明 細 書
ブレーキ用油圧サーボ、及びそれを備えた自動変速機
技術分野
[0001] 本発明は、自動車に搭載される自動変速機の伝達経路を形成するブレーキ用油 圧サーボ、及びそれを備えた自動変速機に係り、詳しくは、ピストン部材の回転防止 を図ったブレーキ用油圧サーボ、及びそれを備えた自動変速機に関する。
背景技術
[0002] 一般に、車輛用自動変速機などに用いられる多板式ブレーキ用油圧サーボは、ミ ッシヨンケースと一体に形成されたシリンダ部内に、軸方向に摺動自在なピストン部材 と、該シリンダ部に固着されることによって軸方向に移動が規制されたリターンプレー トと、該ピストン部材と該リターンプレートとの間に縮設されたコイル状のリターンスプリ ングとが配設されており、各シール部材によりシールされることで、シリンダ部及びピ ストン部材の間に作動油室が形成されて構成されている。
[0003] このような多板式ブレーキ用油圧サーボにおいて、油圧制御装置より上記作動油 室に作動油圧が供給されると、ピストン部材がリターンスプリングの付勢力に抗してリ ターンプレート側に押圧駆動され、該ピストン部材の先端部がミッションケース内周側 に配設された複数の摩擦板を軸方向に押圧し、ブレーキが係止状態となる。また、上 記作動油室に作動油圧が排出されると、リターンスプリングの付勢力によってピストン 部材がシリンダ部側に押圧されて、該ブレーキは解放状態となる。
[0004] ところで、上記従来の多板式ブレーキ用油圧サーボにおいては、ブレーキを係止し ている際にピストン部材の下方に潤滑油が溜まってしまうため、この潤滑油を抜くため のドレーン孔がピストン部材の下方に設けられている。
[0005] 一方、上記ブレーキを係止する際には、上述したようにピストン部材はミッションケー スに対してスプライン係合している外摩擦板を押圧している。このとき、該外摩擦板は 回転して!/、た内摩擦板の回転方向に、スプライン係合の遊び部分だけ回転すること になり、同時に該外摩擦板を押圧しているピストン部材も回転することになる。一度の ブレーキの係止ではわずかな回転である力 ブレーキの解放時に逆回転をしないの
でブレーキの係止.解放を何度も繰り返して ヽるうちにピストン部材自体が回転してし まう。したがってピストン部材の下方に設けられたドレーン孔の位置は回転に伴って 位置が下方力 移動し、ブレーキ係止時に潤滑油がピストン部材の下方に溜まって しまう虞があった。
[0006] このため、ブレーキ用油圧サーボが作動し、該ピストン部材が摩擦板を係止する際 にも該ピストン部材が回転してしまうことを防止する必要があり、ピストン部材に爪部 や足部を設け、またこれらが嵌合し得る溝部をシリンダ部に形成し、ピストン部材が回 転してしまうことを防止して 、た (例えば日本国特開 2002— 70753号公報、参照)。 発明の開示
[0007] し力しながら、例えば铸造製品であるピストン部材にお 、て爪部や足部等の凸部を 有することは、铸造の際に熔解した金属がうまく型に流れて ヽかな!ヽと ヽつた铸造性 の悪ィ匕を生じたり、また例えばピストン部材の別部材として凸部を設ける場合には、 爪部等を溶接やボルトを用いて該ピストン部材に固着させる必要があり、部品点数が 増加すると共に製造工程の簡略ィ匕の妨げになるという問題があった。
[0008] そこで本発明は、簡単な構造でピストン部材の回転を防ぐことにより、以つて上記課 題を解決したブレーキ用油圧サーボを提供することを目的とするものである。
[0009] 本発明は (例えば図 1乃至図 7参照)、ケース(6)の内面に形成されたシリンダ部(1 0)と、前記シリンダ部(10)に対向配置されて作動油室(21)を形成するピストン部材 (12)と、前記ケース (6)に固定支持された支持プレート(15)と、前記ピストン部材(1 2)と前記支持プレート( 15)との間に縮設され、前記ピストン部材( 12)を前記シリンダ (10)側に付勢する複数のリターンスプリング(14)と、を備え、前記作動油室(21)に 供給される油圧に基づき軸方向(XI— X2方向)に移動駆動される前記ピストン部材 (12)により摩擦板(23)を係脱し得るブレーキ用油圧サーボ(2)において、 前記支持プレート(15)は、前記複数のリターンスプリング(14)の一端を位置決め 固定する複数の固定部( 15a)を有し、
前記ピストン部材(12)は、前記複数のリターンスプリング(14)を前記軸方向(XI— X2方向)に対して収縮自在に、かつ回転方向に対して把持する把持部(35)を有す る、
ことを特徴とするブレーキ用油圧サーボ(2)にある。
[0010] これにより、前記該ピストン部材が、ケースに嵌合する凸部を備えてなくても回転し てしまうことを防ぐことができ、該ピストン部材に凸部を備えることを不要とすることがで きる。したがって、ピストン部材の铸造性の向上、部品点数増加の防止、及び製造ェ 程の簡略ィ匕を図ることができる。
[0011] また具体的には (例えば図 3及び図 4参照)、前記ピストン部材(12)の把持部(35) は、前記複数のリターンスプリング(14)の外周部(14a)をそれぞれ被覆する複数の 丸溝(35a)を備えてなる。
[0012] これにより、前記該ピストン部材を該複数のリターンスプリングに対して確実に把持 させることがでさる。
[0013] また具体的には (例えば図 3及び図 5参照)、前記支持プレート(15)は、前記ケー ス (6)の被接続部(6bc)に対して接続し得る複数の接続部(15d)と、前記複数の固 定部(15a)とをそれぞれ周方向( ω 1— ω 2方向)における不均等位置に有し、 前記把持部(35)の複数の丸溝 (35a)は、前記不均等位置にある前記複数の固定 部(15a)に固定された前記複数のリターンスプリング(14)に対応する位置に備えら れてなる。
[0014] これにより、前記ピストン部材にリターンスプリングを組付ける際に、位相がずれた位 置では組付けることができず、誤組付けを防止することができる。
[0015] また具体的には (例えば図 1、図 2、及び図 4参照)、前記ピストン部材(12)は、前 記摩擦板 (23)を押圧し得る円筒状の押圧部(12a)と、前記押圧部(12a)に内部の 油を排出し得るドレーン孔(12b)と、を有してなる。
[0016] これにより、前記ピストン部材が摩擦板を押圧した際にあっても、該ピストン部材と該 摩擦板とで閉塞された空間に供給される潤滑油を排出させることができる。
[0017] また、本発明は (例えば図 1参照)、前記ケース (6)と、
前記ケース (6)内に内包された変速機構 (5)と、
前記ブレーキ用油圧サーボ(2)及び前記摩擦板 (23)を有し、前記変速機構 (5)の 一回転要素(38)を係止自在なブレーキ (B— 1)と、を備えた、
ことを特徴とする自動変速機(1)にある。
[0018] これにより、凸部を備えることなく該ピストン部材の回転を防止したブレーキ用油圧 サーボを備える自動変速機を提供することができる。
[0019] また、具体的には (例えば図 2、図 3、図 5、及び図 6参照)、前記ケース(6)は、前 記変速機構 (5)の外周側を被覆するミッションケース (6a)と、該変速機構 (5)をミツシ ヨンケース(6a)内に隔離する隔壁部材 (6b)と、を有してなり、
前記隔壁部材 (6b)の側面に配設され、該隔壁部材 (6b)と前記変速機構 (5)との 間に介在すると共に、前記隔壁部材 (6b)の側面(6bb)に沿って延設された突起部(
27a)を有するヮッシャ部材 (27)を備え、
前記支持プレート(15)は、前記隔壁部材 (6b)の側面 (6bb)に固定される脚部(1
5b)と、該脚部(15b)より延設され、該脚部(15b)を前記隔壁部材 (6b)の側面 (6bb
)に固定した際に前記ヮッシャ部材(27)の突起部(27b、 27c)を前記隔壁部材 (6b) の側面(6bb)との間に挟持する爪部(15e、 15f)と、を有してなる。
[0020] これにより、前記該支持プレートはリターンスプリングを固着させているものでありな がら、該ヮッシャ部材を該隔壁部材と爪部との間に挟持することができる。したがって
、ヮッシャ部材が脱落することを防ぐことができ、自動変速機の組立時における該ヮッ シャ部材の誤組付けを防ぐことができる。
[0021] なお、上記カツコ内の符号は、図面と対照するためのものである力 これは、発明の 理解を容易にするための便宜的なものであり、特許請求の範囲の構成に何等影響を 及ぼすものではない。
図面の簡単な説明
[0022] [図 1]本発明に係る多板式ブレーキ用油圧サーボを示す縦断面図。
[図 2]隔壁部材にピストン部材、支持プレート、及びヮッシャ部材を組付けた状態を示 す縦断面図。
[図 3]図 2の XI方向視図。
[図 4]本発明に係るピストン部材を示す XI方向視図。
[図 5]本発明に係る支持プレートを示す XI方向視図。
[図 6]本発明に係るヮッシャ部材を示す XI方向視図。
[図 7]本発明に係る隔壁部材を示す XI方向視図。
発明を実施するための最良の形態
[0023] 以下、本発明に係る実施の形態を図 1乃至図 7に沿って説明する。
[0024] 本実施の形態に係る多板式ブレーキ用油圧サーボ 2は、図 1に示すように、例えば FR (フロントエンジン 'リヤドライブ)車輛に搭載される自動変速機 1に配設されるもの である。該自動変速機 1は、トルクコンバータ (不図示)、変速機構 5、ブレーキ機構 B 1、及び油圧制御装置 (不図示)等をミッションケース 6a及び隔壁部材 6b等力もな るケース 6内に備えて構成されており、該変速機構 5は、入力軸 7と、該入力軸 7上に 複数のクラッチ、及びプラネタリギヤ等力 なる歯車機構等を備えて構成されて 、る。 そして、該ブレーキ機構 B— 1は、本発明に係る多板式ブレーキ用油圧サーボ 2と複 数の摩擦板 23とを有して構成されて ヽる。
[0025] 図 1に詳示するように、多板式ブレーキ用油圧サーボ(以下、単に「油圧サーボ」と いう) 2は、シリンダ部 10を形成する隔壁部材 6b、ピストン部材 12、リターンスプリング 14、リターンプレート(支持プレート) 15によって構成されている。
[0026] 該隔壁部材 6bは、図 2及び図 3に詳示するように、入力軸 7の軸方向(XI— X2方 向)と垂直な略円板状に形成され、ミッションケース 6aの内周面に接するように固着さ れ、トルクコンバータと変速機構 5やブレーキ機構 B—1とを隔てるように配設されてい る。また、中心部分には入力軸 7が挿通されており、その外周側には該入力軸 7によ り駆動されているオイルポンプ装置 18に供給'排出されるための油路 (不図示)が形 成されている。さらに、その後側面 (X2方向側の側面) 6bbには変速機構 5のクラッチ ドラム(一回転要素) 38との間に後述するヮッシャ(ヮッシャ部材) 27を備え、該ヮッシ ャ 27の外周側には後述するリターンプレート 15の脚部 15bがボルト 25により固定さ れている。また、該脚部 15bが固定されている部分より外周側の隔壁部材 6bにより、 油圧サーボ 2のシリンダ部 10が形成される。
[0027] また、図 7に詳示するように、該隔壁部材 6bの上記リターンプレート 15の脚部 15b が固定される部分には、ボルト 25 (図 1参照)の貫通する孔であるボルト孔 (被接続部 ) 6bcが、例えば油路等が穿設されているリブ部分 28や入力軸センサー 30を避ける ように周方向不均等な位置 5箇所に形成されている。また、図 1に示すように、該隔壁 部材 6bの前方部分には、偏心したドリブンギヤを有するギヤ式のオイルポンプ 18が
配設されており、そのオイルポンプ 18を収納するポンプボディ 19が、上記周方向不 均等な位置 5箇所のボルト 25により誤組付け不能に位置決めされて固定されている 。なお、従来のようにピストン部材に凸部を設ける場合には、上記リブ部分 28や入力 軸センサー 30を避ける位置に該凸部が形成されることになる。
[0028] 一方、上記リターンスプリング 14は、図 1及び図 2に詳示するように、円筒状の外周 部 14aを形成するコイル状のスプリング力もなり、上記ピストン部材 12と後述するリタ ーンプレート 15との間に、周方向(ω 1— ω 2方向)位置に複数縮設され、該リターン プレート 15の反力を受けて該ピストン部材 12を上記隔壁部材 6b側に付勢して 、る。 このリターンスプリング 14は、例えば従来のリターンスプリングよりも倒れ剛性 (側方か ら加わる力に耐える剛性)が強くなるように構成されている。また、該リターンスプリン グ 14の端部は、該リターンプレート 15に固着されており、このリターンスプリング 14を 取付けたリターンプレート 15が該隔壁部材 6bに対して固着されている。そして、リタ ーンスプリング 14の反対側の端部は、後述する上記ピストン部材 12の把持部 35に 係着 (着座)されている。
[0029] 上記リターンプレート 15は、図 5に詳示するように、基底部 15c、固定部 15a、脚部 15b、接続部 15d、及び爪部 15eで構成されている。該基底部 15cは、該ピストン部 材 12よりも X2方向側にあって、中空円板状に形成されている。該固定部 15aは、該 基底部 15c上で周方向位置に複数設けられ、リターンスプリング 14の端部が固着さ れている。該脚部 15bは、該基底部 15cから内周側で XI方向側に延設されたもので 5箇所形成されている。該接続部 15dは、該脚部 15bの先端部分に形成され、上記 隔壁部材 6bと固着するためのボルト揷通孔であり、該隔壁部材 6bのボルト孔 6bcに 対応する周方向不均等な位置 5箇所になるように形成されている。該爪部 15e、 15f は、該脚部 15bの先端部分のうち 2箇所に設けられた突起部分で、後述するヮッシャ 27の突出部 27b、 27cにそれぞれ対応する位置に形成されている。
[0030] 上記摩擦板 23は、図 1に詳示するように、ミッションケース 6aの内周面に沿うように 配置され、複数の外摩擦板 23aと内摩擦板 23bとで構成されている。該外摩擦板 23 aは、該ミッションケース 6aの内周面とスプライン係合で接続され、該内摩擦板 23bは 、上記変速機構 5のクラッチドラム 38とスプライン係合で接続されて ヽる。
[0031] 上記クラッチドラム 38は、上記ブレーキ機構 B— 1の内周側にあって、隔壁部材 6b に対して回転自在に配設された上記変速機構 5の回転要素の一つであり、変速機構 5のクラッチ C— 3、クラッチ C— 4、及び減速プラネタリギヤ DP等を内包している。
[0032] 上記ヮッシャ 27は、図 1に詳示するように、上述のように隔壁部材 6bの側面 6bb側 で隔壁部材 6bとリターンプレート 15との接続部分の内周側に配設され、クラッチドラ ム 38と該隔壁部材 6b及び該隔壁部材 6b側の非回転部材とが直接接触しないよう構 成されている。また、ヮッシャ 27は、図 6に詳示するように、基底部 27aのほかに外周 部分へ突出した突起部 27b、 27cが形成されている。
[0033] 上記ピストン部材 12は、図 1に詳示するように、概ね該シリンダ部 10の形状に合わ せて X2方向側に内包される形状に形成されており、該シリンダ部 10に対向して上記 隔壁部材 6bに対して XI— X2方向に摺動自在に配設されている。該シリンダ部 10と 該ピストン部材 12との間には、シールリング 31, 32が配設されており、これらシールリ ング 31, 32によってシールされて作動油室 21が形成されている。また、該ピストン部 材 12は、径方向外周側の端部が摩擦板 23を押圧するための円筒状の押圧部 12aと して形成されており、つまり上記作動油室 21の油圧に基づき摩擦板 23を押圧し得る ように構成されている。さらに、該ピストン部材 12の押圧部 12aの下方部分にはブレ ーキ機構 B—1の作動時に上記円筒状の押圧部 12aと上記摩擦板 23とによって形 成された空間に供給される潤滑油を抜くためのドレーン孔 12bが形成されている。な お、該ドレーン孔 12baより排出された潤滑油は、ケース 6の下方に穿設された孔を通 つて該ケース 6の下方に配設されている不図示のオイルパンに導かれる。
[0034] また、図 4に詳示するように、該ピストン部材 12の内周側部分には、上記リターンス プリング 14が係着 (着座)し得る把持部 35が形成されており、該把持部 35は、周方 向(ω ΐ—ω 2方向)位置に形成される複数の丸溝 35aと支持部 35bとで構成されて いる。該丸溝 35aは、リターンスプリング 14のコイル状のスプリング形状に合わせて、 つまりリターンスプリング 14の外周部 14aの形状に合わせた曲面形状力もなる、内周 側の一部が開放された略円筒状の溝状に形成され、該リターンスプリング 14の外周 部 14aが被覆される形状に形成されている。支持部 35bは該リターンスプリング 14の 収縮方向の長さの大部分を覆うように形成されており、該リターンスプリング 14の周
方向に加わる力を支え得る形状となって 、る。
[0035] また、図 5に詳示するように、上記リターンプレート 15には、該リターンプレート 15の 基底部 15cの周方向における例えば 31等分した箇所において、例えば略々対角線 上の 2箇所の係着部分を除く 29箇所に、リターンスプリング 14の係着部分である固 定部 15aが配置されている。つまり、上記固定部 15aの配置であれば点対称な位相 を持たない配置となる。一方、上記把持部 35の丸溝 35aの配置も上述の固定部 15a の配置に対応させた位置となっており、リターンスプリング 14によりピストン部材 12の 位相の位置決めが可能な構成となって 、る。
[0036] ついで、油圧サーボ 2の動作について説明する。油圧サーボ 2において、例えば油 圧制御装置 (不図示)より作動油室 21に作動油が油路 (不図示)を通じて供給され作 動油圧が生じると、ピストン部材 12がリターンスプリング 14の付勢力に反して X2方向 に押圧駆動され、該ピストン部材 12の押圧部 12aが上述した複数の摩擦板 23を X2 方向に押圧し、ブレーキ機構 B— 1が係止状態とされる。また、作動油室 21より作動 油圧が油路 (不図示)を通じて排出されると、リターンスプリング 14の付勢力によって ピストン部材 12が XI方向に押圧されて、該ブレーキ機構 B—1は解放状態とされる。
[0037] 該ブレーキ機構 B—1が係止状態となる際、ピストン部材 12の押圧部 12aは摩擦板 23の外摩擦板 23aと係着して!/、るので、該外摩擦板 23aとミッションケース 6aとのス プライン係合の遊び幅分だけ、該ピストン部材 12にはクラッチドラム 38の回転を係止 しょうとする外摩擦板 23aに引きずられるように回転しょうとする力が加わる。ここで、 上述したように該ピストン部材 12は、把持部 35の各丸溝 35aが各リターンスプリング 1 4の外周部 14aを被覆する形で各リターンスプリング 14を把持しており、該把持部 35 力もリターンスプリング 14の外周部 14aを介してリターンスプリング 14に側方からの力 が加わり、つまり、上述した例えば 29本のリターンスプリング 14のそれぞれに外摩擦 板 23aの回転方向に対応した側方力も力が加わる。しかし、上述した各リターンスプリ ング 14の強く設定された倒れ剛性に基づき、例えば 29本のリターンスプリング 14の 倒れ剛性の合計が該ピストン部材 12を回転させようとする力より大きいため、該ピスト ン部材 12の回転方向の力はそれらリターンスプリング 14の倒れ剛性により支持され 、更にそれらリターンスプリング 14がリターンプレート 15を介して隔壁部材 6bに対し
て回転不能に固着されているため、つまり該ピストン部材 12は該隔壁部材 6b (つまり ケース 6)に対して回転しない。
[0038] 次に、油圧サーボ 2を組立ての状態を図 1乃至図 3に詳示するように説明する。 自 動変速機 1の組立ての場合、油圧サーボ 2を組立てる際には、まず、ケース 6のミツシ ヨンケース 6aに対し、隔壁部材 6bの側面 6bbを上方に向けて開口する状態となるよう に設置し、続けて、該隔壁部材 6bのシリンダ部 10に対し、ピストン部材 12を押圧部 1 2aが上方に開口する状態となるように設置する。さらに、該隔壁部材 6bに対し、ヮッ シャ 27を載置する。また、一方では、上述のリターンプレート 15に全てのリターンスプ リング 14を取付けておく。そして、ピストン部材 12が載置されている隔壁部材 6bに、 上方よりリターンプレート 15及びリターンスプリング 14のセットをリターンスプリング 14 と把持部 35との周方向位置を位置合わせしつつ、載置,挿入し、ボルト 25により接続 部 15dを固着させる。
[0039] また、上記ピストン部材 12と上記リターンスプリング 14との組付けの際には、上述の ような構成により、該ピストン部材 12の把持部 35と該リターンスプリング 14との位相が 合わない状態では、リターンスプリング 14が把持部 35の支持部 35bに乗り上げてし まうため、組付けることができない。さらに、該リターンスプリング 14が組付けられたリ ターンプレート 15の接続部 15dと隔壁部材 6bのボルト孔 6bcとは、互いに対応した 周方向不均等な位置に配置されて 、るので、所定の位相でしか組付けることができ ない。即ち、該把持部 35と該リターンスプリング 14との位相を合わせ、該リターンプレ ート 15と該隔壁部材 6bとの位相を合わせると、該ピストン部材 12は該ピストン部材 1 2のドレーン孔 12bが下方に位置するように形成されているので、必ず該ドレーン孔 1 2bが下方に位置するように組み付けられる。
[0040] なお、隔壁部材 6bとリターンプレート 15とはボルト 25により固着されている力 該ボ ルト 25は、周方向不均等な位置 5箇所でオイルポンプ装置 18のポンプボディ 19の 位置決めも兼ねている。
[0041] さらに、図 3に詳示するように、リターンプレート 15の爪部 15eは、ヮッシャ 27の突起 部 27bの一部と XI方向視でオーバラップするように組み付けられる。また、同様に爪 部 15fは、突起部 27cとオーバラップするように組み付けられる。これにより、突起部 2
7b、 27cは隔壁部材 6bと爪部 15e、 15fとの間にそれぞれ挟持されることになり、クラ ツチドラム 38の組付けの際にも、衝撃や振動等でヮッシャ 27が所定位置よりずれて 組み付けられる、所謂誤組付けをすることがな 、。
[0042] 以上のように本発明に係る油圧サーボ 2によると、リターンプレート 15は、複数のリタ ーンスプリング 14の一端を位置決め固定する固定部 15aを有し、ピストン部材 12は、 該複数のリターンスプリング 14を軸方向(XI—X2方向)に対して収縮自在に、かつ 回転方向に対して把持する把持部 35を有するので、該ピストン部材 12は凸部を備え てなくても該リターンプレート 15に対して回転してしまうことを防ぐことができ、該ピスト ン部材 12に凸部を備えることを不要とすることができる。これにより、ピストン部材 12 の铸造性の向上、部品点数増加の防止、及び製造工程の簡略ィ匕を図ることができる
[0043] また、ピストン部材 12の把持部 35は、複数のリターンスプリング 14の外周部 14aを それぞれ被覆する複数の丸溝 35aを備えて 、るので、該ピストン部材 12は該複数の リターンスプリング 14をより確実に把持することができる。
[0044] また、リターンプレート 15は、固定部 15aを周方向(ω ΐ—ω 2方向)における不均 等位置に有し、把持部 35の複数の丸溝 35aは、該不均等位置にある該固定部 15a に固定された該複数のリターンスプリング 14に対応する位置に備えられているので、 ピストン部材 12にリターンスプリング 14を組付ける際に、位相がずれた位置では組付 けることができず、誤組付けを防止することができる。
[0045] またピストン部材 12は、摩擦板 23を押圧し得る円筒状の押圧部 12aと、該押圧部 1 2aに内部の潤滑油を排出し得るドレーン孔 12bと、を有しているので、ピストン部材 1 2が摩擦板 23を押圧した際にあっても、該ピストン部材 12と該摩擦板 23とで閉塞さ れた空間に供給される潤滑油を排出させることができる。
[0046] また、リターンプレート 15は、隔壁部材 6bの側面 6bbに固定される脚部 15bと、該 脚部 15bより延設され、該脚部 15bを該隔壁部材 6bの側面 6bbに固定した際にヮッ シャ 27の突起部 27b、 27cを該隔壁部材 6bの側面 6bbとの間に挟持する爪部 15e、 15fを有しているので、該リターンプレート 15はリターンスプリング 14を固着させてい るものでありながら、該ヮッシャ 27を該隔壁部材 6bとの間に挟持することができる。
[0047] なお、以上説明した本実施の形態にお!、ては、有段自動変速機用の多板式ブレ ーキ用油圧サーボとして説明したが、例えば無段変速機やハイブリッド車用駆動装 置等であってもよぐ本発明を適用し得る多板式ブレーキ用油圧サーボを備えたもの であればどのような駆動伝達装置であっても適用可能である。
[0048] また、把持部 35の丸溝 35aは、溝部として説明した力 例えばリターンスプリング 14 の外周部 14aを全て被覆するような穴部としてもよぐまた、四角等の多角形な形状 の溝部としてもよぐ上記した効果と同様な効果が得られるものであれば、どのような 形状であってもよい。
[0049] また、ヮッシャ 27の突起部 27b、 27cは、 2箇所に形成するように説明した力 上記 した効果と同様な効果が得られるものであれば、何箇所形成しても構わな 、。
[0050] また、リターンプレート 15の脚部 15bは、隔壁部材 6bにボルト 25により固着するよう に説明したが、溶接等で固着させてもよぐ上記した効果と同様な効果が得られるも のであれば、どのように固着されてもよい。
産業上の利用可能性
[0051] 本発明に係るブレーキ用油圧サーボ、及びそれを備えた自動変速機は、乗用車、 トラック、バス、農機等に搭載される自動変速機に用いることが可能であり、特にブレ ーキ用油圧サーボにお 、て、ピストン部材の回転を防止することが要求されて 、るも のに用いて好適であって、該ブレーキ用油圧サーボにおける部品点数増加の防止 や製造工程の簡略ィ匕等が要求されるものに適している。