WO2012018070A1 - フォトクロミック組成物 - Google Patents
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Abstract
Description
従来のフォトクロミック性接着剤又はバインダーに使用されているポリウレタン樹脂は、1,4-ブタンジオールなどのジオール化合物を用いウレタン結合で鎖延長されるウレタン樹脂であり、該樹脂の分子中にはウレア結合は存在しないものであった。これに対し、本発明のフォトクロミック組成物のA成分は、分子鎖中にウレア結合(-R-NH-CO-NH-)を有するポリウレタン-ウレア樹脂であり、このような樹脂を樹脂成分として含むことにより、本発明のフォトクロミック組成物を接着剤又はバインダーとして使用したときの耐熱性、密着性、フォトクロミック化合物の耐久性を向上させることが可能である。
(A1)ポリエーテルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリカプロラクトンポリオール、およびポリエステルポリオールよりなる群から選ばれる少なくとも1種のポリオール化合物(以下、単にA1成分ともいう。)と、
(A2)分子内に2つ以上のイソシアネート基を有するポリイソシアネート化合物(以下、単にA2成分ともいう。)と、
(A3)イソシアネート基と反応し得る基を分子内に2つ以上有し、その内の少なくとも1つがアミノ基であるアミノ基含有化合物(以下、単にA3成分ともいう。)
とを反応して得られるポリウレタン-ウレア樹脂であることが好ましい。このようなポリウレタン-ウレア樹脂においては、原料であるA3成分としてアミノ基を有する化合物を使用することに起因して、分子内にウレア結合が導入される。以下、これら成分について説明する。
A1成分のポリオール化合物としては、生成するポリウレタン-ウレア樹脂が高架橋体になり過ぎないという理由から分子中に含まれる水酸基数が2~6であることが好ましく、有機溶剤への溶解性を考慮すれば、分子中に含まれる水酸基数は2~3であることがより好ましい。また、前述のポリエーテルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリカプロラクトンポリオール、ポリエステルポリオールなどのポリオール化合物は、単独で使用しても良く、2種類以上を併用しても構わないが、耐熱性、密着性、耐候性、耐加水分解性などの観点から、ポリカーボネートポリオール、ポリカプロラクトンポリオールを使用することが好ましく、その中でも特にポリカーボネートポリオールを使用することが好ましい。
本発明でA2成分として使用される分子内に2つ以上のイソシアネート基を有するポリイソシアネート化合物としては、脂肪族ポリイソシアネート化合物、脂環式ポリイソシアネート化合物、芳香族ポリイソシアネート化合物、及びこれらの混合物が使用される。これらの中でも、耐候性の観点から脂肪族ポリイソシアネート化合物及び/又は脂環式ポリイソシアネート化合物を使用することが好ましい。また、同様の理由からA2成分のポリイソシアネート化合物の30~100質量%、特に50~100質量%が脂肪族ポリイソシアネート化合物であることが好ましい。なお、A2成分のポリイソシアネート化合物において、分子内に含まれるイソシアネート基の数は2以上であればよいが、有機溶剤への溶解性などの観点から、分子内に含まれるイソシアネート基の数は2であることが好ましい。
本発明でA3成分として使用されるアミノ基含有化合物は、イソシアネート基と反応し得る基を分子内に2つ以上有し、その内の少なくとも1つがアミノ基(-NH2、または-NH(R)。但し、Rはアルキル基、特に炭素数1~5のアルキル基を意味する。)であるアミノ基含有化合物である。ここで、アミノ基以外のイソシアネート基との反応性基は、水酸基(-OH)、メルカプト基(-SH)およびカルボキシル基〔-C(=O)OH〕等である。
また、アミノアルコールとしては、2-アミノエタノール、3-アミノプロパノール、4-アミノブタノール、5-アミノペンタノール、6-アミノヘキサノール、2-ピペリジンメタノール、3-ピペリジンメタノール、4-ピペリジンメタノール、2-ピペリジンエタノール、4-ピペリジンエタノール等を挙げることができ、アミノカルボン酸としては、グリシン、アラニン、リシン、ロイシン等を挙げることができ、アミノチオールとしては、1-アミノチオール、2-アミノエタンチオール等を挙げることができる。これらのアミノ基含有化合物は、単独で使用しても良く、2種類以上を併用しても構わない。
これらA1成分、A2成分およびA3成分を反応させてA成分を得る場合には、所謂ワンショット法又はプレポリマー法を採用することができ、たとえば次のような方法によって好適にA成分を得ることができる。
本発明においては、上記したA1~A3成分の他に、分子内に1または2つのイソシアネート基と反応しうる基を有し、かつ、分子内にピペリジン構造、ヒンダードフェノール構造、トリアジン構造、またはベンゾトリアゾール構造を有する機能性付与化合物を用いることが好ましい。このような機能性付与化合物を用いることによって、ポリウレタン-ウレア樹脂に、ピペリジン構造、ヒンダードフェノール構造、トリアジン構造、またはベンゾトリアゾール構造を付与することができ、ヒンダードアミン光安定性能、酸化防止性能、または紫外線吸収性能等の機能性に優れたポリウレタン-ウレア樹脂とすることができる。
イソシアネート基と反応しうる基とは、アミノ基(-NH2、及び-NH(R))、水酸基(-OH)、メルカプト基(-SH:チオール基)、カルボキシル基〔-C(=O)OH〕、又は酸クロライド基〔-C(=O)OCl〕が挙げられる。特に、優れた効果を発揮するポリウレタン-ウレア樹脂を得るためには、このイソシアネート基と反応しうる基は分子内に1つであることが好ましい。この理由は、明らかではないが、以下のように考えられる。該基が1つであることにより、ポリウレタン-ウレア樹脂の側鎖、末端に機能性付与化合物が導入される。そのため、ラジカル等の耐久性を低下させる物質に効率よく、機能性付与化合物が作用できるものと考えられる。
本発明でA4成分として使用されるピペリジン構造を有する機能性付与化合物としては、下記一般式(i)で示される構造を分子内に有する化合物が好適に使用できる。
R1、R2、R3、及びR4は、それぞれ、炭素数1~4のアルキル基であり、特に、メチル基であることが好ましい。)
上記ピペリジン環の窒素原子、または、4位の炭素原子にイソシアネート基と反応しうる基を有する化合物が、ピペリジン構造を有する機能性付与化合物に該当する。
以下、より具体的な化合物について説明する。
R1、R2、R3、及びR4は、前記一般式(i)におけるものと同義であり、
R5は、炭素数1~10のアルキル基、または水素原子であり、
R6は炭素数1~20のアルキレン基、又は炭素数3~20のポリメチレン基であり、aは0または1であり、
Xは、イソシアネート基と反応しうる基である。)
R7、R8、R9、及びR10は、それぞれ、炭素数1~4のアルキル基であり、
R11は、炭素数1~20のアルキレン基、又は炭素数3~20のポリメチレン基であり、
R12は、炭素数1~20のアルキレン基、又は炭素数3~20のポリメチレン基であり、bは0または1であり、
Yは、イソシアネート基と反応しうる基である。)
で示される化合物も好適に使用できる。
R13、R14、R15、及びR16は、それぞれ独立に炭素数1~4のアルキル基であり、
R17は、炭素数1~20のアルキレン基、または炭素数3~20のポリメチレン基であり、cは0または1であり、
R18は、炭素数1~20のアルキレン基、または炭素数3~20のポリメチレン基であり、
Zは、イソシアネート基と反応しうる基である。)
で示される化合物も好適に使用できる。
R19、R20、R21、及びR22は、それぞれ、炭素数1~4のアルキル基であり、
R23は、炭素数1~20のアルキレン基、または炭素数3~20のポリメチレン基であり、R24は、炭素数1~20のアルキレン基、または炭素数3~20のポリメチレン基であり、
V及びWは、それぞれ、イソシアネート基と反応しうる基である。)
R24は、炭素数1~20のアルキレン基、または炭素数3~20のポリメチレン基であり、好ましくは炭素数1~10のアルキレン基、または炭素数3~10のポリメチレン基である。なお、dは0または1であり、dが0の場合には、Vが直接ピペリジン環に結合するものを指す。
本発明でA4成分として使用されるヒンダードフェノール構造を有する機能性付与化合物としては、下記一般式(ii)で示される構造を分子内に有する化合物が好適に使用できる。
R25、R26、R27、及びR28は、それぞれ、炭素数1~18のアルキル基、または水素原子であり、
R25、またはR26の少なくともどちらか一方は、炭素数4以上のアルキル基である。)
R25、R26、R27、及びR28は、それぞれ、炭素数1~18のアルキル基、または水素原子であり、R25、またはR26のうち少なくともどちらか一方は、炭素数4以上のアルキル基であり、
R29は、炭素数1~10のアルキレン基、または炭素数3~10のポリメチレン基であり、eは0または1であり、
Uは、イソシアネート基と反応しうる基である。)
本発明でA4成分として使用されるトリアジン構造、またはベンゾトリアゾール構造を有する機能性付与化合物としては、下記一般式(iii)、(iv)で示される構造を分子内に有する化合物が好適に使用できる。
下記一般式(6)
R30、R31、R32、R33、R34、及びR35は、それぞれ独立に、炭素数1~10のアルキル基、アルキルオキシ基、水素原子、アミノ基、水酸基、カルボキシル基、またはチオール基であり、
前記アルキル基、及びアルキルオキシ基は、アミノ基、水酸基、カルボキシル基、及びチオール基から選ばれる置換基を有していてもよく、
ただし、R30~R35のうち、1つまたは2つの基は、イソシアネート基と反応しうる基である。)
で示される化合物が好適に使用できる。
R36、及びR37は、それぞれ独立に、炭素数1~10のアルキル基、炭素数1~10のアルキルオキシ基、水素原子、アリール基であり、
前記アルキル基、及びアルキルオキシ基は、イソシアネート基と反応しうる基を有していてもよく、ただし、該イソシアネート基と反応しうる基は、1つのみであり、
前記アリール基は、炭素数1~5のアルキル基を置換基として有していてもよく、
R38は、水素原子、又はハロゲン原子である。)
これらA1成分、A2成分、A3成分およびA4成分を反応させてA成分を得る場合には、所謂ワンショット法又はプレポリマー法を採用することができ、たとえば次のような方法によって好適にA成分を得ることができる。
A1成分、A2成分及びA3成分の反応は、既述の方法により行うことができる。得られたウレタンポリマーとA4成分との反応は、溶媒の存在下または非存在下で両者を窒素あるいはアルゴンなどの不活性ガス雰囲気下中、25~120℃で0.5~24時間反応させればよい。溶媒としては、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、t-ブタノール、2-ブタノール、n-ブタノール、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、トルエン、ヘキサン、ヘプタン、酢酸エチル、DMF、DMSO、THFなどを使用することができる。
A1成分とA2成分とを反応さてウレタンプレポリマーを得、さらに分子内に2つのイソシアネート基と反応しうる基を有するA4成分を混合・反応させることにより、機能性付与化合物を有するウレタンプレポリマーを得、次いで該ウレタンプレポリマーとA3成分を反応させることにより、本発明のA成分を製造することができる。
まず、分子内に1つのイソシアネート基と反応しうる基を有するA4成分と、イソシアネート基を3つ有するトリイソシアネート化合物を反応させ、側鎖に機能性構造を有するジイソシアネート化合物を合成する。このジイソシアネート化合物とA1成分、及びA2成分とを反応さてウレタンプレポリマーを得、次いでA3成分と反応させることにより、本発明のA成分を製造することができる。
上記方法において反応に使用するA1成分、A2成分、A3成分、およびA4成分の量比は適宜決定すればよいが、得られるポリウレタン-ウレア樹脂の耐熱性、接着強度、フォトクロミック特性(発色濃度、退色速度、耐候性など)などのバランスの観点から、次のような量比とすることが好ましい。すなわち、A1成分に含まれる水酸基の総モル数をn1とし、A2成分に含まれるイソシアネート基の総モル数をn2とし、A3成分に含まれるアミノ基の総モル数をn3とし、A4成分に含まれるイソシアネート基と反応しうる基(具体的にはアミノ基、水酸基、メルカプト基及び/又はカルボキシル基)の総モル数をn4としたときに、n1:n2:n3:n4=0.3~0.89/1.0/0.1~0.69/0.01~0.2となる量比、特にn1:n2:n3:n4=0.34~0.83/1.0/0.15~0.60/0.02~0.15となる量比とすることが好ましく、n1:n2:n3:n4=0.4~0.78/1.0/0.2~0.5/0.02~0.1となる量比とすることが最も好ましい。
上記反応により得られたポリウレタン-ウレア樹脂の末端にイソシアネート基が残存している場合には、イソシアネート基と反応する活性水素を有する反応停止剤を添加し、末端を不活性化することが好ましい。末端にイソシアネート基が残存している場合には、フォトクロミック特性が低下する傾向が見られる。イソシアネート基が残存するかどうかは、赤外線吸収スペクトルを測定することにより判断可能である。
R39は、炭素数1~20のアルキル基、アリール基、アラルキル基、アルキルオキシカルボニル基または水素原子であり、
R40は、炭素数1~20のアルキル基、アリール基、アラルキル基、またはエステル基である。)
R41は、炭素数1~20のアルキル基、アリール基、アラルキル基、またはアルキルオキシカルボニル基であり、
Zは、水酸基、カルボキシル基、またはチオール基である。)
で示される化合物も、反応停止剤として好適に使用できる。
A5成分は、上記したA4成分と同様の方法で反応させてポリウレタン-ウレア樹脂に導入することができる。
なお、A4成分をA5成分の代わりに使用した場合には、前記n5は、n4と読み替えることができる。また、反応停止剤として、A4成分とA5成分とを併用した場合には、前記n5は、n5とn4の合計(n5+n4)と読み替えることができる。
また、A4成分、もしくはA5成分を使用した際のポリウレタン-ウレア樹脂の分子量、及び耐熱性は、当然のことながら前述の範囲を満足するものである。
本発明のフォトクロミック組成物でB成分として用いるフォトクロミック化合物をとしては、クロメン化合物、フルギミド化合物、スピロオキサジン化合物、スピロピラン化合物などの公知のフォトクロミック化合物を何ら制限なく使用することが出来る。これらは、単独使用でもよく、2種類以上を併用しても良い。
本発明のフォトクロミック性組成物は、A成分およびB成分以外に、任意成分として(C)有機溶媒(以下、単にC成分ともいう。)、(D)分子内に2つ以上のイソシアネート基を有するイソシアネート化合物、その他成分を含んでいてもよい。以下、これら任意成分について説明する。
本発明のフォトクロミック組成物に有機溶媒を添加することにより、ポリウレタン-ウレア樹脂(A成分)とフォトクロミック化合物(B成分)、さらには、必要に応じて添加されるその他の成分が混合しやすくなり、組成物の均一性を向上させることができる。また、本発明のフォトクロミック組成物の粘度を適度に調整することができ、光学シート又はフィルムに本発明のフォトクロミック組成物を塗布するときの操作性および塗布層厚の均一性を高くすることもできる。なお、光学シート又はフィルムとして有機溶媒に侵され易い材質のものを使用した場合には、外観不良が生じたり、フォトクロミック特性が低下したりするという問題が発生することが懸念されるが、このような問題は、後述する方法を採用することにより回避することが出来る。また、本発明のフォトクロミック組成物においては、後述するように、様々な種類の溶媒が使用できるので、溶媒として光学シート又はフィルムを侵し難い溶媒を選択して使用することによっても上記問題の発生を防止することができる。
本発明においては、D成分としてさらに分子内に少なくとも1つのイソシアネート基を有するイソシアネート化合物を用いることによって、後述する光学物品の密着強度をより向上させることができる。
本発明のフォトクロミック性組成物におけるD成分の配合量は、密着性、耐熱性、及びフォトクロミック特性の観点から、A成分100質量部に対して0.01~20質量部とすることが好適である。上記配合量が少なすぎる場合には、十分な密着性、及び耐熱性の向上効果が得られず、多すぎる場合には、該フォトクロミック性組成物から得られる接着層の白濁、密着性の低下、フォトクロミック化合物の耐久性低下などが起こる傾向がある。発色濃度や耐久性といったフォトクロミック特性を維持したまま、プラスチックフィルムなどの光学基材との密着性を向上させるためには、D成分の配合量は、A成分100質量部に対して0.1~10質量部、特に0.5~5質量部とすることが好ましい。この際、D成分のイソシアネート基の割合は、A成分100質量部に対して、0.01~10.0質量部、より好ましくは0.02~5.0質量部、もっとも好ましくは0.1~3.0質量部である。ここで、イソシアネート基の量は、B成分の分子量と1分子当たりのイソシアネート基の数から求めることができる。
本発明のフォトクロミック組成物に水を配合することもできる。特に、イソシアネート化合物であるD成分を添加する際に水を配合することにより、本発明のD成分に含まれるイソシアネート基を効率的に加水分解することができる。この水は、本発明のフォトクロミック組成物に最初から配合することもできる。ただし、フォトクロミック組成物の保存安定性を考慮すると、フォトクロミック組成物の使用時、つまり、該組成物により塗膜を形成し、光学シートを張り合わせる際に配合することが好ましい。また、この水は、下記に詳述するが、フォトクロミック性接着シートを形成する場合に、その雰囲気下に存在する湿気で代用することもできる。D成分に含まれるイソシアネート基の加水分解は、フォトクロミック組成物を光学シートにコートして塗膜を形成した後に、その環境下の水分(湿気)と接触することによっても進行する。
さらに、本発明で使用するフォトクロミック組成物には、フォトクロミック化合物の耐久性の向上、発色速度の向上、退色速度の向上や製膜性のために、界面活性剤、酸化防止剤、ラジカル補足剤、紫外線安定剤、紫外線吸収剤、離型剤、着色防止剤、帯電防止剤、蛍光染料、染料、顔料、香料、可塑剤等の添加剤を添加しても良い。添加するこれら添加剤としては、公知の化合物が何ら制限なく使用される。
本発明のフォトクロミック組成物は、上記A成分及びB成分、並びに必要に応じて使用するC成分、D成分(D’成分)、及びその他の成分を混合することにより製造することができる。各成分を混合する順序は、特に制限されるものではない。
光学物品は、互いに対向する2枚の光学シート又はフィルムが本発明のフォトクロミック組成物からなる接着層を介して接合されてなる積層構造を含んでなる。このような光学物品としては、上記積層構造のみからなる積層シート又はフィルム(以下、単に、本発明の積層シートともいう。);上記積層構造を形成する際に、フォトクロミック組成物からなる接着層の両側に別の接着層を介して2枚の光学シート又はフィルムを接合してなる積層シート又はフィルム;これら積層シート又はフィルムに光学シート又はフィルムを更に積層したり、表面にハードコート層などのコート層を形成したりした複合積層シート又はフィルム;これら積層シート又はフィルム、又は複合積層シートあるいはフィルム(以下、総称して単に、本発明の積層シート等ともいう。)をプラスチックレンズ本体などの光学基材と一体化した光学物品、などを挙げることができる。
よって、第2接着層を形成する接着剤に含まれる有機溶剤の、光学シート又は光学フィルムとの溶解性の観点から、第2接着層を形成する接着剤の固形分濃度は、20~100重量%の範囲であることが好ましく、さらに、第2接着層の膜厚は、第1接着層よりも薄く、1~40μmの範囲であることが好ましく、2~20μmであることがより好ましい。
本発明において、光学シート又はフィルム、及び光学基材としては、光透過性を有するシート又はフィルム、及び光学基材が特に制限なく使用できるが、入手の容易性および加工のし易さなどの観点から樹脂製のものを使用することが好適である。光学シート又はフィルム、及び光学基材の原料として好適な樹脂を例示すれば、ポリカーボネート樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ナイロン樹脂、トリアセチルセルロース樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、アリル樹脂、エポキシ樹脂、ポリビニルアルコール樹脂などが挙げられる。その中でも、密着性が良好で射出成形法に対する適用性が高いという理由からポリカーボネート樹脂が特に好ましい。また、偏光フィルム(ポリビニルアルコール偏光フィルムをトリアセチルセルロース樹脂フィルムではさんだもの)も、本発明の光学フィルムとして使用することが可能である。
本発明の積層シートは、互いに対向する2枚の光学シート又はフィルムを本発明のフォトクロミック組成物からなる接着層を介して接合させることにより製造される。なお、上記第1接着層の厚さは、フォトクロミック化合物の発色濃度、耐候性および接着強度などの観点から、5~100μm、特に10~50μmとすることが好ましい。また、第2接着層を使用する場合には、その膜厚は、前述の通り1~40μmの範囲であることが好ましく、2~20μmであることがより好ましい。
1)あらかじめ光学シート又は光学フィルム上に第2接着層を積層させ、この第2接着層を有する2枚の光学シート又は光学フィルムで、第1接着層を挟みこむ方法、
2)第1接着層の両面に第2接着層を塗布しておき、その両面に光学シート又は光学フィルムを貼り付ける方法、
3)光学シート又は光学フィルム上に、第1接着層、第2接着層、第1接着層、さらには光学シート又は光学フィルムとなるように順次積層していく方法、
などが挙げられるが、製造効率などの観点から、1)の方法を採用することが最も好ましい。
PL1:旭硝子株式会社製エクセノール(ポリプロピレングリコール、数平均分子量400)。
PL2:旭硝子株式会社製エクセノール(ポリプロピレングリコール、数平均分子量1000)。
PL3:旭硝子株式会社製エクセノール(ポリプロピレングリコール、数平均分子量2000)。
PL4:旭化成ケミカルズ株式会社製デュラノール(1,5-ペンタンジオールとヘキサンジオールを原料とするポリカーボネートジオール、数平均分子量500)。
PL5:旭化成ケミカルズ株式会社製デュラノール(1,5-ペンタンジオールとヘキサンジオールを原料とするポリカーボネートジオール、数平均分子量800)。
PL6:旭化成ケミカルズ株式会社製デュラノール(1,5-ペンタンジオールとヘキサンジオールを原料とするポリカーボネートジオール、数平均分子量1000)。
PL7:旭化成ケミカルズ株式会社製デュラノール(1,5-ペンタンジオールとヘキサンジオールを原料とするポリカーボネートジオール、数平均分子量3000)。
PL8:ダイセル化学株式会社製プラクセル(ポリカプロラクトンジオール、数平均分子量500)。
PL9:DIC株式会社製ポリライト(アジピン酸と1,4-ブタンジオールから成るポリエステルジオール、数平均分子量1000)。
PL10:宇部興産株式会社製ETERNACOLL(1,4-シクロヘキサンジメタノールを原料とするポリカーボネートジオール、数平均分子量1000)。
PL11:旭硝子株式会社製エクセノール(ポリプロピレングリコール、数平均分子量4000)。
PL12:1,10-デカンジオール。
NCO1:イソホロンジイソシアネート。
NCO2:4,4’-メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)。
NCO3:ヘキサメチレン-1,6-ジイソシアネート。
NCO4:トルエン-2,4-ジイソシアネート。
NCO5:ノルボルナンジイソシアネート。
NCO6:1,3,6-ヘキサメチレントリイソシアネート。
NCO7:1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ヒドロキシピペリジンと1-メチルベンゼン-2,4,6-トリイソシアネートとの反応生成物。
NCO8:1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ヒドロキシピペリジンと1,6,11-ウンデカントリイソシアネートとの反応生成物。
CE1:イソホロンジアミン。
CE2:エチレンジアミン。
CE3:1,6-ジアミノヘキサン。
CE4:2-アミノエタノール。
CE5:6-アミノヘキサノール。
CE6:グリシン。
CE7;2-アミノエタンチオール。
CE8;ピペラジン。
CE9:N,N’-ジエチルエチレンジアミン。
CE10:1,4-ブタンジオール。
CE11:1,10-デカンジオール。
HA1;1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ヒドロキシピペリジン。
HA2;1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-アミノピペリジン。
HA3;下記式で示される化合物(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製チヌビン622LD、平均分子量3100~4000)。
HA6;3-t-ブチル-5-メチル-4-ヒドロキシ安息香酸。
HA7;3-[3’-(2’’H-ベンゾトリアゾール-2’’-イル)-4’-ヒドロキシフェニル]プロピオン酸。
HA8;ノルマルブチルアミン。
C1:イソプロピルアルコール。
C2:プロピレングリコール-モノメチルエーテル。
C3:トルエン。
C4:酢酸エチル。
C5:シクロヘキサノン。
C6:THF(テトラヒドロフラン)。
C7:ジエチルケトン。
D1:イソホロンジイソシアネート(分子量222)。
D2:4,4’-メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)(分子量262)。
D3:ヘキサメチレン-1,6-ジイソシアネート(分子量168)。
D4:キシリレンジイソシアネート(分子量188)。
撹拌羽、冷却管、温度計、窒素ガス導入管を有する三口フラスコに、エチレングリコール31g、イソホロンジイソシアネート222gを仕込み、窒素雰囲気下、70℃で6時間反応させ、イソシアネート化合物(D5)を得た。
D5:イソホロンジイソシアネート(2モル)とエチレングリコール(1モル)の反応物(分子量506)。
撹拌羽、冷却管、温度計、窒素ガス導入管を有する三口フラスコに、エチレングリコール41.3g、イソホロンジイソシアネート222gを仕込み、窒素雰囲気下、70℃で6時間反応させ、イソシアネート化合物(D6)を得た。
D6:イソホロンジイソシアネート(3モル)とエチレングリコール(2モル)の反応物(分子量790)。
撹拌羽、冷却管、温度計、窒素ガス導入管を有する三口フラスコに、平均分子量800のポリカーボネートジオール533g、イソホロンジイソシアネート222gを仕込み、窒素雰囲気下、70℃で6時間反応させ、イソシアネート化合物(D7)を得た。
D7:イソホロンジイソシアネート(3モル)と数平均分子量800のポリカーボネートジオール(2モル)の反応物(数平均分子量2266)。
・TINUVIN765:ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)セバケート(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)
・Irganox245:エチレンビス(オキシエチレン)ビス[3-(5-tert-ブチル-4-ヒドロキシ-m-トリル)プロピオネート](チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製)
撹拌羽、冷却管、温度計、窒素ガス導入管を有する三つ口フラスコに、数平均分子量400のポリエーテルジオール9.0g、イソホロンジイソシアネート10.0g、DMF80mlを仕込み、窒素雰囲気下、120℃で5時間反応させ、その後、25℃まで冷却し、鎖延長剤であるイソホロンジアミン3.4gを滴下し、25℃で1時間反応させ、溶媒を減圧留去し、ポリウレタン-ウレア樹脂(U1)を得た。得られたポリウレタン-ウレア樹脂の分子量はポリスチレン換算で15万、ポリオキシエチレン換算で1万(理論値;1万)であり、耐熱性は140℃であった。ここで言う数平均分子量の理論値とは、原料に用いたA1成分、A2成分、及びA3成分が、架橋することなく理論的に直線状にポリウレタン-ウレア樹脂を生成した場合の分子量のことである。
表1及び表2に示すポリオール化合物(A1成分)、ポリイソシアネート化合物(A2成分)、アミノ基含有化合物(A3成分)及び反応溶媒を用い、表1及び表2に示す反応条件を用いた以外は、前述のU1の合成方法と同様にして、U2~U10、U21~U41を合成した。なお、ポリウレタン-ウレア樹脂U1~10及びU21~41について、赤外線吸収スペクトルを測定したところ、2250cm-1付近に分子末端のイソシアネート基に由来する吸収が確認された。
撹拌羽、冷却管、温度計、窒素ガス導入管を有する三つ口フラスコに、数平均分子量400のポリエーテルジオール9.0g、イソホロンジイソシアネート10.0g、DMF80mlを仕込み、窒素雰囲気下、120℃で5時間反応させ、その後、25℃まで冷却し、鎖延長剤であるイソホロンジアミン3.4gを滴下し、25℃で1時間反応させ、そこに、ノルマルブチルアミン0.35g加え、25℃で1時間反応させ、溶媒を減圧留去し、ポリウレタン-ウレア樹脂(U11)を得た。得られたポリウレタン-ウレア樹脂について、赤外線吸収スペクトルを測定したところ、分子末端にイソシアネート基に由来する吸収は確認されず、分子末端にイソシアネート基が残存していないことが確認された。得られたポリウレタン-ウレア樹脂の分子量はポリスチレン換算で15万、ポリオキシエチレン換算で1万(理論値;1万)であり、耐熱性は140℃であった。ここで言う数平均分子量の理論値とは、原料に用いたA1成分、A2成分、及びA3成分が、架橋することなく理論的に直線状にポリウレタン-ウレア樹脂を精製した場合の分子量のことである。
表1に示すポリオール化合物(A1成分)、ポリイソシアネート化合物(A2成分)、アミノ基含有化合物(A3成分)及び反応溶媒を用い、表1に示す反応条件を用い、前述のU11の合成方法と同様にして、U12~U20の合成を実施した。得られたポリウレタン-ウレア樹脂について、赤外線吸収スペクトルを測定したところ、いずれの樹脂とも分子末端のイソシアネート基に由来する吸収は確認されなかった。
表3に示すポリオール化合物(A1成分)、ポリイソシアネート化合物(A2成分)、及び反応溶媒を用い、A3成分に代えて表3に示すジオール化合物(鎖延長剤)を用いた他は前述のU1の合成方法と同様にして、表3に示す条件でU42~U46を合成した。なお、ポリウレタン樹脂U42~U46は、鎖延長剤として表3に示すジオール化合物を用いたことに起因して、分子中にウレア結合を有していない。
表4、表5、表6、表7に示すポリオール化合物(A1成分)、ポリイソシアネート化合物(A2成分)、アミノ基含有化合物(A3成分)、機能性付与化合物(A4成分)、及び反応溶媒を用い、表4、表5、表6、表7に示す反応条件を用いた以外は、前述のU11の合成方法と同様にして、Z1~Z28、Z31~Z40、及びW1~W31の合成を実施した。
撹拌羽、冷却管、温度計、窒素ガス導入管を有する三口フラスコに、平均分子量800のポリカーボネートジオール180g、イソホロンジイソシアネート100g、DMF1200mlを仕込み、窒素雰囲気下、100℃で5時間反応させた。次いでこの反応液に、4-ヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチル-1-ピペリジンエタノール9gを加え、窒素雰囲気下で、さらに100℃で5時間反応させた。その後、25℃まで冷却し、アミノ基含有化合物であるイソホロンジアミン30.4gを滴下し、25℃で1時間反応させ、溶媒を減圧留去し、ポリウレタン-ウレア樹脂の主鎖中にピペリジン環を有するポリウレタン-ウレア樹脂(Z29)を得た。得られたポリウレタン-ウレア樹脂の数平均分子量はポリスチレン換算で27万、ポリオキシエチレン換算で9千(理論値;7千)であり、耐熱性は130℃であった。
a)撹拌羽、冷却管、温度計、窒素ガス導入管を有する三口フラスコに、1,6,11-ウンデカントリイソシアネート6.5g、1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ヒドロキシピペリジン 4gを加え、120℃で5時間反応させた。このようにして、1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ヒドロキシピペリジンと1,6,11-ウンデカントリイソシアネートとが反応したジイソシアネート化合物を得た。
フォトクロミック組成物の調製
ポリウレタン-ウレア樹脂(U1)5g、フォトクロミック化合物(PC1)0.25gに、有機溶剤としてイソプロピルアルコール20g、さらに光酸化防止剤としてビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)セバケート 0.25gを添加し、80℃で攪拌しながら、超音波により溶解し、フォトクロミック組成物を得た。
得られたフォトクロミック組成物を、PET製フィルム(帝人デュポンフィルム株式会社製ピューレックスフィルム、シリコン塗膜付)に塗布し80℃で1時間乾燥させ、得られた厚み30μmのフォトクロミックシートをPET製フィルムから剥がした後、厚み400μmのポリカーボネートシート2枚の間に挟み、さらに100℃で30分加熱することにより、目的のフォトクロミック特性を有する積層体を得た。
得られた積層体を試料とし、これに、(株)浜松ホトニクス製のキセノンランプL-2480(300W)SHL-100をエアロマスフィルター(コーニング社製)を介して23℃、積層体表面でのビーム強度365nm=2.4mW/cm2、245nm=24μW/cm2で120秒間照射して発色させ、積層体のフォトクロミック特性を測定した。
得られた積層体を、25×100mmの接着部分を有する試験片とし、試験機(オートグラフAG5000D、島津製作所製)に装着し、クロスヘッドスピード100mm/minで引張り試験を行い、剥離強度を測定した。
表11、12、13、14に示すポリウレタン-ウレア樹脂、フォトクロミック化合物、有機溶媒を用いた以外は、実施例1と同様な方法でフォトクロミック組成物の調整、及びフォトクロミック積層体の作製とを実施した。得られた各種フォトクロミック積層体の評価結果を表11、12、13、14に示す。
フォトクロミック組成物の調製
ポリウレタン-ウレア樹脂(W1)5gに、有機溶剤としてイソプロピルアルコール20gを添加し、80℃で攪拌しながら、超音波により溶解した。ポリウレタン-ウレア樹脂が溶解したのを確認後、室温まで冷却し、イソホロンジイソシアネート(D成分)0.15g、フォトクロミック化合物(PC1)0.25gを加え、攪拌混合してフォトクロミック組成物を得た。
得られたフォトクロミック組成物を、PET製フィルム(帝人デュポンフィルム株式会社製ピューレックスフィルム、シリコン塗膜付)に塗布し、湿気の存在下(23℃、湿度50%)の実験室において、50℃で30分乾燥させた後、PET製フィルムを剥がして厚み約40μmのフォトクロミック性接着シートを得た。次いで、得られたフォトクロミック性接着シートを、厚み400μmのポリカーボネートシート2枚の間に挟み、湿気の存在下(23℃、湿度50%)の実験室において、40℃で24時間静置した後、さらに110℃で60分加熱処理することにより、目的のフォトクロミック特性を有する積層体を得た。なお、該積層体から取り出したフォトクロミック性接着シートとフォトクロミック組成物の赤外吸収スペクトルを確認したところ、該フォトクロミック性接着シートにおけるイソシアネート基のピークが減少し、イソホロンジイソシアネートが反応していることが確認できた。また、該フォトクロミック性接着シートにおけるイソシアネート基のピークが時間と共に減少することも確認した。
表15、表16に示すポリウレタン-ウレア樹脂、イソシアネート化合物、有機溶媒を用いた以外は、実施例84と同様の方法でフォトクロミック組成物を調製した。なお、当然のことながら、実施例84と同じく、フォトクロミック化合物(PC1)は、ポリウレタン-ウレア樹脂(A成分)に対して5質量部(実使用量0.25g)となるように配合した。また、得られたフォトクロミック組成物を使用して、実施例84と同様の方法でフォトクロミック積層体を作製した。
表17に示すポリウレタン樹脂、フォトクロミック化合物、有機溶媒を用いた以外は、実施例1と同様な方法でフォトクロミック組成物の調整、及びフォトクロミック積層体の作製とを実施した。得られた各種フォトクロミック積層体の評価結果を表17に示す。
以下の方法により、分子鎖の末端にイソシアネート基を有するポリウレタン樹脂(I)、及び分子鎖の末端に水酸基を有するポリウレタン樹脂(II)を合成した。
撹拌羽、冷却管、温度計、窒素ガス導入管を有する三口フラスコに、数平均分子量1000のポリカプロラクトンポリオール(ダイセル化学株式会社製プラクセル)100g、4,4’-メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)39.5gを仕込み、窒素雰囲気下、90℃で6時間反応させ、末端にイソシアネート基を有するプレポリマー(ポリウレタン樹脂(I))を得た。得られたプレポリマー(ポリウレタン樹脂(I))の数平均分子量は、ポリオキシエチレン換算で2500(理論値;2800)であった。
撹拌羽、冷却管、温度計、窒素ガス導入管を有する三口フラスコに、数平均分子量1000のポリカプロラクトンポリオール(ダイセル化学株式会社製プラクセル)100g、4,4’-メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)61.3gを仕込み、窒素雰囲気下、90℃で6時間反応させ、末端にイソシアネート基を有するプレポリマーを得た。その後、DMF200mlを加えた後、窒素雰囲気下で1,4-ブタンジオール12.7gを滴下しながら加え、滴下終了後90℃で24時間反応させ、分子鎖の末端に水酸基を有するポリウレタン樹脂(II)を合成した。得られたポリウレタン樹脂(II)の数平均分子量は、ポリオキシエチレン換算で2万(理論値;1万8千)であった。
接着剤1;ウレタン(メタ)アクリレート系接着剤
ウレタンオリゴマーテトラアクリレート(新中村化学社製U-4HA、4官能) 50質量部、トリエチレングリコールジメタクリレート(2官能) 40質量部、γ-グリシドキシプロピルメタアクリレート(2官能) 10質量部、さらに光重合開始剤としての1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンとビス(2,6-ジメトキシベンゾイル)-2,4,4-トリメチルーペンチルフォスフィンオキサイドの3:7の混合物(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製Irgacure1870) 0.5質量部を撹拌混合し、接着剤1を得た。
イソホロンジイソシアネートと、数平均分子量800のポリカーボネートポリオールを3:4のモル比で反応させた水酸基を末端に有するウレタンプレポリマー38質量部とTHF200質量部を混合し、これにイソシアネート基を末端に有するイソシアヌレート変性ヘキサメチレンジイソシアネート5質量部を添加することで、接着剤2を得た。
窒素雰囲気下にて数平均分子量800のポリカーボネートジオール18.0質量部、イソホロンジイソシアネート10.0質量部、DMF100質量部を仕込み、窒素雰囲気下、100℃で5時間反応させ、次いで、鎖延長剤である1,4-ブタンジオール1.2質量部を滴下し、継続して100℃で5時間反応させた後、溶媒を減圧留去し、ポリウレタン樹脂を得た。
ポリウレタン-ウレア樹脂(W4)10gに、有機溶剤としてプロピレングリコール-モノメチルエーテル 50gを添加し、室温で撹拌しながら溶解し、接着剤4を得た。
フォトクロミック組成物の調製
ポリウレタン-ウレア樹脂(W29)5gに、有機溶剤としてTHF 20gを添加し、80℃で攪拌しながら、超音波により溶解した。ポリウレタン-ウレア樹脂が溶解したのを確認後、室温まで冷却し、イソホロンジイソシアネート(D成分)0.15g、フォトクロミック化合物(PC1)0.25gを加え、攪拌混合してフォトクロミック組成物を得た。
接着剤1を厚み400μmのポリカーボネートシート上に塗布し、フュージョンUVシステムズ社製F3000SQ(Dバルブ)を用い、窒素フロー下において1分間光硬化させることにより、膜厚5μmの接着層を有するポリカーボネートシートを得た。
表19に示すポリウレタン-ウレア樹脂、イソシアネート化合物、有機溶媒を用いた以外は、実施例128と同様の方法でフォトクロミック組成物を調製した。なお、当然のことながら、実施例128と同じく、フォトクロミック化合物(PC1)は、ポリウレタン-ウレア樹脂(A成分)に対して5質量部(実使用量0.25g)となるように配合した。また、得られたフォトクロミック組成物、表19に示す接着剤を使用して、実施例128と同様の方法でフォトクロミック積層体を作製した。但し、各接着層の乾燥、及び硬化は下記の方法で実施した。
接着剤2の硬化方法;接着剤2を厚み400μmのポリカーボネートシート上に塗布し、110℃で2時間乾燥、硬化させることにより、膜厚5μmの接着層を有するポリカーボネートシートを得た。
接着剤3の硬化方法;接着剤3を厚み400μmのポリカーボネートシート上に塗布し、110℃で5分間乾燥させた後、加湿下(40℃、80%RH)で1時間放置することにより、膜厚5μmの接着層を有するポリカーボネートシートを得た。
接着剤4の硬化方法;接着剤4を厚み400μmのポリカーボネートシート上に塗布し、110℃で10分間乾燥させることにより、膜厚5μmの接着層を有するポリカーボネートシートを得た。
Claims (25)
- (A)分子鎖中にウレア結合を有するポリウレタン-ウレア樹脂、並びに(B)フォトクロミック化合物を含んでなることを特徴とするフォトクロミック組成物。
- (A)ポリウレタン-ウレア樹脂が、
(A1)ポリエーテルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリカプロラクトンポリオール、およびポリエステルポリオールよりなる群から選ばれる少なくとも1種のポリオール化合物と、
(A2)分子内に2つ以上のイソシアネート基を有するポリイソシアネート化合物と、
(A3)イソシアネート基と反応し得る基を分子内に2つ以上有し、その内の少なくとも1つがアミノ基であるアミノ基含有化合物と、
を反応して得られるポリウレタン-ウレア樹脂である請求項1に記載のフォトクロミック組成物。 - ポリウレタン-ウレア樹脂を得るに際して使用する成分(A1)、(A2)および(A3)の量比が、前記成分(A1)に含まれる、水酸基の総モル数をn1とし、前記成分(A2)に含まれるイソシアネート基の総モル数をn2とし、前記成分(A3)に含まれる、アミノ基の総モル数をn3としたときに、n1:n2:n3=0.3~0.9:1:0.1~0.7となる量比である請求項2に記載のフォトクロミック組成物。
- (A1)ポリオール化合物が分子量400~3000であり、(A3)アミノ基含有化合物が分子量50~300である請求項2記載のフォトクロミック組成物。
- (A3)アミノ基含有化合物が、ジアミン、トリアミン、アミノアルコール、アミノカルボン酸、およびアミノチオールよりなる群から選ばれる少なくとも1種である請求項2記載のフォトクロミック組成物。
- (A)ポリウレタン-ウレア樹脂が、ピペリジン構造、ヒンダードフェノール構造、トリアジン構造、またはベンゾトリアゾール構造を有するものである請求項1記載のフォトクロミック組成物。
- (A)ポリウレタン-ウレア樹脂が、末端にピペリジン構造、ヒンダードフェノール構造、トリアジン構造、またはベンゾトリアゾール構造を有するものである請求項1記載のフォトクロミック組成物。
- (A)ポリウレタン-ウレア樹脂が、
(A1)ポリエーテルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリカプロラクトンポリオール、およびポリエステルポリオールよりなる群から選ばれる少なくとも1種のポリオール化合物と、
(A2)分子内に2つ以上のイソシアネート基を有するポリイソシアネート化合物と、
(A3)イソシアネート基と反応し得る基を分子内に2つ以上有し、その内の少なくとも1つがアミノ基であるアミノ基含有化合物と、
(A4)分子内に1または2つのイソシアネート基と反応しうる基を有し、かつ、分子内にピペリジン構造、ヒンダードフェノール構造、トリアジン構造、またはベンゾトリアゾール構造を有する機能性付与化合物と、
を反応して得られるポリウレタン-ウレア樹脂である請求項1記載のフォトクロミック組成物。 - (A)ポリウレタン-ウレア樹脂を得るに際して使用する成分(A1)、(A2)、(A3)、及び(A4)の量比が、前記成分(A1)に含まれる水酸基の総モル数をn1とし、前記成分(A2)に含まれるイソシアネート基の総モル数をn2とし、前記成分(A3)に含まれるアミノ基の総モル数をn3とし、前記成分(A4)に含まれるイソシアネート基と反応しうる基の総モル数をn4としたときに、n1:n2:n3:n4=0.3~0.89/1.0/0.1~0.69/0.01~0.2となる量比である請求項8記載のフォトクロミック組成物。
- (A)分子鎖中にウレア結合を有するポリウレタン-ウレア樹脂、(B)フォトクロミック化合物、および(D)分子内に少なくとも1つのイソシアネート基を有するイソシアネート化合物を有するフォトクロミック組成物。
- (A)ポリウレタン-ウレア樹脂が、その末端と、(A5)分子内に1つのイソシアネート基と反応しうる基を有する反応停止剤と、を反応させることにより末端が停止されている請求項10記載のフォトクロミック組成物。
- (A)ポリウレタン-ウレア樹脂が、末端にピペリジン構造、ヒンダードフェノール構造、トリアジン構造、またはベンゾトリアゾール構造を有するものである請求項10記載のフォトクロミック組成物。
- (A)ポリウレタン-ウレア樹脂が、
(A1)ポリエーテルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリカプロラクトンポリオール、およびポリエステルポリオールよりなる群から選ばれる少なくとも1種のポリオール化合物と、
(A2)分子内に2つ以上のイソシアネート基を有するポリイソシアネート化合物と、
(A3)イソシアネート基と反応し得る基を分子内に2つ以上有し、その内の少なくとも1つがアミノ基であるアミノ基含有化合物と、
(A4)分子内に1または2つのイソシアネート基と反応しうる基を有し、かつ、分子内にピペリジン構造、ヒンダードフェノール構造、トリアジン構造、またはベンゾトリアゾール構造を有する機能性付与化合物と、
を反応して得られるポリウレタン-ウレア樹脂である請求項10記載のフォトクロミック組成物。 - (A)ポリウレタン-ウレア樹脂を得るに際して使用する成分(A1)、(A2)、(A3)、及び(A4)の量比が、前記成分(A1)に含まれる水酸基の総モル数をn1とし、前記成分(A2)に含まれるイソシアネート基の総モル数をn2とし、前記成分(A3)に含まれるアミノ基の総モル数をn3とし、前記成分(A4)に含まれるイソシアネート基と反応しうる基の総モル数をn4としたときに、n1:n2:n3:n4=0.3~0.89/1.0/0.1~0.69/0.01~0.2となる量比である請求項13記載のフォトクロミック組成物。
- (D)イソシアネート化合物が分子量1000未満である請求項10に記載のフォトクロミック組成物。
- (B)フォトクロミック化合物の含有量が、前記(A)ポリウレタン-ウレア樹脂100質量部に対して0.1~20質量部である請求項1に記載のフォトクロミック組成物。
- (B)フォトクロミック化合物の含有量が、前記(A)ポリウレタン-ウレア樹脂100質量部に対して0.1~20質量部である請求項10に記載のフォトクロミック組成物。
- (A)ポリウレタン-ウレア樹脂100質量部に対して5~900質量部の(C)有機溶媒を更に含んでなる請求項1に記載のフォトクロミック組成物。
- (A)ポリウレタン-ウレア樹脂100質量部に対して5~900質量部の(C)有機溶媒を更に含んでなる請求項10に記載のフォトクロミック組成物。
- 互いに対向する2枚の光学シート又はフィルムが請求項1に記載のフォトクロミック組成物からなる接着層を介して接合されてなる積層構造を含んでなる光学物品。
- 互いに対向する2枚の光学シート又はフィルムが請求項10に記載のフォトクロミック組成物からなる接着層を介して接合されてなる積層構造を含んでなる光学物品。
- 互いに対向する2枚の光学シート又はフィルムが、請求項1に記載のフォトクロミック組成物からなる第1接着層と、該第1接着層の両側に存在する第2接着層とを介して接合されてなる積層構造を含んでなる光学物品。
- 互いに対向する2枚の光学シート又はフィルムが、請求項10に記載のフォトクロミック組成物からなる第1接着層と、該第1接着層の両側に存在する第2接着層とを介して接合されてなる積層構造を含んでなる光学物品。
- 請求項20に記載の光学物品の製造方法であって、(I)平滑な基材上に(A)分子鎖中にウレア結合を有するポリウレタン-ウレア樹脂と、(B)フォトクロミック化合物と、(A)ポリウレタン-ウレア樹脂100質量部に対して5~900質量部の(C)有機溶媒と、を含んでなるフォトクロミック組成物を延展せしめた後に乾燥することにより(C)有機溶媒を除去し、その後、基材を剥がして(A)ポリウレタン-ウレア樹脂と、該(A)ポリウレタン-ウレア樹脂中に分散した(B)フォトクロミック化合物とを含んでなるフォトクロミック接着性シートを作成する工程、および(II)互いに対向する2枚の光学シート又はフィルムの間に上記フォトクロミック接着性シートを介在させて該2枚の光学シート又はフィルムを接合することにより前記積層構造を作成する工程、を含んでなることを特徴とする光学物品の製造方法。
- 請求項21に記載の光学物品の製造方法であって、(I)平滑な基材上に(A)分子鎖中にウレア結合を有するポリウレタン-ウレア樹脂と、(B)フォトクロミック化合物と、(D)分子中に少なくとも1つのイソシアネート基を有するイソシアネート化合物と、(A)ポリウレタン-ウレア樹脂100質量部に対して5~900質量部の(C)有機溶媒と、を含んでなるフォトクロミック組成物を延展せしめた後に乾燥することにより(C)有機溶媒を除去し、その後、基材を剥がして(A)ポリウレタン-ウレア樹脂と、該(A)ポリウレタン-ウレア樹脂中に分散した(B)フォトクロミック化合物とを含んでなるフォトクロミック接着性シートを作成する工程、および(II)互いに対向する2枚の光学シート又はフィルムの間に上記フォトクロミック接着性シートを介在させて該2枚の光学シート又はフォルムを接合することにより前記積層構造を作成する工程、を含んでなることを特徴とする光学物品の製造方法。
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