JPWO2018079635A1 - スパンボンド不織布およびその製造方法 - Google Patents

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Abstract

ヨコ引張強力に優れ、且つ、地合や品位が良好なスパンボンド不織布を提供するものである。本発明のスパンボンド不織布は、熱可塑性連続フィラメントより構成される部分的に熱圧着されてなるスパンボンド不織布であって、前記不織布のタテ方向に対する前記フィラメントの繊維配向度分布のピークが10〜50度にあり、前記不織布の引張強力タテ/ヨコ比が1.3〜1.8であることを特徴とする、スパンボンド不織布である。

Description

本発明は、ハウスラップ材としての使用に適したスパンボンド不織布に関するものである。
近年の木造住宅等の建築では、外壁材と断熱材との間に通気層を設け、壁体内に侵入した湿気を、通気層を通して外部に放出する通気層工法が普及している。この通気層工法には、建物外部からの雨水の浸入を防止する防水性と、壁体内に生じる湿気を外部に逃がす透湿性とを兼ね備えた、透湿防水シートであるハウスラップ材としてスパンボンド不織布が使用されている。
透湿防水シートは、ポリエチレン有孔フィルムと不織布が積層一体化されてなるハウスラップ材等が普及しており、このシートの強度等を規定しているのが、日本工業規格JIS A6111:2004である。JIS規格には、引張強力のタテ、ヨコとも100N/5cm以上が規定され、この規格値を満足するには、スパンボンド不織布の引張強力が重要となる。一般的にヨコ引張強力よりもタテ引張強力が強いため、特にヨコ引張強力の向上が要求される。
ハウスラップ材は、つづり針(タッカー用針、ステープルともいう)により下地に固定、施工され、長期間における耐久性や、高温低温条件下での耐候性に優れることと、施工時に簡単に破れたりしない機械的強度とが要求される。
従来、このようなハウスラップ材に用いる不織布として、防水テープとの粘着性を良くするため、一方の表面平滑性とタテ方向に強い引裂強力を有するハウスラップ材が提案されている(特許文献1参照。)。
日本国特開2014−40677号公報
しかしながら、この特許文献に記載の発明は、ウェブの進行方向(不織布の長手方向)に対して揺動するノズルの角度を、例えば60度とすることで、ヨコ配向傾向となりヨコ方向の引張強度を高くする。この結果、移動捕集面上のウェブが捲くれる欠点が発生し、ハウスラップ材用不織布として、安定的に優れた地合や品位を有するものではないという課題があることを本発明者らは見出した。
そこで本発明の目的は、ヨコ引張強力に優れ、且つ、地合や品位が良好なスパンボンド不織布およびその製造方法を提供することにある。
本発明のスパンボンド不織布は、熱可塑性連続フィラメントより構成される部分的に熱圧着されてなるスパンボンド不織布であって、前記不織布のタテ方向に対する前記フィラメントの繊維配向度分布のピークが10〜50度にあり、前記不織布の引張強力タテ/ヨコ比が1.3〜1.8であることを特徴とする、スパンボンド不織布である。
本発明のスパンボンド不織布の好ましい態様によれば、繊維配向度10〜50度の繊維割合が60〜80%である。
本発明のスパンボンド不織布の好ましい態様によれば、目付当たりのヨコ引張強力が2.2N/5cm/(g/m)以上である。
本発明のスパンボンド不織布の好ましい態様によれば、熱可塑性連続フィラメントが、高融点重合体の周りに該高融点重合体の融点よりも低い融点を有する低融点重合体を配した複合型フィラメントである。
本発明のスパンボンド不織布の好ましい態様によれば、面積比率8〜30%の部分的熱圧着部を有する。
本発明のスパンボンド不織布の好ましい態様によれば、前記スパンボンド不織布を用いてハウスラップ材とすることができる。
本発明のスパンボンド不織布の製造方法は、下記(a)〜(d)を順次実施することを特徴とするスパンボンド不織布の製造方法である。
(a)熱可塑性重合体を紡糸口金から溶融押し出し後、これをエアサッカーにより牽引、延伸して熱可塑性連続フィラメントを得る工程
(b)得られたフィラメントをウェブ進行方向に対して、5〜25度の方向に向けた噴射ノズルを±10〜±25度の範囲内で揺動し、フィラメントを開繊させる工程
(c)開繊したフィラメントを移動するコンベア上に堆積させて繊維ウェブを形成する工程
(d)得られた繊維ウェブに部分的熱圧着を施す工程
本発明のスパンボンド不織布は、優れたヨコ引張強力を備え、地合や品位に優れており、安定的に優れた機械的強度を有している。この結果、本発明のスパンボンド不織布は、ハウスラップ材としての使用において、つづり針により下地に固定、施工された後、強い風が吹き込んだ時等、大きな荷重を受けても簡単に破れてしまうことがない。
本発明のスパンボンド不織布の製造方法によれば、優れたヨコ引張強力を備え、地合や品位に優れており、安定的に優れた機械的強度を有しているスパンボンド不織布を容易に製造することができる。
図1は、本発明の実施形態を示す、スパンボンド不織布の製造工程の概略図である。 図2は、本発明の実施形態の、ウェブ進行方向に対して所定の角度で揺動するノズルの概略図である。
本発明のスパンボンド不織布は、熱可塑性連続フィラメントより構成される部分的に熱圧着されてなるスパンボンド不織布であって、前記不織布のタテ方向に対する前記フィラメントの繊維配向度分布のピークが10〜50度にあり、前記不織布の引張強力タテ/ヨコ比が1.3〜1.8であることを特徴とする、スパンボンド不織布である。
本発明のスパンボンド不織布は、不織布のタテ方向に対する熱可塑性連続フィラメントの繊維配向度分布のピークが10〜50度にあることが重要である。好ましくは15〜45度、より好ましくは20〜40度である。この繊維配向度のピークが10度よりも小さいと、引張強力のタテ/ヨコ比が大きくなり、ヨコ引張強力を向上することが容易でない。一方、この繊維配向度のピークが50度よりも大きいと、タテ引張強力が低下する。
ここで、上記の「繊維配向度」とは、タテ方向に対するフィラメントの平均的な傾斜角度(鋭角)をいう。より具体的には、例えば、不織布からランダムに小片サンプル15個を採取し、走査型電子顕微鏡で100〜1000倍の写真を撮影し、各サンプルから15本ずつ、計225本の繊維について、タテ方向を0度とし、ヨコ方向を90度とした時の傾斜角度(鋭角)を測定し、それらの平均値の小数点以下第一位を四捨五入して求められる。上記で測定した繊維一本一本の傾斜角度の小数点以下第一位を四捨五入して、整数表記の傾斜角度とし、横軸に繊維の傾斜角度、縦軸に度数をとってグラフ化し、最も度数の多い傾斜角度を「繊維配向度分布のピーク」とした。
本発明のスパンボンド不織布のタテ方向とは、幅なりの不織布あるいは幅なりの方向が既知である不織布においては、幅方向(ヨコ方向)と直交する方向を指す。カットサンプル等でヨコ方向(幅なりの方向)とタテ方向(幅なりの方向と直交する方向)の両方向の位置はわかっても、いずれがヨコ方向でいずれがタテ方向であるかの区別がつかない場合には、スパンボンド不織布では一般的にタテ方向の方がヨコ方向よりも引張強力が強いことから、引張強力が強い方をタテ方向とすることができる。さらに、カットサンプル等で幅なりの方向が全くわからない場合には、以下の方法でタテ方向を確定することができる。
まずカットサンプルについて、45°おきに4通りの引張試験を実施する。続いて、これらのうち最も強い2つの方向の間で15°おきに引張試験を実施する。さらに最も強い2つの方向の間で5°おきに引張試験を実施する。最後に最も強い2つの方向で1°おきに引張試験を実施し、最も引張強力の強い方向をタテ方向とする。
本発明スパンボンド不織布の引張強力タテ/ヨコ比は1.3〜1.8であることが重要であり、好ましくは1.32〜1.75、より好ましくは1.35〜1.70である。引張強力タテ/ヨコ比とは、タテ方向の引張強力をヨコ方向の引張強力で除して求められる。
本発明のスパンボンド不織布は、ヨコ方向(不織布の幅方向)の引張強力(以下、ヨコ引張強力ともいう。)が90N/5cm以上であることが好ましい。ヨコ引張強力を90N/5cm以上、より好ましくは95N/5cm以上とすることで、ハウスラップ材用途に適した優れた機械的強度が得られ、つづり針により下地に固定、施工された後、強い風が吹き込んだ時の荷重に耐えられず容易に破れてしまうことが防止される。
また、ヨコ引張強力は150N/5cm以下が好ましく、より好ましくは145N/5cm以下とすることで、タテ、ヨコ共にハウスラップ材用途に適した優れた機械的強度が得られる。なお、上記のヨコ引張強力は、JIS L 1913:2010「一般不織布試験方法」の6.3「引張強さ及び伸び率」の6.3.1「標準時」に準拠して測定される。
本発明のスパンボンド不織布の繊維配向度10〜50度の繊維割合は60〜80%であることが好ましく、より好ましくは60〜75%、さらに好ましくは60〜70%である。上記、繊維配向度10〜50度の繊維割合を60〜80%とすることにより、タテ、ヨコ共に優れた機械的強度が得られ、且つ、地合や品位が良好なスパンボンド不織布を得ることができる。
本発明のスパンボンド不織布の目付当たりのヨコ引張強力は2.2N/5cm/(g/m)以上であることが好ましく、より好ましくは2.3(N/5cm)/(g/cm)以上、さらに好ましくは2.4(N/5cm)/(g/cm)以上である。目付当たりのヨコ引張強力とは、ヨコ引張強力を目付で除して求められる。
目付当たりのヨコ引張強力が2.2N/5cm/(g/m)以上とすることにより、ハウスラップ材用途に適した優れた機械的強度が得られる。また、目付当たりのヨコ引張強力が3.8(N/5cm)/(g/cm)以下であることが好ましく、より好ましくは3.7(N/5cm)/(g/cm)以下とすることにより、ハウスラップとしての使用において、実用に供しうる機械強度と取扱い性を両立させることができる。
本発明のスパンボンド不織布を構成する熱可塑性連続フィラメントは、高融点重合体の周りに該高融点重合体の融点よりも低い融点を有する低融点重合体を配した複合型フィラメントであることが好ましい。そうすることにより、熱圧着により熱可塑性連続フィラメントが不織布内において強固に接着し、毛羽立ちを抑制することができる。また、ハウスラップ材としての使用に適した機械的強度を付与することができる。また、このような複合型フィラメントとすることにより、不織布を構成するフィラメント同士が強固に接着することに加え、低融点重合体からなる繊維を混繊させたものに比べ不織布における接着点の数も多くなるため、スパンボンド不織布としての寸法安定性、耐久性も向上させることができる。
上記の熱可塑性連続フィラメントを形成するポリマーとしては、例えばポリエステル、ポリアミド、ポリオレフィン、あるいはこれらの混合物や共重合体等を挙げることができる。なかでもポリエステルが、より機械的強度や耐熱性、耐水性、耐薬品性等の耐久性に優れることから好ましい。
ポリエステルは酸成分とアルコール成分とからなる。酸性分としては、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸などの芳香族カルボン酸、アジピン酸、セバシン酸などの脂肪族ジカルボン酸、シクロヘキサンカルボン酸等の脂環族ジカルボン酸などを用いることができる。また、アルコール成分としては、エチレングリコール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコールなどを用いることができる。ポリエステルの例としては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリ乳酸、ポリブチレンサクシネート、また、これらの共重合体等を挙げることができる。
また上記の熱可塑性連続フィラメントを形成するポリマーとしては、生分解性樹脂も、用済み後の廃棄が容易であり環境負荷が小さいことから好ましい。生分解性樹脂の例としては、ポリ乳酸、ポリブチレンサクシネート、ポリカプロラクトン、ポリエチレンサクシネート、ポリグリコール酸、ポリヒドロキシブチレート等が挙げられる。なかでもポリ乳酸は、石油資源を枯渇させない植物由来の樹脂であり、力学特性や耐熱性も比較的高く、製造コストも低いので好ましい。
上記の高融点重合体と低融点重合体との融点の差としては10〜140℃が好ましい。融点の差を10℃以上、より好ましくは20℃以上、さらに好ましくは30℃以上とすることで、所望の熱接着性を得ることができる。また、140℃以下、より好ましくは120℃以下、さらに好ましくは100℃以下とすることで、熱圧着時に熱圧着ロールに低融点重合体成分が融着し生産性が低下することを抑制することができる。
また、上記複合繊維における高融点重合体の融点としては、160〜320℃が好ましい。160℃以上、より好ましくは170℃以上、さらに好ましくは180℃以上とすることで、熱が加わる加工工程においても形態安定性に優れる。また、320℃以下、より好ましくは300℃以下、さらに好ましくは280℃以下とすることで、長繊維不織布製造時に溶融するための熱エネルギーを多大に消費し生産性が低下するのを抑制することができる。
かかる高融点重合体および低融点重合体の組み合わせ(高融点重合体/低融点重合体)の具体例としては、ポリエチレンテレフタレート/ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート/ポリトリメチレンテレフタレート、ポリエチレンテレフタレート/ポリ乳酸、ポリエチレンテレフタレート/共重合ポリエチレンテレフタレート等が挙げられる。共重合ポリエチレンテレフタレートの共重合成分としては、イソフタル酸等が好ましい。
かかる複合繊維における低融点重合体の占める割合としては、10〜70質量%が好ましい。10質量%以上、より好ましくは15質量%以上、さらに好ましくは20質量%以上とすることで、所望の熱接着性を得ることができる。また、70質量%以下、より好ましくは60質量%以下、さらに好ましくは50質量%以下とすることで、融着が進みすぎて引裂強力が低下することを抑制することができる。
かかる複合繊維の複合形態としては例えば、同心芯鞘型、偏心芯鞘型、海島型、バイメタル型等を挙げることができる。なかでも同心芯鞘型が、熱圧着により繊維同士を強固に接着させることができる点で好ましい。
また、熱可塑性連続フィラメントの断面形状としては、円形、扁平、多角形、X型やY型等の多葉型、中空型等を挙げることができる。前記のような複合繊維で異形型の断面形状を採用する場合は、低融点重合体成分が熱圧着に寄与できるように繊維断面の外周部近傍に存在するのが好ましい。
本発明のスパンボンド不織布には、結晶核剤や艶消し剤、滑剤、顔料、防カビ剤、抗菌剤、難燃剤、親水剤等を添加してもよい。特に長繊維不織布の熱圧着成形の際、熱伝導性を増すことで長繊維不織布の接着性を向上させる効果がある酸化チタン等の金属酸化物や、熱圧着ロールとウェブ間の離型性を増すことで接着安定性を向上させる効果があるエチレンビスステアリン酸アミド等の脂肪族ビスアミド、および/またはアルキル置換型の脂肪族モノアミドを添加することが好ましい。これら各種の添加剤は、熱可塑性連続フィラメント中に存在させてもよいし、熱可塑性連続フィラメントの表面に存在させてもよい。
本発明において、熱可塑性連続フィラメントの繊維径としては10〜24μmが好ましい。10μm以上、より好ましくは12μm以上とすることで、目付均一性、および機械的強度に優れた不織布を得ることができる。また、24μm以下、より好ましくは22μm以下とすることで、ハウスラップ材を製造する際に、ポリエチレン有孔フィルムとの貼り合わせに使用するホットメルト樹脂の不織布内部への過浸透を抑制することが可能であり、フィルムと不織布の接着強度も良好であり、ハウスラップ材として好ましいものである。尚、複数種類の繊維が混繊されている場合は、それぞれの繊維の平均単繊維径が上記範囲内であるのが好ましい。
本発明のスパンボンド不織布は、部分的に熱圧着されてなることが重要である。部分的に熱圧着されてなることで、繊維同士を一体化させ、ハウスラップ材としての使用において長期の使用に耐え得る機械的強度が得られる。
本発明のスパンボンド不織布は、面積比率8〜30%の部分的熱圧着部を有することが好ましい。面積比率を8%以上、より好ましくは9%以上、さらに好ましくは10%以上とすることで、不織布の強度が向上し、また表面の毛羽立ちを抑えることができる。また面積比率を30%以下、より好ましくは28%以下、さらに好ましくは24%以下とすることで、繊維間の空隙を適度に残し、不織布の引張伸度と引裂強力の低下を抑制することができる。
ここで部分的熱圧着部とは、少なくともシート片面がくぼみを形成しており、不織布を構成する熱可塑性連続フィラメント同士が熱と圧力によって融着して形成されている。すなわち、他の部分に比べて熱可塑性連続フィラメントが融着して凝集している部分が部分的熱圧着部である。
部分的熱圧着部の面積比率とは、スパンボンド不織布の表面全体における部分的熱圧着部の割合であり、繰り返し単位が配列することで部分的熱圧着部がパターン模様を形成している場合、1つの繰り返し単位に含まれる部分的熱圧着部の面積を、繰り返し単位の面積で除して求められるものである。部分的熱圧着部の面積比率は、走査型電子顕微鏡によるスパンボンド不織布の表面観察画像を用いたり、形状解析レーザ顕微鏡や3D形状測定機等の非接触式の形状測定機器による表面形状データを用いたりして算出することができる。部分的熱圧着部の面積比率は、少なくとも5箇所以上の繰り返し単位で測定した面積比率を平均して求められる。
本発明のスパンボンド不織布の、引張強力や引裂強力などの機械的強度は、不織布の目付によっても異なる。本発明のスパンボンド不織布の目付としては、特定の値に限定されないが、30〜60g/mが好ましい。目付を30g/m以上、より好ましくは35g/m以上とすることで、機械的強度に優れ、ハウスラップ材としての使用に適したスパンボンド不織布を得ることができる。また、目付を60g/m以下、より好ましくは55g/m以下とすることで、ハウスラップ材として使用する場合、施工時に作業者が手に持って作業する際に適した重量となり、不織布の剛性が強すぎず、施工時の取り扱い性に優れたものとなる。また、風の吹き込み時に大きな音が出ることを抑制できる。
本発明のスパンボンド不織布の目付均一性は、熱可塑性連続フィラメントの繊維径によっても異なる。本発明のスパンボンド不織布の目付CVは、14.0%以下が好ましい。目付CVを14.0%以下、より好ましくは13.0%以下、さらに好ましくは12.0%以下とすることで、地合と機械的強度に優れ、物性のばらつきが少なく、ハウスラップ材としての使用に必要な物性を安定して満足するスパンボンド不織布を得ることができる。また、目付CVは2.0%以上が好ましく、より好ましくは2.5%以上、さらに好ましくは3.0%以上とすることで、製布工程におけるフィラメント噴射ノズルの幅方向の間隔を極端に狭くしたり、煩雑な開繊装置を導入したりして製造工程が煩雑化することを防ぐことができる。
本発明のスパンボンド不織布の製造方法は、下記(a)〜(d)を順次実施することを特徴とするスパンボンド不織布の製造方法である。
(a)熱可塑性重合体を紡糸口金から溶融押し出し後、これをエアサッカーにより牽引、延伸して熱可塑性連続フィラメントを得る工程
(b)得られたフィラメントをウェブ進行方向に対して、5〜25度の方向に向けた噴射ノズルを±10〜±25度の範囲内で揺動し、フィラメントを開繊させる工程
(c)開繊したフィラメントを移動するコンベア上に堆積させて繊維ウェブを形成する工程
(d)得られた繊維ウェブに部分的熱圧着を施す工程
本発明のスパンボンド不織布の製造方法は、例えば図1に示すように、熱可塑性重合体を紡糸口金1から溶融押し出し後、これをエジェクター2とエアサッカー3により牽引、延伸して熱可塑性連続フィラメントとし、これをノズル4から送り出して帯電手段5で帯電開繊したのち、移動捕集面6上に堆積させる。これにより、上記のフィラメントで繊維ウェブ7に形成される。
上記熱可塑性連続フィラメントの紡糸速度は、3500m/分以上が好ましい。紡糸速度を3500m/分以上、より好ましくは3800m/分以上、さらに好ましくは4000m/分以上とすることで、熱圧着時にシートが収縮したり、シワが発生したり、ロールにシートが取られて搬送性が悪化したりすることを防ぐことができる。また、紡糸速度は6000m/分以下が好ましく、より好ましくは5500m/分以下、さらに好ましくは5000m/分以下とすることにより、繊維が過度に配向結晶化することを防ぎ、熱接着で実用に供しうる強度を付与することができる。
上記のノズル4は、図2に示すように、ウェブ進行方向(長手方向D)に対し左右どちらかへ5〜25度の範囲内の角度(α)に向けることが重要である。本発明のスパンボンド不織布の製造方法では、ノズル4を揺動させることでフィラメントを開繊させるが、前記角度αはノズル4を揺動させる際の中心角となる。角度αは5度以上であることが重要であり、好ましくは8度以上、より好ましくは10度以上とすることにより、繊維配向度分布のピークを10度以上にし、ヨコ引張強力に優れ、かつ地合や品位の良好な不織布とすることができる。一方、角度αは25度以下とすることが重要であり、好ましくは20度以下、より好ましくは15度以下とすることにより、繊維配向度分布のピークを50度以下にし、タテ方向の引張強力(以降、タテ引張強力ともいう。)の低下を抑制することができる。
上記のノズル4の角度(α)は、5〜25度の範囲内で個別に設定することができるが、ウェブ進行方向(長手方向D)と直交する方向にノズルを一列に配列する場合は、全てのノズルの向く方向が右方向または左方向に統一されていることが好ましい。このようにすることにより、フィラメント同士が干渉して地合が悪化することを防ぐことができる。さらに上記のようなノズルを複数列配列する場合は、少なくとも一列のノズルが右方向に向き、かつ少なくとも一列のノズルが左方向に向いていることが好ましい。このようにすることにより、地合や品位の良好な不織布とし、端部の目付が低下したり、ウェブ進行方向(長手方向D)に対する右斜め方向と左斜め方向の引張強力に差が生じたりすることを抑制することができる。
このとき、上記のノズル4は、図2に示すように、角度αの方向を中心に±10度以上の所定の角度(θ)で、連続して揺動させることが重要である。上記のフィラメントは、この連続揺動するノズル4を通過したのち上記の帯電手段5で帯電開繊されて繊維ウェブとなるが、揺動角度θを±10度以上、好ましくは±13度以上、より好ましくは±16度以上とすることにより、束状の繊維を少なくし、コンベア上に堆積させた後の繊維ウェブの地合を向上させることができる。これにより、繊維ウェブの機械強度のバラツキを低減させることができる。一方、上記のノズル4の揺動角度θは、角度αに対して±25度以下、より好ましくは±23度以下、さらに好ましくは±20度以下とすることで、移動捕集面上に堆積させて繊維ウェブ7を形成する際に、ウェブが捲れる欠点等の発生を抑制することができる。
上記連続揺動するノズル4の1秒あたりの揺動(往復)数は、1.0回以上が好ましく、より好ましくは1.5回以上、さらに好ましくは2.0回以上とすることで、コンベア上に堆積させた後の繊維ウェブの地合を向上させることができる。また、1秒あたりの揺動(往復)数は、6.0回以下が好ましく、より好ましくは5.5回以下、さらに好ましくは5.0回以下とすることで、熱可塑性連続フィラメントがノズルの速度に追従させることができるため、繊維が束状になることを防ぎ地合の悪化を抑制することができる。
上記熱可塑性連続フィラメントの帯電方法は何ら制限されるものではないが、コロナ放電法による帯電や、金属との摩擦帯電による帯電が好ましいものである。
本発明のスパンボンド不織布の製造方法において、上記移動するコンベアの速度は、3m/min以上が好ましく、より好ましくは4m/min以上、さらに好ましくは5m/min以上とすることで、能力が低下し、生産性が低いものになることを防ぐことができる。また、移動するコンベアの速度は、100m/min以下が好ましく、より好ましくは90m/min以下、さらに好ましくは80m/min以下とすることで、移動捕集面上のウェブが捲くれる欠点を抑制したり、ロールにシートが取られて搬送性が悪化したりすることを防ぐことができる。
本発明のスパンボンド不織布の製造方法において、部分的熱圧着部を設ける手段としては、所定温度に加熱したエンボスロールによる接着や、超音波発振装置による接着を好ましく採用することができる。特に所定温度に加熱した熱エンボスロールによる接着は、不織布の強度を向上させる点で好ましい。
エンボスロール9により熱圧着を施す際、エンボスロール9の凸部により熱可塑性連続フィラメントが互いに融着して凝集する部分が熱圧着部となる。このエンボスロール9は、上記の不織布を部分的に熱圧着できるものであればよく、特定の形状や構造の物に限定されない。例えば図1に示すように、上側(または下側)のみに所定のパターンの凸部を有するロール9aを用い、他のロールは周面に凹凸の無いフラットロール9bを用いることができる。この場合においては、熱圧着部とは一方のロール9aの上記の凸部と他方のロール9bのフラットな周面とで熱圧着されて、不織布の熱可塑性連続フィラメントが凝集された部分をいう。
また、上記のエンボスロール9には、例えば、表面に複数の平行に配置された凸条が形成されている一対の上側ロール9aと下側ロール9bからなり、両ロール9a、9bが互いに対面する熱圧着位置では、その上側ロール9aの凸条とその下側ロール9bの凸条とが互いに交叉するように設けられているものを用いることができる。この場合、部分的熱圧着部とは上側ロール9aの凸条と下側ロール9bの凸条とで熱圧着されて不織布の熱可塑性連続フィラメントが凝集された部分をいう。この場合、上側ロール9aの凸条と下側ロール9bの凹溝、あるいは上側ロール9aの凹溝と下側ロール9bの凸条とで挟持される部分は、ここでいう熱圧着部には含まれない。この、表面に複数の凸条を備えた一対のロール9a、9bからなるエンボスロール9を用いた場合、上側ロール9aの凸条と下側ロール9bの凸条とで平行四辺形や矩形の熱圧着部を形成することが、不織布を剥離することなく良好に接着させることができるので、好ましい。
上記のエンボスロール9の加熱温度としては、熱可塑性連続フィラメントを形成する重合体のうち最も融点の低いものの融点に対して、融点−60℃〜融点−5℃とすることが好ましい。このエンボスロール9の加熱温度を上記の融点−60℃以上、より好ましくは上記の融点−50℃以上とすることで、熱接着を効率良く行うことができ、ヨコ引張強力を向上させることができる。一方、エンボスロール9の加熱温度を上記の融点−5℃以下、より好ましくは上記の融点−10℃以下とすることで、不織布製造時に繊維がエンボスロール9に融着することで発生するロール汚れの抑制が可能であり、また、部分的熱圧着部以外の不織布表面繊維の融着を抑制できる。これにより、ハウスラップ材として用いた際に風合いが堅すぎず、施工時の取り扱い性に優れたものとなり、また、適度のしなやかさを備えるので、風の吹き込み時に大きな音が発生することを抑制できる。
熱圧着部の形状としては、円形、三角形、四角形、平行四辺形、楕円形、菱形などのほか、任意の形状を採用することができる。また熱圧着部の配列としては、等間隔に規則的に配されたもの、ランダムに配されたもの、異なる形状が混在したものでもよい。なかでも不織布の均一性の点から、熱圧着部分が等間隔に配されたものが好ましい。
本発明のスパンボンド不織布の製造方法では、得られた繊維ウェブに部分的熱圧着を施す前に、搬送性を改善することなどを目的に、図1に示すように、一対のフラットロール8a、8bにより圧接処理を施しても良い。
上記のフラットロール8bによる圧接処理は、フラットロール8bを繊維ウェブ7に接触させるものであれば何ら制限されるものではないが、加熱したフラットロール8bを繊維ウェブ7に接触させる熱処理加工が好ましい。
この熱処理加工におけるフラットロール8bの表面温度は、繊維ウェブ7の表面に存在するフィラメントを構成する、最も融点の低い重合体の融点より30〜120℃低いことが好ましい。即ち、この融点を(Tm)とした場合、フラットロール8bの表面温度は、(Tm−30)〜(Tm−120)℃が好ましく、(Tm−40)〜(Tm−110)℃がより好ましく、(Tm−50)〜(Tm−100)℃が最も好ましい。フラットロール8bの表面温度が(Tm−120)℃よりも低い場合は、繊維ウェブ(7)の熱処理が不十分となって、目的のシート厚さが得られない問題や、接着が不十分となり、搬送性改善の効果が得られず好ましくない。また、フラットロール8bの表面温度が(Tm−30)℃よりも高い場合には、熱処理が強くなりすぎ、表層部の構成繊維が融着状態となり、十分な機械的強度を得られず好ましくない。
上記のフラットロール8bと接触させる方法としては、図1のように繊維ウェブをフラットロール8bに連続的に接触させて熱処理する方法や、一対のフラットロールに挟み込んで熱処理する方法などを用いることができる。
次に、実施例により、本発明のスパンボンド不織布をより具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に記載のものに限定されるものではない。なお、実施例と比較例における各特性値は、次の測定方法により測定した。
(1)融点(℃)
パーキンエルマ社製示差走査型熱量計DSC−2型を用い、昇温速度20℃/分の条件で測定し、得られた融解吸熱曲線において極値を与える温度を融点とした。また示差走査型熱量計において融解吸熱曲線が極値を示さない樹脂については、ホットプレート上で加熱し、顕微鏡観察により樹脂が完全に溶融した温度を融点とした。
(2)固有粘度IV
ポリエチレンテレフタレート樹脂の固有粘度IVは以下の方法で測定した。
オルソクロロフェノール100mlに対し試料8gを溶解し、温度25℃においてオストワルド粘度計を用いて相対粘度ηを下記式により求めた。
η=η/η=(t×d)/(t×d
ここで、η:ポリマー溶液の粘度
η:オルソクロロフェノールの粘度
t:溶液の落下時間(秒)
d:溶液の密度(g/cm
:オルソクロロフェノールの落下時間(秒)
:オルソクロロフェノールの密度(g/cm
である。
ついで、得られた相対粘度ηから下記式
IV=0.0242η+0.2634
により、固有粘度IVを算出した。
(3)平均単繊維径(μm)
不織布からランダムに小片サンプル10個を採取し、走査型電子顕微鏡で500〜7000倍の写真を撮影し、各サンプルから10本ずつ、計100本の繊維の直径を測定し、それらの平均値の小数点以下第一位を四捨五入して求めた。
(4)目付(g/m
50cm×50cmの不織布を3個採取して、各試料の重量をそれぞれ測定し、得られた値の平均値を単位面積当たりに換算し、小数点以下第一位を四捨五入した。
(5)繊維配向度(度)
不織布からランダムに小片サンプル15個を採取し、走査型電子顕微鏡で500倍の写真を撮影し、各サンプルから15本ずつ、計225本の繊維について、タテ方向を0度とし、ヨコ方向を90度とした時の角度を測定し、それらの平均値の小数点以下第一位を四捨五入して繊維配向度を求めた。
(6)引張強力(N/5cm)
JIS L 1913:2010「一般不織布試験方法」の、6.3「引張強さ及び伸び率」の6.3.1「標準時」に準拠し、以下の方法で引張強力を測定した。不織布のタテ方向、ヨコ方向について、長さ300mm×幅50mmの試験片を10点採取した。試験片を定速伸長型引張試験機にて、つかみ間隔200mm、引張速度200±10mm/minで引張試験を実施し、破断するまでの最大荷重時の強さ(N)を0.1Nの位まで求め、これを引張強力(N/5cm)とした。
(7)目付CV(%)
タテ方向、ヨコ方向に5cm×5cmの小片をそれぞれ16個ずつ、合計256個採取して、各試料(不織布)の質量をそれぞれ測定し、得られた値の平均値を単位面積当たりに換算し、小数点以下第一位を四捨五入し、不織布の目付を求めた。この目付をもとに、以下の式によりCV値を計算し、小数点以下第二位を四捨五入した。
・目付CV(%)=(目付の標準偏差)/(目付の平均値)×100。
(8)品位評価
幅方向200cm、長手方向1000mのロールにおいて、捲くれる欠点の発生個数を目視でカウントし、以下のような判断基準で表面品位を評価した。判定基準は「◎」と「○」を合格とした。捲くれる欠点とは、移動するコンベア上に堆積させた繊維ウェブが搬送中に気流などの影響を受け、表層のみが捲くれ上がり、折り返された状態で熱圧着されることによって、目付の濃い部分と目付の薄い部分が隣接して発生する欠点である。
◎:捲くれる欠点の発生なし
○:捲くれる欠点の発生個数が1個
△:捲くれる欠点の発生個数が2個以上3個以下
×:捲くれる欠点の発生個数が4個以上
[実施例1]
(繊維ウェブ)
固有粘度IV0.65、融点260℃であり、酸化チタンを0.3質量%含むポリエチレンテレフタレート樹脂を水分率50ppm以下に乾燥したものを芯成分とした。また、固有粘度IV0.66、イソフタル酸共重合率10モル%、融点230℃であり、酸化チタンを0.2質量%含む共重合ポリエチレンテレフタレート樹脂を水分率50ppm以下に乾燥したものを鞘成分とした。
上記の芯成分を295℃、鞘成分を280℃で溶融し、芯/鞘の複合比を質量比で80/20として円形断面の同心芯鞘型に複合し、口金温度300℃で細孔より紡出した後、エアサッカーにより紡糸速度4300m/分で紡糸して、熱可塑性連続フィラメントとした。そしてこのフィラメントを、ウェブ進行方向に対し角度αを15度の右方向に向け、角度αを中心に±18度の角度θで揺動するノズルに通過させ、ノズル出口に設置された金属衝突板へフィラメントを衝突させて摩擦帯電により繊維を帯電して開繊させ、移動するコンベア(移動捕集面)上に、繊維ウェブとして捕集した。このとき捕集した繊維ウェブが目付40g/mとなるように、コンベアの移動速度を調整した。
(熱圧着)
上記繊維ウェブを上下1対のフラットロールにてフラットロール表面温度150℃、線圧60kg/cmで熱圧着させた後、一対のエンボスロールにより、表面温度190℃、線圧70kg/cmの条件で部分的熱圧着を施した。用いたエンボスロールは、表面に複数の平行に配置された凸条が周方向へ環状に形成されている上側のロールと、表面に複数の凸条が螺旋状に形成されている下側ロールからなる。両ロールが互いに対面する熱圧着位置では、上側ロールの凸条と下側ロールの凸条とが交叉させてあり、上側ロールの凸条と下側ロールの凸条とで熱圧着される圧着部の、不織布全体に対する面積比率が18%となるよう調整してある。
上記の処理により、繊維径16μm、目付40g/mのスパンボンド不織布を得た。得られたスパンボンド不織布は、繊維配向度分布のピークが35度、ヨコ引張強力が106N/5cm、引張強力タテ/ヨコ比が1.37であった。結果は表1に示す。
[実施例2]
ウェブ進行方向に対し角度αを10度の左方向に向け、角度αを中心に±18度で揺動するノズルを通過させた以外は実施例1と同様にして、繊維ウェブを捕集した。
その後、実施例1と同様の熱圧着処理により、繊維径16μm、目付40g/mのスパンボンド不織布を得た。得られた実施例2のスパンボンド不織布は、繊維配向度分布のピークが30度、ヨコ引張強力が97N/5cm、引張強力タテ/ヨコ比が1.54であった。
[実施例3]
ウェブ進行方向に対し角度αを5度の右方向に向け、角度αを中心に±18度で揺動するノズルを通過させた以外は実施例1と同様にして、繊維ウェブを捕集した。
その後、実施例1と同様の熱圧着処理により、繊維径16μm、目付40g/mのスパンボンド不織布を得た。得られた実施例3のスパンボンド不織布は、繊維配向度分布のピークが25度、ヨコ引張強力が93N/5cm、引張強力タテ/ヨコ比が1.67であった。
[実施例4]
ウェブ進行方向に対し角度αを10度の右方向に向け、角度αを中心に±20度で揺動するノズルを通過させた以外は実施例1と同様にして、繊維ウェブを捕集した。
その後、実施例1と同様の熱圧着処理により、繊維径16μm、目付40g/mのスパンボンド不織布を得た。得られた実施例4のスパンボンド不織布は、繊維配向度分布のピークが40度、ヨコ引張強力が95N/5cm、引張強力タテ/ヨコ比が1.53であった。
[実施例5]
繊維径が14μmとなるよう吐出量を調整し、ウェブ進行方向に対し角度αを10度の左方向に向け、角度αを中心に±13度で揺動するノズルを通過させ、また目付が40g/mとなるよう繊維ウェブを捕集するコンベアの移動速度を調整した以外は実施例1と同様にして、繊維ウェブを捕集した。
その後、実施例1と同様の熱圧着処理により、繊維径14μm、目付40g/mのスパンボンド不織布を得た。得られた実施例5のスパンボンド不織布は、繊維配向度分布のピークが15度、ヨコ引強力が105N/5cm、引張強力タテ/ヨコ比が1.79であった。
[実施例6]
ウェブ進行方向に対し角度αを15度の左方向に向け、角度αを中心に±13度で揺動するノズルを通過させた以外は実施例5と同様にして、繊維ウェブを捕集した。
その後、実施例1と同様の熱圧着処理により、繊維径14μm、目付40g/mのスパンボンド不織布を得た。得られた実施例6のスパンボンド不織布は、繊維配向度分布のピークが20度、ヨコ引強力が110N/5cm、引張強力タテ/ヨコ比が1.68であった。
[実施例7]
ウェブ進行方向に対し角度αを12度の左方向に向け、角度αを中心に±15度で揺動するノズルを通過させた以外は実施例5と同様にして、繊維ウェブを捕集した。
その後、上側に円形パターンの規則的な凸部を有するエンボスロール、下側に凹凸の無いフラットロールを用い、熱圧着される圧着部の面積比率を10%とした熱圧着処理により、繊維径14μm、目付40g/mのスパンボンド不織布を得た。得られた実施例7のスパンボンド不織布は、繊維配向度分布のピークが15度、ヨコ引張強力が100N/5cm、引張強力タテ/ヨコ比が1.75であった。
[実施例8]
目付が55g/mとなるよう繊維ウェブを捕集するコンベアの移動速度を調整した以外は実施例1と同様にして、繊維ウェブを捕集した。
その後、実施例1と同様の熱圧着処理により、繊維径16μm、目付55g/mのスパンボンド不織布を得た。得られた実施例8のスパンボンド不織布は、繊維配向度分布のピークが36度、ヨコ引張強力が138N/5cm、引張強力タテ/ヨコ比が1.69であった。
[比較例1]
ウェブ進行方向に対し角度αを0度、角度αを中心に±18度で揺動するノズルを通過させた以外は実施例1と同様にして、繊維ウェブを捕集した。
その後、実施例1と同様の熱圧着処理により、繊維径16μm、目付40g/mのスパンボンド不織布を得た。得られた比較例1のスパンボンド不織布は、繊維配向度分布のピークが5度、ヨコ引張強力が85N/5cm、引張強力タテ/ヨコ比が2.00であった。
[比較例2]
ウェブ進行方向に対し角度αを0度、角度αを中心に±25度で揺動するノズルを通過させた以外は実施例1と同様にして、繊維ウェブを捕集した。
その後、実施例1と同様の熱圧着処理により、繊維径16μm、目付40g/mのスパンボンド不織布を得た。得られた比較例2のスパンボンド不織布は、繊維配向度分布のピークが8度、ヨコ引張強力が130N/5cm、引張強力タテ/ヨコ比が1.22であった。
[比較例3]
繊維径が14μmとなるよう吐出量を調整し、ウェブ進行方向に対し角度αを0度、角度αを中心に±13度で揺動するノズルを通過させ、また目付が40g/mとなるよう繊維ウェブを捕集するコンベアの移動速度を調整した以外は実施例5と同様にして、繊維ウェブを捕集した。
その後、実施例1と同様の熱圧着処理により、繊維径14μm、目付40g/mのスパンボンド不織布を得た。得られた比較例3のスパンボンド不織布は、繊維配向度分布のピークが2度、ヨコ引張強力が89N/5cm、引張強力タテ/ヨコ比が2.13であった。
[比較例4]
ウェブ進行方向に対し角度αを30度の右方向に向け、角度αを中心に±18度で揺動するノズルを通過させた以外は実施例1と同様にして、繊維ウェブを捕集した。
その後、実施例1と同様の熱圧着処理により、繊維径16μm、目付40g/mのスパンボンド不織布を得た。得られた比較例4のスパンボンド不織布は、繊維配向度分布のピークが55度、ヨコ引張強力が110N/5cm、引張強力タテ/ヨコ比が1.18であった。
[比較例5]
繊維径が14μmとなるよう吐出量を調整し、ウェブ進行方向に対し角度αを30度の左方向に向け、角度αを中心に±13度で揺動するノズルを通過させ、また目付が40g/mとなるよう繊維ウェブを捕集するコンベアの移動速度を調整した以外は実施例5と同様にして、繊維ウェブを捕集した。
その後、実施例1と同様の熱圧着処理により、繊維径14μm、目付40g/mのスパンボンド不織布を得た。得られた比較例5のスパンボンド不織布は、繊維配向度分布のピークが50度、ヨコ引張強力が115N/5cm、引張強力タテ/ヨコ比が1.17であった。
上記の各実施例と比較例のスパンボンド不織布の特性を、次の表1に示す。
Figure 2018079635
表1に示すように、実施例1〜8の各スパンボンド不織布は、いずれも繊維配向度分布のピークが10〜50度であり、引張強力タテ/ヨコ比は1.3〜1.8を満たしているため、優れたヨコ引張強力を有し、また地合や品位が良好なスパンボンド不織布であり、ハウスラップ材として適したものであった。
これに対し、比較例1、3のスパンボンド不織布は、いずれも繊維配向度分布のピークが10度未満にあり、引張強力タテ/ヨコ比は1.3〜1.8を満たすものではなく、ヨコ引張強力が低くハウスラップ材として適したものではなかった。また、比較例2,4,5のスパンボンド不織布は、捲くれる欠点の発生が多く、良好な品位を得られずハウスラップ材として適したものではなかった。
本発明を特定の態様を用いて詳細に説明したが、本発明の意図と範囲を離れることなく様々な変更および変形が可能であることは、当業者にとって明らかである。なお本出願は、2016年10月27日付で出願された日本特許出願(特願2016−210317)に基づいており、その全体が引用により援用される。
本発明のスパンボンド不織布はヨコ引張強力に優れ地合や品位を併せ持つので、ハウスラップ材として有用である。また、本発明のスパンボンド不織布の用途は、上記に限定されるものではなく、例えば、フィルター、フィルター基材、電線押え巻材等の工業資材、壁紙、屋根下葺材、遮音材、断熱材、吸音材等の建築資材、ラッピング材、袋材、看板材、印刷基材等の生活資材、防草シート、排水材、地盤補強材、遮音材、吸音材等の土木資材、べたがけ材、遮光シート等の農業資材、天井材、およびスペアタイヤカバー材等の車輌資材等に用いることができる。
1…紡糸口金
2…エジェクター
3…エアサッカー
4…ノズル
5…帯電手段
6…移動捕集面
7…繊維ウェブ
8a、8b…フラットロール
9…エンボスロール
9a…一方のロール(上側ロール)
9b…他方のロール(下側ロール)
10…不織布
11…加熱圧接部
α…ノズル角度
θ…揺動角度
D…ウェブ進行方向(長手方向)

Claims (7)

  1. 熱可塑性連続フィラメントより構成される部分的に熱圧着されてなるスパンボンド不織布であって、前記不織布のタテ方向に対する前記フィラメントの繊維配向度分布のピークが10〜50度にあり、前記不織布の引張強力タテ/ヨコ比が1.3〜1.8であることを特徴とする、スパンボンド不織布。
  2. 繊維配向度10〜50度の繊維割合が60〜80%である、請求項1に記載のスパンボンド不織布。
  3. 目付当たりのヨコ引張強力が2.2N/5cm/(g/m)以上である、請求項1または請求項2に記載のスパンボンド不織布。
  4. 前記熱可塑性連続フィラメントが、高融点重合体の周りに該高融点重合体の融点よりも低い融点を有する低融点重合体を配した複合型フィラメントである、請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載のスパンボンド不織布。
  5. 前記スパンボンド不織布が、面積比率8〜30%の部分的熱圧着部を有する、請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載のスパンボンド不織布。
  6. 請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載のスパンボンド不織布を用いてなるハウスラップ材。
  7. 下記(a)〜(d)を順次実施することを特徴とするスパンボンド不織布の製造方法。
    (a)熱可塑性重合体を紡糸口金から溶融押し出し後、これをエアサッカーにより牽引、延伸して熱可塑性連続フィラメントを得る工程
    (b)得られたフィラメントをウェブ進行方向に対して、5〜25度の方向に向けた噴射ノズルを±10〜±25度の範囲内で揺動し、フィラメントを開繊させる工程
    (c)開繊したフィラメントを移動するコンベア上に堆積させて繊維ウェブを形成する工程
    (d)得られた繊維ウェブに部分的熱圧着を施す工程
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