JP6311502B2 - 含フッ素エラストマー組成物、並びにこれを用いた絶縁電線及びケーブル - Google Patents

含フッ素エラストマー組成物、並びにこれを用いた絶縁電線及びケーブル Download PDF

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本発明は、含フッ素エラストマー組成物、並びにこれを用いた絶縁電線及びケーブルに関する。
電線及びケーブルは、絶縁層やシースといった被覆層に樹脂組成物を用いている。用いる樹脂は、電線及びケーブルの用途により異なる。例えば、耐熱性、耐薬品性、電気絶縁性、可とう性などを必要とする用途には、テトラフルオロエチレン−αオレフィン共重合体が用いられている。
被覆層に用いる樹脂組成物としてテトラフルオロエチレン−αオレフィン共重合体のみを用いた場合、強靭性に問題がある。そこで、当該問題を解決するべく、テトラフルオロエチレン−プロピレン系共重合体にエチレン−テトラフルオロエチレン−フルオロオレフィン共重合体及びエチレン−アクリル酸エステル共重合体をブレンドした樹脂組成物が提案されている(特許文献1参照)。
しかし、通常テトラフルオロエチレン−αオレフィン共重合体やエチレン−テトラフルオロエチレン共重合体はポリエチレンのような汎用樹脂と比較して、高価である。そのため、これらを用いた含フッ素エラストマー組成物を用いた製品のコストが増加する。
エラストマー組成物の低コスト化の手法として、組成物中の充填剤量を増量する手法が考えられるが、テトラフルオロエチレン−αオレフィン系共重合体を用いた含フッ素エラストマーでは、充填剤量を増量した場合において、充填剤の凝集による破壊電圧の低下といった問題点があった。
充填剤の分散性向上のために、充填剤を有機酸やビニルシランなどで表面処理することが一般的に行われている。しかし、テトラフルオロエチレン−αオレフィン系共重合体やエチレン−テトラフルオロエチレン共重合体を用いた場合においては、これらの効果が十分に得られないことが多かった。
これに対し、特許文献2では、充填剤をフロロアルキル基を有する化合物で表面処理することで、テトラフルオロエチレン−αオレフィン系共重合体等を用いた場合における充填剤の分散性向上を図り、引張強度及び破壊電圧の向上を達成している。しかし、フロロアルキル基を有する化合物は高価であり、低コスト化が達成できない。
特開平5−78539号公報 特開平10−310712号公報
そこで、本発明の目的は、耐熱性、強靭性及び電気特性に優れた含フッ素エラストマー組成物、並びにこれを用いた絶縁電線及びケーブルを提供することにある。また、本発明の目的は、耐熱性、強靭性及び電気特性に優れ、かつ低コスト化が可能な含フッ素エラストマー組成物、並びにこれを用いた絶縁電線及びケーブルを提供することにある。
本発明は、上記目的を達成するために、下記[1]〜[5]の含フッ素エラストマー組成物、並びにこれを用いた絶縁電線及びケーブルを提供する。
[1]テトラフルオロエチレン−炭素数3〜4のα−オレフィン系共重合体(第1の含フッ素共重合体)及びエチレン−テトラフルオロエチレン系共重合体(第2の含フッ素共重合体)を含むベースポリマーと、平均粒径1μm〜10μmの無機充填剤と、エポキシ基を有するシラン化合物と、架橋助剤とを含有し、前記第1の含フッ素共重合体と前記第2の含フッ素共重合体の配合質量比(第1の含フッ素共重合体:第2の含フッ素共重合体)は、90:10〜50:50であり、前記無機充填剤の配合量は、前記ベースポリマー100質量部に対して60〜120質量部であり、前記エポキシ基を有するシラン化合物の配合量は、前記無機充填剤の配合量に対し0.2〜2質量%である含フッ素エラストマー組成物。
[2]前記無機充填剤は、タルク又はクレーであり、前記エポキシ基を有するシラン化合物は、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシランである前記[1]に記載の含フッ素エラストマー組成物。
[3]導体と、前記導体の外周に被覆された、前記[1]又は前記[2]に記載の含フッ素エラストマー組成物からなる絶縁層とを備えた絶縁電線。
[4]前記[1]又は前記[2]に記載の含フッ素エラストマー組成物からなるシースを備えたケーブル。
[5]前記[3]に記載の絶縁電線を備えたケーブル。
本発明によれば、耐熱性、強靭性及び電気特性に優れた含フッ素エラストマー組成物、並びにこれを用いた絶縁電線及びケーブルを提供することができる。また、本発明によれば、耐熱性、強靭性及び電気特性に優れ、かつ低コスト化が可能な含フッ素エラストマー組成物、並びにこれを用いた絶縁電線及びケーブルを提供することができる。
エポキシ基を有するシラン化合物(3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン)と無機充填剤間の結合状態を示す模式図である。 本発明の実施の形態に係る絶縁電線の一例を示す横断面図である。 本発明の実施の形態に係るケーブルの一例を示す横断面図である。
〔含フッ素エラストマー組成物〕
本発明の実施の形態に係る含フッ素エラストマー組成物は、テトラフルオロエチレン−炭素数3〜4のα−オレフィン系共重合体(第1の含フッ素共重合体)及びエチレン−テトラフルオロエチレン系共重合体(第2の含フッ素共重合体)を含むベースポリマーと、平均粒径1μm〜10μmの無機充填剤と、エポキシ基を有するシラン化合物と、架橋助剤とを含有し、前記第1の含フッ素共重合体と前記第2の含フッ素共重合体の配合質量比(第1の含フッ素共重合体:第2の含フッ素共重合体)は、90:10〜50:50であり、前記無機充填剤の配合量は、前記ベースポリマー100質量部に対して60〜120質量部であり、前記エポキシ基を有するシラン化合物の配合量は、前記無機充填剤の配合量に対し0.2〜2質量%である。
(ベースポリマー:第1及び第2の含フッ素共重合体)
本発明の実施の形態に係る含フッ素エラストマー組成物は、第1及び第2の含フッ素共重合体を含むベースポリマーを含有している。
A.第1の含フッ素共重合体
第1の含フッ素共重合体は、テトラフルオロエチレン−炭素数3〜4のα−オレフィン系共重合体である。テトラフルオロエチレン−炭素数3〜4のα−オレフィン系共重合体における炭素数3〜4のα−オレフィンとしては、プロピレン又はブテン−1を単独で、若しくはプロピレン、ブテン−1及びイソブテンから選ばれる2種以上を組合せて用いることが好ましく、プロピレンを単独で又は他のものと組合わせて用いることが特に好ましい。
テトラフルオロエチレン−炭素数3〜4のα−オレフィン系共重合体は、主成分であるテトラフルオロエチレン及び炭素数3〜4のα−オレフィンと共重合可能な成分をさらに共重合させたものであってもよい。例えば、炭素数3〜4のα−オレフィンとしてプロピレンを用いた場合、主成分のテトラフルオロエチレン及びプロピレンと共重合可能な成分、例えばエチレン、アクリル酸、アクリル酸アルキルエステル、フッ化ビニル、フッ化ビニリデン、ヘキサフルオロプロペン、クロロエチルビニルエーテル、クロロトリフルオロエチレン、パーフルオロアルキルビニルエーテル等の分子中に炭素−炭素二重結合を有するモノマーを適宜、共重合させたものであってもよい。
テトラフルオロエチレン−炭素数3〜4のα−オレフィン系共重合体、例えば、テトラフルオロエチレン−プロピレン系共重合体は、耐熱性、成型性等の観点からテトラフルオロエチレンとプロピレンとの含有モル比(テトラフルオロエチレン/プロピレン)が95/5〜30/70であることが好ましく、90/10〜45/55であることが更に好ましい。また、適宜加えられる主成分以外の成分の含有量としては、主成分に対して、50モル%以下が好ましく、30モル%以下が更に好ましい。プロピレン以外の炭素数3〜4のα−オレフィンを用いた場合のテトラフルオロエチレンとの含有モル比、主成分以外の成分の含有量も上記プロピレンを用いた場合と同様である。
本実施の形態で用いるテトラフルオロエチレン−プロピレン系共重合体等のテトラフルオロエチレン−炭素数3〜4のα−オレフィン系共重合体は、加工性の観点から、100℃におけるムーニー粘度が200ML以下であることが好ましく、100ML以下であることがより好ましい。
B.第2の含フッ素共重合体
第2の含フッ素共重合体は、エチレン−テトラフルオロエチレン系共重合体である。
第2の含フッ素共重合体としてのエチレン−テトラフルオロエチレン系共重合体は、主成分であるエチレン及びテトラフルオロエチレンと共重合可能な成分を更に共重合させたものであってもよい。エチレン及びテトラフルオロエチレン以外の第3成分としては、例えばフルオロオレフィンを用いることができる。
フルオロオレフィンとしては、例えばクロロトリフルオロエチレン、フッ化ビニリデン、トリフルオロエチレンなどが挙げられるが、これらに限られるものではない。
エチレン−テトラフルオロエチレン系共重合体は、耐熱性等の観点からエチレンとテトラフルオロエチレンとの含有モル比(エチレン/テトラフルオロエチレン)が10/90〜40/60であることが好ましい。また、適宜加えられる主成分以外の第3成分の含有量としては、主成分に対して、20モル%以下が好ましく、10モル%以下が更に好ましい。
本実施の形態で用いるエチレン−テトラフルオロエチレン系共重合体は、押出時の自己発熱抑制と、発泡抑制の観点から、メルトフローレート(297℃, 49N)が10g/10min以上であることが好ましく、融点が240℃以下であることが更に好ましい。
上記第1の含フッ素共重合体と、上記第2の含フッ素共重合体との配合質量比(第1の含フッ素共重合体:第2の含フッ素共重合体)は、90:10〜50:50である必要がある。第1の含フッ素共重合体:第2の含フッ素共重合体が80:20〜60:40であることがより好ましい。上記第1の含フッ素共重合体の質量比が90より多い場合、強靭性(カットスルー抵抗)が不十分である。一方、上記第2の含フッ素共重合体の質量比が50より多い場合(上記第1の含フッ素共重合体の質量比が50より少ない場合)においては、引張伸びが不十分である。
(その他のポリマー)
本発明の実施の形態に係る含フッ素エラストマー組成物は、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−αオレフィン共重合体等を必要に応じて含有することもできる。耐熱性の観点からベースポリマー中の上記第1の含フッ素共重合体と上記第2の含フッ素共重合体の合計配合量が80質量%以上であることが好ましく、90質量%以上であることが好ましく、95質量%以上であることが更に好ましい。
(無機充填剤)
本発明の実施の形態に係る含フッ素エラストマー組成物は、平均粒径1μm〜10μmの無機充填剤を含有している。
本発明の実施の形態に用いられる無機充填剤としては、炭酸カルシウム、タルク、シリカ、クレー、ハイドロタルサイト、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウムなどが挙げられるが、これらに限られるものではない。炭酸カルシウム、タルク又はクレーを用いることが好ましい。
本発明の実施の形態に用いられる無機充填剤の粒径は、平均粒径が1μm〜10μmの範囲である。平均粒径が1μmより小さい場合、耐熱性が不十分であり、10μmよりも大きい場合、引張強度が不十分である。無機充填剤の平均粒径が1.2μm〜9μmの範囲であることが好ましく、1.3μm〜8μmの範囲であることがより好ましい。
本発明の実施の形態で用いられる無機充填剤の配合量は、上記第1の含フッ素共重合体及び第2の含フッ素共重合体から構成されるベースポリマーの総量100質量部に対して60〜120質量部である。60質量部より少ない場合、低コスト化が不十分である。また、120質量部より多い場合、電気特性が不十分である。好ましくは、ベースポリマーの総量100質量部に対して70〜100質量部である。
(エポキシ基を有するシラン化合物)
本発明の実施の形態に係る含フッ素エラストマー組成物は、エポキシ基を有するシラン化合物を含有している。各種無機充填剤は、前述の含フッ素共重合体との親和性が低く、充填量を増加すると凝集する。その結果として絶縁破壊電圧の低下を引き起こす。本発明においては充填剤の凝集を防ぐため、エポキシ基を有するシラン化合物を添加する。
本発明の実施の形態に用いられるエポキシ基を有するシラン化合物としては、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシランなどが挙げられるが、これらに限られるものではない。3−グリシドキシプロピルトリメトキシシランを用いることが好ましい。
3−グリシドキシプロピルトリメトキシシランを例に無機充填剤の凝集を防止するメカニズムを以下に説明する。
3−グリシドキシプロピルトリメトキシシランは、下記の通り、分子構造中にエポキシ基及びシラノール基を有する。
Figure 0006311502
図1は、エポキシ基を有するシラン化合物である3−グリシドキシプロピルトリメトキシシランと無機充填剤間の結合状態を示す模式図である。
シランのシラノール基が加水分解し、無機充填剤最表面の−OH基と反応することで、無機充填剤が表面処理される。
また、下記構造式は、テトラフルオロエチレン−炭素数3〜4のα―オレフィン系共重合体とエポキシ基を有するシラン化合物とが反応して得られる反応物を示す。ポリマ構造中のテトラフルオロエチレン部とシラン化合物のエポキシ基が反応する。上記のメカニズムにより、充填剤−含フッ素共重合体間の親和性を向上し、無機充填剤の凝集を防止することができる。
Figure 0006311502
エポキシ基を有するシラン化合物の配合量は、上記無機充填剤の配合量に対し0.2〜2質量%である。好ましくは、0.3〜1質量%である。0.2質量%より少ない場合、無機充填剤が凝集し、絶縁破壊電圧が不十分である。2質量%より多い場合、引張伸びが低下する。
シラン化合物としては、エポキシ基を有するもの以外にも、ビニル基、メタクリル基、メルカプト基、アミノ基を有する化合物があるが、これらの場合、十分な効果が得られない。例えば、ビニル基を有するシラン化合物の沸点は多くが100−200℃程度であり、エチレン−テトラフルオロエチレン系共重合体の融点250℃以上で混練すると揮発し、十分な効果が得られない。一方、エポキシ基を有するシラン化合物の多くは、沸点が250−300℃であり、揮発を防ぐことができる。
シラン化合物はあらかじめ無機充填剤の表面に表面処理剤として作用させたものを使用してもよい。その表面処理方法は、乾式・湿式のどちらでもよく、特に制限はない。または、混練時に液状のまま添加してもよく、混練はニーダ、バンバリーのようなバッチ式ミキサーで行なっても、二軸混練機で行なってもよい。安全上、好ましくは、二軸混練機であり、シラン化合物をシリンダに液添するものが望ましい。
(架橋助剤)
本発明の実施の形態に係る含フッ素エラストマー組成物は、架橋反応性を高めるために、架橋助剤を含有している。
架橋助剤としては、トリアリルイソシアヌレート、トリアリルシアヌレート、トリアリルトリメリテート、テトラアリルピロメリテート等のアリル型化合物が特に好ましい。
本実施の形態における架橋助剤の配合量は、上記第1の含フッ素共重合体及び第2の含フッ素共重合体を含むベースポリマーの総量100質量部に対して、0.1〜3質量部であることが好ましく、0.5〜2質量部であることがより好ましい。
(その他の添加剤)
本発明の実施の形態に係る含フッ素エラストマー組成物には、上記添加剤に加え、適宜、充填剤、架橋剤、滑剤、酸化防止剤、難燃剤、可塑剤などを添加してもよい。
〔絶縁電線〕
本発明の実施形態に係る絶縁電線は、導体と、導体の外周に被覆された、本発明の実施形態に係る上記含フッ素エラストマー組成物からなる絶縁層とを備えたことを特徴とする。
図2は、本発明の実施の形態に係る絶縁電線の一例を示す横断面図である。
図2に示すように、本実施の形態に係る絶縁電線10は、汎用の材料、例えば、純銅や錫めっき銅等からなる導体1と、導体1の外周に被覆された絶縁層2とを備える。導体1は、図2のように1本である場合に限られず、複数本の素線を撚合せたものであってもよい。
絶縁層2は、本発明の実施の形態に係る上記の含フッ素エラストマー組成物から構成され、電子線架橋等により架橋されている。
本実施の形態においては、絶縁体を単層で構成してもよく、また、多層構造とすることもできる。さらに、必要に応じて、セパレータ、編組等を施してもよい。
〔ケーブル〕
本発明の実施形態に係るケーブルは、本発明の実施形態に係る上記含フッ素エラストマー組成物を被覆材料(絶縁層及び/又はシース)として使用したことを特徴とする。
図3は、本発明の実施の形態に係るケーブルの一例を示す横断面図である。
図3に示すように、本実施の形態に係るケーブル20は、導体1に絶縁層2を被覆した絶縁電線3本を紙等の介在3と共に撚り合わせた三芯撚り線と、三芯撚り線の外周に施された押え巻きテープ4と、その外周に押出被覆されたシース5とを備える。絶縁電線は単芯でもよく、三芯以外の多芯撚り線であってもよい。
絶縁層2及びシース5は、本発明の実施の形態に係る上記の含フッ素エラストマー組成物から構成され、電子線架橋等により架橋されている。絶縁体2、シース5のどちらかだけが上記の含フッ素エラストマー組成物から構成されていてもよいが、両方であることが好ましい。
本実施の形態においては、シースを単層で構成してもよく、また、多層構造とすることもできる。さらに、必要に応じて、セパレータ、編組、金属箔によるシールドテープ等を施してもよい。
〔本発明の実施の形態の効果〕
本発明の実施の形態によれば、耐熱性、強靭性及び電気特性に優れた含フッ素エラストマー組成物、並びにこれを用いた絶縁電線及びケーブルを提供することができる。また、本発明の実施の形態によれば、無機充填剤の配合量が比較的多く、無機充填剤の凝集防止のために比較的安価なエポキシ基を有するシラン化合物を使用しているため、上記優れた特性に加え、低コスト化が可能な含フッ素エラストマー組成物、並びにこれを用いた絶縁電線及びケーブルを提供することができる。
以下に、本発明を実施例に基づいて更に詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
図2の構造の絶縁電線10を下記の通りの方法で製造し、評価を行なった。
(含フッ素エラストマー組成物の作製)
組成物の配合内容は表1〜2に記載されるとおりである。180℃に保持したニーダに各配合剤を投入し、その後260℃まで昇温させながら、溶融混練し、各実施例及び比較例の含フッ素エラストマー組成物を作製した。用いた配合剤は、表3に示すとおりである。
(絶縁電線の製造)
次に、作製した含フッ素エラストマー組成物を75mm押出機(〔設定温度〕シリンダー:260℃、ヘッド:260℃、ダイス:270℃)を用い、外径0.9mmの錫めっき銅撚線導体上に厚さ0.4mmに押出被覆した。次に、これに対し15Mradの電子線を照射して架橋させ、各実施例及び比較例の絶縁電線を製造した。
(絶縁電線の評価)
製造した絶縁電線について、下記の試験・評価を行なった。表1〜2に評価結果を示す。
1.引張試験:機械特性(強靭性)の評価
製造した絶縁電線から錫めっき銅撚線を引き抜き、チューブ形状とした各サンプルの引張強度、引張伸びを測定した。UL758準拠を目標とし、引張強度は15MPa以上を裕度がある合格(◎)とし、10.65MPa以上15MPa未満を合格(○)とし、10.65MPa未満を不合格(×)とした。引張伸びは200%以上を裕度がある合格(◎)とし、125%以上200%未満を合格(○)とし、125%未満を不合格(×)とした。
2.熱老化試験:耐熱性の評価
製造した絶縁電線から錫めっき銅撚線を引き抜き、チューブ形状とした各サンプルを232℃で168時間保持し、その後、上記1.記載の通りの引張試験を実施した。サンプルの引張強度、引張伸びを測定し、初期値(上記1.での測定値)に対する引張強度残率、引張伸び残率を求めた。UL758準拠を目標とし、引張強度残率は、95%以上を合格(○)と、95%未満を不合格(×)とした。引張伸び残率は、80%以上を合格(○)と、80%未満を不合格(×)とした。
3.絶縁破壊電圧: 電気特性の評価
製造した絶縁電線を70cmの長さに切断し、その両端末の被覆層を剥ぎ取り、両端を結合した。これ(試験試料)を水中に浸漬し、試験試料と水との間に1.5kVを1分間課電後、1kV/minの割合で昇圧して、試験試料の絶縁破壊電圧を測定した。15kV以上を裕度がある合格(◎)とし、10kV以上15kV未満を合格(○)とし、10kV未満を不合格(×)とした。
4.カットスルー抵抗: 強靭性の評価
90度の金属エッジの上に絶縁電線を置き、200℃で600gの荷重を加えて10分間、エッジと絶縁電線の導体とが導通しなければ合格(○)とし、導通したものを不合格(×)とした。
Figure 0006311502
Figure 0006311502
Figure 0006311502
本発明の規定する範囲内である実施例1〜8においては、機械特性、耐熱性、電気特性、強靭性の全てが合格であった。
比較例1においては、テトラフルオロエチレン−プロピレン共重合体量が多く、カットスルー特性が不十分であった。
比較例2においては、エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体量が多く、引張伸びが不十分であった。
比較例3においては、クレー量が多く、絶縁破壊電圧が不十分であった。
比較例4,5においては、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン量が0(未添加)のため、クレーの凝集物が残留し、絶縁破壊電圧が不十分であった。
比較例6においては、無機充填剤に対する3−グリシドキシプロピルトリメトキシシランの添加量が多く、引張伸びが不十分であった。
比較例7においては、クレーの粒径が1.0μm未満であり、耐熱性(引張伸び残率)が不十分であった。
比較例8においては、タルクの粒径が10μmを超えており、引張強度が不十分であった。
なお、本発明は、上記実施の形態及び実施例に限定されず種々に変形実施が可能である。
10:絶縁電線、20:ケーブル
1:導体、2:絶縁層、3:介在、4:押え巻きテープ、5:シース

Claims (5)

  1. テトラフルオロエチレン−炭素数3〜4のα−オレフィン系共重合体(第1の含フッ素共重合体)及びエチレン−テトラフルオロエチレン系共重合体(第2の含フッ素共重合体)を含むベースポリマーと、平均粒径1μm〜10μmの無機充填剤と、エポキシ基を有するシラン化合物と、架橋助剤とを含有し、
    前記第1の含フッ素共重合体と前記第2の含フッ素共重合体の配合質量比(第1の含フッ素共重合体:第2の含フッ素共重合体)は、90:10〜50:50であり、
    前記無機充填剤の配合量は、前記ベースポリマー100質量部に対して60〜120質量部であり、
    前記エポキシ基を有するシラン化合物の配合量は、前記無機充填剤の配合量に対し0.2〜2質量%である含フッ素エラストマー組成物。
  2. 前記無機充填剤は、タルク又はクレーであり、前記エポキシ基を有するシラン化合物は、3−グリシドキシプロピルトリメトキシシランである請求項1に記載の含フッ素エラストマー組成物。
  3. 導体と、前記導体の外周に被覆された、請求項1又は請求項2に記載の含フッ素エラストマー組成物からなる絶縁層とを備えた絶縁電線。
  4. 請求項1又は請求項2に記載の含フッ素エラストマー組成物からなるシースを備えたケーブル。
  5. 請求項3に記載の絶縁電線を備えたケーブル。
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