JP7153439B2 - ポリテトラフルオロエチレン組成物 - Google Patents

ポリテトラフルオロエチレン組成物 Download PDF

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Description

本発明は、高速撹拌によるドライブレンド(粉体混合)によって、変性ポリテトラフルオロエチレンファインパウダーと充填材の均一な分散混合が可能であり、また生産性にも優れるポリテトラフルオロエチレン組成物に関する。
ポリテトラフルオロエチレン(以下、「PTFE」ともいう。)は、摩擦係数が低く、また耐熱性や耐薬品性に非常に優れていることから、この性質を利用して様々な目的に利用されている。
PTFEの重合方法には、テトラフルオロエチレン(以下、「TFE」ともいう。)の水性媒体中での乳化重合法と懸濁重合法の2種類が一般的に用いられている。
乳化重合法により得られるPTFEは、ファインパウダーと呼ばれ、水性分散液から凝集後に取り出し、乾燥させることにより得られる。ファインパウダーはせん断力を加えて繊維化するという特徴があり、それを利用して、ナフサなどの押出助剤と混合後に予備圧縮し、予備成形体をシリンダーから押出成形することで電線被覆成形することができ(ペースト押出成形)、このとき、導電材や発泡剤などの充填材を加えて性能を付加することができる。また、ペースト押出後に延伸することで、多孔質膜とすることができる。更に、少量のPTFEで多くの粒子を絡め取ることが可能であるので、燃料電池やキャパシタの電極材料(バインダー)としても用いられている。
一方、懸濁重合法により製造されたPTFEは、モールディングパウダーと呼ばれ、ファインパウダーに比べて繊維化しにくく、コストも安い。そこで、モールディングパウダーは、圧縮成形後に熱処理した円柱状のビレットを削り出し各種の部品としたり、薄く剥いだシート(skived sheet)としたりして、種々の用途に用いられている。
また、耐摩耗性や耐クリープ性を改善するために各種の充填材を配合させた充填材入りモールディングパウダーは、摺動部材やシール部材として一般的に用いられている。しかし、モールディングパウダーは、比較的粒子が大きく、そして硬いことから、圧縮成型時に潰れにくく充填材との間に空隙ができる。これがボイド発生の要因となり、延伸時の破断起点となる。また、樹脂と充填材の密着性が悪く、成形品から充填材が脱離して、耐摩耗性が悪化する要因ともなっている。
さらに、充填材入りモールディングパウダーは、自動車のオイルシールリングにも用いられており、この場合、自動車の軽量化のためにアルミニウムなどの軟質金属が素材として用いられることが増えていることから、摺動性と共に、摺接対象である軟質金属を傷つけないことが求められている。そのような特性を満たす充填材として、チタン酸カリウム塩や酸化亜鉛などの金属酸化物が好適であるが(例えば、特許文献1、特許文献2)、充填剤入りモールディングパウダーでは、水系媒体を用いた造粒(湿式造粒)が行われることが多いため、この場合、水と親和性の大きい金属酸化物が水相に脱離してしまうことが問題となる。
このような事情から、PTFEモールディングパウダーの代わりに、充填材との密着性に優れるPTFEファインパウダーの使用が検討されている。
PTFEと充填材を混合する方法としては、乾燥状態で直接混合するドライブレンド(
粉体混合)が最も簡便で、短時間で混合ができ、生産性が良いのだが、ファインパウダーの場合、高速撹拌を行うと、凝集物が生成したり、混合用装置の内壁にファインパウダーが付着して均一な混合ができないという問題がある。また、かといって低速で混合すると、均一な混合に時間がかかるため、生産性の低下が問題となる。このため、重合後の水性分散液に充填材を分散させ、同時に凝析させる方法(共凝析・共凝集)(特許文献3、特許文献4)、また混合用の容器自体を転動させることで攪拌するタービュラーミキサーなどが用いられてきたが、これらの方法も生産性が悪いことから、根本的な解決とはなっていない。
そこで更に、このような問題に対してPTFEファインパウダーと充填材を10℃未満でドライブレンドする方法も提案されているが(特許文献5)、この方法も、冷却による生産性の低下やコスト増の問題があり、満足のいく方法とは言い難い。
したがって、より好適なPTFEファインパウダーと充填材とのドライブレンドの方法が望まれている。
特許第4386633号公報 特開2016-164216号公報 特公昭48-12052号公報 特開昭56-18624号公報 特開2015-151543号公報
本発明の目的は、PTFEファインパウダーと充填材とを高速撹拌によりドライブレンドしても、ファインパウダーの凝集物の生成や混合用装置の内壁への付着が抑制される、PTFEファインパウダーと充填材を含むPTFE組成物を提供することにある。
本発明は、上記組成物中のPTFEファインパウダーとして、RR(Reduction Ratio、シリンダー面積/オリフィス面積)1600での押出圧が25MPaより小さい変性PTFEファインパウダーを用いることにより、上記目的を達成することを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は以下のとおりである。
1.RR1600での押出圧が25MPaより小さい変性ポリテトラフルオロエチレンファインパウダーと、充填材とを含むポリテトラフルオロエチレン組成物。
2.上記1に記載のポリテトラフルオロエチレン組成物を成形してなる成形品。
3.摺動用材料またはシール材料である、上記2に記載の成形品。
4.電線被覆材料または多孔質膜材料である、上記2に記載の成形品。
5.RR1600での押出圧が25MPaより小さい変性ポリテトラフルオロエチレンファインパウダーと、充填材をドライブレンドすることを含む、上記1に記載のポリテトラフルオロエチレン組成物の製造方法。
本発明によれば、簡便なドライブレンドを利用して、高速撹拌により短時間にPTFEファインパウダーと充填材とを含むPTFE組成物を提供することができる。
また、本発明によれば、粒径の小さいファインパウダーと充填材とを均一に混合でき、
充填材の凝集による欠陥が抑止されることから、充填材の効果が少量でも得られるようになり、またクリープ変形量を小さくすることができる。
更に、ファインパウダーを用いる本発明の組成物では、モールディングパウダーと比べて一般的に柔らかいことから、充填材との間に空隙生成が少ない密な構造となる(密着性が高くなる)。このため、本発明の組成物を成形してなる成形品は、より優れた引張特性、圧縮特性を有し、また摺動中の充填材の脱落が抑制されることから摩耗特性にも優れ、更に組成物を圧縮成形する際の圧力がモールディングパウダーよりも小さくて済むという利点も有する。
また、本発明のPTFE組成物の具体的な用途として、自動車のトランスミッションやショックアブソーバーなどのオイルシールリングの材料が挙げられる。オイルシールリングは微小な動きに追従するため、リング自体に荷重がかかった際にクラックによる破損が起こらずに変形することが求められる。また、シールリングをシリンダに装着する際に、弾性変形が可能であれば装着が容易になるという利点もある。ショックアブソーバーのシールリングとして用いるには、ASTM D-4894に準拠した引張試験で引張伸度が100%以上であることが望ましく、250%以上であることがより望ましい。本発明のPTFE組成物は、充填材が細かく分散しており、またモールディングパウダーよりも柔軟性に富むことから、この用途に好適に用いることができる。
実施例2で得られた641-J/炭素繊維の混合物(粉)の実体顕微鏡写真(300倍)である。 比較例5で得られた6-J/炭素繊維の混合物(粉)の実体顕微鏡写真(300倍)である。
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明のポリテトラフルオロエチレン(PTFE)組成物は、RR(Reduction Ratio、シリンダー面積/オリフィス面積)1600での押出圧が25MPaより小さい変性ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)ファインパウダーと、充填材とを含む。
本発明において「変性ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)ファインパウダー」とは、乳化重合で得られたラテックス(水性分散液、ディスパージョン)を凝析・乾燥して得られたPTFE粒子(粉)であり、またテトラフルオロエチレン(TFE)と共重合可能な単量体(コモノマー)が1質量%以下の範囲で含まれるTFE共重合体のファインパウダーである。変性PTFEでは、コモノマーの存在により、分子鎖同士が滑りにくくなるため、樹脂の強度、弾性係数が大きくなり、耐クリープ性も改善される。しかし、コモノマーの量が1質量%を超えると、PTFEの摺動性が低下すると共に、融点以上の温度で流動性を示すようになるため、高温下での使用に適さなくなる。
本発明においてTFEと共重合可能な単量体としては、不飽和結合を含み、ラジカル重合が可能な単量体であれば特に限定されることなく使用できる。ただし、耐熱性および耐薬品性などのPTFEの優れた性能を維持するためには、フッ素を含有する単量体を使用することが好ましい。例えば、炭素数3以上、好ましくは、炭素数3~6個のフルオロアルケン、例えばパーフルオロプロペン、パーフルオロブテン、パーフルオロペンテン、パーフルオロヘキセン、炭素数3~6個のフルオロ(アルキルビニルエーテル)、例えば、パーフルオロ(メチルビニルエーテル)、パーフルオロ(エチルビニルエーテル)、パーフルオロ(プロピルビニルエーテル)、およびクロロトリフルオロエチレンなどが挙げられ、好ましくは、炭素数3~6個のフルオロアルケンや炭素数4~5個のフルオロ(アル
キルビニルエーテル)である。
本発明における変性PTFEファインパウダーは、既知の方法により調製することができるが、市販されているものを使用してもよい。市販の変性PTFEファインパウダーは、例えば、三井・デュポンフロロケミカル株式会社製テフロン(登録商標)PTFE 641-Jである。
本発明における変性PTFEファインパウダーの平均粒径は350μm~650μmであることが好ましい。本明細書において平均粒径とは、ふるい分け法によって得られる粒度分布における積算値50%(体積基準)での粒径を意味する。
本発明における変性PTFEファインパウダーの標準比重(SSG)は、2.100~2.200であることが好ましく、2.120~2.180であることがより好ましい。標準比重(SSG)はASTM D-4895に準拠して測定される。
本発明における変性PTFEファインパウダーは、ペースト成形時の絞り比(RR:Reduction Ratio、シリンダー面積/オリフィス面積)1600での押出圧が25MPaより小さいことを特徴とする。本発明においてRR1600とは、上記計算式により得られる値について、10の位を四捨五入して1600となるものである。
押出圧を測定するための試験サンプルは、変性PTFEファインパウダーに押出助剤を全体の16.2質量%になるように配合した混合物を用いる。押出助剤は、石油系炭化水素から製造されている潤滑剤で、その初溜点が110℃以上、乾点が145℃以下のものを使用する。そのような押出助剤の一例として、イソパラフィン系炭化水素が挙げられ、具体的には例えば、エクソンモービル社製アイソパーE(ISOPARTM E FLUID)、出光興産株式会社製出光スーパゾルFPを挙げることができる。また押出条件は、RRが1600であり、温度は30±2℃であり、押出速度は18mm/分とする。
本発明において「充填材」は、成形品の各種物性を改善するために用いられる粉状の物質であり、各種の有機・無機充填材を用いることができる。有機充填材としては、例えば、ポリフェニレンサルファイド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリアミド、ポリイミド、全芳香族ポリエステル樹脂などのエンジニアリングプラスチックが挙げられる。無機充填材としては、金属粉、金属酸化物(酸化アルミ、酸化亜鉛、酸化スズ、酸化チタン等)、チタン酸金属塩、ガラス、セラミックス、炭化珪素、酸化珪素、窒化ホウ素、弗化カルシウム、カーボンブラック、炭素繊維、グラファイト、コークス、マイカ、タルク、硫酸バリウム、二硫化モリブデンなどが挙げられる。必要に応じてこれらを複数組み合わせて用いることもできる。
充填材の形状としては、粒子状、繊維状、フレーク状など、各種の形状の充填材が使用可能である。
本発明のPTFE組成物における充填材の組成比は、0.1~90.0体積%の範囲にあることが好ましく、より好ましくは5.0~70.0体積%の範囲である。下限を下回ると、充填材添加の効果が得にくい上に、混合時にPTFEが攪拌機の内壁に付着しやすくなるという不具合がある。上限を上回ると、成形が困難になったり、得られた成形品の物性(引張強度や伸びなど)が悪化したりという不具合がある。
本発明のPTFE組成物には、潤滑性、導電性、発泡防止など求める特性に応じて、固体潤滑剤、酸化安定剤、耐熱安定剤、耐候安定剤、難燃剤、顔料などの1種または2種以上の各種添加剤を含有していてもよい。例えば、追加成分として固体潤滑剤を数%配合することは、自己潤滑性の向上に有用であり、固体潤滑剤としては、黒鉛、二硫化モリブデ
ン、窒化ホウ素などが挙げられる。
本発明の「成形品」とは、本発明のポリテトラフルオロエチレン組成物を成形してなるものである。成形方法としては、特に限定されるものではないが、公知の成形方法、例えば、ラム押出成形、圧縮成形、アイソスタティック成形、ホットコイニング成形などが挙げられ、更に従来はファインパウダーによる細径電線被覆などに用いられてきたペースト押出成形も利用できる。
本発明の成形品は、耐熱性や耐薬品性に優れ、また各種充填材を配合させることにより耐摩耗性や耐クリープ性も改善されることから、これらの性質が求められる各種用途に適用可能である。例えば、これまでもファインパウダーが用いられてきた電線被覆材料や多孔質膜材料に利用できるだけでなく、主にモールディングパウダーが用いられてきた摺動用材料またはシール材料にも利用できる。摺動用途としては、ベアリング、ロール、ピストンリング、オイルシールリング(ピストンリング、オイルシールリングはハウジングに対して摺動する)などが挙げられ、シール用途としては、オイルシールリング、ピストンリング、メカニカルシール、ベローフラムなどのパッキン類や、Oリングなどの固定シールとして分類されるガスケット類などがある。本発明の成形品は、特に自動車のオイルシールリングの材料として好適に利用できる。
本発明の組成物の製造における変性PTFEファインパウダーと充填材との混合は、公知の各種方法が利用できるが、水や有機溶剤などの液媒体を用いない乾燥条件下でのドライブレンド(粉体混合)が最も簡便であり、好ましい。本発明によれば、高速撹拌でドライブレンドを行っても、凝集物の生成や、混合用装置の側壁への付着が抑えられ、短時間で均一な混合が可能となる。
本発明においてドライブレンドを行う装置としては、特に限定されるものではないが、攪拌羽根付き機械式攪拌装置(攪拌羽根付きミル、カッターミキサー、ヘンシェルミキサー、レーディゲミキサー、チョッパー付V型ブレンダー、チョッパー付ダブルコーンミキサーなど各種ミキサー)、ロッキングミキサー、タービュラーミキサーなどが挙げられる。
本発明において変性PTFEファインパウダーと充填材をドライブレンドする攪拌羽根などの回転数・周速度は高速であると、短時間で均一な混合が可能となるため好ましい。具体的には、攪拌羽根などの周速度が15m/s以上の高速撹拌でも、本発明の組成物では問題なく混合が可能となる。
以下、実施例及び比較例により本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
本実施例および比較例には、以下の原料、方法を使用した。
(PTFEファインパウダー)
以下のPTFEファインパウダーを用いた。
・テフロン(登録商標)PTFE 641-J(三井・デュポンフロロケミカル株式会社製、SSG:2.168、平均粒径:約500μm)
・テフロン(登録商標)PTFE 640-J(三井・デュポンフロロケミカル株式会社製、SSG:2.162、平均粒径:約500μm)
・テフロン(登録商標)PTFE 6-J(三井・デュポンフロロケミカル株式会社製、SSG:2.214、平均粒径:約450μm)
・ポリフロン(登録商標)PTFE F-208(ダイキン工業株式会社製、SSG:2
.176、平均粒径:約590μm)
・ポリフロン(登録商標)PTFE F-201(ダイキン工業株式会社製、SSG:2.181、平均粒径:約500μm)
6-Jのみ非変性PTFEファインパウダーであり、残りは変性PTFEファインパウダーである。
(PTFEモールディングパウダー)
・テフロン(登録商標)PTFE 7-J(三井・デュポンフロロケミカル株式会社製、SSG:2.166、平均粒径:約50μm)
(PTFEファインパウダーの押出圧)
清浄な試料ビンにPTFEファインパウダー150gを採り、炭化水素潤滑剤(エクソンモービル社製、ISOPARTM E FLUID)29.1gを加えた後、すばやく蓋をして、風車型混合機で20分間混合し、30℃に保った恒温水槽中に試料ビンを2時間静置して熟成する。
ペースト押出圧の測定装置として、東洋油圧機械株式会社製レオメータ(型式:ESE-428-00)を用い、内径28mmの予備成形用シリンダーに上記混合物を充填し、50kgの荷重をシリンダーに挿入したピストンに加え1分間保持して、円柱状の予備成形物を得る。
得られた予備成形物を、予め30℃に加熱しておいた押出ダイ(オリフィスの直径:0.79mm)が付いたシリンダー(内径31.7mm)に入れてラム速度 約18mm/分で上記混合物を押出し、ひも状物(ビード)を得る。この時、RRはシリンダー面積とオリフィス面積の比であるので、1600となる。押出後半において圧力が平衡状態になる部分における押出圧をシリンダー断面積で除した値をペースト押出圧(MPa)とした。結果を表1に示す。
Figure 0007153439000001
(組成物の評価)
[実施例1]
変性PTFEファインパウダーであるテフロン(登録商標)PTFE 641-J 40gと、充填材であるマイカ60gを攪拌羽根付きミル(大阪ケミカル株式会社製ワンダークラッシュミルD3V-10、攪拌羽根直径142mm)に投入した。10秒間25000rpmで撹拌後、ヘラを用いて壁面に付着したポリマーを掻き落とし、次に30秒間
25000rpmで撹拌した。槽内を観察して、内壁に付着、固着して撹拌中に流動出来なかったとみられるポリマーの有無を観察した。結果を表2に示す。
[比較例1]
変性PTFEファインパウダーであるテフロン(登録商標)PTFE 640-Jを用いる以外は、実施例1と同様に観察を行った。結果を表2に示す。
[比較例2]
非変性PTFEファインパウダーであるテフロン(登録商標)PTFE 6-Jを用いる以外は、実施例1と同様に観察を行った。結果を表2に示す。
[比較例3]
変性PTFEファインパウダーであるポリフロン(登録商標)PTFE F-208を用いる以外は、実施例1と同様に観察を行った。結果を表2に示す。
[比較例4]
変性PTFEファインパウダーであるポリフロン(登録商標)PTFE F-201を用いる以外は、実施例1と同様に観察を行った。結果を表2に示す。
Figure 0007153439000002
[実施例2]
変性PTFEファインパウダーであるテフロン(登録商標)PTFE 641-J 170gと、充填材である人造黒鉛(オリエンタル産業株式会社製 AT-NO.10E)30gを攪拌羽根付きミル(大阪ケミカル株式会社製ワンダークラッシュミルD3V-10、攪拌羽根直径142mm)に投入し、40秒間25000rpmで撹拌した。(PTFE/人造黒鉛=85/15(重量比))
得られた組成物を直径50mmの金型で400kg/cm2で加圧することにより予備成形し、それを370℃で3時間電気炉中で焼成することにより、高さ約40mmの円筒状成形物を得た。
得られた円筒状成形物を用いて、下記の方法により、分散性の評価を行った。結果を表3に示す。
(分散性の評価)
得られた円筒状成形物から、スカイブ加工によって厚さ0.3mmのシートを作成し、幅約40mm、長さ3500mmの範囲について、透過光観察により白斑として観察される樹脂塊の大きさ、個数を確認した。樹脂塊の大きさは次式に示す値により、1mm以上
、0.5~1mm、0.3~0.5mmにランク分けし、それぞれのランクの樹脂塊の数をカウントした。

(縦最大径[mm]+横最大径[mm])/2
[比較例5]
変性PTFEファインパウダーであるテフロン(登録商標)PTFE 641-Jに代えて変性PTFEファインパウダーであるテフロン(登録商標)PTFE 640-Jを用いる以外は、実施例2と同様に処理して、実施例2と同様の方法で分散性の評価を行った。結果を表3に示す。
[比較例6]
変性PTFEファインパウダーであるテフロン(登録商標)PTFE 641-Jに代えて非変性PTFEファインパウダーであるテフロン(登録商標)PTFE 6-Jを用いる以外は、実施例2と同様に処理して、実施例2と同様の方法で分散性の評価を行った。結果を表3に示す。
[比較例7]
変性PTFEファインパウダーであるテフロン(登録商標)PTFE 641-Jに代えてPTFEモールディングパウダーであるテフロン(登録商標)PTFE 7-Jを用いる以外は、実施例2と同様に処理して、実施例2と同様の方法で分散性の評価を行った。結果を表3に示す。
Figure 0007153439000003
RR1600での押出圧が25MPaより小さい変性ポリテトラフルオロエチレンファインパウダー(テフロン(登録商標)PTFE 641-J)を用いた実施例2は、繊維化せずに混合容易なモールディングパウダーを用いた比較例7と同等の高い分散性を示していることがわかる。
[実施例3]
変性PTFEファインパウダーであるテフロン(登録商標)PTFE 641-J 160gと、充填材である炭素繊維(株式会社クレハ製 M2007S)40gを実施例1と同様に混合した。得られた混合物(粉)を、実体顕微鏡(株式会社キーエンス製 デジタルマイクロスコープVHX-900)により観察した。繊維化の発生が少なく、PTFEと充填材が均一に混合されていることが確認された(図1)。
[比較例8]
変性PTFEファインパウダーであるテフロン(登録商標)PTFE 641-Jに代えて非変性PTFEファインパウダーである6-Jを用いる以外は、実施例3と同様に混
合し、得られた混合物(粉)の観察を行った。PTFEと充填材の混合が実施例3と比較して繊維化の発生が多く、成長した凝集物により混合が均一ではないことが確認された(図2)。
(成形品の評価)
[実施例4]
上記実施例3と同様に、変性PTFEファインパウダーであるテフロン(登録商標)PTFE 641-J 160gと、充填材である炭素繊維(株式会社クレハ製 M2007S)40gを混合した。この混合を3回繰り返し、得られた混合物(粉)600g(200g×3回)のうち400g強を、直径50mmの金型で400kg/cm2で加圧することにより予備成形し、それを370℃で3時間電気炉中で焼成することにより、高さ約100mmの円筒状成形物を得た。
得られた円筒状成形物を用いて、下記の方法により、成形品を評価した。
(収縮率)
得られた円筒状成形物について、下記の式から収縮率を算出した。
収縮率 = 100-(円筒状成形物の外周長さ)×100/(金型の内周長さ)
(引張特性)
得られた円筒状成形物から厚さ2mmに切り出して、得られた円盤をASTM D-1708に準拠してダンベル形状に打ち抜き、引張試験を行った。
(圧縮クリープ測定)
得られた円筒状成形物から縦、横、高さがそれぞれ12.7±0.5mmの立方体を削り出し、試験片とした。
得られた試験片について、ASTM D-621に準拠し、6連式圧縮クリープ試験機(株式会社オリエンテック製)を用いて測定した。
60分変形は温度23℃、荷重140kgf/cm2にて1時間保持した後の圧縮クリープを測定し、
24時間変形は温度23℃、荷重140kgf/cm2にて24時間保持した後の圧縮クリープを測定し、
永久変形は温度23℃、荷重140kgf/cm2にて24時間保持した後に、室温(23℃)で無荷重にて24時間静置した後の圧縮クリープを測定した。
MDは圧縮方向、CDは圧縮方向に対して垂直方向のクリープ変形を表す。
収縮率、引張特性(引張強度(破断時)、伸び率)、及び圧縮クリープ測定の結果を表4に示す。
[比較例9]
上記比較例8と同様の混合を3回繰り返し、得られた非変性PTFEファインパウダーであるテフロン(登録商標)PTFE 6-J/炭素繊維の混合物(粉)600g(200g×3回)のうち400g強を直径50mmの金型で400kg/cm2で加圧することにより予備成形し、それを370℃で3時間電気炉中で焼成することにより、高さ約100mmの円筒状成形物を得た。
得られた円筒状成形物について、上記実施例4に記載の方法で、収縮率、引張特性、圧縮クリープを測定した。結果を表4に示す。
[比較例10]
変性PTFEファインパウダーであるテフロン(登録商標)PTFE 641-Jに代えてPTFEモールディングパウダーであるテフロン(登録商標)PTFE 7-Jを用
いる以外は、実施例3と同様の混合を3回繰り返し、得られた7-J/炭素繊維の混合物(粉)600g(200g×3回)のうち400g強を直径50mmの金型で600kg/cm2で加圧することにより予備成形し、それを370℃で3時間電気炉中で焼成することにより、高さ約100mmの円筒状成形物を得た。
得られた円筒状成形物について、上記実施例4に記載の方法で、収縮率、引張特性、圧縮クリープを測定した。結果を表4に示す。
[実施例5]
変性PTFEファインパウダーであるテフロン(登録商標)PTFE 641-J 170gと、充填材である人造黒鉛(オリエンタル産業株式会社製 AT-NO.10E)30gを実施例1と同様に混合した。(PTFE/人造黒鉛=85/15(重量比))
この混合を3回繰り返し、得られた組成物600g(200g×3回)のうち400g強を直径50mmの金型で400kg/cm2で加圧することにより予備成形し、それを370℃で3時間電気炉中で焼成することにより、高さ約100mmの円筒状成形物を得た。
得られた円筒状成形物について、上記実施例4に記載の方法で、収縮率、引張特性、圧縮クリープを測定した。結果を表5に示す。
[比較例11]
三井・デュポンフロロケミカル(株)製の充填剤入りモールディングパウダーであるテフロン(登録商標)PTFE 1123-J(ヘンシェルミキサーにより混合された、モールディングパウダー/人造黒鉛=85/15(重量比)の組成物)を用いて、直径50mmの金型で500kg/cm2で加圧することにより予備成形し、それを370℃で3時間電気炉中で焼成することにより、高さ約100mmの円筒状成形物を得た。
得られた円筒状成形物について、実施例4と同様に、収縮率、引張特性、及び圧縮クリープを測定した。結果を表5に示す。
Figure 0007153439000004
Figure 0007153439000005
RR1600での押出圧が25MPaより小さい変性ポリテトラフルオロエチレンファインパウダー(テフロン(登録商標)PTFE 641-J)を用いた実施例4の成形品は、非変性PTFEファインパウダー(テフロン(登録商標)PTFE 6-J)を用いた比較例9の成形品と比較して、成形圧力、収縮率が低く、引張強度、伸び率が高く、そしてクリープ変形が小さくなっている。伸び率が高いことで、成形品に荷重がかかった際にクラックによる破損が防止でき、さらに、クリープ変形が小さいことから、高い圧力が継続的にかかる環境下においても長期使用時の変形が少なく、安定した利用が可能となる。
また、PTFEモールディングパウダーを用いた比較例10、11の成形品と比較しても、変性PTFEファインパウダーを用いた実施例4、5の成形品は、高い伸び率と小さいクリープ変形量を示している。

Claims (1)

  1. RR1600での押出圧が25MPaより小さい変性ポリテトラフルオロエチレンファインパウダーと、充填材をドライブレンドすることを含む、RR1600での押出圧が25MPaより小さい変性ポリテトラフルオロエチレンファインパウダーと、充填材とを含み、充填材が5.0~90.0体積%の範囲にある、ポリテトラフルオロエチレン組成物の製造方法。
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