明 細 書
ガラス物品の製造方法
技術分野
[0001] 本発明は、ガラス物品の製造方法に関し、特に、残留する泡の少ないガラス物品を 製造する方法に関する。
背景技術
[0002] たとえばケィ酸塩ガラスは、建物や自動車等の窓ガラスとして広く利用されている。
また近年では、液晶表示装置など表示装置の基板や、ハードディスクドライブなど情 報記録媒体の基板としても、利用されるようになって 、る。
[0003] それらの用途で共通するのは、ガラスの均質な特性を利用することである。ただし、 ガラス内部に泡が残っていると、特性の均質性が損なわれてしまう。その結果、窓ガ ラス用途では外観不良など、表示装置の基板用途では表示不良など、情報記録媒 体の基板用途では記録不能領域などの欠陥が生じる。したがって、ガラス内部に残 留する泡を、最小限のコストで実用上差し支えない程度まで減少させることが、強く求 められている。
[0004] 現在、ガラス内部に残留する泡を少なくする技術が各種開発され、実用に供されて いる。その技術は大別して 3つに分けられる。
[0005] 一つめの技術は、清澄剤の使用である。清澄剤とは、ガラスバッチ中に添加してお くと、そのノツチを熔融したとき、泡の少ない、もしくは泡のないガラス融液が得られる 効果をもたらす添加剤である。清澄剤により泡が減少するのは、原料が熔融してガラ ス化するときの発生ガスをガラス融液力 追い出す効果と、ガラス融液の脱泡 ·均質 化が進む過程で融液中の微小な泡を大きく成長 ·浮上または吸収させて除去する効 果とによる。したがって、清澄剤は、ガラス化反応の始まる比較的低い温度領域と、ガ ラス融液の脱泡 ·均質ィ匕が起こる比較的高 、温度領域とにお 、て、ガスを発生させる ことが望ましい。清澄剤としては、酸化ヒ素、酸ィ匕アンチモン、フッ化物や硫酸ナトリウ ムが周知である。
[0006] 二つめの技術は、ガラス融液の脱泡である。これは、ガラス融液の中にある泡を、浮
力によって液面まで浮上させ、液面で泡を破裂させることによって、泡を減らす方法 である。泡の浮上速度が速いほど、脱泡の効果は向上する。浮上速度は、 Stokesの 法則によって支配され、泡の直径の 2乗に比例し、融液の粘度に反比例する。
[0007] ところで、ガラス融液を得る方法として、ガラス粒やガラス粉カゝらなるバッチを熔融す る方法がよく知られて 、る。このようなガラス粒やガラス粉は一般にカレットと呼ばれる 。この方法は、光学ガラス物品の製造時によく採用される。光学ガラス物品は、脈理 が極端に少ないことが必要であり、カレットを熔融してガラス融液を得る方法は、脈理 の低減に効果的である、と考えられている。
[0008] また、脱泡を促進することを目的としてカレットを用いる方法力 たとえば、特開昭 6 0—46944号公報に開示されている。この公報では、カレットの少なくとも 10重量% 力 粒径 0. 3mm以下の微細粒径カレットになるようにカレットを調製するガラスの製 造方法が開示されている。
[0009] また、小さな粒径力もなるガラス原料を熔融する方法力 たとえば、特開 2000— 29 0042号公報〖こ開示されている。この公報では、平均粒径が 5〜 15 mにあるジルコ ンと、平均粒径が 5〜 150 mにある石粉とを調製したバッチを熔融するガラスの製 造方法が開示されている。
[0010] 三つめの技術は、リボイルの抑制である。リボイルとは、ー且清澄したガラス融液が
、再度発泡する現象である。これは、ガラス中に溶存するガス成分の溶解度の温度な どに対する依存性が原因で起こる。
発明の開示
[0011] しかし、従来行なわれてきた残留泡の低減技術には、以下のような問題点があった
[0012] 上述した、特開昭 60— 46944号公報に開示された製造方法の場合、その微細粒 径カレットの粒径は小さい方が好ましいとされている。し力し、カレットの粒径が小さす ぎると、混合や輸送時に細粒が飛散しやすくなり、粉塵を発生しやすくなる。粉塵が 発生すると、ガラス原料に対するガラス物品の収率が低下する。また、そのカレットの 単位重量当りの表面積が増加するので、吸湿しやすくなつたり固化しやすくなつたり する。その結果、秤量に誤差が生じ、結果的に製品のガラス組成が所望の値から乖
離したりする問題がある。
[0013] また、特開 2000— 290042号公報に開示された製造方法の場合にも、ガラス原料 の粒径が小さいことに起因した問題点が存在する。さらに、これらガラス原料の粒径 は前述の微細粒径カレットよりさらに小さ 、ため、ボールミルでの粉砕工程中にガラス 原料同士の会合が起こり、バッチの中での場所の違いによる組成の揺らぎが大きくな る、という問題点もある。
[0014] これらの状況に鑑み、本発明は、安価かつ容易に脱泡清澄が行なえるとともに、残 留する泡の少な!ヽガラス物品を製造する方法の提供を目的とする。
[0015] 本発明者らは、カレットを熔融するガラス物品の製造方法に関して鋭意研究努力を 重ねた。その結果、カレットに含まれている所定粒径未満のガラス粒子力 ガラス融 液の清澄を大きく妨げていることを解明した。
[0016] 通常、カレットには様々な大きさのガラス粒子が含まれている。そのうち、粒径の小 さいガラス粒子は、熔融工程に投入したとき、大気や溶解反応で発生したガスを巻き 込む傾向が強い。そのため、粒径の小さいガラス粒子は、熔融初期段階で、より多く の細か!/、泡を発生させてしまう。
[0017] ガラス融液中の泡は、液面まで浮上 L¾裂することで除去される。しかし、泡の大き さが小さいほど、浮上 L¾裂するのに要する時間は長くなる。ガラス物品の製造工程 においては、ガラスが熔融している時間は有限であるので、小さい泡ほど結果として
、製品内に残留しやすくなる。
[0018] そこで、ガラス物品の製造工程に、カレットを分級して所定粒径未満のガラス粒子 の含有率を減少させる工程を含めてみたところ、想像以上の優れた効果が得られた
[0019] すなわち、本発明のガラス物品の製造方法は、カレットに含まれる所定粒径未満の ガラス粒子の含有率が減少するようにカレットを分級して分級カレットを得る工程と、 分級カレットからなる熔融用バッチ、または分級カレットとカレット以外のガラス原料と 力 なる熔融用バッチを熔融する工程と、を含む。
[0020] 本発明のガラス物品の製造方法によれば、泡などの欠点が少な!/、ガラス物品を、 容易かつ小さな環境負荷で提供することができる。なぜなら、本発明のガラス物品の
製造方法では、カレットに含まれる粒径の小さい画分を、ある程度以上除去する工程 を含むだけで、熔融時の泡抜けを改善できるからである。したがって、減圧などの特 殊な清澄技術を用いなくても、高い泡品質のガラス物品を製造できる。また、ヒ素など の環境負荷の大き!、清澄剤の使用量を低減できる。
図面の簡単な説明
[0021] [図 1]図 1は、残留気泡個数のカウント結果を示す第一のグラフである。
[図 2]図 2は、残留気泡個数のカウント結果を示す第二のグラフである。
[図 3]図 3は、残留気泡個数のカウント結果を示す第三のグラフである。
発明を実施するための最良の形態
[0022] 本明細書中において「熔融用バッチ」という用語は、下記 (a) (b)の 2通りの意味で 用 、ることとする。
(a)工業原料や天然鉱物などのカレット以外の通常のガラス原料と、分級カレットとを 必要な組成比〖こなるように秤量および混合したもの。
(b)分級カレットそのもの。
[0023] 上記 (a)の場合は、カレットを分級する分級工程と、熔融用バッチを熔融する熔融 工程との間に、ガラス原料と分級カレットとを秤量および混合して熔融用バッチを調 製する熔融用バッチ調製工程を行うこととなる。
[0024] また、「分級」とは、一般に固体粒子群を粒子の個性によって区分けすることをいう。
粒子の大きさ、形状、比重、表面形状、化学成分、磁性、帯電性、色などの種々の性 質によって区分けすることができるが、大きさによる区分け (粒度分級)が基本である。 本明細書中にぉ 、ても「分級」は「粒度分級」を意味するものとする。
[0025] また、カレットを分級する分級工程は、 1000 μ m未満の粒径を有するガラス粒子の カレットにおける含有率が減少するように実施することが望ま 、。このようにすれば、 熔融用バッチの熔融初期段階で、細か 、泡が発生することを十分に抑制できるよう になり、熔融時の泡抜けを改善する高い効果を得られる。
[0026] より好ましくは、 1000 μ m未満の粒径を有するガラス粒子の含有率を質量%表示 で 10%以下とすることである。
[0027] また、カレットを分級する分級工程にぉ 、て、所定粒径未満 (たとえば 1000 μ m未
満)のガラス粒子を実質的に除去することが望ましい。 "実質的に除去する"とは、ェ 業的に可能な範囲内で除去することを意味する。分級によって得られる分級カレット における、所定粒径未満のガラス粒子の含有率が、たとえば 2質量%未満 (好ましく は 1質量%未満)である場合には、 "実質的に除去されている"と考えて差し支えない
[0028] また、所定の上限値以上の粒径を有するガラス粒子をカレットから実質的に除去す ることにより、目的とする分級カレットを得るようにしてもよい。粒径の極端に大きいガ ラス粒子が分級カレットに含まれる場合には、ガラス原料と分級カレットとを混合して 熔融用バッチとするときに混合が不十分になったり、熔融用バッチを熔融炉に供給す る装置が目詰まりを起こしたりする可能性がある。したがって、極端に粒径の大きいガ ラス粒子を除去する操作を行うことが望ましい。具体的には、 100mm角以上のガラ ス粒子を除去するのがよい。より好ましくは、 50mm角以上のガラス粒子を除去するこ とである。なお、後述する実施例で、例えば 2800 /z mや 5700 /z mより粒径が大きい ガラス粒子を除去しているのは、大きいガラス粒子がボートに入らないからである。本 発明を商用のガラス熔融窯に適用する場合には、例えば 100mm角を超えるような 巨大な粒子を除去すれば十分である。
[0029] また、本発明の製造方法を好適に採用できるガラス物品は、ケィ酸塩ガラス組成物 からなるガラス物品でありうる。具体的には、質量%表示で下記の組成を持つケィ酸 塩ガラス組成物を例示できる。なお、下限値にゼロを含む成分は、任意成分であるこ とを断っておく。
[0030] (第一組成)
SiO 65〜80%,
2
Al O 0〜5%,
2 3
Na O 10〜18%,
2
K O 0〜5%,
2
MgO 0〜: L0%,
CaO 5〜15%,
その他成分 0〜5%
[0031] (第二組成)
SiO 52〜73%,
2
Al O 6〜17%,
2 3
Li O 3〜8%,
2
Na O 7〜22%,
2
K O 0〜3%,
2
MgO 0. 06〜4%,
CaO 0. 8〜8%,
その他成分 0〜5%
[0032] (第三組成)
SiO 50〜70%,
2
Al O 0. 5〜10%,
2 3
ZrO 0〜5%,
2
TiO 0〜0. 1%,
2
Na O 1. 5〜5%,
2
K O 5〜15%,
2
MgO 0. 1〜: L0%,
CaO 1〜15%,
SrO 0〜15%,
BaO 0. 1〜10%,
R O 6. 5〜16. 5%,ただし R 0=Na O+K O,
2 2 2 2
MO 10〜25%,ただし MO = MgO + CaO + SrO + BaO その他成分 0〜5%
[0033] (第四組成)
SiO 40〜70%,
2
Al O 5〜20%,
2 3
B O 5〜15%,
2 3
MgO 0〜5%,
CaO 0-、10%,
SrO 0- -10%,
BaO 0- -30%,
ZnO 0- 、5%,
Li O 0〜 0. 5%,
2
Na O 0 -0. 5%,
2
K o 0ハ -0. 5%,
2
R O 0- -0. 5%,ただし R O =Li OH -Na O fK o,
2 2 2 2 2
MO 5 〜30%,ただし MO = = MgO- hCaO^ SrO +
その他成分 0〜5%
実施例
[0034] [第一実施例]
第一実施例は、所定粒径未満の画分をカレットから除去した分級カレットを、熔融 工程に供する熔融用バッチとして用いることにより、ガラス融液の清澄性を高め、泡 品質に優れたガラス物品を製造する方法を示すものである。
[0035] (カレット作製工程)
表 1に示す組成のカレットを以下の工程により作製した。まず、通常の工業原料や 試薬を出発原料として用いて、ノ ツチを調製した。そのノ ツチを白金ルツボに入れ、 雰囲気温度を 1450°Cに保った電気炉の中で熔融した。ガラス融液をその電気炉の 中に 2時間保持し、ある程度の清澄を行なった。清澄したガラス融液を、巿水を入れ たステンレス製バケツの中に流し込んだ。このとき、ガラス融液の流れを幅 lcm程度 とし、かつガラス融液の流れが途切れないように、また流し込んだガラス融液が一ヶ所 に固まらないようにした。こうすること〖こよって、ガラス融液を急激に冷却して、粒径が 8mm程度以下の細片に破砕された水砕カレットを得た。この水砕カレットを乾燥し、 分級工程に供するカレットを得た。
[0036] (分級工程)
こうして得たカレットを日本工業規格 CFIS) Z8801 (1987)に規定の標準篩にかけ た。まず、 目の開き力 700 mの篩〖ここのカレットを力 4ナ、篩を通過した画分のみを
回収することによって、カレットから粒径の極端に大きなガラス粒子を除去した。次に
、 目の開きが 5700 /z mの篩を通った画分を、表 2に示す通り、 目の開き力 800 m 、 1700 /ζ πι、 1000 /z mまたは 600 /z mの箭に力け、各箭に残った画分を分級力レツ トとした。 f列えば、、表 2中に示す試料 No. 1は、 2800 /z m以上 5700 m未満の粒径 を有したガラス粒子カゝらなる分級カレットを用いて作製した試料である。なお、試料 N o. 5は、 目の開きが 2800 mの篩を通った画分の全て、つまり粒径の大きいガラス 粒子は除去して!/ヽるが、粒径の小さ ヽガラス粒子 (所定粒径未満のガラス粒子)を除 去して!/ヽな ヽ非分級カレットを用いて作製した試料である。
[0037] なお、分級工程における篩がけの順序は上記の順序に限定されない。つまり、 目の 開きが小さい篩にカレットをかけて小さい粒径のガラス粒子を除去した後、その篩に 残った画分を目の開きが大きい篩にかけて大きい粒径のガラス粒子を除去し、 目的 とする分級カレットを得るようにしてもょ 、。
[0038] (熔融工程および冷却工程)
分級カレットを 30g量り取り、内法寸法が長さ 200 X幅 10 X深さ 10 (単位: mm)の 白金製のボートに敷き詰め、このボートを温度勾配炉に挿入して、分級カレットを熔 融した。この分級カレットは、温度勾配炉内で、ボートの長手方向に沿って最高 142 0°C、最低 1160°Cに保たれて熔融される。温度勾配炉内でボートを 2時間静置して 充分に分級カレットを熔融したのち、炉内からボートを取り出してガラス融液を急冷し 固化させた。このようにして熔融工程および冷却工程を行い、長手方向に沿って熔 融温度 (熔融工程実施時の保持温度)の異なる棒状のガラス試料 No. 1〜4を得た。 同様にして、非分級カレットからガラス試料 No. 5を得た。なお、本実施例では、ガラ ス融液のごく近傍の雰囲気温度を熔融温度として測定した。
[0039] (気泡のカウント)
このガラス試料を倍率 30倍の実体顕微鏡で観察し、試料の長手方向に沿った各 部分でガラス内部に残留している泡の個数をカウントした。この残留泡個数は、熔融 工程実施時における特定の温度を中心として ± 5°Cの範囲、つまり長手方向の特定 の位置を中心として ± 5mmの範囲に含まれている泡の個数とした。なお、このように して求めた残留泡個数は、異なる条件で作製した試料の間で清澄性を比較するため
の指標として用いることができ、実際の生産のための判断材料としても用いることがで きる。なお、ボート内におけるガラス融液の温度勾配は一定ではなぐ低温側では温 度変化が急峻になっていた。具体的には、 1320〜1420°Cでは約 CZmmの温度 勾配を示した。他方、 1320°C未満では、 1. 5〜1. 6°CZmmと温度勾配が大きぐ 最低温度が 1160°Cとなった。
[0040] 使用した篩の目の開き、熔融温度および残留泡個数の関係を表 2に示す。表 2をグ ラフ化して図 1に示す。ガラス試料 No. 1とガラス試料 No. 5とを比較すると、粒径の 小さいガラス粒子を除去した分級カレットで作製したガラス試料 No. 1では、残留泡 個数が少なぐ両者に顕著な差が現れた。また、ガラス試料 No. 1〜4を比較すると、 ガラス試料 No. 3とガラス試料 No. 4の間で残留泡個数が大きく変化している。このこ とより、 目の開き 1000 /z mの篩を通過する粒径の小さいガラス粒子をカレットから除 去することによって、熔融後の残留泡個数が大幅に減少することが分かる。このように 、本実施例によって、清澄性が向上していることが示され、この結果から、大量生産 時にお 、ても、泡品質に優れたガラス物品を製造できることが示される。
[0041] [表 1]
[0043] [第二実施例]
第二実施例は、初期のカレットよりも所定粒径未満のガラス粒子の含有率を減じた 分級カレットを、熔融工程に供する熔融用バッチとして用いることにより、ガラス融液 の清澄性を高め、泡品質に優れたガラス物品を製造する方法を示すものである。
[0044] (カレット作製工程)
まず、ソーダライムガラス組成の水砕カレットを入手した。このカレットは、板ガラスを 商業的に製造するためのガラス熔融窯で熔融されているガラス融液を、巿水を溜め た水槽に流し込んで冷却'固ィ匕 '破砕することで作製されたものである。このカレット の最大粒径は 8mm程度である。入手したカレットは湿っていたので、篩い分けをしや す 、ように乾燥させ、分級工程に供するカレットを得た。
[0045] (分級工程)
次に、以下の分級工程を実施して分級カレットを得た。分級工程では、第一実施例 と同様、 JIS標準篩を用いた。まず、目の開きが 2800 mの篩にカレットをかけて、大 きい粒径のガラス粒子が除去された画分である基本画分を得た。次に、その基本画 分を、目の開き力 SlOOO /z mの箭に力けた。このようにして、目の開き力 2800 /ζ πιの 篩を通過し、かつ目の開きが 1000 mの篩に残った画分である第一画分と、 1000 μ mの篩を通過した画分である第二画分とを別々に集めた。第一画分と第二画分と の質量比率は、 88 : 12であった。
[0046] さらに、第一画分と第二画分とを混合した。混合比率は、表 3の試料 No. 6〜12に 示す通りとした。試料 No. 6は、分級カレットとして第一画分だけを用いて作製したガ ラス試料である。試料 No. 7, 8は、第二画分の含有率を基本画分よりも減じた分級
カレットを用いて作製したガラス試料である。他方、試料 No. 9〜12は、第二画分の 含有率が基本画分よりも大き!/、逆分級カレットを用いて作製したガラス試料である。
[0047] (熔融工程および冷却工程)
上記のようにして得た分級カレットを熔融用バッチとして用い、ガラス試料 No. 6〜8 を作製した。また、逆分級カレットからガラス試料 No. 9〜12を作製した。試料を得る ための熔融工程および冷却工程では、第一実施例と同じボートを用い、かつ同じ条 件で熔融および冷却した。ガラス試料の評価は第一実施例と同じ方法で行ない、熔 融温度 1400°C ± 5°Cの範囲で熔融したガラスの残留泡の個数をカウントした。
[0048] 目の開きが 1000 μ mの篩を通るガラス粒子 (第二画分)の含有率、熔融温度およ び残留泡個数の関係を表 3に示す。表 3をグラフ化して図 2に示す。表 3および図 2に 示すごとぐ 1000 μ m未満の粒径を有するガラス粒子の含有率を 10質量%以下に すると、その含有率が 30質量%以上の場合と比較して、残留泡個数が大幅に減少し た。このように、本実施例によっても、清澄性が向上していることが示された。この結 果から、大量生産時においても、泡品質に優れたガラス物品を製造できることが示さ れた。
[0049] [表 3] 含有率 Z質量%
1400°C、2h 目の開きが
目の開きが 熔融後の
2800 mの篩を通り、
1000 jt mの篩を通る 残留泡個数
1000 mの篩に残る
ガラス粒子 Z個
ガラス粒子
試料 (第二画分)
(第一画分)
No.6 100 0 194
No.7 95 5 218
No.8 90 10 219
No.9 70 30 373
No.10 60 40 388
No.1 1 50 50 395
No.12 0 100 381
[0050] なお、第二実施例では、第一画分と第二画分とを適宜混合することによって熔融用 バッチを得たが、第二画分に代えて、あるいは第二画分とともに工業原料や天然鉱 物などのガラス原料を、第一画分と混合して、熔融用バッチを得るようにしてもよい。
[0051] [第三実施例]
表 4に示すガラス組成のカレットを用い、第二実施例と同一手順にて、表 5に示すガ ラス試料の作製および評価を行った。ただし、ガラス融液は高温側が 1480°C、低温 側が 1250°Cとなるように温度調節した。大き!/、粒径のガラス粒子を除去した基本画 分を構成する第一画分と第二画分との質量比率は、 83 : 17であった。つまり、ガラス 試料 No. 13, 14が、分級カレットを用いて作製したガラス試料であり、ガラス試料 No . 15〜17は、逆分級カレットを用いて作製したガラス試料である。残留泡個数は、熔 融温度 1450°C±5°Cの範囲と、熔融温度 1400°C±5°Cの範囲について、それぞれ カウントした。結果を表 5および図 3 (表 5をグラフ化したもの)に示す。
[0052] [表 4]
[0053] [表 5]
含有率/質量%
1450°C、2h 1400°C、2h 目の開きが
目の開きが 熔融後の 熔融後の 2800 / mの篩を通り、 1000 mの篩を通る 残留泡個数 残留泡個数 1000 i mの に残る
ガラス粒子 ノ個 個 ガラス粒子
試料 Νο\ (第二画分)
(第一画分)
Νο.13 100 0 183 328
Νο.14 95 5 196 367
Νο.15 70 30 577 728
Νο.16 50 50 638 875
Νο.17 0 100 1083 1392
[0054] 表 5および図 3から明らかなように、 1000 m未満の粒径を有するガラス粒子の含 有率を減ずることにより、残留泡個数が大幅に減少した。
[0055] ところで、分級カレットと、カレット以外のガラス原料との混合物を熔融用バッチとす る場合、その熔融用バッチにおけるガラス原料の質量比率は、例えば、 0質量%を超 え 85質量%未満とすることができる力 好ましくは 50質量%以下、さらに好ましくは 2 0質量%以下とすることができる。分級カレットの割合が大きいほど残留泡の少ない 良質なガラスを製造することが可能であるが、生産コストの高騰を招く可能性がある。 他方、分級カレットの割合を小さくすれば生産コストを低く抑えることが可能であるが、 残留泡を低減する効果を得に《なる。
[0056] また、上述した各実施例では、カレットの分級に JIS標準篩を用いたが、それに限定 されることはなく、各種の篩を用いて篩い分けることができることはもちろんのこと、サ イクロンなどの乾式分級法や沈降法などの湿式分級法を用いることができる。
[0057] なお、上述した分級工程からは、粒径の小さなガラス粒子力 なるカレットが副生成 物として生じる。この粒径の小さなカレットは、カレット自身を製造する際にバッチに混 合して熔融すると、ノ ツチの熔融性やガラス融液の均質性を向上させることができる。 つまり、分級工程で副生する粒径の小さなカレットは、カレット自身の製造に有効活 用することができる。また、粒径の極端に大きなガラス粒子についても、これを再粉砕 して分級カレットの作製に供することができる。