JPWO2020059589A1 - 空気入りタイヤ - Google Patents

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Abstract

空気入りタイヤは、サイドウォール部に設けられたサイドゴムの表面に、表面の凹凸によって互いに識別可能に形成された2種類の濃淡要素でドットパターンを形成した二次元コードが設けられる。前記二次元コードには、前記濃淡要素の濃要素に対応してドット孔が設けられる。前記サイドゴムは、ブタジエンゴムを含むジエン系ゴムであり、前記サイドゴムに含まれる前記ジエン系ゴム100質量部に対する前記ブタジエンゴムの配合量をAとし、カーボンの配合量をBとして、比A/Bと、前記ドット孔の開口から孔底までの孔深さD[mm]とは、1.1≦(A/B)/D≦6.0の関係を満足する。

Description

本発明は、空気入りタイヤに関し、具体的には、タイヤのサイドウォール部に刻印した二次元コードを備える空気入りタイヤに関する。
近年、空気入りタイヤ(以降、単にタイヤともいう)のサイドウォール部に、情報を記録した二次元コードを設けることが提案されている。二次元コードは、一次元コードに比べて多くの情報を含ませることができるので、種々の情報を二次元コードに含ませて、タイヤを管理することができる。サイドウォール部に、所定のパターンをドット孔で刻印することにより、サイドウォール部に濃淡要素のパターンで構成された二次元コードを設けることが提案されている(特許文献1)。
サイドウォール部に所定のドット孔のパターンを刻印することで形成した二次元コードは、サイドウォール部が摩耗しない限りは消滅しないので、タイヤの管理を有効に行うことができる。
国際公開第2005/000714号
このような二次元コードの複数のドット孔を設けた空気入りタイヤでは、新品時において二次元コードの読み取りは可能であるが、屋外の環境下、荷重を負荷して転動した場合に二次元コードの読み取りが低下する場合があった。二次元コードの読み取りとは、二次元コード読み取り器、例えば、携帯端末による二次元コードの読み取りであり、読み取りの低下とは、読み取りを失敗する場合が多くなることをいう。空気入りタイヤに設けられる二次元コードは、タイヤの使用中に二次元コードに記録された情報を読み取って活用することが行われる。このため、タイヤを長期使用したとき、二次元コードのドット孔におけるクラックの発生と進展によって二次元コードの表面に凹凸が発生し、濃淡要素の区別が困難になり二次元コードの読み取り性が低下することは好ましくない。このため、タイヤの長期使用の際に二次元コードの読み取り性の低下が抑制されることが好ましい。
また、ドット孔はサイドウォール部の表面から凹んだ形状を有するので、タイヤの使用に伴ってドット孔にクラックが発生し、サイドゴムの厚さ方向に、さらに、サイドウォール部の表面に沿ってクラックが進展することは、サイドゴムの耐久性、ひいては空気入りタイヤの耐久性の点から好ましくない。
そこで、本発明は、空気入りタイヤを長期使用しても二次元コードの読み取り性の低下を抑制することができる、二次元コードが刻印された空気入りタイヤを提供することを目的とする。
本発明の一態様は、空気入りタイヤである。前記空気入りタイヤは、
前記空気入りタイヤのカーカスプライをタイヤ外側から覆うように前記空気入りタイヤのサイドウォール部のそれぞれに設けられたサイドゴムと、
前記サイドゴムの表面に設けられ、前記表面の凹凸によって互いに識別可能に形成された2種類の濃淡要素でドットパターンを形成し、前記濃淡要素の濃要素に対応して光を用いてドット孔が刻印された構成の二次元コードと、を備える。
前記サイドゴムは、ブタジエンゴムを含むジエン系ゴムであり、
前記サイドゴムに含まれる前記ジエン系ゴム100質量部に対する前記ブタジエンゴムの配合量をAとし、カーボンの配合量をBとして、比A/Bと、前記ドット孔の開口から前記ドット孔の孔底までの孔深さD[mm]とは、1.1≦(A/B)/D≦6.0の関係を満足する。
前記ドット孔の孔壁面は、前記開口から前記孔底に進むに連れて孔断面が小さくなるように設けられ、前記ドット孔の深さ方向の孔中心軸を含む平面で切断した切断面において、前記ドット孔の前記深さ方向に対する孔壁角度は、10〜50度である、ことが好ましい。
前記孔深さDの70%、前記開口から前記深さ方向に離れた位置における前記孔断面の面積をS70とし、前記開口における前記孔断面の面積をSとしたとき、比S70/Sは、0.2〜0.5である、ことが好ましい。
前記二次元コードが設けられる範囲において、前記サイドゴムの厚さはタイヤ径方向の第1の側の方が前記第1の側と反対の側である第2の側に比べて厚く、
前記切断面がタイヤ径方向に沿った切断面であり、前記切断面において、前記ドット孔の孔壁角度のうち、前記タイヤ径方向の前記第1の側にある孔壁角度θ1は、前記タイヤ径方向の前記第2の側にある孔壁角度θ2に比べて小さい、ことが好ましい。
前記切断面がタイヤ周方向に沿った切断面であり、前記切断面において、前記ドット孔の孔壁角度のうち、前記タイヤ周方向の一方の側にある孔壁角度θ3と他方の側にある孔壁角度θ4の差の絶対値は、前記孔壁角度θ1と前記孔壁角度θ2との角度差の絶対値よりも小さい、ことが好ましい。
前記サイドゴムの300%引っ張りモジュラスが5.0〜10.0MPaである、ことが好ましい。
前記カーボンの窒素比表面積が30〜90[m/g]である、ことが好ましい。
上述の空気入りタイヤによれば、空気入りタイヤを長期使用しても二次元コードの読み取り性の低下を抑制することができる。
一実施形態の空気入りタイヤの構成の一例を示す図である。 (a),(b)は、一実施形態の二次元コードの例を説明する図である。 (a),(b)は、タイヤ径方向及びタイヤ周方向に沿った切断面で切断したドット孔の形状を説明する図である。
以下、一実施形態の空気入りタイヤについて詳細に説明する。
本明細書において、タイヤ幅方向は、空気入りタイヤの回転軸と平行な方向である。タイヤ幅方向外側は、タイヤ幅方向において、タイヤ赤道面を表すタイヤ赤道線CL(図1参照)から離れる側である。また、タイヤ幅方向内側は、タイヤ幅方向において、タイヤ赤道線CLに近づく側である。タイヤ周方向は、空気入りタイヤの回転軸を回転の中心として回転する方向である。タイヤ径方向は、空気入りタイヤの回転軸に直交する方向である。タイヤ径方向外側は、前記回転軸から離れる側をいう。また、タイヤ径方向内側は、前記回転軸に近づく側をいう。
本明細書で言う二次元コードは、横方向にしか情報を持たない一次元コード(バーコード)に対し、二方向に情報を持つマトリックス表示方式のコードである。二次元コードとして、例えば、QRコード(登録商標)、データマトリクス(登録商標)、Maxicode、PDF−417(登録商標)、16Kコード(登録商標)、49コード(登録商標)、Aztecコード(登録商標)、SPコード(登録商標)、ベリコード(登録商標)、及び、CPコード(登録商標)を含む。
(空気入りタイヤ)
図1は、一実施形態の空気入りタイヤ10(以降、単にタイヤ10という)の構成の一例を示す図である。図1は、タイヤ赤道線CLに対してタイヤ幅方向の一方の側のプロファイル断面を示す。
タイヤ10は、トレッドパターンを有するトレッド部10Tと、タイヤ幅方向両側の一対のビード部10Bと、トレッド部10Tの両側に設けられ、一対のビード部10Bとトレッド部10Tに接続される一対のサイドウォール部10Sと、を備える。トレッド部10Tは路面と接触する部分である。サイドウォール部10Sは、トレッド部10Tをタイヤ幅方向の両側から挟むように設けられた部分である。ビード部10Bは、サイドウォール部10Sに接続され、サイドウォール部10Sに対してタイヤ径方向内側に位置する部分である。
タイヤ10は、骨格材として、カーカスプライ12と、ベルト14と、ビードコア16と、を有し、これらの骨格材の周りに、トレッドゴム18と、サイドゴム20と、ビードフィラーゴム22と、リムクッションゴム24と、インナーライナゴム26と、を主に有する。
カーカスプライ12は、一対の円環状のビードコア16の間を巻きまわしてトロイダル形状を成した、有機繊維をゴムで被覆したカーカスプライ材で構成されている。カーカスプライ12は、ビードコア16の周りに巻きまわされてタイヤ径方向外側に延びている。カーカスプライ12のタイヤ径方向外側に2枚のベルト材14a,14bで構成されるべルト14が設けられている。ベルト14は、タイヤ周方向に対して、所定の角度、例えば20〜30度傾斜して配されたスチールコードにゴムを被覆したベルト材で構成され、下層のベルト材14aのタイヤ幅方向の幅が上層のベルト材14bのタイヤ幅方向の幅に比べて長い。2層のベルト材14a,14bのスチールコードはタイヤ周方向に対して互いに逆方向に傾斜して延在している。このため、ベルト材14a,14bは、交錯層となっており、充填された空気圧によるカーカスプライ12の膨張を抑制する。
ベルト14のタイヤ径方向外側には、トレッドゴム18が設けられ、トレッドゴム18の両端部には、サイドゴム20が接続されてサイドウォール部10Sを形成している。サイドゴム20のタイヤ径方向内側の端には、リムクッションゴム24が設けられ、タイヤ10を装着するリムと接触する。ビードコア16のタイヤ径方向外側には、ビードコア16の周りに巻きまわす前のカーカスプライ12の部分と、ビードコア16の周りに巻きまわした後のカーカスプライ12の部分との間に挟まれるようにビードフィラーゴム22が設けられている。ビードフィラーゴム22は、カーカスプライ12に沿ってビードコア16の側からタイヤ径方向外側に向かって延びている。タイヤ10とリムとで囲まれる空気を充填するタイヤ空洞領域に面するタイヤ10の内表面には、インナーライナゴム26が設けられている。
この他に、ベルト材14bとトレッドゴム18との間には、ベルト14のタイヤ径方向外側からベルト14を覆う、有機繊維をゴムで被覆した3層のベルトカバー30が設けられる。ベルトカバー30は、必要に応じて設ければよく、必須ではない。ベルトカバー30の層数も3枚に限定されず、1枚あるいは2枚であってもよい。
このようなタイヤ10のサイドウォール部10Sの表面に二次元コード40が設けられている。図1では、2次元コード40の配置位置は太線で示されている。
(サイドウォール部10S、二次元コード40)
図2(a)は、タイヤ10のサイドウォール部10Sの表面に設けられた一実施形態の二次元コード40の例を説明する図である。図2(b)は、二次元コード40の表面凹凸の一例を説明する図である。
サイドウォール部10Sのいずれか一方には、サイドゴム20の表面に、二次元コード40が光、例えばレーザ光の照射によって刻印されている。二次元コード40は、表面の凹凸によって互いに識別可能に形成された2種類の濃淡要素でドットパターンを形成したものである。二次元コード40は、レーザ光をサイドウォール部10Sの表面で集束させて光エネルギーを集中しサイドゴム20を局所的に加熱し昇華させて表面に微小なドット孔40aを複数刻印することにより形成されたパターンである。ドットパターンを形成するドット孔40aは、図2(b)に示すように、深さ方向に沿って孔断面が徐々に小さくなる形状を成している。図2(b)に示す例では、ドット孔40aの深さ方向に延びる孔中心軸を通る平面でドット孔40aを切断した時の孔壁面の形状は直線であるが、孔壁面の形状は孔開口に向かって凸状のあるいは凹状の曲線であってもよい。ドット孔40a野開口形状は、真円形状及び楕円形状を含む円形状あるいは四角形状を成した孔で、真円形状の場合、その直径は0.1〜1.0mmであり、孔深さDは0.3〜1.0mmである。
二次元コード40では、二次元コードの濃淡要素を区分けする単位セルのうち濃領域の1つの単位セル領域に1つのドット孔(凹部)が光によって刻印されている。単位セルのうち淡い領域の単位セル領域には、ドット孔(凹部)は設けられない。すなわち、二次元コード40は、格子状に分割した同一サイズの矩形形状の複数の単位セル領域に対応して、1つのドット孔(凹部)が濃淡要素の濃い1つの単位セル領域を形成するように、ドット孔(凹部)が刻印された構成を有する。図2(a)では、単位セル領域の濃領域は、黒く塗りつぶされた領域で示されている。
図2(a)に示す2次元コード40は、QRコード(登録商標)であり、2種類の濃淡要素でドットパターンが形成されたドットパターン領域42を備える。ドットパターン領域42の周りには、濃淡要素のうち淡い要素が囲む、淡い要素で構成された空白領域44が設けられる。図2(a)では、空白領域44の外縁を明確にするために、枠線を記載している。空白領域44の幅wは、例えば、ドットパターン領域42内の1つの単位セル領域の寸法サイズの4〜5倍であることが好ましい。例えば、空白領域44は、ドットパターン領域42の幅の15〜25%であることが好ましい。
図2(a)に示す二次元コード40はQRコード(登録商標)であるので、ドットパターン領域42は、QRコード(登録商標)のデータセルを表示したデータセル領域42aと、切り出しシンボルを表示した切り出しシンボル領域42bと、を含む。
二次元コード40のドットパターンを形成するドット孔40aは、図2(b)に示す例では、深さ方向に沿って孔断面が徐々に小さくなり、孔底で尖った角形状を成している。しかし、孔底は、尖った角形状でなくてもよく、例えば平面形状であってもよい。
ドット孔40aの孔深さDは、所定の深さの範囲を超えて深くなると、孔底からカーカスプライ12までの距離が短くなって(孔底位置におけるサイドゴム20の厚さが薄くなって)、サイドゴム20のタイヤ10の変形を吸収する程度が小さくなり、タイヤの長期使用によって孔底からクラックが発生し易くなる。また、孔底から発生したクラックが進展してカーカスプライ12まで到達することは、タイヤ10の耐久性の低下に繋がるため好ましくない。また、孔底に発生したクラックにより、ドット孔40aが形成されたサイドゴム20の表面は凹凸が形成されやすく、二次元コード40の濃淡要素の淡要素に悪影響を与えて、二次元コード40の読み取り性の低下を促進させる。しかも、タイヤの長期使用によってドット孔40aに泥等の異物が詰まりやすくなり、二次元コード40の読み取り性を低下させる。このように、孔深さDが、所定の深さの範囲を超えて深くなると、タイヤ10の長期使用に伴う二次元コード40の読み取り性が大きく低下する。一方、ドット孔40aの孔深さDが所定の深さの範囲に対して浅い場合、二次元コード40の濃淡要素の濃要素が薄くなり、タイヤ10を使用する前の新品時点から二次元コード40の読み取り性が低くなる。
このような点から、ドット孔40aの孔深さDは、所定の深さの範囲に設定される。しかし、ドット孔40aの孔深さDを所定の深さの範囲にすることはできても、レーザ光の照射による昇華のし易さの程度等のサイドゴム20の特性を考慮することなく、レーザ光を照射した場合、ドット孔40aの孔壁面を所定の形状に安定的に形成することができず、タイヤ10の長期使用にともなう読み取り性の低下を十分に抑制できない場合もある。
ドット孔40aを形成するとき、ドット孔40aを形成する位置にレーザ光を集束させて、エネルギ密度を高め、トレッドゴム20を局所的に急激に加熱してサイドゴム20を昇華させる必要がある。このとき、ドット孔40aの孔深さDは、サイドゴム20の昇華のし易さの程度、およびレーザ光のエネルギ密度、及びレーザ光の照射時間に依存する。レーザ光を利用して、サイドゴム20を昇華させる場合、サイドゴム20の原材料の配合から定まる昇華のし易さの程度に合わせて、レーザ光のエネルギ密度を調整し、照射時間を定めることにより、ドット孔40aの孔壁面を所定の形状に安定的に形成することができ、その結果、タイヤ10の長期使用にともなう読み取り性の低下を十分に抑えることができる。
サイドゴム20には、ゴム原材料としてブタジエンゴムを含むジエン系ゴムが用いられる。この場合、ブタジエンゴムは、レーザ光の照射により、昇華し易いが、補強材(充填材)として含まれるカーボン(カーボンブラック)は、レーザ光の照射により昇華し難い。このため、サイドゴム20のブタジエンゴムの配合量とカーボンの配合量の比率によってサイドゴム20の昇華のし易さの程度が定まる。ブタジエンゴムの配合量に対するカーボンの配合量の比率が高くなる程、昇華のし易さの程度は低くなり、カーボンの配合量に対するブタジエンゴムの配合量の比率が高くなるほど、昇華のし易さの程度は高くなる。
サイドゴム20におけるジエン系ゴム100質量部に対するブタジエンの配合量をA質量部とし、サイドゴム20に含まれるカーボンの配合量をB質量部とし、ブタジエンの配合量Aの、カーボンの配合量Bに対する比を比(A/B)とし、二次元コード40のドット孔40aの開口から孔底までの孔深さをD[mm]としたとき、実施形態では、比(A/B)と孔深さDとは、1.1≦(A/B)/D≦6.0の関係を満足する。
比(A/B)は、カーボンの配合量に対するブタジエンゴムの配合量の比率を示す。したがって、カーボンの配合量が多く、比(A/B)が小さい場合、サイドゴム20の昇華のし易さの程度は低いため、レーザ光の同じ照射条件(同じエネルギ密度、同じ照射時間)では、孔深さDは小さくなり易い。上述したように、孔深さDは、所定の深さの範囲に設定されるため、レーザ光の照射条件(エネルギ密度、照射時間)を調整して、孔深さDを調整することができる。しかし、(A/B)/Dが上記範囲を超える場合、レーザ光のエネルギ密度及びレーザ光の照射時間の調整量が許容範囲を超えるため、ドット孔40aの孔壁面を所定の形状に安定的に形成することができず、安定的に形成することができたとしてもタイヤ10の長期使用にともなう読み取り性の低下を十分に抑制できなくなる。
例えば、比(A/B)が小さいにも係らず、(A/B)/Dが上記数値範囲からはずれるように深さDを大きくした場合、レーザ光の照射時間を長く、あるいはエネルギ密度を高めることになるので、サイドゴム20に大きな熱が付与されて、ドット孔40aの孔底あるいは孔壁およびその周辺のサイドゴム20の表面の変質の程度が大きくなり、クラックの発生およびクラックの進展を誘発し易くなる。比(A/B)が大きいにも係らず、(A/B)/Dが上記数値範囲からはずれるように孔深さDを小さくしようとすると、レーザ光の照射時間を短く、あるいはエネルギ密度を低くすることになるが、この場合、ドット孔40aを形成しやすいサイドゴム20であるため、カーボンの配合量に対するブタジエンゴムの配合量の場所による変動の影響を受けて、ドット孔40aの孔深さDや孔の形状がばらつき易く、タイヤ10の読み取り性に悪影響を与える。
このため、(A/B)/Dは1.1以上6.0以下に設定される。上記(A/B)/Dは、1.5以上5.0以下であることが好ましい。なお、配合量Aは、例えば50〜70質量部の範囲にあり、配合量Bは、例えば30〜55質量部の範囲にある。
このように、(A/B)/Dを1.1以上6.0以下に設定することにより、孔壁のサイドゴム20の表面の変質の程度を抑えることができ、タイヤ10の長期使用にともなう読み取り性の低下を十分に抑制することができる。
一実施形態によれば、ドット孔40aの孔壁面は、ドット孔40aの開口から孔底に進むに連れて孔断面が小さくなるように設けられ、ドット孔40aの深さ方向の孔中心軸を含む平面で切断した切断面において、ドット孔40aの孔壁角度θ(図2(b)参照)は、10〜50度であることが好ましい。孔壁角度θは、ドット孔40aのサイドゴム20表面における開口においてサイドゴム20表面に直交する法線方向に対する孔壁の傾斜角度である。溝壁角度θは、切断面において、開口から孔底まで結んだ直線の傾斜角度である。このような孔壁角度θの孔壁を、(A/B)/Dを1.1以上6.0以下とし、レーザ光の照射条件を調整することにより、安定して形成することができる。孔壁角度θが10度未満になると、泥等の異物がドット孔40aに詰まり易くなり、タイヤ10の使用に伴う二次元コード40の読み取り性の低下を招き易い。一方、孔壁角度θが50度より大きくなるとドット孔40aに進入した光が反射によって、ドット孔40aから外部に漏れ易くなるため、濃淡要素における濃要素と淡要素との差が小さくなり、二次元コード40の読み取り性は低くなり易い。このため、タイヤ10の長期使用時の二次元コード40の読み取り性は一層低くなり易い。
同じ照射条件でレーザを照射するとき、ブタジエンゴムの配合量が相対的に多く、比(A/B)が高い場合、サイドゴム20の昇華のし易さの程度は高くなり、孔壁角度θが小さくなり易い。一方、比(A/B)が小さく、カーボンの配合量が相対的に多い場合、サイドゴム20の昇華のし易さの程度は低くなり、孔壁角度θが大きくなり易い。
一実施形態によれば、ドット孔40aの開口から孔深さDの70%、深さ方向に離れた位置における孔断面の面積をS70とし、開口における孔断面の面積をSとしたとき、比S70/Sは、0.2〜0.5である、ことが好ましい。比S70/Sが上記範囲を外れると、泥等がドット孔40aに詰まり易くなって使用に伴う二次元コード40の読み取り性の低下を招き易くなり、また、ドット孔40aに進入した光が反射によって、ドット孔40aから外部に漏れ易くなり、濃淡要素における濃要素と淡要素との濃淡差が小さくなり、二次元コード40の読み取り性が低下し易い。
このような比S70/Sの上記数値範囲は、(A/B)/Dを1.1以上6.0以下とし、レーザ光の照射条件を調整することにより達成することができる。
一実施形態によれば、二次元コード40が設けられる範囲において、サイドゴム20の、タイヤ径方向の第1の側の厚さのは、第1の側と反対の側である第2の側の厚さに比べて厚く、ドット孔40aの深さ方向の孔中心軸を含む平面で切断した切断面が、タイヤ径方向に沿った切断面である場合、この切断面において、孔壁角度θのうち、タイヤ径方向の第1の側にある孔壁角度θ1は、タイヤ径方向の第2の側にある孔壁角度θ2に比べて小さい、ことが好ましい。図3(a)は、第1の側がタイヤ径方向内側であり、第2の側がタイヤ径方向外側である場合の、タイヤ径方向に沿った切断面で切断したドット孔40aの形状を説明する図である。
図3(a)に示すように、孔壁角度θ1は、孔壁角度θ2に比べて小さい。このような形状のドット孔40aを設けることで、ドット孔40aの孔底位置が、タイヤ径方向の第1の側(内側)にシフトする。タイヤ径方向の第1の側(内側)のサイドゴム20の厚さは、第2の側(外側)のサイドゴム20の厚さに比べて厚いので孔底位置にクラックが入り難くなり、クラックの進展を抑制することができる。
一実施形態によれば、ドット孔40aの深さ方向の孔中心軸を含む平面で切断した切断面が、タイヤ周方向に沿った切断面である場合、この切断面において、孔壁角度θのうち、タイヤ周方向の一方の側にある孔壁角度θ3(図3(b)参照)と他方の側にある孔壁角度θ4(図3(b)参照)の差(θ3−θ4)の絶対値は、孔壁角度θ1と孔壁角度θ2との角度差(θ1−θ2)の絶対値よりも小さい、ことが好ましい。図3(b)は、タイヤ周方向に沿った切断面で切断したドット孔40aの形状を説明する図である。
タイヤ周方向では、サイドゴム20の厚さは、タイヤ周方向で均一に近いため、差(θ3−θ4)の絶対値は、角度差(θ1−θ2)の絶対値よりも小さいことが好ましい。
一実施形態によれば、サイドゴム20の300%引っ張りモジュラスは、5.0〜10.0MPaである、ことが好ましい。この引っ張りモジュラスを有するサイドゴム20は、比率(A/B)/Dを、上記数値範囲にすることができるので、このサイドゴム20を用いることにより、ドット孔40aの孔深さD[mm]を、二次元コード40の読み取りが可能なように設定することができ、かつ、ドット孔40aの孔壁のサイドゴム20の表面の変質の程度を抑えることができ、タイヤ10の長期使用にともなう読み取り性の低下を十分に抑制することができる。300%引っ張りモジュラスは、JIS K6251に準拠して引張速度500mm/分にて、室温(例えば20℃)で測定される。
一実施形態によれば、サイドゴム20に含まれるカーボンの窒素比表面積が30〜90[m/g]であることが好ましい。窒素比表面積が30〜90[m/g]のカーボンを用いることにより、ドット孔40aの孔壁表面の変質の程度をより抑えることができ、タイヤ10の長期使用にともなう読み取り性の低下を十分に抑制することができる。カーボンの窒素比表面積は、JIS K6217−2に準拠して測定される。
また、サイドゴム20は、老化防止剤として、N−(1,3−ジメチルブチル)−N’フェニル−p−フェニレンジアミン、又はポリ−(2,2,4−トリメチル−1,2ジヒドロキノリン)を含む、ことが好ましい。
(実施例、比較例)
上述の実施形態の効果を確認するために、二次元コード40(具体的には、QRコード(登録商標))のドット孔の形状が異なるタイヤ10(タイヤサイズ:195/65R15 91H)を種々作製し、タイヤ10の長期使用時の二次元コード40の読み取り性の試験を行った。タイヤ10のタイヤ構成は、図1に示す構成とした。
二次元コード40のドット孔40aは円形状の孔とし、その開口の内径は0.5mmとした。QRコード(登録商標)の大きさは15mm×15mmとした。
タイヤ10の長期使用については、長期使用を模擬した所定の条件で、室内ドラム上でタイヤ10のドラム試験を行った。ドラム試験は、FMVSS139に基づく低圧試験である(リムサイズ 15×6J、XL:160kPa、荷重 100%LI)。長期使用を模擬した所定の条件として、具体的には、タイヤ10に対して、オゾン濃度100pphmの条件でオゾン照射をしつつ、時速81km/時の速度で10000km走行させた。走行後、照明光の当て方を種々変化させて携帯端末で二次元コード40の読み取りの可否を調べた。
走行後のタイヤ10を、実施例、比較例のそれぞれについて10本ずつ用意し、照明光の当て方を種々変えて二次元コード40の読み取りを行った。二次元コード40の読み取り回数に対する正しく読み取った回数の比率を読み取り率とした。読み取り率は、比較例を基準とし(比較例1の読み取り率を指数100とし)、実施例の読み取り率を指数化した。指数が高いほど、読み取り率が向上するように指数化した。この指数を、タイヤを長期使用したときの二次元コードの読み取り性の評価結果とした。
下記表1は、二次元コード40の配置位置に対する二次元コード40の読み取り率の結果(読み取り性)を示す。サイドゴム20の原材料の配合を変更し、レーザ光の照射時間を調整して、溝深さDを0.5〜0.7mmの範囲に定めた。
“溝壁角度θ[度]”は、ドット孔周りの周上の8箇所における孔壁角度の平均である。
“溝壁角度θ1、θ2”は、図3(a)に示す角度であり、二次元コード40が設けられる範囲において、サイドゴム20の厚さはタイヤ径方向内側の方が外側に比べて厚くなるようにした。実施例7,8では、孔壁角度θ1、θ2を20度あるいは40度にし、それ以外の孔壁角度を約30度にした。
Figure 2020059589
Figure 2020059589
比較例1,2と実施例1〜3の比較より、(A/B)/Dを1.1以上6.0以下とすることにより、タイヤを長期使用したときの二次元コードの読み取り性が、比較例1,2対比向上することがわかる。
実施例4〜8の比較より、孔壁角度を10〜50度とすることにより、タイヤの長期使用時の二次元コードの読み取り性が向上することがわかる。
また、二次元コード40が設けられる範囲において、サイドゴム20の厚さはタイヤ径方向内側の方が外側に比べて厚くなる場合、タイヤ径方向内側の孔壁角度θ1を、タイヤ径方向外側の孔壁角度θ2より小さくすることにより、タイヤの長期使用時の二次元コードの読み取り性が向上することがわかる。
以上、本発明の空気入りタイヤについて詳細に説明したが、本発明は上記実施形態及び実施例に限定されず、本発明の主旨を逸脱しない範囲において、種々の改良や変更してもよいのはもちろんである。
10 空気入りタイヤ
10T トレッド部
10S サイドウォール部
10B ビード部
12 カーカスプライ
14 ベルト
14a,14b ベルト材
16 ビードコア
18 トレッドゴム
20 サイドゴム
22 ビードフィラーゴム
24 リムクッションゴム
26 インナーライナゴム
30 ベルトカバー
40 二次元コード
40a ドット孔
42 ドットパターン領域
42a データセル領域
42b 切り出しシンボル領域
44 空白領域
(サイドウォール部10S、二次元コード40)
図2(a)は、タイヤ10のサイドウォール部10Sの表面に設けられた一実施形態の二次元コード40の例を説明する図である。図2(b)は、二次元コード40の表面凹凸の一例を説明する図である。
サイドウォール部10Sのいずれか一方には、サイドゴム20の表面に、二次元コード40が光、例えばレーザ光の照射によって刻印されている。二次元コード40は、表面の凹凸によって互いに識別可能に形成された2種類の濃淡要素でドットパターンを形成したものである。二次元コード40は、レーザ光をサイドウォール部10Sの表面で集束させて光エネルギーを集中しサイドゴム20を局所的に加熱し昇華させて表面に微小なドット孔40aを複数刻印することにより形成されたパターンである。ドットパターンを形成するドット孔40aは、図2(b)に示すように、深さ方向に沿って孔断面が徐々に小さくなる形状を成している。図2(b)に示す例では、ドット孔40aの深さ方向に延びる孔中心軸を通る平面でドット孔40aを切断した時の孔壁面の形状は直線であるが、孔壁面の形状は孔開口に向かって凸状のあるいは凹状の曲線であってもよい。ドット孔40a開口形状は、真円形状及び楕円形状を含む円形状あるいは四角形状を成した孔で、真円形状の場合、その直径は0.1〜1.0mmであり、孔深さDは0.3〜1.0mmである。
ドット孔40aを形成するとき、ドット孔40aを形成する位置にレーザ光を集束させて、エネルギ密度を高め、サイドゴム20を局所的に急激に加熱してサイドゴム20を昇華させる必要がある。このとき、ドット孔40aの孔深さDは、サイドゴム20の昇華のし易さの程度、およびレーザ光のエネルギ密度、及びレーザ光の照射時間に依存する。レーザ光を利用して、サイドゴム20を昇華させる場合、サイドゴム20の原材料の配合から定まる昇華のし易さの程度に合わせて、レーザ光のエネルギ密度を調整し、照射時間を定めることにより、ドット孔40aの孔壁面を所定の形状に安定的に形成することができ、その結果、タイヤ10の長期使用にともなう読み取り性の低下を十分に抑えることができる。
サイドゴム20には、ゴム原材料としてブタジエンゴムを含むジエン系ゴムが用いられる。この場合、ブタジエンゴムは、レーザ光の照射により、昇華し易いが、補強材(充填材)として含まれるカーボン(カーボンブラック)は、レーザ光の照射により昇華し難い。このため、サイドゴム20のブタジエンゴムの配合量とカーボンの配合量の比率によってサイドゴム20の昇華のし易さの程度が定まる。ブタジエンゴムの配合量に対するカーボンの配合量の比率が高くなる程、昇華のし易さの程度は低くなり、カーボンの配合量に対するブタジエンゴムの配合量の比率が高くなるほど、昇華のし易さの程度は高くなる。
サイドゴム20におけるジエン系ゴム100質量部に対するブタジエンの配合量をA質量部とし、サイドゴム20に含まれるカーボンの配合量をB質量部とし、ブタジエンの配合量Aの、カーボンの配合量Bに対する比を比(A/B)とし、二次元コード40のドット孔40aの開口から孔底までの孔深さをD[mm]としたとき、実施形態では、比(A/B)と孔深さDとは、1.1≦(A/B)/D≦6.0の関係を満足する。
一実施形態によれば、二次元コード40が設けられる範囲において、サイドゴム20の、タイヤ径方向の第1の側の厚さ、第1の側と反対の側である第2の側の厚さに比べて厚く、ドット孔40aの深さ方向の孔中心軸を含む平面で切断した切断面が、タイヤ径方向に沿った切断面である場合、この切断面において、孔壁角度θのうち、タイヤ径方向の第1の側にある孔壁角度θ1は、タイヤ径方向の第2の側にある孔壁角度θ2に比べて小さい、ことが好ましい。図3(a)は、第1の側がタイヤ径方向内側であり、第2の側がタイヤ径方向外側である場合の、タイヤ径方向に沿った切断面で切断したドット孔40aの形状を説明する図である。
図3(a)に示すように、孔壁角度θ1は、孔壁角度θ2に比べて小さい。このような形状のドット孔40aを設けることで、ドット孔40aの孔底位置が、タイヤ径方向の第1の側(内側)にシフトする。タイヤ径方向の第1の側(内側)のサイドゴム20の厚さは、第2の側(外側)のサイドゴム20の厚さに比べて厚いので孔底位置にクラックが入り難くなり、クラックの進展を抑制することができる。

Claims (7)

  1. 空気入りタイヤであって、
    前記空気入りタイヤのカーカスプライをタイヤ外側から覆うように前記空気入りタイヤのサイドウォール部のそれぞれに設けられたサイドゴムと、
    前記サイドゴムの表面に設けられ、前記表面の凹凸によって互いに識別可能に形成された2種類の濃淡要素でドットパターンを形成し、前記濃淡要素の濃要素に対応して光を用いてドット孔が刻印された構成の二次元コードと、を備え、
    前記サイドゴムは、ブタジエンゴムを含むジエン系ゴムであり、
    前記サイドゴムに含まれる前記ジエン系ゴム100質量部に対する前記ブタジエンゴムの配合量をAとしカーボンの配合量をBとして、前記配合量Bに対する前記配合量Aの比A/Bと、前記ドット孔の開口から前記ドット孔の孔底までの孔深さD[mm]とは、1.1≦(A/B)/D≦6.0の関係を満足する、ことを特徴とする空気入りタイヤ。
  2. 前記ドット孔の孔壁面は、前記開口から前記孔底に進むに連れて孔断面が小さくなるように設けられ、前記ドット孔の深さ方向の孔中心軸を含む平面で切断した前記ドット孔の切断面において、前記ドット孔の前記深さ方向に対する孔壁角度は、10〜50度である、請求項1に記載の空気入りタイヤ。
  3. 前記孔深さDの70%、前記開口から前記ドット孔の深さ方向に離れた位置における前記ドット孔の孔断面の面積をS70とし、前記開口における前記孔断面の面積をSとしたとき、比S70/Sは、0.2〜0.5である、請求項1または2に記載の空気入りタイヤ。
  4. 前記二次元コードが設けられる範囲において、前記サイドゴムの厚さはタイヤ径方向の第1の側の方が前記第1の側と反対の側である第2の側に比べて厚く、
    前記切断面が前記タイヤ径方向に沿った切断面であり、前記切断面において、前記ドット孔の孔壁角度のうち、前記タイヤ径方向の前記第1の側にある孔壁角度θ1は、前記タイヤ径方向の前記第2の側にある孔壁角度θ2に比べて小さい、請求項2に記載の空気入りタイヤ。
  5. 前記切断面がタイヤ周方向に沿った切断面であり、前記切断面において、前記ドット孔の孔壁角度のうち、前記タイヤ周方向の一方の側にある孔壁角度θ3と他方の側にある孔壁角度θ4の差の絶対値は、前記孔壁角度θ1と前記孔壁角度θ2との角度差の絶対値よりも小さい、請求項4に記載の空気入りタイヤ。
  6. 前記サイドゴムの300%引っ張りモジュラスが5.0〜10.0MPaである、請求項1〜5のいずれか1項に記載の空気入りタイヤ。
  7. 前記カーボンの窒素比表面積が30〜90[m/g]である、請求項1〜6のいずれか1項に記載の空気入りタイヤ。
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