JP2013100213A - 光学ガラス、光学素子及びプリフォーム - Google Patents
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Abstract
【解決手段】光学ガラスは、カチオン成分としてP5+、Al3+及びMg2+を含有し、アニオン成分としてO2−及びF−を含有するものであり、相対屈折率(589.29nm)の温度係数(20〜40℃)が−6.0×10−6(℃−1)以上である。プリフォーム及び光学素子は、このような光学ガラスからなる。
【選択図】なし
Description
すなわち、本発明の目的は、より幅広い温度範囲で、所望の結像特性等の光学特性を得ることができる光学ガラスと、これを用いたプリフォーム及び光学素子を提供することにある。
相対屈折率(589.29nm)の温度係数(20〜40℃)が−6.0×10−6(℃−1)以上である光学ガラス。
Ca2+の含有率が0〜30%、
Sr2+の含有率が0〜30%、
Ba2+の含有率が0〜30%、
である(1)又は(2)に記載の光学ガラス。
F−の含有率が20〜70%、
O2−の含有率が30〜80%、
である(1)から(6)のいずれか記載の光学ガラス。
La3+の含有率が0〜10%、
Gd3+の含有率が0〜10%、
Y3+の含有率が0〜10%、
Yb3+の含有率が0〜10%、
Lu3+の含有率が0〜10%
である(1)から(8)のいずれか記載の光学ガラス。
Li+の含有率が0〜20%、
Na+の含有率が0〜10%、
K+の含有率が0〜10%
である(1)から(10)のいずれか記載の光学ガラス。
Si4+の含有率が0〜10%、
B3+の含有率が0〜15%、
Zn2+の含有率が0〜30%、
Nb5+の含有率が0〜10%、
Ti4+の含有率が0〜10%、
Zr4+の含有率が0〜10%、
Ta5+の含有率が0〜10%、
W6+の含有率が0〜10%、
Ge4+の含有率が0〜10%、
Bi3+の含有率が0〜10%、
Te4+の含有率が0〜15%
である(1)から(12)のいずれか記載の光学ガラス。
このような光学ガラスを、以下では「本発明の光学ガラス」ともいう。
本発明の光学ガラスを構成する各成分について説明する。
本明細書中において、各成分の含有率は特に断りがない場合は、全てモル比に基づくカチオン%又はアニオン%で表示されるものとする。ここで、「カチオン%」及び「アニオン%」(以下、「カチオン%(モル%)」及び「アニオン%(モル%)」と表記することがある)は、本発明の光学ガラスのガラス構成成分をカチオン成分及びアニオン成分に分離し、それぞれにおいて合計割合を100モル%として、ガラス中に含有される各成分の含有率を表記した組成である。
なお、各成分のイオン価は便宜的に代表値を用いているに過ぎないため、他のイオン価のものと区別するものではない。光学ガラス中に存在する各成分のイオン価は、代表値以外である可能性がある。例えば、Pは、通常イオン価が5価の状態でガラス中に存在するので、本明細書中では「P5+」と表しているが、他のイオン価の状態で存在する可能性がある。このように、厳密には他のイオン価の状態で存在するものであっても、本明細書では、各成分が代表値のイオン価でガラス中に存在するものとして扱う。
本発明の光学ガラスはP5+を含む。P5+の含有率は20〜55%が好ましい。
P5+は、ガラス形成成分であり、ガラスの失透を抑制し、屈折率を高める性質を有する。このような性質が強まるので、P5+の含有率の下限は、好ましくは20.0%、より好ましくは25.0%、さらに好ましくは30.0%とする。
一方で、P5+は、含有率が多いとアッベ数を低くする性質を有する。このような性質が強まるので、P5+の含有率の上限は、好ましくは55.0%、より好ましくは50.0%、より好ましくは45.0%、より好ましくは41.0%、さらに好ましくは37.0%とする。
P5+は、原料としてAl(PO3)3、Ca(PO3)2、Ba(PO3)2、Zn(PO3)2、BPO4、H3PO4等を用いてガラス内に含有できる。
Al3+は、ガラスの耐失透性を高め、磨耗度を低くし、相対屈折率の温度係数を高める性質を有する。このような性質が強まるので、Al3+の含有率の下限は、好ましくは1.0%、より好ましくは5.0%、より好ましくは7.0%、さらに好ましくは9.7%とする。
一方で、Al3+は、含有率が多いとガラスの屈折率を低くする性質を有する。このような性質が強まるので、Al3+の含有率の上限は、好ましくは20.0%、より好ましくは18.0%、さらに好ましくは16.0%とする。
Al3+は、原料としてAl(PO3)3、AlF3、Al2O3等を用いてガラス内に含有できる。
Mg2+は、ガラスの耐失透性を高め、摩耗度を低くし、相対屈折率の温度係数を高める性質を有する。このような性質が強まるので、Mg2+の含有率の下限は、好ましくは0.1%、より好ましくは2.0%、より好ましくは5.0%、より好ましくは10.0%とし、さらに好ましくは11.0%超とする。
一方で、Mg2+は、含有率が多いとガラスの屈折率を低くする性質を有する。このような性質が強まるので、Mg2+の含有率の上限は、好ましくは30.0%、より好ましくは25.0%、さらに好ましくは20.0%とする。
Mg2+は、原料としてMgO、MgF2等を用いてガラス内に含有できる。
Ca2+は、ガラスの耐失透性を高め、屈折率の低下を抑制し、磨耗度を低くし、相対屈折率の温度係数を高める性質を有する。このような性質が強まるので、Ca2+の含有率の下限を、好ましくは0.1%、より好ましくは5.0%とし、さらに好ましくは10.0%超としてもよい。
一方で、Ca2+は、含有率が多いと、かえってガラスの耐失透性を下げ、屈折率を低くする性質を有する。このような性質が強まるので、Ca2+の含有率の上限は、好ましくは30.0%、より好ましくは20.0%、さらに好ましくは16.0%とする。
Ca2+は、原料としてCa(PO3)2、CaCO3、CaF2等を用いてガラス内に含有できる。
Sr2+は、ガラスの耐失透性を高め、屈折率の低下を抑制する性質を有する。このような性質が強まるので、Sr2+の含有率の下限を、好ましくは0.1%、より好ましくは1.0%、さらに好ましくは2.0%としてもよい。
一方で、Sr2+は、含有率が多いと、かえってガラスの耐失透性を下げ、屈折率を低くする性質を有する。このような性質が強まるので、Sr2+の含有率の上限は、好ましくは30.0%、より好ましくは20.0%、さらに好ましくは14.0%とする。
Sr2+は、原料としてSr(NO3)2、SrF2等を用いてガラス内に含有できる。
Ba2+は、ガラスの耐失透性を高め、低い分散性を維持し、屈折率を高める性質を有する。このような性質が強まるので、Ba2+の含有率の下限を、好ましくは0.1%、より好ましくは1.0%、より好ましくは5.0%、より好ましくは10.0%、より好ましくは12.0%、さらに好ましくは14.0%としてもよい。
一方で、Ba2+は、含有率が多いと、かえってガラスの耐失透性を下げ、相対屈折率の温度係数を下げる性質を有する。このような性質が強まるので、Ba2+の含有率の上限は、好ましくは30.0%、より好ましくは25.0%、より好ましくは20.0%、さらに好ましくは17.1%以下とする。
Ba2+は、原料としてBa(PO3)2、BaCO3、Ba(NO3)2、BaF2等を用いてガラス内に含有できる。
また、R2+の合計含有率とは、これら4つのイオンのうち1種以上の合計含有率(例えばMg2++Ca2++Sr2++Ba2+)を意味するものとする。
R2+の合計含有率は30〜70%であることが好ましい。R2+の合計含有率をこの範囲にすることで、より耐失透性の高いガラスを得ることができる。
R2+の合計含有率の下限は、好ましくは30.0%、より好ましくは35.0%、より好ましくは40.0%、さらに好ましくは44.0%とする。一方で、R2+の合計含有率の上限は、好ましくは70.0%、より好ましくは65.0%、より好ましくは60.0%、さらに好ましくは55.0%とする。
一方で、この合計含有率が多いと、ガラスの耐失透性を下げ、屈折率を低くする性質を有する。このような性質が強まるので、(Mg2++Ca2+)の上限は、好ましくは50.0%、より好ましくは40.0%、さらに好ましくは35.0%とする。
R2+に対するMg2+及びCa2+の合計含有率の比率が大きいことで、相対屈折率の温度係数を高め、磨耗度を低くすることができる。そのため、(Mg2++Ca2+)/R2+の下限は、好ましくは0.25、より好ましくは0.31、より好ましくは0.36、より好ましくは0.41、さらに好ましくは0.50とする。
一方で、(Mg2++Ca2+)/R2+の上限は1であってもよい。しかし、R2+に対するMg2+及びCa2+の合計含有率の比率が大きいと、ガラスの耐失透性を下げ、屈折率を低くする性質を有する。このような性質が強まるので、(Mg2++Ca2+)/R2+の上限を、好ましくは0.90、より好ましくは0.80、より好ましくは0.70、さらに好ましくは0.65としてもよい。
ガラス形成成分P5+の含有率に対する、相対屈折率の温度係数を高める作用の強いMg2+の含有率の比率を大きくすることで、ガラスの相対屈折率の温度係数をより高めることができる。そのため、(Mg2+/P5+)の下限は、好ましくは0.25、より好ましくは0.30、より好ましくは0.35、さらに好ましくは0.42とする。
一方で、この比率のP5+の含有率に対するMg2++の含有率の比率が大きいと、ガラスの耐失透性を下げ、屈折率を低くする性質を有する。このような性質が強まるので、(Mg2+/P5+)の上限を、好ましくは1.00、より好ましくは0.90、より好ましくは0.80、さらに好ましくは0.70としてもよい。
一方で、La3+、Gd3+、Y3+、Yb3+及びLu3+の含有率は、それぞれ10%以下が好ましい。La3+、Gd3+、Y3+、Yb3+及びLu3+は、含有率が多いと、かえってガラスの安定性が悪化することで失透し易くなる性質を有する。このような性質が強まるので、La3+、Gd3+、Y3+、Yb3+及びLu3+の含有率のそれぞれの上限は、好ましくは10.0%、より好ましくは8.0%、より好ましくは5.0%、さらに好ましくは3.0%とする。
La3+、Gd3+、Y3+、Yb3+及びLu3+は、原料としてLa2O3、LaF3、Gd2O3、GdF3、Y2O3、YF3、Yb2O3、Lu2O3等を用いてガラス内に含有できる。
本発明の光学ガラスでは、Ln3+の合計含有率は20%以下が好ましい。Ln3+は、含有率が多いと失透し易くなる性質を有する。このような性質が強まるので、Ln3+の合計含有率の上限は、好ましくは20.0%、より好ましくは15.0%、より好ましくは10.0%、より好ましくは5.0%、さらに好ましくは3.0%とする。Ln3+の合計含有率は、2.0%未満としてもよく、1.0%未満としてもよい。なお、Ln3+は任意成分であるので、本発明の光学ガラスはLn3+を含まなくてもよい。
一方で、Li+の含有率は20%以下が好ましく、Na+及びK+の含有率はそれぞれ10%以下が好ましい。Li+、Na+及びK+は、含有率が多いとガラスの磨耗度が大きくなり、化学的耐久性が悪化する性質を有する。このような性質が強まるので、Li+の含有率の上限は、より好ましくは20.0%、より好ましくは15.0%、さらに好ましくは10.0%とする。また、Na+びK+の含有率のそれぞれの上限は、好ましくは10.0%、より好ましくは8.0%、さらに好ましくは5.0%とする。
Li+、Na+及びKは、原料としてLi2CO3、LiNO3、LiF、Na2CO3、NaNO3、NaF、Na2SiF6、K2CO3、KNO3、KF、KHF2、K2SiF6等を用いてガラス内に含有できる。
本発明の光学ガラスでは、Rn+の合計含有率は20%以下が好ましい。Rn+の合計含有率が多いと、ガラスの磨耗度が大きくなり、化学的耐久性が悪化する性質も有する。このような性質が強まるので、Rn+の合計含有率の上限は、好ましくは20.0%、より好ましくは15.0%、さらに好ましくは10.0%とする。
一方で、Si4+の含有率は10%以下が好ましい。Si4+は、含有率が多いとかえってガラスが失透し易くなる性質を有する。このような性質が強まるので、Si4+の含有率の上限は、好ましくは10.0%、より好ましくは8.0%、さらに好ましくは5.0%とする。
Si4+は、原料としてSiO2、K2SiF6、Na2SiF6等を用いてガラス内に含有できる。
一方で、B3+の含有率は15%以下が好ましい。B3+は、含有率が多いと化学的耐久性が悪化する性質を有する。このような性質が強まるので、B3+の含有率の上限は、好ましくは15.0%、より好ましくは8.0%、より好ましくは5.0%、さらに好ましくは3.0%とする。
B3+は、原料としてH3BO3、Na2B4O7、BPO4等を用いてガラス内に含有できる。
一方で、Zn2+の含有率は30%以下が好ましい。Zn2+は、含有率が多いとガラスの磨耗度が悪化し、屈折率が低くなる性質を有する。このような性質が強まるので、Zn2+の含有率の上限は、好ましくは30.0%、より好ましくは12.0%、より好ましくは8.0%、より好ましくは4.0%、さらに好ましくは2.0%とする。
Zn2+は、原料としてZn(PO3)2、ZnO、ZnF2等を用いてガラス内に含有できる。
一方で、Nb5+、Ti4+及びW6+の含有率は、それぞれ10%以下が好ましい。Nb5+、Ti4+及びW6+は、含有率が多いとアッベ数が低くなる性質を有する。加えて、Ti4+及びW6+は、含有率が多いとガラスが着色する性質を有する。このような性質が強まるので、Nb5+、Ti4+及びW6+の含有率のそれぞれの上限は、好ましくは10.0%、より好ましくは8.0%、さらに好ましくは5.0%とする。
Nb5+、Ti4+及びW6+は、原料としてNb2O5、TiO2、WO3等を用いてガラス内に含有できる。
一方で、Zr4+の含有率は10%以下が好ましい。Zr4+は、含有率が多いとガラス中の成分の揮発による脈理が発生する性質を有する。このような性質が強まるので、Zr4+の含有率の上限は、好ましくは10.0%、より好ましくは8.0%、さらに好ましくは5.0%とする。
Zr4+は、原料としてZrO2、ZrF4等を用いてガラス内に含有できる。
一方で、Ta5+の含有率は10%以下が好ましい。Ta5+は、含有率が多いとガラスが失透し易くなる性質を有する。このような性質が強まるので、Ta5+の含有率の上限は、好ましくは10.0%、より好ましくは8.0%、さらに好ましくは5.0%とする。
Ta5+は、原料としてTa2O5等を用いてガラス内に含有できる。
一方で、Ge4+の含有率は10%以下が好ましい。Ge4+は、含有率が多いとガラスの材料コストが上昇する。そのため、Ge4+の含有率の上限は、好ましくは10.0%、より好ましくは8.0%、さらに好ましくは5.0%とする。
Ge4+は、原料としてGeO2等を用いてガラス内に含有できる。
一方で、Bi3+の含有率は10%以下が好ましく、Te4+の含有率は15%以下が好ましい。Bi3+及びTe4+は、含有率が多いとガラスが着色し、失透し易くなる性質を有する。このような性質が強まるので、Bi3+の含有率の上限は、好ましくは10.0%、より好ましくは8.0%、さらに好ましくは5.0%とする。また、Te4+の含有率の上限は、好ましくは15.0%、より好ましくは10.0%、より好ましくは8.0%、さらに好ましくは5.0%とする。
Bi3+及びTe4+は、原料としてBi2O3、TeO2等を用いてガラス内に含有できる。
本発明の光学ガラスはF-を含む。F−の含有率は20〜70%が好ましい。
F-は、ガラスの異常分散性及びアッベ数を高め、ガラスを失透し難くする性質を有する。このような性質が強まるので、F-の含有率の下限は、好ましくは20.0%、より好ましくは30.0%、より好ましくは35.0%、さらに好ましくは38.0%とする。
一方で、F-は、含有率が多いと、ガラスのアッベ数を過剰に高め、磨耗度を低下させる性質を有する。このような性質が強まるので、F-の含有率の下限は、好ましくは70.0%、より好ましくは60.0%、より好ましくは50.0%、さらに好ましくは48.0%とする。
F-は、原料としてAlF3、MgF2、BaF2等の各種カチオン成分のフッ化物を用いてガラス内に含有できる。
O2-は、ガラスの失透を抑制し、磨耗度の上昇を抑制する性質を有する。このような性質が強まるので、O2-の含有率の下限は、好ましくは30.0%、より好ましくは40.0%、より好ましくは45.0%、さらに好ましくは50.0%とする。
一方で、他のアニオン成分による効果を得易くするため、O2-の含有率の上限は、より好ましくは80.0%、より好ましくは70.0%、より好ましくは66.0%、さらに好ましくは62.0%とする。
また、ガラスの失透を抑制する観点から、O2-の含有率とF-の含有率の合計は、好ましくは98.0%、より好ましくは99.0%を下限とし、さらに好ましくは100%とする。
O2-は、原料としてAl2O3、MgO、BaO等の各種カチオン成分の酸化物や、Al(PO)3、Mg(PO)2、Ba(PO)2等の各種カチオン成分の燐酸塩等を用いてガラス内に含有できる。
本発明の光学ガラスには、他の成分を本願発明のガラスの特性を損なわない範囲で必要に応じ、添加できる。
次に、本発明の光学ガラスに含有すべきでない成分、及び含有することが好ましくない成分について説明する。
本発明の光学ガラスの製造方法は特に限定されない。例えば、上記原料を各成分が所定の含有率の範囲内になるように均一に混合し、作製した混合物を石英坩堝又はアルミナ坩堝又は白金坩堝に投入して粗溶融した後、白金坩堝、白金合金坩堝又はイリジウム坩堝に入れて900〜1200℃の温度範囲で2〜10時間溶融し、攪拌均質化して泡切れ等を行った後、850℃以下の温度に下げてから仕上げ攪拌を行って脈理を除去し、金型に鋳込んで徐冷することにより製造することができる。
本発明の光学ガラスは、高い相対屈折率の温度係数(dn/dT)を有する。より具体的には、本発明の光学ガラスは、相対屈折率(589.29nm)の温度係数(20〜40℃)の下限が、好ましくは−6.0×10−6℃−1、より好ましくは−5.5×10−6℃−1、さらに好ましくは−5.0×10−6℃−1である。これにより、光学素子の温度が大きく変動するような環境下でも屈折率の変動が小さくなるため、より幅広い温度範囲において、所望の光学特性を高精度に発揮することができる。
一方で、相対屈折率の温度係数は、正の方向に大き過ぎると、光学素子の温度変化による屈折率の変化がかえって大きくなる。そのため、本発明の光学ガラスは、相対屈折率の温度係数の上限を、好ましくは6.0×10−6℃−1、より好ましくは5.5×10−6℃−1、さらに好ましくは5.0×10−6℃−1としてもよい。本発明の光学ガラスは有する相対屈折率の温度係数は、絶対値が小さいことがより好ましく、0であることが最も好ましい。
なお、相対屈折率の温度係数は、光学ガラスと同じ温度の空気中において、波長589.29nmの光を照射しながら光学ガラスの温度を変化させたときの、温度1℃当たりの屈折率の変化量(×10−6/℃)で表される。
本発明の光学ガラスは、屈折率(nd)が1.50以上1.60以下であることが好ましい。より具体的には、本発明の光学ガラスは、屈折率の下限が、好ましくは1.50、より好ましくは1.51、より好ましくは1.52である。また、本発明の光学ガラスは、屈折率の上限が、好ましくは1.58、より好ましくは1.57、より好ましくは1.55である。
本発明の光学ガラスは、アッベ数(νd)が60以上80以下であることが好ましい。より具体的には、本発明の光学ガラスは、アッベ数の下限が、好ましくは60、より好ましくは65、より好ましくは70、さらに好ましくは73である。一方で、本発明の光学ガラスは、アッベ数の上限が、好ましくは80、より好ましくは78、さらに好ましくは77である。
これらにより、光学設計の自由度が広がり、さらに素子の薄型化を図っても所望の光の屈折量を得ることができるため、光学系の高精度化及び小型化を図ることができる。
なお、屈折率(nd)及びアッベ数(νd)は、日本光学硝子工業会規格JOGIS01−2003に基づいて測定して得た値を意味するものとする。
一方、摩耗度が低すぎると逆に研磨加工が難しくなる傾向がある。そのため、本発明の光学ガラスの摩耗度の下限は、好ましくは80、より好ましくは100、さらに好ましくは120としてもよい。
なお、摩耗度とは、「JOGIS10−1994光学ガラスの磨耗度の測定方法」に準じて測定して得た値を意味するものとする。
本発明の光学ガラスは、様々な光学素子及び光学設計に有用であるが、その中でも特に、本発明の光学ガラスからプリフォームを形成し、このプリフォームに対して研磨加工や精密プレス成形等の手段を用いて、レンズやプリズム、ミラー等の光学素子を作製することが好ましい。これにより、カメラやプロジェクタ等のような光学素子に可視光を透過させる光学機器に用いたときに、高精細で高精度な結像特性を実現することができる。特に、本発明の光学ガラスは温度変化による屈折率の変動が小さいため、例えばプロジェクタのように使用時に高温になる用途に用いても、高精細で高精度な結像特性を実現することができる。ここで、プリフォーム材を製造する方法は特に限定されるものではなく、例えば特開平8−319124に記載のガラスゴブの成形方法や特開平8−73229に記載の光学ガラスの製造方法及び製造装置のように溶融ガラスから直接プリフォーム材を製造する方法を用いることもできる。また、光学ガラスから形成したストリップ材に対して研削研磨等の冷間加工を行って製造する方法を用いることもできる。
磨耗度={(試料の磨耗質量/比重)/(標準試料の磨耗質量/比重)}×100
により計算した。
Claims (17)
- カチオン成分としてP5+、Al3+及びMg2+を含有し、アニオン成分としてO2−及びF−を含有し、
相対屈折率(589.29nm)の温度係数(20〜40℃)が−6.0×10−6(℃−1)以上である光学ガラス。 - カチオン%(モル%)表示で、P5+を20〜55%、Al3+を1〜20%及びMg2+を0.1〜30%含有する請求項1記載の光学ガラス。
- カチオン%(モル%)表示で、
Ca2+の含有率が0〜30%、
Sr2+の含有率が0〜30%、
Ba2+の含有率が0〜30%、
である請求項1又は2に記載の光学ガラス。 - アルカリ土類金属の合計含有率(R2+:カチオン%)が30〜70%である請求項1から3のいずれか記載の光学ガラス。
- Mg2+含有率及びCa2+の合計量(カチオン%)が7.5〜50%である請求項1から4のいずれか記載の光学ガラス。
- アルカリ土類金属の合計含有率(R2+:カチオン%)に対する、Mg2+含有率及びCa2+の合計の比((Mg2++Ca2+)/R2+)が0.25以上である請求項1から5のいずれか記載の光学ガラス。
- アニオン%(モル%)表示で、
F−の含有率が20〜70%、
O2−の含有率が30〜80%、
である請求項1から6のいずれか記載の光学ガラス。 - P5+含有率(カチオン%)に対するMg2+含有率(カチオン%)の比(Mg2+/P5+)が0.25以上である請求項1から7のいずれか記載の光学ガラス。
- カチオン%(モル%)表示で、
La3+の含有率が0〜10%、
Gd3+の含有率が0〜10%、
Y3+の含有率が0〜10%、
Yb3+の含有率が0〜10%、
Lu3+の含有率が0〜10%
である請求項1から8のいずれか記載の光学ガラス。 - La3+、Gd3+、Y3+、Yb3+及びLu3+の合計含有率(Ln3+:カチオン%)が0〜20%である請求項1から9のいずれか記載の光学ガラス。
- カチオン%(モル%)表示で、
Li+の含有率が0〜20%、
Na+の含有率が0〜10%、
K+の含有率が0〜10%
である請求項1から10のいずれか記載の光学ガラス。 - アルカリ金属の合計含有率(Rn+:カチオン%)が20%以下である請求項1から11のいずれか記載の光学ガラス。
- カチオン%(モル%)表示で、
Si4+の含有率が0〜10%、
B3+の含有率が0〜15%、
Zn2+の含有率が0〜30%、
Nb5+の含有率が0〜10%、
Ti4+の含有率が0〜10%、
W6+の含有率が0〜10%、
Zr4+の含有率が0〜10%、
Ta5+の含有率が0〜10%、
Ge4+の含有率が0〜10%、
Bi3+の含有率が0〜10%、
Te4+の含有率が0〜15%
である請求項1から12のいずれか記載の光学ガラス。 - 「JOGIS10−1994光学ガラスの磨耗度の測定方法」に準じた測定方法における磨耗度が600以下である請求項1から13のいずれか記載の光学ガラス。
- 請求項1から14のいずれか記載の光学ガラスからなる光学素子。
- 請求項1から14のいずれか記載の光学ガラスからなる研磨加工用及び/又は精密プレス成形用のプリフォーム。
- 請求項16記載のプリフォームを精密プレスしてなる光学素子。
Priority Applications (6)
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