明 細 書 モールド成形用光学ガラス 技術分野
本発明はモールド成形用光学ガラス、 特に 3 5 0 °C以下のガラス転移 温度 (T g) と 3. 1以下の比重 (S g. ) を有し、 4 0 0 °C以下でプ レス成形可能な精密プレスレンズ用光学ガラスに関する。 背景技術
近年、 光学レンズ系に使用される非球面レンズゃ微小な光学レンズは 高精度の金型を用いたプレス成形技術によつて研磨することなく製造さ れることが多くなつた。 し力、し、 プレス成形に適する金型の材質には加 ェ性、 耐久性、 さらに量産性などの点から様々な制限がある。 これはプ レス成形されるガラスの物性にも制限があることを意味している。 制限 される最も重要な物性はガラスの軟化温度である。 例えば 6 0 0 - 7 0 0 °Cを超える软化温度のガラスをプレス成形することは金型寿命に大き な影響を与え、 それはレンズの量産性を低下させることとなる。 このよ うなことから従来一般に市販されているすべての種類の光学ガラスをプ レス成形することは量産性という点では困難と考えられ、 その結果プレ ス成形性に優れたガラスの開発が一つの研究課題となっている。
例えば、 特開平 2 - 12 4 7 43号公報には、 P 205 、 Z n 0を必 須成分として含み Z n 0 + B a O+S r O + C a O+Mg 0の含量を 2 8〜4 9重量%とした組成を有し、 屈伏温度 (A t) が 5 0 0 °C以下、 屈折率 ( n d ) 力 1. 53〜 1. 6 2、 アッベ数 (リ d ) 力 5 9. 0〜 6 4. 0で軟化点が低い中屈折率低分散の精密プレスレンズ用光学ガラ
スが記載されている。 この光学ガラスは、 安定性、 化学的耐久性、 耐候 性、 溶融性が優れており、 屈伏温度 (A t ) が低いのでプレス成形後研 削又は研磨を必要としないモールドプレス成形に適しているという特徴 を有している。
特開平 8— 1 8 3 6 3 2号、 特開平 1 1— 1 3 9 8 4 5号各公報にも 同様の提案がなされている。 これらの発明の共通の課題は、 ガラス軟ィ匕 温度を下げるということである。
しかし、 これらのガラスの砍 匕温度は 4 0 0 - 5 0 0 °C前後となるも のが多く、 これよりも低温度になると化学的耐久性の低下等の問題が起 こり実用的なガラスにならない。 また、 巿販光学ガラスの光学特性に一 致するように組成を選択するような場合もあり、 十分な軟化温度となら ないこともある。
リン酸塩ガラスは、 酸化物ガラスの中でも比較的軟化温度が低く、 こ れまでに低融点ガラスとしていくつか提案されている。 例えば、 特開昭 6 0— 1 7 1 2 4 4号、 特開昭 6 1— 3 6 1 3 6号、 特開平 2— 1 1 6 6 4 2号、 特開平 2 - 1 2 4 7 4 3号、 特開平 3— 4 0 9 3 4号、 特開 平 5— 1 3 2 3 3 9号、 特開平 8— 1 8 3 6 3 2号、 特開平 9— 2 7 8 4 7 9号、 特開平 9— 3 0 1 7 3 5号各公報などである。
本発明者らは先に、 上記のようなリン酸塩系の酸化物ガラス組成物に おいて、 4 0 0 °C以下、 特に 3 8 0 °C前後という低温でプレス成形でき るガラスの開発に努めた結果、 リン酸塩系ガラス組成物において、 L i 2 0 , N a 2 0 , K 2 0成分を必須的に增量する中で、 P 2 0 5 の量を增加 することなく A 1 2 0 3 を相当量含有させることが可能となりこれによ つて上記の問題が解決されることを見いだし特許出願を行った。 (特願 2 0 0 1 - 2 1 3 2 9 5号明細書)
一般に、 ガラスの軟化温度を下げるためにはフッ素の添加が有効であ
ることが知られている。 しかし、 これまでのフッリン酸塩ガラスでは、 特開昭 6 0— 2 1 0 5 4 5号、 特開昭 6 3 - 1 4 4 1 4 1号各公報等に 開示されているように、 その低屈折率性や低分散性等の光学的特性の発 現を目的に使用されることが多かった。
低融点を目的としたフッリン酸塩ガラス (ガラス転移温度の低いガラ ス) としては、 特開昭 5 7 - 2 7 9 4 1号公報に記載されているガラス が知られている。 このフッリン酸塩ガラスはガラス転移温度 (T g ) が 1 0 o °c前後と非常に低融点のガラスであるが、 低沸点化合物であるフ ッ化錫を多量に含むため、 ガラス溶融時の揮発が多く生産性が低い。 そのため、 大量生産には適していないと考えられている。 また 1 0 0 °c前後のガラス転移温度は、 光学ガラスとして考えた場合には実用的で ない。
先の特開平 2— 1 1 6 6 4 2号公報に記載されているリン酸系ガラス は、 低融点を目的としており、 フッ素を 5 %まで添加可能と書かれてい るが、 あくまでも添加成分でありフッ素を積極的に加えることによる低 融点化は目的としてはいない。
コ一ニング社の特公昭 5 9 - 3 3 5 4 5号公報 (以下、 コ一ニング公 報という) には、 約 3 5 0 °C以下のガラス転移温度 (T g ) を有するフ ッ燐酸塩系のモールド成形用低融点ガラスが開示されている。 この公知 発明は、 従来、 ガラス転移温度 (T g ) を著しく上昇させると考えられ ていた A 1 2 0 3が、 分析値で Fが 3 %よりも多量の弗化物を同時に含む 場合には、 ガラスの T gを著しく上昇しないことを見いだし該発明に到 達したものと考えられる。 そして、 この F : A 1の分析値の原子比が 0 . 7 5〜5の範囲にあることが耐久性に優れた低融点ガラスを得るのに 重要であることが述べられ、 実施例においても F : A 1の原子比が記載 されている。 コ—ニング公報の特許請求の範囲には、 酸化物基準の.重量
%で表示されているが、 これは成分組成から計算された値ではなく溶解 後のガラスの分析値から決定されている。
コーニング公報の第 2表及び第 6表中に、 各条件で溶解したときの F の残留率が記載されているが、 それによると、 9 . 1 1〜6 9 . 5 %と 大きくばらついており、 Fの揮発量が非常に多く しかも一様ではないこ とがわかる。 その原因の一つとしては、 使用されているルツボとの反応 による可能性が高い。 コ一ニング公報では、 様々なルツボが使用されて いる力、 その中には Fと反応性の非常に高い S i 0 2 系のルツボゃ、 耐 久性に影響を与える A 1 2 0 3製のルツボ等が使用されており、 得られた ガラスの組成が変動する要因の 1つになっている。 また、 実施例中では P 2 0 5や Fの揮発の原因となる結晶水を含んだ原料が使用されている。 このように、 コ一ニング公報は、 その特許請求の範囲には、 溶融条件 が一定ではなく最終ガラス組成に大きく影響を与える要素が多いにも関 わらず、 Fと一部の A 1の分析値、 F : A 1原子比が示されているだけ で、 その他の低融点化に重要で耐久性にも大きな影響を与える、 P, L i , N a , K等の成分についての分析値は全く示されていないので、 充 分な開示がなされているとは認められない。
また、 任意成分である P b O、 C d Oは、 屈折率を高める成分である ばかりでなく、 特公昭 4 0 - 1 4 3 0 1号公報に開示されているように、 低融点を与える成分として有用であり、 コ一ニング公報でも実施例の約 半分で使用されている。 その理由は、 P b O、 C d Oを使用することで F, P, L i , N a , K等の低融点を与える他の成分を減らすことがで きるため、 耐久性を向上させつつ低融点化するのに非常に有効であるか らである。 しかし P b Oや C d 0は毒性が高く耐環境性の立場からも近 年光学ガラス中から排除される傾向にありその使用は望ましくない。 本発明者らは、 先に出願した特願 2 0 0 1 - 2 1 3 2 9 5号明細書の
リン酸塩系ガラス組成物において、 L i 2 0, N a 2 0 , K 2 0成分を必 須的に増量する中で、 Ρ 2 0 5 の量を増加することなく A 1 2 0 3 を相当 量含有できることを見いだし、 耐久性に優れた低融点ガラスの発明をす るに至った。 本発明は、 更なる低融点化と耐久性の改善を目的とし、 該 目的を上記組成中に Fを必須的に含有させることによつて達成したもの である。
しかし、 本発明の必須成分がコ一ニング公報における必須成分と同じ であるために、 全体として両者はよく類似した組成となっているので、 以下にその相違点を明らかにする。
コ—二ング公報では、 従来技術で述べたような様々な問題点がある。 すなわち、 その特許請求の範囲は、 酸化物基準の重量%で表されている が、 成分組成から計算された範囲でなく溶解して得られたガラスの分析 値をもとにしたものであり、 一方、 本発明の請求の範囲は実施例の成分 組成から計算された、 酸化物基準の重量%で表示されている。 すなわち、 本発明は、 その請求の範囲は同じ酸化物基準の重量%表示であるが、 コ —ニング公報では分析値から求められているためその比較は困難である。 また実施例では、 Fと A 1の分析値しか示されていない上に、 従来技術 で示したように溶融条件等揮発に関する多くの問題があるため比較して もあまり意味がなく、 いいかえれば本発明の組成はコ一ニング公報には 実質的には開示されていないものである。
そこで、 ここでは実施例の成分組成から計算された酸化物基準の重量 %と比較する。 また本発明では、 低融点を与える成分であるがその毒性 が指摘されている P b O、 C d O等は、 耐環境性の観点から一切使用し ていないので、 実施例中 P b O、 C d Oを含まない実施例の組成と比較 を行う。
本発明及びコ一ニング公報の実施例から計算された酸化物基準の重量
%の組成範囲を第 1表に示した。 ちなみに、 コ一二ング公報の特許請求 の範囲では、 P 205 が 30〜75wt%、 1 20が3〜2 5 w t %、 A 1203 力 3〜20 w t Fが 3wt%を超え 2 4^セ%未満で? : A 1が 0. 75〜 5となっており、 実施例から計算された実際の組成範 囲との違いが非常に大きいことが分かる。
第 1表から本発明では、 P 205の範囲がコ一ニング公報の下限よりも 少なく、 また、 R2〇 (R: L i, N a, K) の範囲がコ一ニング公報 の上限よりもかなり多く、 L i 20, N a 20, K2〇を全て必須成分と して含んでいる。 また、 組成的には一部重なっているが A 1203の上限 がかなり多いことがわかる。
これは、 本発明が L i 20, Na20, K20成分を必須的に增量する 中で、 Ρ 205の量を增加する.ことなく A 1203を相当量含有できること を見いだし、 Fを必須的に含有することによつて更なる低融点化と耐久 性の改善に勤めた結果達成された結果である。
このように、 コ一ニング公報に記載された発明との組成的な違いは明 らかである。
すなわち、 本発明の第 1の目的は、 350 °C以下という低いガラス転 移温度 (Tg) と 3. 1以下の比重 (Tg) を有し、 精密プレス成形が 40 Q°C以下という低温で実施可能な、 作業性及び化学的耐久性に優れ たモールド成形用光学ガラスを提供することである。
また本発明の第 2の目的は、 屈折率 (n d) 1. 43〜1. 55、 ァ ッべ数 ( d) 55〜85の光学特性を有する光学ガラスを優れた生産 性を以て提供することである。 発明の開示
( 1 ) 成分組成から計算された酸化物基準の重量%で、
P 205が 34〜5 0 %、
L i 20力 2〜 9 %、
N a 20力"〜 28 %、
K20が 3〜 27%、
但し R20の合量が 1了〜 41% (R : L i, Na, K) 、
A 1203が 6. 5〜 3 0 %、
Z n 0力 0〜 22 %、
B a 0力く 0〜 21 %、
S r 0が 0〜 18 %、
C a 0力 0〜 16 %、
Mg 0が 0〜 14 %、
但し R' 〇の合量が 0〜34 % (R' : Zn, B a, S r , C a, Mg ) ヽ
∑ 1:02が0〜1. 5%、
Fが 1. 5〜32 %、
からなり、 350 °C以下のガラス転移温度 (Tg) と 3. 1以下の比重 (S g. ) を有し、 化学的耐久性に優れたモールド成形用光学ガラス。
(2) 好ましくは、 成分組成から計算された酸ィヒ物基準の重量%で、 P2〇5が 39〜47 %、
L i 20が 6 ~ 9 %、
320が7〜15 %、
K20が 3〜5 %、
但し R20の合量が 17〜2 6% (R: L i, Na, K) 、
A 1203が 8. 5〜22%、
ZnC^0〜17%、
B a 0が 0〜 1 7 %、
S r 0が 0〜: I 2 %、
C a 0が 0〜 1 0 %、
1^0が0〜5%、
但し R' 0の合量が 0〜3 2% (R' Z n, B a, S r , C a, Ms
) ヽ
Fが 1 2 ~2 7 %ヽ
からなり、 3 0 0 °C以下のガラス.転移温度 (Tg) と 3. 1以下の比重 (S g. ) を有し、 化学的耐久性に優れたモールド成形用光学ガラス。 本件発明の基礎出願 (特願 2 0 0 1— 33 2 5 3 1号) の組成範囲は モル%表示、 本 P CT出願の請求範囲は酸化物基準の重量%表示と異な つているが、 いずれも実施例における成分組成 (wt %) がもとになつ ている。
以下、 基礎出願の実施例 1について説明する。 基礎出願中の 〔表 1〕 の成分組成 (モル%) 表示を酸化物基準の重量%表示に変換するには、 まず 〔表 6〕 の成分組成 (wt %) に戻す。 その方法は、 各成分のモル %値にそれぞれの分子量をかけた総和を分母とする。 すなわち、 分母は、 28.79 141.95 + 12.16x29.88 + 20.52x61.98 + 9.64x94.20
+ 27.04 X 83.98 + 1.11 X 81.39 + 0.74X 123.22 - 9082.34
となる。
次に、 各成分のモル%値にその分子量をかけた値を分子として、 上記 分母で割り算をし、 それに 1 0 0をかけて成分組成 (wt %) に直す。 例えば、 P2〇5の場合は、
{ (28.79X 141.95) ÷9082.34} x 100 = 45 (w t %)
となる (基礎出願の 〔表 6〕 ) 。
他の成分についても同様に計算し求める。 このようにして全ての成分 について計算すると基礎出願の 〔表 6〕 の wt%表示になる。
次にこの成分組成 (wt %) を酸化物基準の重量%表示に変換する。 その方法は、 成分組成 (wt %) 中の弗化物成分について、 それぞれ力 チオンとァニオン (F) に分ける。 例えば、 実施例 1で使用している弗 化物は A 1 F 3 : 2 5 w t %だけである。 これを A 1と Fに分ける。
A 1 F 3の分子量は、 8 3. 9 8、 A 1の原子量は 2 6. 9 8、 Fの 原子量は 1 9. 0 0であるから、 A 1 F 3 : 2 5 w t %中の A 1の量は、 25 X (26.98÷83.98) =8.03w t % (原子重量 となり、 また、 A 1 F3 : 2 5 w t %中の Fの量は、 25X { (19.00 3) ÷83.98} =16.97 t % (原子重量%) となる。 この表している意味は、 成分組成 (wt %) 中の A 1.の割合は、 8. 0 3 %で?の割合は、 1 6. 9 7 w t %と言うことである。 つまり、 1 0 0 g中に 8. 0 3 gの A 1 と 1 6. 9 7 gの Fが存在することを意味している。
次に、 この A 1 F3中の A 1 : 8. 0 3 w t %が全て酸化物であった としたときの A 1203の量を求める。 A 1203の分子量は、 1 0 1. 9 6、 そのうち 2 A 1が 8. 0 3 w t %に相当するから、 A 1203の量は、 8.03 ÷ { (2X26.98) ÷ 101.96} =15.17 となる。 (これは、 A 1 F3 : 2 5 g中の A 1成分を全て酸化物にしたときには A 1203は、 1 5. 1 7 gになることを意味している。 )
表 6中、 実施例 1の成分組成 (w t %) で、 A 1 F 3 : 2 5を A 120 3 : 1 5. 1 7に置き換えて、 全体が 1 0 0 %になるように計算すると、 本 P C T出願、 第 7表の実施例 1の酸化物基準の重量%表示になる。 こ こで、 1 0 0 g重量中の Fの重量は 1 6. 9 7 gとなる (第 7表実施例 1参照) 。 .
ここで注意しなければならないのは、 成分組成 (モル%或いは wt%
) から酸化物基準の重量%には変換可能であるが、 酸化物基準の重量% 表示から成分組成へ変換することはできない。 (酸化物基準の重量%表 示は、 カチオンの重量割合を示しているだけなので、 これだけではどの カチオンの弗化物を使用しているか不明なため弗化物の特定が不可能で ある。 )
従って、 酸化物基準の重量%のみの表示では、 成分組成は開示されて いないことを意味している。 発明を実施するための最良の形態
本発明の低融点ガラスは、 主に光学用に用いることができるフッリン 酸塩系のガラスで P 205— A 1203 -R20- F (R: L i , N a、 K) が主な成分であるが、 特に耐久性改善成分として、 A 1203を 6. 5% 以上含有してなり、 耐久性テストにおける減量率が 0. 3重量%以下、 好ましくは 0. 0 5重量%以下、 という優れた化学的耐久性、 を付与す ることに成功したものである。 このガラスは、 ガラス転移温度 (Tg) が 2 3 0〜3 5 0 °C、 プレス成形温度がおよそ 2 7 0〜4 0 0°Cを示し、 光学特性値として d線における屈折率 (n d) 力 1. 4 3〜1. 55、 アッベ数 (リ d) 力 55 - 8 5を有する。
ここで採用された化学的耐久性テストは、 ガラス試料 (1. 5 X 1. 5 X 1. 0 cm) を蒸留水中で 2時間煮沸した時の重量減少量を初期重 量に対するパーセントで表示したものである。
本発明の低融点光学ガラスの各成分範囲を上記 (1 ) のように限定し た理由は次のとおりである (%は特に断り書きのない限り酸化物基準の 重量パーセントを表す) 。
P 205はガラス形成成分であり、 34%より少ないとガラス形成が困 難となり、 また 5 0%を超えると耐久性が低下する。 好ましい範照.は 3
9〜47 %である。
L i 20はガラスの溶解性を改善し軟化温度を低下させる成分である が、 2%より少ないと上記効果が十分でなく、 また 9%より多くなると 安定性及び耐久性が低下する。 好ましい範囲は、 6〜9%である。
Na20は、 L i 20同様にガラスの溶解性を改善し軟化温度を低下さ せる成分であるが、 7 %より少な 、と上記効果が十分でなく、 また 28 %より多くなると安定性および耐久性が低下する。 好ましい範囲は、 7 〜 1 5 %である。
K20は、 他のアルカリ成分 (L i 20, N a 20) 程ではないがガラ スの溶解性を改善し軟化温度を低下させる成分である。 3 %より少ない と上記効果が十分でなく、 また 27 %より多くなると特に耐久性が低下 する。 好ましい範囲は、 3〜5%である。
L i 20、 N a 20、 K20の合量は、 1 7〜41%とする。 17%よ り少ないとガラスの溶解性を改善し軟化温度を低下させる効果が十分で なく、 また 41%を超えると、 安定性及び耐久性が低下する。 好ましい 範囲は、 1 7〜26 %である。
A 1203は、 耐久性を改善する効果を有する成分であるが、 6. 5% より少ないとその効果が十分でなく、 30%を超えると溶解性が悪くな る。 好ましくは、 8. 5〜22%である。
ZnOは、 溶解性を改善する成分であるが 22%を超えると安定性が 低下する。 好ましい範囲は、 0〜1 7%である。
B aOは、 溶解性を改善する成分であるが 21%を超えると安定性が 低下する。 好ましい範囲は、 0〜1 7%である。
S rOは、 溶解性を改善する成分であるが 18%を超えると安定性が 低下する。 好ましい範囲は、 0〜12%である。
C aOは、 溶解性を改善する成分であるが 16%を超えると安定 が
低下する。 好ましい範囲は、 0〜1 0 %である。
MgOは、 溶解性を改善する成分であるが 1 4%を超えると安定性が 低下する。 好ましい範囲は、 0〜5 %である。
また、 Z n O, B a〇, S r O, C a 0, Mg 0の合量 (R, 0) は、 0〜3 4 %とする。 3 4%を超えると安定性が低下する。 好ましくは 0 · 〜 3 2 %である。
Z r 02は、 耐久性を改善する成分であるが、 1. 5 %を超えると溶 解性が悪くなる。
Fは、 ガラスの溶解性を改善し軟化温度を低下させる成分であるが 1 . 5%よりも少ないと充分な効果が得られず、 3 2%を超えると揮発等 の原因となりガラスがつくりにく くなる。 好ましくは 1 2〜 2 7 %であ
o
本発明の低融点光学ガラスは、 原料としてはメタリン酸塩などの塩類、 炭酸ナトリウム、 炭酸力リウム、 フッ化アルミニウム、 フッ化ナ卜リゥ ムなどの一般のガラス原料を用い、 通常のガラス製造方法で作製できる。 溶融温度は、 8 0 0〜1 1 0 0 °C程度で白金ルツポに蓋を用い、 十分に 溶融したガラス融液を力一ボンなどで作られた型に流し出すと、 透明な ガラスが得られる。 その後、 ガラス転移温度付近でァニールをすること により、 熱的に安定なガラスとなる。
これらのガラスはガラス転移温度が 2 3 0 °Cから 3 5 0 °C程度の低温 で、 プレスによる加工は 2 7 0〜4 0 0 °C程度である。 また、 化学的耐 久性は蒸留水による煮沸での減量率がいずれも 0. 3 0%以下で、 実用 上まったく問題とならない。 以下実施例と比較例をあげて本発明の低融点光学ガラスを具体的に説 明するが、 本発明はこれに限定されるものではない。
(実施例 1〜 45 )
各成分の原料として、 各々相当するメタリン酸塩、 酸化物、 フッ化 物、 炭酸塩、 硝酸塩等を使用し、 第 2, 3, 4, 5, 6表の成分組成に なるように調合した。 ガラス重量で 1 0 0 gとなるように秤量し、 十分 混合した後に白金ルツボに投入し蓋をして、 電気炉中 8 0 0〜1 1 0 0 °Cの温度で数時間溶融し、 攪拌により均質化、 清澄化した後に金型に流 し出し徐冷することによって透明で均質なガラスを得た。 また、 第 2表, 第 3表, 第 4表, 第 5表, 第 6表の成分組成を酸化物基準の重量%に変 換した組成を第 7表, 第 8表, 第 9表, 第 1 0表, 第 1 1表に示した。 第 1 2, 1 3, 1 4, 1 5, 1 6表には、 得られたガラスの熱的性質
(ガラス転移温度 (Tg) 、 屈伏温度 (A t) 、 5 0 - 2 5 0。Cの熱膨 張係数 (a) ) 及び光学的性質 (屈折率 (n d) 、 アッベ数 (リ d) ) 、 比重 (S g. ) 、 化学的耐久性試験の結果を示した。 化学的耐久性試験 は、 ガラス試料 (1. 5 X 1. 5 X 1. 0 cm) を蒸留水中で 2時間煮 沸した時の重量減少量を初期重量に対するパ一セントで表示したもので ある。
実施例 4 3の組成において、 ガラス重量 3 0 gとなるように調合し比 較例 1と同様 9 0 0 °Cで 3 0分間溶解後、 .ガラスの重量を測定しその減 量率を求めた。
それによると、 1. 4%程度の減量が確認された。 比較例 1では弗素 の減量だけで 15. 9 %であることから実施例 4 3においては揮発が抑 えられている。
実施例 4 1の組成について、 ガラス重量 6 0 0 gとなるように調合し 1 0 0 0 °Cで 2時間溶解した。 3回同様に溶解し屈折率変化を調べた。 その結果、 屈折率差が n dで 0. 0 0 0 1 4と非常に一致した結果と なった。
(比較例 1)
コ一ニング公報の実施例 19を比較例 1とした。 バッチ組成を第 6表 に、 バッチ組成から求められた酸化物基準の重量%組成を第 1 1表に示 した。 また、 第 16表には、 コ一二ング公報の第 2表に示されている主 な物性、 分析値について示した。 第 1 表 実施例の組成範囲
酸化物扉
昭5 9 _ 3 35 4 5号 (wt%) 本 発 明
CdO, PbO含まない «
P205. 3 4. 5 8〜4 9. 9 5 0. 7 1〜7 9. 8 9
L i20 2. 64~ 8. 41 0 〜 5. 54
Na20 7. 34〜27. 24 0 〜 7. 52 κ2ο 3. 24〜2 6. 5 3 0 〜1 2. 24
R20 17. 86— 40. 71 9. 36〜: 16. 04
Α 1203 6. 55〜2 9. 66 3. 9 9〜10. 99
ΖηΟ 0 〜21. 4 0 〜24. 83
BaO 0 —20. 21 0 —34. 20
S r 0 0 〜17. 02 0 〜26. 09
CaO 0 〜15. 15 0 〜1 53
MgO 0 〜1 3. 57 0 〜14
CdO
PbO
Zr02 0 〜 1. 19
F 1. 81〜31. 99 10. 06〜42. 45
F/A 1 0. 37~ 7. 00 3. 63〜14. 07
οοτ OOT OOT OOT OOT 001 OOT OOT OOT 001 1 α n
T T T I
^
O^M
2^ B 0
0 e 0 ュ S
0 J S
8 2i B a
9 OB 8 s I T T I o^z
L LI Zi L T IT IP 88 S2 8d t V
ST 9 zz OT ST 6 sOsI V
OT QZ
01 OT OT OT OT OT OT OT n n n
n I
OT d ϊ Ί
P P P P 023 T
Of o o S SP 6S 18
OT 6 8 L 9 S P 8 Z I
m 拏 z ¾
0l7Zll/Z0df/X3d £18ん蒙 0 OAV
挲 s
9 T
0l7Zll/Z0df/X3d εΐ8.εο/εο OAV
L I
0l7Zll/Z0df/X3d εΐ8而 εο OAV
/ O卜AVー o —l
—l ~ 1 娘 o
—l
i
o -l o 1 oq o o
O o o o O 瞷 o 03 β i 03 bo
< < m m to o o to
第 6 表 実 施 例 比較例 重量% 重量%
41 42 43 44 45 1
P2〇5 35 35 40 40 35 A1(P03)3 44.7
L i20 5 5 5 5 5 PF6 29
L i F 2 2 2 2 2 Na PFg 26.3
N a20 5 5
N a F 10 10 10 10 10
K20 3 3 3 3 3
KF
A 1203
1 F3 15 15 10 25 30
Z n 0 5 5 15
ZnF2
B a 0 10 5
B a F2 5
S r 0 5 10 5 5
S r F2 5
C a U 5 5 5 5 5
C a F2 5
MgO
MgF2 5
Z r02
合 計 100 100 100 100 100 A き + 100
O/AV 28卜さ一
第 8 表 酸化物鮮 実 施 例
w t % 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20
36.81 44.10 43.75 49.47 48.16 47.24 45.91 47.28 42.33 41.98
L io 0 2.83 4.41 4.38 4.40 3.20 3.14 3.05 8.41 4.24 4.20
N a?0 2174 23.57 15.32 19.47 27.24 7.34 25.51 10.86 13.95
KoO 9.95 11.02 10.93 10.99 5.35 5.10 10.51 10.58 10.49
A IOOQ 28.67 16.89 11.28 15.66 16.06 15.75 20.43 22.93 15.88 13.64
ZnO 10.58
B a 0 14.35 15.74
S r 0
C a 0
MgO
Zr 02
計 100 ' 100 100 100 100 100 100 100 100 100
100 g中の
31.99 16.06 14.79 15.61 11.31 8.18 3.39 8.37 9.50 8.14
(g)
/7zofc :i- ト
od
099 ' M 02B 卜 l〇 V s c— '
911
cr≥ o o
ト
<
O e 中の 寒 〇 O g
〇 O 〇 〇 〇 00 1 e i 50 軍暈 Fの447 2.
tS3 ()g
第 1 酸化物鮮 実 施 例 酸化物辨 比較例 wt% 41 42 43 44 45 t% 1
P205 39.25 4.3.20 46.14 41.29 P2 O5 73.62
L i20 6.91 7.04 6.65 7.10 7.27 N agO 6.12
N a20 8.29 8.45 7.98 14.27 14.60 κ2ο 9.36
K20 3.37 3.43 3.24 3.46 3.54 A 1203 10.89
A 1203 10.22 10.41 6.55 17.50 21.50
ZnO 5.61 5.72 16.19
B aO 16.12 5.72
S r 0 4.63 5.72 10.80 5.77 5.90
C a 0 5.60 9.82 5.39 5.76 5.90
MgO 3.70
Zr02
計 100 100 100 100 100 計 100
100 g中の 100 g中の
18.77 21.65 12.78 36
(g) (g)
9Z
otzii/zodr/Ud εΐ8.εο/εο OAV
9Z
l7Zll/Z0df/X3d εΐ8而 εο OA
卜
2s ·ζ 'Ζ Ζ8 ·0 88 "8 00 '8 00 '8 00 "8 οο ·ε
9 '69 Z 'OL 9 ·Ζ9 8 m 9 '99 Ζ Ίί 9 "93 S ' 11 Ρ 簡 0 ·0 扇 0 "0 Τ8800 Ό 画 0 Ό 91800 ·0 8丄 900 ·0 900 Ό 61,800 ·0 画 0 ·0 2900 Ό
6^019 'Τ 806817 Ί Ί 腦 Ί 6SS S ·ΐ Ί 866817 'Τ 96 Ί ΖΖΙΏ? Ί Ρ u
6 'Ζ Α8 'Ζ 86 1 98 'Ζ 8 S8 τ U 'Ζ 28 'Ζ η ζι 'τ ( 'S S) 簡
900 Ό Ό m Ό 0 900 Ό ζζο ·0 L2Q Ό ΐθ Ό 删 Ό 扇 Ό
SST 981 8SI UI ηι ΰίϊ ZQI Χ8Τ ζ%\ (T_0oi-OTX )
09S 90S ½8 69S 988 988 8S8 898 (0。) ΐ V m LLZ 92S 688 038 m 0S8 SOS 628 (。。) 3丄
08 62 LZ 9Ζ η 82 ΖΖ \Ζ
m m m
8Z
l7Zll/Z0df/X3d εΐ8.εο/εο OAV
第 16 表 実 施 例 比 較 例
41 42 43 44 45 1
Tg CO 260 282 280 295 294 Tg CO 290
At CO 294 316 317 331 331 At CO
a 50-250°C a 50-250°C
(XlO— 7°C一1) 197 185 175 182 190 (xl(T7。C一1)
0.008 0.007 0.006 0.015 0.004 Fノ ツチ軍暈 36 履(Sg. ) 3.07 2.98 3.06 2.8 2.82 F分析値 18.1 n d 1.49628 1. 8993 1.52008 1.47162 1.46434 nd 1. 5 nF-nC 0.00682 0.00663 0.00763 0.00617 0.0059 nF-nC
v d 72.8 73.9 68.2 76.4 78.7 v d
FZA 1比 5.53 6.38 5.65 4.06 3.88 F/A 1比 11.13
産業上の利用可能性
以上説明したとおり、 本発明者等はフッリン酸塩ガラスで 4 0 0 °C以 下の温度でプレス成形できるガラスを開発することを試みた結果、 画期 的なガラス組成に到達したものである。 本発明によれば、 これまで困難 と考えられていた微細光学素子も生産性よくプレス成形できるものと考 えられる。 また化学的耐久性に優れているので実用的価値が非常に高い ものである。