JPWO2018181660A1 - 熱電変換素子層及びその製造方法 - Google Patents

熱電変換素子層及びその製造方法 Download PDF

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Abstract

耐久性に優れた熱電変換素子層及びその製造方法を提供するものであり、フィルム基板の一方の面上に、少なくとも、P型熱電素子層とN型熱電素子層とが面内方向に交互に隣接し直列に配置された熱電素子層からなる熱電変換モジュールと、前記熱電素子層の面側にさらに封止層とを含む熱電変換素子層であって、前記封止層のJIS K7129:2008で規定される40℃×90%RHにおける水蒸気透過率が1000g・m−2・day−1以下である、熱電変換素子層、及びその製造方法である。

Description

本発明は、熱電変換素子層及びその製造方法に関する。
従来から、熱電変換を利用したエネルギー変換技術として、熱電発電技術及びペルチェ冷却技術が知られている。熱電発電技術は、ゼーベック効果による熱エネルギーから電気エネルギーへの変換を利用した技術であり、この技術は、特にビル、工場等で使用される化石燃料資源等から発生する未利用の廃熱エネルギーを電気エネルギーとして、しかも動作コストを掛ける必要なく、回収できる省エネルギー技術として大きな脚光を浴びている。これに対し、ペルチェ冷却技術は、熱電発電の逆で、ペルチェ効果による電気エネルギーから熱エネルギーへの変換を利用した技術であり、この技術は、例えば、ワインクーラー、小型で携帯が可能な冷蔵庫、またコンピュータ等に用いられるCPU用の冷却、さらに光通信の半導体レーザー発振器の温度制御等の精密な温度制御が必要な部品や装置に用いられている。
このような熱電変換を利用した熱電変換素子においては、高温多湿等、設置場所の環境条件によっては、熱電素子層の熱電性能が低下、及び金属電極の抵抗が増加し、長期間の使用に耐えないという問題がある。
特許文献1では、P型材料からなる薄膜のP型熱電素子とN型材料からなる薄膜のN型熱電素子とで構成された熱電変換モジュールの両面に、2種類以上の熱伝導率の異なる材料で構成された柔軟性を有するフィルム状基板を設け、熱伝導率の高い材料が前記基板の外面の一部分に位置するように構成した熱電変換素子が開示されている。また、特許文献2では、熱電変換装置の構成において、ポリフェニレンサルファイド、ポリブチレンテレフタレート、ポリプロピレンのうちの少なくとも1種の合成樹脂からなる枠体を使用することが開示されている。
特開2006−186255号公報 特開平10−12934号公報
しかしながら、特許文献1は、そもそも、熱電素子の電極間又は接合部間に効率良く温度差を付与する構成が開示されているに過ぎず、柔軟性を有するフィルム状基板が熱電素子上に直接接する構成を有しているものの、熱電素子に対する封止層としての使用に関しては記載や示唆がなく、また、熱電変換素子としての耐久性等の検討がなされていない。
特許文献2には、前記枠体について、段落[0032]に、水蒸気透過率の高い枠体を使用すると、特に吸熱側(低温側)において電極表面などに結露が生じ、それが原因でショート、電極の腐食、熱抵抗の増加などを引き起こすことになり、そのため枠体の材料として水蒸気透過率の低いものを選定している旨の記載がされているものの、該枠体は熱電変換素子(熱電素子層)と直接接することもなく、上下面にも配置されないものであり、熱電変換モジュールの熱電素子層と直接接する大気中の水蒸気を抑制することはできない。さらに、特許文献1と同様、熱電変換素子としての耐久性等の検討がなされていない。
本発明は、上記問題を鑑み、耐久性に優れた熱電変換素子層及びその製造方法を提供することを課題とする。
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、少なくともフィルム基板上に熱電素子層を有する熱電変換モジュールの熱電素子層の面上に、特定の水蒸気透過率を有する封止層を積層することにより、上記課題を解決することを見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明は、以下の(1)〜(11)を提供するものである。
(1)フィルム基板の一方の面上に、少なくとも、P型熱電素子層とN型熱電素子層とが面内方向に交互に隣接し直列に配置された熱電素子層からなる熱電変換モジュールと、前記熱電素子層の面側にさらに封止層とを含む熱電変換素子層であって、前記封止層のJIS K7129:2008で規定される40℃×90%RHにおける水蒸気透過率が1000g・m−2・day−1以下である、熱電変換素子層。
(2)前記封止層の面上に、さらにJIS K7129:2008で規定される40℃×90%RHにおける水蒸気透過率が10g・m−2・day−1以下の封止基材層を有する、上記(1)に記載の熱電変換素子層。
(3)前記フィルム基板の他方の面上に、さらに前記封止層、又は、前記封止層及び封止基材層をこの順に含む、上記(1)又は(2)に記載の熱電変換素子層。
(4)前記封止層を構成する主成分が、ポリオレフィン系樹脂、硬化性樹脂、又はアクリル系樹脂である、上記(1)〜(3)のいずれかに記載の熱電変換素子層。
(5)前記封止層の厚さが、0.5〜100μmである、上記(1)〜(4)のいずれかに記載の熱電変換素子層。
(6)前記封止基材層が、無機層または高分子化合物を含む層である、上記(2)又は(3)に記載の熱電変換素子層。
(7)前記封止基材層の厚さが、10〜100μmである、上記(2)、(3)及び(6)のいずれかに記載の熱電変換素子層。
(8)前記熱電素子層と、前記封止層とが直接接する、上記(1)〜(7)のいずれかに記載の熱電変換素子層。
(9)前記封止層が、粘接着性を有する封止剤からなる、上記(1)〜(8)のいずれかに記載の熱電変換素子層。
(10)上記(1)〜(9)のいずれかに記載の熱電変換素子層の製造方法であって、前記フィルム基板の一方の面上に前記熱電素子層を形成する工程、前記熱電素子層の面上に前記封止層を形成する工程を含む、熱電変換素子層の製造方法。
(11)フィルム基板の一方の面上に、少なくとも、P型熱電素子層とN型熱電素子層とが面内方向に交互に隣接し直列に配置された熱電素子層からなる熱電変換モジュールと、前記熱電素子層の面側にさらに封止層とを含む熱電変換素子層であって、前記封止層は硬化性樹脂からなる、熱電変換素子層。
本発明によれば、耐久性に優れた熱電変換素子層及びその製造方法を提供することができる。
本発明の熱電変換素子層の第1の実施態様を示す断面図である。 本発明の熱電変換素子層の第2の実施態様を示す断面図である。 本発明の実施例に用いた熱電変換モジュールの構成を示す平面図である。
[熱電変換素子層]
本発明の熱電変換素子層は、フィルム基板の一方の面上に、少なくとも、P型熱電素子層とN型熱電素子層とが面内方向に交互に隣接し直列に配置された熱電素子層からなる熱電変換モジュールと、前記熱電素子層の面側にさらに封止層とを含む熱電変換素子層であって、前記封止層のJIS K7129:2008で規定される40℃×90%RHにおける水蒸気透過率が1000g・m−2・day−1以下である、熱電変換素子層である。
本発明の熱電変換素子層を、図面を使用して説明する。
図1は、本発明の熱電変換素子層の第1の実施態様を示す断面図である。熱電変換素子層1Aは、電極3を有するフィルム基板2の一方の面に形成されたP型熱電素子層5及びN型熱電素子層4からなる熱電素子層6を含む熱電変換モジュール7と、該熱電変換モジュール7の両面のうち、熱電素子層6側の面に積層した封止層8とから構成される。
同様に、図2は、本発明の熱電変換素子層の第2の実施態様を示す断面図である。熱電変換素子層1Bは、電極3を有するフィルム基板2の一方の面に形成されたP型熱電素子層5及びN型熱電素子層4からなる熱電素子層6を含む熱電変換モジュール7と、該熱電変換モジュール7の両面に積層した封止層8、さらに該封止層8の両面に積層した封止基材層9とから構成される。
<封止層>
本発明の熱電変換素子層は、封止層を含む。封止層のJIS K7129:2008で規定される40℃×90%RHにおける水蒸気透過率が1000g・m−2・day−1以下である。水蒸気透過率が1000g・m−2・day−1を超えると、大気中等の水蒸気が、封止層を透過しやすくなることから、熱電素子層に用いる熱電半導体材料が腐食等により劣化し、その結果として、熱電素子層の電気抵抗値が増大し、熱電性能が低下してしまう。水蒸気透過率は、700g・m−2・day−1以下であることが好ましく、より好ましくは200g・m−2・day−1以下、さらに好ましくは50g・m−2・day−1以下、特に好ましくは10g・m−2・day−1以下である。水蒸気透過率がこの範囲にあると、熱電素子層への水蒸気の侵入が抑制され、熱電素子層の腐食等による劣化が抑制される。このため、熱電素子層の電気抵抗値の増加が小さく、初期の熱電性能が維持された状態で、長期間の使用が可能となる。
本発明に用いる封止層の熱電変換モジュールの熱電素子層の面への配置は、特に限定されないが、用いる熱電変換モジュールの熱電素子層、すなわち、P型熱電素子層とN型熱電素子層の配置により、適宜調整する必要がある。封止層が熱電素子層の面上に直接接するように配置することが好ましく、また、封止層が熱電素子層をすべて覆うように配置することが好ましい。封止層の、熱電変換モジュールの熱電素子層の面への配置を上記のようにすると、大気中の水蒸気の透過を効果的に抑制でき、熱電変換素子層の性能を長期間にわたり維持することができる。さらに、前記封止層を熱電変換モジュールの両面に配置することが好ましい。これにより、大気中の水蒸気の透過をさらに効果的に抑制できる。
本発明に用いる封止層を構成する主成分は、ポリオレフィン系樹脂、硬化性樹脂、又はアクリル系樹脂であることが好ましい。
また、封止層が粘接着性を有する封止剤(以下、「封止剤組成物」ということがある。)からなることが好ましい。本明細書において、粘接着性を有するとは、封止剤が、粘着性、接着性、貼り付ける初期において感圧により接着可能な感圧性の粘着性を有することを意味する。封止層を用いることで容易に熱電変換モジュールに積層することができ、また熱電変換モジュール、及び封止基材層等への貼付も容易となる。
また、封止層が硬化性樹脂からなることが好ましい。硬化性樹脂であることで封止層の表面がタックフリーとなり、ハンドリング性が向上する。
ポリオレフィン系樹脂としては、特に限定されないが、カルボン酸系官能基を有するジエン系ゴム(以下、「ジエン系ゴム」ということがある。)、又はカルボン酸系官能基を有しないゴム系重合体(以下、「ゴム系重合体」ということがある。)が挙げられる。
ジエン系ゴムは、主鎖末端及び/又は側鎖にカルボン酸系官能基を有する重合体で構成されるジエン系ゴムである。ここで、「カルボン酸系官能基」とは、「カルボキシル基またはカルボン酸無水物基」をいう。また、「ジエン系ゴム」とは、「ポリマー主鎖に二重結合を有するゴム状高分子」をいう。
ジエン系ゴムは、カルボン酸系官能基を有するジエン系ゴムであれば、特に限定されない。
ジエン系ゴムとしては、カルボン酸系官能基含有ポリブタジエン系ゴム、カルボン酸系官能基含有ポリイソプレン系ゴム、カルボン酸系官能基を含有するブタジエンとイソプレンの共重合体ゴム、カルボン酸系官能基を含有するブタジエンとn−ブテンの共重ゴム等が挙げられる。これらの中でも、ジエン系ゴムとしては、架橋後に十分に高い凝集力を有する封止層を効率よく形成し得るという観点から、カルボン酸系官能基含有ポリイソプレン系ゴムが好ましい。
ジエン系ゴムは、1種単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
ジエン系ゴム、例えば、カルボキシル基を有する単量体を用いて共重合反応を行う方法や、特開2009−29976号公報に記載される、ポリブタジエン等の重合体に無水マレイン酸を付加させる方法により、得ることができる。
ジエン系ゴムの配合量は、封止剤組成物中、好ましくは0.5〜95.5質量%、より好ましくは、1.0〜50質量%、さらに好ましくは2.0〜20質量%である。ジエン系ゴムの配合量が、封止剤組成物中、0.5質量%以上であることで、十分な凝集力を有する封止層を効率よく形成することができる。また、ジエン系ゴムの配合量を高くし過ぎないことで、十分な粘着力を有する封止層を効率よく形成することができる。
本発明に用いる架橋剤は、ジエン系ゴムのカルボン酸系官能基と反応し、架橋構造を形成し得る化合物である。
架橋剤としては、イソシアネート系架橋剤、エポキシ系架橋剤、アジリジン系架橋剤、金属キレート系架橋剤等が挙げられる。
ゴム系重合体は、「25℃においてゴム弾性を示す樹脂」をいう。ゴム系重合体は、ポリメチレンタイプの飽和主鎖をもつゴムや主鎖に不飽和炭素結合をもつゴムであることが好ましい。
このようなゴム系重合体としては、具体的には、イソブチレンの単独重合体(ポリイソブチレン、IM)、イソブチレンとn−ブテンの共重合体、天然ゴム(NR)、ブタジエンの単独重合体(ブタジエンゴム、BR)、クロロプレンの単独重合体(クロロプレンゴム、CR)、イソプレンの単独重合体(イソプレンゴム、IR)、イソブチレンとブタジエンの共重合体、イソブチレンとイソプレンの共重合体(ブチルゴム、IIR)、ハロゲン化ブチルゴム、スチレンと1,3−ブタジエンの共重合体(スチレンブタジエンゴム、SBR)、アクリロニトリルと1,3−ブタジエンの共重合体(ニトリルゴム)、スチレン−1,3−ブタジエン−スチレンブロック共重合体(SBS)、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体(SIS)、エチレン−プロピレン−非共役ジエン三元共重合体等が挙げられる。これらの中で、それ自体が水分遮断性に優れるとともに、ジエン系ゴム(A)と混ざり易く、均一な封止層を形成し易いという観点から、イソブチレンの単独重合体、イソブチレンとn−ブテンの共重合体、イソブチレンとブタジエンの共重合体、イソブチレンとイソプレンの共重合体等のイソブチレン系重合体が好ましく、イソブチレンとイソプレンの共重合体がより好ましい。
ゴム系重合体を配合する場合、その配合量は、封止剤組成物中、好ましくは0.1質量%〜99.5質量%、より好ましくは10〜99.5質量%、さらに好ましくは50〜99.0質量%、特に好ましくは80〜98.0質量%である。
硬化性樹脂としては、エポキシ系樹脂、シリコーン系樹脂、フェノール系樹脂、メラミン系樹脂、ユリア系樹脂等が挙げられる。耐熱性、作業性、及び信頼性に優れるという観点から、エポキシ系樹脂を使用することが好ましい。硬化性樹脂は熱またはエネルギー線により硬化させることができる。
エポキシ系樹脂としては、特に制限されないが、分子内に少なくともエポキシ基を2つ以上有する多官能エポキシ化合物が好ましい。
エポキシ基を2つ以上有するエポキシ化合物としては、ビスフェノールAジグリシジルエーテル、ビスフェノールFジグリシジルエーテル、ビスフェノールSジグリシジルエーテル、臭素化ビスフェノールAジグリシジルエーテル、臭素化ビスフェノールFジグリシジルエーテル、臭素化ビスフェノールSジグリシジルエーテル、ノボラック型エポキシ樹脂(例えば、フェノール・ノボラック型エポキシ樹脂、クレゾール・ノボラック型エポキシ樹脂、臭素化フェノール・ノボラック型エポキシ樹脂)、水添ビスフェノールAジグリシジルエーテル、水添ビスフェノールFジグリシジルエーテル、水添ビスフェノールSジグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールポリグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、ヘキサヒドロフタル酸ジグリシジルエステル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル、2,2−ビス(3−グリシジル−4−グリシジルオキシフェニル)プロパン、ジメチロールトリシクロデカンジグリシジルエーテル等が挙げられる。
これらの多官能エポキシ化合物は、1種を単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
多官能エポキシ化合物の分子量の下限は、好ましくは700以上、より好ましくは1,200以上である。多官能エポキシ化合物の分子量の上限は、好ましくは5,000以下、より好ましくは4,500以下である。
多官能エポキシ化合物のエポキシ当量は、好ましくは100g/eq以上500g/eq以下、より好ましくは150g/eq以上300g/eq以下である。
封止剤組成物中のエポキシ系樹脂の含有量は、好ましくは10〜50質量%、さらに好ましくは10〜40質量%である。
アクリル系樹脂としては、特に制限はないが、(メタ)アクリル酸エステル系共重合体が好ましい。
この(メタ)アクリル酸エステル系共重合体としては、エステル部分のアルキル基の炭素数が1〜18の(メタ)アクリル酸アルキルエステルと、必要に応じて用いられる架橋性官能基含有エチレン性単量体や他の単量体との共重合体を好ましく挙げることができる。エステル部分のアルキル基の炭素数が1〜18の(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、メチルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルアクリレート、エチルメタクリレート、プロピルアクリレート、プロピルメタクリレート、イソプロピルアクリレート、イソプロピルメタクリレート、n−ブチルアクリレート、n−ブチルメタクリレート、イソブチルアクリレート、イソブチルメタクリレート、n−ヘキシルアクリレートn−ヘキシルメタクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、ラウリルアクリレート、ラウリルメタクリレート、ステアリルアクリレート、ステアリルメタクリレート等が挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
必要に応じて用いられる架橋性官能基含有エチレン性単量体は、例えばヒドロキシ基、カルボキシル基、アミノ基、置換アミノ基、エポキシ基等の官能基を分子内に有するエチレン性単量体であり、好ましくはヒドロキシ基含有エチレン性不飽和化合物、カルボキシル基含有エチレン性不飽和化合物が用いられる。このような架橋性官能基含有エチレン性単量体の具体的な例としては、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、2−ヒドロキシブチルアクリレート、2−ヒドロキシブチルメタクリレート、4−ヒドロキシブチルアクリレート、4−ヒドロキシブチルメタクリレート等のヒドロキシ基含有(メタ)アクリレート、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、イタコン酸、シトラコン酸等のカルボキシル基含有エチレン性不飽和化合物が挙げられる。上記の架橋性官能基含有エチレン性単量体は、1種を単独で、又は2種以上を組み合わせて用いてもよい。
必要に応じて用いられる他の単量体としては、シクロヘキシルアクリレート、イソボルニルアクリレートなどの脂環式構造を有する(メタ)アクリル酸エステル;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニルなどのビニルエステル類;エチレン、プロピレン、イソブチレンなどのオレフィン類;塩化ビニル、ビニリデンクロリドなどのハロゲン化オレフィン類;スチレン、α−メチルスチレンなどのスチレン系単量体;ブタジエン、イソプレン、クロロプレンなどのジエン系単量体;アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどのニトリル系単量体;N,N−ジメチルアクリルアミド、N,N−ジメチルメタクリルアミドなどのN,N−ジアルキル置換アクリルアミド類などが挙げられる。これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
以上の(メタ)アクリル酸エステル、及び必要に応じて用いられる架橋性官能基含有エチレン性単量体や他の単量体を、それぞれ所定の割合で用い、従来公知の方法を用いて共重合を行い、重量平均分子量が、好ましくは30万〜150万程度、より好ましくは35万〜130万程度の(メタ)アクリル酸エステル系重合体を製造する。
なお、上記重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により測定した標準ポリスチレン換算の値である。
必要に応じて用いられる架橋剤としては、従来アクリル系樹脂において架橋剤として慣用されているものの中から、任意のものを適宜選択して用いることができる。このような架橋剤としては、例えばポリイソシアネート化合物、エポキシ化合物、メラミン樹脂、尿素樹脂、ジアルデヒド類、メチロールポリマー、アジリジン系化合物、金属キレート化合物、金属アルコキシド、金属塩などが挙げられるが、前記(メタ)アクリル酸エステル系共重合体が、架橋性官能基としてヒドロキシ基を有する場合には、ポリイソシアネート化合物が好ましく、一方カルボキシル基を有する場合には、金属キレート化合物やエポキシ化合物が好ましい。
封止剤組成物中のアクリル系樹脂の含有量は、好ましくは30〜95質量%、さらに好ましくは40〜90質量%である。
封止層を構成する封止剤には、本発明の効果を損なわない範囲で、その他の成分が含まれていてもよい。封止剤に含まれ得るその他の成分としては、例えば、高熱伝導性材料、難燃剤、粘着付与剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、防腐剤、防黴剤、可塑剤、消泡剤、及び濡れ性調整剤などが挙げられる。
封止層は、前述した水蒸気透過率を満たすものであれば、1層であっても2層以上積層されていてもよい。また、2層以上積層される場合は、それらが同じであっても異なっていてもよい。
封止層の厚さは、好ましくは0.5〜100μm、より好ましくは3〜50μm、さらに好ましくは5〜30μmである。この範囲であれば、前記熱電変換モジュールの熱電素子層の面上に積層した場合、水蒸気透過率を抑制することができ、熱電変換素子層の耐久性が向上する。
さらに、前述したように、熱電素子層と、封止層とが直接接することが好ましい。熱電素子層と、封止層とが直接接することにより、熱電素子層と封止層との間に大気中の水蒸気が直接存在することがないため、熱電素子層の水蒸気への侵入が抑制され、封止層の封止性が向上する。
<封止基材層>
本発明の熱電変換素子層は、さらに封止基材層を含むことが好ましい。封止基材層は、大気中の水蒸気の透過をさらに抑制するために、前記封止層に積層することが好ましい。
本発明に用いる封止基材層は、熱電変換モジュールのいずれかの封止層に積層して用いることが好ましく、図2で示したように、熱電変換モジュールの両面の封止層に積層して用いることがより好ましい。これにより、熱電素子層への水蒸気の侵入をさらにより効果的に抑制することができる。
本発明に用いる封止基材層としては、大気中の水蒸気透過率抑制(以下、「ガスバリア性」ということがある。)の観点から、基材上に無機層または高分子化合物を含む層(以下、「ガスバリア層」ということがある。)からなることが好ましい。
前記基材としては、屈曲性を有するものが用いられる。例えば、ポリイミド、ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリフェニレンエーテル、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリオレフィン、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリスルフォン、ポリエーテルスルフォン、ポリフェニレンスルフィド、ポリアリレート、アクリル系樹脂、シクロオレフィン系ポリマー、芳香族系重合体等が挙げられる。これらの中で、ポリエステルとしては、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリアリレート等が挙げられる。また、シクロオレフィン系ポリマーとしては、ノルボルネン系重合体、単環の環状オレフィン系重合体、環状共役ジエン系重合体、ビニル脂環式炭化水素重合体、及びこれらの水素化物が挙げられる。このような基材の中で、コスト、耐熱性の観点から、二軸延伸されたポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)が特に好ましい。
無機層としては、無機化合物や金属の蒸着膜等の無機蒸着膜が挙げられる。
無機化合物の蒸着膜の原料としては、酸化珪素、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、酸化インジウム、酸化スズ等の無機酸化物;窒化珪素、窒化アルミニウム、窒化チタン等の無機窒化物;無機炭化物;無機硫化物;酸化窒化珪素等の無機酸化窒化物;無機酸化炭化物;無機窒化炭化物;無機酸化窒化炭化物等が挙げられる。
金属の蒸着膜の原料としては、アルミニウム、マグネシウム、亜鉛、及びスズ等が挙げられる。これらは1種単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
これらの中では、ガスバリア性の観点から、無機酸化物、無機窒化物又は金属を原料とする無機蒸着膜が好ましい。
高分子化合物としては、ポリオルガノシロキサン、ポリシラザン系化合物等の珪素含有高分子化合物、ポリイミド、ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリフェニレンエーテル、ポリエーテルケトン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリオレフィン、ポリエステル等が挙げられる。これらの高分子化合物は1種単独で、あるいは2種以上を組合せて用いることができる。
これらの中でも、ガスバリア性を有する高分子化合物としては、珪素含有高分子化合物が好ましい。珪素含有高分子化合物としては、ポリシラザン系化合物、ポリカルボシラン系化合物、ポリシラン系化合物、及びポリオルガノシロキサン系化合物等が挙げられる。これらの中でも、優れたガスバリア性を有するバリア層を形成できる観点から、ポリシラザン系化合物が好ましい。
また、無機化合物の蒸着膜、またはポリシラザン系化合物を含む層に改質処理を施して形成された酸素、窒素、珪素を主構成原子として有する層からなる酸窒化珪素層が、層間密着性、ガスバリア性、及び屈曲性を有する観点から、好ましく用いられる。
封止基材層に用いるガスバリア層は、例えば、ポリシラザン化合物含有層に、プラズマイオン注入処理、プラズマ処理、紫外線照射処理、熱処理等を施すことにより形成できる。プラズマイオン注入処理により注入されるイオンとしては、水素、窒素、酸素、アルゴン、ヘリウム、ネオン、キセノン、及びクリプトン等が挙げられる。
プラズマイオン注入処理の具体的な処理方法としては、外部電界を用いて発生させたプラズマ中に存在するイオンを、ポリシラザン化合物含有層に対して注入する方法、または、外部電界を用いることなく、ガスバリア層形成用材料からなる層に印加する負の高電圧パルスによる電界のみで発生させたプラズマ中に存在するイオンを、ポリシラザン化合物含有層に注入する方法が挙げられる。
プラズマ処理は、ポリシラザン化合物含有層をプラズマ中に晒して、含ケイ素ポリマーを含有する層を改質する方法である。例えば、特開2012−106421号公報に記載の方法に従って、プラズマ処理を行うことができる。紫外線照射処理は、ポリシラザン化合物含有層に紫外線を照射して含ケイ素ポリマーを含有する層を改質する方法である。例えば、特開2013−226757号公報に記載の方法に従って、紫外線改質処理を行うことができる。
これらの中でも、ポリシラザン化合物含有層の表面を荒らすことなく、その内部まで効率よく改質し、よりガスバリア性に優れるガスバリア層を形成できることから、イオン注入処理が好ましい。
無機層または高分子化合物を含む層の厚さは、好ましくは0.03〜1μm、より好ましくは0.05〜0.8μm、さらに好ましくは0.10〜0.6μmである。無機層または高分子化合物を含む層の厚さがこの範囲にあると、水蒸気透過率を効果的に抑制できる。
封止基材層のJIS K7129:2008で規定される40℃×90%RHにおける水蒸気透過率が、好ましくは10g・m−2・day−1以下であり、より好ましくは5g・m−2・day−1以下、さらに好ましくは1g・m−2・day−1以下である。水蒸気透過率がこの範囲にあると、封止層及び熱電素子層への水蒸気の透過が抑制され、熱電素子層の腐食等による劣化が抑制される。このため、熱電素子層の電気抵抗値の増加が小さくなり、初期の熱電性能が維持された状態で、長期間の使用が可能となる。
前記無機層または高分子化合物を含む層を有する封止基材層の厚さは、10〜100μmであることが好ましく、より好ましくは、15〜50μm、さらに好ましくは20〜40μmである。封止基材層の厚さがこの範囲にあると、優れたガスバリア性が得られるとともに、屈曲性と、被膜強度とを両立させることができる。
<熱電変換モジュール>
本発明に用いる熱電変換モジュールは、フィルム基板の一方の面に、P型熱電素子層とN型熱電素子層とが交互に隣接して配置され、電気的には直列接続となるように構成される熱電素子層を含む。さらに、P型熱電素子層とN型熱電素子層との接続は、接続の安定性、熱電性能の観点から導電性の高い金属材料等から形成される電極層を介してもよい。
〈フィルム基板〉
本発明に用いる熱電変換モジュールの基板としては、熱電素子層の電気伝導率の低下、熱伝導率の増加に影響を及ぼさないプラスチックフィルムを用いる。なかでも、屈曲性に優れ、後述する熱電半導体組成物からなる薄膜をアニール処理した場合でも、基板が熱変形することなく、熱電素子層の性能を維持することができ、耐熱性及び寸法安定性が高いという点から、ポリイミドフィルム、ポリアミドフィルム、ポリエーテルイミドフィルム、ポリアラミドフィルム、ポリアミドイミドフィルムが好ましく、さらに、汎用性が高いという点から、ポリイミドフィルムが特に好ましい。
前記フィルム基板の厚さは、屈曲性、耐熱性及び寸法安定性の観点から、1〜1000μmが好ましく、10〜500μmがより好ましく、20〜100μmがさらに好ましい。
また、上記フィルムは、分解温度が300℃以上であることが好ましい。
〈電極層〉
本発明に用いる電極層は、熱電素子層を構成するP型熱電素子層とN型熱電素子層との電気的な接続を行うために設けられる。電極材料としては、金、銀、ニッケル、銅又はこれらの合金等が挙げられる。
前記電極層の厚さは、好ましくは10nm〜200μm、より好ましくは30nm〜150μm、さらに好ましくは50nm〜120μmである。電極層の厚さが、上記範囲内であれば、電気伝導率が高く低抵抗となり熱電素子層のトータルの電気抵抗値を低く抑えられる。また、電極として十分な強度が得られる。
〈熱電素子層〉
本発明に用いる熱電素子層は、フィルム基板上に、熱電半導体微粒子、耐熱性樹脂、並びに、イオン液体及び無機イオン性化合物の一方又は双方を含む熱電半導体組成物からなる層であることが好ましい。
(熱電半導体微粒子)
熱電素子層に用いる熱電半導体微粒子は、熱電半導体材料を、微粉砕装置等により、所定のサイズまで粉砕することが好ましい。
本発明に用いるP型熱電素子層及びN型熱電素子層を構成する材料としては、温度差を付与することにより、熱起電力を発生させることができる材料であれば特に制限されず、例えば、P型ビスマステルライド、N型ビスマステルライド等のビスマス−テルル系熱電半導体材料;GeTe、PbTe等のテルライド系熱電半導体材料;アンチモン−テルル系熱電半導体材料;ZnSb、ZnSb2、ZnSb等の亜鉛−アンチモン系熱電半導体材料;SiGe等のシリコン−ゲルマニウム系熱電半導体材料;BiSe等のビスマスセレナイド系熱電半導体材料;β―FeSi、CrSi、MnSi1.73、MgSi等のシリサイド系熱電半導体材料;酸化物系熱電半導体材料;FeVAl、FeVAlSi、FeVTiAl等のホイスラー材料、TiS等の硫化物系熱電半導体材料等が用いられる。
これらの中でも、本発明に用いる前記熱電半導体材料は、P型ビスマステルライド又はN型ビスマステルライド等のビスマス−テルル系熱電半導体材料であることが好ましい。
前記P型ビスマステルライドは、キャリアが正孔で、ゼーベック係数が正値であり、例えば、BiTeSb2−Xで表わされるものが好ましく用いられる。この場合、Xは、好ましくは0<X≦0.8であり、より好ましくは0.4≦X≦0.6である。Xが0より大きく0.8以下であるとゼーベック係数と電気伝導率が大きくなり、P型熱電変換材料としての特性が維持されるので好ましい。
また、前記N型ビスマステルライドは、キャリアが電子で、ゼーベック係数が負値であり、例えば、BiTe3−YSeで表わされるものが好ましく用いられる。この場合、Yは、好ましくは0≦Y≦3(Y=0の時:BiTe)であり、より好ましくは0.1<Y≦2.7である。Yが0以上3以下であるとゼーベック係数と電気伝導率が大きくなり、N型熱電変換材料としての特性が維持されるので好ましい。
熱電半導体微粒子の前記熱電半導体組成物中の配合量は、好ましくは、30〜99質量%である。より好ましくは、50〜96質量%であり、さらに好ましくは、70〜95質量%である。熱電半導体微粒子の配合量が、上記範囲内であれば、ゼーベック係数(ペルチェ係数の絶対値)が大きく、また電気伝導率の低下が抑制され、熱伝導率のみが低下するため高い熱電性能を示すとともに、十分な皮膜強度、屈曲性を有する膜が得られ好ましい。
熱電半導体微粒子の平均粒径は、好ましくは、10nm〜200μm、より好ましくは、10nm〜30μm、さらに好ましくは、50nm〜10μm、特に好ましくは、1〜6μmである。上記範囲内であれば、均一分散が容易になり、電気伝導率を高くすることができる。
前記熱電半導体材料を粉砕して熱電半導体微粒子を得る方法は特に限定されず、ジェットミル、ボールミル、ビーズミル、コロイドミル、コニカルミル、ディスクミル、エッジミル、製粉ミル、ハンマーミル、ペレットミル、ウィリーミル、ローラーミル等の公知の微粉砕装置等により、所定のサイズまで粉砕すればよい。
なお、熱電半導体微粒子の平均粒径は、レーザー回折式粒度分析装置(CILAS社製、1064型)にて測定することにより得られ、粒径分布の中央値とした。
また、熱電半導体微粒子は、アニール処理(以下、「アニール処理A」ということがある。)されたものであることが好ましい。アニール処理Aを行うことにより、熱電半導体微粒子は、結晶性が向上し、さらに、熱電半導体微粒子の表面酸化膜が除去されるため、熱電変換材料のゼーベック係数(ペルチェ係数の絶対値)が増大し、熱電性能指数をさらに向上させることができる。アニール処理Aは、特に限定されないが、熱電半導体組成物を調製する前に、熱電半導体微粒子に悪影響を及ぼすことがないように、ガス流量が制御された、窒素、アルゴン等の不活性ガス雰囲気下、同じく水素等の還元ガス雰囲気下、または真空条件下で行うことが好ましく、不活性ガス及び還元ガスの混合ガス雰囲気下で行うことがより好ましい。具体的な温度条件は、用いる熱電半導体微粒子に依存するが、通常、微粒子の融点以下の温度で、かつ100〜1500℃で、数分〜数十時間行うことが好ましい。
(耐熱性樹脂)
本発明に用いる耐熱性樹脂は、熱電半導体微粒子間のバインダーとして働き、熱電変換材料の屈曲性を高めるためのものである。該耐熱性樹脂は、特に制限されるものではないが、熱電半導体組成物からなる薄膜をアニール処理等により熱電半導体微粒子を結晶成長させる際に、樹脂としての機械的強度及び熱伝導率等の諸物性が損なわれず維持される耐熱性樹脂を用いる。
前記耐熱性樹脂としては、例えば、ポリアミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリベンゾオキサゾール樹脂、ポリベンゾイミダゾール樹脂、エポキシ樹脂、及びこれらの樹脂の化学構造を有する共重合体等が挙げられる。前記耐熱性樹脂は、単独でも又は2種以上組み合わせて用いてもよい。これらの中でも、耐熱性がより高く、且つ薄膜中の熱電半導体微粒子の結晶成長に悪影響を及ぼさないという点から、ポリアミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリイミド樹脂、エポキシ樹脂が好ましく、屈曲性に優れるという点からポリアミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリイミド樹脂がより好ましい。前述の支持体として、ポリイミドフィルムを用いた場合、該ポリイミドフィルムとの密着性などの点から、耐熱性樹脂としては、ポリイミド樹脂がより好ましい。なお、本発明においてポリイミド樹脂とは、ポリイミド及びその前駆体を総称する。
前記耐熱性樹脂は、分解温度が300℃以上であることが好ましい。分解温度が上記範囲であれば、後述するように、熱電半導体組成物からなる薄膜をアニール処理した場合でも、バインダーとして機能が失われることなく、熱電変換材料の屈曲性を維持することができる。
また、前記耐熱性樹脂は、熱重量測定(TG)による300℃における質量減少率が10%以下であることが好ましく、5%以下であることがより好ましく、1%以下であることがさらに好ましい。質量減少率が上記範囲であれば、後述するように、熱電半導体組成物からなる薄膜をアニール処理した場合でも、バインダーとして機能が失われることなく、熱電変換材料の屈曲性を維持することができる。
前記耐熱性樹脂の前記熱電半導体組成物中の配合量は、好ましくは0.1〜40質量%、より好ましくは0.5〜20質量%、さらに好ましくは1〜20質量%である。前記耐熱性樹脂の配合量が、上記範囲内であれば、高い熱電性能と皮膜強度が両立した膜が得られる。
(イオン液体)
本発明で用いるイオン液体は、カチオンとアニオンとを組み合わせてなる溶融塩であり、−50〜500℃の幅広い温度領域において液体で存在し得る塩をいう。イオン液体は、蒸気圧が極めて低く不揮発性であること、優れた熱安定性及び電気化学安定性を有していること、粘度が低いこと、かつイオン伝導度が高いこと等の特徴を有しているため、導電補助剤として、熱電半導体微粒子間の電気伝導率の低減を効果的に抑制することができる。また、イオン液体は、非プロトン性のイオン構造に基づく高い極性を示し、耐熱性樹脂との相溶性に優れるため、熱電変換材料の電気伝導率を均一にすることができる。
イオン液体は、公知または市販のものが使用できる。例えば、ピリジニウム、ピリミジニウム、ピラゾリウム、ピロリジニウム、ピペリジニウム、イミダゾリウム等の窒素含有環状カチオン化合物及びそれらの誘導体;テトラアルキルアンモニウム系のアミン系カチオン及びそれらの誘導体;ホスホニウム、トリアルキルスルホニウム、テトラアルキルホスホニウム等のホスフィン系カチオン及びそれらの誘導体;リチウムカチオン及びその誘導体等のカチオン成分と、Cl、Br、I、AlCl 、AlCl 、BF 、PF6、ClO4、NO 、CHCOO、CFCOO、CHSO 、CFSO 、(FSO、(CFSO、(CFSO、AsF 、SbF 、NbF 、TaF 、F(HF)n、(CN)、CSO 、(CSO、CCOO、(CFSO)(CFCO)N等のアニオン成分とから構成されるものが挙げられる。
上記のイオン液体の中で、高温安定性、熱電半導体微粒子及び樹脂との相溶性、熱電半導体微粒子間隙の電気伝導率の低下抑制等の観点から、イオン液体のカチオン成分が、ピリジニウムカチオン及びその誘導体、イミダゾリウムカチオン及びその誘導体から選ばれる少なくとも1種を含むことが好ましい。
カチオン成分が、ピリジニウムカチオン及びその誘導体を含むイオン液体の具体的な例として、4−メチル−ブチルピリジニウムクロライド、3−メチル−ブチルピリジニウムクロライド、4−メチル−ヘキシルピリジニウムクロライド、3−メチル−ヘキシルピリジニウムクロライド、4−メチル−オクチルピリジニウムクロライド、3−メチル−オクチルピリジニウムクロライド、3、4−ジメチル−ブチルピリジニウムクロライド、3、5−ジメチル−ブチルピリジニウムクロライド、4−メチル−ブチルピリジニウムテトラフルオロボレート、4−メチル−ブチルピリジニウムヘキサフルオロホスフェート、1-ブチル-4-メチルピリジニウムブロミド、1-ブチル-4-メチルピリジニウムヘキサフルオロホスファート等が挙げられる。この中で、1−ブチル−4−メチルピリジニウムブロミド、1−ブチル−4−メチルピリジニウムヘキサフルオロホスファートが好ましい。
また、カチオン成分が、イミダゾリウムカチオン及びその誘導体を含むイオン液体の具体的な例として、[1−ブチル−3−(2−ヒドロキシエチル)イミダゾリウムブロミド]、[1−ブチル−3−(2−ヒドロキシエチル)イミダゾリウムテトラフルオロボレイト]、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムクロライド、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムブロミド、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムクロライド、1−ヘキシル−3−メチルイミダゾリウムクロライド、1−オクチル−3−メチルイミダゾリウムクロライド、1−デシル−3−メチルイミダゾリウムクロライド、1−デシル−3−メチルイミダゾリウムブロミド、1−ドデシル−3−メチルイミダゾリウムクロライド、1−テトラデシル−3−メチルイミダゾリウムクロライド、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムテトラフロオロボレート、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムテトラフロオロボレート、1−ヘキシル−3−メチルイミダゾリウムテトラフロオロボレート、1−エチル−3−メチルイミダゾリウムヘキサフルオロホスフェート、1−ブチル−3−メチルイミダゾリウムヘキサフルオロホスフェート、1−メチル−3−ブチルイミダゾリウムメチルスルフェート、1、3−ジブチルイミダゾリウムメチルスルフェート等が挙げられる。この中で、[1−ブチル−3−(2−ヒドロキシエチル)イミダゾリウムブロミド]、[1−ブチル−3−(2−ヒドロキシエチル)イミダゾリウムテトラフルオロボレイト]が好ましい。
上記のイオン液体は、電気伝導率が10−7S/cm以上であることが好ましい。イオン伝導度が上記範囲であれば、導電補助剤として、熱電半導体微粒子間の電気伝導率の低減を効果的に抑制することができる。
また、上記のイオン液体は、分解温度が300℃以上であることが好ましい。分解温度が上記範囲であれば、後述するように、熱電半導体組成物からなる薄膜をアニール処理した場合でも、導電補助剤としての効果を維持することができる。
また、上記のイオン液体は、熱重量測定(TG)による300℃における質量減少率が10%以下であることが好ましく、5%以下であることがより好ましく、1%以下であることがさらに好ましい。質量減少率が上記範囲であれば、後述するように、熱電半導体組成物からなる薄膜をアニール処理した場合でも、導電補助剤としての効果を維持することができる。
前記イオン液体の前記熱電半導体組成物中の配合量は、好ましくは0.01〜50質量%、より好ましくは0.5〜30質量%、さらに好ましくは1.0〜20質量%である。前記イオン液体の配合量が、上記範囲内であれば、電気伝導率の低下が効果的に抑制され、高い熱電性能を有する膜が得られる。
(無機イオン性化合物)
本発明で用いる無機イオン性化合物は、少なくともカチオンとアニオンから構成される化合物である。無機イオン性化合物は400〜900℃の幅広い温度領域において固体で存在し、イオン伝導度が高いこと等の特徴を有しているため、導電補助剤として、熱電半導体微粒子間の電気伝導率の低減を抑制することができる。
カチオンとしては、金属カチオンを用いる。
金属カチオンとしては、例えば、アルカリ金属カチオン、アルカリ土類金属カチオン、典型金属カチオン及び遷移金属カチオンが挙げられ、アルカリ金属カチオン又はアルカリ土類金属カチオンがより好ましい。
アルカリ金属カチオンとしては、例えば、Li、Na、K、Rb、Cs及びFr等が挙げられる。
アルカリ土類金属カチオンとしては、例えば、Mg2+、Ca2+、Sr2+及びBa2+等が挙げられる。
アニオンとしては、例えば、F、Cl、Br、I、OH、CN、NO3−、NO2−、ClO、ClO2−、ClO3−、ClO4−、CrO 2−、HSO 、SCN、BF 、PF 等が挙げられる。
無機イオン性化合物は、公知または市販のものが使用できる。例えば、カリウムカチオン、ナトリウムカチオン、又はリチウムカチオン等のカチオン成分と、Cl、AlCl 、AlCl 、ClO 等の塩化物イオン、Br等の臭化物イオン、I等のヨウ化物イオン、BF 、PF 等のフッ化物イオン、F(HF) 等のハロゲン化物アニオン、NO 、OH、CN等のアニオン成分とから構成されるものが挙げられる。
上記の無機イオン性化合物の中で、高温安定性、熱電半導体微粒子及び樹脂との相溶性、熱電半導体微粒子間隙の電気伝導率の低下抑制等の観点から、無機イオン性化合物のカチオン成分が、カリウム、ナトリウム、及びリチウムから選ばれる少なくとも1種を含むことが好ましい。また、無機イオン性化合物のアニオン成分が、ハロゲン化物アニオンを含むことが好ましく、Cl、Br、及びIから選ばれる少なくとも1種を含むことがさらに好ましい。
カチオン成分が、カリウムカチオンを含む無機イオン性化合物の具体的な例として、KBr、KI、KCl、KF、KOH、KCO等が挙げられる。この中で、KBr、KIが好ましい。
カチオン成分が、ナトリウムカチオンを含む無機イオン性化合物の具体的な例として、NaBr、NaI、NaOH、NaF、NaCO等が挙げられる。この中で、NaBr、NaIが好ましい。
カチオン成分が、リチウムカチオンを含む無機イオン性化合物の具体的な例として、LiF、LiOH、LiNO等が挙げられる。この中で、LiF、LiOHが好ましい。
上記の無機イオン性化合物は、電気伝導率が10−7S/cm以上であることが好ましく、10−6S/cm以上であることがより好ましい。電気伝導率が上記範囲であれば、導電補助剤として、熱電半導体微粒子間の電気伝導率の低減を効果的に抑制することができる。
また、上記の無機イオン性化合物は、分解温度が400℃以上であることが好ましい。分解温度が上記範囲であれば、後述するように、熱電半導体組成物からなる薄膜をアニール処理した場合でも、導電補助剤としての効果を維持することができる。
また、上記の無機イオン性化合物は、熱重量測定(TG)による400℃における質量減少率が10%以下であることが好ましく、5%以下であることがより好ましく、1%以下であることがさらに好ましい。質量減少率が上記範囲であれば、後述するように、熱電半導体組成物からなる薄膜をアニール処理した場合でも、導電補助剤としての効果を維持することができる。
前記無機イオン性化合物の前記熱電半導体組成物中の配合量は、好ましくは0.01〜50質量%、より好ましくは0.5〜30質量%、さらに好ましくは1.0〜10質量%である。前記無機イオン性化合物の配合量が、上記範囲内であれば、電気伝導率の低下を効果的に抑制でき、結果として熱電性能が向上した膜が得られる。
なお、無機イオン性化合物とイオン液体とを併用する場合においては、前記熱電半導体組成物中における、無機イオン性化合物及びイオン液体の含有量の総量は、好ましくは0.01〜50質量%、より好ましくは0.5〜30質量%、さらに好ましくは1.0〜10質量%である。
P型熱電素子層及びN型熱電素子層からなる熱電素子層の厚さは、特に限定されるものではなく、同じ厚さでも、異なる厚さ(接続部に段差が生じる)でもよい。屈曲性、材料コストの観点から、P型熱電素子及びN型熱電素子の厚さは、0.1〜100μmが好ましく、1〜50μmがさらに好ましい。
[熱電変換素子層の製造方法]
本発明の熱電変換素子層の製造方法は、前記フィルム基板の一方の面上に前記熱電素子層を形成する工程、前記熱電素子層の面上に前記封止層を形成する工程を含むものである。
以下、本発明に含まれる工程について、順次説明する。
<熱電素子層形成工程>
本発明に用いる熱電素子層は、前記フィルム基板の一方の面上に前記熱電半導体組成物から形成される。前記熱電半導体組成物を、前記フィルム基板上に塗布する方法としては、スクリーン印刷法、フレキソ印刷法、グラビア印刷法、スピンコート法、ディップコート法、ダイコート法、スプレーコート法、バーコート法、ドクターブレード法等の公知の方法が挙げられ、特に制限されない。塗膜をパターン状に形成する場合は、所望のパターンを有するスクリーン版を用いて簡便にパターン形成が可能なスクリーン印刷法、スロットダイコート法等が好ましく用いられる。
次いで、得られた塗膜を乾燥することにより、薄膜が形成されるが、乾燥方法としては、熱風乾燥法、熱ロール乾燥法、赤外線照射法等、従来公知の乾燥方法が採用できる。加熱温度は、通常、80〜150℃であり、加熱時間は、加熱方法により異なるが、通常、数秒〜数十分である。
また、熱電半導体組成物の調製において溶媒を使用した場合、加熱温度は、使用した溶媒を乾燥できる温度範囲であれば、特に制限はない。
<封止層形成工程>
封止層を熱電素子層の面上に形成する工程である。また、フィルム基板の、熱電素子層を有さない他方の面に形成する工程を含む。
封止層の形成は、公知の方法で行うことができ、前記熱電素子層の面に直接形成してもよいし、予め剥離シート上に形成した封止層を、前記熱電素子層に貼り合わせて、封止層を熱電素子層に転写させて形成してもよい。
<封止基材層形成工程>
熱電変換素子層の製造工程には、さらに封止基材層形成工程を含むことが好ましい。封止基材層形成工程は、前記封止層の面上に、封止基材層を形成する工程である。
封止基材層の形成は、公知の方法で行うことができ、前記封止層の面上に直接形成してもよいし、予め剥離シート上に形成した封止基材層を、前記封止層に貼り合わせて、封止基材層を封止層に転写させて形成してもよい。
〈電極形成工程〉
熱電変換素子層の製造工程においては、さらに、フィルム基板上に前述した電極材料等を用い、電極層を形成する電極形成工程を含むことが好ましい。前記フィルム基板上に電極を形成する方法としては、基板上にパターンが形成されていない電極層を設けた後、フォトリソグラフィー法を主体とした公知の物理的処理もしくは化学的処理、又はそれらを併用する等により、所定のパターン形状に加工する方法、または、スクリーン印刷法、インクジェット法等により直接電極層のパターンを形成する方法等が挙げられる。
パターンが形成されていない電極層の形成方法としては、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法等のPVD(物理気相成長法)、もしくは熱CVD、原子層蒸着(ALD)等のCVD(化学気相成長法)等のドライプロセス、又はディップコーティング法、スピンコーティング法、スプレーコーティング法、グラビアコーティング法、ダイコーティング法、ドクターブレード法等の各種コーティングや電着法等のウェットプロセス、銀塩法、電解めっき法、無電解めっき法、金属箔の積層等が挙げられ、電極層の材料に応じて適宜選択される。
本発明の製造方法によれば、簡便な方法で熱電素子層への大気中の水蒸気の侵入を抑制することができる熱電変換素子層を製造することができる。
次に、本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明は、これらの例によってなんら限定されるものではない。
実施例、比較例で作製した熱電変換素子層の電気抵抗、また、封止層及び封止基材層の水蒸気透過率の評価は以下の方法で行った。
(a)電気抵抗値評価
得られた熱電変換素子層の取り出し電極部間の電気抵抗値を、ディジタルハイテスタ(日置電機社製、型名:3801−50)により、25℃×50%RHの環境下で測定した。
(b)水蒸気透過率(WVTR)
水蒸気透過率計(Systech Illinois社製、装置名:L80−5000)を用い、JIS−K7129に従い、40℃×90%RHにおける封止層の水蒸気透過率(g・m−2・day−1)を測定した。また、同様に、水蒸気透過率計(MOCON社製、装置名:AQUATRAN)を用い、JIS−K7129に従い、40℃×90%RHにおける封止基材層の水蒸気透過率(g・m−2・day−1)を測定した。
<熱電素子層の作製>
図3は実施例に用いた熱電素子層の構成を示す平面図であり、(a)はフィルム基板上に形成した電極の配置を示し、(b)は電極上に形成したP型及びN型熱電素子の配置を示す。
銅箔を貼付したポリイミドフィルム基板(宇部エクシモ株式会社製、製品名:ユピセルN、ポリイミド基板厚み:50μm、銅箔:9μm)の銅箔上へ無電解めっきによりニッケル(9μm)層を形成し、次いでニッケル層上に無電解めっきにより金層(厚さ:300nm)を形成することで電極13のパターンを配したポリイミドフィルム基板12の電極13上に、後述する塗工液(P)及び(N)を用い塗布し、P型熱電素子15とN型熱電素子14とを交互に隣接して配置することで、1mm×6mmのP型熱電素子及びN型熱電素子380対を、ポリイミドフィルム基板12面内に直列に設けた熱電素子層16からなる熱電変換モジュール17を作製した。
(熱電半導体微粒子の作製方法)
ビスマス−テルル系熱電半導体材料であるP型ビスマステルライドBi0.4TeSb1.6(高純度化学研究所製、粒径:180μm)を、遊星型ボールミル(フリッチュジャパン社製、Premium line P−7)を使用し、窒素ガス雰囲気下で粉砕することで、平均粒径1.2μmの熱電半導体微粒子T1を作製した。粉砕して得られた熱電半導体微粒子に関して、レーザー回折式粒度分析装置(Malvern社製、マスターサイザー3000)により粒度分布測定を行った。
また、ビスマス−テルル系熱電半導体材料であるN型ビスマステルライドBiTe(高純度化学研究所製、粒径:180μm)を上記と同様に粉砕し、平均粒径1.4μmの熱電半導体微粒子T2を作製した。
(熱電半導体組成物の作製)
塗工液(P)
得られたP型ビスマス−テルル系熱電半導体材料の微粒子T1を90質量部、耐熱性樹脂としてポリイミド前駆体であるポリアミック酸(シグマアルドリッチ社製、ポリ(ピロメリト酸二無水物−co−4,4´−オキシジアニリン)アミド酸溶液、溶媒:N−メチルピロリドン、固形分濃度:15質量%)5質量部、及びイオン液体として[1−ブチル−3−(2−ヒドロキシエチル)イミダゾリウムブロミド]5質量部を混合分散した熱電半導体組成物からなる塗工液(P)を調製した。
塗工液(N)
得られたN型ビスマス−テルル系熱電半導体材料の微粒子T2を90質量部、耐熱性樹脂としてポリイミド前駆体であるポリアミック酸(シグマアルドリッチ社製、ポリ(ピロメリト酸二無水物−co−4,4´−オキシジアニリン)アミド酸溶液、溶媒:N−メチルピロリドン、固形分濃度:15質量%)5質量部、及びイオン液体として[1−ブチル−3−(2−ヒドロキシエチル)イミダゾリウムブロミド]5質量部を混合分散した熱電半導体組成物からなる塗工液(N)を調製した。
(熱電素子層の製造)
上記で調製した塗工液(P)を、スクリーン印刷法により前記ポリイミドフィルム上に塗布し、温度150℃で、10分間アルゴン雰囲気下で乾燥し、厚さが50μmの薄膜を形成した。次いで、同様に、上記で調製した塗工液(N)を、前記ポリイミドフィルム上に塗布し、温度150℃で、10分間アルゴン雰囲気下で乾燥し、厚さが50μmの薄膜を形成した。
さらに、得られたそれぞれの薄膜に対し、水素とアルゴンの混合ガス(水素:アルゴン=3体積%:97体積%)雰囲気下で、加温速度5K/minで昇温し、325℃で30分間保持し、薄膜形成後のアニール処理を行うことにより、熱電半導体材料の微粒子を結晶成長させ、P型熱電素子層及びN型熱電素子層からなる熱電素子層を作製した。
(実施例1)
<熱電変換素子層の作製>
ポリイミドフィルム基板の一方の面上に作製した熱電素子層の面上に直接封止層としてポリオレフィン系樹脂(厚さ25μm、WVTR6.0g・m−2・day−1)を貼付し熱電変換素子層を作製した。
封止層の形成方法は、始めに、剥離フィルム上にポリオレフィン系樹脂を、既知の塗工方法にて形成した。その後、熱電素子層にラミネーターを用いて、熱電素子層の面上に貼付したあと、剥離フィルムを剥離することで、封止層を形成した。
ポリオレフィン系樹脂は、カルボン酸系官能基含有ポリイソプレン系ゴム(クラレ社製、LIR410、数平均分子量30,000、1分子あたりのカルボン酸系官能基の数:10)5質量部、カルボン酸系官能基を有しないゴム系重合体:イソブチレンとイソプレンの共重合体(日本ブチル社製、Exxon Butyl 268、数平均分子量260,000)100質量部、エポキシ化合物(三菱化学社製、TC−5)2質量部をトルエンに溶解し、固形分濃度25質量%のポリオレフィン系樹脂を調製した。
(実施例2)
熱電素子層を有さないポリイミドフィルム基板の他方の面上にさらに実施例1に用いた封止層を貼付し、実施例1と同様にして、熱電変換素子層を作製した。
(実施例3)
実施例2のポリイミドフィルム基板の両面に設けた封止層を、両層ともエポキシ系樹脂(厚さ24μm、WVTR160g・m−2・day−1)に変更し、封止層の貼付後に、100℃2時間の条件で封止層を硬化させた以外は、実施例2と同様にして、熱電変換素子層を作製した。
酸変性ポリオレフィン系樹脂(α−オレフィン重合体、三井化学社製、商品名:ユニストールH−200、数平均分子量:47,000)100質量部、多官能エポキシ化合物(1)(水添ビスフェノールAジグリシジルエーテル、共栄社化学社製、商品名:エポライト4000、エポキシ当量215〜245g/eq、分子量:800)100質量部、粘着付与剤(スチレン系モノマー脂肪族系モノマー共重合体、軟化点95℃、三井化学社製、商品名:FTR6100)50質量部、及び、イミダゾール系硬化触媒(四国化成社製、商品名:キュアゾール2E4MZ、2−エチル−4−メチルイミダゾール)1質量部をメチルエチルケトンに溶解し、固形分濃度30質量%のエポキシ系樹脂を作成した。
(実施例4)
実施例2のポリイミドフィルム基板の両面に設けた封止層を、両層ともアクリル系樹脂(厚さ22μm、WVTR660g・m−2・day−1)に変更し、実施例2と同様にして、熱電変換素子層を作製した。
アクリル系樹脂は、アクリル系共重合体(n−ブチルアクリレート(BA)/アクリル酸(AA)=98.0/2.0(質量比)、重量平均分子量:100万、溶剤:酢酸エチル、固形分濃度:15質量%)100質量部(固形分比)に、粘着付与剤として、ロジン系樹脂(ハリマ化成株式会社製、製品名「ハリエスターTF」、軟化点:75〜85℃)50質量部(固形分比)、架橋剤として、イソシアネート系架橋剤(東ソー株式会社製、製品名「コロネートL」、固形分濃度:75質量%)1.5質量部(固形分比)を配合して混合し、均一に攪拌して、粘着性樹脂の酢酸エチル溶液を調製し作成した。
(実施例5)
実施例2のポリイミドフィルム基板の両面に設けた封止層上に、さらに両層ともに封止基材層メタルミーS[東レフィルム加工社製、アルミ蒸着膜(厚さ50nm)/PET(厚さ25μm)、WVTR3.1g・m−2・day−1]をPETの面(アルミ蒸着膜を有さない面)が封止層と対向するようにして各々貼付し、実施例2と同様にして、熱電変換素子層を作製した。
(実施例6)
実施例2のポリイミドフィルム基板の両面に設けた封止層上に、さらに両層ともに透明ガスバリアフィルム[特願2015−218292、実施例1で用いた透明ガスバリア層、ペルヒドロポリシラザン層(厚さ150nm)/PET(厚さ25μm)、WVTR0.005g・m−2・day−1]をPETの面(ペルヒドロポリシラザン層を有さない面)が封止層と対向するようにして各々貼付し、実施例2と同様にして、熱電変換素子層を作製した。
(比較例1)
封止層を貼付しない以外は実施例1と同様にして、熱電変換素子を作製した。
(比較例2)
実施例2のポリイミドフィルム基板の両面に設けた封止層を、両層ともアクリル系粘着剤(厚さ25μm、WVTR1700g・m−2・day−1)に変更し、実施例2と同様にして、熱電変換素子層を作製した。
アクリル系粘着剤は、アクリル酸n−ブチル77質量部、アクリル酸メチル20質量部、アクリル酸3質量部、および開始剤としてアゾビスイソブチルニトリル0.3質量部を酢酸エチル200質量部中に添加し、65℃で17時間攪拌することにより、質量平均分子量80万のアクリル酸エステル共重合体溶液を得た。得られた共重合体100質量部に対し、トリレンジイソシアナート系ポリイソシアナート化合物よりなる架橋剤(日本ポリウレタン社製、商品名:コロネートL)2.0質量部、アルミキレート化合物よりなる架橋剤(川研ファインケミカル社製、商品名:ALCH−TR)0.5質量部およびシランカップリング剤(信越化学工業社製、商品名:KBM−403)0.5質量部を加え、トルエンにて約20質量%の溶液となるように希釈し作成した。
実施例1〜6及び比較例1、2で得られた熱電変換素子層を60℃×90%RHの環境下に1000時間保管する耐久性試験を行い、試験前後での熱電変換素子層の取り出し電極部間の電気抵抗値を測定した。用いた封止層及び封止基材層の水蒸気透過率とともに測定結果を表1に示す。
Figure 2018181660
熱電変換モジュールの熱電素子層の面上に封止層を貼付した実施例1では、封止層を貼付しない比較例1に比べ、耐久性試験後の抵抗増加率がはるかに小さいことが分かる。また、熱電変換モジュールの両面に封止層を貼付した実施例2では、耐久性試験後の抵抗増加率が、実施例1に比べ、さらに小さくなっていることが分かる。さらに、封止基材層を貼付した実施例5、6では、耐久性試験後の抵抗増加率がさらに十分に抑制されていることが分かる。上記の結果より、本発明の熱電変換素子層は、高温多湿下にあっても、熱電性能が長期間にわたり維持されることが期待される。
本発明の熱電変換素子層は、優れた耐久性を有することから、長期間にわたり熱電性能が維持されることが期待される。このため、廃熱源や放熱源の環境下、又は高温多湿の環境下に設置する場合に好適に使用できる。
1A、1B:熱電変換素子層
2:フィルム基板
3:電極
4:N型熱電素子
5:P型熱電素子
6:熱電素子層
7:熱電変換モジュール
8:封止層
9:封止基材層
12:ポリイミドフィルム基板
13:銅電極
14:N型熱電素子
15:P型熱電素子
16:熱電素子層
17:熱電変換モジュール

Claims (11)

  1. フィルム基板の一方の面上に、少なくとも、P型熱電素子層とN型熱電素子層とが面内方向に交互に隣接し直列に配置された熱電素子層からなる熱電変換モジュールと、前記熱電素子層の面側にさらに封止層とを含む熱電変換素子層であって、前記封止層のJIS K7129:2008で規定される40℃×90%RHにおける水蒸気透過率が1000g・m−2・day−1以下である、熱電変換素子層。
  2. 前記封止層の面上に、さらにJIS K7129:2008で規定される40℃×90%RHにおける水蒸気透過率が10g・m−2・day−1以下の封止基材層を有する、請求項1に記載の熱電変換素子層。
  3. 前記フィルム基板の他方の面上に、さらに前記封止層、又は、前記封止層及び封止基材層をこの順に含む、請求項1又は2に記載の熱電変換素子層。
  4. 前記封止層を構成する主成分が、ポリオレフィン系樹脂、硬化性樹脂、又はアクリル系樹脂である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の熱電変換素子層。
  5. 前記封止層の厚さが、0.5〜100μmである、請求項1〜4のいずれか1項に記載の熱電変換素子層。
  6. 前記封止基材層が、無機層または高分子化合物を含む層である、請求項2又は3に記載の熱電変換素子層。
  7. 前記封止基材層の厚さが、10〜100μmである、請求項2、3及び6のいずれか1項に記載の熱電変換素子層。
  8. 前記熱電素子層と、前記封止層とが直接接する、請求項1〜7のいずれか1項に記載の熱電変換素子層。
  9. 前記封止層が、粘接着性を有する封止剤からなる、請求項1〜8のいずれか1項に記載の熱電変換素子層。
  10. 請求項1〜9のいずれか1項に記載の熱電変換素子層の製造方法であって、前記フィルム基板の一方の面上に前記熱電素子層を形成する工程、前記熱電素子層の面上に前記封止層を形成する工程を含む、熱電変換素子層の製造方法。
  11. フィルム基板の一方の面上に、少なくとも、P型熱電素子層とN型熱電素子層とが面内方向に交互に隣接し直列に配置された熱電素子層からなる熱電変換モジュールと、前記熱電素子層の面側にさらに封止層とを含む熱電変換素子層であって、前記封止層は硬化性樹脂からなる、熱電変換素子層。
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