WO2018062325A1 - 共重合ポリエステル樹脂 - Google Patents
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Abstract
Description
以上のとおり、特許文献1~5に記載のポリエステル樹脂は、耐熱性及び光学特性の観点から十分な物性を発揮するものとはいえず、これらの物性バランスに優れるポリエステル樹脂は得られていない。
本発明は、以上の従来技術が有する問題点に鑑みなされたものであり、耐熱性及び光学特性に優れたポリエステル樹脂を提供することを目的とする。
[1]
下記一般式(1)で表される単位(A)、ジオール単位(B)、及びジカルボン酸又はそのエステル形成性誘導体単位(C)を有する共重合ポリエステル樹脂であって、
前記共重合ポリエステル樹脂が有する全単位中、前記単位(A)が10~95mol%であり、
下記(1)~(3)を満たす、共重合ポリエステル樹脂。
(1)前記共重合ポリエステル樹脂のガラス転移温度が90℃以上である。
(2)前記共重合ポリエステル樹脂の降温時結晶化発熱量が5J/g以下である。
(3)前記共重合ポリエステル樹脂の光弾性係数の絶対値が40×10-12Pa-1以下である。
[2]
前記一般式(1)におけるnが1である、[1]に記載の共重合ポリエステル樹脂。
[3]
前記一般式(1)におけるR1、R2、及びR3が水素原子である、[1]又は[2]に記載の共重合ポリエステル樹脂。
[4]
前記単位(B)が脂肪族ジオール又はカルド構造を有するジオールに由来する単位である、[1]~[3]のいずれかに記載の共重合ポリエステル樹脂。
[5]
前記単位(C)が脂肪族ジカルボン酸又はそのエステル形成性誘導体、若しくはカルド構造を有するジカルボン酸又はそのエステル形成性誘導体に由来する単位である、[1]~[4]のいずれかに記載の共重合ポリエステル樹脂。
本実施形態の共重合ポリエステル樹脂は、下記一般式(1)で表される単位(A)(以下、「単位(A)」ともいう。)、ジオール単位(B)(以下、「単位(B)」ともいう。)、及びジカルボン酸又はそのエステル形成性誘導体単位(C)(以下、「単位(C)」ともいう。)を有する共重合ポリエステル樹脂であって、前記共重合ポリエステル樹脂が有する全単位中、前記単位(A)が10~95mol%であり、下記(1)~(3)を満たす。
(1)前記共重合ポリエステル樹脂のガラス転移温度が90℃以上である。
(2)前記共重合ポリエステル樹脂の降温時結晶化発熱量が5J/g以下である。
(3)前記共重合ポリエステル樹脂の光弾性係数の絶対値が40×10-12Pa-1以下である。
本実施形態において、単位(B)が脂肪族ジオール又はカルド構造を有するジオールに由来する単位であることが好ましい。脂肪族ジオールに由来する単位としては、耐熱性と光学特性との物性バランスの観点から、1,4-シクロヘキサンジメタノール、エチレングリコール、3,9-ビス(1,1-ジメチル-2-ヒドロキシエチル)-2,4,8,10-テトラオキサスピロ〔5,5〕ウンデカン、1,4:3,6-ジアンヒドロ-D-ソルビトール、デカヒドロ-1、4:5、8-ジメタノナフタレンジメタノール、に由来する単位がより好ましい。また、カルド構造を有するジオールに由来する単位としては、9,9-ビス[4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]フルオレン、9,9-ビス[4-(2-ヒドロキシエトキシ)-3-メチルフェニル]フルオレン、9,9-ビス[4-(2-ヒドロキシエトキシ)-3-フェニルフェニル]フルオレンに由来する単位がより好ましい。なお、これらの光学異性体は、シス体、トランス体、これらの混合物のいずれであってもよく、特に限定されない。
上記した単位は、1種を単独で含まれていてもよく、2種以上を組み合わせて含まれていてもよい。
本実施形態の共重合ポリエステル樹脂における単位(B)の含有量は、2~60mol%であることが好ましく、より好ましくは3~50mol%である。
本実施形態において、単位(C)は、脂肪族ジカルボン酸又はそのエステル形成性誘導体、若しくはカルド構造を有するジカルボン酸又はそのエステル形成性誘導体に由来する単位であることが好ましい。脂肪族ジカルボン酸又はそのエステル形成性誘導体に由来する単位としては、耐熱性と光学特性との物性バランスの観点から、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸ジメチルに由来する単位がより好ましい。また、カルド構造を有するジカルボン酸又はそのエステル形成性誘導体に由来する単位としては、透明性、耐熱性と光学特性との物性バランスの観点から、9,9-ビス(メトキシカルボニルメチル)フルオレン、9,9-ビス(メトキシカルボニルエチル)フルオレン、9,9-ビス(メトキシカルボニルプロピル)フルオレンに由来する単位がより好ましい。なお、これらの光学異性体は、シス体、トランス体、これらの混合物のいずれであってもよく、特に限定されない。
上記した単位は、1種を単独で含まれていてもよく、2種以上を組み合わせて含まれていてもよい。
本実施形態の共重合ポリエステル樹脂における単位(C)の含有量は、2~60mol%であることが好ましく、より好ましくは3~50mol%である。
本実施形態の共重合ポリエステル樹脂は、単位(A)~(C)に対応する各単量体を共重合することにより、得ることができる。以下、単位(A)に対応する単量体の製造方法について説明する。かかる単量体は、例えば、下記一般式(2)で表される。
式(2)において、R1は、好ましくは水素原子又はCH3である。R2及びR3は、好ましくは水素原子である。上記炭化水素基としては、以下に限定されないが、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ビニル基、2-ヒドロキシエチル基、4-ヒドロキシブチル基等が挙げられる。
前記一般式(4)で表される炭素数13~21のモノオレフィンは、例えば、官能基を有するオレフィンとジシクロペンタジエンのディールスアルダー反応を行うこと等で製造することが可能である。
以上の観点から、例えば、上記式(I)に示す反応ルートにおいて、1段目ディールスアルダー反応の反応条件を適宜制御することにより、式(4)で表される炭素数13~21のモノオレフィンあるいは式(7)で表される炭素数8~16のモノオレフィンを選択的に得ることができる。
上記のようにして得られた式(4)で表される炭素数13~21のモノオレフィンを、後述するヒドロホルミル化反応及び還元反応に供することで、式(1)においてn=1である場合に対応する単量体(すなわち、式(2)で表される化合物)を得ることができる。また、上記のようにして得られた式(7)で表される炭素数8~16のモノオレフィンを、同様のヒドロホルミル化反応及び還元反応に供することで、式(1)においてn=0である場合に対応する単量体(すなわち、式(8)で表される化合物)を得ることができる。
なお、反応溶媒として炭化水素類やアルコール類、エステル類等を使用することも可能であり、炭素数6以上の脂肪族炭化水素類、シクロヘキサン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、メシチレン、プロパノール、ブタノール等が好ましい。また、必要に応じて、AlCl3等公知の触媒を添加してもよい。
前記式(I)中の一般式(3)で表される炭素数14~22の二官能性化合物は、例えば、一般式(4)で表される炭素数13~21モノオレフィンと一酸化炭素及び水素ガスをロジウム化合物、有機リン化合物の存在下でヒドロホルミル化反応させること等で製造することができる。
前記式(I)中の一般式(2)で表される炭素数14~22の化合物は、一般式(3)で表される炭素数14~22の化合物を、水素化能を有する触媒及び水素の存在下で還元することにより製造することが出来る。
ポリエステル樹脂中のジオール構成単位及びジカルボン酸構成単位の割合は、1H-NMR測定にて算出した。測定装置は、核磁気共鳴装置(日本電子(株)製、商品名:JNM-AL400)を用い、400MHzで測定した。溶媒には重クロロホルムを用いた。
ポリエステル樹脂のガラス転移温度は、次のように測定した。示差走査熱量計((株)島津製作所製、商品名:DSC/TA-60WS)を使用し、ポリエステル樹脂約10mgをアルミニウム製非密封容器に入れ、窒素ガス(50mL/分)気流中、昇温速度20℃/分で280℃まで加熱、溶融したものを急冷して測定用試料とした。該試料を同条件で測定し、DSC曲線の転移前後における基線の差の1/2だけ変化した温度をガラス転移温度とした。
ポリエステル樹脂の降温時結晶化発熱量は、上記Tgを測定後280℃で1分間保持した後、5℃/分の降温速度で降温した際に現れる発熱ピークの面積から算出した。
ポリエステル樹脂の溶融粘度は、東洋精機製 Capirograph 1C(キャピログラフ)を用い、温度:280℃、予熱時間:6min、ノズル径:1mm、ノズル長:10mm、剪断速度:60(1/sec)で測定を行った。
エリプソメーター(日本分光(株)製、M220)を使用し、流延法により作製した光学フィルムを用い、波長633nmにおける荷重変化に対する複屈折測定から算出した。
500mLステンレス製反応器にアクリル酸メチル173g(2.01mol)、ジシクロペンタジエン167g(1.26mol)を仕込み195℃で2時間反応を行った。上記反応により、下記式(4a)で表されるモノオレフィン96gを含有する反応液を取得し、これを蒸留精製した後、一部を以下の反応に供した。
300mLステンレス製反応器を使用し、蒸留精製した式(4a)で表されるモノオレフィンのヒドロホルミル化反応をCO/H2混合ガス(CO/H2モル比=1)を用いて行った。反応器に式(4a)で表されるモノオレフィン70g、トルエン140g、亜リン酸トリフェニル0.50g、別途調製したRh(acac)(CO)2のトルエン溶液550μL(濃度0.003mol/L)を加えた。窒素およびCO/H2混合ガスによる置換を各々3回行った後、CO/H2混合ガスで系内を加圧し、100℃、2MPaにて5時間反応を行った。反応終了後、反応液のガスクロマトグラフィー分析を行い、式(3a)で表される化合物76g、式(4a)で表されるモノオレフィン1.4gを含む反応液(転化率98%、選択率97%)であることを確認すると共に、これを蒸留精製した後、一部を以下の反応に供した。
300mLステンレス製反応器に蒸留精製した式(3a)で表される化合物54g、スポンジコバルト触媒(日興リカ株式会社製:R-400)7mL、トルエン109gを添加し、水素ガスで系内を加圧し、3MPa、100℃で9時間反応を行った。反応後、得られたスラリーから、孔径0.2μmのメンブレンフィルターで触媒をろ過した。その後、エバポレーターを使用して溶媒を留去し、ガスクロマトグラフィー及びGC-MSで分析し、分子量250の式(2a)で表される主生成物51gを含有することが確認された(主生成物収率93%)。これをさらに蒸留精製し、主生成物を取得した。
モノマー合成例で取得した成分のNMR分析を行った。NMRスペクトルを図1~3に示す。以下に示すGC-MS分析、及び図1~3のNMR分析の結果から、モノマー合成例で得られた主生成物は、前記式(2a)で表される化合物であることが確認された。
<分析方法>
1)ガスクロマトグラフィー測定条件
・分析装置 :株式会社島津製作所製 キャピラリガスクロマトグラフGC-2010 Plus
・分析カラム :ジーエルサイエンス株式会社製、InertCap1(30m、0.32mmI.D.、膜厚0.25μm
・オーブン温度:60℃(0.5分間)-15℃/分-280℃(4分間)
・検出器 :FID、温度280℃
2)GC-MS測定条件
・分析装置 :株式会社島津製作所製、GCMS-QP2010 Plus
・イオン化電圧:70eV
・分析カラム :Agilent Technologies製、DB-1(30m、0.32mmI.D.、膜厚1.00μm)
・オーブン温度:60℃(0.5分間)-15℃/分-280℃(4分間)
3)NMR測定条件
・装置 :日本電子株式会社製,JNM-ECA500(500MHz)
・測定モード :1H-NMR、13C-NMR、COSY-NMR
・溶媒 :CDCl3(重クロロホルム)
・内部標準物質:テトラメチルシラン
分縮器、全縮器、コールドトラップ、撹拌機、加熱装置及び窒素導入管を備えた200mLのポリエステル製造装置に、モノマー合成例より得られた式(2a)で表される化合物85.6g、1,4-シクロヘキサンジカルボン酸ジメチル3.8g、1,4-シクロヘキサンジメタノール2.9g、テトラブチルチタネート0.04gを仕込み、窒素雰囲気下で230℃まで昇温後、1時間保持し、所定量のメタノールを留出させた。その後、リン酸を0.003g加え、昇温と減圧を徐々に行い、最終的に270℃、0.1kPa以下で重縮合を行った。適度な溶融粘度になった時点で反応を終了し、共重合ポリエステル樹脂を得た。
光弾性係数を測定する光学フィルムは流延法にて作製した。具体的には、得られた共重合ポリエステル樹脂をジクロロメタンに5wt%濃度になるように溶解させ、水平を確認したキャスト板に流延後、キャスト溶液からの溶媒の蒸発量を調整しながら揮発させ、厚さ100μmの透明な光学フィルムを得た。得られた光学フィルムは乾燥機を使用し、ガラス転移温度以下の温度で十分に乾燥を行った後、5cm×1cmのサンプルを切り出し、エリプソメーターを使用して光弾性係数を評価した。各種評価結果を表1に示す。
分縮器、全縮器、コールドトラップ、撹拌機、加熱装置及び窒素導入管を備えた200mLのポリエステル製造装置に、テレフタル酸ジメチル60.6g、エチレングリコール31.0g、テレフタル酸ジメチルに対して0.03モル%の酢酸マンガン四水和物仕込み、窒素雰囲気下で215℃まで昇温して所定量のメタノールを留出させた後、テレフタル酸ジメチルに対して0.02モル%の酸化アンチモン(III)とリン酸トリエチル0.06モル%を加え、昇温と減圧を徐々に行い、最終的に280℃、0.1kPa以下で重縮合を行った。適度な溶融粘度になった時点で反応を終了し、ポリエステル樹脂を得た。得られた樹脂を用いた物性評価については、実施例1と同様に評価した。
テレフタル酸ジメチル55.3g、エチレングリコール23.0g、1,4-シクロヘキサンジメタノール12.3g仕込んだ以外は、比較例1と同様に実施した。
モノマー合成例より得られた式(2a)で表される化合物8.9g、テレフタル酸ジメチル53.9g、エチレングリコール21.8g仕込んだ以外は、比較例1と同様に実施した。
D-NHEs:デカヒドロ-1、4:5、8-ジメタノナフタレン-2-メトキシカルボニル-6(7)-メタノール
DMCD:1,4-シクロヘキサンジカルボン酸ジメチル(シス/トランス=7/3)
DDCM:2,6-デカリンジカルボン酸ジメチル
FDPM:9,9-ビス(メトキシカルボニルエチル)フルオレン
DMT:テレフタル酸ジメチル
CHDM:1,4-シクロヘキサンジメタノール(シス/トランス=3/7)
EG:エチレングリコール
SPG:3,9-ビス(1,1-ジメチル-2-ヒドロキシエチル)-2,4,8,10-テトラオキサスピロ〔5,5〕ウンデカン
BPEF:9,9-ビス[4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]フルオレン
Claims (5)
- 下記一般式(1)で表される単位(A)、ジオール単位(B)、及びジカルボン酸又はそのエステル形成性誘導体単位(C)を有する共重合ポリエステル樹脂であって、
前記共重合ポリエステル樹脂が有する全単位中、前記単位(A)が10~95mol%であり、
下記(1)~(3)を満たす、共重合ポリエステル樹脂。
(1)前記共重合ポリエステル樹脂のガラス転移温度が90℃以上である。
(2)前記共重合ポリエステル樹脂の降温時結晶化発熱量が5J/g以下である。
(3)前記共重合ポリエステル樹脂の光弾性係数の絶対値が40×10-12Pa-1以下である。
- 前記一般式(1)におけるnが1である、請求項1に記載の共重合ポリエステル樹脂。
- 前記一般式(1)におけるR1、R2、及びR3が水素原子である、請求項1又は2に記載の共重合ポリエステル樹脂。
- 前記単位(B)が脂肪族ジオール又はカルド構造を有するジオールに由来する単位である、請求項1~3のいずれか1項に記載の共重合ポリエステル樹脂。
- 前記単位(C)が脂肪族ジカルボン酸又はそのエステル形成性誘導体、若しくはカルド構造を有するジカルボン酸又はそのエステル形成性誘導体に由来する単位である、請求項1~4のいずれか1項に記載の共重合ポリエステル樹脂。
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