JP5388158B2 - 含ふっ素エラストマ被覆電線 - Google Patents

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本発明は、テトラフルオロエチレン−プロピレン系共重合体を用いた含ふっ素エラストマ被覆電線に関するものである。
従来から、高耐熱性および可とう性が要求される電線の被覆材料として、テトラフルオロエチレン−プロピレン系共重合体が用いられている。
テトラフルオロエチレン−プロピレン系共重合体は、可とう性、熱安定性、電気絶縁性、耐熱性、耐油性、耐薬品性、および難燃性に優れ、かつ、架橋可能な含ふっ素エラストマ共重合体である。
この共重合体を導体上または電線外周に被覆し、パーオキサイドを用いて加熱架橋したり、電離性放射線等を照射して架橋することによって、含ふっ素エラストマ被覆電線を得ていた(特許文献1〜4)。
特開昭63−284713号公報 特開平10−116521号公報 特開平6−181008号公報 特開平8−315646号公報 特開2000−129049号公報 特開2003−227975号公報
しかしながら、機器用電線のように小サイズの電線、例えば22AWG(American Wire Gauge )以下の電線では、例えばUL規格のVW−1のような難燃性の厳しい試験において、芯線径と絶縁体厚さの組合せによっては合格しないケースがある。このような特殊サイズに対して、塩素系や臭素系の難燃剤を加えて高難燃化する手法があるが、最近の環境保護の趨勢から、これらの難燃剤を規制する傾向がある。
そこで、本発明は上記課題を解決するため、難燃性をより向上し、かつ環境に配慮した含ふつ素エラストマ被覆電線を提供することにある。
上記目的を達成するために請求項1の発明は、芯線サイズが22AWG以下で、かつ絶縁体肉厚が0.4mm以上である含ふっ素エラストマ電線において、テトラフルオロエチレン−プロピレン系共重合体100質量部に対して、すず酸亜鉛、ほう酸亜鉛、ほう酸カルシウム、メラミンシアヌレートから選ばれた1種または2種以上の難燃助剤を0.5〜20質量部添加してなり、塩素系や臭素系の難燃剤を含まない組成物を導体の外周に被覆層として形成した被覆電線が、UL VW−1の垂直難燃試験を満足し、熱老化後の引張強さ残率が80%以上、伸び残率が80%以上であることを特徴とする含ふっ素エラストマ被覆電線である。
請求項2の発明は、被覆層を架橋剤を用いて又は電子線や紫外線を照射して架橋処理してなる請求項1記載の含ふっ素エラストマ被覆電線である。
請求項3の発明は、テトラフルオロエチレン−プロピレン系共重合体100質量部に対して、シリカ又は炭酸カルシウムからなる充填剤を5〜35質量部添加してなる請求項1又は2記載の含ふっ素エラストマ被覆電線である。
本発明によれば、難燃性に優れた含ふっ素エラストマ被覆電線を得ることができる効果を発揮する。
以下、本発明の好適な一実施の形態を詳述する。
テトラフルオロエチレン−プロピレン系共重合体はそれ自身高い難燃性を持っている。
しかし、芯線サイズが22AWG以下(導体径0.6438mm以下)で、かつ絶縁体肉厚が0.4mm以上の電線構造においては、UL VW−1のような垂直難燃性を満足しない場合が生じる。
そこで本発明において、テトラフルオロエチレン−プロピレン系共重合体100質量部に対して、すず酸亜鉛、ほう酸亜鉛、ほう酸カルシウム、メラミンシアヌレートから選ばれた1種または2種以上の難燃助剤を0.5〜20質量部添加することにより、機械的な特性や、耐熱性を損なうことなく難燃性を向上することを見出した。
一般に難燃剤の添加は耐熱老化特性の低下を招くが、本発明は上記難燃剤を選択することにより難燃性と耐熱老化特性の両特性を得ることができる。
これらの難燃助剤の添加量を0.5〜20質量部に制限したのは、0.5質量部未満では、難燃性に対する効果がなく、また、20質量部を超えてもそれ以上の難燃効果はなく、むしろ耐熱性を低下させるからである。より好ましくは、5〜15質量部である。
テトラフルオロエチレン−プロピレン系共重合体は、主成分であるテトラフルオロエチレンおよびプロピレンと、これらと共重合可能な成分とで構成される。
テトラフルオロエチレンおよびプロピレンと共重合可能な成分として、例えば、エチレン、ブテン−1、イソブテン、アクリル酸およびそのアルキルエステル、メタクリル酸およびそのアルキルエステル、ふっ化ビニル、ふっ化ビニリデン、ヘキサフルオロブロペン、クロロエチルビニルエーテル、グリシジルビニルエーテル、クロロトリフルオロエチレン、パーフルオロアルキルビニルエーテルなどが挙げられる。
テトラフルオロエチレン−プロピレン系共重合体は、耐熱性、成形性などの面から、テトラフルオロエチレンとプロピレンとのモル比が90/l0〜45/55の範囲であることが好ましい。主成分以外の成分の含有量は、主成分に対して、30モル%以下の範囲であることが望ましい。
上記で得られた電線に電子線や紫外線等を照射したり、有機過酸化物を用いて周知の方法で架橋処理して用いることが望ましい。
なお、本発明においては、前記した成分に加えて架橋助剤、上記以外の難燃助剤、酸化防止剤、滑剤、安定剤、充填剤、着色剤、シリコーン等を添加してもよい。
以上の構成によれば、小サイズ厚肉電線に対しても優れた難燃性を有する含ふっ素エラストマ被覆電線を得ることができる。
本発明は、小サイズ厚肉電線として、芯線サイズ22AWG〜30AWGまで適用することができる。
本発明は、電線被覆材の他に、耐熱性が要求されるゴムパッキンやシール材として応用することが可能である。
(実施例1〜5)
表1に示す配合剤を50〜60℃に加熱したロールで15分間均一に混練してコンパウンドを形成する。
Figure 0005388158
表1において、テトラフルオロエチレン−プロピレン系共重合体である旭硝子社製のアフラス150E、150C、150CSは、それぞれふっ素含有量57%である。また、難燃助剤としてのほう酸亜鉛、ほう酸カルシウム、すず酸亜鉛、メラミンシアヌレートの平均粒径は10μm以下が望ましい。
その後、このコンパウンドを、ヘッドが120℃、第1シリンダーが80℃、第2シリンダーが120℃に設定された40mm押出機(L/D=24)内にそれぞれ圧入する。その後、26AWG(導体径0.4094mm、0.16mm素線7本撚り)の銅撚線の外周に厚さ0.55mmに押出して被覆層を形成すると共に、この被覆層に12気圧の蒸気をあてることによって架橋を行い、含ふっ素エラストマ被覆電線を作製する。
比較例1〜5も実施例と同様の方法にて作製する。
次に、実施例1〜5および比較例1〜5で作製したそれぞれの含ふっ素エラストマ被覆電線における機械特性、難燃性、耐熱老化性について評価した。
それぞれの持性の評価は、以下に示す方法で行った。
(1)引張特性
それぞれの含ふっ素エラストマ被覆電線から導体を抜脱した被覆層について、JIS−K−6301に準じた引張試験を行い、引張強さ(MPa)、伸び(%)を測定した。この引張試験におけるそれぞれの引張強さ、伸びの値を初期値とする。
(2)難燃性
UL subject758に準拠した垂直燃焼試験(VW−1)を行い、1分以内に自己消火したものを合格、1分を越えるものを不合格とした。
(3)耐熱老化性(耐熱性)
それぞれの含ふっ素エラストマ被覆電線から導体を抜脱した被覆層について、空気置換量200回/hrのギヤーオーブン(232℃)中で7日間保持した後、JIS−K−6301に準じた引張試験を行い、初期値に対する引張強さ残率(%)、伸び残率(%)を測定した。
実施例1〜5および比較例1〜5で作製したそれぞれの含ふっ素被覆電線における各試験結果を表1に示した。
表1に示すように、本発明である実施例1〜5の含ふつ素エラストマ被覆電線は、いずれも引張強さが12MPa以上、伸びが350%以上、難燃性が合格、熱老化後の引張強さ残率が80%以上、伸び残率が80%以上であり、機械特性、難燃性、耐熱性の全てにおいて優れている。
これに対して、比較例1および3、5は、難燃助剤が規定量の5質量部未満であり、難燃性が不合格となった。比較例2および比較例4は、難燃助剤が規定量20質量部を超えたものであり、難燃性は合格するが、耐熱老化性が著しく低下し目標の80%を下回った。

Claims (3)

  1. 芯線サイズが22AWG以下で、かつ絶縁体肉厚が0.4mm以上である含ふっ素エラストマ電線において、テトラフルオロエチレン−プロピレン系共重合体100質量部に対して、すず酸亜鉛、ほう酸亜鉛、ほう酸カルシウム、メラミンシアヌレートから選ばれた1種または2種以上の難燃助剤を0.5〜20質量部添加してなり、塩素系や臭素系の難燃剤を含まない組成物を導体の外周に被覆層として形成した被覆電線が、UL VW−1の垂直難燃試験を満足し、熱老化後の引張強さ残率が80%以上、伸び残率が80%以上であることを特徴とする含ふっ素エラストマ被覆電線。
  2. 被覆層を架橋剤を用いて又は電子線や紫外線を照射して架橋処理してなる請求項1記載の含ふっ素エラストマ被覆電線。
  3. テトラフルオロエチレン−プロピレン系共重合体100質量部に対して、シリカ又は炭酸カルシウムからなる充填剤を5〜35質量部添加してなる請求項1又は2記載の含ふっ素エラストマ被覆電線。
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