WO2011049096A1

WO2011049096A1 - クリップ

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Publication number: WO2011049096A1
Application number: PCT/JP2010/068403
Authority: WO
Inventors: 武文足立
Original assignee: 株式会社ニフコ
Priority date: 2009-10-20
Filing date: 2010-10-19
Publication date: 2011-04-28
Also published as: CN102575702A; JP2011089538A; KR20120065449A

Abstract

　他方パネル５の取付孔５ａに挿入される胴部２０及び胴部２０の周囲に設けられて他方パネル５に当たって取付孔５ａに対する胴部２０の挿入量を規制するシール兼用フランジ部２１を有した雌部材２と、一方パネル４の係止部４ａに係合可能な頭部１０を有した雄部材１とからなり、軸部１１を胴部２０内に挿入して胴部２０の下端からその先端部を突出させることにより雄部材１と雌部材２とを抜け止め係止した状態で胴部２０の一部を拡開して雌部材２の取付孔５ａからの抜けを防ぐクリップ３において、雄部材１は軸部１１の周囲に突出されてフランジ部２１を外側から覆う大きさのシール用外吸盤部１７、外吸盤部内面に突出されてフランジ部２１より小さいシール用内吸盤部１８を備え、軸部１１が胴部２０に抜け止め係止された使用状態でフランジ部２１及び外吸盤部１７が他方パネル５に圧接し、かつ、内吸盤部１８がフランジ部２１に圧接してそのフランジ部を下向きに押圧するようにした。

Description

クリップ

　本発明は、クリップのうち、特に雄部材及び雌部材からなるクリップに関する。

　図６（ａ）は下記特許文献１と特許文献２に挙げられている従来クリップを示している。この構造において、雄部材１０９は、パネル１１１に設けられた係止部１１２に係止可能な軸部１１５の上端部に設けられて軸部１１５の軸方向に対して直交する方向に突出する頭部１１３と、頭部１１３よりも軸部１１５の下側に設けられて頭部１１３と平行に突出する鍔状部１１４と、軸部１１５の下端部に設けられた係合膨出部１１５ａとを有する。このクリップは、パネル１１１に設けられた係止部１１２を頭部１１３と鍔状部１１４とで挟み込むことでパネル１１１に取り付けられる。これに対し、雌部材１１０は、パネル１０１の取付孔１０２に挿入される筒状の胴部１１７と、胴部１１７の上端部に設けられて胴部１１７の長手方向と直交する方向に延びるフランジ部１１８と、胴部１１７の下端部から上端側に切り込まれた複数のスリット１１９とを有する。この雌部材１１０は、パネル１０１の取付孔１０２から胴部１１７を挿入し、胴部１１７をフランジ部１１８がパネル１０１と当接するまで押し込むことで取り付けられる。そして、雄部材１０９の係合膨出部１１５ａを雌部材１１０の胴部１１７中央の挿通口から挿入して胴部１１７の下端から突出させることで雄部材１０９は雌部材１１０から抜けなくなる。これにより、パネル１１１がパネル１０１に対して固定される。

　以上の構造では、パネル１０１に対する雌部材１１０の係合力は強くなるが、水等の液が雌部材１１０の胴部１１７からパネル１１１側（上面側）へ浸入する虞がある。これは、パネル１０１に対するフランジ部１１８の圧接力の不足が一因であり、また、パネル１０１に装着された雌部材１１０に、パネル１１１に装着された雄部材１０９傾いた状態で挿入されると、鍔状部１１４がフランジ部１１８に対して部分的に浮いた状態で雄部材１０９と雌部材１１０とが係合されることにより、隙間ができ易いことも原因である。図６（ｂ）はその対策の一例を示している。この対策では液漏れ防止用パッキング１０５、１０６が用いられる。パッキング１０５はパネル１０１とフランジ部１１８との間、パッキング１０６はフランジ部１０５と鍔状部１１４との間の水密性をそれぞれ保つ役割を果たす。　

　特許文献１と特許文献２は、このようなパッキングを用いることなく水密性を向上する構造を開示している。ここで、特許文献１の構造は、図示しないが、図６に示す構造と比較すると、雄部材の軸部に設けられた鍔状部の径を、雌部材の胴部上端の開口より大きくかつ他方のパネルに設けられる取付孔の径より小さくするとともに、雄部材の軸部の鍔状部を雌部材の胴部から突出させた状態で係止することで雄部材が雌部材に対して抜け止めされている。そして、このとき、雌部材における胴部の上端に形成された開口の縁部には、雄部材における軸部の鍔状部が圧接する。これに対し、特許文献２の構造は、図６に比較して、雄部材の鍔状部の形状が、雌部材のフランジ部全体を外側から覆うことができる程度の大きさの傘状をなしている。そして、雄部材の軸部を雌部材の胴部から突出させて互いを係止した状態で、上記傘状の鍔状部が、他方のパネルに圧接する。　

　上記特許文献１に開示された構造では、雄部材と雌部材とを係合することによりパネル同士を固定した状態で、雄部材側の鍔状部が雌部材側の胴部の開口部上縁に圧接されるので、雌部材の胴部の内部空間および２枚のパネル間の空間が外部からシールされる。特許文献２では、雄部材と雌部材とが係合されると、雄部材側の鍔状部が雌部材のフランジ部を外側から覆い、かつ、雌部材が取り付けられたパネルに当該鍔状部が所定の圧接力で圧接するので、雌部材の胴部の内部空間は、２枚のパネル間の空間からシールされる。また、各文献に示された構造では、例えば各パネルに取り付けられた雌部材および雄部材がパネルに沿って相対的にずれた場合でも、シールされた状態が損なわれ難いと共に、がた付きのない安定した結合状態を維持できる。

日本国実公平７－４３４７１号公報日本国実用新案登録第２５４４５６６号公報

　特許文献１と特許文献２に示された構造では、図６（ｂ）に比べてパッキングを廃止しても水密性をそれなりに向上できる。しかし、車両等の分野に用いられるクリップでは、例えば、雄部材が固定されるパネルと雌部材が固定されるパネルの一方が車体側のインナーパネル、他方がそのインナーパネルに固定される内張用のトリムボードのような場合において、部品を増やすことなく水密性を大幅に向上したいという要望がある。そこで、本発明の目的は、上記特許文献と同様にパッキングを用いることなく、しかもパッキングを使用する場合と同程度、或いはそれ以上の水密性を付与できるようにしたクリップを提供することにある。

　上記目的を達成するため請求項１の発明は、一方パネルを他方パネルに取り付けて固定する場合に用いられて、前記他方パネルに穿設された取付孔に挿入される筒状胴部及び前記胴部の上端周囲に設けられて前記他方パネルに当たって前記取付孔に対する胴部の挿入量を規制するシール兼用のフランジ部を有した雌部材と、前記一方パネルに設けられた係止部に係合可能な頭部を有した雄部材とからなり、前記雄部材の軸部を前記胴部内に挿入し胴部下端から突出して抜け止め係止した状態で、前記胴部の一部を拡開して前記雌部材の前記取付孔からの抜けを防ぐクリップにおいて、前記雄部材は、前記軸部の上側周囲に突出されて前記フランジ部を外側から覆う大きさのシール用の外吸盤部と、前記外吸盤部の内面に突出されて前記フランジ部より小さいシール用の内吸盤部とを備え、前記軸部が前記胴部に抜け止め係止された使用状態で、前記フランジ部及び前記外吸盤部が前記他方パネルにそれぞれ圧接し、かつ、前記内吸盤部が前記フランジ部に圧接してそのフランジ部を下向きに押圧することを特徴としている。請求項１の発明については、以下において図１～図４を参照してその実施形態の一例を説明する。　

　また、請求項２の発明は、上記請求項１の発明における「・・・おいて」までの要件に加え、前記雄部材は、前記軸部の上側周囲に突出されて前記フランジ部を外側から覆う大きさのシール用の外吸盤部と、前記外吸盤部の内面に突出されて前記フランジ部より大きいシール用の内吸盤部とを備え、前記外吸盤部及び前記内吸盤部並びに前記フランジ部は、前記軸部が前記胴部に抜け止め係止された使用状態で、前記取付孔を中心とした同芯円状に配置され、かつ、前記他方パネルにそれぞれ圧接することを特徴としている。請求項２の発明については、以下において図５を参照してその実施形態の一例を説明する。

　以上の各発明では、一方パネルを他方パネルに取り付けて固定する際には、まず、雄部材の頭部を一方パネルの係止部に係合することで雄部材を一方パネルに取り付け、また、雌部材の胴部を他方パネルの取付孔にフランジ部で規制されるまで挿入することで雌部材を他方パネルに仮止する。そして、雄部材の軸部を雌部材の胴部内に挿入し、軸部先端を胴部下端より突出させると、雌部材の胴部の一部が拡開されて他方パネルの取付孔に雌部材が係止されるとともに、雄部材および雌部材の係合が完了し、一方パネルと他方パネルが連結される。また、各発明において、前記雄部材は、前記軸部が前記胴部に抜け止め係止された使用状態で、前記雌部材の胴部に設けられた開口の上縁部に重ねられるシール用の大径部を有していることがより好ましい（請求項３）。

　請求項１の発明では、雄・雌部材を係合して一方パネルを他方パネルに取り付けて固定した使用状態において、次の（ア）～（ウ）によりパッキングを使用する場合と同程度又はそれ以上の水密性を付与でき高品質化を実現できる。
（ア）他方パネルに圧接している外吸盤部及び内吸盤部、つまり２箇所のシール構成により、雌部材の胴部内からフランジ部の上面側へ液が浸入するのを防ぐことができるので、一方パネル側への液の浸入をより確実に阻止できる。
（イ）他方パネルに圧接しているフランジ部及び外吸盤部、つまり２箇所のシール構成により、他方パネルの取付孔等からフランジ部の下面側へ液が浸入するのを防ぐことができるので、一方パネル側への液漏れをより確実に阻止できる。
（ウ）雄部材側の内吸盤部が雌部材側フランジ部を下向きに押圧することで他方パネルに対するフランジ部の圧接力を増大するので、他方パネルの取付孔等からフランジ部の下面側へ浸入する液、つまり上記（イ）の液漏れ阻止効果が更に向上する。　

　請求項２の発明では、雄・雌部材を係合して一方パネルを他方パネルに取り付けた使用状態において、上記（ア）と（イ）に加えて次の（エ）により、パッキングを使用する場合と同程度又はそれ以上の水密性を付与でき、それにより高品質化を実現できる。
（エ）雄部材側の内吸盤部が外吸盤部及びフランジ部と同じく他方のパネルに圧接するので、それにより他方パネルの取付孔等からフランジ部の下面側へ浸入する液については３箇所のシール構成によって、上記（イ）の液漏れ阻止作用を更に向上できる。　

　請求項３の発明では、請求項１と請求項２に記載の発明に対して、雄部材が雌部材の胴部に設けられた開口の上縁部に重ねられるシール用の大径部を有しているため、雌部材の筒状胴部内からフランジ部の上面側へ浸入する液については雄部材の外吸盤部及び内吸盤部に加えて大径部の３箇所のシール構成となり、それによって上記した液漏れをより一層確実に阻止できる。

本発明の好ましい実施形態に係るクリップを用いて２枚のパネルを互いに固定する様子を示し、（ａ）は雄部材を雌部材に挿入している挿入途中状態を、（ｂ）は挿入完了つまりクリップの使用状態を示す断面図である。（ａ）は本発明の実施形態に係るクリップの正面図であり、（ｂ）は当該クリップの側面図である。（ａ）は図２（ｂ）のＡ－Ａ線断面図、（ｂ）は雄部材を雌部材に挿入している挿入途中状態を示す断面図である。上記雄部材を示し、（ａ）は上面図、（ｂ）は半断面図である。（ａ）と（ｂ）は、本発明の実施形態の変形例に係るクリップを用いて２枚のパネルを互いに固定する様子を図１に対応する断面図で示す図である。（ａ）は、特許文献１と特許文献２に挙げられている従来のクリップによりパネル１０１およびパネル１１１を固定した様子を示す図であり、（ｂ）は、（ａ）に示す固定構造においてクリップとパネルとの間に隙間が生じないようにするための対策の一例を示す図である。

　以下、本発明の好ましい実施形態について説明する。以下では、まず、図１～図４を参照しながら本発明の好ましい実施形態に係るクリップの構造、および、当該クリップを用いて２枚のパネルを互いに固定する際の操作要領及び作動特徴について説明する。そして、図５を参照しながら本発明の実施形態の変形例について説明する。　

　本発明の好ましい実施形態に係るクリップ３は、図１～図４に示すように、互いに着脱可能な関係になっている雄部材１及び雌部材２で構成されている。雄部材１及び雌部材２の材質は、例えば、ポリアセタール（ＰＯＭ）やポリプロピレン（ＰＰ）等の樹脂の射出成形品である。ここで、雄部材１は一方のパネル４（この例では自動車用ドアのドアインナーパネルを想定している）に取り付けられる。雌部材２は他方のパネル５（この例ではドアトリムボードを想定している）に取り付けられる。　

　一方のパネル４には、円形孔である係止部４ａが設けられており、後述のように係止部４ａに対し雄部材１が取り付けられる。なお、係止部４ａには、円形孔に連続して設けられた不図示の導入用ガイド孔などが設けられている。これに対し、他方のパネル５には、取付孔５ａが設けられており、後述のように取付孔５ａに雌部材２を仮止めした後、その雌部材２を雄部材１と係合させる。また、このとき、雌部材２の対応部が雄部材１によって押し拡げられて変形した状態となるので、雄部材１は雌部材２に対して抜け止めされた状態で固定される。　

　雄部材１は、図１（ａ）と図４に示されるごとく、頭部１０と、軸部１１と、係合膨出部１２と、係合膨出部１２より少し上側に位置している押圧膨出部１３と、軸部１１の上側周囲に設けられて雌部材２側のフランジ部２１を外側から覆う大きさとなっているシール用の外吸盤部１７と、外吸盤部１７の内面に突出されたシール用の内吸盤部１８と、軸部１１のうち外吸盤部１７の根元付近に設けられて雌部材２の胴部２０の上側に設けられた開口の上縁部に重ねられるシール用の大径部１４とを一体に備えている。　

　このうち、頭部１０は、係止部４ａの円形孔の直径よりも大きな外径を有し、雄部材１がパネル４に設けられた係止部４ａに係合したときにパネル４の上面に当接する規制板部１５と、該規制板部１５の下面中央から下方に延びる軸部１１のうち、係止部４ａの円形孔に係合する上軸部１１ａとからなる。軸部１１は、外径が上軸部１１ａと略同一であり、外吸盤部１７が設けられている位置より下側部分を形成している軸部１１ｂと、軸部１１ｂより外径が小さく、軸部１１ｂと押圧膨出部１３との間に形成されている上径小軸部１１ｃと、断面の直径が上径小軸部１１ｃとほぼ同一であり、押圧膨出部１３と係合膨出部１２との間に形成されている下径小軸部１１ｄとからなる。　

　上軸部１１ａ及び軸部１１ｂの外径と、押圧膨出部１３及び係合膨出部１２の最大径とはほぼ同じ寸法に設定される。また、上軸部１１ａの外径の大きさは、例えば、上軸部１１ａを係止部４ａの円形孔に挿入したときに、上軸部１１ａと係止部４ａとが互いに締まり嵌めとなるように設定される。軸部１１ｂの外径は、雌部材２における胴部２０内径に対応して設定される。係合膨出部１２は、先端に向かって外径が徐々に小さくなる略円錐台形状である。下径小軸部１１ｄの外径は、雌部材２における胴部２０の一部を押し拡げて変形させる上で好適な寸法に設定される。押圧膨出部１３は、雌部材２における胴部２０が上記のように押し拡げられた状態を保つ上で好適な寸法に設定される。　

　また、大径部１４は、外吸盤部１７の内側の根元部分に形成されており、かつ軸部１１ｂを中心とした略円錐台形となっていて、係合膨出部１２が雌部材２における胴部２０を貫通して係止された使用状態において、雌部材２の胴部２０の上端側に設けられた開口の上縁部と近接あるいは当接する。外吸盤部１７は、上軸部１１ａと軸部１１ｂとの間から水平に延びる水平部及び当該水平部の外周部から斜め下方に延びる傾斜部を有し、傘のような形状となっている。この外吸盤部１７の大きさは後述する雌部材側フランジ部２１を覆うのに十分な大きさであることが好ましい。内吸盤部１８は、外吸盤部１７の水平部の内面から斜め下方に突出した傾斜部を有する。なお、内吸盤部１８の大きさは、外吸盤部１７及びフランジ部２１より小さく、また、内吸盤部１８における上記傾斜部は、外吸盤部１７を構成している上記傾斜部とほぼ相似形となっている。また、規制板部１５の上面の中央には、下方（上軸部１１ａ側）に向かって略円筒形に凹んだ凹状部１６が設けられている。　

　これに対し、雌部材２は、図１（ａ）と図２に示されるごとく、上側および下側に開口が設けられ、内部にこれらの開口を繋ぐ貫通孔長さ方向に貫通された筒状の胴部２０と、胴部２０の上端部の周囲に形成されたフランジ部２１と、胴部２０に対向して設けられている一対の弾性片部２２と、胴部２０の先端部２３から上方（頭部１０側）へ縦溝形に設けられている一対のスリット２４とを一体に備えている。　

　胴部２０の筒内２５に設けられた上記貫通孔の内径は、上側の開口から途中までは雄部材１の係合膨出部１２をほぼ抵抗なく挿通できる程度の大きさである。そして、上記貫通孔の内径は、そこから下側の開口（先端部２３の端面）まで徐々に小さくなり、下側の開口近傍では雄部材１の係合膨出部１２の直径寸法より小さくなっている。また、胴部２０の先端部２３の外径については、下側の開口（先端部２３の端面）へ近づくにつれて小さくなっている。このように、胴部２０の先端部２３が先細りに形成されているので、パネル５の取付孔５ａに挿入し易い。また、胴部２０の先端部２３に上記のように一対のスリット２４が形成されていることにより、雄部材１の軸部１１を胴部２０の貫通孔へ挿入すると、胴部２０の先端部２３は弾性変形する。したがって、雄部材１の軸部１１を胴部２０の貫通孔へさらに押し込むと、軸部１１の先端に設けられた係合膨出部１２が胴部２０の先端部２３を押し拡げ、最終的に係合膨出部１２は筒内２５の外へ突出する。また、胴部２０の上側に設けられた開口の周りの上縁部２７は、上から下（当該開口から）に行く従って次第に貫通孔の断面の直径が小さくなるようなテーパーが形成されている。また、上縁部２７は、雄部材１の軸部１１を雌部材２胴部２０に抜け止め係止された使用状態で、雄部材１の大径部１４が胴部開口を塞ぐよう係合可能となっている。　

　フランジ部２１は、胴部２０の上端の開口の縁部から当該縁部の全周にわたって斜め下方に突出した略鍔状である。また、このフランジ部２１の最大径は、略傘状の外吸盤部１７より小さく、かつ、略傘状の内吸盤部１８よりも大きく設定されている。また、胴部２０の側面に設けられた一対の片部２２は、下端部を除いて胴部２０に形成されたスリット２６によって胴部２０から切り離されており、当該下端部を支点として弾性変形可能となっている。各片部２２の上端部には、他方パネル５の取付孔５ａの孔縁に係合する係止部２２ａが幅方向全体にわたって段差状に設けられている。　

　次に、以上の雄部材１および雌部材２からなるクリップ３を用いて一方パネル４を他方パネル５に取り付ける際の操作要領及び作動特徴を説明する。操作要領としては、まず、パネル４に対し雄部材１が取り付けられ、パネル５に対し雌部材２が取り付けられる。その後、両パネル４，５は、雄部材１と雌部材２とを係合することにより互いに固定される。　

　より詳しくは、雄部材１は、雌部材２への係合に先立って、予めパネル４に取り付けられる。この操作では、例えば、上記のようにパネル４の係止部４ａに設けられた上記の導入用ガイド孔又はそれに類似する孔部分に雄部材１の頭部１０を挿通した状態で雄部材１を水平移動することによって係止部４ａに上軸部１１ａを係合する。　

　また、雌部材２は、胴部２０の外径に適合させて穿設したパネル５の取付孔５ａに先端部２３から挿入し、フランジ部２１がパネル５の一面に当接して挿入規制されるまで押し込まれることで装着される。この挿入過程において、胴部２０の外周面から少し張り出している片部２２は、自身の弾性作用で一旦内側に撓んだ後、取付孔５ａを通過した時点で復元して、係止部２２ａが取付孔５ａの孔縁に係合して仮止めされる。　

　次に、パネル５に装着された雌部材２に対して、パネル４に装着された雄部材１の軸部側係合膨出部１２を胴部２０の開口上側に臨ませた後、係合膨出部１２が胴部の筒内２５を通って胴部下端から突き抜けるまで押し込むと、雄部材１が雌部材２に係合し、パネル５がパネル４に固定される。この過程では、係合膨出部１２が胴部の筒内２５の途中まで挿入されると、内径が狭まった内壁を押し、スリット２４で弾性変形し易くされた胴部先端部２３を拡開させながら胴部下端より突出される。この構造では、図１（ｂ）のごとく係合膨出部１２が胴部２０の下端より突出したとき、押圧膨出部１３が胴部の対応内面に圧接し胴部２０の拡開状態を維持するようになっている。この状態では、外吸盤部１１７がパネル５に圧接され、内吸盤部１８がフランジ部２１に圧接した状態でフランジ部２１を下向きに押している。　

　以上の構造では、パネル４がパネル５に対し雄部材１および雌部材２の係合を介して固定されたクリップ３の使用状態において、以下の構成により水密性の点で優れている。
（ａ）雌部材２の胴部２０内からフランジ部２１の上面側へ浸入する液は、フランジ部２１に圧接している傘状の内吸盤部１８、および、パネル５に圧接している傘状の外吸盤部１７の２箇所のシール構成による水密効果によってパネル４側へ漏れることがない。
（ｂ）パネル５の取付孔５ａ等からフランジ部２１の下面側へ浸入する液は、パネル５に圧接している下向き傾斜の鍔状フランジ部２１の水密作用と、パネル５に圧接している傘状の外吸盤部１７による水密作用、つまり２箇所のシール構成により一方パネル側への液漏れを阻止できる。　

（ｃ）雄部材側の内吸盤部１８が雌部材側フランジ部２１を下向きに押圧しているため、パネル５に対するフランジ部２１の圧接力が増大し、それによりパネル５の取付孔５ａからフランジ部２１の下面側へ浸入する液、つまり上記（ｂ）の液漏れ阻止作用を更に向上できる。
（ｄ）雄部材１の大径部１４が雌部材２の胴部２０の上側に設けられた開口の上縁部２７に重ねられて開口を閉じているため、雌部材２の筒状胴部内からフランジ部２１の上面側へ浸入する液については上記（ａ）に加え、大径部１４による水密作用も得られて、合計３箇所のシール構成となり、それによって上記した液漏れをより一層確実に阻止できる。　

（変形例）
　図５は、図１～図４を参照して説明した上記実施形態における雌部材２のフランジ部２１と、雄部材１の外吸盤部１７及び内吸盤部１８の形状や大きさを変更した変形例に係るクリップ３の構造を断面図で示す。図５において、図１～図４と同じ部材及び部位に同一符号を付し、形状変更した部位のみ符号を変えている。この説明では、変更点及びそれによって得られる利点について明らかにする。　

　図５の変形例は上記形態に比べて次の点が変更されている。第１に、シール兼用のフランジ部２１Ａは、胴部２０の上端全周から下斜めに突出した略鍔状となっている点で同じであるが、略傘状の内吸盤部１８と当たらない大きさ、つまり内吸盤部１８より小さく形成されている。第２に、シール用の外吸盤部１７Ａは、水平部及び周囲の傾斜部からなる略傘状となっている点で同であるが、特に水平部が一回り大きく形成されている。第３に、シール用の内吸盤部１８Ａは、外吸盤部１７の水平部内面から略傘状に突出されている点で同じであるが、フランジ部２１より大きくなっていて、雄部材側軸部の係合膨出部１２が雌部材側胴部２０の先端部２３から突出されて抜け止め係止された使用状態で、フランジ部２１Ａではなくパネル５に圧接するように形成されている。　

　従って、以上の変形例において、外吸盤部１７Ａ及び内吸盤部１８Ａ並びにフランジ部２１Ａは、雄部材側軸部の係合膨出部１２が雌部材側胴部２０の先端部２３から突出して抜け止め係止された使用状態で、取付孔５ａを中心とした同芯円状、つまりフランジ部２１Ａ、内吸盤部１８Ａ、外吸盤部１７Ａの順で取付孔５ａから離れるよう配置されると共に、パネル５にそれぞれ圧接するようになっている。　

　以上の構造では、パネル４がパネル５に対し雄・雌部材１，２の係合を介して固定されたクリップ３の使用状態において、特に水密性の点が以下の構成により優れている。
（ａ1）雌部材の胴部２０内からフランジ部２１Ａの上面側へ浸入する液は、パネル５に圧接している傘状の内吸盤部１８Ａによる水密作用と、同じくパネル５に圧接している傘状の外吸盤部１７Ａによる水密作用、つまり２箇所のシール構成によりパネル４側への液の浸入を阻止できる。　

（ｂ1）パネル５の取付孔５ａからフランジ部２１Ａの下面側へ浸入する液は、パネル５にそれぞれ圧接している下向き傾斜の鍔状フランジ部２１Ａの水密作用と、傘状の内吸盤部１８Ａによる水密作用と、傘状の外吸盤部１７Ａによる水密作用、つまり３箇所のシール構成により一方パネル側への液漏れを阻止できる。
（ｄ1）雄部材１の大径部１４が雌部材側胴部の開口上縁部２７に重ねられて開口を閉じているため、雌部材２の筒状胴部内からフランジ部２１Ａの上面側へ浸入する液については上記（ａ１）に加え、大径部１４によるシール構成も加わって合計３箇所のシール構成となり、それによって上記した水密性がより一層向上する。　

　なお、本発明は、以上において説明した実施形態及びその変形例に限られず、請求の範囲の各請求項の記載によって特定される技術要素を備えていればよい。すなわち、上記実施形態及びその変形例に様々な変更または改良を加えた形態も、本発明の技術的範囲に含まれ得る。　

　また、本出願は、２００９年１０月２０日出願の日本国特許出願（特願２００９－２４１３５１）に基づくものであり、その内容はここに参照として取り込まれる。

　１…雄部材（１０は頭部、１１は軸部、１２は係合膨出部）
　２…雌部材（２０は胴部、２２は片部、２２ａは係止部）
　３…クリップ
　４…パネル（一方パネル、４ａは係止部）
　５…パネル（他方パネル、５ａは取付孔）
　１３…押圧膨出部
　１４…大径部
　１７，１７Ａ…外吸盤部
　１８，１８Ａ…内吸盤部
　２１，２１Ａ…フランジ部
　２３…先端部
　２４…スリット
　２５…筒内
　２６…スリット
　２７…上縁部

Claims

　一方パネルを他方パネルに取り付けて固定する場合に用いられて、前記他方パネルに穿設された取付孔に挿入される筒状の胴部、及び、前記胴部の上端周囲に設けられて前記他方パネルに当たって前記取付孔に対する前記胴部の挿入量を規制するシール兼用のフランジ部、を有した雌部材と、前記一方パネルに設けられた係止部に係合可能な頭部を有した雄部材、とからなり、前記雄部材の軸部を前記胴部内に挿入し胴部下端から突出して抜け止め係止した状態で、前記胴部の一部を拡開して前記雌部材の前記取付孔からの抜けを防ぐクリップにおいて、
　前記雄部材は、前記軸部の上側周囲に突出されて前記フランジ部を外側から覆う大きさのシール用の外吸盤部と、前記外吸盤部の内面に突出されて前記フランジ部より小さいシール用の内吸盤部とを備え、
　前記軸部が前記胴部に抜け止め係止された使用状態で、前記フランジ部及び前記外吸盤部が前記他方パネルにそれぞれ圧接し、かつ、前記内吸盤部が前記フランジ部に圧接してそのフランジ部を下向きに押圧することを特徴とするクリップ。
　一方パネルを他方パネルに取り付けて固定する場合に用いられて、前記他方パネルに穿設された取付孔に挿入される筒状胴部及び前記胴部の上端周囲に設けられて前記他方パネルに当たって前記取付孔に対する胴部の挿入量を規制するシール兼用のフランジ部を有した雌部材と、前記一方パネルに設けられた係止部に係合可能な頭部を有した雄部材とからなり、前記雄部材の軸部を前記胴部内に挿入し胴部下端から突出して抜け止め係止した状態で、前記胴部の一部を拡開して前記雌部材の前記取付孔からの抜けを防ぐクリップにおいて、
　前記雄部材は、前記軸部の上側周囲に突出されて前記フランジ部を外側から覆う大きさのシール用の外吸盤部と、前記外吸盤部の内面に突出されて前記フランジ部より大きいシール用の内吸盤部とを備え、
　前記外吸盤部及び前記内吸盤部並びに前記フランジ部は、前記軸部が前記胴部に抜け止め係止された使用状態で、前記取付孔を中心とした同芯円状に配置され、かつ、前記他方パネルにそれぞれ圧接することを特徴とするクリップ。
　前記雄部材は、前記軸部が前記胴部に抜け止め係止された使用状態で、前記雌部材の胴部の開口上縁部に重ねられるシール用の大径部を有していることを特徴とする請求項１又は２に記載のクリップ。