JPWO2018180855A1 - 1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物の製造方法 - Google Patents
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Abstract
Description
ポリイミドの合成には酸無水物とジアミンの比率は等量が望ましい。酸無水物とジアミンのモルバランスが崩れると、ポリイミドの分子量が十分に上がらないためである。また、ジアミンと酸無水物に不純物が含まれると、モルバランスが崩れる原因となる。そのため原料である酸無水物には高い純度が要求される。
1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸を脱水閉環させる方法としては、無水酢酸を用いて加熱還流させる方法が知られている(特許文献1参照)。
本発明は、安定して高い無水化率を達成できる1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物の製造方法を提供することを目的とする。
〔2〕 1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸の平均粒子径が20μm未満である、〔1〕に記載の製造方法。
〔3〕 1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸の平均粒子径が7μm未満である、〔1〕に記載の製造方法。
〔4〕 1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸を3分割以上、又は連続して供給する、〔1〕〜〔3〕のいずれかに記載の製造方法。
〔5〕 1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸を5分割以上、又は連続して供給する、〔1〕〜〔3〕のいずれかに記載の製造方法。
〔6〕 1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸の無水化率が98%以上である、〔1〕〜〔5〕のいずれかに記載の製造方法。
〔7〕 脱水反応の反応温度が80〜150℃(好ましくは90℃以上、より好ましくは95℃以上、好ましくは140℃以下、より好ましくは130℃以下、更に好ましくは120℃以下)である、〔1〕〜〔6〕のいずれかに記載の製造方法。
〔8〕 脱水剤が、無水酢酸である、〔1〕〜〔7〕のいずれかに記載の製造方法。
〔9〕 無水酢酸の使用量が、1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸のモル数に対して、2.0〜100モル倍量(好ましくは2.5モル倍量以上、より好ましくは3モル倍量以上、好ましくは75モル倍量以下、より好ましくは50モル倍量以下、更に好ましくは25モル倍量以下、より更に好ましくは5モル倍以下)である、〔8〕に記載の製造方法。
〔10〕 1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸の脱水反応を脱水剤及び溶媒の存在下に行う、〔1〕〜〔9〕のいずれかに記載の製造方法。
〔11〕 溶媒が、酢酸である、〔10〕に記載の製造方法。
また、質量部及び質量%は、それぞれ、重量部及び重量%と同義である。
発明者等は鋭意検討した結果、1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸を分割して又は連続的して反応系に供給することにより、安定して高い無水化率が得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
なお、以下の説明において、脱水剤及び必要に応じて使用される溶媒を総称して、「溶液」ともいう。
発明者等が検討した結果、このような効果は、特に原料であるシクロヘキサンテトラカルボン酸の平均粒子径が20μm未満と、シクロヘキサンテトラカルボン酸の平均粒子径が小さい場合に顕著であることを見出した。
本反応系では、原料であるシクロヘキサンテトラカルボン酸及び生成物であるシクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物は、それぞれ、少なくとも反応の最終段階では、溶液に完全に溶解しない。そのため本反応は、少なくとも原料の添加終了時には、スラリー状態で反応する。
シクロヘキサンテトラカルボン酸は、脱水剤及び必要に応じて添加される溶媒(溶液)に溶解した状態で、脱水反応が進行し、シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物が生成すると考えられる。このとき、スラリー状態で反応が進行するため、生成したシクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物は、溶液中のシクロヘキサンテトラカルボン酸を取り込みながら、析出すると考えられる。すなわち、無水化(脱水反応)と、晶析反応が同時に進行する。この際に、特に原料であるシクロヘキサンテトラカルボン酸の粒子径が小さいと、溶液中のシクロヘキサンテトラカルボン酸の濃度が高くなり、生成物であるシクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物が晶析する際に、原料であるシクロヘキサンテトラカルボン酸が取り込まれ析出してしまい、これにより無水化率が低下すると推察される。
本発明では、原料であるシクロヘキサンテトラカルボン酸を分割して、又は連続して添加することにより、反応系内のシクロヘキサンテトラカルボン酸濃度を低く抑え、結果として生成物であるシクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物に取り込まれるシクロヘキサンテトラカルボン酸の量が抑制され、安定して高い無水化率が得られたものと推定される。
本発明において、1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸は、市販されている製品を購入してもよく、また、ピロメリット酸の核水添(核水素化)によって製造してもよく、特に限定されない。
ピロメリット酸の核水添によって1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸を製造する方法は特に限定されないが、例えば、国際公開第2010/010869号に記載されているように、ピロメリット酸を反応溶媒に溶解又は懸濁させ、水素分圧1.0〜15MPa、反応温度30〜80℃において、触媒の存在下で水素化し、該触媒としてロジウム、及び、パラジウム及び/又は白金をカーボン担体に担持した担持触媒を特定量使用する方法や、特許文献1に記載されているように、ピロメリット酸100質量部に対して、ロジウム又はパラジウムあるいはその両方からなる貴金属を0.5〜10質量部の割合で含む触媒の存在下、水素分圧1MPa以上でピロメリット酸を水素化する方法が例示されるが、これらに限定されるものではない。
なお、核水素化反応後に、例えば、反応温度と同程度の温度で触媒を濾別し、濾液を室温まで冷却し、析出した固体を濾別し、濾別した固体を乾燥することにより、1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸を得ることができる。また、前記濾液から反応溶媒を留去して濃縮し、析出した固体を濾別し、次に冷却又は濃縮などにより、ピロメリット酸の水素化物を結晶化させ、その結晶を固液分離することにより、高純度の1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸を得ることができる。
一方、本発明のように、シクロヘキサンテトラカルボン酸を分割して、又は連続して供給することにより、平均粒子径が小さい原料を使用した場合であっても、良好な無水化率が得られることを見出した。従って、本発明のように、原料であるシクロヘキサンテトラカルボン酸を分割して、又は連続して供給する場合、無水化率の改善効果は、平均粒子径が小さな原料の方が顕著であり、具体的には、原料である1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸の平均粒子径が20μm未満の場合に無水化率の改善効果が顕著であり、15μm未満の場合により顕著であり、10μm未満の場合に更に顕著であり、7μm未満である場合により更に顕著である。
本発明において、シクロヘキサンテトラカルボン酸の平均粒子径が大きい場合であっても、無水化率の改善効果は認められるが、上述したように、シクロヘキサンテトラカルボン酸の平均粒子径が小さい場合に、特に無水化率の改善効果が顕著である。
ここで、シクロヘキサンテトラカルボン酸の平均粒子径は、電界放射型走査型電子顕微鏡(FE−SEM、Field Emission-Scanning Electron Microscope)により撮影された100倍又は1,000倍画像における各粒子の長軸径を画像処理ソフトウェア イメージJを用いて100個の粒子について測定する。得られた各粒子の長軸長の平均値を、シクロヘキサンテトラカルボン酸の平均粒子径とする。
本発明に使用する脱水剤としては、公知の脱水剤の中から適宜選択して使用すればよく、特に限定されない。公知の脱水剤としては、無水酢酸、無水プロピオン酸、無水トリフルオロ酢酸、無水コハク酸、無水マレイン酸、無水安息香酸、無水フタル酸、塩化アセチル、リン酸塩化物、塩化チオニル、ホスゲン等が挙げられる。これらの中でも、経済性や使用の容易性の観点から、脱水剤としては無水酢酸が好ましい。
無水酢酸の使用量は、十分な無水化率を得る観点から、好ましくは2.0モル倍量以上、より好ましくは2.5モル倍量以上、更に好ましくは3モル倍量以上であり、経済性の観点及び反応後に脱水剤を除去する観点から、好ましくは100モル倍量以下、より好ましくは75モル倍量以下、更に好ましくは50モル倍量以下、より更に好ましくは25モル倍量以下、より好ましくは5モル倍量以下である。
なお、本発明において、脱水剤として無水酢酸を使用する場合、無水酢酸は液体であることから、溶媒としての機能をも有する。
本発明において、シクロヘキサンテトラカルボン酸を脱水剤の存在下、スラリー状態で脱水反応(無水化反応ともいう。)を行う。スラリー状態であるとは、原料であるシクロヘキサンテトラカルボン酸が脱水剤及び必要に応じて添加される溶媒に完全には溶解せず、固体状態で存在するものがあり、また生成物である酸無水物も脱水剤及び必要に応じて添加される溶媒に完全には溶解せず、固体状態で存在するものがあることを意味する。従って、原料又は生成物のいずれか又は両方に、反応系中で固体状態で存在するものがあれば、スラリー状態である。
なお、本発明において、少なくとも脱水反応の一部がスラリー状態で行われていればよく、原料の供給初期には原料であるシクロヘキサンテトラカルボン酸や生成物であるシクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物が完全に溶解している態様を除くものではない。
脱水反応は、シクロヘキサンテトラカルボン酸と脱水剤のスラリーを加熱するのみでもよく、脱水剤を加熱還流させてもよい。
前記脱水反応は、窒素ガス等の不活性ガス雰囲気下で行うことが好ましい。
本発明において、脱水反応は、脱水剤及び溶媒の存在下に行うことも好ましい。
前記溶媒としては、特に限定されないが、溶媒としては酢酸(氷酢酸ともいう。)を使用することが好ましい。使用する酢酸の量は、脱水剤に対して、0.5〜10体積倍であることが好ましく、1〜5体積倍であることがより好ましい。
また、前記酢酸に加えて、溶媒として、沸点50℃以上の炭化水素、ハロゲン化炭化水素、エステル、ケトン、エーテル、脂肪酸等を添加してもよい。
本発明の1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物の製造方法は、脱水剤に対して、原料であるシクロヘキサンテトラカルボン酸を分割して又は連続して供給することを特徴とする。
ここで、分割して又は連続して供給するとは、少なくとも2回以上に分けて、脱水剤に対してシクロヘキサンテトラカルボン酸を供給するか、又は、脱水剤に対して連続的にシクロヘキサンテトラカルボン酸を供給することを意味する。なお、分割して供給するとは、1回的に全量を供給するのではなく、時間を隔てて多段階で供給することを意味する。
なお、シクロヘキサンテトラカルボン酸は、連続して供給する態様と、分割して供給する態様を組み合わせて供給してもよく、そのような態様も本発明に含まれる。具体的には、シクロヘキサンテトラカルボン酸の一部を1回で又は数回に分割して供給した後、更にシクロヘキサンテトラカルボン酸の残部を連続して供給する態様や、シクロヘキサンテトラカルボン酸の一部を連続して供給した後、残部を1回又は数回に分割して供給する態様である。
シクロヘキサンテトラカルボン酸を分割して供給する場合、1回に供給するシクロヘキサンテトラカルボン酸の量は特に限定されないが、等分割して供給することが好ましく、1回あたりの供給量が、供給する全シクロヘキサンテトラカルボン酸の1/2量以下であることが好ましく、1/3量以下であることがより好ましく、1/5量以下であることが更に好ましい。また、1回あたりの供給量は、少ない方が好ましく、後述するように、連続供給することが特に好ましい。
また、シクロヘキサンテトラカルボン酸を分割して供給する場合、分割投入する間隔は特に限定されないが、分割回数をXとしたとき、好ましくは5/X(分)〜600/X(分)、より好ましくは15/X(分)〜300/X(分)、更に好ましくは30/X(分)〜120/X(分)である。
シクロヘキサンテトラカルボン酸の全量を分割して供給した後、更に0.1〜100時間反応を継続することが好ましく、より好ましくは0.2〜30時間、更に好ましくは0.3〜10時間反応を継続することが好ましい。
また、連続して供給する場合の供給時間は、好ましくは5分〜1,000分、より好ましくは15分〜500分、更に好ましくは30分〜300分である。
シクロヘキサンテトラカルボン酸の全量を連続して供給した後、更に0.01〜10時間反応を継続することが好ましく、より好ましくは0.02〜5時間、更に好ましくは0.05〜3時間反応を継続することが好ましい。
なお、本実施形態では、予め反応槽に脱水剤及び溶媒を仕込み、これを加熱してから、原料である1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸を分割せずに、又は分割して供給する。
無水酢酸の分子量は102.09(g/mol)、密度は、1.08(g/mL、20℃)であることから、脱水剤である無水酢酸の仕込み量は、3A(mol)×102.09(g/mol)÷1.08(g/mL)=283.6AmLとなる。
従って、1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸の全量を、脱水剤及び溶媒に添加すると、その濃度(シクロヘキサンテトラカルボン酸÷(無水酢酸+酢酸))は、以下の式(a)により、1.01mol/Lとなる。
A(mol)÷{3.5×0.2836A}(L)≒1.01(mol/L) (a)
分割回数と、脱水剤及び溶媒の合計量1Lあたりに供給する1回あたりのシクロヘキサンテトラカルボン酸の供給量の関係は、以下の表1のようになる。
本発明において、原料である1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸の無水化率は、98.0%以上であることが好ましく、98.5%以上であることがより好ましく、99.0%以上であることが更に好ましく、99.3%以上であることがより更に好ましく、99.5%以上であることがより更に好ましく、99.7%以上であることが特に好ましい。
無水化率を上記範囲内とすることにより、純度に優れたシクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物を得ることができる。
無水化率は、実施例に記載の方法により測定される。
本発明において、更にシクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物を回収する工程(以下、単に回収工程ともいう。)を有することが好ましい。
シクロヘキサンテトラカルボン酸の脱水反応の後、反応液を室温まで冷却し、シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物の結晶を析出させ、これを固液分離することにより、シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物を得ることができる。脱水剤として無水酢酸を使用し、溶媒として酢酸を使用した場合には、結晶の析出量が多く、工業的に有利である。また、固液分離したシクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物の結晶は、適宜乾燥することが好ましい。
結晶を分離した母液は、循環使用してもよい。不純物の系内蓄積の度合いに応じて、母液を脱水反応の反応槽に戻すかを選択すればよい。
熱電対、撹拌機、温度制御装置等を備えた3.86m3のSUS316L製反応釜にピロメリット酸390.1kg、水2340.9kg、5質量%Pd−カーボン粉末触媒(エヌ・イーケムキャット製、含水品、PEタイプ、水分含有率55質量%)131.0kg及び5質量%Rh−カーボン粉末触媒(エヌ・イーケムキャット製、含水品、水分含有率50質量%)56.2kgを仕込み、撹拌下、水素を8MPaまで供給すると共に50℃まで昇温し、圧力、温度を保持しながら仕込みピロメリット酸の3モル倍量の水素吸収量を供給するまで水添反応を継続した。得られた反応液を抜き出し、触媒を濾過して無色透明の濾液を得た。
その後、得られた濾液を核水添ピロメリット酸濃度が33質量%となるまで濃縮を行い、続いて20℃まで冷却し、1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸の結晶を析出させた。析出した結晶を濾別した。
フラッシュジェットドライヤー((株)セイシン企業製)に得られた1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸の湿結晶を仕込み、原料供給速度55kg/h、入口温度170℃、出口温度110℃、原料温度12.4℃、吐出風量6.8Nm3/min、吐出圧力53kPa、の条件で乾燥を実施し、1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸の白色結晶を得た。
得られた1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸の白色結晶について、粒子径を測定したところ、平均粒子径は6.9μmであった。
また、得られた白色結晶についてエステル化処理を行った後にガスクロマトグラフィー分析を行ったところ、1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸の純度は89.0%であった。
FE−SEM((株)日立ハイテクノロジーズ製、S−3000N、電圧10kV)で撮影した100倍又は1,000倍画像における各粒子の長軸長を、画像処理ソフトウェア イメージJを用いて測定した。100個の粒子について長軸長を測定し、得られた結果の平均値をシクロヘキサンテトラカルボン酸の平均粒子径とした。
熱電対、ジムロート冷却管、及び撹拌機を備えたガラス製500mL四つ口フラスコに、無水酢酸55.4g(0.542mol、添加する全シクロヘキサンテトラカルボン酸に対して3.0モル倍)、酢酸134.6g(無水酢酸の2.5体積倍)を仕込み、撹拌しながら系内を窒素ガスで置換した。続いて100mL/minで窒素ガスを流しながら100℃まで昇温し、その後、下記の表2に示す反応時間及び供給回数にて、調製例1で得られた平均粒子径が6.9μmのシクロヘキサンテトラカルボン酸を添加した。なお、添加した全量は、47.5g(0.18mol)であり、反応は120分間継続した。反応後、室温まで冷却して結晶を析出させたのち、結晶を分離した。得られた結晶を無水酢酸13.1gでリンスを行なったのち、乾燥し、無水化率を測定した。
実施例で行った脱水反応は、以下の通りである。また、結果を以下の表2に示す。
熱電対、ジムロート冷却管、及び撹拌機を備えたガラス製500mL四つ口フラスコに、無水酢酸49.5g、酢酸63.1gを仕込み、100℃まで昇温し、液温が100℃に到達後、別途調製したスラリー液の供給を開始した。スラリー液の供給を開始した時間を反応開始時間とし、133分間かけて、等速にて連続供給を行った。スラリー液の供給を終了後、30分間、加熱・撹拌を継続した。なお、スラリー液の供給終了後、窒素ガスの供給(100mL/min)を開始した。30分後に加熱を停止し、撹拌を継続しながら空冷した。加熱停止から3時間後に、吸引濾過により固液分離を実施し、無水酢酸13.1gにてリンスを行った後、乾燥し、無水化率を測定した。
なお、スラリー液は、以下の方法により調製した。具体的には、調製例1で得られた1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸47.5g、無水酢酸7.8g、酢酸103.0gをナス型フラスコに仕込み、室温下で撹拌し、スラリー液とした。
シクロヘキサンテトラカルボン酸の無水化率は、試料を液体クロマトグラフィーにより分析を行い、原料の1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸を定量化し、更に以下の式1により無水化率(%)を算出した。
無水化率(%)
=100−試料中のシクロヘキサンテトラカルボン酸の量(質量%) 式1
試料2gを精秤し、脱水メタノール100mlを加えて加熱し、1時間還流させてメチルエステル化反応を行い、液体クロマトグラフィー用試料として調製した。
なお、この前処理では、試料中の反応原料である1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸はエステル化されない。
液体クロマトグラフィー分析条件は、以下の通りである。
液体クロマトグラフィー分析装置:LC−6AD(送液ユニット)、CTO−10A(恒温槽)、SCL−10A(UV)、SPD−10AV(UV−VIS検出器)、SPD−M20A(PDA検出器)
カラム:Shodex RSpak DE−413L
検出器:UV(210nm)
溶離液組成:A液=アセトニトリル、B液=0.5%リン酸水溶液
モード:Binary gradient
流速:1.0ml/min
恒温槽温度:35℃
溶離液の条件は、以下の通りである。分析時間0〜15分は、A液:B液=10:90(体積比)とし、15〜20分で、A液:B液=10:90(体積比)〜50:50(体積比)にグラジエントをかけた。更に、分析時間20〜25分で、A液:B液=50:50(体積比)〜80:20(体積比)にグラジエントをかけた。そのまま、A液:B液=80:20(体積比)で40分まで保持した後、分析時間40分〜50分で、A液:B液=80:20(体積比)〜10:90(体積比)にグラジエントをかけ、A液:B液=10:90にて、70分まで保持した。
すなわち、試料100gに未反応のシクロヘキサンテトラカルボン酸が2g含有されている場合には、無水化率は98%である。
また、本発明により得られたシクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物は、その純度が高く、ポリイミド、エポキシ樹脂硬化剤、ソルダーレジスト等の原料として利用することが期待される。
Claims (11)
- 1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸を脱水剤の存在下、スラリー状態で脱水反応を行い、1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物を製造する方法において、
脱水剤に対して、1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸を分割して又は連続して供給することを特徴とする
1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物の製造方法。 - 1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸の平均粒子径が20μm未満である、請求項1に記載の製造方法。
- 1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸の平均粒子径が7μm未満である、請求項1に記載の製造方法。
- 1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸を3分割以上、又は連続して供給する、請求項1〜3のいずれかに記載の製造方法。
- 1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸を5分割以上、又は連続して供給する、請求項1〜3のいずれかに記載の製造方法。
- 1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸の無水化率が98%以上である、請求項1〜5のいずれかに記載の製造方法。
- 脱水反応の反応温度が80〜150℃である、請求項1〜6のいずれかに記載の製造方法。
- 脱水剤が、無水酢酸である、請求項1〜7のいずれかに記載の製造方法。
- 無水酢酸の使用量が、1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸のモル数に対して、2.0〜100モル倍量である、請求項8に記載の製造方法。
- 1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸の脱水反応を脱水剤及び溶媒の存在下に行う、請求項1〜9のいずれかに記載の製造方法。
- 溶媒が、酢酸である、請求項10に記載の製造方法。
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