JPWO2003037813A1 - モールド成形用光学ガラス - Google Patents
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Abstract
Description
本発明はモールド成形用光学ガラス、特に350℃以下のガラス転移温度(Tg)と3.1以下の比重(Sg.)を有し、400℃以下でプレス成形可能な精密プレスレンズ用光学ガラスに関する。
背景技術
近年、光学レンズ系に使用される非球面レンズや微小な光学レンズは高精度の金型を用いたプレス成形技術によって研磨することなく製造されることが多くなった。しかし、プレス成形に適する金型の材質には加工性、耐久性、さらに量産性などの点から様々な制限がある。これはプレス成形されるガラスの物性にも制限があることを意味している。制限される最も重要な物性はガラスの軟化温度である。例えば600〜700℃を超える軟化温度のガラスをプレス成形することは金型寿命に大きな影響を与え、それはレンズの量産性を低下させることとなる。このようなことから従来一般に市販されているすべての種類の光学ガラスをプレス成形することは量産性という点では困難と考えられ、その結果プレス成形性に優れたガラスの開発が一つの研究課題となっている。
例えば、特開平2−124743号公報には、P2O5、ZnOを必須成分として含みZnO+BaO+SrO+CaO+MgOの含量を28〜49重量%とした組成を有し、屈伏温度(At)が500℃以下、屈折率(nd)が1.53〜1.62、アッベ数(νd)が59.0〜64.0で軟化点が低い中屈折率低分散の精密プレスレンズ用光学ガラスが記載されている。この光学ガラスは、安定性、化学的耐久性、耐候性、溶融性が優れており、屈伏温度(At)が低いのでプレス成形後研削又は研磨を必要としないモールドプレス成形に適しているという特徴を有している。
特開平8−183632号、特開平11−139845号各公報にも同様の提案がなされている。これらの発明の共通の課題は、ガラス軟化温度を下げるということである。
しかし、これらのガラスの軟化温度は400〜500℃前後となるものが多く、これよりも低温度になると化学的耐久性の低下等の問題が起こり実用的なガラスにならない。また、市販光学ガラスの光学特性に一致するように組成を選択するような場合もあり、十分な軟化温度とならないこともある。
リン酸塩ガラスは、酸化物ガラスの中でも比較的軟化温度が低く、これまでに低融点ガラスとしていくつか提案されている。例えば、特開昭60−171244号、特開昭61−36136号、特開平2−116642号、特開平2−124743号、特開平3−40934号、特開平5−132339号、特開平8−183632号、特開平9−278479号、特開平9−301735号各公報などである。
本発明者らは先に、上記のようなリン酸塩系の酸化物ガラス組成物において、400℃以下、特に380℃前後という低温でプレス成形できるガラスの開発に努めた結果、リン酸塩系ガラス組成物において、Li2O,Na2O,K2O成分を必須的に増量する中で、P2O5の量を増加することなくAl2O3を相当量含有させることが可能となりこれによって上記の問題が解決されることを見いだし特許出願を行った。(特願2001−213295号明細書)
一般に、ガラスの軟化温度を下げるためにはフッ素の添加が有効であることが知られている。しかし、これまでのフツリン酸塩ガラスでは、特開昭60−210545号、特開昭63−144141号各公報等に開示されているように、その低屈折率性や低分散性等の光学的特性の発現を目的に使用されることが多かった。
低融点を目的としたフツリン酸塩ガラス(ガラス転移温度の低いガラス)としては、特開昭57−27941号公報に記載されているガラスが知られている。このフツリン酸塩ガラスはガラス転移温度(Tg)が100℃前後と非常に低融点のガラスであるが、低沸点化合物であるフッ化錫を多量に含むため、ガラス溶融時の揮発が多く生産性が低い。
そのため、大量生産には適していないと考えられている。また100℃前後のガラス転移温度は、光学ガラスとして考えた場合には実用的でない。
先の特開平2−116642号公報に記載されているリン酸系ガラスは、低融点を目的としており、フッ素を5%まで添加可能と書かれているが、あくまでも添加成分でありフッ素を積極的に加えることによる低融点化は目的としてはいない。
コーニング社の特公昭59−33545号公報(以下、コーニング公報という)には、約350℃以下のガラス転移温度(Tg)を有するフツ燐酸塩系のモールド成形用低融点ガラスが開示されている。この公知発明は、従来、ガラス転移温度(Tg)を著しく上昇させると考えられていたAl2O3が、分析値でFが3%よりも多量の弗化物を同時に含む場合には、ガラスのTgを著しく上昇しないことを見いだし該発明に到達したものと考えられる。そして、このF:Alの分析値の原子比が0.75〜5の範囲にあることが耐久性に優れた低融点ガラスを得るのに重要であることが述べられ、実施例においてもF:Alの原子比が記載されている。コーニング公報の特許請求の範囲には、酸化物基準の重量%で表示されているが、これは成分組成から計算された値ではなく溶解後のガラスの分析値から決定されている。
コーニング公報の第2表及び第6表中に、各条件で溶解したときのFの残留率が記載されているが、それによると、9.11〜69.5%と大きくばらついており、Fの揮発量が非常に多くしかも一様ではないことがわかる。その原因の一つとしては、使用されているルツボとの反応による可能性が高い。コーニング公報では、様々なルツボが使用されているが、その中にはFと反応性の非常に高いSiO2系のルツボや、耐久性に影響を与えるAl2O3製のルツボ等が使用されており、得られたガラスの組成が変動する要因の1つになっている。また、実施例中ではP2O5やFの揮発の原因となる結晶水を含んだ原料が使用されている。
このように、コーニング公報は、その特許請求の範囲には、溶融条件が一定ではなく最終ガラス組成に大きく影響を与える要素が多いにも関わらず、Fと一部のAlの分析値、F:Al原子比が示されているだけで、その他の低融点化に重要で耐久性にも大きな影響を与える、P,Li,Na,K等の成分についての分析値は全く示されていないので、充分な開示がなされているとは認められない。
また、任意成分であるPbO、CdOは、屈折率を高める成分であるばかりでなく、特公昭40−14301号公報に開示されているように、低融点を与える成分として有用であり、コーニング公報でも実施例の約半分で使用されている。その理由は、PbO、CdOを使用することでF,P,Li,Na,K等の低融点を与える他の成分を減らすことができるため、耐久性を向上させつつ低融点化するのに非常に有効であるからである。しかしPbOやCdOは毒性が高く耐環境性の立場からも近年光学ガラス中から排除される傾向にありその使用は望ましくない。
本発明者らは、先に出願した特願2001−213295号明細書のリン酸塩系ガラス組成物において、Li2O,Na2O,K2O成分を必須的に増量する中で、P2O5の量を増加することなくAl2O3を相当量含有できることを見いだし、耐久性に優れた低融点ガラスの発明をするに至った。本発明は、更なる低融点化と耐久性の改善を目的とし、該目的を上記組成中にFを必須的に含有させることによって達成したものである。
しかし、本発明の必須成分がコーニング公報における必須成分と同じであるために、全体として両者はよく類似した組成となっているので、以下にその相違点を明らかにする。
コーニング公報では、従来技術で述べたような様々な問題点がある。すなわち、その特許請求の範囲は、酸化物基準の重量%で表されているが、成分組成から計算された範囲でなく溶解して得られたガラスの分析値をもとにしたものであり、一方、本発明の請求の範囲は実施例の成分組成から計算された、酸化物基準の重量%で表示されている。すなわち、本発明は、その請求の範囲は同じ酸化物基準の重量%表示であるが、コーニング公報では分析値から求められているためその比較は困難である。また実施例では、FとAlの分析値しか示されていない上に、従来技術で示したように溶融条件等揮発に関する多くの問題があるため比較してもあまり意味がなく、いいかえれば本発明の組成はコーニング公報には実質的には開示されていないものである。
そこで、ここでは実施例の成分組成から計算された酸化物基準の重量%と比較する。また本発明では、低融点を与える成分であるがその毒性が指摘されているPbO、CdO等は、耐環境性の観点から一切使用していないので、実施例中PbO、CdOを含まない実施例の組成と比較を行う。
本発明及びコーニング公報の実施例から計算された酸化物基準の重量%の組成範囲を第1表に示した。ちなみに、コーニング公報の特許請求の範囲では、P2O5が30〜75wt%、R2Oが3〜25wt%、Al2O3が3〜20wt%、Fが3wt%を超え24wt%未満でF:Alが0.75〜5となっており、実施例から計算された実際の組成範囲との違いが非常に大きいことが分かる。
第1表から本発明では、P2O5の範囲がコーニング公報の下限よりも少なく、また、R2O(R:Li,Na,K)の範囲がコーニング公報の上限よりもかなり多く、Li2O,Na2O,K2Oを全て必須成分として含んでいる。また、組成的には一部重なっているがAl2O3の上限がかなり多いことがわかる。
これは、本発明がLi2O,Na2O,K2O成分を必須的に増量する中で、P2O5の量を増加することなくAl2O3を相当量含有できることを見いだし、Fを必須的に含有することによって更なる低融点化と耐久性の改善に勤めた結果達成された結果である。
このように、コーニング公報に記載された発明との組成的な違いは明らかである。
すなわち、本発明の第1の目的は、350℃以下という低いガラス転移温度(Tg)と3.1以下の比重(Tg)を有し、精密プレス成形が400℃以下という低温で実施可能な、作業性及び化学的耐久性に優れたモールド成形用光学ガラスを提供することである。
また本発明の第2の目的は、屈折率(nd)1.43〜1.55、アッベ数(νd)55〜85の光学特性を有する光学ガラスを優れた生産性を以て提供することである。
発明の開示
(1)成分組成から計算された酸化物基準の重量%で、
P2O5が34〜50%、
Li2Oが2〜9%、
Na2Oが7〜28%、
K2Oが3〜27%、
但しR2Oの合量が17〜41%(R:Li,Na,K)、
Al2O3が6.5〜30%、
ZnOが0〜22%、
BaOが0〜21%、
SrOが0〜18%、
CaOが0〜16%、
MgOが0〜14%、
但しR’Oの合量が0〜34%(R’:Zn,Ba,Sr,Ca,Mg)、
ZrO2が0〜1.5%、
Fが1.5〜32%、
からなり、350℃以下のガラス転移温度(Tg)と3.1以下の比重(Sg.)を有し、化学的耐久性に優れたモールド成形用光学ガラス。
(2)好ましくは、成分組成から計算された酸化物基準の重量%で、
P2O5が39〜47%、
Li2Oが6〜9%、
Na2Oが7〜15%、
K2Oが3〜5%、
但しR2Oの合量が17〜26%(R:Li,Na,K)、
Al2O3が8.5〜22%、
ZnOが0〜17%、
BaOが0〜17%、
SrOが0〜12%、
CaOが0〜10%、
MgOが0〜5%、
但しR’Oの合量が0〜32%(R’:Zn,Ba,Sr,Ca,Mg)、
Fが12〜27%、
からなり、300℃以下のガラス転移温度(Tg)と3.1以下の比重(Sg.)を有し、化学的耐久性に優れたモールド成形用光学ガラス。
本件発明の基礎出願(特願2001−332531号)の組成範囲はモル%表示、本PCT出願の請求範囲は酸化物基準の重量%表示と異なっているが、いずれも実施例における成分組成(wt%)がもとになっている。
以下、基礎出願の実施例1について説明する。基礎出願中の〔表1〕の成分組成(モル%)表示を酸化物基準の重量%表示に変換するには、まず〔表6〕の成分組成(wt%)に戻す。その方法は、各成分のモル%値にそれぞれの分子量をかけた総和を分母とする。すなわち、分母は、
28.79×141.95+12.16×29.88+20.52×61.98+9.64×94.20+27.04×83.98+1.11×81.39+0.74×123.22=9082.34
となる。
次に、各成分のモル%値にその分子量をかけた値を分子として、上記分母で割り算をし、それに100をかけて成分組成(wt%)に直す。
例えば、P2O5の場合は、
{(28.79×141.95)÷9082.34}×100=45(wt%)
となる(基礎出願の〔表6〕)。
他の成分についても同様に計算し求める。このようにして全ての成分について計算すると基礎出願の〔表6〕のwt%表示になる。
次にこの成分組成(wt%)を酸化物基準の重量%表示に変換する。その方法は、成分組成(wt%)中の弗化物成分について、それぞれカチオンとアニオン(F)に分ける。例えば、実施例1で使用している弗化物はAlF3:25wt%だけである。これをAlとFに分ける。
AlF3の分子量は、83.98、Alの原子量は26.98、Fの原子量は19.00であるから、AlF3:25wt%中のAlの量は、25×(26.98÷83.98)=8.03wt%(原子重量%)となり、また、AlF3:25wt%中のFの量は、25×{(19.00×3)÷83.98}=16.97wt%(原子重量%)となる。この表している意味は、成分組成(wt%)中のAlの割合は、8.03wt%でFの割合は、16.97wt%と言うことである。つまり、100g中に8.03gのAlと16.97gのFが存在することを意味している。
次に、このAlF3中のAl:8.03wt%が全て酸化物であったとしたときのAl2O3の量を求める。Al2O3の分子量は、101.96、そのうち2Alが8.03wt%に相当するから、Al2O3の量は、8.03÷{(2×26.98)÷101.96}=15.17となる。(これは、AlF3:25g中のAl成分を全て酸化物にしたときにはAl2O3は、15.17gになることを意味している。)
表6中、実施例1の成分組成(wt%)で、AlF3:25をAl2O3:15.17に置き換えて、全体が100%になるように計算すると、本PCT出願、第7表の実施例1の酸化物基準の重量%表示になる。ここで、100g重量中のFの重量は16.97gとなる(第7表実施例1参照)。
ここで注意しなければならないのは、成分組成(モル%或いはwt%)から酸化物基準の重量%には変換可能であるが、酸化物基準の重量%表示から成分組成へ変換することはできない。(酸化物基準の重量%表示は、カチオンの重量割合を示しているだけなので、これだけではどのカチオンの弗化物を使用しているか不明なため弗化物の特定が不可能である。)
従って、酸化物基準の重量%のみの表示では、成分組成は開示されていないことを意味している。
発明を実施するための最良の形態
本発明の低融点ガラスは、主に光学用に用いることができるフツリン酸塩系のガラスでP2O5−Al2O3−R2O−F(R:Li,Na、K)が主な成分であるが、特に耐久性改善成分として、Al2O3を6.5%以上含有してなり、耐久性テストにおける減量率が0.3重量%以下、好ましくは0.05重量%以下、という優れた化学的耐久性、を付与することに成功したものである。このガラスは、ガラス転移温度(Tg)が230〜350℃、プレス成形温度がおよそ270〜400℃を示し、光学特性値としてd線における屈折率(nd)が、1.43〜1.55、アッベ数(νd)が、55〜85を有する。
ここで採用された化学的耐久性テストは、ガラス試料(1.5×1.5×1.0cm)を蒸留水中で2時間煮沸した時の重量減少量を初期重量に対するパーセントで表示したものである。
本発明の低融点光学ガラスの各成分範囲を上記(1)のように限定した理由は次のとおりである(%は特に断り書きのない限り酸化物基準の重量パーセントを表す)。
P2O5はガラス形成成分であり、34%より少ないとガラス形成が困難となり、また50%を超えると耐久性が低下する。好ましい範囲は39〜47%である。
Li2Oはガラスの溶解性を改善し軟化温度を低下させる成分であるが、2%より少ないと上記効果が十分でなく、また9%より多くなると安定性及び耐久性が低下する。好ましい範囲は、6〜9%である。
Na2Oは、Li2O同様にガラスの溶解性を改善し軟化温度を低下させる成分であるが、7%より少ないと上記効果が十分でなく、また28%より多くなると安定性および耐久性が低下する。好ましい範囲は、7〜15%である。
K2Oは、他のアルカリ成分(Li2O,Na2O)程ではないがガラスの溶解性を改善し軟化温度を低下させる成分である。3%より少ないと上記効果が十分でなく、また27%より多くなると特に耐久性が低下する。好ましい範囲は、3〜5%である。
Li2O、Na2O、K2Oの合量は、17〜41%とする。17%より少ないとガラスの溶解性を改善し軟化温度を低下させる効果が十分でなく、また41%を超えると、安定性及び耐久性が低下する。好ましい範囲は、17〜26%である。
Al2O3は、耐久性を改善する効果を有する成分であるが、6.5%より少ないとその効果が十分でなく、30%を超えると溶解性が悪くなる。好ましくは、8.5〜22%である。
ZnOは、溶解性を改善する成分であるが22%を超えると安定性が低下する。好ましい範囲は、0〜17%である。
BaOは、溶解性を改善する成分であるが21%を超えると安定性が低下する。好ましい範囲は、0〜17%である。
SrOは、溶解性を改善する成分であるが18%を超えると安定性が低下する。好ましい範囲は、0〜12%である。
CaOは、溶解性を改善する成分であるが16%を超えると安定性が低下する。好ましい範囲は、0〜10%である。
MgOは、溶解性を改善する成分であるが14%を超えると安定性が低下する。好ましい範囲は、0〜5%である。
また、ZnO,BaO,SrO,CaO,MgOの合量(R’O)は、0〜34%とする。34%を超えると安定性が低下する。好ましくは0〜32%である。
ZrO2は、耐久性を改善する成分であるが、1.5%を超えると溶解性が悪くなる。
Fは、ガラスの溶解性を改善し軟化温度を低下させる成分であるが1.5%よりも少ないと充分な効果が得られず、32%を超えると揮発等の原因となりガラスがつくりにくくなる。好ましくは12〜27%である。
本発明の低融点光学ガラスは、原料としてはメタリン酸塩などの塩類、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、フッ化アルミニウム、フッ化ナトリウムなどの一般のガラス原料を用い、通常のガラス製造方法で作製できる。溶融温度は、800〜1100℃程度で白金ルツボに蓋を用い、十分に溶融したガラス融液をカーボンなどで作られた型に流し出すと、透明なガラスが得られる。その後、ガラス転移温度付近でアニールをすることにより、熱的に安定なガラスとなる。
これらのガラスはガラス転移温度が230℃から350℃程度の低温で、プレスによる加工は270〜400℃程度である。また、化学的耐久性は蒸留水による煮沸での減量率がいずれも0.30%以下で、実用上まったく問題とならない。
以下実施例と比較例をあげて本発明の低融点光学ガラスを具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
(実施例1〜45)
各成分の原料として、各々相当するメタリン酸塩、酸化物、フッ化物、炭酸塩、硝酸塩等を使用し、第2,3,4,5,6表の成分組成になるように調合した。ガラス重量で100gとなるように秤量し、十分混合した後に白金ルツボに投入し蓋をして、電気炉中800〜1100℃の温度で数時間溶融し、攪拌により均質化、清澄化した後に金型に流し出し徐冷することによって透明で均質なガラスを得た。また、第2表,第3表,第4表,第5表,第6表の成分組成を酸化物基準の重量%に変換した組成を第7表,第8表,第9表,第10表,第11表に示した。
第12,13,14,15,16表には、得られたガラスの熱的性質(ガラス転移温度(Tg)、屈伏温度(At)、50−250℃の熱膨張係数(α))及び光学的性質(屈折率(nd)、アッベ数(νd))、比重(Sg.)、化学的耐久性試験の結果を示した。化学的耐久性試験は、ガラス試料(1.5×1.5×1.0cm)を蒸留水中で2時間煮沸した時の重量減少量を初期重量に対するパーセントで表示したものである。
実施例43の組成において、ガラス重量30gとなるように調合し比較例1と同様900℃で30分間溶解後、ガラスの重量を測定しその減量率を求めた。
それによると、1.4%程度の減量が確認された。比較例1では弗素の減量だけで15.9%であることから実施例43においては揮発が抑えられている。
実施例41の組成について、ガラス重量600gとなるように調合し1000℃で2時間溶解した。3回同様に溶解し屈折率変化を調べた。
その結果、屈折率差がndで0.00014と非常に一致した結果となった。
(比較例1)
コーニング公報の実施例19を比較例1とした。バッチ組成を第6表に、バッチ組成から求められた酸化物基準の重量%組成を第11表に示した。また、第16表には、コーニング公報の第2表に示されている主な物性、分析値について示した。
産業上の利用可能性
以上説明したとおり、本発明者等はフツリン酸塩ガラスで400℃以下の温度でプレス成形できるガラスを開発することを試みた結果、画期的なガラス組成に到達したものである。本発明によれば、これまで困難と考えられていた微細光学素子も生産性よくプレス成形できるものと考えられる。また化学的耐久性に優れているので実用的価値が非常に高いものである。
Claims (1)
- 成分組成から計算された酸化物基準の重量%で、P2O5が34〜50%、Li2Oが2〜9%、Na2Oが7〜28%、K2Oが3〜27%、但しR2Oの合量が17〜41%(R:Li,Na,K)、Al2O3が6.5〜30%、ZnOが0〜22%、BaOが0〜21%、SrOが0〜18%、CaOが0〜16%、MgOが0〜14%、但しR’Oの合量が0〜34%(R’:Zn,Ba,Sr,Ca,Mg)、ZrO2が0〜1.5%、Fが1.5〜32%からなり、350℃以下のガラス転移温度(Tg)と3.1以下の比重(Sg.)を有し、化学的耐久性に優れたモールド成形用光学ガラス。
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