JP4140997B2 - ポリエステル系長繊維不織布およびその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明はポリエステル系長繊維不織布およびその製造方法に関し、特に有効なリサイクル、再生法を適用して、ポリエステル系の繊維または布帛屑から再生されたペレットなどを用いたポリエステル系長繊維不織布およびその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来から、不織布は、衣料用、産業資材用、土木建築資材用、農芸園芸資材用、生活関連資材用、あるいは医療衛生材用など、種々の用途に使用されている。このような不織布として、構成繊維をポリエステル系の長繊維としたポリエステル系長繊維不織布が知られている。このポリエステル系長繊維不織布は、一定以上の強力を有するため、上述の各種分野において好適に利用されている。
【0003】
上記の各種分野においては、所要の強力に加えて、さらに不織布が柔軟性を有することが要求される場合が多い。従来、ポリエステル系長繊維不織布に柔軟性を付与する手法として、繊維を構成するポリマーを低粘度化したり、繊維を紡糸するときの紡糸速度を低減させてポリマーを低配向化したり、ポリマー中に可塑剤を配合したりすることが行われている。また、紡糸された糸条にビータによる叩き加工やシアリングによるクレープ加工などの二次加工を施す、いわゆる機械的な柔軟化処理なども行われている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、ポリマーの低粘度化や、紡糸速度の低減による低配向化などの処理を行うと、できあがった不織布に所要の強力を付与することが困難である。また可塑剤を配合すると、それによってポリマーの分子鎖が切られることになって、やはり所要の強力を得ることができなくなる。二次加工による機械的な柔軟化処理では、不織布の構成繊維自体が機械的な損傷を受けることになって、この場合も所要の不織布強力を得ることが困難になる。
【0005】
不織布の利用分野のうち、土木用シートや農業用シートの分野においては、特に強力と柔軟性との双方が要求されることが多く、この要求を満たす不織布の開発が課題となっている。また、衣料や生活用品の分野においても、同様の要求が課されることが多い。
【0006】
そこで本発明は、所要の強力と柔軟性とを兼備したポリエステル系長繊維不織布を得ることを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
この目的を達成するため本発明は、ポリエステル系の第1成分からなる海部と、ポリエステル系の第2成分からなる島部とを有した海/島型の断面構造を備えた複合長繊維にて構成され、前記海部の第1成分は、島部の第2成分よりも複屈折率が高く、その複屈折率が0.025〜0.150の範囲であり、島部の中に、前記第2成分よりも複屈折率が低い第3成分が分散しており、前記第3成分は、アクリル酸エステル共重合体と、アクリル酸−塩化ビニリデン共重合体と、ポリビニルアルコールとからなる群から選ばれたものであり、かつ前記複合長繊維の単繊維どうしが部分的に熱圧着されて構成されていることを特徴とするポリエステル系長繊維不織布と、
海/島型の複合紡糸口金を用いて、ポリエステル系の第1成分からなる海部を有するとともに、ポリエステル系の第2成分を含む島部を有した海/島型の断面構造を備えた複合長繊維を紡出し、この紡出された複合長繊維の単繊維どうしを部分的に熱圧着させて、長繊維不織布を製造するに際し、前記海部の第1成分として、島部の第2成分よりも複屈折率が高く、その複屈折率が0.025〜0.150の範囲であるポリエステル系成分を用い、かつ、アクリル酸エステル共重合体と、アクリル酸−塩化ビニリデン共重合体と、ポリビニルアルコールとからなる群から選ばれ第2成分よりも複屈折率が低い第3成分が第2成分の中に分散されて紡出された糸条からなる素材を、前記島部に用いることを特徴とするポリエステル系長繊維不織布の製造方法と、
を要旨とするものである。
【0008】
【発明の実施の形態】
次に、本発明を詳細に説明する。
まず、本発明の不織布を構成するポリエステル系の複合長繊維に関して説明する。
【0009】
本発明の不織布を構成する複合長繊維は、その横断面において、ポリエステル系の第1成分からなる海部と、ポリエステル系の第2成分からなる単数または複数の島部とを有して、海成分が島成分を取り囲む海/島型複合断面を備え、島部の第2成分の中に第3成分が分散しているものである。
【0010】
ここにいうポリエステル系成分とは、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、あるいはそれらを主成分とする共重合ポリエステル等のポリエステルが少なくとも85モル%以上含まれているものであることを意味する。エチレンテレフタレート、ブチレンテレフタレート単位以外の成分としては、従来公知の酸成分および/またはアルコール成分を採用することができる。酸成分としては、イソフタル酸やアジピン酸等を採用することができる。アルコール成分としては、プロピレングリコールやジエチレングリコール等を採用することができる。いずれにしても、繊維形成能を有し、通常の溶融紡糸装置を使用して溶融紡出可能であることが必要である。
【0011】
海部の第1成分は、島部の第2成分よりも複屈折率が高く、その複屈折率が0.025〜0.150の範囲であることが必要である。この複屈折率は、たとえば、カールツアイスイエナ社製の干渉顕微鏡「インタファコ」を用い、封入剤として流動パラフィンとα−ブロムナフタリンとの混合液を用いて、島部と海部の繊維の太さを考慮して繊維を多層に分割し、表層から順次複屈折率を測定していき、海部に相当する複屈折率の平均値を海成分の複屈折率とし、島部に相当する複屈折率の平均値を島成分の複屈折率として求めることができる。
【0012】
海部の第1成分の複屈折率が上記のように0.025〜0.150の範囲であることは、所要の繊維配向を達成させて最終製品としての不織布に所要の強力を付与する観点から必要であり、また不織布の寸法安定性の観点や長繊維の製糸操業性の観点から必要である。すなわち、海部の第1成分の複屈折率が0.025未満では、繊維のトータル的な配向が進んでおらず、その結果、不織布すなわちその構成繊維の強力が不十分となる。また、繊維の配向が進んでいないことでその熱収縮率が大きくなって、不織布形態時の寸法安定性に欠ける。一方、海部の第1成分の複屈折率が0.150を超えると、繊維自体は配向が進み、繊維性能的に良好になる方向にあるが、製糸時の張力が高くなり過ぎ、糸切れが増えるため操業性が低下する問題点が発生する。したがって、海部の第1成分の複屈折率は、0.030〜0.140がより好ましく、0.040〜0.130が更に好ましい。
【0013】
島部の第2成分は、海部の第1成分よりも複屈折率が低いことが必要である。これは、海部の第1成分よりも複屈折率を低くして、繊維の配向を低下させることで、この島部に柔軟性を付与させるためである。このように柔軟な島部が所要の強力を有する海部に取り囲まれることで、ポリエステル系複合長繊維すなわち最終製品としてのポリエステル系長繊維不織布に、所要の強力と柔軟性とを兼備させることが可能となる。
【0014】
島部の第2成分の複屈折率を海部の第1成分の複屈折率よりも低くするためには、たとえば、この第2成分を構成するポリエステル成分を製造する際に、その重合反応を途中で停止させて、その重合度を低く設定すればよい。
【0015】
あるいは、島部の第2成分として、溶融再生されたポリエステル系の成分を利用することも可能である。この溶融再生されたポリエステル系の成分は、ポリマー屑や、未精練の繊維または屑などを出発原料として得ることができる。しかし、この場合は、再度熱溶融されて再生されるものであるので、ポリマーの粘度低下、繊維強度低下、ポリマーや繊維の変色などの問題がある。すなわち未精練の原料を適用するため、原料を取り扱う際の塵やゴミや異物の付着があり得る。また、繊維や布帛に、仕上げ油剤、糊剤、バインダー剤などの助剤、改質剤が付着することもあり得る。さらに、他のポリマーの混入があり得る。したがって、これらの溶融再生されたペレットを用いて仮に単一成分での製糸を試みても、糸切れが生じたり、粘度低下が大きく製糸することさえもできなくなったり、また極度な黄変を生じ汎用素材として適用できなくなったりすることがある。しかし本発明では、このように島部の第2成分に溶融再生されたポリエステル系の成分を使用しても、この島部の第2成分を取り囲んで海部の第1成分が存在することによって、その問題を解決し、また上述のように海部の第1成分の強力を生かして実用的な不織布性能を得ることができるのである。
【0016】
このように島部の第2成分に溶融再生されたポリエステル系の成分を使用する場合には、海部の第1成分に、一般的に適用される艶消し剤や顔料を含有させると、島部の第2成分の色調変化を希釈する効果があるため好ましい。
【0017】
溶融再生されたポリエステル系の成分における他のポリマーの混入例としては、ナイロン6、ナイロン46、ナイロン66、ナイロン610、あるいはそれらを主成分とする共重合ナイロンなどのポリアミドや、ポリプロピレン、高密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、エチレン/プロピレン共重合体、ポリスチレンなどのポリオレフィンなどが挙げられる。しかし、繊維形成能を極度に害する成分量の含有は良くない。
【0018】
島部の第2成分の中には、第3成分が細かく分散していることが必要である。すなわち、島部自体が一種の多島海島構造を呈していることが必要である。このように第3成分が分散していることによって、島部のヤングモジュラスを低下させることが可能となり、このため島部の柔軟性が際立ったものとなり、結果的に海部による強力を維持した状態のきわめて柔軟な不織布が得られることになる。このような第3成分として、たとえば再生前の繊維どうしを接合させるバインダー材を利用することができる。この種のバインダー材としては、ポリエチレンテレフタレートからなる長繊維不織ウエブの構成繊維どうしを接合するためには、一般的には、アクリル酸エステル共重合体や、アクリル酸−塩化ビニリデン共重合体や、ポリビニルアルコールなどが用いられる。この第3の成分は、たとえば微細な球状や筋状の状態でポリエステル系の島成分の中に分散して、可塑剤としての役割を果たす。
【0019】
なお、上述のように第3成分の分散によって島部のヤングモジュラスを低下させるためには、第3成分の複屈折率が第2成分の複屈折率よりも低いことが必要である。しかし、本発明者らが実験した限りにおいては、上記に具体的に示された第3成分では、その複屈折率が低過ぎて、使用した測定装置によっては、その複屈折率についての有意な値を求めることができなかった。ただし、上述の具体的な各成分であれば、重合度を低く設定した成分や溶融再生されたポリエステル系成分などによる第2の成分よりも複屈折率が低いことが、定性的にみて明らかである。
【0020】
上述のようにポリエステル系長繊維は海/島型の複合断面を有するが、その島の個数は、1〜8個が好ましい。図1は、このような複合断面の例を示す。すなわち、同図(a)は、海部1にて取り囲まれた島部2の個数が1である、いわゆる芯鞘構造のものを示す。島部2の中には、第3の成分3が均等に分散している。同図(b)は島部2の個数が3のものを、また同図(c)は島部2の個数が5のものを、それぞれ例示する。島数が増加するにしたがって、個々の島部の繊度が小さくなって、繊維すなわち不織布の柔軟性がいっそう向上する。しかし、複合紡糸の際の口金構造が複雑になって、高コストになりやすい。したがって、より好ましい島個数は1〜6個、さらに好ましくは1〜5個である。また、海/島型断面の全体は一般的には中実の丸断面形状が用いられるが、中空形状、異形形状でも良い。
【0021】
海部と島部との複合比は、任意に決定しうる事項であるが、一般的に、海部:島部=20:80〜80:20(重量比)であるのが好ましい。海部がこの範囲を超えて多くなると、島部の寄与が少なくなり、繊維すなわち不織布の柔軟性が不十分になって、本発明の意図が低下する。一方、海部が少なすぎると、所要の繊維強力すなわち不織布強力を得にくくなるばかりか、繊維表面から島部までの長さが短くなり過ぎたり、また島部どうしが独立でなくなるなど、繊維断面形成上の問題点が発生したり、糸切れが多くなって製糸操業性上の問題点が発生する。
【0022】
島部における第3の成分の含有割合は、1〜20重量%が好適である。なぜなら、20重量%を超えた領域では、第2成分と第3成分とが相溶性を伴わない場合には、製糸性が悪化したり、分散すべき第3成分が凝集したりするためであり、また1重量%未満では、溶融再生されたポリマーの利用率が低下したり、不織布としての柔軟性の改良ができなくなったりするためである。
【0023】
また海/島型複合長繊維の単糸繊度は、2〜15デニールが好ましい。単糸繊度が2デニール未満であると、繊維製造上の理由によって糸切れ欠点が増加し、それに伴って操業性の低下や品質の低下の問題が生じたり、生産性が低下して高コストとなったりする。また、単糸繊度が15デニールを超えると、糸条の冷却性が低下して製造上の問題が生じたり、地合いの良好な低目付の不織布が得られにくい傾向が生じる。
【0024】
海部の第1成分および島部の第2成分の融点は、いずれも100℃以上であることが好ましい。融点が100℃未満であると実用性が低下するためである。
また、これら両成分中には、潤滑剤、顔料、艶消し剤、熱安定剤、耐光剤、紫外線吸収剤が適宜添加されていてもよく、特に顔料や艶消し剤は、島部の第2成分に溶融再生されたポリエステル系の成分を使用しない場合にも、適宜に添加することができる。特に、顔料として、酸化チタンを0.5重量%程度添加させれば、衣類などに適した白色の不織布を得ることができる。またカーボンブラックを2重量%程度添加させれば、農業用遮光シートに適した黒色の不織布を得ることができる。さらに両成分中には、制電剤、導電剤、蓄熱剤などが添加されていてもよい。
【0025】
本発明に係る長繊維不織布は、前述の海/島型複合長繊維を構成繊維とするものであり、この海/島型複合長繊維の単繊維どうしが部分的に熱圧着されて不織布化されていることが必要である。すなわち海島型複合長繊維の単繊維間の点圧着部において部分的に融着し、形態が保持されていることが必要である。
【0026】
ここでいう点圧着とは、丸型、スリット型、十字型、十葉型、T型、三角型、三葉型、四角、五角、六角、八角型、四葉、五葉、六葉、八葉型、卍型等の点圧着模様をいい、以下の如き圧着面積率で示し測定されるものである。すなわち、不織布の小片を用い、走査型電子顕微鏡で拡大撮影し,最小繰返単位の面積に対する点圧着されている部分の面積の総和の比率を個々に10回測定したときの平均値で、不織布の圧着面積率が求められるが、この圧着面積率が3〜70%であるのが好ましい。3%未満であると、不織布の柔軟性は向上するが、不織布強力の低下や、不織布が擦れた場合の毛羽立ちの発生が起こりやすくなって、実用面から問題が生じる。また、圧着面積率が70%を超えると、不織布自体がきわめて硬くなり、ハンドリングが悪くなる。したがってより好ましくは、圧着面積率が4〜60%がよい。これらの点圧着部で融着されることによって不織布が形態保持されるのであり、しかも、その他の部分は熱圧着されないため不織布の曲げやすさ、ハンドリングの良さが付与されるのである。
【0027】
不織布の目付は、特に限定されない。たとえば低目付の不織布は、ゴミフィルターやフラワー包装材などの通気性を重視した分野に利用可能である。また高目付の不織布は、カーペット基布、土木用基材などに利用可能である。このように、目付に応じて広範な用途に展開できる。
【0028】
また不織布を構成する繊維の単糸繊度が比較的低いものはソフト性を有する分野の用途に適用でき、単糸繊度が比較的高いものは、カーペットの基布や、建築、土木資材などに適用できる。すなわち、構成繊維の単糸繊度に応じて広範囲の用途に適用できる。
【0029】
また、不織布を形成する際にニードルパンチ交絡を付与させて嵩高性を付与したり、熱カレンダー加工を行ってペーパーライクの不織布としたり、他の同種、異種素材の不織布やウェブとの積層を行って機能性を改良したりすることもできる。
【0030】
次に、本発明のポリエステル系長繊維不織布を製造するための一方法を説明するが、この方法に限ったものでないことは言うまでもない。
本発明のポリエステル系長繊維不織布を製造するためには、公知の溶融複合紡糸によるスパンボンド法を適用することができる。このとき、海部の第1成分および島部の第2成分には、未再生のポリエステル系の重合体成分を適用できる。ここで、ポリエステル系の重合体成分の詳細は前述した通りである。また、上述のように、第2成分を構成するポリエステル系の成分を製造する際に、その重合反応を途中で停止させて、その重合度を低く設定するなどにより、この第2成分の複屈折率を低くさせることによって、反対に海部の第1成分の複屈折率を島部の第2成分の複屈折率よりも高くすることができる。第2成分には第3成分を配合しておく。
【0031】
島部の第2成分として溶融再生されたポリエステル系の成分を利用する場合には、次のようにする。すなわち、未精製のポリエステル系のポリマー屑や、ポリエステル系の繊維屑、布帛屑などを粉砕または細断し、エクストルーダーなどの溶融機内に押し込み、溶融する。かつベント機構などで水分を除去し、金網などのフィルターで溶融ポリマーを濾過して細孔を有するメルトダイから吐出し、水冷バス内で冷却し、ストランドを得る。得られたストランドは、水切りや温風付与によって過剰水分を除去し、ペレタイザーで2〜6mm程度の長さにカッティングする。これによって、再生されたペレットを得ることができる。
【0032】
得られた再生ペレットは、ポリマー屑や、未精練の繊維または屑などを出発原料とするため、この出発原料が所定量のバインダーを含んだものである場合には、それを第3成分として利用する。第3成分の含有量が所定量に達しない場合には、新たに補充などする。
【0033】
このような再生ペレットを利用する場合には、出発原料を取り扱う際の塵やゴミや異物の付着があり得るとともに、繊維や布帛に、必要とするバインダー材のほかに仕上げ油剤や糊剤などの助剤や改質剤が付着していることがあり得る。したがって、ポリマーの極端な粘度低下やポリマーの変色などの問題が生じやすい。この対策として、できるだけ問題が生じないように、水分除去や、再生時の紡糸温度管理や、フィルトレーションなどを考慮しなければならない。
【0034】
そして、このようにして再生されたペレットを更に乾燥し、水分率を0.008%以下にしてから、本発明に適用することができる。
【0035】
このようにあらかじめ準備した2種のポリエステル系の重合体を用い、まず、海部の第1成分と島部の第2成分とを個別に溶融計量し、第3成分の補充が必要ならそれを行って、海/島型の複合紡糸口金から紡糸する。このときに、第3成分は、細かな球状または筋状となって島部の第2成分の中に均一に分散する。この場合の複合紡糸口金は、通常の海/島型の複合口金装置を使用することができる。また、複合紡糸口金装置内では個々の重合体に合わせて選定したフィルターにより濾過を行った後に、海/島型複合形状としてから、紡糸すれば良い。紡出した繊維糸条を冷却し、その後にエアーサッカーにより3000m/分以上で牽引し、続いて繊維を開繊し、移動するコンベアーネット上に堆積して長繊維不織ウェブとする。そして、この不織ウェブを熱エンボス加工機によって点圧着し、最後に捲取機で巻き取ることで長繊維不織布を製造することができる。
【0036】
その場合において、海部の第1成分が島部の第2成分よりも溶融粘度が高いことで、第3成分を含んだ島部の第2成分の曳糸性の不足を海部の第1成分で補うことができ、かつ海部の配向を促すことができる。このようにしたうえで高速紡糸を行うと、紡糸張力が海部に支配され、したがって海部は島部に比べ繊維配向がより進み、得られる長繊維すなわち不織布の強力を維持または向上させることができる。
【0037】
繊維糸条のエアーサッカーによる牽引は、糸切れが生じない範囲内でできるだけ高速で行うことが望ましい。この理由としては、繊維の配向を高め、熱収縮性を抑え、不織布物性の向上を図るためである。すなわち、紡糸速度を高速にすることは、生産性の観点からも好ましく、かつ繊維の結晶配向度を高めることにもなる。また熱収縮特性も低下するため、当然耐熱性及び寸法安定性が向上する。しかも、繊維自体の強度も保持されるため、不織布強力も高くなる。3000m/分未満の低牽引速度では、繊維の熱収縮率が極めて高くなり、不織布の寸法安定性が低下したり、粗硬感が発生したりする。したがって、牽引速度は3300m/分以上が好ましく、3500m/分以上が最も好ましい。
【0038】
次に、点圧着により不織布の形態を保持するためのエンボス加工を行う。このときの方法としては、一般に乾式不織布用に使用されている公知の熱エンボス加工機や超音波溶着機などの装置を適用することができる。
【0039】
たとえば、熱エンボス加工機を適用した場合の加工温度は、一般的には、ロール線圧を10〜100kg/cm程度として、熱接着成分すなわち海部の第1成分の融点よりも15℃低い温度から、その融点よりも50℃低い温度までの温度範囲を適用できる。海部の第1成分の融点よりも15℃低い温度を超える温度を適用すると、風合いが硬く、ハンドリングが悪く、引裂強力の低い不織布となる。加工温度がさらに高くなると、ウェブが彫刻ロールあるいは金属製の平滑ロールに取られ、操業性良く不織布を製造することができなくなる。一方、海部の第1成分の融点よりも50℃低い温度に達しないほどの低温を適用すると、ウェブが熱圧着されにくくなって、不織布の形態保持性が低下する。加工温度がさらに低くなると、ウェブが彫刻ロールに取られ、操業性良く不織布を製造することができなくなる。このように、エンボス加工時の加工温度が海部の第1成分の融点よりも低く、かつその軟化点以上の加工温度範囲内にあるので、彫刻ロールの圧着ポイント部での圧力が付与されることにより融着された状態となる。
【0040】
不織布を製造する際には、点圧着の模様が、不織布強力、柔軟性、風合いに影響するため重要であり、そのための彫刻ロールの彫刻面積、形状が一つのポイントである。彫刻面積の基準は、熱圧着させる時の圧着面積率で示すことができ、本発明の不織布を得るための圧着面積率は、前述のように3〜70%が好ましい。
【0041】
超音波溶着機を適用する場合には、彫刻ロールと超音波溶着機構をもった支持体との間にウェブを通布し、20kHz程度の超音波を発振すればよい。この場合において、溶着状態を変更するときには、用いる素材によって超音波の波長を適宜変更すればよい。この場合の線圧は、熱エンボス加工機と異なって0.5〜2kg/cm程度を用いればよい。
【0042】
この超音波溶着による点圧着を施した不織布は点圧着部以外の繊維が殆ど熱の影響を受けないため、風合いが硬くならず、したがって柔軟性を目的とした不織布を製造する上では、より好ましい。
【0043】
【実施例】
次に、実施例に基づいて本発明を具体的に説明する。なお、以下の実施例および比較例における各種特性の測定及び評価は、次の方法により実施した。
【0044】
重合体の融点:パーキンエルマ社製の示差走査型熱量計DSC−2型を用い、昇温速度20℃/分で測定した融解吸収曲線の極値を与える温度を融点とした。
【0045】
糸切れ率:912ホールの紡糸口金より紡出された糸条群をエアーサッカーで牽引した時の糸切れ個数を1時間計測して糸切れ率(個/hr/912H)とした。
【0046】
不織布のKGSM強力、引張伸度:東洋ボールドウイン社製のテンシロン UTM−4−1−100を用い、JIS L−1096に記載のストリップ法にしたがい、 試料幅5cm、試料長20cmの試料片を10個準備し、掴み間隔10cm、引張速度10cm/分で測定した。 その場合の個々の最大の引張強力を平均化し、100g/m2 に換算した値を持ってKGSM強力とした。また、その時の最大伸度を平均化して、引張伸度とした。
【0047】
不織布の引裂強力:JIS−1096に記載のペンジュラム法に準じた。
【0048】
不織布の圧縮剛軟度:試料幅(たて方向)50mm、試料長(横方向)100mmの試料片を横方向に巻いて円筒状とし、東洋ボールドウイン社製のテンシロン UTM−4−1−100を用い、50mm/分の圧縮速度でたて方向に圧縮したときの最大圧縮強度を圧縮剛軟度(g)とした。
【0049】
不織布の寸法安定性:試料幅(たて方向)200mm、試料長(横方向)200mmの試験片中に、たて、横ともに150mmの位置にマーキングを行い、熱風循環型乾燥機における100℃雰囲気下に10分間静置した。その後、各たて、横の長さを測定して熱処理後の面積を算出し、元の面積に対する面積収縮率を求めて、下記のごとく不織布の寸法安定性を評価した。
【0050】
○:面積収縮率が5%以下である
△:面積収縮率が5%を超え10%以下である
×:面積収縮率が10%を超える
【0051】
まず、次の試料をあらかじめ準備した。
a−1:
融点が257℃、テトラクロルエタンとフェノールとの比率が1対1の溶媒で溶解した時の20℃における相対粘度が1.38のポリエチレンテレフタレートのペレットを準備した。
【0052】
a−2:
融点が240℃、テトラクロルエタンとフェノールの比率が1対1の溶媒で溶解した時の20℃における相対粘度が1.42、ポリエチレンテレフタレートに対しイソフタル酸が共重合された共重合ポリエステルのペレットを準備した。
【0053】
b−1:
融点が257℃、テトラクロルエタンとフェノールの比率が1対1の溶媒で溶解したときの20℃における相対粘度が1.30であるポリエチレンテレフタレートのペレットを準備した。
【0054】
b−2:
融点が257℃、テトラクロルエタンとフェノールの比率が1対1の溶媒で溶解したときの20℃における相対粘度が1.42であるポリエチレンテレフタレートからなる長繊維不織布ウェブにアクリル酸エステル共重合体が5重量%塗布されて構成された長繊維不織シート屑を用いて、エレマー社製のプラスティック再生装置RGA−80TEにて、ペレットを製造した。すなわち、シートの屑をシュレッダーにより細断してフレーク状の原料とし、その原料をエクストルーダーに供給し、溶融温度:265℃、ベント流量:110m3 /hr、吐出量:200kg/hrとし、18孔のメルトダイから紡出して水冷し、ストランドを得た。その後、水切りを実施したうえで、ペレタイザーにて約3mmの長さにカットし、ペレットとした。得られたペレットの相対粘度は1.30であった。
【0055】
実施例1
複合紡糸型溶融押し出し装置を適用して、a−1の乾燥ペレットを海部の第1成分とするとともに、b−1、b−2の乾燥ペレットを、第3成分を含む島部の第2成分とした。すなわち、海部の第1成分であるa−1を290℃で溶融し、また、島部の第2成分であるb−1とb−2とを重量比で1:1でブレンドした成分を280℃で溶融した。そして、紡糸温度が285℃、単孔吐出量が1.68g/分、すなわち海部の第1成分が0.84g/min、第3成分を含む島部の第2成分が0.84g/minの割合で、島個数が1個であるいわゆる芯鞘型の紡糸口金を用いて紡出し、エアーサッカーによって5000m/分で牽引した。引き続き、牽引した糸条をコロナ放電により開繊し、コンベアーネット上に堆積してウェブとした。その後、エンボス加工機を用いて、圧着部が円形でかつ圧着点面積が0.68mm2 、圧着面積率が14.9%,圧着点密度が21.9個/cm2 、加工温度が235℃、ロール線圧が40kg/cmとなるようにして、単繊維どうしを部分的に熱圧着させ、それによって長繊維不織布を得た。
【0056】
この不織布を構成する長繊維の単糸繊度は3.0デニールであり、島部の第2成分の中には第3成分としてのアクリル酸共重合体が微細な球状となって均一に分散し、その含有割合は第2成分:第3成分=97.5:2.5(重量比)であった。不織布の目付は50g/m2 であった。
【0057】
長繊維不織布を製造した時の操業性およびその不織布性能を表1に示す。
【0058】
【表1】
【0059】
実施例2
海部の第1成分としてa−2のペレットを280℃で溶融して用いた。また紡糸温度を285℃、エンボス加工時の温度を220℃とした。そして、それ以外は実施例1と同様にして、長繊維不織布を得た。この長繊維不織布を製造した時の操業性およびその不織布性能を表1に示す。
【0060】
実施例3
海部の第1成分としてa−1のペレットを290℃で溶融して用いた。また、島部の第2成分として、b−2のペレットを270℃で溶融した成分を用いた。そして、これらを個別に溶融計量した後、紡糸温度を285℃として複合紡糸を行った。またエンボス加工温度は230℃を適用した。そして、それ以外は実施例1と同様にして、長繊維不織布を得た。
【0061】
この不織布を構成する長繊維の単糸繊度は3.0デニールであり、島部の第2成分には第3成分としてのアクリル酸共重合体が微細な球状となって均一に分散し、その含有割合は第2成分:第3成分=95.0:5.0(重量比)であった。不織布の目付は50g/m2 であった。
【0062】
得られた長繊維不織布を製造したときの操業性およびその不織布性能を表1に示す。
【0063】
実施例4
海部の第1成分としてa−2のペレットを用い、また島部の第2成分としてb−2のペレットを用いた。この結果、長繊維の島部における第2成分と第3成分との含有割合は、実施例3と同様に、第2成分:第3成分=95.0:5.0(重量比)となった。そして、それ以外は実施例2と同様にして、長繊維不織布を得た。得られた長繊維不織布を製造した時の操業性およびその不織布性能を表1に示す。
【0064】
実施例5
海部の第1成分としてa−2のペレットを用い、また島部の第2成分としてb−2のペレットを用いた。海部の第1成分の単孔吐出量は0.57g/分、また島部の第2成分の単孔吐出量は1.13g/分とした。そして、それ以外は実施例4と同様にして、長繊維不織布を得た。得られた長繊維不織布を製造したときの操業性およびその不織布性能を表1に示す。
【0065】
実施例6
海部の第1成分としてa−2のペレットを用い、また島部の第2成分としてb−2のペレットを用いた。そして、単孔吐出量が1.70g/分、すなわち海部の第1成分が0.70g/分、島部の第2成分が1.00g/分となる割合で、かつ島個数が5個であるいわゆる海島型の紡糸口金を用いて紡出し、エアーサッカーによって5000m/分で牽引した。引き続き、牽引した糸条をコロナ放電により開繊し、コンベアーネット上に堆積してウェブとした。そして、それ以外は実施例4と同様にして、長繊維不織布を得た。得られた長繊維不織布を製造したときの操業性およびその不織布性能を表1に示す。
【0066】
実施例7
島部の第2成分として、a−1のペレットとb−2のペレットとを重量比で4:1でブレンドしたものを用いた。またエンボス加工機は、圧着部がT柄、圧着点面積が0.42mm2 、圧着面積率が37%、圧着点密度が64個/cm2 、加工温度が220℃、ロール線圧が40kg/cmとなるようにした。そして、それ以外は実施例6と同様にして、長繊維不織布を得た。
【0067】
この不織布を構成する長繊維の単糸繊度は3.0デニールであり、島部の第2成分には第3成分としてのアクリル酸共重合体が微細な球状となって均一に分散し、その含有割合は第2成分:第3成分=99.0:1.0(重量比)であった。不織布の目付は50g/m2 であった。
【0068】
得られた長繊維不織布を製造したときの操業性およびその不織布性能を表1に示す。
【0069】
実施例8
単孔吐出量が3.90g/分、すなわち海部の第1成分が1.95g/分、島部の第2成分が1.95g/分となる割合で紡出し、糸条の単繊維繊度を7.0デニールとした。
【0070】
そして、それ以外は実施例4と同様にして、長繊維不織布を得た。得られた長繊維不織布を製造したときの操業性およびその不織布性能を表1に示す。
【0071】
実施例9
単孔吐出量が1.16g/分、すなわち海部の第1成分が0.56g/分、島部の第2成分が0.56g/分となる割合で紡出した。またエアーサッカーの牽引速度を低下させて、単繊維繊度を3.0デニールとした。また、エンボス加工機の加工温度が215℃、ロール線圧が50kg/cmとなるようにした。
【0072】
そして、それ以外は実施例4と同様にして、長繊維不織布を得た。得られた長繊維不織布を製造したときの操業性およびその不織布性能を表1に示す。
表1より明らかなように、実施例1および実施例2は、海部の第1成分がポリエチレンテレフタレート、または、ポリエチレンテレフタレートに対しイソフタル酸が共重合された共重合ポリエステルであるとともに、島部の第2成分が低重合度のポリエチレンテレフタレートであり、したがって海部の第1成分が島部の第2成分よりも複屈折率が高く、また島部の中には第3成分としてのアクリル酸共重合体が微細な球状となって均一に分散し、しかも繊維断面が島部の個数が1である海島構造であったため、得られた不織布は、所要の機械的強力を有するとともに柔軟性、寸法安定性に優れたものであった。また紡糸の際における糸切れは少なく、操業性も良好であった。
【0073】
実施例3および実施例4は、実施例1および実施例2に比べ、島部の第2成分が溶融再生されたポリエステルである点が相違していたが、同様の柔軟性や寸法安定性を備えたものであった。また紡糸の際における糸切れは全く無く、操業性も良好であった。
【0074】
実施例5は、実施例4に比べ、島部の第2成分の吐出比を増加させたものである点が相違しており、その分だけ島部と海部との複屈折率のレベル差が広がったが、同様に柔軟性や寸法安定性を備えたものであった。また紡糸の際における糸切れは全く無く、操業性も良好であった。
【0075】
実施例6は、実施例4に比べ、島部の個数が5と多かった分だけさらに柔軟性に優れたものであった。それにもかかわらず、機械的強力や寸法安定性は同程度であった。また紡糸の際における糸切れは少なく、操業性も良好であった。
【0076】
実施例7は、実施例6に比べ、島部の第2成分がポリエチレンテレフタレートと溶融再生されたポリエステルとのブレンドであり、島部中の第3成分の割合を少なくし、かつエンボス柄をT型として圧着面積率をアップしたので、柔軟性はやや低下する方向にあったが、不織布強力が向上した。寸法安定性は同程度であり、紡糸の際における糸切れは全く無く、操業性も良好であった。
【0077】
実施例8は、実施例4に比べ、単繊維繊度をアップしたことによる構成繊維の本数が減少した影響で不織布強力および柔軟性がやや低下する方向にあったが、実用的な不織布性能を有していた。また、紡糸の際における糸切れは全く無く、操業性が良好であった。
【0078】
実施例9は、実施例4に比べ、紡糸時のエアーサッカーによる牽引速度を低下させたので、複屈折率レベルが海部、島部とも低い値を示し、不織布強力、柔軟性、寸法安定性が低下する方向にあったが、海部の第1成分の複屈折率が0.025以上あったため、実用的な不織布性能は保持していた。なお、紡糸の際における糸切れは全く無く、操業性が良好であった。
【0079】
比較例1
実施例1で用いた海部の第1成分すなわちa−1のみを用いて、複合紡糸口金の代わりに単一成分のための紡糸口金により紡糸した。そして、それ以外は実施例1と同様にして、長繊維不織布を得た。得られた長繊維不織布を製造した時の操業性およびその不織布性能を表2に示す。
【0080】
【表2】
【0081】
比較例2
実施例1で用いた海部の第1成分すなわちa−2のみを用いて、複合紡糸口金の代わりに単一成分のための紡糸口金により紡糸した。そして、それ以外は実施例2と同様にして、長繊維不織布を得た。得られた長繊維不織布を製造した時の操業性およびその不織布性能を表2に示す。
【0082】
比較例3
第2成分と第3成分とを含むb−2ペレットのみを用いて、複合紡糸口金の代わりに単一成分のための紡糸口金により紡糸した。このとき、このb−2ペレットを270℃で溶融し、紡糸温度は275℃とした。また不織布化の際のエンボス加工温度を245℃とした。そして、それ以外は実施例1と同様にして、長繊維不織布を製造することを検討した。そのときの操業性およびその結果を表2に示す。
【0083】
比較例4
実施例1で用いた成分を逆成分として用いた。すなわち海部の第1成分としてb−1とb−2とのブレンドペレットを280℃で溶融し、また島部の第2成分としてa−1のペレットを290℃で溶融して用いた。また不織布化の際のエンボス加工温度を230℃とした。
【0084】
そして、それ以外は実施例1と同様にして、長繊維不織布を得た。得られた長繊維不織布を製造したときの操業性およびその不織布性能を表2に示す。
【0085】
比較例5
実施例1で用いた成分を、単孔吐出量が0.84g/分、すなわち海部の第1成分が0.42g/分、島部の第2成分が0.42g/分となる割合で紡出した。またエアーサッカーの牽引速度を2500m/分として、単繊維繊度を3.0デニールとした。さらに、不織布化のためのエンボス加工機の加工温度が220℃となるようにした。
【0086】
そして、それ以外は実施例1と同様にして、長繊維不織布を製造することを検討した。そのときの操業性およびその結果を表2に示す。
【0087】
比較例6
実施例1で用いた成分を、単孔吐出量が2.00g/分、すなわち海部の第1成分が0.67g/分、島部の第2成分が1.33g/分となる割合で紡出した。またエアーサッカーの牽引速度を6000m/分として、単繊維繊度を3.0デニールとした。さらに、不織布化のためのエンボス加工機の加工温度が238℃となるようにした。
【0088】
そして、それ以外は実施例1と同様にして、長繊維不織布を製造することを検討した。そのときの操業性およびその結果を表2に示す。
比較例1〜2は、繊維横断面が本発明のような海島構造となっておらず、単一成分のみを用いた中実構造であったため、製造された不織布の柔軟性に劣るものであった。
【0089】
比較例3は、繊維横断面が本発明のような海島構造となっておらず、第3成分を含む単一材料からなる中実構造であったため、糸切れが頻発して紡糸操業性が悪く、品質の良い長繊維不織布を得ることができなかった。
【0090】
比較例4は、繊維断面は本発明と同様の海島構造となっているが、海部の複屈折率が島部の複屈折率よりも低くなっているため、不織布強力や寸法安定性においては優れているものの、柔軟性に欠けるものであった。
【0091】
比較例5は、牽引速度を低下させたため海部の複屈折率が0.022となり、紡糸時の糸切れ率は低く良好であったものの、エンボス加工機の熱によって同加工機の直前でウェブが収縮を起こし、かつエンボスロールのロール部にウェブが巻き付いて、満足な不織布が得られなかった。
【0092】
比較例6は、牽引速度を増加させたため、海部の複屈折率が0.160、島部の複屈折率が0.122となり、繊維配向が著しく進んだ繊維ウェブを得ることができたが、紡糸時の糸切れが頻発して、糸切れ端が不織布欠点に結びつき、品位の良い不織布を得ることができなかった。
【0093】
【発明の効果】
本発明に係る不織布は、ポリエステル系の第1成分および第2成分からなる海/島型の断面構造を備えた複合長繊維にて構成され、海部の第1成分は、島部の第2成分よりも複屈折率が高く、その複屈折率が0.025〜0.150の範囲であるようにしたため、強力にすぐれしかも柔軟な不織布とすることができる。また寸法安定性にもすぐれる。また、島部の第2成分は、繊維屑やシート屑などを再利用した溶融再生ポリマーで形成できるため、コスト的に有利であるとともに、このような再利用を行わずに埋め立てや焼却などの対象とした場合のような環境破壊を防止するうえで良いものである。さらに島部には、第2成分よりも複屈折率の低い第3成分が分散しているため、きわめて柔軟な不織布とすることができる。したがって本発明の長繊維不織布は、衣料用、産業資材用、土木建築資材用、農芸園芸資材用、生活関連資材用、あるいは医療衛生材用など、種々の汎用的な用途に展開できるものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の不織布を構成する海/島型2成分系複合長繊維の横断面の例を示す図である。
【符号の説明】
1 海部
2 島部
3 第3成分
Claims (5)
- ポリエステル系の第1成分からなる海部と、ポリエステル系の第2成分からなる島部とを有した海/島型の断面構造を備えた複合長繊維にて構成され、前記海部の第1成分は、島部の第2成分よりも複屈折率が高く、その複屈折率が0.025〜0.150の範囲であり、島部の中に、前記第2成分よりも複屈折率が低い第3成分が分散しており、前記第3成分は、アクリル酸エステル共重合体と、アクリル酸−塩化ビニリデン共重合体と、ポリビニルアルコールとからなる群から選ばれたものであり、かつ前記複合長繊維の単繊維どうしが部分的に熱圧着されて構成されていることを特徴とするポリエステル系長繊維不織布。
- 海部の第1成分が島部の第2成分よりも相対粘度が高いことを特徴とする請求項1記載のポリエステル系長繊維不織布。
- 島部の数が1〜8個であることを特徴とする請求項1または2記載のポリエステル系長繊維不織布。
- 海/島型の複合紡糸口金を用いて、ポリエステル系の第1成分からなる海部を有するとともに、ポリエステル系の第2成分を含む島部を有した海/島型の断面構造を備えた複合長繊維を紡出し、この紡出された複合長繊維の単繊維どうしを部分的に熱圧着させて、長繊維不織布を製造するに際し、前記海部の第1成分として、島部の第2成分よりも複屈折率が高く、その複屈折率が0.025〜0.150の範囲であるポリエステル系成分を用い、かつ、アクリル酸エステル共重合体と、アクリル酸−塩化ビニリデン共重合体と、ポリビニルアルコールとからなる群から選ばれ第2成分よりも複屈折率が低い第3成分が第2成分の中に分散されて紡出された糸条からなる素材を、前記島部に用いることを特徴とするポリエステル系長繊維不織布の製造方法。
- 島部の第2成分として、溶融再生されたポリエステル系成分であってバインダー成分を含むものを用い、このバインダー成分を第3成分とすることを特徴とする請求項4記載のポリエステル系長繊維不織布の製造方法。
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