JP2011084683A - 難燃性樹脂組成物、絶縁電線及びケーブル - Google Patents
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Abstract
【課題】架橋処理により、優れた柔軟性、耐摩耗性、難燃性及び耐熱性を有する難燃性樹脂組成物、絶縁電線及びケーブルを提供すること。
【解決手段】分子骨格中に酸素原子が含有されているエチレン系重合体を含むポリオレフィン樹脂と、金属水酸化物粒子と、アクリロキシ系シランカップリング剤と、ビニル系シランカップリング剤とを含有し、金属水酸化物粒子が、ポリオレフィン樹脂100質量部に対して50〜280質量部の割合で含まれ、アクリロキシ系シランカップリング剤がポリオレフィン樹脂100質量部に対して0.1〜5質量部の割合で含まれ、ビニル系シランカップリング剤がポリオレフィン樹脂100質量部に対して0.1〜5質量部の割合で含まれている難燃性樹脂組成物。
【選択図】なし
【解決手段】分子骨格中に酸素原子が含有されているエチレン系重合体を含むポリオレフィン樹脂と、金属水酸化物粒子と、アクリロキシ系シランカップリング剤と、ビニル系シランカップリング剤とを含有し、金属水酸化物粒子が、ポリオレフィン樹脂100質量部に対して50〜280質量部の割合で含まれ、アクリロキシ系シランカップリング剤がポリオレフィン樹脂100質量部に対して0.1〜5質量部の割合で含まれ、ビニル系シランカップリング剤がポリオレフィン樹脂100質量部に対して0.1〜5質量部の割合で含まれている難燃性樹脂組成物。
【選択図】なし
Description
本発明は、難燃性樹脂組成物、絶縁電線及びケーブルに関する。
ポリ塩化ビニル組成物は電気絶縁性が良く、優れた難燃性、機械特性を有していることから電線被覆、チューブ、テープ、包装材、建材等に広く使用されているが、近年では環境や人体への影響の懸念から、安定剤として鉛を使用しない非鉛ポリ塩化ビニル樹脂が主流となりつつある。
上記非鉛ポリ塩化ビニル樹脂は、分子構造中に塩素原子を含有し、燃焼時に有毒、有害な塩素ガスを発生する。そのため、より安全性の高い、いわゆるエコマテリアルを使用した塩化ビニル電線代替品が検討されている。
このようなエコマテリアルとして、ポリエチレン(PE)、エチレン酢酸ビニル共重合体(EVA)及びエチレンアクリル酸エチル共重合体(EEA)などのエチレン系材料や、それらとポリプロピレン(PP)、エチレンプロピレンゴム(EPゴム)、スチレン系エラストマなどのポリオレフィンをブレンドした複合樹脂をベースに、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウムなどの金属水酸化物を多量に添加してなるものが知られている(例えば特許文献1参照)。
特に、下記特許文献2には、融点110℃以上でかつ曲げ剛性率10MPa以下のポリオレフィンとカルボン酸変性ポリマからなる軟質系のブレンドポリマ100質量部に対して、ビニルトリエトキシシランなどのビニルシランやγ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシランなどのシランカップリング剤で表面処理した金属水酸化物を30〜150重量部配合した組成物によって、絶縁電線の難燃性、可撓性及び耐摩耗性を高めることが提案されている。
しかし、上記特許文献2に記載の樹脂組成物は、耐摩耗性の点で不十分であった。ここで、耐摩耗性と柔軟性とは互いにトレードオフの関係にあることが知られており、耐摩耗性を改良しようとすると、一般には柔軟性が損なわれてしまう。
このため、軟質系ポリマのもつ柔軟性を損なわずに、耐摩耗性を改良できる難燃性樹脂組成物が求められていた。即ち、優れた柔軟性、耐摩耗性及び難燃性を有する難燃性樹脂組成物が求められていた。
また樹脂組成物には、耐熱性も求められるところ、特許文献2の樹脂組成物は、耐熱性の点でも改良の余地があった。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、架橋処理により、優れた柔軟性、耐摩耗性、難燃性及び耐熱性を有する難燃性樹脂組成物、絶縁電線及びケーブルを提供することを目的とする。
本発明者らは上記課題を解決するため鋭意研究を重ねた結果、特許文献2でシランカップリング剤として用いられているメタクリロキシ系シランカップリング剤においては、そのメタクリロキシ基のメチル基の部分が立体障害となって、金属水酸化物粒子と軟質系のブレンドポリマとのイオン的な分子間相互作用を弱め、そのために軟質系ポリマを用いた組成物において耐摩耗性が不十分となるのではないかと考えた。そこで、本発明者らは、メタクリロキシ系シランカップリング剤に代えて、メタクリロキシ基からメチル基を除いたアクリロキシ基を有するシランカップリング剤を用いてみたところ、軟質系ポリマを用いながらも耐摩耗性が顕著に向上するという知見を得た。しかし、シランカップリング剤として、アクリロキシ系シランカップリング剤を使用するだけでは、これらを含む難燃性樹脂組成物を架橋処理しても耐熱性を十分に付与することができなかった。そこで、本発明者らはさらに鋭意研究を重ねた結果、アクリロキシ系シランカップリング剤に比べて高い耐熱性を付与しうるが十分な耐摩耗性を付与できないビニル系シランカップリング剤をアクリロキシ系シランカップリング剤とともに配合してみたところ、耐摩耗性を低下させることなく耐熱性を向上させることができるという知見を得た。そして、本発明者らは更に鋭意研究を重ねた結果、下記の発明により、上記課題を解決し得ることを見出した。
即ち本発明は、分子骨格中に酸素原子が含有されているエチレン系重合体を含むポリオレフィン樹脂と、金属水酸化物粒子と、アクリロキシ系シランカップリング剤と、ビニル系シランカップリング剤とを含有し、前記金属水酸化物粒子が前記ポリオレフィン樹脂100質量部に対して50〜280質量部の割合で含まれ、前記アクリロキシ系シランカップリング剤が前記ポリオレフィン樹脂100質量部に対して0.1〜5質量部の割合で含まれ、前記ビニル系シランカップリング剤が前記ポリオレフィン樹脂100質量部に対して0.1〜5質量部の割合で含まれていることを特徴とする難燃性樹脂組成物である。
この難燃性樹脂組成物によれば、架橋処理により、優れた柔軟性、耐摩耗性、難燃性及び耐熱性を有することが可能となる。
上記難燃性樹脂組成物により、優れた耐摩耗性が得られる理由はいまだ明らかではないが、本発明者らは、以下のように推測している。即ちアクリロキシ系シランカップリング剤のアクリロキシ基は、メタアクリロキシ基からメチル基を除いたものとなっている。このため、メチル基による立体障害がなくなって、ポリオレフィン樹脂とシランカップリング剤との間、及び金属水酸化物粒子とシランカップリング剤と間のイオン的な分子間相互作用が強まり、ポリオレフィン樹脂と金属水酸化物粒子との結合が補強される。特に、ポリオレフィン樹脂に、分子骨格中に酸素原子が含有されているエチレン系重合体が含まれるため、そのエチレン系重合体中の酸素原子と、シランカップリング剤のアクリロキシ基とのイオン的な分子間相互作用が強くなり、ポリオレフィン樹脂と金属水酸化物粒子との結合が十分に補強される。その結果、ポリオレフィン樹脂自体の硬度を高めなくても、絶縁電線の耐摩耗性を向上させることができるのではないかと本発明者らは推測している。
また上記難燃性樹脂組成物により、優れた耐摩耗性が得られることに加え、優れた耐熱性が得られる理由はいまだ明らかではないが、本発明者らは、以下のように推測している。即ちビニル系シランカップリング剤はアクリロキシ系シランカップリング剤よりも高い耐熱性を付与し得るものの、十分な耐摩耗性を付与することができない。このため、アクリロキシ系シランカップリング剤とビニル系シランカップリング剤とを併用して難燃性樹脂組成物を架橋処理すると、シランカップリング剤としてアクリロキシ系シランカップリング剤を単独で使用した場合に比べて高い耐熱性を付与し得るものの、耐摩耗性については低下するものと考えられた。即ち、優れた耐熱性と優れた耐摩耗性とを両立させることは困難であると考えられた。にもかかわらず、難燃性樹脂組成物においてアクリロキシ系シランカップリング剤とビニル系シランカップリング剤とを併用した結果、耐摩耗性を低下させることなく優れた耐熱性を付与できたことから、アクリロキシ系シランカップリング剤とビニル系シランカップリング剤とを併用することにより、その相乗効果として、優れた耐摩耗性及び耐熱性を付与することができたのではないかと本発明者らは推測している。
上記エチレン系重合体は、エチレン−エチルアクリレート共重合体及びエチレン−酢酸ビニル共重合体からなる群より選ばれる少なくとも一種であることが好ましい。
この難燃性樹脂組成物によれば、架橋処理により、難燃性及び柔軟性をより向上させることができる。
また本発明は、導体と、前記導体を被覆する絶縁層とを備えており、前記絶縁層が、上記難燃性樹脂組成物を架橋処理してなる絶縁電線である。
さらに本発明は、導体及び前記導体を被覆する絶縁層を有する絶縁電線と、前記絶縁電線を被覆するシースとを備え、前記絶縁層及び前記シースの少なくとも一方が上記難燃性樹脂組成物を架橋処理してなるものであることを特徴とするケーブルである。
上記難燃性樹脂組成物においては、ポリオレフィン樹脂がエチレンエチルアクリレート共重合体及びエチレン酢酸ビニル共重合体からなる群より選ばれる少なくとも一種で構成されることが好ましい。
本発明によれば、優れた柔軟性、耐摩耗性、難燃性及び耐熱性を有する難燃性樹脂組成物、絶縁電線及びケーブルが提供される。
以下、本発明の実施形態について図1及び図2を用いて詳細に説明する。
[ケーブル]
図1は、本発明に係るケーブルの一実施形態を示す部分側面図、図2は、図1のII−II線に沿った断面図である。図1及び図2に示すように、ケーブル10は、絶縁電線1と、絶縁電線1を包囲する編組2と、編組2を被覆するシース3とを備えている。そして、絶縁電線1は、内部導体4と、内部導体4を被覆する絶縁層5とを有している。
図1は、本発明に係るケーブルの一実施形態を示す部分側面図、図2は、図1のII−II線に沿った断面図である。図1及び図2に示すように、ケーブル10は、絶縁電線1と、絶縁電線1を包囲する編組2と、編組2を被覆するシース3とを備えている。そして、絶縁電線1は、内部導体4と、内部導体4を被覆する絶縁層5とを有している。
ここで、絶縁層5は難燃性樹脂組成物を架橋処理してなるものであり、この難燃性樹脂組成物は、分子骨格中に酸素原子が含有されているエチレン系重合体を含むポリオレフィン樹脂と、金属水酸化物粒子と、アクリロキシ系シランカップリング剤と、ビニル系シランカップリング剤とを含有し、金属水酸化物粒子が、ポリオレフィン樹脂100質量部に対して50〜280質量部の割合で含まれ、アクリロキシ系シランカップリング剤が、ポリオレフィン樹脂100質量部に対して0.1〜5質量部の割合で含まれ、ビニル系シランカップリング剤がポリオレフィン樹脂100質量部に対して0.1〜5質量部の割合で含まれている。
このため、ケーブル10は、優れた柔軟性、耐摩耗性、難燃性及び耐熱性を有することが可能となる。
[ケーブルの製造方法]
次に、上述したケーブル10の製造方法について説明する。
次に、上述したケーブル10の製造方法について説明する。
(導体)
まず内部導体4を準備する。内部導体4は、1本の素線のみで構成されてもよく、複数本の素線を束ねて構成されたものであってもよい。また、内部導体4は、導体径や導体の材質などについて特に限定されるものではなく、用途に応じて適宜定めることができる。
まず内部導体4を準備する。内部導体4は、1本の素線のみで構成されてもよく、複数本の素線を束ねて構成されたものであってもよい。また、内部導体4は、導体径や導体の材質などについて特に限定されるものではなく、用途に応じて適宜定めることができる。
(難燃性樹脂組成物)
一方、上記難燃性樹脂組成物を準備する。難燃性樹脂組成物は、上述したように、分子骨格中に酸素原子が含有されているエチレン系重合体を含むポリオレフィン樹脂と、金属水酸化物粒子と、アクリロキシ系シランカップリング剤と、ビニル系シランカップリング剤とを含有するものである。
一方、上記難燃性樹脂組成物を準備する。難燃性樹脂組成物は、上述したように、分子骨格中に酸素原子が含有されているエチレン系重合体を含むポリオレフィン樹脂と、金属水酸化物粒子と、アクリロキシ系シランカップリング剤と、ビニル系シランカップリング剤とを含有するものである。
(ポリオレフィン樹脂)
ポリオレフィン樹脂は、上述したように、分子骨格中に酸素原子が含有されているエチレン系重合体を含むものである。ここで、上記のエチレン系重合体は、エチレンに由来する構造単位を含むものを意味する。上記のようなエチレン系重合体としては、例えばエチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン−エチルアクリレート共重合体(EEA)、エチレン−メチルアクリレート共重合体(EMA)、エチレン−エチルメタクリレート共重合体(EEA)、ポリメチルメタアクリレート(PMMA)を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
ポリオレフィン樹脂は、上述したように、分子骨格中に酸素原子が含有されているエチレン系重合体を含むものである。ここで、上記のエチレン系重合体は、エチレンに由来する構造単位を含むものを意味する。上記のようなエチレン系重合体としては、例えばエチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)、エチレン−エチルアクリレート共重合体(EEA)、エチレン−メチルアクリレート共重合体(EMA)、エチレン−エチルメタクリレート共重合体(EEA)、ポリメチルメタアクリレート(PMMA)を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
中でも、柔軟性及び難燃性の点から、EVA、EEA又はこれらの混合物が好ましい。
さらにこれらの中でも、より難燃性に優れることから、EVAが好ましい。
上記ポリオレフィン樹脂は、分子骨格中に酸素原子が含有されているエチレン系重合体のほか、分子骨格中に酸素原子を含まないエチレン系重合体をさらに含んでいてもよい。このようなエチレン系重合体としては、例えばEPDM、LDPE、HDPE、EPMなどが挙げられるが、EPDMが難燃性樹脂組成物に柔軟性を付与できることから好ましく用いられる。
ポリオレフィン樹脂が、EVAとEPDMとで構成される場合、ポリオレフィン樹脂中のEVAの配合率は、柔軟性及び絶縁特性の点から、20〜80質量%であることが好ましく、30〜70質量%であることがより好ましい。
(金属水酸化物粒子)
金属水酸化物粒子は金属水酸化物からなるものであり、金属水酸化物としては、例えば水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化アルミニウムなどが例示できる。中でも、水酸化マグネシウムが好ましい。これは、水酸化マグネシウムが加工性や難燃性に特に優れるためである。
金属水酸化物粒子は金属水酸化物からなるものであり、金属水酸化物としては、例えば水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化アルミニウムなどが例示できる。中でも、水酸化マグネシウムが好ましい。これは、水酸化マグネシウムが加工性や難燃性に特に優れるためである。
金属水酸化物粒子は、ポリオレフィン樹脂100質量部に対して50〜280質量部の割合で含まれている。金属水酸化物粒子がポリオレフィン樹脂100質量部に対して50質量部未満の割合で含まれていると、難燃性が顕著に低下する。また金属水酸化物粒子がポリオレフィン樹脂100質量部に対して280質量部を超える割合で含まれていると、優れた難燃性は得られるものの、機械強度、柔軟性及び耐摩耗性のいずれも低下する。
(アクリロキシ系シランカップリング剤)
アクリロキシ系シランカップリング剤は、アクリロキシ基を有するシランカップリング剤であればよく、このようなアクリロキシ系シランカップリング剤としては、例えば3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリエトキシシランが例示できる。
アクリロキシ系シランカップリング剤は、アクリロキシ基を有するシランカップリング剤であればよく、このようなアクリロキシ系シランカップリング剤としては、例えば3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリエトキシシランが例示できる。
アクリロキシ系シランカップリング剤は、上述したように、ポリオレフィン樹脂100質量部に対して0.1〜5質量部の割合で含まれている。アクリロキシ系シランカップリング剤がポリオレフィン樹脂100質量部に対して0.1質量部未満の割合で含まれていると、耐摩耗性が低下する。またアクリロキシ系シランカップリング剤がポリオレフィン樹脂100質量部に対して5質量部を超える割合で含まれていても、それ以上の効果は得られにくい。
アクリロキシ系シランカップリング剤は、耐摩耗性を向上させる観点から、ポリオレフィン樹脂100質量部に対して0.3〜3質量部の割合で含まれていることが好ましく、0.5〜2質量部の割合で含まれていることがより好ましい。
(ビニル系シランカップリング剤)
ビニル系シランカップリング剤は、ビニル基を有するシランカップリング剤であればよく、このようなビニル系シランカップリング剤としては、例えばビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(2−メトキシエトキシ)シラン、アリルトリクロロシラン、アリルトリメトキシシラン、アリルトリエトキシシラン、ジエトキシメチルビニルシラン、トリクロロビニルシラン、トリエトキシビニルシランが例示できる。
ビニル系シランカップリング剤は、ビニル基を有するシランカップリング剤であればよく、このようなビニル系シランカップリング剤としては、例えばビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(2−メトキシエトキシ)シラン、アリルトリクロロシラン、アリルトリメトキシシラン、アリルトリエトキシシラン、ジエトキシメチルビニルシラン、トリクロロビニルシラン、トリエトキシビニルシランが例示できる。
ビニル系シランカップリング剤は、上述したように、ポリオレフィン樹脂100質量部に対して0.1〜5質量部の割合で含まれている。ビニル系シランカップリング剤がポリオレフィン樹脂100質量部に対して0.1質量部未満の割合で含まれていると、耐熱性が低下する。またビニル系シランカップリング剤がポリオレフィン樹脂100質量部に対して5質量部を超える割合で含まれていてもそれ以上の効果はみられない。
ビニル系シランカップリング剤は、耐熱性を向上させる観点から、ポリオレフィン樹脂100質量部に対して0.3〜3質量部の割合で含まれていることが好ましく、0.5〜2質量部の割合で含まれていることがより好ましい。
ビニル系シランカップリング剤は、アクリロキシ系シランカップリング剤とともに、上記金属水酸化物粒子の表面に付着させてもよい。このビニル系シランカップリング剤をアクリロキシ系シランカップリング剤とともに金属水酸化物粒子の表面に付着させる方法としては、例えば金属水酸化物粒子をビニル系シランカップリング剤とアクリロキシ系シランカップリング剤とで表面処理する方法が挙げられる。金属水酸化物粒子の表面にビニル系シランカップリング剤及びアクリロキシ系シランカップリング剤を付着させたものは、具体的には、金属水酸化物粒子に、ビニル系シランカップリング剤及びアクリロキシ系シランカップリング剤を添加して混合し、混合物を得た後、この混合物を40〜75℃にて10〜40分乾燥し、乾燥した混合物をヘンシェルミキサ、アトマイザなどにより粉砕することによって得ることができる。
なお、ポリオレフィン樹脂100質量部に対して、金属水酸化物粒子が250〜280質量部の割合で含まれ、アクリロキシ系シランカップリング剤が0.1〜5質量部の割合で含まれ且つビニル系シランカップリング剤が0.1〜5質量部の割合で含まれる場合、ポリオレフィン樹脂中における分子骨格中に酸素原子が含有されているエチレン系重合体の配合率は80〜100質量%であることが好ましい。この場合、エチレン系重合体の配合率が80質量%未満の場合に比べて、耐摩耗性がより向上する傾向がある。
上記難燃性樹脂組成物は、難燃助剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、紫外線劣化防止剤、帯電防止剤、加工助剤、着色剤、滑剤、架橋助剤、無機充填剤などの充填剤を含んでもよい。
上記難燃性樹脂組成物は、例えば上記ポリオレフィン樹脂及び、金属水酸化物粒子の表面にアクリロキシ系シランカップリング剤およびビニル系シランカップリング剤を付着させたもの等を混練することにより得ることができる。混練は、例えばバンバリーミキサ、タンブラ、加圧ニーダ、混練押出機、二軸押出機、ミキシングロール等の混練機で行うことができる。
次に、上記難燃性樹脂組成物で内部導体4を被覆し、難燃性樹脂組成物を架橋処理する。こうして内部導体4上に絶縁層5を形成する。難燃性樹脂組成物の被覆は、例えば難燃性樹脂組成物を押出成形によりチューブ状に押し出して内部導体4の表面に密着させたり、上記難燃性樹脂組成物を収容したダイスに内部導体4を通したりすることによって行うことができる。架橋処理は、例えば電子線照射によって行うことができるが、難燃性樹脂組成物が有機過酸化物や硫黄などの架橋剤を含む場合には加熱によっても行うことができる。
(編組)
次に、上記絶縁電線1を編組2で包囲する。編組2は外部導体として機能し、例えば軟銅線などの金属で構成される。
次に、上記絶縁電線1を編組2で包囲する。編組2は外部導体として機能し、例えば軟銅線などの金属で構成される。
(シース)
最後に、編組2を、前記難燃性樹脂組成物で被覆し、この難燃性樹脂組成物を架橋処理する。こうして、編組2を被覆するシース3が得られる。シース3は、絶縁層を物理的又は化学的な損傷から保護するものである。
最後に、編組2を、前記難燃性樹脂組成物で被覆し、この難燃性樹脂組成物を架橋処理する。こうして、編組2を被覆するシース3が得られる。シース3は、絶縁層を物理的又は化学的な損傷から保護するものである。
以上のようにしてケーブル10が得られる。
上述したケーブル10の製造方法によれば、優れた柔軟性、耐摩耗性、難燃性及び耐熱性を有するケーブル10を得ることができる。
本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。例えば上記実施形態では、絶縁電線4の絶縁層5及びシース3が上記の難燃樹脂組成物を架橋処理したもので構成されているが、絶縁層5が通常の絶縁樹脂で構成され、シース3のみが、絶縁層5を構成する難燃性樹脂組成物を架橋処理したもので構成されてもよく、また絶縁層5のみが難燃性樹脂組成物を架橋処理したもので構成されてもよい。
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明の内容をより具体的に説明するが、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。
(実施例1〜8及び比較例1〜7)
EVA、EPDM、ビニル系シラン、アクリロキシ系シラン、メタクリロキシ系シラン、水酸化マグネシウム及び酸化防止剤を表1及び表2に示す配合比で配合し、バンバリーミキサによって150℃にて15分間混練し、難燃性樹脂組成物を得た。
EVA、EPDM、ビニル系シラン、アクリロキシ系シラン、メタクリロキシ系シラン、水酸化マグネシウム及び酸化防止剤を表1及び表2に示す配合比で配合し、バンバリーミキサによって150℃にて15分間混練し、難燃性樹脂組成物を得た。
上記EVA、EPDM、ビニル系シラン、アクリロキシ系シラン、メタクリロキシ系シラン、水酸化マグネシウム及び酸化防止剤としてはそれぞれ以下のものを用いた。
(1)EVA
エバフレックスEV−180(商品名、三井デュポンポリケミカル社製)
(2)EPDM
三井EPT X−75(商品名、三井化学社製)
(3)ビニル系シラン
ビニルトリメトキシシラン(商品名:KBM1003、信越化学工業社製)
(4)アクリロキシ系シラン
3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン(商品名:KBM5103、信越化学工業社製)
(5)メタクリロキシ系シラン
γ-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(商品名:KBM503、信越化学工業社製)
(6)水酸化マグネシウム
キスマ5(商品名、協和化学社製)
(7)酸化防止剤
フェノール系酸化防止剤(商品名:Irganox1010、チバ・ジャパン社製)
エバフレックスEV−180(商品名、三井デュポンポリケミカル社製)
(2)EPDM
三井EPT X−75(商品名、三井化学社製)
(3)ビニル系シラン
ビニルトリメトキシシラン(商品名:KBM1003、信越化学工業社製)
(4)アクリロキシ系シラン
3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン(商品名:KBM5103、信越化学工業社製)
(5)メタクリロキシ系シラン
γ-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(商品名:KBM503、信越化学工業社製)
(6)水酸化マグネシウム
キスマ5(商品名、協和化学社製)
(7)酸化防止剤
フェノール系酸化防止剤(商品名:Irganox1010、チバ・ジャパン社製)
その後、押出機にて上記の難燃性樹脂組成物をチューブ状に押し出し、導体(素線数58本/素線径0.26mm)上に、厚さ0.7mmとなるように難燃性樹脂組成物を被覆した。そして、難燃性樹脂組成物に対して電子線照射による架橋処理を行った。このときの電子線の照射量は100kGyとした。こうして外径3.7mmの絶縁電線を得た。
上記のようにして得られた実施例1〜8及び比較例1〜7の絶縁電線について、引張破断強度及び引張破断伸びの測定、並びに、耐摩耗性、難燃性及び耐熱性の評価を以下のようにして行った。
(引張破断強度)
実施例1〜8及び比較例1〜7の絶縁電線について、引張速度200mm/min、標線間距離20mmの試験条件で引張破断強度を測定した。そして、引張破断強度が10MPa以上である絶縁電線を合格とし、10MPa未満である絶縁電線を不合格とした。結果を表1及び表2に示す。
実施例1〜8及び比較例1〜7の絶縁電線について、引張速度200mm/min、標線間距離20mmの試験条件で引張破断強度を測定した。そして、引張破断強度が10MPa以上である絶縁電線を合格とし、10MPa未満である絶縁電線を不合格とした。結果を表1及び表2に示す。
(機械特性)
機械特性は、実施例1〜8及び比較例1〜7の絶縁電線について、引張速度200mm/min、標線間距離20mmの試験条件で引張破断伸びを測定することにより評価した。即ち引張破断伸びが150%以上である絶縁電線を合格とし、150%未満である絶縁電線を不合格とした。結果を表1及び表2に示す。
機械特性は、実施例1〜8及び比較例1〜7の絶縁電線について、引張速度200mm/min、標線間距離20mmの試験条件で引張破断伸びを測定することにより評価した。即ち引張破断伸びが150%以上である絶縁電線を合格とし、150%未満である絶縁電線を不合格とした。結果を表1及び表2に示す。
(耐摩耗性)
実施例1〜8及び比較例1〜7の絶縁電線についての耐摩耗性の評価は、スクレープ試験(ISO6722)に基づいて以下の手順で行った。即ち、φ0.45mmのニードルを、荷重7Nで絶縁電線の表面に押し当てながら、その絶縁電線の表面上を往復摩耗させた。そのときニードルが絶縁電線内の導体に接触するまでの往復回数を測定した。そして、絶縁電線をニードルに対して移動させた後、その長手方向を中心軸として90°回転させ、そのときニードルに対向する個所でも上記と同様に往復回数を測定した。この操作を12回繰り返して行い、その平均値を求めた。そして、この測定した往復回数の平均値が1500回以上である絶縁電線を合格とし、1500回未満である絶縁電線を不合格とした。なお、測定は、往復回数が5000回を超えた時点で終了させた。結果を表1及び表2に示す。
実施例1〜8及び比較例1〜7の絶縁電線についての耐摩耗性の評価は、スクレープ試験(ISO6722)に基づいて以下の手順で行った。即ち、φ0.45mmのニードルを、荷重7Nで絶縁電線の表面に押し当てながら、その絶縁電線の表面上を往復摩耗させた。そのときニードルが絶縁電線内の導体に接触するまでの往復回数を測定した。そして、絶縁電線をニードルに対して移動させた後、その長手方向を中心軸として90°回転させ、そのときニードルに対向する個所でも上記と同様に往復回数を測定した。この操作を12回繰り返して行い、その平均値を求めた。そして、この測定した往復回数の平均値が1500回以上である絶縁電線を合格とし、1500回未満である絶縁電線を不合格とした。なお、測定は、往復回数が5000回を超えた時点で終了させた。結果を表1及び表2に示す。
(難燃性)
実施例1〜8及び比較例1〜7の絶縁電線について、ISO6722の45度傾斜燃焼試験に基づき、以下のようにし難燃性評価を行った。即ち、70秒以内で消火し、500mm中の上部50mmが残っている絶縁電線を合格とし、そうでない絶縁電線を不合格とした。結果を表1及び表2に示す。
実施例1〜8及び比較例1〜7の絶縁電線について、ISO6722の45度傾斜燃焼試験に基づき、以下のようにし難燃性評価を行った。即ち、70秒以内で消火し、500mm中の上部50mmが残っている絶縁電線を合格とし、そうでない絶縁電線を不合格とした。結果を表1及び表2に示す。
(耐熱性)
ISO6722に基づいて、以下のようにして絶縁電線の耐熱性を評価した。即ち、125℃のオーブン中に絶縁電線を4時間設置し、4.7Nの荷重で4時間、厚さ0.7mmの金属製ブレードのエッジを押し当てた。そして、絶縁電線を6mmφマンドレルに巻き付けた後に、エッジを押し当てた部分に対して耐電圧試験を行った。このとき、絶縁破壊が生じない絶縁電線を合格とし、絶縁破壊が生じる絶縁電線を不合格とした。結果を表1及び表2に示す。
ISO6722に基づいて、以下のようにして絶縁電線の耐熱性を評価した。即ち、125℃のオーブン中に絶縁電線を4時間設置し、4.7Nの荷重で4時間、厚さ0.7mmの金属製ブレードのエッジを押し当てた。そして、絶縁電線を6mmφマンドレルに巻き付けた後に、エッジを押し当てた部分に対して耐電圧試験を行った。このとき、絶縁破壊が生じない絶縁電線を合格とし、絶縁破壊が生じる絶縁電線を不合格とした。結果を表1及び表2に示す。
なお、引張破断強度、機械特性(引張破断伸び)、難燃性及び耐熱性の評価結果については、表1及び表2中、合格である場合には「○」と表示し、不合格である場合には「×」と表示した。
表1及び表2に示す結果より、比較例1〜7の絶縁電線は、耐摩耗性、難燃性及び耐熱性のうちの少なくとも1つについて合格基準に達していないことが分かる。これに対し、実施例1〜8の絶縁電線は、耐摩耗性、難燃性及び耐熱性の全てについて合格基準に達しており、柔軟性の高い軟質系のポリマであるEVA、EPDMのブレンドポリマをベース樹脂としていることから、柔軟性、耐摩耗性、難燃性及び耐熱性の点で優れることが分かった。
このことから、本発明の難燃性樹脂組成物によれば、優れた柔軟性、耐摩耗性、難燃性及び耐熱性を有することが確認された。
1…絶縁電線、2…編粗、3…シース、4…内部導体、5…絶縁層、10…ケーブル
Claims (4)
- 分子骨格中に酸素原子が含有されているエチレン系重合体を含むポリオレフィン樹脂と、
金属水酸化物粒子と、
アクリロキシ系シランカップリング剤と、
ビニル系シランカップリング剤とを含有し、
前記金属水酸化物粒子が前記ポリオレフィン樹脂100質量部に対して50〜280質量部の割合で含まれ、
前記アクリロキシ系シランカップリング剤が前記ポリオレフィン樹脂100質量部に対して0.1〜5質量部の割合で含まれ、
前記ビニル系シランカップリング剤が前記ポリオレフィン樹脂100質量部に対して0.1〜5質量部の割合で含まれていること、
を特徴とする難燃性樹脂組成物。 - 前記エチレン系重合体が、エチレンエチルアクリレート共重合体及びエチレン酢酸ビニル共重合体からなる群より選ばれる少なくとも一種である請求項1に記載の難燃性樹脂組成物。
- 導体と、
前記導体を被覆する絶縁層と、
を備えており、
前記絶縁層が、請求項1又は2に記載の難燃性樹脂組成物
を架橋処理してなること、
を特徴とする絶縁電線。 - 内部導体及び前記内部導体を被覆する絶縁層を有する絶縁電線と、
前記絶縁電線を被覆するシースとを備え、
前記絶縁層及び前記シースの少なくとも一方が請求項1又は2に記載の難燃性樹脂組成物を架橋処理してなるものであることを特徴とするケーブル。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2009240002A JP2011084683A (ja) | 2009-10-19 | 2009-10-19 | 難燃性樹脂組成物、絶縁電線及びケーブル |
Applications Claiming Priority (1)
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JP2009240002A Pending JP2011084683A (ja) | 2009-10-19 | 2009-10-19 | 難燃性樹脂組成物、絶縁電線及びケーブル |
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Cited By (3)
Publication number | Priority date | Publication date | Assignee | Title |
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JP2014141650A (ja) * | 2012-12-27 | 2014-08-07 | Hitachi Metals Ltd | 架橋樹脂組成物、これを用いた電線及びケーブル |
JP2017212224A (ja) * | 2012-12-27 | 2017-11-30 | 日立金属株式会社 | 電線及びケーブル |
CN114093550A (zh) * | 2021-10-11 | 2022-02-25 | 铜陵精达新技术开发有限公司 | 一种发电机用导体线材 |
-
2009
- 2009-10-19 JP JP2009240002A patent/JP2011084683A/ja active Pending
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US9640299B2 (en) | 2012-12-27 | 2017-05-02 | Hitachi Metals, Ltd. | Crosslinked resin compound and wire and cable using the same |
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