JP7237417B2 - 熱電モジュール用基板及び熱電モジュール - Google Patents

熱電モジュール用基板及び熱電モジュール Download PDF

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Description

本発明は、熱電モジュール用基板及び熱電モジュールに関する。さらに詳しくは、熱電素子に電流を流した際の吸熱・放熱作用を利用して加温・冷却に用いられるペルチェモジュールを構成する熱電モジュール用基板及び熱電モジュールであって、熱ストレスによる寿命改善、放熱性、電気絶縁性等の特性を十分に備える低コストの熱電モジュール用基板及び熱電モジュールに関する。
ペルチェモジュールは、一対のセラミック等の基板間にP型熱電素子とN型熱電素子とを配置すると共に、各基板に取り付けた接合電極にP型熱電素子とN型熱電素子とが直列に接合した直列通電回路構造をしている。ペルチェモジュールに通電すると、一方の基板が放熱側として作用し、他方の基板が吸熱側として作用し、両基板は熱膨張と熱収縮とを行う。熱膨張と熱収縮とが繰り返されると、ペルチェモジュールは、P型熱電素子又はN型熱電素子と接合電極との接合部や各熱電素子に繰り返し熱応力が加わる。その結果、そうした接合部や各熱電素子にクラック等が発生しやすくなって断線が生じ、ペルチェモジュールの寿命が短くなることがある。
こうした問題を解決するため、例えば特許文献1~4では、基板と熱電素子の電極とを接続する際、その間に弾性を有する物質(以下、弾性物質とも言う。)を設けて、熱電素子と電極とに加わる応力を緩和している。
特許文献1では、熱電素子の破損を防止し、耐久性を向上させたサーモモジュールが提案されている。このサーモモジュールは、熱交換基板上に電極を介して1対以上の熱電素子対を配置したサーモモジュールにおける熱交換基板の吸熱側又は放熱側のいずれか一方の電極と熱交換基板との接合を熱伝導性が良くかつ弾性のある接着性材料で接合し、他方の電極と熱交換基板との接合を半田としている。この文献では、熱伝導性が良くかつ弾性のある接着性材料として、半田の溶解温度に耐えられ、熱サイクルの伴う熱応力を吸収できる熱伝導性の良い材料が挙げられ、例えばゴム系、樹脂系の材料、これらの材料に熱伝導性改良のために各種フィラーを添加したもの、さらには金属や種々の化合物又は混合物であってもよいとされている。より具体的には、シリコーンゴム、ブタジエンゴム、アクリル樹脂等が挙げられている。
特許文献2では、ペルチェ効果を用いて冷却・加熱するペルチェ素子の耐久性の向上、特にヒートサイクルに対する耐久性の改善を目的としたペルチェ素子が提案されている。このペルチェ素子は、対向する2枚の支持板間に、P型とN型の複数の熱電素子エレメントと金属電極からなる平面状の熱電素子群とを配し、前記熱電素子と接触する前記支持板を直接あるいは絶縁層を介してシリコーンゴム等のゴム状物質によって接合している。この文献では、ゴム状物質として、弾性を有する有機物とその有機物より熱伝導性の高い無機物との混合物が記載されている。ゴム状物質のさらに詳しい例示として、天然ゴム、アクリルゴム、アクリロニトリル-ブタジエンゴム、イソプレンゴム、エチレンプロピレンゴム、クロロスルホン化ポリエチレンゴム、クロロプレンゴム、スチレンブタジエンゴム、ハイスチレンゴム、ブタジエンゴム、フッ素ゴム等があり、またゴムと同程度の弾性および機械的強度があれば樹脂であってもよいとされている。
特許文献3では、ペルチェ素子を構成する半導体に発生する熱ストレスを低減して信頼性を向上することを目的とするペルチェ素子が提案されている。このペルチェ素子は、一対の基板の対向面に各々導体が形成され、各導体を介して基板間に第1の半導体及び第2の半導体が交互に接合され、一方の導体が冷却側として他方の導体が発熱側として配置されており、いずれか片方の導体が、あるいは両方の導体が弾性体薄膜を介して基板に形成されている。この文献では、弾性体薄膜として、樹脂材料が用いられ、さらに詳しくは、ポリイミド樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂等が例示されている。
特許文献4では、実使用時に熱応力を受けても熱電素子と電極との間の剥離が生じにくく、信頼性が優れた熱電モジュール及びそれに使用する熱電用基板部材並びにそれらの製造方法が提案されている。この熱電モジュールは、第1及び第2の基板の対向面上に、夫々複数個の第1及び第2の電極が形成されており、N型熱電素子及びP型熱電素子が第1の電極と第2の電極との間に挟まれるように配置されている。そして、第1及び第2の電極と第1及び第2の基板との間に、ヤング率が低い応力緩衝層が配置されている。電極は銅めっき層、基板はアルミナ又は銅板等により形成され、応力緩衝層としては、ポリイミド系樹脂、アラミド系樹脂又はエポキシ系樹脂を使用することができるとされている。
特開平8-64876号公報 特開平8-186296号公報 特開平10-4219号公報 特開2008-277584号公報
ペルチェ素子では、基板として主にセラミックが用いられているが、セラミック基板は、材料コストが高いとともに、熱膨張と熱収縮による熱応力の問題があった。上記特許文献等では、そうした熱応力の問題について、伝熱性を備えた弾性物質として、例えばゴム系や樹脂系材料に各種フィラーや金属等を混合したものを採用することを提案している。
半導体レーザ等の精密部品の温度調節にペルチェ素子が使用される場合のように、精密部品に寸法精度が要求される場合にはペルチェ素子の剛性も確保しなければならない。しかし、上記したゴム系の弾性物質は弾性率が1~10MPa程度と低すぎ、剛性を確保できないという難点があった。ゴム系の弾性物質以外として、特許文献1ではアクリル樹脂が挙げられているが、アクリル樹脂は十分な耐熱性があるとはいえず、ペルチェ素子のような高温素子の基板材料には適さない。
また、特許文献3では、ポリイミド樹脂、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂等からなる厚さ30μm程度の弾性体薄膜が例示されている。この弾性体薄膜は、樹脂層が薄く、フィラー等を混合することなく熱伝導率の低下を抑えている。しかし、樹脂層の厚さが30μmよりも薄い場合は、応力を緩和するための機能層としては不十分である。また、ペルチェ素子を金属積層基板で構成する場合、金属板と絶縁層との密着を改善するために金属板表面に粗化処理を施すが、金属板表面を粗化面した上で弾性体薄膜の厚さを30μmよりも薄くすると、電気絶縁性を十分に確保できないおそれがある。
また、特許文献4では、電極間の間隙をとおる線に沿って応力緩衝層に切り込みを設けてこれを分断し、分断した1個の応力緩衝層に1又は複数個の電極を配置させている。同文献では、こうした技術によって熱応力を受けても、熱電素子と電極との間の剥離が生じにくくしている。しかしながら、基板としてアルミナを適用したり、応力緩衝層としてポリイミド系樹脂、アラミド系樹脂又はエポキシ系樹脂を使用しているので、低コスト化、熱ストレスによる寿命改善や放熱性の点で十分とはいえなかった。
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであって、その目的は、熱ストレスによる寿命改善、放熱性、電気絶縁性等の特性を十分に備える低コストの熱電モジュール用基板及び熱電モジュールを提供することにある。
(1)本発明に係る熱電モジュール用基板は、熱伝導性無機物を含有した複合樹脂層と、当該複合樹脂層を挟み、はんだ付けが可能で、前記複合樹脂層側の面が粗化処理されている一対の金属箔とを有する、ことを特徴とする。
この発明によれば、複合樹脂層が熱伝導性無機物を含有するので、強さと柔らかさ(低弾性)を有し、熱応力を緩和して寿命を改善することができるとともに、放熱性と電気絶縁性を持たせることができる。また、はんだ付けが可能な1対の金属箔が複合樹脂層を挟むので、熱電素子とのはんだ付け性が良く、発熱した熱電素子の放熱性に優れ、さらに低コスト化を実現できる。また、金属箔の複合樹脂層側の面が粗化処理されているので、金属箔と複合樹脂層との密着がよく、熱電素子に加わる熱ストレスやはんだ接合時の熱によっても金属箔と複合樹脂層との剥がれが抑制され、寿命改善を図ることができる。
本発明に係る熱電モジュール用基板において、前記金属箔は、銅箔又はアルミニウム箔であることが好ましい。この発明によれば、従来のセラミック基板を用いないので、コストの点で有利であるとともにはんだ付けも可能である。
本発明に係る熱電モジュール用基板において、前記熱伝導性無機物は、熱伝導性が1W/mK以上の無機フィラーであることが好ましい。この発明によれば、複合樹脂層の熱伝導性を良好なものとすることができる。
本発明に係る熱電モジュール用基板において、前記複合樹脂層を構成する樹脂は、30℃での貯蔵弾性率が1~10GPaの範囲内であり、100℃での貯蔵弾性率が0.1~1GPaの範囲内であることが好ましい。この発明によれば、はんだ接合時や動作時の熱電モジュール用基板に加わる高温によっても、十分な低弾性で柔らかさを維持することができ、高温で生じる熱膨張による応力を緩和することができる。その結果、温度差の繰り返しによりはんだ部の疲労亀裂を含む熱電モジュールの破損を防ぐことができる。
本発明に係る熱電モジュール用基板において、前記金属箔の複合樹脂層側の面が、表面粗さRzで1μm以上30μm以下の範囲内であることが好ましい。この発明によれば、この範囲内で粗化処理されているので、金属箔と複合樹脂層との密着がよい。
本発明に係る熱電モジュール用基板において、前記複合樹脂層3の厚さが、30μm以上200μm以下の範囲内であることが好ましい。この範囲内とすることにより、応力緩和効果と耐電圧が十分となりやすく、熱伝導も良好になる。
(2)本発明に係る熱電モジュールは、上記本発明に係る2枚の熱電モジュール用基板と、当該2枚の熱電モジュール用基板間に電気的に直列に配置された熱電素子とを有する熱電モジュールであって、
前記熱電モジュール用基板は、熱伝導性無機物を含有した複合樹脂層と、当該複合樹脂層を挟み、はんだ付けが可能で、前記複合樹脂層側の面が粗化処理されている一対の金属箔とを有し、
前記熱電素子がN型熱電素子とP型熱電素子であり、
前記熱電モジュール用基板のうち前記熱電素子側を構成する金属箔には、前記N型熱電素子と前記P型熱電素子とが隣接してはんだ接合し、前記N型熱電素子と前記P型半導体とが前記金属箔を介して前記熱電モジュール用基板間に電気的に直列に構成されている、ことを特徴とする。
この発明によれば、N型熱電素子とP型熱電素子とからなる熱電素子それぞれが各熱電モジュール用基板の金属箔にはんだ接合されているので、熱電素子と金属箔との密着性も向上したものとなる。さらに、熱電モジュール用基板を構成する複合樹脂層が熱伝導性無機物を含有するので、強度が向上するとともに複合樹脂層の柔軟性により熱応力を緩和して寿命を改善することができる。さらに、はんだ接合時や動作時の熱ストレスによる寿命改善を図ることができるとともに、放熱性と電気絶縁性を持たせることができる。また、はんだ付けが可能な1対の金属箔が複合樹脂層を挟むので、はんだ付け性、放熱性及び低コスト化を実現することができる。また、金属箔の複合樹脂層側の面が粗化処理されているので、金属箔と複合樹脂層との密着がよく、熱電素子に加わる熱ストレスやはんだ接合時の熱によっても、金属箔と複合樹脂層との剥がれが抑制され、寿命改善を図ることができる。
本発明に係る熱電モジュールにおいて、前記2枚の熱電モジュール用基板の対向する側の金属箔をそれぞれ第1金属箔と第2金属箔というとき、前記第1金属箔と前記第2金属箔との間にN型熱電素子とP型熱電素子とが挟まれた状態ではんだ接合されており、
前記第1金属箔上に接合された前記N型熱電素子と、該第1金属箔に隣接する他の第1金属箔上に接合されたP型熱電素子とが、同じ第2金属箔上ではんだ接合されて、前記直列構造が構成されている。
この発明によれば、N型熱電素子とP型熱電素子とが各金属箔間で直列接続され、この直列接続体の一方の端部の金属箔(第1金属箔)と他方の端部の金属箔(第2金属箔)との間に所定の電圧を印加することにより、電流がN型熱電素子とP型熱電素子とを相反する方向に流れ、ペルチェ効果により熱が一方の熱電モジュール用基板から他方の熱電モジュール用基板に流れ、吸熱側の熱電モジュール用基板では対象物を冷却し、放熱側の基板熱電モジュール用基板では対象物を加熱する。
本発明によれば、熱ストレスによる寿命改善、放熱性、電気絶縁性等の特性を十分に備える低コストの熱電モジュール用基板、及び熱電モジュールを提供することができる。
より具体的には、特に温度コントロールや電源のON・OFFを頻繁に行う加温冷却装置等に用いられる熱電モジュール(ペルチェモジュール)は、熱電素子に電流を流した際の吸熱・放熱作用を利用して加温冷却動作するが、本発明に係る熱電モジュール用基板は、熱電素子と金属箔との接合部での熱ストレスによる応力を緩和することができ、接合部での耐久性等を向上させるとともに、放熱性、電気絶縁性等の特性に優れたものとすることができる。
本発明に係る熱電モジュール用基板の一例を示す斜視図である。 本発明に係る熱電モジュールの一例を示す断面構成図である。 熱電モジュールの動作の説明図である。 複合樹脂層を構成する樹脂の動的粘弾性試験結果を示すグラフである。
本発明に係る熱電モジュール用基板及び熱電モジュールの実施形態について図面を参照しながら説明する。なお、本発明の技術的範囲は、以下の記載や図面のみに限定されるものではない。
[熱電モジュール用基板]
本発明に係る熱電モジュール用基板10は、図1及び図2に示すように、熱伝導性無機物を含有した複合樹脂層3と、その複合樹脂層3を挟み、はんだ付けが可能で、複合樹脂層側の面が粗化処理されている一対の金属箔1,2とを有することに特徴がある。この熱電モジュール用基板10は、複合樹脂層3が熱伝導性無機物を含有するので、強さ(強度)と柔らかさ(低弾性)を有し、熱応力(熱ストレス)を緩和して寿命を改善することができるとともに、放熱性と電気絶縁性を持たせることができる。また、はんだ付けが可能な1対の金属箔1,2が複合樹脂層3を挟むので、熱電素子11とのはんだ付け性が良く、発熱した熱電素子11の放熱性に優れ、さらに低コスト化を実現できる。また、金属箔1,2の複合樹脂層側の面が粗化処理されているので、金属箔1,2と複合樹脂層3との密着がよく、熱電素子11に加わる熱ストレスやはんだ接合時の熱によっても金属箔1,2と複合樹脂層3との剥がれが抑制され、寿命改善を図ることができる。
以下、各構成要素を詳しく説明する。
(金属箔)
金属箔1,2は、複合樹脂層3を挟むように1対配置されている。金属箔1,2は、はんだ付け可能な金属箔であり、例えば、銅箔、銅合金箔、アルミニウム箔、アルミニウム合金箔等を挙げることができる。好ましくは銅箔又は銅合金箔であり、特に好ましくは電解銅箔を挙げることができる。
金属箔1,2へのはんだ付け性は、結果として良好であればよく、はんだ付け性のよい銅箔等以外のはんだ付けし難い金属箔(例えば、アルミニウム箔、アルミニウム合金箔、銅合金箔、鉄箔、ステンレス箔等)であっても、その表面にはんだ付けし易いめっき膜又はフラックス膜が設けられていればよい。そうしためっき膜としては、銅めっき膜、ニッケルめっき膜、金めっき膜、錫めっき膜、銀めっき膜、はんだめっき膜、又はそれらの合金めっき膜等を挙げることができる。なかでも、ニッケルめっき膜上に金めっき膜設けたニッケル-金めっき膜が好ましい。めっき膜の厚さは、そのめっき膜の種類によって異なり、特に限定されないが、例えば0.5~5μmの範囲内であることが好ましい。めっき膜は片面であっても両面であってもよい。なお、後述のような銅張積層基板を採用する場合は、銅張積層基板を構成する金属箔が露出する側(複合樹脂層側の反対)の面だけに、めっき膜を設ければよい。ニッケル-金めっき膜は、はんだ付け性の他、耐熱性、酸化防止等の性質を備えるのでより好ましい。また、フラックス膜は、めっき膜よりもコストが抑えられるメリットがある。
金属箔1,2のうち、複合樹脂層3に接する側の面が粗化されていることが好ましい。粗化処理は、各種の方法で行うことができ、例えば、防錆処理、カップリング剤処理等の表面処理によって行うことができる。また、金属箔1,2として電解銅箔を採用した場合、電解銅箔は、通常、製造過程で片面が粗化処理されて仕上がるため、特段の粗化処理を後工程で行う必要がないという利点があり、粗化された面を、複合樹脂層3に接する側の面とすることができる。金属箔1,2の粗化は、粗化された面へのアンカー効果により、複合樹脂層3との密着性を向上させることができる。粗化された金属箔1,2を備えることにより、熱電素子11に加わる熱ストレスやはんだ接合時の熱によっても金属箔1,2と複合樹脂層3との剥がれが抑制され、寿命改善を図ることができる。粗化処理された面は、JIS B 0601-2001等で規定された表面粗さRzで、1~30μmの範囲内であることが好ましい。この表面粗さRzは、表面粗さ計(株式会社東京精密製、型番:サーフコム480B)で測定することができる。
金属箔1,2の厚さは、放熱性等の設計により任意に選択可能で特に限定されないが、例えば6~210μmの範囲内の厚さとすることができる。一例として、電解銅箔を利用する場合は、70μm、105μm、210μmのものが現時点では入手容易であり、実用上は70~210μmの範囲内の厚さが好ましいが、これに限定されない。金属箔1,2に上記しためっき膜が設けられている場合には、そのめっき膜の厚さを加えたものが金属箔1,2の厚さということができる。なお、その厚さによっては、金属フィルム、金属シート又は金属板とも呼ばれる。
なお、熱電モジュール用基板10のうち、熱交換板面は、必要に応じて、防錆処理、めっき、はんだめっき等の表面処理を行うことが好ましい。
(複合樹脂層)
複合樹脂層3は、熱伝導性無機物を含有し、前記した一対の金属箔1,2で挟まれている。この複合樹脂層3は、強さ(強度)と柔らかさ(低弾性)を有し、熱応力(熱ストレス)を緩和する熱応力緩和層として作用し、寿命の改善を図ることができるとともに、放熱性と電気絶縁性、耐熱性(はんだ耐熱性)、接着強度を持たせることができる。
複合樹脂層3を構成する樹脂は、DMA(動的粘弾性測定)又はTMA(熱機械分析)での動的粘弾性試験測定結果で、30℃での貯蔵弾性率が1~10GPaの範囲内であり、100℃での貯蔵弾性率が0.1~1GPaの範囲内であることが好ましい。より好ましくは、30℃での貯蔵弾性率が1~5GPaの範囲内であり、100℃での貯蔵弾性率が0.1~0.5GPaの範囲内である。こうした弾性特性を有することで、低温時は十分な剛性を保つとともに、一方で、はんだ接合時や動作時の熱電モジュール用基板10に加わる高温には貯蔵弾性率が下がることになり、十分な低弾性で柔らかさを維持することができ、高温で生じる熱膨張による応力を緩和することができる。その結果、高温時は熱交換基板、電極、熱電素子との熱膨張率の差から生じる熱応力を緩和することができ、温度差の繰り返しによりはんだ部の疲労亀裂を含む熱電モジュールの破損を防ぐことができ、ペルチェ素子の長寿命化を図ることができる。
後述する実施例で測定に用いたTMAは、試料に非振動的荷重(一定荷重)をかけながらの温度に対する変形を計測する手法である。実施例では株式会社日立ハイテクサイエンス製のTMA/SS7100を使用したが、こうしたTMAであれば、上記以外の測定装置で測定したものであってもよい。TMA測定は、具体的には、先ず、ヒーター内に試料を設置し、変位検出部と荷重発生部とに接続したプローブを試料にあてる。次に、荷重発生部からプローブを介して試料に荷重を与えながら、ヒーターで試料温度を変化させる。次に、温度変化に対応して試料の熱膨張や軟化等、試料の変形が起こると、変形に伴う変位量がプローブの位置変化量として変位検出部で計測される。TMAで貯蔵弾性率を測定する場合、膨張圧縮ではなく、引張りプローブを使用し、引張強度をサイン波で掛けて測定する。TMAで用いられるプローブとして、実施例では、試料の熱膨張や、転移による形状変化を計測するための金属製のプローブを用いた。
DMAでも同様に測定することができ、TMAで測定した値と一致した値として測定することができる。DMA(動的粘弾性測定)は、引張りモードの装置構成で測定されるものであり、試料に時間によって変化(振動)する歪み又は応力を与えて、それによって発生する応力又は歪みを測定して試料の力学的な性質を測定する方法である。試料は、測定ヘッドにクランプされ、ヒーターで加熱されるとともに、荷重発生部からプローブを介して試料に応力が与えられる。この応力は、測定条件の一つとして設定された周波数による正弦波力として、試料の歪振幅が一定となるように与えられる。この正弦波力により生じた試料の変形量(歪)は、変位検出部により検出され、試料に与えた応力と検出した歪から、貯蔵弾性率や粘性率などの各種の粘弾性量が算出され、温度または時間の関数として出力される。DMAにより、試料の粘弾性特性として、貯蔵弾性率:E’、G’、損失弾性率:E”、G”、損失正接:tanδ(=E”/E’)等の温度依存性や周波数依存性を測定することができる。
上記した弾性特性を備える樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂、シリコーン樹脂、ウレタン樹脂、ふっ素樹脂、合成ゴム、天然ゴム、ニトリルゴム等の合成ゴム等を挙げることができる。特にエポキシ樹脂は耐熱性にも優れるため、100℃程度までの温度が加わる熱電モジュール用基板10の複合樹脂層3に適している。なかでも、後述の実施例のように、図4に示すグラフ形態を示す樹脂を好ましく採用することができる。そうした形態を示す樹脂は、市販の樹脂から選択して用いることができる。具体的には、エポキシ樹脂としては、ビスフェノールAジグリシジルエーテルをはじめとしたグリシジル樹脂、その硬化剤としては、脂肪族ポリアミンや芳香族ポリアミン等のアミンを用いることができる。硬化剤は、この他にも酸無水物、フェノールノボラック、ポリメルカプタンを用いることができ、硬化触媒としては、第三アミン、ルイス酸錯体、潜在性硬化剤等を用いることができる。
なお、上記した弾性特性の調整は、分子量や官能基数の異なるエポキシ樹脂と硬化剤との結合からなる化学構造、橋掛け構造、分子間力を支配する分子構造で行うことができ、また、エポキシ樹脂の改質剤として添加される熱伝導性無機物の種類と配合量で行うこともでき、可塑剤効果を持つエポキシ樹脂及びポリチオール、ポリカルボキシル、ポリオール、ウレタンプレポリマー等の非エポキシ系可塑剤や、ポリブチレン、ポリブタジエン、ブタジエンアクリルニトリルゴム、シリコーンゴム等のエラストマーの添加で行うこともできる。エラストマーについては、耐薬品性等の性質を劣化させない範囲で、複合樹脂層3の弾性を調整するのに用いることができる。エポキシ樹脂、硬化剤及び添加剤の組合せや、配合するエラストマーの種類と配合量を選択することで、樹脂のガラス転移点を0~100℃の範囲内となるように調整することができる。
熱伝導性無機物は、樹脂とともに複合樹脂層3を構成する。熱伝導性無機物としては、絶縁性の無機フィラーであることが好ましく、例えば、酸化アルミニウム(アルミナ)、水酸化アルミニウム、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、酸化マグネシウム、酸化ケイ素(シリカ)等のフィラーを挙げることができる。なかでも、柔軟性、熱伝導率、価格等の特性を考慮すると、シリカフィラーが最も取扱い性が良く適している。こうした熱伝導性無機物は、複合樹脂層3中に50質量%以上90質量%以下の範囲内で含まれ、好ましくは75質量%以上85質量%以下の範囲内で含まれていることが好ましい。フィラー等の熱伝導性無機物を適量配合して複合樹脂層3を構成することにより、熱電モジュール用基板10としての柔軟性を確保しながら熱伝導率を向上させ、熱電モジュール(ペルチェモジュール)の伝熱特性を確保することができる。
熱伝導性無機物であるフィラーの粒径は、1粒子で見ると大径フィラーの方が切れ目が少なくて熱伝導は良い。しかし、大径フィラーのみだとフィラー間の隙間が多く、充填密度が上がらないため、樹脂成型した場合の熱伝導率には不利となる。大径と小径のフィラーを混ぜ合わせて使用することによりフィラーの充填密度を上げることができ、その結果、熱伝導率を向上させることができる。ただし、フィラーの充填率を上げ過ぎると、複合樹脂層3が硬くなって応力緩和効果が低下してしまうので、複合樹脂層3の熱伝導性と柔軟性を考慮しながら、フィラーの粒径と配合量を決定する必要がある。こうした観点より、熱伝導性無機物としてシリカフィラーを用いる場合、シリカフィラーの平均粒径は、70μm以下であり、40μm以下であることが好ましい。特に、平均粒径が10~40μm程度の大径のシリカフィラーと、平均粒径が0.3~3μm程度の小径のシリカフィラーと、その中間である平均粒径が3~10μm程度のシリカフィラーとを混合して用いることが好ましい。混合することにより、ポリマー中のフィラー充填密度を向上させることができ、より高熱伝導率化がはかれるという利点がある。なお、粒径や平均粒径は、レーザ回折式粒子径分布測定装置(例えば島津製作所製の型名:SALD-2300等)により測定することができる。
熱伝導性無機物は、樹脂とともに複合樹脂層3を構成するものであり、例えば、酸化ケイ素(シリカ)、水酸化アルミニウム、酸化アルミニウム、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、酸化マグネシウム等を挙げることができる。こうした熱伝導性無機物は、熱伝導性が1W/mK以上の無機フィラーであることが好ましく、複合樹脂層3の熱伝導性を良好なものとすることができる。なお、熱伝導性(熱伝導率)は、レーザーフラッシュ法、キセノンフラッシュ法、温度波熱分析法等で測定した熱拡散率の測定値や、DSC法等で測定した比熱測定値や密度測定結果から測定することができる。また、熱線法(細線加熱法)でも熱伝導率を測定することができる。
複合樹脂層3は、金属箔1,2等の金属と比較すると熱伝導率が低く、熱電モジュール用基板としての熱伝導率は複合樹脂層3の熱伝導率と厚さで決まることになる。したがって、複合樹脂層3の厚さは、熱電モジュール用基板10としての熱伝導率や、複合樹脂層3としての電気抵抗値及び耐電圧特性を考慮して決定されることが好ましい。また、所望の弾性を発揮できるだけの厚さであることも必要である。これらを踏まえた複合樹脂層3の厚さは、30μm以上、200μm以下の範囲内であることが好ましく、30μm以上、100μm以下であることがより好ましい。厚さが薄すぎると、応力緩和効果と耐電圧が不十分になることがあり、厚さが厚すぎると、熱抵抗が大きくなって、熱伝導に不利になることがある。
(熱電モジュール用基板)
金属箔1,2と複合樹脂層3とで構成された熱電モジュール用基板10は、片面を粗化処理した金属箔1,2で複合樹脂層3を挟み込み、その状態で両面から熱プレスして得ることができる。得られた積層体は、いわゆる銅張積層基板と同様な形態であるので、銅箔を貼り合わせた銅張積層基板を用い、例えばプリント基板の製造技術として用いられるフォトリソグラフィ技術により、一対の熱電モジュール用基板10,10の片面又は両面に電極パターンを形成することができる。こうして形成された電極パターン上に、熱電素子11を接合することで、熱電モジュール(ペルチェモジュール)20を製造することができる。
製造された熱電モジュール用基板10は、複合樹脂層3が熱伝導性無機物を含有するので、強さと柔らかさ(低弾性)を有し、熱ストレスによる寿命改善を図ることができるとともに、放熱性と電気絶縁性を持たせることができる。また、はんだ付けが可能な1対の金属箔1,2が複合樹脂層3を挟むので、熱電素子11とのはんだ付け性が良く、発熱した熱電素子11の放熱性に優れ、さらに低コスト化を実現できる。また、金属箔1,2の複合樹脂層側の面が粗化処理されているので、金属箔1,2と複合樹脂層3との密着がよく、熱電素子11に加わる熱ストレスやはんだ接合時の熱によっても金属箔1,2と複合樹脂層3との剥がれが抑制され、寿命改善を図ることができる。
熱電モジュール用基板10の形状は特に限定されない。その厚さも特に限定されないが、通常、150μm以上、550μm以下の範囲内とすることができる。また、通常、熱電モジュール用基板10の熱電素子側の面は、熱電素子の配置パターン等に応じてパターニング処理された電極が形成されている。パターニング処理した後の電極パターンには、めっき、フラックス、はんだレベラー等の表面処理が適宜行われる。一方、熱電モジュール用基板10の熱交換板側の面は、通常、パターンニングはされないが、上記同様の表面処理を行ってもよい。
熱電モジュール用基板10の熱伝導率は、複合樹脂層3の熱伝導率に主に支配されることになり、複合樹脂層3の熱伝導率と同様、1W/mK以上となる。
熱電モジュール用基板10は、種々の方法で製造できる。一例としては、厚さ105μmの電解銅箔にエポキシ樹脂シートをラミネートして貼り合せ、その後、熱プレス(例えばプレス圧1MPa以上)によりエポキシ樹脂を硬化させ、その後、基板の端部をトリミングして所望のサイズに切断し、銅張基板を成形し、その後、プリント基板と同様のフォトリソグラフィにより熱電素子用電極パターンを形成して、熱電モジュール用基板を製造することができる。
[熱電モジュール]
本発明に係る熱電モジュール20は、図2及び図3に示すように、上記本発明に係る2枚の熱電モジュール用基板10a,10bと、その2枚の熱電モジュール用基板間に電気的に直列に配置された熱電素子11とを有している。熱電素子11は、N型熱電素子(N型半導体)11aとP型熱電素子(P型半導体)11bである。この熱電モジュール20において、各熱電モジュール用基板10a,10bのうち熱電素子側を構成する各金属箔1,1には、N型熱電素子11aと前記P型熱電素子11bとが隣接してはんだ接合し、そのN型熱電素子11aと前記P型熱電素子11bとが前記各金属箔1,1を介して2枚の熱電モジュール用基板間に電気的に直列に構成されている。
この熱電モジュール20は、N型熱電素子11aとP型熱電素子11bとからなる熱電素子11それぞれが2枚の熱電モジュール用基板10a,10bの金属箔1,1にはんだ接合されているので、熱電素子11と金属箔1との密着性も向上したものとなる。さらに、熱電モジュール用基板10を構成する複合樹脂層3が熱伝導性無機物を含有するので、強度が向上してはんだ接合時や動作時の熱ストレスによる寿命改善を図ることができるとともに、放熱性と電気絶縁性を持たせることができる。また、はんだ付けが可能な1対の金属箔1,1が複合樹脂層3を挟むので、はんだ付け性、放熱性及び低コスト化を実現することができる。
熱電モジュール20において、2枚の熱電モジュール用基板10a,10bの対向する側の金属箔1,1をそれぞれ第1金属箔1aと第2金属箔1bというとき、第1金属箔1aと第2金属箔1bとの間にN型熱電素子11aとP型熱電素子11bとが挟まれた状態ではんだ接合されている。この場合において、第1金属箔1a上に接合されたN型熱電素子11aと、第1金属箔1aに隣接する他の第1金属箔1a上に接合されたP型熱電素子11bとが、同じ第2金属箔1b上ではんだ接合されて、直列構造が構成されている。
こうした構成により、N型熱電素子11aとP型熱電素子11bとが各金属箔間で直列接続され、この直列接続体の一方の端部の金属箔(第1金属箔1a)と他方の端部の金属箔(第2金属箔1b)との間に所定の電圧を印加することにより、電流がN型熱電素子11aとP型熱電素子11bとを相反する方向に流れ、ペルチェ効果により熱が一方の熱電モジュール用基板10bから他方の熱電モジュール用基板10aに流れ、吸熱側の熱電モジュール用基板10bでは対象物を冷却し、放熱側の熱電モジュール用基板10aでは対象物を加熱する。
以上説明したように、本発明によれば、熱ストレスによる寿命改善、放熱性、電気絶縁性等の特性を十分に備える低コストの熱電モジュール用基板、及び熱電モジュールを提供することができる。より具体的には、特に温度コントロールや電源のON・OFFを頻繁に行う加温冷却装置等に用いられる熱電モジュール(ペルチェモジュールともいう。)は、熱電素子に電流を流した際の吸熱・放熱作用を利用して加温冷却動作するが、本発明に係る熱電モジュール用基板は、熱電素子と金属箔との接合部での熱ストレスによる応力を緩和することができ、接合部での耐久性等を向上させるとともに、放熱性、電気絶縁性等の特性に優れたものとすることができる。
実施例と比較例により本発明をさらに詳しく説明する。
[実施例1]
図1に示す熱電モジュール用基板10を作製した。金属箔として、厚さ105μm電解銅箔を用いた。この電解銅箔の各面の表面粗さをJIS B 0601-2001に準拠した表面粗さ計で測定したところ、粗化面側の表面粗さRzは22μmであり、鏡面側の表面粗さRzは2μmであった。複合樹脂層3は、エポキシ樹脂であるビスフェノールAジグリシジルエーテル(エポキシ当量180~190)100質量部に、芳香族アミンとポリアミドからなる硬化剤を30質量部配合し、さらに硬化促進剤と溶剤とを適量添加し、そこに無機フィラーとして粒径が0.3~40μmのシリカフィラーを配合、分散させて、固形分が約80質量%のエポキシ樹脂組成ワニスとした。フィラー配合量は、固形分に対し70~75質量%となるように配合した。なお、ここでは硬化剤を30質量部配合しているが、その種類によって3質量部~40質量部の範囲で配合することができる。
このエポキシ樹脂組成ワニスを塗工加工で溶剤分を乾燥させた後の厚さが80μmになるようにして樹脂シートを作製し、この樹脂シートをラミネート加工で2枚の電解銅箔の粗化面の間に入れて貼り合せ、その後、電解銅箔付樹脂シートをプレス圧3~4MPa、温度200℃、加熱時間2時間の熱プレスで硬化処理を行い、複合樹脂層3を熱硬化させ銅張両面基板とした。その後、熱硬化させた銅張両面基板を所望のサイズに切断し、プリント基板と同様のフォトリソグラフィにより、熱電素子11の電極パターンを形成し、熱電モジュール用基板10を作製した。
[実施例2]
実施例1と同じ電解銅箔を使用した。複合樹脂層3の樹脂組成も実施例1と同様とし、そこに無機フィラーとして粒径が0.3~40μmのシリカフィラーを配合、分散させて、固形分が約80質量%のエポキシ樹脂組成ワニスとした。フィラー配合量は、固形分に対し80~85質量%となるように配合した。これら以外は、実施例1と同様とした。
[実施例3]
実施例1と同じ電解銅箔を使用した。複合樹脂層3の樹脂組成も実施例1と同様とし、そこに無機フィラーとして粒径が0.3~40μmのアルミナフィラーを配合、分散させて、固形分が約80質量%のエポキシ樹脂組成ワニスとした。フィラー配合量は、固形分に対し70~75質量%となるように配合した。これら以外は、実施例1と同様とした。
[実施例4]
実施例1と同じ電解銅箔を使用した。複合樹脂層3は、エポキシ樹脂であるビスフェノールAジグリシジルエーテル(エポキシ当量180~190)100質量部に、脂肪族アミンからなる硬化剤を10~30質量部配合し、さらに硬化促進剤と溶剤とを適量添加し、そこに無機フィラーとして粒径が0.3~40μmのアルミナフィラーを配合、分散させて、固形分が約80質量%のエポキシ樹脂組成ワニスとした。フィラー配合量は、固形分に対し70~75質量%となるように配合した。これら以外は、実施例1と同様とした。
[比較例1]
実施例1において、複合樹脂層3の厚さを80μmから20μmに変更した。それ以外は、実施例1と同様とした。
[比較例2]
実施例1において、複合樹脂層3に代えて、市販のフィラー含有高耐熱性エポキシ樹脂シート(株式会社プリンテック製、商品名:EPOX-AH7804)を使用した。それ以外は、実施例1と同様とした。
[比較例3]
実施例1において、複合樹脂層3に代えて、他の市販のフィラー含有高耐熱性エポキシ樹脂シート(株式会社プリンテック製、商品名:EPOX-AH7404)を使用した。それ以外は、実施例1と同様とした。
[比較例4]
実施例1において、樹脂シートに代えて、ヤング率が320GPaのアルミナセラミックス基板(厚さ500μm)を使用した。それ以外は、実施例1と同様とした。
[測定及び結果]
(貯蔵弾性率、ガラス転移温度、ΔTの測定)
実施例1~4及び比較例1で用いた複合樹脂層3の貯蔵弾性率を測定した。さらに、比較例2,3で用いた樹脂シートの貯蔵弾性率を測定した。測定は、既述したTMA装置(株式会社日立ハイテクサイエンス製、型名:SS7100)を用い、試料に非振動的荷重(一定荷重として200mNを負荷した。)をかけながら温度に対する変形を計測した。なお、TMA装置を用いた粘弾性解析では、サイン波荷重(振幅荷重:100mN)をかけて測定した。図4は、貯蔵弾性率の測定結果を示すグラフであり、Aは実施例1、Bは実施例2、Cは実施例3、Dは実施例4、Fは比較例2である。また、表1には30℃と100℃の結果を示した。
ガラス転移温度は、既述したTMA装置(株式会社日立ハイテクサイエンス製、型名:SS7100)で求めた損失弾性率のピーク値、又はtanΔ値から求めた。表1に、測定した実施例1~4及び比較例1~3のガラス転移温度を示した。実施例1~3ではガラス転移温度は50℃以下であり、実施例4ではガラス転移温度は50~100℃の範囲(具体的には75℃)であった。比較例2ではガラス転移温度は120℃であった。
(極性反転試験、寿命試験)
ペルチェモジュールの極性を反転(直流電流を流す方向入れ替える)させ、吸熱・放熱面の入替を行った。極性反転のサイクルは1サイクル2分とし、5000サイクル、10000サイクル、50000サイクルで行った。判定は、抵抗値の上昇率をモニタし、上昇率が3%以上の場合を「×」で表し、3%未満の場合を「○」で表した。なお、熱特性は、放熱・吸熱面の温度差(ΔT)は、放熱面の温度(Th)を+50℃としたときの吸熱面の温度を測定したものであり、例えば吸熱面の温度が-26℃の時、ΔT=76℃となる。こうして測定したΔTも表1に示した。
Figure 0007237417000001
この実験により、エポキシ樹脂の好ましい貯蔵弾性率は0.1~10GPaの範囲内であることがわかった。特に、室温付近(30℃)においては1~10GPa、好ましくは1~5GPaの範囲内であり、高温(100℃)においては0.1~1GPa、好ましくは0.1~0.5GPaの範囲内であることがわかった。こうした貯蔵弾性率とするためには、Tg(ガラス転移温度)を100℃以下、好ましくは0~50℃とすることが必要であることがわかった。
試験結果として、熱ストレスのかかる素子と電極の接合面にクラックが入ると抵抗値の上昇がみられたが、貯蔵弾性率が0.1~10GPaの範囲とすると、素子の半田接合部にクラックが入りにくく、ペルチェモジュールの寿命改善することがわかった。なお、実施例1(Tg=35.7℃)、実施例2(Tg=45.7℃)、実施例3(Tg=45.9℃)は、Tgが50℃以下で寿命試験結果が良好であった。一方、実施例4は、Tgが75℃で寿命試験結果がやや劣ることがわかった。
1 金属箔(熱電素子に接合する側の金属箔)
1a 一の金属箔(第1金属箔)
1b 隣接する他の金属箔(第2金属箔)
2 金属箔(熱電素子に接合しない側の金属箔)
3 複合樹脂層
10,10a,10b 熱電モジュール用基板
11 熱電素子
11a N型熱電素子(N型半導体)
11b P型熱電素子(P型半導体)
12 はんだ
13 はんだ接合部
20 熱電モジュール
F1 熱応力
F2 収縮力
F3 引張力

Claims (7)

  1. 熱伝導性無機物を含有した複合樹脂層と、当該複合樹脂層を挟み、はんだ付けが可能で、前記複合樹脂層側の面が粗化処理されている一対の金属箔とを有し、前記複合樹脂層を構成する樹脂は、30℃での貯蔵弾性率が1~10GPaの範囲内であり、100℃での貯蔵弾性率が0.1~1GPaの範囲内である、ことを特徴とする熱電モジュール用基板。
  2. 前記金属箔は、銅箔又はアルミニウム箔である、請求項1に記載の熱電モジュール用基板。
  3. 前記熱伝導性無機物が、熱伝導性が1W/mK以上の無機フィラーである、請求項1又は2に記載の熱電モジュール用基板。
  4. 前記金属箔の複合樹脂層側の面が、表面粗さRzで1μm以上30μm以下の範囲内である、請求項1~のいずれか1項に記載の熱電モジュール用基板。
  5. 前記複合樹脂層の厚さが、30μm以上200μm以下の範囲内である、請求項1~のいずれか1項に記載の熱電モジュール用基板。
  6. 請求項1~のいずれか1項に記載の熱電モジュール用基板2枚と、該2枚の熱電モジュール用基板間に電気的に直列に配置された熱電素子とを有する熱電モジュールであって、
    前記熱電素子がN型熱電素子とP型熱電素子であり、
    前記熱電モジュール用基板のうち前記熱電素子側を構成する金属箔には、前記N型熱電素子と前記P型熱電素子とが隣接してはんだ接合し、前記N型熱電素子と前記P型熱電素子とが前記金属箔を介して前記熱電モジュール用基板間に電気的に直列に構成されている、ことを特徴とする、熱電モジュール。
  7. 前記2枚の熱電モジュール用基板の対向する側の金属箔をそれぞれ第1金属箔と第2金属箔というとき、前記第1金属箔と前記第2金属箔との間にN型熱電素子とP型熱電素子とが挟まれた状態ではんだ接合されており、
    前記第1金属箔上に接合された前記N型熱電素子と、該第1金属箔に隣接する他の第1金属箔上に接合されたP型熱電素子とが、同じ第2金属箔上ではんだ接合され、前記第2金属箔上に接合された前記P型熱電素子と、該第2金属箔に隣接する他の第2金属箔上に接合されたN型熱電素子とが、同じ第1金属箔上ではんだ接合されて、前記電気的に直列に構成されている、請求項に記載の熱電モジュール。

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