JP7393628B2 - 空気入りタイヤ - Google Patents

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Description

本発明は、空気入りタイヤに関し、具体的には、タイヤのサイドウォール部に二次元コードを備える空気入りタイヤに関する。
近年、空気入りタイヤ(以降、単にタイヤともいう)のサイドウォール部に、情報を記録した二次元コードを設けることが提案されている。二次元コードは、一次元コードに比べて多くの情報を含ませることができるので、種々の情報を二次元コードに含ませて、タイヤを管理することができる。サイドウォール部に、ドット孔で所定のパターンを刻印することにより、濃淡要素のパターンで構成された二次元コードをサイドウォール部に設けることが提案されている(特許文献1)。
国際公開第2005/000714号
このような二次元コードの複数のドット孔を設けた空気入りタイヤは、新品時において二次元コードの読み取りは可能であるが、屋外の環境下、荷重を負荷して転動した場合に二次元コードの読み取りが低下する場合があった。二次元コードの読み取りとは、二次元コード読み取り器、例えば、携帯端末による二次元コードの読み取りであり、読み取りの低下とは、読み取りを失敗する場合が多くなることをいう。空気入りタイヤに設けられる二次元コードは、タイヤの使用中に二次元コードに記録された情報を読み取って活用することが行われる。このため、タイヤを長期使用したとき、二次元コードのドット孔におけるクラックの発生と進展によって二次元コードの表面に凹凸が発生し、濃淡要素の区別が困難になり二次元コードの読み取り性が低下することは好ましくない。このため、タイヤの長期使用の際に二次元コードの読み取り性の低下が抑制されることが好ましい。
このような二次元コードは、空気入りタイヤの使用初期段階において、二次元コードの濃淡要素が明確に区別でき、高い読み取り性を有するために、サイドウォール部のスムース面に刻印することが好ましい。スムース面は、表面凹凸による模様やリッジ模様が設けられない、平滑な面である。リッジ模様とは、線状に延びる突出高さ0.2mm以上のリッジを一定の間隔で設けることにより形成される模様である。
ところで、断面高さが80mm以下の空気入りタイヤでは、サイドウォール部の表面が少ないため、二次元コードを配置する程度の広さを有するスムース面は少なく、スムース面は、トレッドパターンエンドからサイドウォール部のタイヤ径方向上部にわたるバットレス領域に制限される。このため、断面高さが80mm以下の空気入りタイヤでは、バットレス領域のスムース面に二次元コードは設けられる。
しかし、このバットレス領域には、トレッドゴムとサイドゴムとの境界部分があり、この境界部分には、生タイヤにおいて僅かな段差が生じる場合が多く、この段差によって、加硫故障が生じ易い。生タイヤを拡張させて加熱された加硫金型の内表面に生タイヤを押し付けるとき、加硫金型の内表面と生タイヤとの間にある気体の排出が十分にできず気体が残り、この気体が、高温に制御された内表面と生タイヤとの接触を阻害して生タイヤの加硫を十分にさせないことにより加硫故障は生じる。したがって、段差のある上記境界部分では、上記気体が残り加硫故障が発生する場合が多い。この加硫故障は、加硫終了後のタイヤの表面において光沢のある面となって目視検査で容易に判別できるものもあれば、加硫の程度が小さいため、目視検査では判別が困難な加硫故障もある。
したがって、目視検査により加硫故障の発生しているタイヤを排除しても、加硫故障したタイヤをすべて排除することはできないので、目視検査で判別できない、程度の低い加硫故障の発生した部分に二次元コードを設ける場合もある。加硫故障の発生した部分に二次元コードを設けると、加硫が十分でないことに起因して、タイヤの長期使用によって二次元コードのドット孔周りに発生するクラックが多くなり、これによって二次元コードの表面凹凸が変化して二次元コードの読み取り性は低下し易い。
このように二次元コードを刻印する領域に加硫故障があることは好ましくない。
そこで、本発明は、二次元コードが設けられる領域に加硫故障が発生すること抑制し、これにより、タイヤを長期使用しても、二次元コードの読み取り性の低下を抑制することができる空気入りタイヤを提供することを目的とする。
本発明の一態様は、空気入りタイヤである。当該空気入りタイヤは、
一対の円環状のビードコアと、
前記一対のビードコアの周りに巻きまわして前記一対のビードコア間に設けられた、トロイダル状のカーカスプライと、
前記カーカスプライをタイヤ幅方向の外側から覆うように前記空気入りタイヤのタイヤ幅方向外側に湾曲したサイドウォール部のそれぞれに設けられた一対のサイドゴムと、を備え、
前記サイドウォール部の少なくとも一方の表面には、前記空気入りタイヤのタイヤ周方向に沿った形状が平面状にあるいは湾曲状であり、周りの領域に対して凹んだスムース面の凹領域と、前記凹領域内にあり、前記スムース面に対して表面凹凸によって互いに識別可能に形成された2種類の濃淡要素でドットパターンが形成された二次元コードと、を備え、
前記空気入りタイヤの、前記ビードコアのタイヤ径方向の最も内側の位置からタイヤ最大外径位置までのタイヤ径方向に沿った断面高さは80mm以下であり、
前記凹領域の、前記凹領域が設けられない前記サイドゴムの非凹領域からの凹み量のうち、前記凹み量が最大となる位置を、前記二次元コードの配置領域は含む。
前記二次元コードの前記タイヤ周方向に沿った幅の50%の長さ、前記二次元コードの前記タイヤ周方向の両側の縁から前記タイヤ周方向に沿って離れた、前記タイヤ周方向の両側の位置の間のタイヤ周方向に沿った範囲は、前記凹領域である、ことが好ましい。
前記凹み量の最大凹み量は、0.3~1.0mmである、ことが好ましい。
前記凹領域の表面は、球面である、ことが好ましい。
前記凹領域は、前記空気入りタイヤのトレッドゴムと前記サイドゴムの境界を跨ぐように設けられている、ことが好ましい。
前記凹み量が最大となる位置は、前記空気入りタイヤのトレッドゴムと前記サイドゴムの境界部分に位置する、ことが好ましい。
一実施形態の空気入りタイヤの構成の一例を示す図である。 一実施形態の空気入りタイヤに設けられる二次元コードの一例を示す図である。 一実施形態の空気入りタイヤに設けられる二次元コードと凹領域の配置の一例を示す図である。 加硫時の加硫金型の内表面に押し付ける生タイヤの一例を説明する図である。 (a),(b)は、凹み量を説明する図である。
以下、実施形態の空気入りタイヤについて詳細に説明する。
本明細書において、タイヤ幅方向は、空気入りタイヤの回転軸と平行な方向である。タイヤ幅方向外側は、タイヤ幅方向において、タイヤ赤道面を表すタイヤ赤道線CL(図1参照)から離れる側である。また、タイヤ幅方向内側は、タイヤ幅方向において、タイヤ赤道線CLに近づく側である。タイヤ周方向は、空気入りタイヤの回転軸を回転の中心として回転する方向である。タイヤ径方向は、空気入りタイヤの回転軸に直交する方向である。タイヤ径方向外側は、前記回転軸から離れる側をいう。また、タイヤ径方向内側は、前記回転軸に近づく側をいう。
本明細書で後述する断面高さSH及びタイヤ最大幅は、タイヤを規定リムに組んで、規定内圧を加えた無負荷状態において測定される寸法をいう。ここで、規定リムとは、JATMAに規定される「適用リム」、TRAに規定される「Design Rim」、又はETRTOに規定される「Measuring Rim」をいう。また、規定内圧とは、JATMAに規定される「最高空気圧」、TRAに規定される「TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES」の最大値、又はETRTOに規定される「INFLATION PRESSURES」をいう。
なお、以下に説明する実施形態の空気入りタイヤのサイドウォール部には、二次元コードが設けられている。二次元コードは、例えば、刻印により設けられる。刻印とは、レーザ光をサイドウォール部の表面で集束させてエネルギを集中しサイドウォール部のゴムを局所的に加熱焼却して表面に微小なドット孔を複数形成する態様の他、ゴムに別の手段で凹凸を形成して二次元コードを形成することも含む。
実施形態で言う二次元コードは、横方向にしか情報を持たない一次元コード(バーコード)に対し、二方向に情報を持つマトリックス表示方式のコードである。二次元コードとして、例えば、QRコード(登録商標)、データマトリクス(登録商標)、Maxicode、PDF-417(登録商標)、16Kコード(登録商標)、49コード(登録商標)、Aztecコード(登録商標)、SPコード(登録商標)、ベリコード(登録商標)、及び、CPコード(登録商標)を含む。
(空気入りタイヤ)
図1は、一実施形態の空気入りタイヤ10(以降、単にタイヤ10という)の構成の一例を示す図である。図1は、タイヤ赤道線CLに対してタイヤ幅方向の一方の側のプロファイル断面を示す。
タイヤ10は、トレッドパターンを有するトレッド部10Tと、タイヤ幅方向両側の一対のビード部10Bと、トレッド部10Tの両側に設けられ、一対のビード部10Bとトレッド部10Tに接続される一対のサイドウォール部10Sと、を備える。トレッド部10Tは路面と接触する部分である。サイドウォール部10Sは、トレッド部10Tをタイヤ幅方向の両側から挟むように設けられた部分である。ビード部10Bは、サイドウォール部10Sに接続され、サイドウォール部10Sに対してタイヤ径方向内側に位置する部分である。
タイヤ10は、骨格材として、カーカスプライ12と、ベルト14と、ビードコア16と、を有し、これらの骨格材の周りに、トレッドゴム18と、サイドゴム20と、ビードフィラーゴム22と、リムクッションゴム24と、インナーライナゴム26と、を主に有する。
カーカスプライ12は、一対の円環状のビードコア16の間を巻きまわしてトロイダル形状を成した、有機繊維をゴムで被覆したカーカスプライ材で構成されている。カーカスプライ12は、ビードコア16の周りに巻きまわされてタイヤ径方向外側に延びている。カーカスプライ12は、2層のカーカスプライ材12a,12bで構成される。カーカスプライ材12aは、ビードコア16の周りに巻きまわされてタイヤ径方向外側に延び、下記に説明するベルト14のタイヤ径方向内側まで延び、カーカスプライ材12bは、ビードコア16の周りに巻きまわされて、以降で説明するビードフィラーゴム22に接する状態で終端している。カーカスプライ12のタイヤ径方向外側に2枚のベルト材14a,14bで構成されるベルト14が設けられている。ベルト14は、タイヤ周方向に対して、所定の角度、例えば20~30度傾斜して配されたスチールコードにゴムを被覆した部材で構成され、下層のベルト材14aが上層のベルト材14bに比べてタイヤ幅方向の幅が長い。2層のベルト材14a,14bのスチールコードの傾斜方向は互いに逆方向である。このため、ベルト材14a,14bは、交錯層となっており、充填された空気圧によるカーカスプライ12の膨張を抑制する。
ベルト14のタイヤ径方向外側には、トレッドゴム18が設けられ、トレッドゴム18の両端部には、サイドゴム20が接続されてサイドウォール部10Sを形成している。サイドゴム20のタイヤ径方向内側の端には、リムクッションゴム24が設けられ、タイヤ10を装着するリムと接触する。ビードコア16のタイヤ径方向外側には、ビードコア16の周りに巻きまわす前のカーカスプライ12の部分と、ビードコア16の周りに巻きまわした後のカーカスプライ12の部分との間に挟まれるようにビードフィラーゴム22が設けられている。タイヤ10とリムとで囲まれる空気を充填するタイヤ空洞領域に面するタイヤ10の内表面には、インナーライナゴム26が設けられている。
なお、図1に示すトレッドゴム18は、タイヤ径方向外側にあるキャップトレッドゴムと、タイヤ径方向内側にあるベーストレッドゴムとを備える。
この他に、ベルト材14bとトレッドゴム18との間には、ベルト14のタイヤ径方向外側からベルト14を覆う、有機繊維をゴムで被覆した2層のベルトカバー30を備える。ベルトカバー30は、必要に応じて設ければよく、必須ではない。ベルトカバー30の層数も2枚に限定されず、1枚あるいは3枚であってもよい。
このようなタイヤ10のサイドウォール部10Sの表面に二次元コード40が設けられている。図1では、二次元コード40を太い線で記している。
(二次元コード)
図2は、一実施形態のタイヤ10に設けられる二次元コード40の一例を示す図である。図2に示すように、二次元コード40が、凹領域56のスムース面に設けられている。スムース面は、例えば、算術平均粗さRa(JIS B 0601:2001)が、10μm~100μmである面である。このような二次元コード40は、タイヤ幅方向の両側にあるサイドウォール部10Sの双方の、サイドゴム20の表面に形成される。別の一実施形態によれば、いずれか一方のサイドウォール部10Sのサイドゴム20の表面に形成される。
二次元コード40は、表面の凹凸によって互いに識別可能に形成された2種類の濃淡要素でドットパターンを形成したものである。一実施形態の二次元コード40は、レーザ光をサイドウォール部10Sの表面で集束させてエネルギを集中しサイドゴム20を局所的に加熱焼却して表面に微小なドット孔を複数設けることにより形成されたパターンである。ドット孔は、例えば円錐形状の孔であり、表面における直径は、例えば0.1~1.0mmであり、深さは、例えば0.3~1.0mmである。
二次元コード40は、二次元コードの濃淡要素を区分けする単位セルのうち濃領域の1つの単位セル領域に1つのドット孔(凹部)が設けられて構成されている。すなわち、二次元コード40は、格子状に分割した同一サイズの矩形形状の複数の単位セル領域に対応して、1つのドット孔が濃淡要素の濃い1つの単位セル領域を形成するように、ドット孔が配置された構成を有する。図2中、単位セル領域の濃領域は、黒く塗りつぶされた領域で示されている。
図2に示す二次元コード40は、QRコード(登録商標)であり、2種類の濃淡要素でドットパターンが形成されたドットパターン領域42を含む。ドットパターン領域42の周りには、濃淡要素のうち淡い要素と同じ淡い要素が取り囲む空白領域44が設けられている。空白領域44は、QRコード(登録商標)においてクワイエットゾーンとされる領域であり、QRコード(登録商標)を読み取る際に必要な領域である。空白領域44がドットパターン領域42の周りを取り囲む厚さは、例えば、ドットパターン領域42内の単位セル領域の寸法サイズの4~5倍であることが好ましい。例えば、空白領域44の厚さは、ドットパターン領域42の矩形形状における2方向の寸法のうち最大寸法の4%~25%であることが好ましい。
図2に示す二次元コード40はQRコード(登録商標)であるので、ドットパターン領域42は、QRコード(登録商標)のデータセルを表示したデータセル領域と、切り出しシンボルを表示した切り出しシンボル領域とを含む。
このように、二次元コード40は、スムース面の凹領域56上に設けられているので、読み取り性はリッジ模様領域に二次元コード40を設ける場合に比べて向上する。
二次元コード40が設けられるタイヤ10は、ビードコア16のタイヤ径方向の最も内側の位置からタイヤ最大外径位置までのタイヤ径方向に沿った断面高さSHは80mm以下のタイヤである。タイヤ10におけるタイヤ幅方向におけるタイヤ幅が最大であるタイヤ最大幅に対する断面高さSHの比は、例えば、0.4以下(偏平率40%以下)である低扁平タイヤである。
このようなタイヤ10では、サイドウォール部10Sの面積が小さく、サイドウォール部10Sの大部分をリッジ模様領域が占有している場合が多い。二次元コード40を設けることができるスムース面の凹領域56は、サイドウォール部10Sのパターンエンドに近いバットレス領域に制限される。上述したように、この部分には、加硫故障が生じ易い部分であり、加硫故障のある場所に二次元コード40を設けると、タイヤ10の長期使用により二次元コード40の読み取り性が低下し易い。
このため、実施形態では、加硫後のタイヤ10に二次元コード40を設けるときの、二次元コード40の配置予定領域において加硫故障の発生を抑制するために、タイヤ周方向に沿った形状が平面状あるいは湾曲状であり、周りの領域に対して凹んだスムース面の凹領域56が設けられる。二次元コード40は、凹領域56に設けられる。
具体的には、サイドウォール部10Sの表面には、タイヤ周方向に沿った形状が平面状にあるいは湾曲状になるように、周りの領域に対して凹んだスムース面の凹領域56が設けられ、二次元コード40は凹領域56内に設けられる。しかも、凹領域56の、凹領域56が設けられないサイドウォール部10Sの非凹領域からの凹み量のうち、凹み量が最大となる位置を、二次元コード40の配置領域は含む。
凹領域56の形状は、周囲の非凹領域に対して凹む限りは特に制限されず、サイドウォール部10Sが大気と接するタイヤ外側に向かって湾曲状に突出する形状でもよく、また、タイヤ10と装着するリムの間のタイヤ空洞領域の側に向かって湾曲状に凹む形状でもよく、また、平面形状でもよい。
図3は、一実施形態の二次元コード40と凹領域56の配置の一例を示す図である。図3中、Cはタイヤ周方向を示し、Rはタイヤ径方向を示す。図3に示すように、概略楕円形状の外縁を有する凹領域56は、二次元コード40の配置領域を含み、しかも、凹み量が最大となる位置Pを、二次元コード40の配置領域は含んでいる。
このような凹領域56は、タイヤ加硫時、生タイヤを拡張して加硫金型の内表面に押し付けるとき、凹領域56を形成する加硫金型の内表面は、周りの領域に対して凹んでいない曲面(凹曲面あるいは凸曲面)形状あるいは平面形状である。図4は、加硫金型の内表面に押し付ける加硫時の生タイヤの一例を説明する図である。
図4では、内容を理解し易いように、加硫金型60の内表面には、凹領域56を形成するために、周りの領域に対して生タイヤ10の側に突出した突出部62が設けられている。生タイヤ10が拡張して加硫金型60の内表面と当接するとき、突出部62の最大突出部分から生タイヤ10との当接を開始し、生タイヤ10との当接領域を広げていく。このため、加硫金型60の内表面と生タイヤ10との間にある気体は、当接領域の広がりにしたがって、その周囲に押し出される。このため、凹領域56と突出部62の間には、気体が残留しない。押し出された気体は、図示されない加硫金型60の内表面に形成された溝、さらには図示されないベントホールを通して、加硫金型60の外部に排出される。したがって、加硫金型60の内表面と生タイヤ10との間にある気体の排出が十分にできず気体が残り、この気体が、高温に制御された内表面と生タイヤ10との接触を阻害して生タイヤ10の加硫を十分にさせないことにより生じる、上述の加硫故障は抑制される。
一実施形態によれば、二次元コード40のタイヤ周方向Cに沿った幅の50%の長さ、二次元コード40のタイヤ周方向Cの両側の縁からタイヤ周方向Cに沿って離れた、タイヤ周方向Cの両側の位置の間のタイヤ周方向Cに沿った範囲Aは、凹領域56であることが好ましい。二次元コード40の配置領域に対して設定される範囲Aが、加硫故障の発生が抑制される凹領域56であることより、二次元コード40を設ける配置予定領域に加硫故障が発生すること抑制することができる。この結果、タイヤ10を長期使用しても、二次元コード40の読み取り性の低下を抑制することができる。
一実施形態によれば、凹領域56の凹み量の最大凹み量は、0.3~1.0mmである、ことが好ましい。図5(a),(b)は、凹み量を説明する図である。凹み量は、図5(a),(b)に示すように、凹領域56がないタイヤ周上の非凹領域58をタイヤ周方向Cに沿って切断したときの非凹領域58の表面形状と、凹領域56をタイヤ周方向Cに沿って切断したときの凹領域56の表面形状とを、同じタイヤ径方向の位置同士で重ね合わせ、あるいは、凹領域56がないタイヤ周上の非凹領域58をタイヤ径方向Rに沿って切断したときの非凹領域58の表面形状と、凹領域56をタイヤ径方向Rに沿って切断したときの凹領域56の表面形状とを、重ね合わせ、非凹領域58の表面に対して法線を立てたときに、非凹領域58の表面の位置から法線が凹領域56の表面と交わる交点までの距離Dをいう。
最大凹み量が0.3mm未満である場合、生タイヤ10と加硫金型60の内表面との間にある気体を周囲に押し出す力は弱く、加硫故障の抑制が難しい。一方、最大凹み量が1.0mmを超える場合、加硫時のゴムのゴム流れが過度に大きくなり、例えば、凹領域56におけるタイヤゲージ(厚さ)が薄くなり、タイヤ10の耐久カット性能が低下する。
なお、図5(a),(b)に示す凹領域56は、非凹領域58に比べて曲率が小さいがサイドウォール部10Sが大気と接するタイヤ外側に凸状に湾曲した形状である。
なお、一実施形態によれば、凹領域の表面は、球面形状であることが好ましい。球面形状では、最大凹み量の位置からいずれの方向にも同じ曲率で湾曲しているので、図4に示すように、加硫時、生タイヤ10が加硫金型60の内表面に徐々に当接領域を拡大していくとき、気体を押し出す力は最大凹み量の位置から放射状に向く、すなわち、等方的に作用する。したがって、ある方向において気体の押し出す力が弱く、その部分で気体が残留して加硫故障を引き起こすことは少ない。
凹領域56は、図1に示すように、タイヤ10のトレッドゴム18とサイドゴム20の境界を跨ぐように設けられてもよい。上述したように、断面高さSHが80mm以下のタイヤ10の場合、二次元コード40の配置予定領域が設定されるスムース面は、サイドウォール部10Sにおいて少なく、バットレス領域に制限される。バットレス領域には、図1に示すように、トレッドゴム18とサイドゴム20の境界部分がある。上述したように、この境界部分は、生タイヤ10において加硫故障を誘発させ易い段差がある場合が多い。しかし、加硫故障が発生しやすいトレッドゴム18とサイドゴム20の境界部分を跨ぐように、凹領域56が設けられるので、二次元コード40の配置予定領域における加硫故障の発生を抑制することができる。
一実施形態によれば、凹み量が最大となる位置は、トレッドゴム18とサイドゴム20の境界部分に位置する、ことが好ましい。トレッドゴム18とサイドゴム20の境界部分は、生タイヤ10において加硫故障を誘発させ易い段差がある場合が多い。このため、この接合部分に、加硫金型60の内表面に生タイヤ10が最初に当接する凹み量が最大となる位置を一致させることにより、凹み量が最大となる位置の、加硫金型60の内表面と生タイヤ10との間にある気体を効果的に押し出すことができる。
(実験例、従来例、比較例)
タイヤ10の効果を確認するために、二次元コード40、具体的にはQRコード(登録商標)をサイドウォール部10Sのバットレス領域のサイドゴムとトレッドゴムの境界部分を跨ぐように刻印したタイヤ(タイヤサイズ 295/25ZR21(96Y))を作製した。タイヤの断面高さSHは、72mmである。作製したタイヤは、21×10.5Jのリムに装着した。このタイヤに対して、オゾン濃度100pphmの条件でオゾン照射をした後、FMVSS139に準拠した低圧試験(XL:空気圧160kPa、荷重100%LI)による室内ドラム走行(速度120km/時)を行いつつ、上記濃度のオゾン照射を所定の時間間隔で行って、1.5時間走行させた。この試験は、タイヤの長期使用によるタイヤの劣化を再現したものである。
実施例、従来例、比較例それぞれについて、二次元コード40を設けたタイヤを10本ずつ用意して上記試験を行った。
二次元コード40の読み取りは、二次元コード読み取り器で行った。二次元コード40に所定の方向(10方向)から所定の照明光を当てて10本のタイヤの二次元コード40の読み取りを行い、二次元コード40の読み取り回数に対する正しく読み取った回数の比率を読み取りの成功率とした。
求めた読み取りの成功率は、いずれの場合も、タイヤの使用開始時の読み取りの成功率よりも低下したが、低下した成功率のうち、従来例の読み取りの成功率を100として、実施例及び比較例の読み取りの成功率を指数化して、タイヤの長期使用時の読み取り性の評価結果とした。
下記表1,2に評価結果を示す。
下記表1、2において、二次元コード40は、ドット孔の深さが1.5mmで、濃淡要素を区分けする正方形の単位セルの長さが0.6mmであるQRコード(登録商標)を刻印した。
表1,2における「凹領域の表面形状」において「非球面形状」は、タイヤ径方向の曲率がタイヤ周方向Cの曲率に比べて大きい形状であり、実施例5,6の「球面形状」は、曲率半径100mmでタイヤ外側に凸形状とした表面形状である。
Figure 0007393628000001
Figure 0007393628000002
読み取り性は、いずれの例でも、タイヤの使用開始時の読み取り性よりも低下したが、表1の従来例、比較例及び実施例1~4の評価結果によれば、凹領域56内に二次元コード40を設け、しかも、凹領域56の凹み量が最大となる位置を、二次元コード40の配置領域が含むことにより、タイヤの長期使用時の読み取り性の低下を抑制できることがわかる。
また、範囲Aが凹領域56内に含まれることにより、上記読み取り性の低下をより抑制できることがわかる。
また、凹領域56の最大凹み量を、0.3mm以上とすることにより、上記読み取り性の低下をより抑制できることがわかる。
また、凹領域56の表面形状を球面形状とすることにより、上記読み取り性の低下をより抑制できることがわかる。
さらに、トレッドゴムとサイドゴムの境界部分を、凹領域56の最大凹み量の位置に一致させることにより、上記読み取り性の低下をより抑制できることがわかる。
以上、本発明の空気入りタイヤについて詳細に説明したが、本発明は上記実施形態に限定されず、本発明の主旨を逸脱しない範囲において、種々の改良や変更してもよいのはもちろんである。
10 空気入りタイヤ
10 生タイヤ
10T トレッド部
10S サイドウォール部
10B ビード部
12 カーカスプライ
12a,12b カーカスプライ材
14 ベルト
14a,14b ベルト材
16 ビードコア
18 トレッドゴム
20 サイドゴム
22 ビードフィラーゴム
24 リムクッションゴム
26 インナーライナゴム
30 ベルトカバー
40 二次元コード
44 空白領域
56 凹領域
58 非凹領域
60 加硫金型
62 突出部

Claims (7)

  1. 空気入りタイヤであって、
    一対の円環状のビードコアと、
    前記一対のビードコアの周りに巻きまわして前記一対のビードコア間に設けられた、トロイダル状のカーカスプライと、
    前記カーカスプライをタイヤ幅方向の外側から覆うように前記空気入りタイヤのタイヤ幅方向外側に湾曲したサイドウォール部のそれぞれに設けられた一対のサイドゴムと、を備え、
    前記サイドウォール部の少なくとも一方の表面には、前記空気入りタイヤのタイヤ周方向に沿った形状が平面状にあるいは湾曲状であり、周りの領域に対して凹んだスムース面の凹領域と、前記凹領域内にあり、前記スムース面に対して表面凹凸によって互いに識別可能に形成された2種類の濃淡要素でドットパターンが形成された二次元コードと、を備え、
    前記空気入りタイヤの、前記ビードコアのタイヤ径方向の最も内側の位置からタイヤ最大外径位置までのタイヤ径方向に沿った断面高さは80mm以下であり、
    前記凹領域の、前記凹領域が設けられない前記サイドゴムの非凹領域からの凹み量のうち、前記凹み量が最大となる位置を、前記二次元コードの配置領域は含んでおり、
    前記凹領域は、前記空気入りタイヤのトレッドゴムと前記サイドゴムの境界を跨ぐように設けられている、ことを特徴とする空気入りタイヤ。
  2. 前記二次元コードの前記タイヤ周方向に沿った幅の50%の長さ、前記二次元コードの前記タイヤ周方向の両側の縁から前記タイヤ周方向に沿って離れた、前記タイヤ周方向の両側の位置の間の前記タイヤ周方向に沿った範囲は、前記凹領域である、請求項1に記載の空気入りタイヤ。
  3. 前記凹み量の最大凹み量は、0.3~1.0mmである、請求項1又は2に記載の空気入りタイヤ。
  4. 前記凹領域の表面は、球面である、請求項1~3のいずれか1項に記載の空気入りタイヤ。
  5. 前記凹み量が最大となる位置は、前記空気入りタイヤのトレッドゴムと前記サイドゴムの境界部分に位置する、請求項1~4のいずれか1項に記載の空気入りタイヤ。
  6. 空気入りタイヤであって、
    一対の円環状のビードコアと、
    前記一対のビードコアの周りに巻きまわして前記一対のビードコア間に設けられた、トロイダル状のカーカスプライと、
    前記カーカスプライをタイヤ幅方向の外側から覆うように前記空気入りタイヤのタイヤ幅方向外側に湾曲したサイドウォール部のそれぞれに設けられた一対のサイドゴムと、を備え、
    前記サイドウォール部の少なくとも一方の表面には、前記空気入りタイヤのタイヤ周方向に沿った形状が平面状にあるいは湾曲状であり、周りの領域に対して凹んだスムース面の凹領域と、前記凹領域内にあり、前記スムース面に対して表面凹凸によって互いに識別可能に形成された2種類の濃淡要素でドットパターンが形成された二次元コードと、を備え、
    前記空気入りタイヤの、前記ビードコアのタイヤ径方向の最も内側の位置からタイヤ最大外径位置までのタイヤ径方向に沿った断面高さは80mm以下であり、
    前記凹領域の、前記凹領域が設けられない前記サイドゴムの非凹領域からの凹み量のうち、前記凹み量が最大となる位置を、前記二次元コードの配置領域は含んでおり、
    前記二次元コードの前記タイヤ周方向に沿った幅の50%の長さ、前記二次元コードの前記タイヤ周方向の両側の縁から前記タイヤ周方向に沿って離れた、前記タイヤ周方向の両側の位置の間の前記タイヤ周方向に沿った範囲は、前記凹領域である、ことを特徴とする空気入りタイヤ。
  7. 空気入りタイヤであって、
    一対の円環状のビードコアと、
    前記一対のビードコアの周りに巻きまわして前記一対のビードコア間に設けられた、トロイダル状のカーカスプライと、
    前記カーカスプライをタイヤ幅方向の外側から覆うように前記空気入りタイヤのタイヤ幅方向外側に湾曲したサイドウォール部のそれぞれに設けられた一対のサイドゴムと、を備え、
    前記サイドウォール部の少なくとも一方の表面には、前記空気入りタイヤのタイヤ周方向に沿った形状が平面状にあるいは湾曲状であり、周りの領域に対して凹んだスムース面の凹領域と、前記凹領域内にあり、前記スムース面に対して表面凹凸によって互いに識別可能に形成された2種類の濃淡要素でドットパターンが形成された二次元コードと、を備え、
    前記空気入りタイヤの、前記ビードコアのタイヤ径方向の最も内側の位置からタイヤ最大外径位置までのタイヤ径方向に沿った断面高さは80mm以下であり、
    前記凹領域の、前記凹領域が設けられない前記サイドゴムの非凹領域からの凹み量のうち、前記凹み量が最大となる位置を、前記二次元コードの配置領域は含んでおり、
    前記凹領域の表面は、球面である、ことを特徴とする空気入りタイヤ。
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