WO2004060995A1 - フッ素樹脂組成物 - Google Patents

Abstract

　潤滑性および耐熱性を保持した上に、さらに耐摩擦摩耗性および耐圧縮クリープ性に優れた摺動部品の成形に適した樹脂組成物を提供する。　テトラフルオロエチレン重合体、酸化亜鉛ウイスカー、および平均粒径が２００μｍ以下の粒状および／または平均繊維長が５００μｍ以下の繊維状の充填剤とからなるフッソ樹脂組成物である。　酸化亜鉛ウイスカーとしては、テトラポット形状を有するものを含有していることが好ましく、また充填剤としては炭素繊維、コークス粉、グラファイト粉、ブロンズ粉、銅粉、酸化亜鉛粉末、タルク、ガラス繊維からなる群から選ばれる少なくとも１種の物質が好ましい。

Description

明細書 フッソ樹脂組成物 技術分野

本発明は、 摺動性機械部品等の成形に適したフッソ樹脂組成物に関する。 よ り詳細には、 潤滑性を有し、 かつ耐摩擦摩耗性おょぴ耐圧縮クリープ性に優れ たフッソ樹脂組成物に関する。 背景技術

コンピュータ関連 β、 事務用機器、 あるいはオーディオビジュアル関連機 器等の精密機械分野では、 ギヤ一、軸受、 ベアリング、 スリープ、 ロール、 レ ール等の機械部品に摺動性のあるプラスチック製品が多く使われている。 従来 そのような摺動部品は、 ポリオレフイン、 ポリアミド、 フッソ樹脂、 A B S樹 脂、 ポリフエ-レンサルファイド等の熱可塑性樹脂、 あるいはエポキシ樹脂や フエノール樹脂等の熱硬化性樹脂、 さらにはそれらにガラス繊維、 炭素繊維、 マイ力等の充填剤を配合した樹脂組成物を原料に用いて成形し、 各種形状の製 品が製造されて来た。

しかしながら、 それらの部品の使用条件が厳しくなるにつれて、 潤滑性ゃ耐 熱性を備えた上に、 より摩擦摩耗しにくく、 また高いストレス下でも変形し難 い部品が求められてきている。 その一つとして、 日本特許第 3 0 4 1 0 7 1号 公報には、 酸ィ匕亜鉛ウイスカーを充填剤として含む樹脂組成物が、 静電気拡散 性およぴ摺動性に優れていることから、 電気部品等の成形材料に使用できる旨 の記載がある。 しかしながら、 耐摩耗性および耐圧縮クリープ性と言う観点か らみると、 その成形品にはより一層の改良が望まれている。 発明の開示

本発明は、 潤滑性おょぴ耐熱性を保持した上に、 さらに耐摩擦摩耗性おょぴ 耐圧縮クリープ性に優れた摺動部品等の成形に適した樹脂組成物の提供を目的 にする。

本発明は、 テトラフルォロエチレン重合体、 酸化亜鈴ゥイスカー、 およぴ平 均粒径が 2 0 0 m以下の粒状おょぴ Zまたは平均繊維長が 5 0 0 m以下の 繊維状の充填剤とからなるフッソ樹脂糸且成物に関する。

この組成物において、 前記のテトラフルォロエチレン重合体が 2 0〜9 0重 量⁰ん 酸化亜鈴ゥイスカーが 5〜 4 0重量 °ん および充填剤が 2〜 4 0重量％ の割合で含有されている （ここで、前記 3成分の合計量が 1 0 0重量％になる） 組成物は、 好ましレ、態様である。

このような樹脂組成物は、 潤滑性、 耐熱性、 耐摩擦摩耗性おょぴ耐圧縮クリ ープ性に優れた組成物である。 発明を実施するための最良の形態

本発明は、 テトラフルォロェチレン重合体、 酸化亜鉛ゥイスカー、 および平 均粒径が 2 0 0 m以下の粒状および/または平均繊維長が 5 0 0 m以下の 繊維状の充填剤とからなるフッソ樹脂組成物を提供する。

本発明に用いられるテトラフルォロエチレン重合体は、 テトラフルォロェチ レン （T F E) の単独重合体、 または T F Eとそれと共重合可能なモノマーを 1 . 0重量％以下の割合で共重合したテトラフルォロエチレン共重合体である。 そのようなコモノマーの例として、 へキサフルォロプロピレンのような炭素数 3〜6のパーフルォロアルケン、 パーフノレオ口 （プロピルビュルエーテノレ） の ような炭素数が 1〜 6のアルキル基を有するパーフルォロ （アルキルビュルェ 一テル）、 あるいはクロ口トリフルォロエチレン等を挙げることができる。 T F Eの単独重合体おょぴ前記した共重合体は、 高融点を有することから、 いず れも通常の成形条件下では溶融加工性を有さない。

テトラフルォロエチレン重合体は、 圧縮成形等の手段で成形可能な分子量を 有している限り、 摺動部品、 電気電子部品、 パッキング材等の成形材料として 使用することができる。 例えば、 分子量の代わりに融点でその性状を表すと、 融点が約 3 2 7 °Cの重合体は、 機械的強度および耐熱性が良好な摺動部品等用 の成形樹脂として好適に使用することができる。

また、 このテトラフルォロエチレン重合体は、 通常パウダー状態で各種製品 の成形に使用され、 その平均粒径は 1 0 0 m以下、 好ましくは 5〜 1 0 0 m、 より好ましくは 1 0〜 5 0 μ mの範囲が望ましい。 平均粒径が前記の範囲 にあるテトラフルォロェチレン重合体は、.酸化亜鉛ゥイスカーおよび各種充填 剤との均一混合性に優れている。そのようなテトラフルォロエチレン重合体は、 懸濁重合法または乳ィヒ重合法によって直接パウダー状に製造することができる し、 また重合後一且ペレツトにしてから平均粒径を 1 0 0 m以下に粉碎した ものであってもよい。 また、 前記した平均粒径を有しているものであれば、 市 販のモールディンググレードのパウダーを使用することもできる。

本発明の酸ィ匕亜鉛ウイスカ一は、 特にその製造方法や形状が限定されるもの ではない。 その一例を挙げると、 表面に酸化膜が形成された金属亜鉛粉末を、 酸素を含む雰囲気下で加熱処理することによって製造することができる。 得ら れたゥイスカーは中心部から 4方向へ向けて （例えば四面体の中心から 4つの ΐί点方向に向けて） 針状結晶が延びた、 いわゆるテトラポット （tetrapod) 状 の形状を呈している。 その針状部分の長さは、 好ましくは 3〜2 0 0 ιη、 ま た針状部分の基部径は、 好ましくは 0 . 1〜 1 0 ^ mである。

このようなテトラポット状ゥイスカーを含有した酸化亜鉛ウイスカ一は、 樹 脂組成物を構成する各成分と混合する際にあるいはその樹脂組成物の成形加工 時に、 針状部分が部分的に破損しても、 最終的な成形品の潤滑性、 耐摩耗性、 あるいは耐圧縮クリープ性等の物性への影響はほとんど見られないので好まし い。

また、 酸化亜 i&ウイスカ一は、 その表面がシラン系、 クロム系、 あるいはチ タン系カップリング剤によって処理されていてもよレ、。 特にシラン系カツプリ ング剤によって酸ィ匕亜鉛ゥイスカーが表面処理されていると、 ポリテトラフル ォロエチレン重合体粒子中への分散性を向上させることができる。 そのような テトラポット状の酸ィ匕亜鉛ウイスカ一は、 例えば松下産業情報機器株式会社よ り商品名パナテトラの名称で市販されており、 容易に入手し利用することがで さる。

前記した酸ィヒ亜鉛ウイスカ一は、 その特異な形状によって三次元的に強ィ匕さ れた異方性の少ない組成物の形成に寄与し、 その組成物からは寸法安定性が良 好な成形品を製造することができる。

また酸化亜鉛ウイスカ一は、 それ自身良好な導電性および熱伝導性を示すの で、 得られた成形品を摺動させた時に発生する摩擦熱を効果的に放散させるこ とができる。 このような酸ィヒ亜鉛ウイスカーが有する特性が、 併用する他の充 填剤が有する諸特性と組み合わされて相乗効果を発揮し、 成形品の耐摩擦摩耗 性や耐圧縮クリープ性を高めるものと思われる。

さらに、 酸化亜鉛ウイスカ一は、 そのモース硬度が約 4であって、 比較的軟 らかい材料であることから、 相手軟質材料の摩耗を低減させ、 かつ自己摩耗も 低減し、 その上組成物のはみ出し変形に起因する損傷等による機能低下も防止 することが可能になる。

本発明において、 酸化亜鉛ウイスカーと共にテトラフルォロエチレン重合体 に配合される充填剤は、 無機物質または有機物質であって、 その平均粒径が 2 0 0 μ m以下、 好ましくほ 2〜 5 0 μ mの粒状、 および/または平均繊維長が 5 0 0 以下の繊維状のものである。

本発明の充填剤の好ましく例としては、 炭素繊維、 コークス粉、 グラフアイ ト粉、 ブロンズ粉、 銅粉、 酸化亜鉛粉末、 タルク、 ガラス »維、 二硫化モリプ デン、 ポリアミド、 芳香族ポリアミド、 ポリフエ二レンサノレフアイドからなる 群から選ばれる少なくとも 1種の物質を挙げることができる。 中でも、 炭素繊 維、 コータス粉、 グラフアイト粉、 ブロンズ粉、銅粉、 酸化亜鉛粉末、 タルク、 ガラス繊維が好ましい。 本発明では、 前記した平均粒径および/または平均繊 維長を持つ充填剤であれば、 市販品をそのまま使用することができる。

樹脂組成物を構成する各成分の割合は、 テトラフルォロエチレン重合体が好 ましくは 2 0〜 9 0重量％、 より好ましくは 2 5〜 8 0重量⁰ /₀、 酸化亜鉛ウイ スカーが好ましくは 5〜 4 0重量⁰ /₀、 より好ましくは 1 0〜 3 0重量⁰ /₀、 およ ぴ充填剤が好ましくは 2〜 4 0重量％、 より好ましくは 1 0〜 3 5重量％の範 囲にあることが望ましい。 ここで、前記 3成分の合計量が 1 0 0重量％になる。 各成分が前記の範囲内にあると、 良好な潤滑性を保持した上で、 耐摩擦摩耗性 および耐圧縮クリープ性に優れた樹脂組成物を形成し、 摺動部品等の成形に好 適である。

この樹脂組成物には、 本発明の目的から逸脱しない範囲内で、 酸化安定剤、 耐熱安定剤、 耐候安定剤、 難燃剤、 顔料等の安定剤あるいは添加剤を配合する ことができる。

本発明の 3つの成分に、必要に応じて前記の安定剤や添加剤を加えた粉体を、 ヘンシェルミキサ一のような従来公知の混合器を使用して均一混合することに よって、 粉状体の樹脂組成物を得ることができる。

このような粉体状の樹脂組成物からは、 圧縮成形法や押出成形法等によって 目的とする各種の摺動部品等を製造することができる。 例えば、 前記した樹脂 組成物を圧縮成形法によって予備成形し、 テトラフルォロエチレン重合体の融 点以上の温度で焼成して一次成形品とし、 その後、 最終成形品の形状に応じて 切削加工等を施して製品を製造することができる。

本発明の樹脂組成物は、 テトラフルォロエチレン重合体に酸化亜鉛ウイスカ 一および少なくとも 1種の充填剤が均一分散した組成物を構成していることか ら、 良好な潤滑性を保持している上に、 さらに耐摩擦摩耗性および耐圧縮タリ ープ性に優れている。 またこの樹脂組成物は、 安定した静電気拡散性を有して おり、 各種摺動部品、 電気電子部品、 パッキング材等の原料樹脂として適して いる。 実施例

実施例によって本発明をより詳細に説明するが、 本発明はそれらの実施例に よって何ら制限されるものではない。

まず使用した原料は次の通りであった。

( a ) テトラフルォロエチレン単独重合体： P T F Eと略記する。 平均粒径 3 5 μ m、 融点 3 2 7。C

三井.デュポンフロロケミカル株式会社製品

モールディンググレード 商品名テフロン （登録商標） 7- J (b) 酸化亜鉛ウイスカー：

針状短繊維径 0. 2〜 3 0 ^ m、 針状短繊維長 2〜 5 0 m 松下産業情報機器株式会社製品 商品名パナテトラ

( c ) 炭素繊維：

平均麵径 1 4. 5 m、 平均繊維長 1 20

. 吳羽化学工業株式会社製品

(d) 銅粉：

平均粒径 26 μΐΐΐ

福田金属箔粉工業株式会社製品

(e) グラフアイト ：

平均粒径 20 μηι

オリェンタル産業株式会ネ土製品

( f ) コータス粉：

平均粒径 20 μΐΐΐ

日本カーボン株式会社製品

(g) ガラス繊維：

平均繊維径 1 0. 5 μϊΐί, 平均繊維長 2 0 //m

日東紡績株式会社製品

(実施例 1〜 5及び比較例：！〜 7 )

テトラフルォロェチレン単独重合体に酸ィ匕亜鉛ゥイスカーおよび各種の充填 剤を表 1に記載した割合で配合し、 ヘンシェルミキサーを用いて均一に混合し て樹脂組成物を得た。 得られた各樹脂組成物に付いて、 70 OMP aの加圧下 で予備成形し、 引き続き 3 70。Cで 3時間焼成し、 直径 5 Omm、 高さ 1 0 0 mmの円柱状成形体を得た。 各成形体に付いて、 摩耗量、 圧縮クリープ性およぴ摺動温度を次に記す試験 方法で測定し、 その結果を表 1に記した。

( 1 ) 摩耗量：

前記の円柱状成形体から切削加工によって、 ^ 25. 7 mm, 内径 20m m、 高さ 2 Ommのリングを製造し、 それを試験片にした。 2連式摩擦摩耗試 験機 （株式会社インテスコ製品） を用い、 その試験片について J I S K72 18 (Α法） に準拠して摩耗量の測定を行なった。 測定は、 表 1に記した相手 材、 荷重およぴ摺動速度の各摩耗試験条件下で 24時間摺動を行ない、 試験終 了後の摩耗量を摩耗係数および摩擦係数で表した。

(2) 圧縮クリープ性：

前記の円柱状成形体から切削加工によって、 縦、 横、 高さがそれぞれ 12. 7 mmの立方体を製造し、それを試験片にした。 6連式圧縮クリープ試験機（株 式会社オリエンテック製品） を用い、 ASTM D— 621に準拠し、 測定温 度 23°C、 荷重 140 k g f/cm² の条件下で圧縮クリ一プ性を測定した。 なお、 表 1において、 MDは圧縮方向、 CDは圧縮方向に対して直角である垂 直方向を表す。 また、 永久変形の値は、 全変形量から 24時間後の回復量を引 いた残りの値を示している。

(3) 搢動温度：

オリエンテック製 EFM— 3 F型機を用い、 熱電対の先端を相手材の摺動面 より約 2 mm上部にセットして測定を行なった。

表 1

* 手 ADC-12 アルミニウム^ ^ダイカスト JIS H5302 (1976)讓

FC-25 (ねずみ 口口 4種 JIS G5501 (1976) iat) ss-41 {-i m xi JIS G3101 (1976)画 ** 鎌および摩観数の単位： cm³ · s e c/kg -m- hr

表 1の結果から明らかなように、 テトラフルォロエチレン重合体、 酸化亜鈴 ゥイスカー、 および充填剤から構成された各実施例の樹脂組成物は、 テトラフ ルォロェチレン重合体のみ、 それと各種の充填剤から構成された各比較例の樹 脂組成物と比較して、 酸化亜鉛ウイスカーの寄与によって熱伝導率が極めて良 好になることから、 摺動温度を下げることができ、 摩擦係数も低めに安定し、 'また摩,数も小さくなつており、 圧縮クリープ性も小さな値を示しているこ とがわ力、る。 '産業上の利用可能性

本発明により潤滑性および耐熱性を保持した上に、 さらに耐摩擦摩耗性およ ぴ耐圧縮クリープ性に優れた摺動部品等の成形に適したフッ素樹脂組成物が提 供される。

本発明によって得られるフッ素樹脂組成物は、 潤滑性、 耐熱性、 耐摩擦摩耗 性およぴ耐圧縮クリープ性に優れた組成物である。

本発明の樹脂組成物は、 テトラフルォロェチレン重合体に酸ィヒ亜鉛ウイス力 一おょぴ少なくとも 1種の充填剤が均一分散した組成物を構成していることか ら、 良好な潤滑性を保持している上に、 さらに耐摩擦摩耗性および耐圧縮クリ ープ性に優れているので、安定した静電気拡散性を有しており、各種摺動部品、 電気電子部品、 パッキング材等の原料樹脂として適している。

Claims

請求の範歸

1 . テトラフルォロェチレン重合体、 酸化亜鉛ゥイスカー、 および平均粒径 が 2 0 0 m以下の粒状おょぴ Zまたは平均繊維長が 5 0 0 μ m以下の繊維状 の充填剤とからなることを特徴とするフッソ樹脂組成物。

2 . 前記の樹脂組成物は、テトラフルォロェチレン重合体が 2 0〜 9 0重量⁰ /₀、 酸化亜鉛ウイスカーが 5〜 4 0重量％、 および充填剤が 2〜4 0重量％の割合 で含有されている （ここで、 前記 3成分の合計量が 1 0 0重量％になる） こと を特徴とする請求項 1に記載のフッソ樹脂組成物。

3 . 前記の酸化亜鈴ウイスカ一は、 テトラポット形状を有するものを含有し ていることを特徴とする請求項 1または 2に記載のフッソ樹脂組成物。

4 . 前記の充填剤は、炭素繊維、 コータス粉、 グラフアイト粉、 ブロンズ粉、 銅粉、 酸化亜鈴粉末、 タノレク、 ガラス繊維、 二硫化モリプデン、 ポリアミド、 芳香族ポリアミド、 ポリフエ-レンサルフアイドからなる群から選ばれる少な くとも 1種の物質であることを特徴とする請求項：！〜 3のいずれかに記載のフ ッソ樹脂組成物。

5 . 前記の充填剤は、炭素繊維、 コークス粉、 グラフアイト粉、 ブロンズ粉、 銅粉、 酸化亜鉛粉末、 タルク、 ガラス繊維からなる群から選ばれる少なくとも 1種の物質であることを特徴とする請求項 1〜 3のいずれかに記載のフッソ樹 脂組成物。