JP2016132696A - スプレーコート用フォトクロミック組成物、及びフォトクロミック特性を有する光学物品の製造方法 - Google Patents

スプレーコート用フォトクロミック組成物、及びフォトクロミック特性を有する光学物品の製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】 基材の表面にフォトクロミック組成物を塗布するに際し、スプレーを好適に用いることができ、該フォトクロミック組成物からなる接着層を基材表面に形成させて光学物品を製造するに際して、優れた接着性(耐汗性)、耐熱性を有し、優れたフォトクロミック性を発揮し、且つ外観良好なフォトクロミック特性を有する光学物品(積層体)を製造可能な、フォトクロミック組成物を提供することである。
【解決手段】 本発明のスプレーコート用フォトクロミック組成物は、
(A)分子鎖中にウレア結合を有するポリウレタン−ウレア樹脂、及び
(B)フォトクロミック化合物、及び
(C)上記(A)ポリウレタン−ウレア樹脂100質量部に対し、910〜10,000質量部の希釈用溶媒
を含んでなり、上記(A)ポリウレタン−ウレア樹脂が(C)希釈用溶媒に溶解し、25℃における粘度が1〜1,800mPa・sである。
【選択図】 なし

Description

本発明は、スプレーコート用フォトクロミック組成物、及び該スプレーコート用フォトクロミック組成物を用いた、フォトクロミック特性を有する光学物品の製造方法に関する。
近年米国を中心として、防眩性を有するサングラスなどに、透明で優れた耐衝撃性を有するポリカーボネートを用いたプラスチック基材の需要が急速に高まっている。そして、このようなプラスチック製サングラスにおいては、フォトクロミック色素と組み合わせることによって、周囲の明るさに応じて透過率が変化することにより防眩性を調節できるプラスチック製フォトクロミックサングラスが急速に人気を得ている。このようなサングラスを製造する方法の中でも、様々な形状の基材にフォトクロミック性を付与するために、フォトクロミック化合物を含むポリウレタン接着層を基材表面に形成させる方法などが数多く検討されている。
具体的には、“フォトクロミック色素を含有するポリウレタン樹脂接着層とポリカーボネートシートとを積層してなる積層シート”を用いる方法がある(特許文献1〜特許文献3参照)。このような積層シートを用いることにより、形状にとらわれず、様々な基材へフォトクロミック性を付与することが可能となる。この積層シートを利用してサングラスを製造する具体的な方法としては、たとえば、該積層シートを金型内に装着し、ポリカーボネート樹脂を射出成形する方法が挙げられる。
しかしながら、上記積層シートにおける接着層とポリカーボネートシートとの接着性や、接着層そのものの耐熱性が不十分であると、射出成形によって光学物品を製造した場合、得られる光学物品において剥離が生じたり、光学歪が生じたりするといった問題があった。
そこで、上記接着層を形成する組成物として、接着性、耐熱性に優れる、フォトクロミック組成物が提案されている。(特許文献4)
上記フォトクロミック組成物からなる接着層を形成させることにより、優れた接着性、耐汗性、および耐熱性を有し、優れたフォトクロミック性を発揮し、光学歪などの外観不良の低減された光学物品が得られる。しかしながら、上記外観不良を解消する点において、まだ改善の余地があった。
特表2003−519398号公報 米国特許出願公開第2004−096666号公報 米国特許第6986946号公報 国際公開第WO2013/099640号
本発明の目的は、フォトクロミック組成物からなる接着層を基材表面に形成させて光学物品を製造するに際して、優れた接着性(耐汗性)、耐熱性を有し、優れたフォトクロミック性を発揮し、且つ外観良好なフォトクロミック特性を有する光学物品(積層体)を製造可能な、フォトクロミック組成物を提供することである。さらには、上記光学物品の製造方法を提供することである。
本発明者等は上記課題を解決すべく、ポリウレタン−ウレア樹脂、フォトクロミック化合物、及び希釈用溶媒を含んでなるフォトクロミック組成物の組成、及びそのフォトクロミック組成物を用いて得られる光学物品の製造方法について鋭意検討を行った。その結果、特定の比率でポリウレタン−ウレア樹脂、フォトクロミック化合物、及び希釈用溶媒が混合されたフォトクロミック組成物をスプレーコートし、乾燥により溶媒を除去してフォトクロミック層を形成し、該フォトクロミック層を基材の表面に被覆させることにより、得られる光学物品の接着性、フォトクロミック特性および外観などが優れたものとなることを見出し本発明を完成するに至った。特に、当該接着層を形成する組成物の25℃における粘度を1〜1,800mPa・sとし、スプレーコートすることにより、塗布操作が簡便となるだけでなく、より均一に、より平滑に基材若しくは、転写用支持体に塗布することが可能となるため、積層シートの接着性に優れ、特には、外観不良の発生が抑制されることを見出し、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明は、
(A)分子鎖中にウレア結合を有するポリウレタン−ウレア樹脂、及び
(B)フォトクロミック化合物、及び
(C)上記(A)ポリウレタン−ウレア樹脂100質量部に対し、910〜10,000質量部の希釈用溶媒
を含んでなり、上記(A)ポリウレタン−ウレア樹脂が(C)希釈用溶媒に溶解し、25℃における粘度が1〜1,800mPa・sであるスプレーコート用フォトクロミック組成物である。
本発明のフォトクロミック組成物をスプレーして得られるフォトクロミック層は、接着剤またはバインダーとして機能し、該フォトクロミック層を介在させたポリカーボネート樹脂等からなる光学シートまたはフィルムを積層して得られる積層シートは、優れた接着性を有し、且つ優れたフォトクロミック特性を発揮する。また、得られた積層シートは耐熱性、耐汗性にも優れる。さらに、本発明のフォトクロミック特性を有する光学物品の製造方法を用いることにより得られる光学物品は、優れた接着性、及びフォトクロミック特性を有するばかりでなく、外観が良好となる。特に、光学歪の観点で、外観が優れたものとなる。
本発明のスプレーコート用フォトクロミック組成物は、(A)分子鎖中にウレア結合を有するポリウレタン−ウレア樹脂、(B)フォトクロミック化合物、及び(C)上記(A)ポリウレタン−ウレア樹脂100質量部に対し、910〜10,000質量部の希釈用溶媒を含んでなる。そして、上記(A)ポリウレタン−ウレア樹脂が(C)希釈用溶媒に溶解し、25℃における粘度が1〜1,800mPa・sであって、たとえば、該フォトクロミック組成物を、基材の表面に塗布するに際して、スプレーを好適に使用することができる。
まず、本発明のフォトクロミック組成物を構成する、前記A成分、B成分、及びC成分について説明する。
A成分:ポリウレタン−ウレア樹脂
本発明のフォトクロミック組成物のA成分は、分子鎖中にウレア結合(−R−NH−CO−NH−)を有し、使用する(C)希釈用溶媒に可溶であれば特に限定されない。が、一般的に、テトラヒドロフランに不溶のポリウレタン−ウレア樹脂は、柔軟性が低下する傾向があって、得られるフォトクロミック層の密着性が低下する傾向がある。したがって、密着性に優れ、接着強度の高いフォトクロミック層を得るため、ソックスレー抽出器を用い100mlのテトラヒドロフランに該(A)ポリウレタン−ウレア樹脂1gを加えて6時間還流させたときに、テトラヒドロフランに100%可溶なポリウレタン−ウレア樹脂を用いることが好ましい。(以下、上記ソックスレー抽出によって、テトラヒドロフランに100%可溶なポリウレタン−ウレア樹脂を、テトラヒドロフランに可溶なポリウレタン−ウレア樹脂という。) さらに、本発明のポリウレタン−ウレア樹脂(A成分)は、接着性、及びフォトクロミック特性の観点から、
(A1)ポリカーボネートポリオール、及びポリカプロラクトンポリオールよりなる群から選ばれる少なくとも1種のポリオール化合物(以下、単にA1成分ともいう。)と、
(A2)分子内に2つのイソシアネート基を有するジイソシアネート化合物(以下、単にA2成分ともいう。)と、
(A3)分子内に2つ以上のアミノ基を有するアミノ基含有化合物(以下、単にA3成分ともいう。)と、
(A4)分子内に1または2つのイソシアネート基と反応しうる基を有し、かつ、分子内にピペリジン構造を有する機能性付与化合物
とを反応して得られるものであることが好ましい。このようにして得られるポリウレタン−ウレア樹脂(A成分)は、テトラヒドロフランに100質量%可溶であり、原料であるA3成分としてアミノ基含有化合物を使用することに起因して、分子内にウレア結合が導入される。以下、これら成分について説明する。
A1成分:ポリオール化合物
A1成分のポリオール化合物としては、生成するポリウレタン−ウレア樹脂(A成分)が高架橋体になり過ぎないという理由から分子中に含まれる水酸基数が2〜6であることが好ましく、有機溶媒への溶解性を考慮すれば、分子中に含まれる水酸基数は2〜3であることがより好ましい。また、前述のポリカーボネートポリオール、及びポリカプロラクトンポリオールなどのポリオール化合物は、単独で使用しても良く、2種類以上を併用しても構わないが、耐熱性、接着性、耐候性、耐加水分解性などの観点から、特にポリカーボネートポリオールを使用することが好ましい。
以下、A1成分として使用される各種化合物について詳しく説明する。
ポリカーボネートポリオール: A1成分として使用されるポリカーボネートポリオールとしては、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−プロパンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、2−エチル−4−ブチル−1,3−プロパンジオール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、シクロヘキサン−1,4−ジオール、シクロヘキサン−1,4−ジメタノール、ダイマー酸ジオール、ビスフェノールA のエチレンオキサイドやプロピレンオキサイド付加物、ビス(β−ヒドロキシエチル)ベンゼン、キシリレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等の低分子ポリオール類の1種類以上のホスゲン化より得られるポリカーボネートポリオール、或いはエチレンカーボネート、ジエチルカーボネート、及びジフェニルカーボネート等によるエステル交換法により得られるポリカーボネートポリオール等を挙げることができる。この低分子ポリオール類なかでも、最終的に得られるポリウレタン−ウレア樹脂(A成分)の接着性、及び発色濃度の観点から、直鎖のアルキル鎖を有する低分子ポリオール類がより好ましく、側鎖にアルキル基を有する低分子ポリオールから合成されたポリカーボネートポリオールは、接着性、及びフォトクロミック特性が低下する傾向が見られる。
A1成分としてのポリカーボネートポリオールにおいては、最終的に得られるポリウレタン−ウレア樹脂(A成分)の耐熱性、及びフォトクロミック特性(発色濃度、退色速度、耐候性など)、特にフォトクロミック化合物の耐候性の観点から、数平均分子量は好ましくは400〜2000、より好ましくは500〜1500、最も好ましくは600〜1200である。
これらポリカーボネートポリオールは、試薬としてまたは工業的に入手可能であり、市販されているものを例示すれば、旭化成ケミカルズ株式会社製「デュラノール(登録商標)」シリーズ、株式会社クラレ製「クラレポリオール(登録商標)」シリーズ、ダイセル化学工業株式会社製「プラクセル(登録商標)」シリーズ、日本ポリウレタン工業株式会社製「ニッポラン(登録商標)」シリーズ、宇部興産株式会社製「ETERNACOLL(登録商標)」シリーズなどを挙げることができる。
ポリカプロラクトンポリオール: A1成分として使用されるポリカプロラクトンポリオールとしては、ε−カプロラクトンの開環重合により得られる化合物が使用できる。A1成分としてのポリカプロラクトンポリオールにおいては、ポリカーボネートポリオールにおける場合と同様な理由から、数平均分子量は好ましくは400〜2000、より好ましくは500〜1500、最も好ましくは600〜1200である。
このようなポリカプロラクトンポリオールは、試薬としてまたは工業的に入手可能であり、市販されているものを例示すれば、ダイセル化学工業株式会社製「プラクセル(登録商標)」シリーズなどを挙げることができる。
また、ポリオール化合物としては、本発明のA1成分に加えて、下記のポリエーテルポリオール、及びポリエステルポリオールなどを併用することもできる。
ポリエーテルポリオール: ポリエーテルポリオールとしては、分子中に活性水素含有基を2個以上有する化合物とアルキレンオキサイドとの反応により得られるポリエーテルポリオール化合物及び該ポリエーテルポリオール化合物の変性体である、ポリマーポリオール、ウレタン変性ポリエーテルポリオール、ポリエーテルエステルコポリマーポリオール等を挙げることが出来る。
なお、上記分子中に活性水素含有基を2個以上有する化合物としては、水、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ヘキサントリオール、トリエタノールアミン、ジグリセリン、ペンタエリスリトール、トリメチロールプロパン、ヘキサントリオールなどの分子中に水酸基を1個以上有するグリコール、グリセリン等のポリオール化合物が挙げられ、これらは単独で使用しても、2種類以上を混合して使用しても構わない。
また、前記アルキレンオキサイドとしては、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、テトラヒドロフラン等の環状エーテル化合物が挙げられ、これらは単独で使用しても2種類以上を混合して使用しても構わない。
ポリエーテルポリオールにおいては、ポリカーボネートポリオールにおける場合と同様な理由から、数平均分子量は好ましくは400〜2000、より好ましくは500〜1500、最も好ましくは600〜1200である。
このようなポリエーテルポリオールは、試薬としてまたは工業的に入手可能であり、市販されているものを例示すれば、旭硝子株式会社製「エクセノール(登録商標)」シリーズ、「エマルスター(登録商標)」、株式会社ADEKA製「アデカポリエーテル」シリーズなどを挙げることができる。
ポリエステルポリオール: ポリエステルポリオールとしては、多価アルコールと多塩基酸との縮合反応により得られるポリエステルポリオールなどを挙げることができる。ここで、前記多価アルコールとしては、エチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、3,3’−ジメチロールヘプタン、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ネオペンチルグリコール、3,3−ビス(ヒドロキシメチル)ヘプタン、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパンなどが挙げられ、これらは単独で使用しても、2種類以上を混合して使用しても構わない。また、前記多塩基酸としては、コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ドデカンジカルボン酸、シクロペンタンジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸、オルトフタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸などが挙げられ、これらは単独で使用しても、2種類以上を混合して使用しても構わない。
ポリエステルポリオールにおいては、ポリカーボネートポリオールにおける場合と同様な理由から、数平均分子量は好ましくは400〜2000、より好ましくは500〜1500、最も好ましくは600〜1200である。
これらポリエステルポリオールは、試薬としてまたは工業的に入手可能であり、市販されているものを例示すれば、DIC株式会社製「ポリライト(登録商標)」シリーズ、日本ポリウレタン工業株式会社製「ニッポラン(登録商標)」シリーズ、川崎化成工業株式会社製「マキシモール(登録商標)」シリーズなどを挙げることができる。
A2成分:ジイソシアネート化合物
本発明でA2成分として使用される分子内に2つのイソシアネート基を有するジイソシアネート化合物としては、脂肪族ジイソシアネート化合物、脂環式ジイソシアネート化合物、芳香族ジイソシアネート化合物、及びこれらの混合物が使用される。これらの中でも、耐候性の観点から脂肪族ジイソシアネート化合物及び/又は脂環式ジイソシアネート化合物を使用することが好ましい。また、同様の理由からA2成分のジイソシアネート化合物の30〜100質量%、特に50〜100質量%が脂肪族ジイソシアネート化合物であることが好ましい。
A2成分として好適に使用できるジイソシアネート化合物を例示すれば、テトラメチレン−1,4−ジイソシアネート、ヘキサメチレン−1,6−ジイソシアネート、オクタメチレン−1,8−ジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサン−1,6−ジイソシアネートなどの脂肪族ジイソシアネート化合物;シクロブタン−1,3−ジイソシアネート、シクロヘキサン−1,3−ジイソシアネート、シクロヘキサン−1,4−ジイソシアネート、2,4−メチルシクロヘキシルジイソシアネート、2,6−メチルシクロヘキシルジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ノルボルナンジイソシアネート、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)の異性体混合物、ヘキサヒドロトルエン−2,4−ジイソシアネート、ヘキサヒドロトルエン−2,6−ジイソシアネート、ヘキサヒドロフェニレン−1,3−ジイソシアネート、ヘキサヒドロフェニレン−1,4−ジイソシアネート、1,9−ジイソシアナト−5−メチルノナン、1,1−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、2−イソシアナト−4−[(4−イソシアナトシクロヘキシル)メチル]−1−メチルシクロヘキサン、2−(3−イソシアナトプロピル)シクロヘキシルイソシアネート、ノルボルナンジイソシアネートなどの脂環式ジイソシアネート化合物;フェニルシクロヘキシルメタンジイソシアネート、4,4’−メチレンビス(フェニルイソシアネート)の異性体混合物、トルエン−2,3−ジイソシアネート、トルエン−2,4−ジイソシアネート、トルエン−2,6−ジイソシアネート、フェニレン−1,3−ジイソシアネート、フェニレン−1,4−ジイソシアネート、1,3−ビス(イソシアナトメチル)ベンゼン、キシリレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、ジフェニルエーテルジイソシアネート、1,3−ジイソシアナトメチルベンゼン、4,4’−ジイソシアナト−3,3’−ジメトキシ(1,1’−ビフェニル)、4,4’−ジイソシアナト−3,3’−ジメチルビフェニル、1,2−ジイソシアナトベンゼン、1,4−ビス(イソシアナトメチル)−2,3,5,6−テトラクロロベンゼン、2−ドデシル−1,3−ジイソシアナトベンゼン、1−イソシアナト−4−[(2−イソシアナトシクロヘキシル)メチル]2−メチルベンゼン、1−イソシアナト−3−[(4−イソシアナトフェニル)メチル)−2−メチルベンゼン、4−[(2−イソシアナトフェニル)オキシ]フェニルイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネートなどの芳香族ジイソシアネート化合物などを挙げることができる。
これらの中でも、得られるポリウレタン−ウレア樹脂(A成分)の耐候性の観点から、上記の通り、A2成分のジイソシアネート化合物の30〜100質量%、特に50〜100質量%が、脂肪族ジイソシアネート化合物、及び脂環式ジイソシアネート化合物よりなる群から選ばれる少なくとも1種のジイソシアネート化合物であることが好ましい。好適な化合物を具体的に例示すると、テトラメチレン−1,4−ジイソシアネート、ヘキサメチレン−1,6−ジイソシアネート、オクタメチレン−1,8−ジイソシアネート、2,2,4−トリメチルヘキサン−1,6−ジイソシアネート、シクロブタン−1,3−ジイソシアネート、シクロヘキサン−1,3−ジイソシアネート、シクロヘキサン−1,4−ジイソシアネート、2,4−メチルシクロヘキシルジイソシアネート、2,6−メチルシクロヘキシルジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ノルボルナンジイソシアネート、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)の異性体混合物、ヘキサヒドロトルエン−2,4−ジイソシアネート、ヘキサヒドロトルエン−2,6−ジイソシアネート、ヘキサヒドロフェニレン−1,3−ジイソシアネート、ヘキサヒドロフェニレン−1,4−ジイソシアネートが挙げられる。これらのイソシアネート化合物は、単独で使用してもよく、2種類以上を併用しても構わない。
A3成分:アミノ基含有化合物
本発明でA3成分として使用されるアミノ基含有化合物は、分子内に2つ以上のアミノ基(−NH、または−NH(R)。但し、Rはアルキル基、特に炭素数1〜5のアルキル基を意味する。)を有するアミノ基含有化合物である。
該A3成分は、ポリウレタン−ウレア樹脂(A成分)を合成する際の鎖延長剤として機能するものであり、鎖延長剤として、A3成分を用いることによりポリウレタン樹脂中にウレア結合が導入され、ポリウレタン−ウレア樹脂となる。
得られるポリウレタン−ウレア樹脂(A成分)を適度の硬さにし、また、耐熱性、接着性、フォトクロミック特性を良好に維持するためには、アミノ基含有化合物の分子量は、50〜300であることが好ましく、50〜250であることがより好ましく、100〜220であることが最も好ましい。
A3成分のアミノ基含有化合物としては、ジアミン、及びトリアミンよりなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物が好適に使用し得る。本発明においてアミノ基含有化合物として好適に使用される化合物を具体的に例示すれば、イソホロンジアミン、エチレンジアミン、1,2−ジアミノプロパン、1,3−ジアミノプロパン、1,2−ジアミノブタン、1,3−ジアミノブタン、1,4−ジアミノブタン、1,5−ジアミノペンタン、1,6−ジアミノヘキサン、ピペラジン、N,N−ビス−(2−アミノエチル)ピペラジン、ビス−(4−アミノシクロヘキシル)メタン、ビス−(4−アミノ−3−ブチルシクロヘキシル)メタン、1,2−、1,3−及び1,4−ジアミノシクロヘキサン、ノルボルナンジアミン、ヒドラジン、アジピン酸ジヒドラジン、フェニレンジアミン、4,4’−ジフェニルメタンジアミン、N,N’−ジエチルエチレンジアミン、N,N’−ジメチルエチレンジアミン、N,N’−ジプロピルエチレンジアミン、N,N’−ジブチルエチレンジアミン、N−メチルエチレンジアミン、N−エチルエチレンジアミン、ビス(ヘキサメチレン)トリアミン、1,2,5−ペンタントリアミン等を挙げることができる。
アミノ基含有化合物においては、耐熱性、接着性、フォトクロミック化合物の耐久性などの観点から、特にジアミン化合物を使用することが好ましい。この理由は、A成分を合成する際に、アミノ基含有化合物を用いることにより、得られるポリウレタン−ウレア樹脂(A成分)がウレア結合を有することになり、分子の剛直性が高くなると共に、分子鎖間の水素結合がより強固となるため、耐熱性が向上するものと推定している。また、フォトクロミック化合物の耐久性が向上することに関しては、ウレア結合の存在により分子鎖間の水素結合がより強固となることによって、空気中の酸素が該ポリウレタン−ウレア樹脂(A成分)中へ拡散し難くなり、フォトクロミック化合物の一般的な劣化機構として知られている光酸化劣化が抑制されたためであると推定している。さらに、密着強度が向上することに関しては、ウレア結合の存在により分子鎖間の水素結合が強固となって樹脂の凝集破壊が起こりにくくなったためであると推定している。
また、前記アミノ基含有化合物のなかにおいて、耐水性、及び耐汗試験への安定性の観点から、イソホロンジアミン、ビス−(4−アミノシクロヘキシル)メタン、ノルボルナンジアミンを用いることがより好ましく、その中でも、ビス−(4−アミノシクロヘキシル)メタンを用いることが最も好ましい。
A4成分:機能性付与化合物
本発明において使用されるA4成分は、分子内に1または2つのイソシアネート基と反応しうる基を有し、かつ、分子内にピペリジン構造を有する機能性付与化合物である。この機能性付与化合物は、ピペリジン構造の代わりにヒンダードフェノール構造、トリアジン構造、またはベンゾトリアゾール構造を有するものであってもよい。ただし、最も優れた効果を発揮するのは、ピペリジン構造を有する機能性付与化合物である。
このような機能性付与化合物を用いることによって、ポリウレタン−ウレア樹脂(A成分)にピペリジン構造を導入することができる。その結果、光安定性能、酸化防止性能、及び紫外線吸収性能等の機能性に優れたポリウレタン−ウレア樹脂(A成分)を得ることができる。
分子内に1または2つのイソシアネート基と反応しうる基を有し、かつ、分子内にピペリジン構造を有する機能性付与化合物
イソシアネート基と反応しうる基とは、アミノ基(−NH、及び−NH(R))、水酸基(−OH)、メルカプト基(−SH:チオール基)、カルボキシル基〔−C(=O)OH〕、又は酸クロライド基〔−C(=O)OCl〕が挙げられる。特に、優れた効果を発揮するポリウレタン−ウレア樹脂(A成分)を得るためには、このイソシアネート基と反応しうる基は分子内に1つであることが好ましい。この理由は、明らかではないが、以下のように考えられる。該基が1つであることにより、ポリウレタン−ウレア樹脂(A成分)の側鎖、末端に機能性付与化合物が導入される。そのため、ラジカル等の耐久性を低下させる物質に効率よく、機能性付与化合物が作用できるものと考えられる。
また、前述のピペリジン構造は、特に光安定化効果を発揮する。この構造を有する化合物を使用することにより、A成分自体、及びフォトクロミック化合物の耐久性(光安定性)を向上することができる。以下、A4成分として使用される各種化合物について詳しく説明する。
ピペリジン構造を有する機能性付与化合物
本発明でA4成分として使用されるピペリジン構造を有する機能性付与化合物としては、下記一般式(i)で示される構造を分子内に有する化合物が好適に使用できる。
Figure 2016132696
(式中、
、R、R、及びRは、それぞれ、炭素数1〜4のアルキル基であり、特に、メチル基であることが好ましい。)。
上記ピペリジン環の窒素原子、または、4位の炭素原子にイソシアネート基と反応しうる基を有する化合物が、ピペリジン構造を有する機能性付与化合物に該当する。
以下、より具体的な化合物について説明する。
本発明でA4成分として使用される機能性付与化合物の中で、ポリウレタン−ウレア樹脂(A成分)の末端にピペリジン構造を導入しうる化合物としては、下記一般式(1)で示される化合物などを挙げられる。
Figure 2016132696
(式中、
、R、R、及びRは、前記一般式(i)におけるものと同義であり、
は、炭素数1〜10のアルキル基、または水素原子であり、
は炭素数1〜20のアルキレン基、又は炭素数3〜20のポリメチレン基であり、aは0または1であり、
Xは、イソシアネート基と反応しうる基である。)。
上記一般式(1)において、R、R、R、及びRは、それぞれ独立に炭素数1〜4のアルキル基であるが、4つのアルキル基全てメチル基であることが好ましい。
は、炭素数1〜10のアルキル基、または水素原子である。中でも、入手の容易さの観点から、炭素数1〜4のアルキル基、または水素原子であることが好ましい。なお、R〜Rが炭素数1〜4のアルキル基であるため、Rが水素原子であっても、立体障害の影響でRが結合している窒素原子とイソシアネート基が反応することはない。
は、炭素数1〜20のアルキレン基、又は炭素数3〜20のポリメチレン基であり、好ましくは炭素数1〜10のアルキレン基、又は炭素数3〜10のポリメチレン基である。なお、aは、Rの数を示すが、aが0の場合は、Xが直接ピペリジン環に結合しているものを指す。
Xは、イソシアネート基と反応しうる基であり、好ましくは、アミノ基、水酸基、カルボキシル基、またはチオール基である。中でも、イソシアネート基との反応性、入手の容易さなどの観点からアミノ基、及び水酸基であることが好適である。
上記式(1)で示される機能性付与化合物を具体的に例示すれば、1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ヒドロキシピペリジン、1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−アミノピペリジン、2,2,6,6−テトラメチル−4−ヒドロキシピペリジン、2,2,6,6−テトラメチル−4−アミノピペリジン、1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−アミノメチルピペリジン、1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−アミノブチルピペリジンなどを挙げることができる。
また、ポリウレタン−ウレア樹脂(A成分)の末端にピペリジン構造を導入しうる化合物としては、コハク酸ジメチルと4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチル−1−ピペリジンエタノールとの反応物である下記化合物も使用することが出来る。
Figure 2016132696
なお、上記化合物において、nは5〜20の範囲を満足することが好ましい。
本発明で使用されるA4成分の中で、ポリウレタン−ウレア樹脂(A成分)の主鎖中にピペリジン構造を導入しうる化合物としては、下記一般式(2)、(3)、(4)で示される化合物などを使用することが好適である。
下記式(2)
Figure 2016132696
(式中、
、R、R、及びR10は、それぞれ、炭素数1〜4のアルキル基であり、
11は、炭素数1〜20のアルキレン基、又は炭素数3〜20のポリメチレン基であり、
12は、炭素数1〜20のアルキレン基、又は炭素数3〜20のポリメチレン基であり、bは0または1であり、
Yは、イソシアネート基と反応しうる基である。)
で示される化合物も好適に使用できる。
上記一般式(2)において、R、R、R、及びR10は、それぞれ、炭素数1〜4のアルキル基であるが、4つのアルキル基全てメチル基であることが好ましい。
11は、炭素数1〜20のアルキレン基、または炭素数3〜20のポリメチレン基であり、好ましくは炭素数1〜10のアルキレン基、または炭素数3〜10のポリメチレン基である。
12は、炭素数1〜20のアルキレン基、または炭素数3〜20のポリメチレン基であり、好ましくは炭素数1〜10のアルキレン基、または炭素数3〜10のポリメチレン基である。なお、bが0の場合には、Yが直接ピペリジン環に結合しているものを指す。
Yは、前記一般式(1)中のXと同様である。
上記式(2)で示される機能性付与化合物を例示すれば、下記化合物などを挙げることができる。
Figure 2016132696
下記式(3)
Figure 2016132696
(式中、
13、R14、R15、及びR16は、それぞれ独立に炭素数1〜4のアルキル基であり、
17は、炭素数1〜20のアルキレン基、または炭素数3〜20のポリメチレン基であり、cは0または1であり、
18は、炭素数1〜20のアルキレン基、または炭素数3〜20のポリメチレン基であり、
Zは、イソシアネート基と反応しうる基である。)
で示される化合物も好適に使用できる。
上記一般式(3)において、R13、R14、R15、及びR16は、それぞれ独立に炭素数1〜4のアルキル基であるが、4つのアルキル基全てメチル基であることが好ましい。
17は、炭素数1〜20のアルキレン基、または炭素数3〜20のポリメチレン基であり、好ましくは炭素数1〜10のアルキレン基、または炭素数3〜10のポリメチレン基である。なお、cが0の場合には、Zが直接ピペリジン環に結合しているものを指す。
18は、炭素数1〜20のアルキレン基、または炭素数3〜20のポリメチレン基である。
Zは、前記一般式(1)中のXと同様である。
上記一般式(3)で示されるピペリジン環含有化合物を例示すれば、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−1−メトキシ−4−ピペリジニル)セバケートなどを挙げることができる。
Figure 2016132696
(式中、
19、R20、R21、及びR22は、それぞれ、炭素数1〜4のアルキル基であり、
23は、炭素数1〜20のアルキレン基、または炭素数3〜20のポリメチレン基であり、R24は、炭素数1〜20のアルキレン基、または炭素数3〜20のポリメチレン基であり、
V及びWは、それぞれ、イソシアネート基と反応しうる基である。)
上記一般式(4)において、R19、R20、R21、及びR22は、それぞれ独立に炭素数1〜4のアルキル基であるが、4つのアルキル基全てがメチル基であることが好ましい。
23は、炭素数1〜20のアルキレン基、または炭素数3〜20のポリメチレン基であり、好ましくは炭素数1〜10のアルキレン基、または炭素数3〜10のポリメチレン基であり、
24は、炭素数1〜20のアルキレン基、または炭素数3〜20のポリメチレン基であり、好ましくは炭素数1〜10のアルキレン基、または炭素数3〜10のポリメチレン基である。なお、dは0または1であり、dが0の場合には、Vが直接ピペリジン環に結合するものを指す。
また、V及びWは、前記一般式(1)中のXと同様であり、同一の基であっても、異なる基であってもよい。
上記一般式(4)で示されるピペリジン環含有化合物を例示すれば、4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチル−1−ピペリジンエタノールなどを挙げることができる。
(好適なA4成分、及びその導入位置)
上記A4成分は、ポリウレタン−ウレア樹脂(A成分)自体、及びフォトクロミック化合物の耐候性の向上を目的として、ポリウレタン−ウレア樹脂(A成分)の末端、主鎖、側鎖などのいずれにも導入することが可能である。中でも、ウレタン−ウレア樹脂(A成分)自体の耐熱性、機械的強度(接着強度)を損なわないという観点から、ポリウレタン−ウレア樹脂(A成分)の末端に導入することが好ましい。ウレタン−ウレア樹脂(A成分)の耐熱性、接着強度が高くなることにより、ポリウレタン−ウレア樹脂(A成分)と下記に詳述する(D)成分とを反応させた反応生成物を含む(A)ポリウレタン−ウレア樹脂の性能をより一層向上できる。
また、上記A4成分の中でも好適なものは、1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ヒドロキシピペリジン、1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−アミノピペリジン、2,2,6,6−テトラメチル−4−ヒドロキシピペリジン、2,2,6,6−テトラメチル−4−アミノピペリジン、1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−アミノメチルピペリジン、1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−アミノブチルピペリジンが挙げられる。
A成分の合成方法
上記A1成分、A2成分、A3成分およびA4成分を反応させて、A成分を得る場合には、所謂ワンショット法又はプレポリマー法を採用することができ、たとえば次のような方法によって好適にA’成分を得ることができる。
合成方法1(末端に機能性付与化合物を有するA成分)
最初にA1成分とA2成分とを反応さてウレタンプレポリマーを得、次いで該ウレタンプレポリマーとA3成分を反応させることにより、末端にイソシアネート基を有するポリウレタン−ウレア樹脂を合成し、最後にA4成分を加えることで、本発明のA成分を合成することができる。
上記方法において、A1成分とA2成分との反応は、溶媒の存在下または非存在下で両者を窒素あるいはアルゴンなどの不活性ガス雰囲気下中、25〜120℃で0.5〜24時間反応させればよい。溶媒としては、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、トルエン、ヘキサン、ヘプタン、酢酸エチル、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、テトラヒドロフラン(THF)などの有機溶媒が使用できる。反応に際しては、ジイソシアネート化合物中のイソシアネート基と不純物としての水との反応を避けるため、各種反応試剤及び溶媒は、予め脱水処理を行い、十分に乾燥しておくことが好ましい。また、上記反応を行う際には、ジラウリル酸ジブチルスズ、ジメチルイミダゾール、トリエチレンジアミン、テトラメチル−1,6−ヘキサジアミン、テトラメチル−1,2−エタンジアミン、1,4−ジアザビシクロ[2,2,2]オクタンなどの触媒を用いてもよい。触媒を使用する際の添加量としては、該A’成分の合計100質量部に対して0.001〜1質量部であることが好ましい。
このようにして得られたウレタンプレポリマーとA3成分との反応は、溶媒の存在下または非存在下で両者を窒素あるいはアルゴンなどの不活性ガス雰囲気下中、0〜100℃で0.5〜24時間反応させればよい。溶媒としては、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、t−ブタノール、2−ブタノール、n−ブタノール、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、トルエン、ヘキサン、ヘプタン、酢酸エチル、DMF、DMSO、THFなどを使用することができる。
上記で得られた末端にイソシアネート基を有するポリウレタン−ウレア樹脂とA4成分との反応は、溶媒の存在下または非存在下で両者を窒素あるいはアルゴンなどの不活性ガス雰囲気下中、0〜120℃で0.5〜24時間反応させればよい。溶媒としては、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、t−ブタノール、2−ブタノール、n−ブタノール、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、トルエン、ヘキサン、ヘプタン、酢酸エチル、DMF、DMSO、THFなどを使用することができる。
合成方法2(主鎖に機能性付与化合物を有するA成分)
A1成分とA2成分とを反応さてウレタンプレポリマーを得、さらに分子内に2つのイソシアネート基と反応しうる基を有するA4成分を混合・反応させることにより、機能性付与化合物を有するウレタンプレポリマーを得、次いで該ウレタンプレポリマーとA3成分を反応させることにより、本発明のA成分を製造することができる。
上記方法において、A1成分とA2成分との反応、さらにA4成分との反応は、溶媒の存在下または非存在下で両者を窒素あるいはアルゴンなどの不活性ガス雰囲気下中、25〜120℃で0.5〜24時間反応させればよい。溶媒としては、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、トルエン、ヘキサン、ヘプタン、酢酸エチル、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、テトラヒドロフラン(THF)などの有機溶媒が使用できる。反応に際しては、ポリイソシアネート化合物中のイソシアネート基と不純物としての水との反応を避けるため、各種反応試剤及び溶媒は、予め脱水処理を行い、十分に乾燥しておくことが好ましい。また、上記反応を行う際には、ジラウリル酸ジブチルスズ、ジメチルイミダゾール、トリエチレンジアミン、テトラメチル−1,6−ヘキサジアミン、テトラメチル−1,2−エタンジアミン、1,4−ジアザビシクロ[2,2,2]オクタンなどの触媒を添加してもよい。触媒を使用する際の添加量としては、該A成分の合計100質量部に対して0.001〜1質量部であることが好ましい。
このようにして得られたウレタンプレポリマーとA3成分との反応は、溶媒の存在下または非存在下で両者を窒素あるいはアルゴンなどの不活性ガス雰囲気下中、0〜100℃で0.5〜24時間反応させればよい。溶媒としては、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、t−ブタノール、2−ブタノール、n−ブタノール、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、トルエン、ヘキサン、ヘプタン、酢酸エチル、DMF、DMSO、THFなどを使用することができる。
合成方法3(側鎖に機能性付与化合物を有するA成分)
まず、分子内に1つのイソシアネート基と反応しうる基を有するA4成分と、イソシアネート基を3つ有するトリイソシアネート化合物を反応させ、側鎖に機能性構造を有するジイソシアネート化合物を合成する。このジイソシアネート化合物とA1成分、及びA2成分とを反応さてウレタンプレポリマーを得、次いでA3成分と反応させることにより、本発明のA成分を製造することができる。
上記方法において、トリイソシアネート化合物とA4成分との反応は、溶媒の存在下または非存在下で両者を窒素あるいはアルゴンなどの不活性ガス雰囲気下中、25〜120℃で0.5〜24時間反応させればよい。溶媒としては、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、トルエン、ヘキサン、ヘプタン、酢酸エチル、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、テトラヒドロフラン(THF)などの有機溶媒が使用できる。反応に際しては、ポリイソシアネート化合物中のイソシアネート基と不純物としての水との反応を避けるため、各種反応試剤及び溶媒は、予め脱水処理を行い、十分に乾燥しておくことが好ましい。
上記の方法により得られた側鎖に機能性付与化合物を有するジイソシアネート化合物、A1成分、及びA2成分との反応は、溶媒の存在下または非存在下で両者を窒素あるいはアルゴンなどの不活性ガス雰囲気下中、25〜120℃で0.5〜24時間反応させればよい。溶媒としては、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、トルエン、ヘキサン、ヘプタン、酢酸エチル、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、テトラヒドロフラン(THF)などの有機溶媒が使用できる。反応に際しては、ポリイソシアネート化合物中のイソシアネート基と不純物としての水との反応を避けるため、各種反応試剤及び溶媒は、予め脱水処理を行い、十分に乾燥しておくことが好ましい。また、上記反応を行う際には、ジラウリル酸ジブチルスズ、ジメチルイミダゾール、トリエチレンジアミン、テトラメチル−1,6−ヘキサジアミン、テトラメチル−1,2−エタンジアミン、1,4−ジアザビシクロ[2,2,2]オクタンなどの触媒を添加してもよい。触媒を使用する際の添加量としては、該A成分の合計100質量部に対して0.001〜1質量部であることが好ましい。
このようにして得られたウレタンプレポリマーとA3成分との反応は、溶媒の存在下または非存在下で両者を窒素あるいはアルゴンなどの不活性ガス雰囲気下中、0〜100℃で0.5〜24時間反応させればよい。溶媒としては、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、t−ブタノール、2−ブタノール、n−ブタノール、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、トルエン、ヘキサン、ヘプタン、酢酸エチル、DMF、DMSO、THFなどを使用することができる。
((A)成分の合成におけるA1、A2、A3、及びA4成分の使用量)
上記方法において反応に使用するA1成分、A2成分、A3成分、およびA4成分の量比は適宜決定すればよいが、得られるポリウレタン−ウレア樹脂(A成分)の耐熱性、接着強度、フォトクロミック特性(発色濃度、退色速度、耐候性など)などのバランスの観点から、次のような量比とすることが好ましい。すなわち、A1成分に含まれる水酸基の総モル数をn1とし、A2成分に含まれるイソシアネート基の総モル数をn2とし、A3成分に含まれるアミノ基の総モル数をn3とし、A4成分に含まれるイソシアネート基と反応しうる基(具体的にはアミノ基、水酸基、メルカプト基及び/又はカルボキシル基等)の総モル数をn4としたときに、n1:n2:n3:n4=0.3〜0.89/1.0/0.1〜0.69/0.01〜0.2となる量比とすることが好ましく、n1:n2:n3:n4=0.4〜0.83/1.0/0.15〜0.58/0.02〜0.15となる量比とすることがさらに好ましく、n1:n2:n3:n4=0.65〜0.75/1.0/0.20〜0.32/0.03〜0.1となる量比とすることが特に好ましい。ここで、上記n1〜n4は、各成分として用いる化合物の使用モル数と該化合物1分子中に存在する各基の数の積として求めることができる。
本発明で使用するA成分は、末端には反応性の基を有さないことが好ましい。特に、末端にイソシアネート基が残存しないように不活性化させることが好ましい。そのため、製造時には、n2=n1+n3+n4となるような配合割合で製造することが好ましい。n2よりもn1、n3、及びn4の合計モル数(n1+n3+n4)が大きい場合には、再沈殿等により、未反応のA1、A3、A4成分を除去してやればよい。また、n1、n3、及びn4も合計モル数よりもn2大きい場合には、その差分(n2−(n1+n3+n4))について、下記に詳述する反応停止剤(A5成分)を使用することもできる。
A5成分:反応停止剤
前述のA成分の合成方法に記載した方法により、A1成分、A2成分、A3成分、及びA4成分を反応させ、得られたポリウレタン−ウレア樹脂の末端にイソシアネート基が残存している場合には、イソシアネート基と反応する活性水素を有する反応停止剤を添加し、末端を不活性化することができる。また、A4成分の代わりにA5成分を使用して末端を不活性化することもできる。末端にイソシアネート基が残存していても構わないが、保存時に水分等が混入し高分子量成分等が生成することで、ゲル化などの品質低下、もしくは物性変化が生じる恐れがある。イソシアネート基が残存するかどうかは、赤外線吸収スペクトルを測定することにより判断可能である。
本発明のA5成分は、末端がイソシアネート基であるポリウレタン−ウレア樹脂と反応させるため、(A5)分子内に1つのイソシアネート基と反応しうる基を有する反応停止剤である。
前述のイソシアネート基と反応しうる基とは、アミノ基(−NH、及び−NH(R))、水酸基(−OH)、メルカプト基(−SH:チオール基)、カルボキシル基〔−C(=O)OH〕、又は酸クロライド基〔−C(=O)OCl〕が挙げられる。
この反応停止剤は、イソシアネート基と反応しうる基を分子内に1つだけ有する。イソシアネート基と反応しうる基が分子内に2つ以上存在すると、ポリウレタン−ウレア樹脂が高分子量化し、希釈用溶媒に希釈する際に高粘度になるため、塗膜形成が困難になる。該反応停止剤を、ポリウレタン−ウレア樹脂の末端に導入することにより、ポリウレタン−ウレア樹脂の数平均分子量を制御することが可能となり、接着性、及び耐熱性を容易に目的の物性に調整できる。
反応停止剤としては、アミン、アルコール、チオール、及びカルボン酸を用いることができる。具体的には、ノルマルブチルアミン、sec−ブチルアミン、tert−ブチルアミン、ジブチルアミン、ジイソプロピルアミン、メタノール、エタノール、イソプロパノール、ノルマルブタノール、sec−ブタノール、tert−ブタノール、酢酸等を挙げることができる。
また、上記したA4成分である機能性付与化合物を反応停止剤として使用することにより、ポリウレタン−ウレア樹脂に機能性付与化合物を導入すると同時に末端のイソシアネート基を不活性化することができる。
以下に本発明において、好適に使用できる反応停止剤を説明する。
反応停止剤として好ましい化合物は、下記一般式(8)、及び(9)で示すことができる。
Figure 2016132696
(式中、
39は、炭素数1〜20のアルキル基、アリール基、アラルキル基、アルキルオキシカルボニル基または水素原子であり、
40は、炭素数1〜20のアルキル基、アリール基、アラルキル基、またはエステル基である。)
39が水素原子である化合物をA5成分として用いた場合には、ポリウレタン−ウレア樹脂の末端は、−NH(R40)となるが、この−NH(R40)は、他のポリマー、およびイソシアネート化合物とは実質的に反応しない。そのため、−NH(R40)は、イソシアネート基と反応しうる基には該当しない。
上記一般式(8)において、R39は、炭素数1〜20のアルキル基、アリール基、アラルキル基、アルキルオキシカルボニル基または水素原子である。中でも、R39は、炭素数1〜10のアルキル基、アリール基、アラルキル基、アルキルオキシカルボニル基、または水素原子であることが好ましい。前記アリール基、及びアラルキル基は、炭素数1〜5のアルキル基、ハロゲン原子を置換基として有してもよい。
好適なR39を例示すれば、メチル基、エチル基、ノルマルプロピル基、イソプロピル基、ノルマルブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、1,1,3,3−テトラメチルブチル基、フェニル基、ベンジル基、1,1−ジメチルベンジル基、カルボキシメチル基、カルボキシエチル基、カルボキシプロピル基、又は水素原子等が挙げられる。
また、R40は、炭素数1〜20のアルキル基、アリール基、アラルキル基、またはアルキルオキシカルボニル基である。中でも、R40は、炭素数1〜10のアルキル基、アリール基、アラルキル基、またはアルキルオキシカルボニル基であることが好ましい。前記アリール基は、炭素数1〜5のアルキル基、ハロゲン原子を置換基として有してもよい。
好適なR40を例示すれば、メチル基、エチル基、ノルマルプロピル基、イソプロピル基、ノルマルブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、1,1,3,3−テトラメチルブチル基、フェニル基、ベンジル基、1,1−ジメチルベンジル基、カルボキシメチル基、カルボキシエチル基、又はカルボキシプロピル基等が挙げられる。
下記一般式(9)
Figure 2016132696
(式中、
41は、炭素数1〜20のアルキル基、アリール基、アラルキル基、またはアルキルオキシカルボニル基であり、
Zは、水酸基、カルボキシル基、またはチオール基である。)
で示される化合物も、反応停止剤として好適に使用できる。
上記一般式(9)において、R41は、炭素数1〜20のアルキル基、アリール基、アラルキル基、またはアルキルオキシカルボニル基であり、炭素数1〜10のアルキル基、アリール基、アラルキル基、またはアルキルオキシカルボニル基であることが好ましい。このアリール基、及びアラルキル基は、炭素数1〜5のアルキル基、ハロゲン原子を置換基として有してもよい。好ましい基としては、炭素数1〜5のアルキル基、フェニル基、ハロゲン原子を有するフェニル基が挙げられる。好適なR41を例示すれば、メチル基、エチル基、ノルマルプロピル基、イソプロピル基、ノルマルブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、1,1,3,3−テトラメチルブチル基、フェニル基、ベンジル基、1,1−ジメチルベンジル基、カルボキシメチル基、カルボキシエチル基、及びカルボキシプロピル基等が挙げられる。
上記一般式(9)におけるZは、ポリウレタン−ウレア樹脂末端に存在するイソシアネート基と反応しうる基であり、具体的には水酸基、カルボキシル基、またはチオール基であり、好ましくは水酸基である。
上記一般式(8)、及び(9)で示される具体的な化合物としては、メチルアミン、エチルアミン、プロピルアミン、イソプロピルアミン、ノルマルブチルアミン、tert−ブチルアミン、ペンチルアミン、ヘキシルアミン、ヘプチルアミン、4−ヘプチルアミン、オクチルアミン、1,1−ジプロピルブチルアミン、フェニルアミン、ベンジルアミン、ジメチルアミン、ジエチルアミン、ジプロピルアミン、ジイソプロピルアミン、ジブチルアミン、ジ−tert−ブチルアミン、ジペンチルアミン、ジヘキシルアミン、ジヘプチルアミン、ジオクチルアミン、メチルエチルアミン、メチルブチルアミン、メチルペンチルアミン、メチルヘキシルアミン、メチルヘプチルアミン、メチルオクチルアミン、エチルプロピルアミン、エチルブチルアミン、エチルペンチルアミン、エチルヘキシルアミン、エチルヘプチルアミン、エチルオクチルアミン、プロピルブチルアミン、イソプロピルブチルアミン、プロピルペンチルアミン、プロピルヘキシルアミン、プロピルヘプチルアミン、プロピルオクチルアミンなどのアミン類;メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、2−ブタノール、tert−ブチルアルコール、ペンチルアルコール、ヘキシルアルコール、ヘプチルアルコール、オクチルアルコール、ノニルアルコール、デカノール、2−デカノールなどのアルコール類;メタンチオール、エタンチオール、1−プロパンチオール、2−プロパンチオール、1−ブタンチオール、2−ブタンチオール、プロパンチオール、ヘキサンチオール、ヘプタンチオール、オクタンチオール、ドデカンチオール、2−メチル−1−ブタンチオール、2−メチルプロパンチオール、3−メチル−2−ブテンチオール、1,1−ジメチルヘプタンチオール、シクロヘキサンチオール、シクロペンタンチオール、ベンゼンチオール、ベンゼンメタンチオール、2,6−ジメチルベンゼンチオールなどのチオール類;酢酸、プロピオン酸、酪酸、ペンタン酸、ヘキサン酸、ヘプタン酸、オクタン酸、ノナン酸、デカン酸、ドデカン酸などのカルボン酸類などが挙げられる。
以上の反応停止剤は、単独で用いても、2種類以上を混合して用いても構わない。
A5成分の配合割合
A5成分は、上記した合成方法1(末端に機能性付与化合物を有するA成分)におけるA4成分と同様の方法で反応させて(A)ポリウレタン−ウレア樹脂の末端に導入することができる。そのため、合成方法1において、A4成分の全量をA5成分で置き換えることもできるし、A4成分とA5成分とを併用して使用することもできる。
また、合成方法2、3において、n2>n1+n3+n4となる場合には、以下の配合割合とすることが好ましい。すなわち、A5成分に含まれるイソシアネート基と反応しうる基の総モル数をn5とした場合には、n2=n1+n3+n4+n5とすることが好ましい。ただし、n5>n2−(n1+n3+n4)となる量を使用することもできる。この場合、過剰なA5成分が悪影響を与えなければそのまま使用することもできるし、再沈殿、乾燥等の精製により過剰なA5成分を除去して使用することもできる。
A1成分、A2成分、A3成分、A4及びA5成分の量比は適宜決定すればよいが、得られるA成分、及び最終的に得られるA成分の耐熱性、接着強度などのバランスの観点から、次のような量比とすることが好ましい。A4成分に含まれるイソシアネート基と反応しうる基の総モル数n4とA5成分に含まれるイソシアネート基と反応しうる基の総モル数をn5との合計モル数をn6(n6=n4+n5)としたときに、
n1:n2:n3:n6=0.3〜0.89/1.0/0.1〜0.69/0.01〜0.2となる量比、特にn1:n2:n3:n6=0.4〜0.83/1.0/0.15〜0.58/0.02〜0.15となる量比とすることが好ましく、n1:n2:n3:n6=0.65〜0.75/1.0/0.20〜0.32/0.03〜0.1となる量比とすることが最も好ましい。前記合成方法1において、A4成分のみを使用した場合にはn6=n4となり、A5成分のみを使用した場合にはn6=n5となる。
A成分の精製
以上のような合成方法、配合割合で反応させて得られるポリウレタン−ウレア樹脂(A成分)は、必要に応じて溶媒を留去する、或いは水などの貧溶媒中に反応液を滴下し、ポリウレタン−ウレア樹脂(A成分)を沈降・濾過後、乾燥させるなどの後処理を行って、A成分として使用しても良いし、反応溶媒に溶解したまま本発明のフォトクロミック組成物として使用することも可能である。n2<n1+n3+n4、n2<n1+n3+n5、n2<n1+n2+n6の条件で製造した場合には、再沈殿することにより、未反応のモノマー成分を除去することが好ましい。
好ましいA成分の性状
(A)ポリウレタン−ウレア樹脂は、以下の構成からなるものが最も好ましい。
即ち、前記(A)ポリウレタン−ウレア樹脂において、合成方法1で説明した末端にA4成分が導入されたポリウレタン−ウレア樹脂であることが好ましい。また、末端に導入されるA4成分は、ピペリジン構造を有する機能性付与化合物であることが好ましい。さらに、末端に導入されるのは、A4成分のみである(A5成分は含まない)ことが最も好ましい。
加えて、A成分は、後述するD成分との反応を効率よく進め、さらに、得られる後述する不溶性ポリウレタン−ウレア樹脂の耐熱性、接着強度、フォトクロミック特性(発色濃度、退色速度、耐候性など)などの観点から、その分子量が5千〜10万、特に8千〜5万であり、1万〜4万であることが最も好ましい。なお、上記(A)ポリウレタン−ウレア樹脂の分子量は、ポリエチレンオキシド換算によるゲル・パーミエイション・クロマトグラフ(GPC)を用いて、カラム:Shodex KD−805、KD−804(昭和電工株式会社製)、溶離液:LiBr(10mmol/L)/DMF溶液、流速:1ml/min、検出器:RI検出器、ポリウレタン−ウレア樹脂試料溶液:0.5%ジメチルホルムアミド(DMF)溶液の条件での測定結果におけるピークトップの分子量を意味する。
次に、本発明のB成分であるフォトクロミック化合物について説明する。
B成分:フォトクロミック化合物
本発明のフォトクロミック組成物でB成分として用いるフォトクロミック化合物としては、クロメン化合物、フルギミド化合物、スピロオキサジン化合物、スピロピラン化合物などの公知のフォトクロミック化合物を何ら制限なく使用することが出来る。これらは、単独使用でもよく、2種類以上を併用しても良い。
上記のフルギミド化合物、スピロオキサジン化合物、スピロピラン化合物およびクロメン化合物としては、例えば特開平2−28154号公報、特開昭62−288830号公報、WO94/22850号パンフレット、WO96/14596号パンフレットなどに記載されている化合物を挙げることができる。
特に、クロメン化合物としては上記特許文献に記載されたもの以外にも、優れたフォトクロミック性を有するクロメン化合物が知られており、このようなクロメン化合物はB成分として好適に使用できる。このようなクロメン化合物としては、特開2001−031670号、特開2001−011067号、特開2001−011066号、特開2000−344761号、特開2000−327675号、特開2000−256347号、特開2000−229976号、特開2000−229975号、特開2000−229974号、特開2000−229973号、特開2000−229972号、特開2000−219678号、特開2000−219686号、特開平11−322739号、特開平11−286484号、特開平11−279171号、特開平09−218301号、特開平09−124645号、特開平08−295690号、特開平08−176139号、特開平08−157467号、米国特許5645767号公報、米国特許5658501号公報、米国特許5961892号公報、米国特許6296785号公報、日本国特許第4424981号公報、日本国特許第4424962号公報、WO2009/136668号パンフレット、WO2008/023828号パンフレット、日本国特許第4369754号公報、日本国特許第4301621号公報、日本国特許第4256985号公報、WO2007/086532号パンフレット、特開2009−120536号、特開2009−67754号、特開2009−67680号、特開2009−57300号、日本国特許4195615号公報、日本国特許4158881号公報、日本国特許4157245号公報、日本国特許4157239号公報、日本国特許4157227号公報、日本国特許4118458号公報、特開2008−74832号、日本国特許3982770号公報、日本国特許3801386号公報、WO2005/028465号パンフレット、WO2003/042203号パンフレット、特開2005−289812号、特開2005−289807号、特開2005−112772号、日本国特許3522189号公報、WO2002/090342号パンフレット、日本国特許第3471073号公報、特開2003−277381号、WO2001/060811号パンフレット、WO00/71544号パンフレット、WO2012/121414号パンフレット、WO2012/102410号パンフレット、WO2012/102409号パンフレット、特開2012−250955号、WO2009/136668号パンフレット、等に開示されている。
これら他のフォトクロミック化合物の中でも、発色濃度、初期着色、耐久性、退色速度などのフォトクロミック特性の観点から、インデノ(2,1−f)ナフト(2,1−b)ピラン骨格を有するクロメン化合物を1種類以上用いることがより好ましい。さらにこれらクロメン化合物中でもその分子量が540以上の化合物は、発色濃度および退色速度に特に優れるため好適である。
このようなクロメン化合物は下記の一般式で表すことができる。
Figure 2016132696

前記一般式(10)で示される構造を有するクロメン化合物は、特にその置換基を制限されることなく、公知の置換基を有していても良い。
前記クロメン化合物の中でも、前述の通り、発色濃度、初期着色、耐久性、退色速度などのフォトクロミック特性の観点から、下記一般式(11)で示されるインデノ(2,1−f)ナフト(1,2−b)ピラン構造を有するクロメン化合物がより好ましい。
Figure 2016132696
前記一般式(11)で示される構造を有するクロメン化合物は、特にその置換基を制限されることなく、公知の置換基を有していても良い。
本発明において好適に使用できるフォトクロミック化合物を例示すると、以下のものが挙げられる。
Figure 2016132696
Figure 2016132696
Figure 2016132696
Figure 2016132696
Figure 2016132696
Figure 2016132696
Figure 2016132696
Figure 2016132696
Figure 2016132696
本発明のフォトクロミック組成物におけるB成分の配合量は、フォトクロミック特性の観点から、A成分100質量部に対して0.1〜20質量部とすることが好適である。上記配合量が少なすぎる場合には、十分な発色濃度や耐久性が得られない傾向があり、多すぎる場合には、フォトクロミック化合物の種類にもよるが、フォトクロミック組成物が溶解しにくくなり、組成物の均一性が低下する傾向があるばかりでなく、接着力(接着強度)が低下する傾向もある。発色濃度や耐久性といったフォトクロミック特性を維持したまま、プラスチックフィルムなどの光学基材との接着性を十分に保持するためには、B成分の添加量はA成分100質量部に対して0.5〜10重量、特に1〜7質量部とすることがより好ましい。
C成分:希釈用溶媒
本発明のフォトクロミック組成物においては、ポリウレタン−ウレア樹脂(A成分)を溶解し、また、該組成物の粘度を調整する目的で、有機溶媒を主成分とする希釈用溶媒を含有する。希釈用溶媒(C成分)を使用することにより、ポリウレタン−ウレア樹脂(A成分)、及びフォトクロミック化合物(B成分)、さらには、必要に応じて添加されるその他の成分が混合しやすくなり、フォトクロミック組成物の均一性を向上させる。また、フォトクロミック組成物の粘度を適度に調整することができ、基材の表面にフォトクロミック組成物を塗布するときの操作性および塗布層厚の均一性を高くすることが可能となるため、最終的に得られる光学物品の光学歪を低減し、光学特性を向上させることが出来る。なお、基材の表層として有機溶媒に侵され易い材質のものを使用した場合には、外観不良が生じたり、フォトクロミック特性が低下したりするという問題が発生することが懸念されるが、このような問題は、後述する転写用支持体上にフォトクロミック層(以下、第1接着層ともいう)を形成する方法や、第2接着層を介在させる方法を採用することにより回避することが出来る。また、フォトクロミック組成物においては、後述するように、様々な種類の溶媒が使用できるので、溶媒として基材の表層を侵し難い溶媒を選択して使用することによっても上記問題の発生を防止することができる。
希釈用溶媒(C)は、A成分を溶解できればよいのであって、特に限定はされないが、
好適に使用できる有機溶媒の種類を例示すれば、メタノール、エタノール、n−プロパノール、i−プロパノール、n−ブタノール、t−ブタノール、2−ブタノール、ジアセトンアルコール等のアルコール類;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、エチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、エチレングリコールモノ−t−ブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコール−n−ブチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル等の多価アルコール誘導体;アセトン、ジメチルケトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジ−n−プロピルケトン、ジ−i−プロピルケトン、アセチルアセトンなどのケトン類;ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素;ヘキサン、ヘプタンなどの脂肪族炭化水素;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、酢酸−2−メトキシエチル、酢酸−2−エトキシエチルなどのアセテート類;ジオキサン;ジメチルホルムアミド(DMF);ジメチルスルホキシド(DMSO);テトラヒドロフラン(THF);シクロヘキサノン;クロロホルム、ジクロロメタンなどのハロゲン化炭化水素等が挙げられ、これらの中から、使用するA成分及びB成分の種類、基材の表層の材質、さらには塗工の容易性などに応じて適宜選定して使用すればよい。中でも好適な有機溶媒として、A成分の溶解性、塗工の容易性などの観点から、i−プロパノール、n−ブタノール、t−ブタノール、2−ブタノール、ジアセトンアルコール;メチルエチルケトン、ジエチルケトン、酢酸エチル、酢酸−2−メトキシエチル、酢酸−2−エトキシエチル;DMF;DMSO;THF;シクロヘキサノン;クロロホルム;ジクロロメタンが挙げられる。
本発明の希釈用溶媒は、上記有機溶媒の中から選択される少なくとも1種類以上の有機溶媒であって、2種類以上の組み合せであってもよい。混合溶媒とする場合には、使用するA成分を溶解可能な混合溶媒とすればよい。
たとえば、基材の表面にフォトクロミック組成物を直接塗布して基材表面に形成されるフォトクロミック層、或いは後述する転写用支持体の表面に塗布して転写用支持体表面に一旦形成されるフォトクロミック層において、該層の平滑性を保持しながら、有機溶媒が残りにくく、乾燥速度を速めることができるという理由から、C成分としては90℃未満の沸点を有する有機溶媒と、90℃以上の沸点を有する有機溶媒を混合して用いることが好適である。沸点が90℃未満、90℃以上の有機溶媒の配合割合は、使用する他の成分に応じて適宜決定すればよい。中でも、優れた効果を発揮するためには、全有機溶媒量を100質量%としたとき、沸点が90℃未満の有機溶媒が20〜80質量%、沸点が90℃以上の有機溶媒が80〜20質量%とすることが好ましく、沸点が90℃未満の有機溶媒が25〜40質量%、沸点が90℃以上の有機溶媒が60〜75質量%とすることがさらに好ましい。
さらに、基材等の表面にフォトクロミック組成物を平滑性を保持しながら塗工するという理由から、全有機溶媒量を100質量%としたとき、25℃における表面張力が27mN/m以下である有機溶媒を50質量%以上含有していることが好ましく、90質量%以上含有していることがさらに好ましい。
C成分の配合量は、前記したようなC成分配合により得られる効果、及びスプレーコートに用いるという観点から、A成分100質量部に対して910〜10,000質量部であり、910〜7,000質量部であることが好ましく、1,000〜5,000質量部であることがより好ましい。
本発明のフォトクロミック組成物は、基材等の表面に該フォトクロミック組成物を平滑性を保持しながら、スプレーを用いて塗工するという理由から、25℃における粘度が1〜1,800mPa・sであって、10〜1,600mPa・sであることが好ましく、300〜1,500mPa・sであることがより好ましい。粘度が1mPa・s未満である場合には、フォトクロミック特性を十分に発揮するような膜厚を塗工することが困難であり、また粘度が1,800mPa・sを超える場合には、フォトクロミック組成物を均一に噴霧することができないために、膜厚が一定で光学歪の少ないフォトクロミック層を得ることが出来ない。上記粘度は、組成物に含まれる成分、即ち、用いたA成分、B成分、C成分の種類や分子量等によって異なり、また、上記A、B、C成分の他に、たとえば、後述のD成分等を加える場合には、用いたD成分の種類や分子量等によっても異なるが、希釈用溶媒の量を前述の範囲で調整することにより、容易に調整することができる。
本発明のスプレーコート用フォトクロミック組成物は、後述する光学物品の接着(密着)強度をより向上させる目的で、D成分として分子内に少なくとも2つのイソシアネート基を有するポリイソシアネート化合物を含有することができる。以下に、本発明のD成分について説明する。
D成分:分子内に少なくとも2つのイソシアネート基を有するポリイソシアネート化合物
本発明のフォトクロミック組成物において、(D)分子内に少なくとも2つのイソシアネート基を有するポリイソシアネート化合物を含有させ、後述する方法によってフォトクロミック積層シートを製造した後に、該D成分と前記(A)ポリウレタン−ウレア樹脂とを反応させ、橋架け構造を有するポリウレタン−ウレア樹脂を生成することが好ましい。前述の「A成分:ポリウレタン−ウレア樹脂」で説明したとおり、フォトクロミック層を積層させる段階においては、フォトクロミック層が柔軟性を有するほど密着性に優れるため、テトラヒドロフランに可溶であることが好ましいが、十分に密着させて一旦フォトクロミック積層シートを製造した後においては、上記のとおり該D成分とA成分とを反応させて、テトラヒドロフランに不溶な上記橋架け構造を形成することが好ましい。
詳しくは後述するが、この橋架け構造が形成されることによって、フォトクロミック層の耐熱性が向上するとともに、凝集破壊が起こりにくくなり、接着性向上の効果が高くなると考えられる。 本発明における分子内に少なくとも2つのイソシアネート基を有するポリイソシアネート化合物としては、公知のイソシアネート化合物を何ら制限なく使用することができる。これらは、単独で使用してもよく、2種類以上を併用してもよい。
上記ポリイソシアネート化合物(D成分)としては、前述のA2成分として例示したジイソシアネート化合物に加えて、1,3,5−トリス(6−イソシアナトヘキシル)ビュレット、(2,4,6−トリオキトリアジン−1,3,5(2H,4H,6H)トリイル)トリス(ヘキサメチレン)イソシアネート、1−メチルベンゼン−2,4,6−トリイルトリイソシアネート、4,4’,4’ ’−メチリジントリス(イソシアナトベンゼン)、メチルシラントリイルトリスイソシアネート、2,6−ジイソシアナトカプロン酸2−イソシアナトエチル、2,6−ビス[(2−イソシアナトフェニル)メチル]フェニルイソシアネート、トリス(3−メチル−6−イソシアナトベンゾイル)メタン、トリス(4−メチル−3−イソシアナトベンゾイル)メタン、トリス(3−イソシアナトフェニル)メタン、トリス(3−メチル−4−イソシアナトベンゾイル)メタン、トリス(4−メチル−2−イソシアナトベンゾイル)メタン等の分子内に3つのイソシアネート基を有する化合物を挙げることができる。また、イソシアネート基を3つ有するイソシアヌレート化合物を挙げることができる。
さらには、テトライソシアナトシラン、[メチレンビス(2,1−フェニレン)]ビスイソシアネート等の分子内に4つのイソシアネート基を有する化合物を挙げることができる。
中でも、2級炭素に結合したイソシアネート基を有する化合物が好適に使用できる。
具体的には、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)の異性体混合物、シクロブタン−1,3−ジイソシアネート、シクロヘキサン−1,3−ジイソシアネート、シクロヘキサン−1,4−ジイソシアネート、ヘキサヒドロトルエン−2,4−ジイソシアネート、ヘキサヒドロトルエン−2,6−ジイソシアネート、ヘキサヒドロフェニレン−1,3−ジイソシアネート、ヘキサヒドロフェニレン−1,4−ジイソシアネート、及びこれらイソシアネート化合物や、イソホロンジイソシアネートの3量体(イソシアヌレート化合物)などが挙げられる。
前記D成分に含まれるイソシアネート基は、ブロック剤で保護されている状態で使用することもできる。ブロック剤としては、例えば、酸アミド系、ラクタム系、酸イミド系、イミダゾール系、尿素系、オキシム系化合物などが使用できる。具体的には、アセトアニリド、酢酸アミド、ε−カプロラクタム、コハク酸イミド、マレイン酸イミド、ジメチルピラゾール、チオ尿素、アセトアルドオキシム、アセトンオキシム、メチルエチルケトオキシムなどを挙げる事ができる。
本発明において、上記D成分の分子量は、特に制限されるものではないが、1000未満であることが好ましい。該D成分の分子量が1000以上の場合、得られるフォトクロミック層の耐熱性、および膜強度が低下する傾向がある。これは、分子量が大きいD成分を用いると、イソシアネート基間の結合数が増える傾向にあり、たとえ橋架け構造を形成したとしても架橋点間の距離が長くなり、耐熱性があまり向上しないために接着性も十分に向上しないと考えられる。よって、D成分の分子量は、1000未満であることが好ましく、より好ましくは800以下、最も好ましくは500以下である。D成分の分子量の下限は、その単体化合物の分子量であり、特に制限されるものではないが、100である。
D成分の配合量
本発明のフォトクロミック組成物におけるD成分の配合量は、接着性、耐熱性、及びフォトクロミック特性の観点から、A成分100質量部に対して4〜20質量部とすることが好適である。上記配合量が少なすぎる場合には、十分な接着性、及び耐熱性の向上効果が得られず、多すぎる場合には、該フォトクロミック組成物から得られるフォトクロミック層の白濁、接着性の低下、フォトクロミック化合物の耐久性低下などが起こる傾向がある。発色濃度や耐久性といったフォトクロミック特性を維持したまま、プラスチックフィルムなどの光学基材との接着性を向上させるためには、D成分の配合量は、A成分100質量部に対して6〜17.5質量部、特に7〜15質量部とすることが好ましい。この際、D成分のイソシアネート基の割合は、A成分100質量部に対して1.0〜10.0質量部、より好ましくは1.5〜6.0質量部、もっとも好ましくは2.0〜5.0質量部である。ここで、イソシアネート基の量は、D成分の分子量、1分子当たりのイソシアネート基の数、及びイソシアネート基の分子量から求めることができる。
A成分とD成分から得られるテトラヒドロフランに不溶なポリウレタン−ウレア樹脂
D成分と前述のA成分との反応生成物を含むポリウレタン−ウレア樹脂を使用することにより、優れた接着性を発揮する理由は、下記のように考えられる。D成分の分子内に含まれるイソシアネート基の一部が、A成分のウレタン結合、又はウレア結合と反応することにより、アロファネート結合、又はビュレット結合などの橋架け構造を形成する。このA成分とD成分との反応により、橋架け構造を有する(高分子量化されテトラヒドロフランに不溶な成分)ポリウレタン−ウレア樹脂(以下、不溶性ポリウレタン−ウレア樹脂ともいう。)が得られ、該不溶性ポリウレタン−ウレア樹脂を用いて積層したフォトクロミック層の凝集力が向上し、接着性、及び耐熱性が向上すると考えられる。特に、熱水と接触させた後でも、また後述する耐汗試験を実施しても、高い接着性(基材と該フォトクロミック層との接着性)を維持することができる。上記効果は、一般的な2液型のポリウレタン樹脂を使用した場合よりも優れる。
以上のような架橋構造を有する不溶性ポリウレタン−ウレア樹脂を製造するためには、2級炭素に結合したイソシアネート基を有するポリイソシアネート化合物をD成分に使用することが好ましい。2級炭素に結合したイソシアネート基を有するポリイソシアネート化合物を用いることの利点は、本発明者等は次のように推定している。本発明のD成分によるA成分の橋架けは、加熱反応と湿気反応の2段階で進行していると考えている。加熱反応においては、一部のポリイソシアネート化合物の一つのイソシアネート基がA成分のウレタン結合、又はウレア結合と反応する。次いで、湿気反応(水存在下での反応)において、A成分に結合したポリイソシアネート化合物の残存するイソシアネート基と、フリーで残存するポリイソシアネート化合物のイソシアネート基の一部が、湿気等の水存在下において加水分解してアミンを生じることにより、架橋反応が進行すると考えている。
Figure 2016132696
なお、上記反応式において、波線で示した部分はポリマー鎖を指す。
2級炭素に結合したイソシアネート基は、比較的反応速度が遅いために、A成分に結合する量とフリーで残存する量が適度にコントロールされ、その結果、橋架け構造が形成しやすいと考えている。
A成分とD成分との反応については、次の根拠により上記のような反応が進んでいることが推定できる。先ず、A成分には、赤外吸収スペクトル測定においてイソシアネート基のピークが観察されない。次に、A成分とD成分とを混合し、湿気存在下(水の存在下)、加熱状態で保持したものは、高分子量化されたテトラヒドロフラン不溶分が確認できる。これらの根拠から、A成分とD成分とが反応していると考えられる。
A成分とD成分とを反応させると、テトラヒドロフランに可溶なA成分、およびD成分を用いた場合であっても、テトラヒドロフラン不溶分が生成する。そのため、このテトラヒドロフラン不溶分は、A成分とD成分との反応生成物に該当するものと考えられる。これは、ジメチルホルムアミドを溶媒としたゲル・パーミエイション・クロマトグラフ(GPC)の測定により裏付けられる。不溶性ポリウレタン−ウレア樹脂は、ジメチルホルムアミドに溶解することが好ましい。この溶解した不溶性ポリウレタン−ウレア樹脂をGPC測定すると、A成分よりも高分子量物を含んでいることが確認された。GPCクロマトグラムのピークトップで比較すると、例えば、好ましいA成分のピークトップの分子量は10万以下であるのに対して、このようなA成分から得られる不溶性ポリウレタン−ウレア樹脂は、高分子量側、例えば、ピークトップの分子量が20万以上となる高分子量物が確認できた。
この高分子量成分の割合は、5.0〜50.0質量%であり、より好ましくは10.0〜40.0質量%である。ここでいう高分子量成分とは、A成分のGPC測定結果と比較して、不溶性ポリウレタン−ウレア樹脂において高分子領域に新たに見られる全ての領域を意味し、高分子量成分の生成割合は、不溶性ポリウレタン−ウレア樹脂のGPC測定結果全領域に占める高分子量成分の割合より算出される。また、不溶性ポリウレタン−ウレア樹脂におけるGPCクロマトグラムにおいて、A成分よりも低分子量成分が低減されていることが確認されたため、完全に立証されているわけではないが、テトラヒドロフラン可溶分もA成分とD成分との反応生成物を含むものと考えられる。
ちなみに、D成分どうしの反応のみが生じた場合には、得られた生成物はテトラヒドロフラン、及びジメチルホルムアミドに不溶になる。そのため、不溶性ポリウレタン−ウレア樹脂におけるテトラヒドロフラン不溶分は、D成分どうしのみの生成物でないことも確認した。
上記のようなテトラヒドロフラン不溶分(高分子量成分)は、前述のように、A成分に含まれるウレタン結合、又はウレア結合に対して、D成分に含まれるイソシアネート基が反応することにより、アロファネート結合、又はビュレット結合などの橋架け構造を形成したことを示唆していると推定している。
上記A成分とD成分との反応生成物を含む不溶性ポリウレタン−ウレア樹脂は、本発明のフォトクロミック組成物を用いて、単層、または積層体からなる基材どうしを貼付し積層シートとするとき、或いは得られた積層シートを用いた光学物品を製造するときの加工性の観点、及びそれら積層シートの接着性の観点、さらにはこれら積層シート又は光学物品の表面にハードコート層を形成する場合において、ハードコート液を塗布したり、硬化させたりするときの加工性の観点から、通常60〜200℃、特に100〜150℃の耐熱性を有していることが好ましい。なお、ここでいう耐熱性とは、熱機械測定装置(セイコーインスツルメント社製、TMA120C)を用いて、下記条件で測定した軟化点を意味する。
〔測定条件〕サンプル厚み:100〜300μm、昇温速度:10℃/分、測定温度範囲:30〜200℃、プローブ:先端径0.5mmの針入プローブ。
また、本発明の不溶性ポリウレタン−ウレア樹脂は、フォトクロミック層を形成するA成分とD成分の合計100質量部中20.0〜90.0質量%を占めることが好ましい。なお、このテトラヒドロフラン不溶分は、下記の方法で記載したソックスレー抽出器にて測定した値である。不溶性ポリウレタン−ウレア樹脂以外のテトラヒドロフランに可溶であるポリウレタン−ウレア樹脂は、10.0〜80.0質量%であり、不溶分と可溶分との合計質量は100質量%である。
テトラヒドロフラン不溶分の測定は、次の方法により確認した値である。具体的には、ソックスレー抽出器内に、フィルム状サンプル約1g(サンプル形状;膜厚40〜50μm、約10cm×15cm)を仕込んだガラス繊維製円筒フィルター(保留粒子径1μm)を設置し、約100mlのテトラヒドロフランを6時間還流させることにより実施した。還流終了後、フィルター内に残存する不溶分をフィルターごと乾燥させて重量を測定し、試験開始前のフィルター重量との差分を不溶分の重量とした。この重量を、仕込んだサンプル量で割ることにより、テトラヒドロフラン不溶分を算出した。
本発明で使用するフォトクロミック層は、テトラヒドロフラン不溶分が20〜90質量%である。テトラヒドロフラン不溶分が90質量%を超える場合には、基材との接着強度が低下するため好ましくない。一方、テトラヒドロフラン不溶分が20質量%未満となる場合には、接着強度、特に、人口汗と接触させた後の接着強度(以下、単に「耐汗性」とする場合もある)が低下するため好ましくない。通常状態における接着強度、耐汗性を向上させるためには、フォトクロミック層に含まれるテトラヒドロフラン不溶分は、25.0〜80.0質量%であることが好ましく、さらに、30.0〜70.0質量%であることが好ましい。
その他の成分
さらに、本発明で使用するフォトクロミック組成物には、フォトクロミック化合物の耐久性の向上、発色速度の向上、退色速度の向上やスプレーコートによる製膜性のために、界面活性剤、酸化防止剤、ラジカル補足剤、紫外線安定剤、紫外線吸収剤、離型剤、着色防止剤、帯電防止剤、蛍光染料、染料、顔料、香料、可塑剤等の添加剤を添加しても良い。添加するこれら添加剤としては、公知の化合物が何ら制限なく使用される。
例えば、界面活性剤としては、ノニオン系、アニオン系、カチオン系の何れも使用できるが、フォトクロミック組成物への溶解性からノニオン系界面活性剤を用いるのが好ましい。好適に使用できるノニオン性界面活性剤を具体的に挙げると、ソルビタン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、デカグリセリン脂肪酸エステル、プロピレングリコール・ペンタエリスリトール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビット脂肪酸エステル、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンフィトステロール・フィトスタノール、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンヒマシ油・硬化ヒマシ油、ポリオキシエチレンラノリン・ラノリンアルコール・ミツロウ誘導体、ポリオキシエチレンアルキルアミン・脂肪酸アミド、ポリオキシエチレンアルキルフェニルホルムアルデヒド縮合物、単一鎖ポリオキシエチレンアルキルエーテル、さらにはシリコーン系やフッ素系の界面活性剤等を挙げることができる。
界面活性剤の使用に当たっては、2種以上を混合して使用しても良い。界面活性剤の添加量は、A成分100質量部に対し、0.001〜5質量部の範囲が好ましい。
また、酸化防止剤、ラジカル補足剤、紫外線安定剤、紫外線吸収剤としては、ヒンダードアミン光安定剤、ヒンダードフェノール酸化防止剤、フェノール系ラジカル補足剤、イオウ系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、トリアジン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、ベンゾフェノン系化合物等を好適に使用できる。これら酸化防止剤、ラジカル補足剤、紫外線安定剤、紫外線吸収剤は、2種以上を混合して使用しても良い。さらにこれらの添加剤の使用に当たっては、界面活性剤と酸化防止剤、ラジカル補足剤、紫外線安定剤、紫外線吸収剤を併用して使用しても良い。これら酸化防止剤、ラジカル補足剤、紫外線安定剤、紫外線吸収剤の添加量は、A成分100質量部に対し、0.001〜20質量部の範囲が好ましい。但し、これらの添加剤を使用しすぎると、ポリカーボネート樹脂製の基材へのフォトクロミック組成物の接着性が低下するため、その添加量は好ましくは7質量部以下、より好ましくは3質量部以下、最も好ましくは1質量部以下である。
スプレーコート用フォトクロミック組成物の製造方法
本発明のスプレーコート用フォトクロミック組成物は、上述の成分を混合することにより製造することができる。各成分を混合する順序は、特に制限されるものではなく、これらの成分が均一に混合され、25℃における粘度が前記範囲であれば特に問題なく使用できる。得られるフォトクロミック組成物は、スプレーを用いてコートすることにより、厚みが均一で、表面が平滑な、さらには、接着性に優れる、フォトクロミック特性を有する接着層として基材等の接着に好適に使用できる。
特に、複数枚のポリカーボネート樹脂製の基材を積層する際に、基材と基材の間の接着層として使用した場合には、光学歪が小さく外観良好の光学物品が得られる。
以下、本発明のフォトクロミック積層シートおよび光学物品の製造方法について説明する。
本発明の本発明のフォトクロミック積層シートおよび光学物品の製造方法
本発明のフォトクロミック積層シートは、本発明のフォトクロミック組成物をスプレーコートして形成されたフォトクロミック層を基材の表面に積層した積層構造を含んでなり、本発明の光学物品は、上記フォトクロミック積層シートを含んでなる。以下、本発明の光学物品の製造方法について順に説明する。
基材
本発明において、基材は、光透過性を有するものであれば特に制限なく使用でき、単層であっても、積層体であってもよい。入手および加工の容易性の観点から樹脂製のシート、またはフィルムが好適に使用される。
基材となるシート、またはフィルムの原料として好適な樹脂を例示すれば、ポリカーボネート樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ナイロン樹脂、トリアセチルセルロース樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、アリル樹脂、エポキシ樹脂、ポリビニルアルコール樹脂などが挙げられる。その中でも、接着性が良好で射出成形法に対する適用性が高く、透明性に優れ、耐衝撃性を有するという理由からポリカーボネート樹脂が特に好ましい。本発明の基材は、上記樹脂のうち1種類若しくは複数種類からなる単層体若しくは積層体である。
本発明において、上記基材が光学特性を有する、光学シート、またはフィルムからなる光学層を含有することができる。上記光学特性は、公知の方法で付与された光学特性であって特に限定されない。たとえば、偏光フィルム(ポリビニルアルコール偏光フィルムをトリアセチルセルロース樹脂フィルムではさんだもの)も、本発明の光学フィルムとして使用することが可能である。上記光学物性を有することは、光学歪の小さい外観良好な光学物品が得られるという本発明の効果が発揮される点からも好ましい。
また、本発明で使用する基材は、あらかじめメタノールなどの有機溶媒で洗浄・脱脂してもよい。さらに、コロナ放電処理、プラズマ放電処理、やUVオゾン処理などを施しておくことも可能である。
さらに、上記基材の表面に、詳しくは後述する第2接着層が積層されていることが本発明の積層シートの接着性をより向上させる点で好ましい。該第2接着層を積層することにより、本発明の積層シートの接着性が向上する要因としては、以下の2点が挙げられる。
1つ目の要因は、フォトクロミック化合物などの光酸化劣化しやすい化合物を有する層、即ち、本発明のフォトクロミック組成物よりなるフォトクロミック層(以下、第1接着層ともいう)と基材とを直接接触させないことが挙げられる。これについては理由が定かではないが、第1接着層と基材とを直接接触させた場合に、光酸化劣化などにより分解して低分子量化したフォトクロミック化合物などが、第1接着層と基材の界面に移行することにより、両者の接着性を低下させると推察している。
2つ目の要因は、特に熱可塑性樹脂からなる基材を用いた場合に効果を発揮するのであるが、第2接着層となる組成物を有機溶媒に溶解した状態の、流動性のある液状で、直接上記基材に塗布することにより、上記有機溶媒が基材を侵し、または、基材に浸透することができるため、密着性が向上し、より接着強度性が向上すると考えられる。
よって、本発明で使用される第2接着層は、フォトクロミック化合物を含有しないことが好ましく、更には有機溶媒に溶解した状態で、基材に塗布することがより好ましい。有機溶媒に溶解した状態で塗布する場合は、基材に塗布したのち、乾燥により溶媒を除去して、第2接着層とすればよい。
本発明の第2接着層に用いられる成分としては、A成分と同様なポリウレタン−ウレア樹脂を採用することが好ましい。特に、後述する軟化点、表面自由エネルギー、溶解度パラメーターなどを制御したポリウレタン−ウレア樹脂を使用することにより、本発明のフォトクロミック化合物を有する第1接着層との密着性が向上し、優れた接着強度が得られるため、結果として第1接着層と基材とをより強固に接着することができる。以下に、第2接着層に好適に使用されるポリウレタン−ウレア樹脂(E成分)について説明する。
E成分:第2接着層用ポリウレタン−ウレア樹脂
本発明のE成分は、前記A成分と同様なポリウレタン−ウレア樹脂であり、A成分の構成要素として記載したA1成分、A2成分、A3成分、A4成分、及び必要に応じてA5成分をそのまま使用することができる。合成方法に関しても、前述のA成分と同様にして実施することができる。また、A4成分の代わりに、又は併用して、A5成分を使用することもできる。各成分において、E成分として特に好適に使用される化合物、好適な配合量、好適な物性について説明する。
E成分に使用される好適なA1成分としては、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,8−オクタンジオールなどの低分子ポリオール類を原料に用いた、数平均分子量が600〜1200であるポリカーボネートポリオールが挙げられる。
E成分に使用される好適なA2成分としては、脂環式ジイソシアネート化合物を使用することが好ましく、具体的には、イソホロンジイソシアネート、ノルボルナンジイソシアネート、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)の異性体混合物が挙げられる。
E成分に使用される好適なA3成分としては、ジアミン化合物が好ましく、具体的には、イソホロンジアミン、ビス−(4−アミノシクロヘキシル)メタン、ノルボルナンジアミンなどが挙げられる。
E成分に使用される好適なA4成分としては、前記式(1)で示される化合物を使用することが好ましく、具体的には、1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−アミノメチルピペリジンを挙げることができる。
E成分に使用される好適なA5成分としては、前記一般式(9)で示される化合物を使用することが好ましく、具体的には、ノルマルブチルアミンのようなアルキルアミンが挙げられる。
各成分の配合割合は適宜決定すればよいが、得られるE成分の耐熱性、接着強度、表面自由エネルギー、溶解度パラメーターなどのバランスの観点から、次のような量比とすることが好ましい。なお、n1、n2、n3、及びn6(n6=n4+n5)の定義は、前述の通りである。好ましい配合割合の範囲は、n1:n2:n3:n6=0.30〜0.89:1:0.10〜0.69:0.00〜0.20である。さらに、得られるE成分がより優れた密着性を発揮するためには、より好ましくは、n1:n2:n3:n6=0.40〜0.80:1:0.15〜0.58:0.00〜0.15、最も好ましくは、n1:n2:n3:n6=0.51〜0.68:1:0.3〜0.48:0.01〜0.10である。中でも、n2=n1+n3+n6とすることが好ましく、長期の安定性を考慮すると末端を不活性化させることが好ましい。さらに、末端を不活性化させたE成分とする場合、耐久性を考慮するとA4成分を使用することが好ましく、一方、接着性を考慮するとA5成分のみを使用することが好ましい。
E成分は、以上のような配合割合でA成分の合成方法にならって製造できる。中でも、末端にA4成分、及び/又はA5成分が存在することが好ましく、合成方法1を採用することが好ましい。
また、その他のE成分の特徴としては、耐熱性、接着強度などの観点から、E成分の分子量は、5千〜10万、特に8千〜5万であり、1万〜4万であることが最も好ましい。なお、この分子量は、前記「好ましいA成分の性状」の項目にて説明したのと同様の方法で測定した値である。
また、E成分は、フォトクロミック層と基材を貼付し積層シートとするとき、或いは得られた積層シートを用いて光学物品を製造するときの加工性、及びそれら積層シートの接着性、さらにはこれら積層シート又は光学物品の表面にハードコート層を形成する場合において、ハードコート液を塗布したり、硬化させたりするときの加工性等の観点から、通常60〜200℃、特に100〜150℃の耐熱性を有していることが好ましい。なお、ここでいう耐熱性とは、前記「A成分とD成分から得られるテトラヒドロフランに不溶なポリウレタン−ウレア樹脂」の項目にて説明したのと同様の方法で測定した値である。
さらに本発明の基材が、ポリカーボネートである場合において、上記E成分は、下記の物性を有することが好適である。
第2接着層用ポリウレタン−ウレア樹脂(E成分)は、基材への接着性、及び第1接着層への接着性を向上するという観点から、その表面自由エネルギーが40.0〜65.0mJ/mの範囲であることが好ましい。表面自由エネルギーは大きいほど接着力が向上するが、65.0mJ/mを超える場合にはポリカーボネートシートの表面自由エネルギー46.4mJ/mとの差が大きくなりすぎるために界面張力も大きくなり接着性が低下する傾向にある。また、表面自由エネルギーが、40.0mJ/m未満では表面自由エネルギー自体が小さすぎるために、接着力が低下する傾向にある。好ましい表面自由エネルギーの範囲としては接着性向上の観点から、50.0〜58.0mJ/mであることがより好ましい。なお、ここでいう表面自由エネルギーは、自動接触角計(協和界面科学株式会社製、DM500)を用いて接触角測定を行い、北崎・畑理論により解析した結果を採用した。また、接触角測定に用いたプローブ液体は、水、エチレングリコール、ジヨードメタンの3種類である。
前記表面自由エネルギーは、E成分を合成する際に使用するA1成分、A2成分、A3成分、A4成分、及びA5成分の種類や比率を制御することで、調整することが可能である。
また、E成分は、基材への接着性、及び第1接着層への接着性の観点から、その溶解度パラメーター(SP値)が7.0〜12.0であることが好ましく、8.0〜10.7の範囲であることがより好ましい。溶解度パラメーターが、前記溶解度パラメーターの範囲外の場合には、ポリカーボネートシートのSP値9.2との差が大きくなりすぎるため、塗れ性が低下するとともに、接着性が低下する傾向がある。該溶解度パラメーターは、E成分を合成する際に使用するA1成分、A2成分、A3成分、A4成分、及びA5成分の種類や比率を制御することで、調整することが可能である。なおここでいう溶解度パラメーターは、下記式により算出した計算値であり、原子基のモル引力定数とモル容積は、接着ハンドブック(第3版、1996年発行、P.332、表4.3)を使用した。
溶解度パラメーター(SP値)=ΣΔF/ΣΔv
ΔF:原子基のモル引力定数。
Δv:原子基のモル容積。
以上のようなE成分を使用することが好ましいが、このE成分は、前記A成分と同様の成分(A1成分、A2成分、A3成分、A4成分、及びA5成分)、同様の方法で製造することができる。
上記第2接着層を形成する接着剤(E成分を含む組成物等)は、基材に塗布するに際し、必要に応じて第1接着層(上記フォトクロミック組成物)で使用されるような有機溶媒に溶解して使用することができる。しかしながら、ポリカーボネートなどの熱可塑性樹脂を基材に使用する場合においては、熱可塑性樹脂に対して、低溶解性の有機溶媒を使用することが好ましい。熱可塑性樹脂への溶解性が高いと、過剰に熱可塑性樹脂を溶解してしまい、外観不良(白濁)、接着性低下、及び第1接着層の積層時にフォトクロミック特性の低下を引き起こしてしまうおそれがある。また、熱可塑性樹脂への溶解性が低すぎると、基材が溶解せず、第2接着層との接着性が十分に発揮されない。以上のことから、第2接着層に使用する有機溶媒としては、メタノール、エタノール、n−プロパノール、i−プロパノール、n−ブタノール、t−ブタノール、2−ブタノール、ジアセトンアルコール等のアルコール類;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノ−n−プロピルエーテル、エチレングリコールモノ−n−ブチルエーテル、エチレングリコールモノ−t−ブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコール−n−ブチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル等の多価アルコール誘導体を主溶媒として用いることが好ましい。
更には、製膜性や耐候性向上などのため、第1接着層に使用される界面活性剤、酸化防止剤、ラジカル補足剤、紫外線安定剤、紫外線吸収剤、染料などを含んでいても良い。
第2接着層の厚み、形成方法
第2接着層の膜厚は、2〜40μmの範囲であることが好ましく、5〜15μmであることがより好ましい。膜厚が2μmより薄い場合には接着強度が低下する傾向にある。膜厚が40μmを越える場合には、有機溶媒が残存しやすくなり、その結果フォトクロミック化合物の耐候性が低下する傾向にある。上記第2接着層を形成する接着剤(E成分を含む組成物等)が、有機溶媒を含有する場合には、乾燥により有機溶媒を除去して第2接着層が形成されるため、有機溶媒の量を勘案し、乾燥後得られる第2接着層の膜厚が所望の厚みとなる量を基材表面に塗布すればよい。また、基材表面への塗布手段は特に限定されないが、スプレーを用いることが好ましい。
次に、本発明の光学物品を構成する材料或いは部材について説明する。
本発明の積層シート、およびその製造方法
まず、本発明の積層シートについて説明する。本発明の積層シートは、基材表面に、本発明のフォトクロミック組成物からなるフォトクロミック層(第1接着層)を積層させることにより製造される。具体的には、1枚の基材の表面に本発明のフォトクロミック層が積層したフォトクロミック表面層を有するもの、2枚の基材が本発明のフォトクロミック層を介して積層したフォトクロミック内層を有するものが挙げられる。
フォトクロミック層を形成する方法は特に制限されないが、基材の表面に直にフォトクロミック層を形成する方法と、転写用支持体を用いて、一旦、転写用支持体の表面にフォトクロミック層を形成する方法とが挙げられる。
前者は、本発明のフォトクロミック組成物を基材の表面に直接塗布した後、乾燥して希釈用溶媒を除去し、基材表面に直にフォトクロミック層を形成して積層シートとする方法である。
後者は、本発明のフォトクロミック組成物を平滑な転写用支持体の表面に塗布した後、乾燥して希釈用溶媒を除去し、一旦、該転写用支持体の表面にフォトクロミック層を形成する方法である。この場合、得られたフォトクロミック層を基材の表面に積層する方法は特に制限されず、フォトクロミック層を転写用支持体から剥離させた後に基材の表面に積層させてもよいし、フォトクロミック層からなる面を基材の表面に積層させた後転写用支持体を剥離してもよい。 さらに本発明は、上記基材の表面に積層されたフォトクロミック層の表面にさらに別なる基材を積層させて積層シートとすることもできる。このとき、フォトクロミック層を介して積層する2枚の基材は、同じ材質であっても、異なる材質であってもよい。
上記平滑な転写用支持体の材質としては、本発明で使用する希釈用溶媒に耐性があるもの、またフォトクロミック組成物が剥離しやすいものが好ましく、具体的に例示すれば、ガラス、ステンレス、テフロン(登録商標)、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン、さらにはシリコン系やフッ素系などの剥離性を向上させるコート層を積層させたプラスチックフィルムなどが挙げられる。後者の方法を採用した場合には、一旦転写用支持体上で希釈用溶媒を除去し、フォトクロミック層を形成するため、溶媒の種類及び基材の種類に関係なく、希釈用溶媒の使用に起因する悪影響を排除することが可能である。
上記本発明のフォトクロミック組成物の塗布は、均一で、平滑な接着層が得られ、塗工操作が簡便であること、さらには、最終的に得られる光学物品の光学歪が少なく、外観が良好となるという観点から、スプレーコートを採用する。該スプレーコートは、公知のスプレーコートを何ら制限なく使用することが出来る。必要に応じて採用される前述の第2接着層も、上記理由からスプレーコートにより塗工されることが好ましい。
なお、上記第1接着層の厚さは、フォトクロミック化合物の発色濃度、耐候性および接着強度などの観点から、5〜100μmの範囲であることが好ましく、10〜50μmの範囲であることがより好ましい。また、従って、希釈用溶媒を除去した後得られるフォトクロミック層の厚さが所望の厚さとなるよう、スプレーコートすればよい。また、該スプレーコートは、一度にスプレーしても良く、途中で乾燥工程を設け、複数回に分けてスプレーしても良い。
上記フォトクロミック組成物のスプレーコート、及び乾燥時の温度等はフォトクロミック組成物が均一かつ平滑に塗布され、その後表面の平滑さを保ちながら希釈用溶媒が除去されればよいのであって、特に制限はされず、使用した溶媒の種類や基材の種類等を勘案して決定されればよいが、一般的には、室温〜130℃の温度で、10〜100%RHの湿度下で実施されることが好ましい。
こうして得られた積層シートは、そのまま使用することもできるが、以下の方法により、その状態を安定化させて使用することもできる。具体的には、積層した直後の積層シートを20℃以上60℃以下の温度で4時間以上真空下にて静置し、脱気することが好ましい。静置する時間の上限は、特に制限されるものではないが、50時間もあれば十分である。
ここで、前述のD成分であるポリイソシアネート化合物を使用した場合は、上記安定化に加えて、加熱処理を行うことが好ましい。該加熱処理は、上記安定化させて得られた積層シートを、80℃以上130℃以下の温度下、30分以上3時間以下の時間、静置することにより行うことができる。該加熱処理により、D成分のイソシアネート基の一部が、反応に供され、A成分のウレタン結合、又はウレア結合と結合し、アロファネート結合、又はビュレット結合を形成するものと考えられる。従って、加熱処理の後得られた積層シートは、その状態が非常に安定なものとなる。
上記加熱処理の後得られた積層シートに、さらに加湿処理を行うことが好ましい。該加湿処理は、室温〜100℃の温度下、及び30〜100%RHの湿度下で行うことができる。該加湿処理を行うことにより、D成分によるA成分どうしの橋架け構造を完結させるとともに、積層シート中に存在するD成分由来のイソシアネート基を完全に消失させることができ、フォトクロミック特性、及び接着性をより安定化させることが可能となる。さらには、加湿処理後に、常圧下、もしくは真空下において、40〜130℃で静置することにより、積層シート中に存在する過剰の水分を除去することができる。よって、本発明のフォトクロミック組成物にD成分であるポリイソシアネート化合物を使用した場合において、A成分とD成分を反応させるためには、フォトクロミック積層シートを作製後、1)脱気、2)加熱処理、3)加湿処理、4)水分除去の順に後処理を実施することが好ましく、積層シート中に介在するフォトクロミック層中でA成分とD成分を反応させることにより、テトラヒドロフランに不溶の不溶性ポリウレタン−ウレア樹脂を形成させることが好ましい。
また、前述の第2接着層を有する積層シートを製造する方法としては、本発明のフォトクロミック層である第1接着層と、基材との間に第2接着層を積層する形態となっていればよく、その製造方法は特に制限されない。
製造方法としては、
1)あらかじめ基材の表面に第2接着層を積層させ、この第2接着層を有する基材と第1接着層とを積層する、若しくは、上記第2接着層を有する2枚の基材で第1接着層を挟み込んで積層する方法、
2)第1接着層の片面、若しくは両面に第2接着層を積層させ、該第2接着層と1枚、若しくは2枚の基材とを積層する方法、
3)基材表面に、第2接着層、第1接着層を、若しくは、基材表面に、第2接着層、第1接着層、第2接着層、次いで基材を、順次積層していく方法、
などが挙げられるが、製造効率などの観点から、1)の方法を採用することが最も好ましい。本発明の第2接着層の塗布方法、及び乾燥方法としては、前述の第1接着層と同様な方法で実施することができる。
本発明の光学物品、およびその製造方法
本発明の光学物品は、上記の如くして得られた本発明の積層シートを含んでいればよく、その形態は特に限定されない。具体的には、本発明の積層シートからなる積層シート又はフィルム;本発明の積層シートに更に光学シート又はフィルムを積層したり、表面にハードコート層等のコート層を積層したりした複合積層シート又はフィルム;本発明の積層シート又はフィルム、又は上記複合積層シート又はフィルム(以下、総称して単に、本発明の積層シート等ともいう)をプラスチックレンズ本体などの光学基材と一体化した光学物品、などを挙げることができる。
上記光学シート又はフィルムを積層する方法、表面にハードコート層などのコート層を形成する方法については、特に限定されず公知の方法を用いることができる。
次に、上記本発明の積層シート等を光学基材と一体化する方法についても、特に限定されず公知の方法を用いることができる。以下簡単に説明する。まず、上記光学基材の原料としては、前述の基材の原料と同様のものが挙げられ、好ましい原料として、ポリカーボネート樹脂、(メタ)アクリレート樹脂アリル樹脂、(チオ)ウレタン樹脂、(チオ)エポキシ樹脂などの公知の樹脂を挙げることができ、なかでもポリカーボネート樹脂を好ましい原料として挙げることができる。
一体化する方法としては、たとえば、光学基材(たとえばレンズ本体)の原料が熱可塑性樹脂である場合には、上記本発明の積層シート等を金型内に装着した後に、光学基材(たとえばレンズ本体)の原料である熱可塑性樹脂を射出成形する方法、光学基材として既に硬化した硬化体を用いる場合には、該光学基材の表面に、接着剤等を用いて、上記本発明の積層シート等を貼付する方法などを挙げることができる。また、上記光学基材の原料が重合性モノマーである場合には、該重合性モノマー中に上記本発明の積層シート等を浸漬した後、該重合性モノマーを硬化させることにより、光学基材中に本発明の積層シート等を埋設させて一体化することもできる。上記射出成形にかかる射出成形機や射出条件、重合性モノマーの重合条件等は、使用した樹脂の種類等を勘案し、公知の技術を制限なく使用することができる。
即ち、本発明の積層シート等を光学基材と一体化してなる光学物品の形態としては、具体的には、熱可塑性樹脂、又は熱硬化性樹脂よりなるプラスチック光学基材上に、本発明の積層シート等を積層した形態であってもよいし、該プラスチック光学基材中に、上記本発明の積層シート等を埋設した形態であってもよい。
以下に例示するいくつかの実施例によって、本発明をさらに詳しく説明する。これらの実施例は、単に、本発明を説明するためのものであり、本発明の精神及び範囲は、これら実施例に限定されるものではない。
以下に、実施例及び比較例で各成分として使用した化合物等の略号を纏める。
A1成分;ポリオール化合物
PL1:旭化成ケミカルズ株式会社製デュラノール(1,5−ペンタンジオールとヘキサンジオールを原料とするポリカーボネートジオール、数平均分子量500)。
PL2:旭化成ケミカルズ株式会社製デュラノール(1,5−ペンタンジオールとヘキサンジオールを原料とするポリカーボネートジオール、数平均分子量800)。
PL3:旭化成ケミカルズ株式会社製デュラノール(1,5−ペンタンジオールとヘキサンジオールを原料とするポリカーボネートジオール、数平均分子量1000)。
PL4:旭化成ケミカルズ株式会社製デュラノール(1,5−ペンタンジオールとヘキサンジオールを原料とするポリカーボネートジオール、数平均分子量2000)。
PL5:ダイセル化学工業株式会社製プラクセル(ポリカプロラクトンジオール、数平均分子量830)。
PL6:ダイセル化学工業株式会社製プラクセル(ポリカプロラクトンジオール、数平均分子量1000)。
PL7:ダイセル化学工業株式会社製プラクセル(ポリカプロラクトンジオール、数平均分子量3000)。
PL8:旭化成ケミカルズ株式会社製デュラノール(2−メチル−1,3−プロパンジオールと1,4−ブタンジオールを原料とするポリカーボネートジオール、数平均分子量800)。
A2成分;ジイソシアネート化合物
NCO1:イソホロンジイソシアネート。
NCO2:4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)の異性体混合物。
NCO3:ヘキサメチレン−1,6−ジイソシアネート。
NCO4:ノルボルナンジイソシアネート。
A3成分;アミノ基含有化合物(鎖延長剤)
CE1:イソホロンジアミン。
CE2:1,6−ジアミノヘキサン。
CE3:N,N’−ジエチルエチレンジアミン。
CE4:ビス−(4−アミノシクロヘキシル)メタン。
A4成分;機能性付与化合物
HA1:1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ヒドロキシピペリジン。
HA2:1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−アミノピペリジン。
A5成分:反応停止剤
HA3:ノルマルブチルアミン。
B成分:フォトクロミック化合物
PC1:下記式で示される化合物
Figure 2016132696
PC2:下記式で示される化合物
Figure 2016132696
PC3:下記式で示される化合物
Figure 2016132696
C成分:希釈用溶媒
C1:イソプロピルアルコール。
C2:プロピレングリコール−モノメチルエーテル。
C3:t−ブチルアルコール。
C4:酢酸エチル。
C5:シクロヘキサノン。
C6:THF(テトラヒドロフラン)。
C7:ジエチルケトン。
D成分;ポリイソシアネート化合物
D1:4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)の異性体混合物(分子量262)。
D2:イソホロンジイソシアネートの3量体(パーストープ社製、製品名『トロネートIDT70B』、酢酸ブチル30%混合、分子量666)。
その他の成分
・L1:エチレンビス(オキシエチレン)ビス[3−(5−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−m−トリル)プロピオネート](チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製、Irganox245)。
・L2:DOW CORNING TORAY L−7001(東レ・ダウコーニング株式会社製、界面活性剤)。
(A成分の合成)
ポリウレタン−ウレア樹脂(U1)の合成
撹拌羽、冷却管、温度計、窒素ガス導入管を有する三つ口フラスコに、数平均分子量800のポリカーボネートジオール251.9g、イソホロンジイソシアネート100gを仕込み、窒素雰囲気下、110℃で7時間反応させ、プレポリマーを合成した。反応の終点はイソシアネート基の逆滴定法により確認した。反応終了後、反応液を30℃付近まで冷却し、t−ブチルアルコール1000g、及びジエチルケトン3000gに溶解させ、次いで、鎖延長剤であるイソホロンジアミン19.2gを滴下し、25℃で1時間反応させた。その後さらに、1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−アミノピペリジン7.7gを滴下し、25℃で1時間反応させることにより、ポリウレタン−ウレア樹脂(U1)のジエチルケトン溶液を得た。得られたポリウレタン−ウレア樹脂の分子量は、ポリオキシエチレン換算で18,000(理論値;17,000)であり、耐熱性は100℃であった。ここで言う分子量の理論値とは、原料に用いたA1成分、A2成分、A3成分、及びA4成分が、架橋することなく理論的に直線状にポリウレタン−ウレア樹脂を生成した場合の分子量のことである。
ポリウレタン−ウレア樹脂(U2)〜(U21)の合成
表1に示すポリオール化合物(A1成分)、ジイソシアネート化合物(A2成分)、アミノ基含有化合物(A3成分)、機能性付与化合物(A4成分)及び反応溶媒を用い、表1に示す反応条件を用いた以外は、前述のU1の合成方法と同様にして、U2〜U21を合成した。
Figure 2016132696
以上、ポリウレタン−ウレア樹脂U1〜U21のA1、A2、A3、及びA4成分のモル配合割合、分子量、耐熱性の結果を表2にまとめた。
Figure 2016132696
第2接着層用ポリウレタン−ウレア樹脂(E成分)(W1)〜(W13)の合成
表3に示すポリオール化合物(A1成分)、ジイソシアネート化合物(A2成分)、アミノ基含有化合物(A3成分)、機能性付与化合物(A4成分)、反応停止剤(A5成分)、及び反応溶媒を用い、表3に示す反応条件を用いた以外は、前述のU1の合成方法と同様にして、W1〜W13を合成した。
Figure 2016132696
以上、第2接着層用ポリウレタン−ウレア樹脂W1〜W13のA1、A2、A3、A4、及びA5成分のモル配合割合、分子量、耐熱性の結果を表4にまとめた。
Figure 2016132696
実施例1
フォトクロミック組成物の調製
ポリウレタン−ウレア樹脂(U1)溶液57.8g、フォトクロミック化合物(PC1)0.162g、4,4’−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)の異性体混合物 0.4g、さらに酸化防止剤としてエチレンビス(オキシエチレン)ビス[3−(5−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−m−トリル)プロピオネート] 20mg、界面活性剤としてDOW CORNING TORAY L−7001 5mgを添加し、室温で攪拌・混合を行い、フォトクロミック組成物を得た。
積層シートの作製
上記フォトクロミック組成物を、PET(ポリエチレンテレフタレート)製フィルム(帝人デュポンフィルム株式会社製ピューレックスフィルム、シリコン塗膜付)にスプレーコートにより塗布し、110℃で10分間乾燥させた後、PET製フィルムを剥がして厚み約40μmのフォトクロミック性接着シートを得た。次いで、得られたフォトクロミック性接着シートを、厚み400μmのポリカーボネートシート2枚の間に挟み、40℃、真空下で24時間静置した後、110℃で60分加熱処理し、次いで60℃、100%RHで24時間の加湿処理を行い、最後に40℃、真空下で24時間静置することにより、目的のフォトクロミック特性を有する積層シートを得た。なお、最終的に得られたフォトクロミック性接着シートをポリカーボネートシートから剥離し、赤外吸収スペクトルを確認したところ、該フォトクロミック性接着シート中にイソシアネート基のピークは検出されなかった。
得られた積層シートからフォトクロミック性接着シートを剥離して評価を実施したところ、テトラヒドロフラン不溶分が34.8質量%、高分子量成分が15.4質量%であった。フォトクロミック特性としての発色濃度は1.0であり、退色速度は45秒であり、耐久性は93%であった。また、剥離強度は初期が140N/25mm、煮沸試験後が110N/25mm、耐候性試験後が110N/25mmであり、耐汗試験における密着安定時間は120時間であった。なお、これらの評価は以下のようにして行った。
テトラヒドロフラン不溶分
テトラヒドロフラン不溶分の測定に用いる試料は、上記積層シートから2枚のポリカーボネートシートを剥離し、フォトクロミック性接着シート(フォトクロミック組成物)を分離して試料とした。
上記試料約1g(サンプル形状:膜厚約45μm、約10cm×15cm)を仕込んだガラス繊維製円筒フィルター(保留粒子径1μm)を、ソックスレー抽出器内に設置し、約100mlのテトラヒドロフランを6時間還流させ、還流終了後のフィルター内に残存する不溶分をフィルターごと乾燥させて重量を測定し、試験開始前のフィルター重量との差分を不溶分の重量とした。この重量を、仕込んだサンプル量で割ることにより、本発明のテトラヒドロフラン不溶分を算出した。なお、フォトクロミック化合物(B成分)は、テトラヒドロフランに可溶であるため、テトラヒドロフラン不溶分には含まれなくなる。該テトラヒドロフラン不溶分の値は、このフォトクロミック化合物(B成分)の質量を除外して算出した値である。
高分子量成分
前記テトラヒドロフラン不溶分の測定に用いた試料を使用し、本文中に記載の方法でGPC測定を行うことにより、高分子量成分の割合を算出した。
フォトクロミック特性
得られた積層シートを試料とし、これに、(株)浜松ホトニクス製のキセノンランプL−2480(300W)SHL−100を、エアロマスフィルター(コーニング社製)を介して23℃、積層シート表面でのビーム強度365nm=2.4mW/cm、245nm=24μW/cmで120秒間照射して発色させ、積層シートのフォトクロミック特性を測定した。
1)最大吸収波長(λmax):(株)大塚電子工業製の分光光度計(瞬間マルチチャンネルフォトディレクターMCPD1000)により求めた発色後の最大吸収波長である。該最大吸収波長は、発色時の色調に関係する。
2)発色濃度〔ε(120)−ε(0)〕:前記最大吸収波長における、120秒間照射した後の吸光度ε(120)と最大吸収波長における未照射時の吸光度ε(0)との差。この値が高いほどフォトクロミック性が優れていると言える。
3)退色速度〔t1/2(sec.)〕:120秒間照射後、光の照射をとめたときに、試料の前記最大波長における吸光度が〔ε(120)−ε(0)〕の1/2まで低下するのに要する時間。この時間が短いほどフォトクロミック性が優れているといえる。
4)耐久性(%)=〔(A96/A0)×100〕:光照射による発色の耐久性を評価するために次の劣化促進試験を行った。すなわち、得られた積層シートをスガ試験器(株)製キセノンウェザーメーターX25により96時間促進劣化させた。その後、前記発色濃度の評価を試験の前後で行い、試験前の発色濃度(A0)および試験後の発色濃度(A96)を測定し、〔(A96)/A0〕×100〕の値を残存率(%)とし、発色の耐久性の指標とした。残存率が高いほど発色の耐久性が高い。
剥離強度
得られた積層シートを、25×100mmの接着部分を有する試験片とし、試験機(オートグラフAGS−500NX、島津製作所製)に装着し、クロスヘッドスピード100mm/minで引張り試験を行い、それぞれ下記1)〜3)の剥離強度を測定した。
1)初期の剥離強度は、上記の通り試験を実施した。
2)煮沸試験後の剥離強度は、上記にサイズに切り出した試験片を、沸騰した蒸留水中に1時間浸漬させた後、上記のようにして測定した。
3)耐候性試験後の剥離強度は、上記にサイズに切り出した試験片を、前記フォトクロミック特性の項に記載されている『耐久性』と同じように劣化促進試験を96時間実施した後、上記のようにして測定した。
耐汗試験
得られた積層シートを、直径50mmの円形に切り出し、この試験片をステンレス製治具で締め付けた。別途、蓋付きのプラスチック容器に人口汗(10%の食塩、及び5%の乳酸を添加した蒸留水)を用意し、この人工汗中に前記試験片を浸漬した。この試験片、及び人工汗が入ったプラスチック容器を70℃で保管し、24時間毎に試験片端部の剥離有無を目視評価した。評価結果の数値は、安定した接着性を示した時間(剥離が生じる直前までの時間)である。
外観評価
得られた積層シートに高圧水銀ランプ(ウシオ電機製、ランプ型番;USH102D)の光を照射して、白紙上にその投影面を写し出し、該投影面を目視で観察し、積層シートに筋や歪みなどの外観不良が発生しているかを確認した。上記高圧水銀ランプの光の照射条件は、白紙と高圧水銀ランプとの距離を1.5mとし、積層シートを白紙から約0.3mの位置とした。評価基準を以下に示す。
1:不良が観測されない。
2:不良部分が面積の5%以下。
3:不良部分が面積の5%を超え、10%以下。
4:不良部分が面積の10%を超える。
実施例2
フォトクロミック組成物の調製
実施例1におけるフォトクロミック組成物の調製と同じ方法で、同じフォトクロミック組成物を得た。
第2接着層用接着剤の調整
第2接着層用ポリウレタン−ウレア樹脂(W1)のプロピレングリコール−モノメチルエーテル溶液45gに、界面活性剤としてDOW CORNING TORAY L−7001 5mgを添加し、室温で攪拌・混合を行い、第2接着層用接着剤を得た。
積層シートの作製
第2接着層用接着剤を厚み400μmのポリカーボネートシート上に塗布し、110℃で10分間乾燥させることにより、膜厚5μmの第2接着層を有するポリカーボネートシートを得た。
上記フォトクロミック組成物を、PET製フィルム(帝人デュポンフィルム株式会社製ピューレックスフィルム、シリコン塗膜付)にスプレーコートにより塗布し、110℃で10分間乾燥させた後、PET製フィルムを剥がして厚み約40μmのフォトクロミック性接着シートを得た。次いで、得られたフォトクロミック性接着シートを、前述の第2接着層を有するポリカーボネートシート2枚の間に挟み、40℃、真空下で24時間静置した後、110℃で60分加熱処理し、次いで60℃、100%RHで24時間の加湿処理を行い、最後に40℃、真空下で24時間静置することにより、目的のフォトクロミック特性を有する積層シートを得た。なお、最終的に得られたフォトクロミック性接着シートをポリカーボネートシートから剥離し、赤外吸収スペクトルを確認したところ、該フォトクロミック性接着シート中にイソシアネート基のピークは検出されなかった。
得られた積層シートに含まれるフォトクロミック性接着シートを評価したところ、テトラヒドロフラン不溶分が34.8質量%、高分子量成分が15.5質量%であった。フォトクロミック特性としての発色濃度は1.0であり、退色速度は45秒であり、耐久性は93%であった。また、剥離強度は初期が200N/25mm、煮沸試験後が180N/25mm、耐候性試験後が190N/25mmであり、耐汗試験における密着安定時間は336時間であった。なお、実施例2におけるテトラヒドロフラン不溶分は、下記の評価方法で実施し、それ以外の評価は実施例1と同様にして行った。
テトラヒドロフラン不溶分、高分子量成分
第2接着層を用いて積層シートを作製した場合には、フォトクロミック性接着シートのみを剥離することが困難であるため、以下の方法により試料を作製した。
テトラヒドロフラン不溶分、及び高分子量成分の測定に用いる試料は、上記積層シートとは別に、2枚のPET製フィルム間に同じ前駆体組成物を塗布した後、前記積層シートを得たのと同じ後処理等を行った。その後、PET製フィルムを剥がし、フォトクロミック性接着シートを得た。
上記試料約1gを仕込んだガラス繊維製円筒フィルターを、ソックスレー抽出器内に設置し、約100mlのテトラヒドロフランを3時間還流させ、還流終了後のフィルター内に残存する不溶分をフィルターごと乾燥させて重量を測定し、試験開始前のフィルター重量との差分を不溶分の重量とした。この重量を、仕込んだサンプル量で割ることにより、本発明のテトラヒドロフラン不溶分を算出した。
また、実施例1と同様の方法で高分子量成分を測定した。
なお、実施例1と実施例2とを比較して明らかな通り、2枚のポリカーボネートシートの間で作製したフォトクロミック接着性シート(フォトクロミック組成物)と、2枚のPET製フィルムの間で同じ操作で作製したフォトクロミック接着シート(フォトクロミック組成物)とは、同量のテトラヒドロフラン不溶分、高分子量成分となることを確認した。そのため、第2接着層を用いた場合には、2枚のPET製フィルムの間で同じ操作により作製したフォトクロミック接着シート(フォトクロミック組成物)の評価を行った。
実施例3〜41
表5、及び表6に示す(A)ポリウレタン−ウレア樹脂、(B)フォトクロミック化合物、(C)希釈用溶媒、及び(D)ポリイソシアネート化合物を用いた以外は、実施例2と同様の方法でフォトクロミック組成物を調整した。
また、表7に示す配合で第2接着層を有するポリカーボネートシートを実施例2と同様の方法で作製した(第2接着層の厚みを表7に示す。)。
表5、及び表6に示したフォトクロミック組成物と表7に示した第2接着層を有するポリカーボネートシートを用いて、実施例2と同様の方法により積層シートを作製した(第1接着層:フォトクロミック性接着シートの厚み、テトラヒドロフラン不溶分、高分子量成分は表5、及び表6に示した。)。
得られた各種積層シートの評価結果を表8に示した。
比較例1〜3
表6に示す(A)ポリウレタン−ウレア樹脂、(B)フォトクロミック化合物、(C)希釈用溶媒、及び(D)ポリイソシアネート化合物を用いた以外は、実施例2と同様な方法でフォトクロミック組成物を調整した。
また、表7に示す配合で第2接着層を有するポリカーボネートシートを実施例2と同様の方法で作製した(第2接着層の厚みを表7に示す。)。
表6に示したフォトクロミック組成物と表7に示した第2接着層を有するポリカーボネートシートを用いて、実施例2と同様の方法により積層シートを作製した(第1接着層:フォトクロミック性接着シートの厚み、テトラヒドロフラン不溶分、高分子量成分は表6に示した。)。
得られた各種積層シートの評価結果を表8に示した。
Figure 2016132696
Figure 2016132696
Figure 2016132696
Figure 2016132696
上記実施例1〜41から明らかなように、分子中にウレア結合を有し、テトラヒドロフランに可溶なポリウレタン−ウレア樹脂、フォトクロミック化合物、及び前記ポリウレタン−ウレア樹脂100質量部に対し、910〜10,000質量部の希釈用溶媒を含むフォトクロミック組成物を使用して得られる積層シートは、優れたフォトクロミック特性、剥離強度、耐熱性、耐汗性、外観を有していることが分かる。
一方、前記ポリウレタン−ウレア樹脂100質量部に対し、希釈溶媒が910質量部未満、もしくは10,000質量部を超えているフォトクロミック組成物を使用した積層シート(比較例1、及び2)は、フォトクロミック特性等は優れているものの、光学歪が大きく、外観的に満足するものが得られなった。

Claims (18)

  1. (A)分子鎖中にウレア結合を有するポリウレタン−ウレア樹脂、及び
    (B)フォトクロミック化合物、及び
    (C)上記(A)ポリウレタン−ウレア樹脂100質量部に対し、910〜10,000質量部の希釈用溶媒
    を含んでなり、上記(A)ポリウレタン−ウレア樹脂が(C)希釈用溶媒に溶解し、25℃における粘度が1〜1,800mPa・sであるスプレーコート用フォトクロミック組成物。
  2. 前記フォトクロミック組成物に含まれる(A)ポリウレタン−ウレア樹脂が、ソックスレー抽出器を用い100mlのテトラヒドロフランに該(A)ポリウレタン−ウレア樹脂1gを加えて6時間還流させたときに、テトラヒドロフランに100質量%可溶なポリウレタン−ウレア樹脂である請求項1記載のプレーコート用フォトクロミック組成物。
  3. 前記(A)ポリウレタン−ウレア樹脂が、
    (A1)ポリカーボネートポリオール、及びポリカプロラクトンポリオールよりなる群から選ばれる少なくとも1種のポリオール化合物と、
    (A2)分子内に2つのイソシアネート基を有するジイソシアネート化合物と、
    (A3)分子内に2つ以上のアミノ基を有するアミノ基含有化合物と、
    (A4)分子内に1または2つのイソシアネート基と反応しうる基を有し、かつ、分子内にピペリジン構造を有する機能性付与化合物
    とを反応して得られる樹脂である請求項2記載のスプレーコート用フォトクロミック組成物。
  4. 前記(A)ポリウレタン−ウレア樹脂を得るに際して使用する成分(A1)、(A2)、(A3)、及び(A4)の量比が、前記成分(A1)に含まれる水酸基の総モル数をn1とし、前記成分(A2)に含まれるイソシアネート基の総モル数をn2とし、前記成分(A3)に含まれるアミノ基の総モル数をn3とし、前記成分(A4)に含まれるイソシアネート基と反応しうる基の総モル数をn4としたときに、n1:n2:n3:n4=0.3〜0.89/1.0/0.1〜0.69/0.01〜0.2となる量比である請求項3記載のスプレーコート用フォトクロミック組成物。
  5. 前記希釈用溶媒が、アルコール類、多価アルコール誘導体、ケトン類、芳香族炭化水素、脂肪族炭化水素、アセテート類、ジオキサン、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、テトラヒドロフラン、シクロヘキサノン、ハロゲン化炭化水素の中から選択される少なくとも1種類以上の有機溶媒を含有してなる、請求項1〜4のいずれか1項に記載のスプレーコート用フォトクロミック組成物。
  6. 前記希釈用溶媒が、i−プロパノール、n−ブタノール、t−ブタノール、2−ブタノール、ジアセトンアルコール、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、酢酸エチル、酢酸−2−メトキシエチル、酢酸−2−エトキシエチル、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、テトラヒドロフラン、シクロヘキサノン、クロロホルム、ジクロロメタンの中から選択される少なくとも1種類以上の有機溶媒を含有してなる、請求項5記載のスプレーコート用フォトクロミック組成物。
  7. 前記希釈用溶媒が、90℃未満の沸点を有する有機溶媒と、90℃以上の沸点を有する有機溶媒の混合物である請求項1〜4のいずれか1項に記載のスプレーコート用フォトクロミック組成物。
  8. 前記希釈用溶媒が、90℃未満の沸点を有する有機溶媒と、90℃以上の沸点を有する有機溶媒の混合物であり、90℃未満の沸点を有する有機溶媒が、全有機溶媒の20〜80質量%である請求項7記載のスプレーコート用フォトクロミック組成物。
  9. 前記フォトクロミック組成物が、更に
    (D)分子内に少なくとも2つのイソシアネート基を有するポリイソシアネート化合物を含んでなる請求項1〜8のいずれか1項に記載のスプレーコート用フォトクロミック組成物。
  10. 請求項1〜8のいずれか1項に記載のスプレーコート用フォトクロミック組成物を、基材の表面にスプレーコートした後乾燥することにより、該基材の表面にフォトクロミック層を積層することを特徴とする、フォトクロミック表面層を有するフォトクロミック積層シートの製造方法。
  11. 請求項9記載のスプレーコート用フォトクロミック組成物を、
    基材の表面にスプレーコートした後乾燥することにより、フォトクロミック層を基材の表面に積層し、次いで、加熱処理及び加湿処理を施すことを特徴とする、フォトクロミック表面層を有するフォトクロミック積層シートの製造方法。
  12. 請求項1〜8のいずれか1項に記載のスプレーコート用フォトクロミック組成物を、
    転写用支持体の表面にスプレーコートした後、乾燥することにより、上記転写用支持体の表面にフォトクロミック層を一旦形成し、
    このフォトクロミック層を基材の表面に積層することを特徴とする、フォトクロミック表面層を有するフォトクロミック積層シートの製造方法。
  13. 請求項9記載のスプレーコート用フォトクロミック組成物を、
    転写用支持体の表面にスプレーコートした後乾燥することにより、上記転写用支持体の表面にフォトクロミック層を一旦形成し、
    このフォトクロミック層を基材の表面に積層し、次いで、加熱処理及び加湿処理を施すことを特徴とする、フォトクロミック表面層を有するフォトクロミック積層シートの製造方法。
  14. 請求項10または請求項12に記載の方法により得られたフォトクロミック積層シートのフォトクロミック層からなる面に、別なる基材を積層してなる、フォトクロミック内層を有するフォトクロミック積層シートの製造方法。
  15. 請求項11または請求項13に記載のフォトクロミック積層シートの製造方法における、フォトクロミック層を基材の表面に積層する工程までを実施した後、該フォトクロミック層からなる面に、別なる基材を積層し、次いで、加熱処理及び加湿処理を施すことを特徴とする、フォトクロミック内層を有するフォトクロミック積層シートの製造方法。
  16. 前記基材が、その表面に、分子鎖中にウレア結合を有する、ポリウレタン−ウレア樹脂の含有層が形成されてなる、請求項10〜15のいずれか1項に記載のフォトクロミック積層シートの製造方法。
  17. 前記基材が、光学シートまたは、フィルムからなる光学層を含有してなる、請求項10〜16のいずれか1項に記載のフォトクロミック積層シートの製造方法。
  18. 請求項10〜17のいずれか1項に記載のフォトクロミック積層シートを含有してなるフォトクロミック特性を有する光学物品の製造方法。
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