成形時には縮みフランジ変形が生じている。
図6は、図5のような平面視におけるフランジ3の曲率半径Rの方向に沿って切断された部品1の断面の一例を示す図である。図6が示す断面は、図5のZ-Z断面であり、当該断面は、平面視におけるフランジ3の曲率を有している部分の周長の中間点Cを含む断面である。本明細書における部品1の“稜線4”とは、図6のような断面において面2とフランジ3との間に位置する、部品1の曲率を有する部分のことである。部品1の縮みフランジ変形が生じている部分では、図5のように稜線4のフランジ3側の端部4aと面2側の端部4bは共に平面視において曲率を有している。なお、本実施形態の場合、フランジ3が面2に対して垂直な方向に延びていることから、図5のような平面視では稜線4のフランジ3側の端部4aとフランジ3は同じ位置にある。
本明細書では、フランジ3の曲率半径Rの方向に沿って切断された図6のような断面において、稜線4のフランジ3側の端部4aを起点とするフランジ3の長さLの1/3の位置を境界点P1と定義する。また、稜線4の面2側の端部4bから境界点P1までの領域を第1の領域A1と定義する。本実施形態の部品1は、第1の領域A1の平均ビッカース硬さがフランジ3の先端3aのビッカース硬さの90%以上となっている部品である。この硬度条件を満たす縮みフランジを有する部品1は、部品としての強度が効果的に向上する。このため、部品1が例えば図3のようなバルクヘッドとして中空部品の内方に配置された場合には、荷重を担保する中空部品の稜線が塑性変形しにくくなり、中空部品としての耐力が向上する。第1の領域A1の平均ビッカース硬さは、フランジ先端3aのビッカース硬さの95%以上であることがより好ましく、100%以上であることがさらに好ましい。これにより、部品1としての強度がさらに向上する。第1の領域A1の平均ビッカース硬さの上限については特に限定されないが、縮みフランジ部近傍の衝突破断を抑える観点からは、フランジ先端3aのビッカース硬さの150%以下であることが好ましく、130%以下であることがより好ましい。
第1の領域A1の硬度は、成形過程における材料の加工硬化によって増大している。第1の領域A1に加工硬化を生じさせる成形方法の例については後述するが、従来の成形方法においては、第1の領域A1をほとんど加工硬化させることができなかった。すなわち、従来の縮みフランジを有する部品においては、第1の領域A1の平均ビッカース硬さがフランジ先端3aのビッカース硬さの90%以上となることはない。
本明細書における“平均ビッカース硬さ”は次のようにして算出される。まず、硬度測定対象の製品において、縮みフランジ部の面2、フランジ3および稜線4を特定する。次に、図5のような面2に垂直な方向から見た平面視において、フランジ3の周長の中間点Cを特定する。そして、この中間点Cを含むようにフランジ3の曲率半径Rの方向に沿って切断された断面(図6の断面)において、所定の領域のビッカース硬さを0.5mmピッチで測定する。ビッカース硬さは、マイクロビッカース硬度試験機を用いて、測定面が調製された試料に対し、JIS Z 2244:2009に準拠した方法で測定される。試験荷重は1kgf(9.8N)とする。このようにして測定された各測定位置におけるビッカース硬さの平均値が本明細書における“平均ビッカース硬さ”である。例えば、第1の領域A1の平均ビッカース硬さとは、境界点P1から稜線4の面2側の端部4bまでの領域内において、0.5mmピッチでビッカース硬さを測定したときの各測定値の平均値のことである。
部品1の強度を効果的に向上させる観点においては、図7のように第2の領域A2~第4の領域A4を定義したときに、第4の領域A4の平均ビッカース硬さが第2の領域A2の平均ビッカース硬さおよび第3の領域A3の平均ビッカース硬さよりも大きいことが好ましい。なお、本明細書における“第2の領域A2”とは、平面視におけるフランジ3の曲率半径Rの方向に沿って切断された図7のような断面において、稜線4の周長の中間点P2を境界として二分割された領域のうちの面2側の領域である。換言すると、第2の領域A2は、稜線4の面2側の端部4bから中間点P2までの領域である。本明細書における“第3の領域A3”とは、図7のような断面において、稜線4の周長の中間点P2を境界として二分割された領域のうちのフランジ3側の領域である。換言すると、第3の領域A3は、中間点P2から稜線4のフランジ3側の端部4aまでの領域である。本明細書における“第4の領域A4”とは、図7のような断面における稜線4のフランジ3側の端部4aから前述の境界点P1までの領域である。
本実施形態の部品1は、例えば図8のような工程を経て製造される。
図8の例では、図8(a)のような、外周縁の一部が曲線状の部分(以下、“曲線部10a”)を有するブランク10から図8(b)のような中間製品11を成形する予成形工程と、中間製品11から図8(c)のようなフランジ3を成形するフランジ成形工程を経て部品1が製造される。なお、ブランク10の材料は、特に限定されず、例えば鋼板やアルミニウム合金板、マグネシウム合金板等の金属板が採用され得る。
<予成形工程>
図8(b)に示されるように予成形工程で製造される中間製品11は、外周縁の一部が外方に湾曲した面12と、面12の湾曲した部分において12に対して隆起した面である隆起面13と、面12と隆起面13とを接続する稜線14と、を有している。隆起面13は、ブランク10のプレス加工によって成形される。このような中間製品11は、例えば図9に示されるようなプレス成形設備20を用いて製造される。図9の例において、プレス成形設備20は、ブランク10から中間製品11を成形する第1のプレス金型30と、中間製品11から部品1を成形する第2のプレス金型40を備えている。
図10~図12は、第1のプレス金型30の構成例を示す図である。図12に示されるように本実施形態の第1のプレス金型30は、パンチ31と、パッド32と、ダイ33を備えている。パンチ31は、底面部31aと、底面部31aと異なる高さに位置する天面部31bと、底面部31aと天面部31bとを接続する傾斜部31cとを有している。本実施形態のパンチ31の底面部31aと天面部31bは互いに平行であるが、平行でなくてもよい。また、図11に示されるようにパンチ31の傾斜部31cの一部は、円錐台の側面のように曲率を有した面となっている。パッド32は、パンチ31の天面部31bに対向する位置において昇降可能に構成されている。ダイ33は、パンチ31の底面部31aに対向する天面部33aと、パンチ31の傾斜部31cに対向する傾斜部33bとを有しており、パッド32の側方において昇降可能に構成されている。なお、第1のプレス金型30の構成は部品1の製品形状に応じて適宜変更され、採用され得る加工方法についても部品1の製品形状に応じて適宜変更される。
第1のプレス金型30を用いた予成形工程においては、まず図10および図13(a)のように曲線部10aを含むブランク10の外周縁の一部をパッド32で押さえ、その状態でダイ33を下降させる。これにより、パンチ31の傾斜部31cとダイ33の傾斜部33bによってブランク10の一部領域が図13(b)のように隆起した形状となり、図14のように面12と、隆起面13と、稜線14とを有した中間製品11が成形される。
図14に示されるように予成形工程においては、中間製品11の隆起面13が、後のフランジ成形工程で稜線4となる部分15を含むように成形される。本明細書では、そのような、後のフランジ成形工程で稜線4となる部分のことを、稜線4に相当する部分として“稜線相当部15”と称す。すなわち、中間製品11の隆起面13は、稜線相当部15を含むように成形される。なお、稜線相当部15の位置は、部品1の製品形状やフランジ3の高さ等に応じて変わるものである。また、稜線相当部15を含む隆起面13を成形する際に、ブランク10のどの範囲までを隆起させるかについては部品1の製品形状や金型構成等に応じて適宜変更される。すなわち、中間製品11における面12と隆起面13の割合は、部品の製品形状や金型構成等に応じて適宜変更される。
<フランジ成形工程>
図8(c)に示されるフランジ成形工程で製造される部品1は、前述の通り、外周縁の一部が外方に湾曲した面2と、面2の湾曲した部分において面2と交差する方向に延在するフランジ3と、面2とフランジ3とを接続する稜線4を有している。本実施形態のフランジ成形工程においては、例えば図15~図17に示される構成の第2のプレス金型40によって部品1が成形される。
図17に示されるように本実施形態の第2のプレス金型40は、パンチ41と、パッド42と、ダイ43を備えている。パンチ41は、底面部41aと、底面部41aと異なる高さに位置する天面部41bと、底面部41aと天面部41bとを接続する縦壁部41cとを有している。本実施形態のパンチ41の底面部41aと天面部41bは互いに平行であるが、平行でなくてもよい。また、図15に示されるようにパンチ41の縦壁部41cの一部は、円錐台の側面のように曲率を有した面となっている。パッド42は、パンチ41の底面部41aに対向する位置において昇降可能に構成されている。ダイ43は、パンチ41の底面部41aに対向する天面部43aと、パンチ41の天面部41bに対向する底面部43bと、パンチ41の縦壁部41cに対向する縦壁部43cとを有しており、パンチ41の縦壁部41cとパッド42との間の位置において昇降可能に構成されている。なお、第2のプレス金型40の構成は部品1の製品形状に応じて適宜変更され、採用され得る加工方法についても部品1の製品形状に応じて適宜変更される。
第2のプレス金型40を用いたフランジ成形工程においては、まず図18(a)のように中間製品11の面12をパッド42で押さえ、その状態でダイ43を下降させて、隆起面13の曲げ外側から曲げ内側に向かって隆起面13を押し込むように加工する。この加工により、中間製品11の隆起面13の一部が中間製品11の面12と連続した面となり、図18のように部品1としての面2が成形される。これに伴い、中間製品11の稜線14は消失する。また、隆起面13の残りの部分は、パンチ41の縦壁部41cとダイ43の縦壁部43cの間隙に材料が流れ込み、図18のように中間製品11の稜線相当部15が稜線4となり、かつ、隆起面13の先端13aがフランジ3の先端3aとなってフランジ3が成形される。
予成形工程を経てフランジ3が成形されることにより、第1の領域A1の平均ビッカース硬さがフランジ先端3aのビッカース硬さの90%以上となる部品が製造される。
以上、本発明の実施形態の一例について説明したが、本発明はかかる例に限定されない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到しうることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
例えば上記実施形態では、ブランク10の初期形状として曲線部10aが設けられていたが、図19(a)のようにブランク10に曲線部10aが設けられていない場合であっても、圧縮ひずみを抑えてフランジ3を成形することができる。図19では、予成形工程とフランジ成形工程の間にトリム工程が設けられる。部品の製造方法は以下の通りである。
まず、上記実施形態と同様に予成形工程によって、図19(b)のような隆起面13を成形して第1の中間製品11aを製造する。次に、図19(c)で示されるように、トリム工程によって、その後のフランジ成形工程で所定の高さのフランジ3が得られるようフランジ3の製品高さに基づいて隆起面13の先端部を切断して第2の中間製品11bを製造する。最後に、上記実施形態と同様にフランジ成形工程によって、第2の中間製品11bから図19(d)のようなフランジ3を成形して縮みフランジを有する部品1が製造される。
このような製造方法であっても、第1の領域A1の加工硬化を促すことができ、第1の領域A1の平均ビッカース硬さがフランジ先端3aのビッカース硬さの90%以上となる部品が得られる。すなわち、第1の領域A1の平均ビッカース硬さがフランジ先端3aのビッカース硬さの90%以上となる部品1は、予成形工程で隆起面13が成形され、フランジ成形工程でその隆起面13が面2側に押し込まれるようにしてフランジ3が成形されることによって得られる。
<シミュレーション(1)>
縮みフランジを有する部品の成形シミュレーションを実施した。本シミュレーションでは、ブランクとして降伏点:510MPa、引張強度:821MPa、伸び:22%の溶融亜鉛めっき鋼板が想定されており、平面視曲率半径が15mm、かつ、高さが10mmの縮みフランジ変形を伴うフランジを成形することを条件としている。解析ソルバーとしてはPAM-STAMPが使用されており、ブランクのメッシュサイズは1mm×1mmである。
本シミュレーションでは、従来の成形方法(比較例1)と本発明例の成形方法(実施例1)の各々の方法でフランジを成形している。比較例1の成形方法は、外周縁の一部に曲線部を有するブランクから一工程でフランジを成形する方法である。実施例1の成形方法は、外周縁に曲線部が存在しないブランクに対し、予成形工程で隆起面を有する第1の中間製品を成形し、トリム工程で隆起面の先端部を切断して第2の中間製品を成形し、フランジ成形工程で第2の中間製品からフランジを成形する方法である。実施例および比較例における工程ごとの部品形状は下記表1の通りである。
図20は、成形シミュレーション後の比較例1のモデルに生じている相当塑性ひずみの分布を示す図である。図21は、成形シミュレーション後の実施例1のモデルに生じている相当塑性ひずみの分布を示す図である。図20および図21に示されるように、比較例1および実施例1ともに縮みフランジ部のフランジ先端で比較的大きな相当塑性ひずみが生じている点は共通している。しかし、実施例1の場合には、比較例1の場合とは異なり、相当塑性ひずみが生じている領域が縮みフランジ部の稜線近傍の広い範囲にまで拡大している。すなわち、実施例1のモデルにおいては、稜線近傍まで加工硬化が生じている。
図22は、成形シミュレーション後のモデルに生じた相当応力の分布を示す図である。図22では、図20中のX-X断面に相当する断面の相当応力が示されており、図22の縦軸は、フランジ先端からの距離に対する各位置の相当応力とフランジ先端の相当応力との比で表されている。この相当応力の比が大きいほど、加工硬化の度合いが大きくなる。このため、相当応力の比は、フランジ先端から離れた各位置の硬度とフランジ先端の硬度の比と言い換えることができる。
図22に示されるように、比較例1では、フランジの先端から離れるにつれて相当応力の比が小さくなっている。一方、実施例1においては、フランジの先端から7mmの位置までは比較例1と同様に相当応力の比が小さくなっているが、フランジの先端から7mmの位置を境界として相当応力の比が上昇に転じ、7mm以上離れた位置では相当応力の比が大きくなっている。すなわち、実施例1のモデルにおいては、加工硬化領域がフランジの先端部のみならず、稜線にまで拡大している。
比較例1および実施例1のモデルにおいて、フランジの先端から15mmの位置は稜線のR止まり(図6で言うところの稜線4の面2側の端部4b)である。実施例1において、フランジから稜線のR止まりまでの相当応力の比の最小値は0.83である。一方、比較例1においては、フランジから稜線のR止まりまでの相当応力の比の最小値は0.71である。換言すると、フランジ先端3aから稜線4の端部4bまで領域の硬度の最小値をフランジ先端3aの硬度で除した値は0.80以上である。
<シミュレーション(2)>
実施例1または比較例1の縮みフランジを有する部品をバルクヘッドとして利用した図23のような解析モデルを作成し、圧潰シミュレーションを実施した。バルクヘッド50は、ハット状部材61とクロージングプレート62からなる中空部品60の内方に配置されている。本シミュレーションは、ハット状部材61の天面が完全拘束された条件で実施されている。このような拘束条件の下で、クロージングプレート62の上側から5km/hの速度で剛体壁を当て、圧潰挙動を再現した。
図24は、本シミュレーションにおける中空部品60の耐力を示す図である。図24に示されるように、実施例1のような加工硬化が稜線近傍にまで生じた部品をバルクヘッド50として利用した場合には、中空部品60の耐力が比較例1に対して22%向上した。図25は、圧潰シミュレーション後の実施例1のモデルに生じている相当応力の分布を示す図である。図25中の矢印は荷重の入力方向(剛体壁の進行方向)である。図25に示されるように、実施例1のモデルにおいては、縮みフランジ部のフランジ先端のみならず、稜線近傍まで大きな相当応力が発生しており、稜線近傍の加工硬化が進んでいることがわかる。なお、比較例1のモデルにおいては、稜線近傍の相当応力は小さかった。したがって、図24および図25の結果によれば、部品としての強度を向上させるためには、稜線近傍の硬度上昇が有効であることがわかる。実施例1のバルクヘッド50における第1の領域A1(図6で言うところの稜線4の面2側端部4bから境界点P1までの領域)の相当応力とフランジ先端の相当応力の比は0.91である。すなわち、実施例1のバルクヘッド50においては、第1の領域A1とフランジ先端の硬度比(第1の領域の平均硬度/フランジ先端の硬度)が0.91である。したがって、本シミュレーションの結果によれば、部品としての強度を向上させるためには、第1の領域A1の硬度は、フランジ先端の硬度の90%以上であるとよい。
<シミュレーション(3)>
縮みフランジを有する部品としての好ましい加工硬化領域を評価するため、加工硬化領域が互いに異なるバルクヘッドを用いた解析モデルで圧潰シミュレーションを実施した。バルクヘッドのモデルを除いた拘束条件や入力条件等のシミュレーション条件は、シミュレーション(2)と同様である。本シミュレーションでは、図26のようにバルクヘッド50の縮みフランジ部近傍が六つの領域(a)~(f)に分割されたモデルにおいて、特定の領域に相当塑性ひずみが付与される条件で実施されている。詳述すると、領域(a)に20%の相当塑性ひずみが付与されたモデルと、領域(b)に20%の相当塑性ひずみが付与されたモデルと、領域(c)に20%の相当塑性ひずみが付与されたモデルと、領域(d)に20%の相当塑性ひずみが付与されたモデルと、領域(e)に20%の相当塑性ひずみが付与されたモデルと、領域(f)に20%の相当塑性ひずみが付与されたモデルでシミュレーションが実施されている。領域(a)~(c)はフランジを均等に三分割した領域であり、領域(d)および領域(e)は稜線の周長の中間点(図7の中間点P2)を境界として二分割された領域であり、領域(f)は、稜線に繋がる平面部の領域である。前述の実施形態で説明した稜線4の面2側の端部4bから境界点P1までの領域は、領域(c)~(e)に相当する。なお、従来の縮みフランジ部を有する部品は、領域(a)および領域(b)には加工硬化が生じていたが、領域(c)~(f)についてはほとんど加工硬化が生じていない。
図27は、シミュレーション結果として得られた各モデルにおける中空部品の耐力を示す図である。図27の縦軸は、相当塑性ひずみが付与された面積(すなわち、加工硬化された部分の面積)あたりの耐力値で表されている。図27の結果が示すように、縮みフランジを有する部品の強度を効果的に向上させて中空部品としての耐力を向上させるためには、領域(c)を加工硬化させることが最も有効である。
本発明は、縮みフランジを有する部品の製造に利用することができる。
1 縮みフランジを有する部品
2 外周縁の一部が外方に湾曲した面
3 フランジ
3a フランジの先端
4 稜線
4a 稜線のフランジ側端部
4b 稜線の面側端部
10 ブランク
10a 曲線部
11 中間製品
11a 第1の中間製品
11b 第2の中間製品
12 外周縁の一部が外方に湾曲した面
13 隆起面
14 第1の稜線
15 中間製品における部品の稜線相当部
20 プレス成形設備
30 第1のプレス金型
31 パンチ
31a パンチの底面部
31b パンチの天面部
31c パンチの傾斜部
32 パッド
33 ダイ
33a ダイの天面部
33b ダイの傾斜部
40 第2のプレス金型
41 パンチ
41a パンチの底面部
41b パンチの天面部
41c パンチの縦壁部
42 パッド
43 ダイ
43a ダイの天面部
43b ダイの底面部
43c ダイの縦壁部
50 バルクヘッド
60 中空部品
61 ハット状部材
62 クロージングプレート
80 補強部材
80a 第1のフランジ
80b 第2のフランジ
80c 第3のフランジ
1 稜線の面側端部から境界点までの領域
2 稜線の面側端部から稜線の中間点までの領域
3 中間点から稜線のフランジ側端部までの領域
4 稜線のフランジ側端部から境界点までの領域
C 平面視におけるフランジの曲率を有する部分の中間点
1 境界点
2 稜線の中間点
R 縮みフランジの曲率半径

Claims (2)

  1. 金属板の冷間プレス加工によって成形された冷間プレス部品であって、
    外周縁の一部が外方に湾曲した面と、
    前記面の湾曲した部分において該面と交差する方向に延在したフランジと、
    前記面と前記フランジとを接続する稜線とを有し、
    前記面に垂直な方向から見た平面視における前記フランジの曲率半径方向に沿って切断された断面において、前記稜線の前記フランジ側の端部を起点とする前記フランジの長さの1/3の位置を境界点と定義し、前記稜線の前記面側の端部から前記境界点までの領域を第1の領域と定義したときに、前記第1の領域の平均ビッカース硬さが、前記フランジの先端のビッカース硬さの90%以上であることを特徴とする、冷間プレス部品。
  2. 前記断面において、前記稜線の周長の中間点を境界とした前記稜線の前記面側の領域を第2の領域、前記稜線の前記フランジ側の領域を第3の領域と定義し、前記稜線の前記フランジ側の端部から前記境界点までの領域を第4の領域と定義したとき、前記第4の領域の平均ビッカース硬さが、前記第2の領域の平均ビッカース硬さおよび前記第3の領域の平均ビッカース硬さよりも大きいことを特徴する、請求項1に記載の冷間プレス部品。
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