JP4463933B2 - フィルター用不織布 - Google Patents
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Description
【発明が属する技術分野】
本発明は、機械的特性、寸法安定性に優れ、且つ家庭、事務所用空調機フィルター、産業用の粉塵捕集用フィルター等として用いた場合フィルター性能に優れたフィルター用不織布に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来から、フィルター用不織布にはニードルフェルトがよく用いられている。しかし、良好なフィルター性能を得るためには、目付を高くしなければならず、原料コストが高くなるという問題がある。
【0003】
また、フィルター材として用いられる不織布は、濾過面積を大きくし、粉塵捕集能力を向上させるためにプリーツ加工を行っている。プリーツ加工を良好に行うためには、剛性等の機械的強度や加工時の寸法安定性等の要求性能が必要とされ、それを満足する手段として、目付を高くしたり、繊維径を大きくする等行われている。また、特開平8−100372号公報には高融点成分をポリエチレンテレフタレート、低融点成分を共重合ポリエステルとした混繊方式あるいは、芯成分が高融点成分で鞘成分が低融点成分である芯鞘複合方式により集積されエンボス加工されたものが開示されている。しかし、この技術によればプリーツ加工性を重視しているため、構成繊維の断面形状については、特に記載がなく通常の丸断面で通常汎用の太さ(1〜10デニール)のものであるため、粉塵、特に微細粉塵の捕集性に劣るという欠点がある。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
そこで、本発明は上述したようなフィルター基材の問題点を解決し、後工程での加工性が良好で毛羽発生の少なく、かつ粉塵捕集性能を向上させたフィルター用不織布を提供しようとするものである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、前記問題を解決すべく鋭意検討の結果、本発明に到達した。すなわち、本発明は、プリーツ加工が施されるフィルターに用いるための不織布であり、融点差が20℃以上である2種の熱可塑性重合体よりなり、高融点重合体がポリエチレンテレフタレート、低融点重合体が共重合ポリエステル(ただし、脂肪族ポリエステルは除く。)であり、繊維断面において少なくとも一つ以上の窪み部を有し、下式のA値が0.9以下である異形複合長繊維で構成された長繊維不織布で、繊維断面が、(1)高融点重合体を芯部とし、芯部の回りに多数の低融点重合体からなる葉部を有し、両重合体が共に繊維表面に露出している多葉型複合断面、(2)低融点重合体を芯部とし、芯部の回りを多数の高融点重合体からなる突起部分が覆ってなる異形芯鞘型複合断面、(3)C型形状で低融点重合体と高融点重合体とが貼り合せてなるサイドバイサイド型の異形複合断面のいずれかの形態を採用したものであり、
長繊維不織布が部分熱圧接部を有し、部分熱圧接部において低融点重合体が溶融または軟化することにより構成繊維同士を接着させ、全体として一体化していることを特徴とするフィルター用不織布。
A=r/Rr:繊維断面における内接円の半径R:繊維断面における外接円の半径
【0006】
【発明の実施の形態】
次に本発明を詳細に説明する。
本発明における長繊維不織布を構成する長繊維は、融点差が20℃以上である2種の熱可塑性重合体よりなる。
【0007】
本発明において、長繊維を構成する熱可塑性重合体は、繊維形成性を有するものであるポリエステル系重合体である。
【0008】
ポリエステル系重合体としては、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタリン−2,6−ジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸を酸成分とし、かつエチレングリコール、ジエチレングリコール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、シクロヘキサン−1,4−ジメタノール等のジオール化合物をエステル成分とするホモポリエステル重合体あるいは共重合体が挙げられる。なおこれらのポリエステル系重合体には、パラオキシ安息香酸、5−ナトリウムスルホイソフタール酸、ポリアルキレングリコール、ペンタエリスリトール、ビスフェノールA等が添加あるいは共重合されていてもよい。
本発明においては、高融点重合体はポリエチレンテレフタレート、低融点重合体は共重合ポリエステル(ただし、脂肪族ポリエステルは除く。)を用いる。
【0012】
また、前記ポリエステル系重合体には必要に応じて、例えば艶消し剤、顔料、防炎剤、消臭剤、光安定剤、熱安定剤、酸化防止剤等の各種添加剤を本発明の効果を損なわない範囲内で添加することができる。
【0013】
異形複合長繊維を構成する2種の熱可塑性重合体は、融点差(融点がないものについては軟化点差)が20℃以上であることが必要である。融点差が20℃未満であると熱圧接時に高融点重合体までもが溶融または軟化して圧接ロールにシートがとられる等によって、操業性が低下するため好ましくない。
【0014】
本発明における異形複合長繊維は、繊維断面において少なくとも一つの窪み部を有し、下式のA値が0.9以下である。
A=r/R(r:繊維断面における内接円の半径、R:繊維断面における外接円の半径)
異形複合長繊維は、特定の異形度のものであり、かつ少なくとも一つ以上の窪み部を有しているので、従来の丸断面の繊維からなるフィルターと比較して、繊維の表面積が広くなり、粉塵と接触する面積が高く、粉塵の捕集性が向上する。また、捕集した粉塵を、窪み部に溜めこむことができるため、粉塵捕集性能がより向上し、優れたフィルター性能を有するものとなる。
【0015】
本発明で用いる窪み部を少なくとも一つ以上有する異形複合長繊維の断面形状の一例を図1〜3に示す。
【0016】
図1は、高融点重合体からなる芯部の回りに多数の低融点重合体からなる葉部を有しており、両重合体が共に繊維表面に露出している多葉型複合断面である。芯部と葉部の複合比率は、より好ましくは芯/葉=40/60〜80/20が良い。
【0017】
図2は、低融点重合体を芯部とし、芯部の回りに多数の高融点重合体からなる突起部分が、芯部を実質的に覆ってなる異形芯鞘型複合断面である。6つの突起部分を有する複合断面(a)と4つの突起部分を有する複合断面(b)を示した。低融点重合体を芯部に配することにより、繊維表面は高融点重合体に覆われることとなり、フィルターを高温化で使用の際に適した耐熱性のあるものとなる。芯部に低融点重合体を配した場合、熱圧接点では、圧接の際の圧力により、鞘部に亀裂を生じさせることにより、溶融または軟化した芯部の低融点重合体を十分に露出させて、構成繊維同士を接着させることが重要である。露出度合いが少ないと、繊維同士の接着が不十分となり、毛羽立ちの発生や剛性の不足によりプリーツ加工性が劣る傾向となる。したがって、芯部に低融点重合体を配する場合の芯鞘複合比率は、芯/鞘=45/55〜25/75が好ましい。芯部の比率が45を超えると、十分な窪み部を有する異形芯鞘形状が得られないため好ましくない。一方、芯の比率が25未満であると、鞘部の肉厚が厚くなり圧接時に鞘部に亀裂が生じにくいため、芯部の低融点成分が十分に露出することができず、接着困難および接着不足となり、毛羽の発生やプリーツ加工性に劣る傾向となるため好ましくない。
【0018】
図3は、C型形状で低融点重合体と高融点重合体とが貼り合せてなるサイドバイサイド型の異型複合断面図である。
【0019】
図1〜2のように、繊維表面に複数の突起を有して、その突起間に窪みを生じさせてもよい。このような突起の数は、3〜8個が好ましい。突起の数が3個未満であると窪み部で微細粉塵を捕集する効果に劣る傾向となるため好ましくない。一方、突起の数が8個を超えると、繊維の製造において紡糸が安定しないため好ましくない。より好ましい突起の数は、4〜7個である。
【0020】
A値は繊維断面形状の異形度を示すものであって、このA値が1に近づく程、窪み部の窪みが浅いものとなり、一方、A値が小さくなるほど、窪み部の窪み深さが大きいものとなる。A値が、0.9を超えると、繊維の異形度が減じ、窪み部の窪みが浅く、粉塵を溜めこむことができず、窪み部を有する効果がなくなる。一方、A値の下限については特に限定されないが、0.3程度とすることが好ましい。A値が0.3未満になると、繊維の窪み部分に微細粉塵を捕集する効果は向上するものの、繊維を製造する際の紡糸性が安定しない傾向となる。
【0021】
異形複合長繊維の断面形状において、表面に2種の熱可塑性重合体が共に露出している場合は、互いに相溶性を有していることが好ましい。互いに非相溶性であると、フィルターとして使用の際に、重合体同士の境界面で繊維が分割して極細繊維を発生し、それが使用時に毛羽となって、長期に亘る使用に問題が生じるため好ましくない。
【0022】
本発明における異形複合長繊維不織布を構成する繊維の繊度は2〜15デシテックスの範囲にあるのが好ましい。繊度が2デシテックス未満であると繊維の剛性が低くなりプリーツ加工性に劣る傾向となる。一方、繊度が15デシテックスを超えると、紡糸性が不安定になり、また、繊維間の空隙が大きくなるため、粉塵捕集性能が低下する傾向となる。これらの理由から、構成繊維の繊度は、3〜10デシテックスがより好ましい。
【0023】
本発明のフィルター用不織布の目付は、80〜400g/m2が好ましい。目付が80g/m2未満であると、不織布の剛性が低く加工性に劣る傾向となる。一方、目付が400g/m2を超えると圧接による一体化が不十分となり、毛羽が立ちやすく加工や使用において取り扱いにくいばかりか、コスト的にも高価なものとなる。これらの理由から、より好ましい目付範囲は、120〜350g/m2である。
【0024】
本発明のフィルター用不織布は、部分熱圧接部を有し、部分熱圧接部において低融点重合体が溶融または軟化することにより構成繊維同士を一体化している。部分熱圧接する方法としては、エンボス装置等に通して部分的熱圧接する方法、超音波融着機に通して部分的に熱融着する方法等を効果的に用いることができる。この熱圧接により、エンボスロールの凸部に当接する部位に存在する低融点重合体が溶融または軟化することによって樹脂化し、構成繊維同士を接着させて一体化する。したがって、得られる長繊維不織布は、機械的特性、寸法安定性が向上し、かつ適度の剛性を有しプリーツ加工性が良好なものとなる。
【0025】
部分的熱圧接部は、不織布の全表面積に対して5〜40%、より好ましくは10〜30%の領域を有し、個々の熱圧接部の面積は0.1〜1.0mm2、その圧接部密度が4〜80個/cm2、より好ましくは10〜60個/cm2である。部分的熱圧接部の領域が、5%未満、あるいは圧接部密度が4個/cm2未満であると、長繊維不織布の機械的特性や形態保持性が向上せず、剛性が不足するため加工性に劣る傾向となる。一方、部分的熱圧接部の領域が、40%を超える、あるいは圧接点密度が80個/cm2を超えると、繊維間空隙が小さくなりすぎて、フィルターとして用いた際に、すぐに捕集した粒子による目詰まりを起こし、長期に亘って使用できないものとなる。
【0026】
本発明のフィルター用不織布は、以下に示す粉塵捕集効率の測定方法において70%以上の粉塵捕集性能を備えていることが好ましい。すなわち、平均粒子径0.5μmのラテックスの粉塵を15mg/m3の濃度で含む空気を風速6.0m/分の速度で内径110mmの筒中を通過させ、この筒中に空気流を遮るように試料を張設し、その前後において空気中の粉塵濃度を光学レーザーダイオードを光源とする前方散乱受光式のデジタル表示粉塵計により測定する。そして試料片通過前の粉塵濃度(A)及び試料片通過後の粉塵濃度(B)測定し、次の式により捕集性能を測定し、その平均値を粉塵捕集性能(%)とする。
【0027】
粉塵捕集性能(%)=[(A−B)/A]×100
この粉塵捕集性能が70%未満であると、本発明における粉塵捕集性の良好なフィルター用不織布を得るという目的を達することができるものと言い難い。
【0028】
次に、本発明のフィルター用不織布の製造方法について説明する。
本発明のフィルター用不織布の製造は、通常の複合紡糸装置を用いて行うことができる。まず、融点差が20℃以上である2種の熱可塑性重合体を溶融し、該2成分を個別に計量し、異形複合紡糸口金より異形複合長繊維を紡出する。該異形複合長繊維は、従来公知の冷却装置を用いて冷却する。次いで、エアーサッカーを用いて目標繊度となるよう牽引・細化して引き取る。この際の牽引速度は、用いる重合体にもよるが、3000m/分以上、好ましくは3500m/分以上である。また、重合体の組み合わせによっては、4000m/分以上に設定し、適宜選択することが好ましい。牽引・細化した長繊維は従来公知の開繊器具にて開繊せしめた後、スクリーンコンベア等の移動式捕集面上に開繊堆積させて異形複合長繊維ウエブを形成する。
【0029】
次いで、該異形複合長繊維ウエブをエンボス装置や超音波融着装置に通布して、部分的熱圧接処理を行う。この際の加工温度は、[低融点重合体の融点(融点を有さないものについては軟化点)+10]℃以下〜[融点−40]℃と設定する。加工温度が、[低融点重合体の融点+10]℃を超えると、熱融着機に樹脂が固着し操業性を著しく損ない好ましくない。一方、[低融点重合体の融点−40]℃以下の温度では、低融点重合体が十分に溶融または軟化していため、十分に圧接されず好ましくない。
【0030】
【実施例】
次に、実施例に基づき本発明を具体的に説明するが、本発明は、これらの実施例によって何ら限定されるものではない。
【0031】
(1)融点(℃):パーキンエルマー社製示差走査型熱量計DSC−2型を用い、昇温速度20℃/分の条件で測定し、得られた融解吸熱曲線において極値を与える温度を融点とした。
【0032】
(2)メルトインデックス:ASTM−D−1238(E)に記載の方法に準じて測定した。
【0033】
(3)相対粘度▲1▼:ポリエチレンテレフタレートの相対粘度を次の方法によって測定した。フェノールと四塩化エタンの等量混合液を溶媒とし、この溶媒100cm3に試料0.5gを溶解し温度20℃の条件で常法により測定した。
【0035】
(4)不織布の目付(g/m2):標準状態の試料から縦10cm×横10cmの試料片を10点作成し、平衡水分に到らしめた後、各試料片の質量(g)を秤量し得られた値の平均値を単位面積(m2)当たりに換算し目付(g/m2)とした。
【0036】
(5)不織布の引張強力(N/5cm):JIS−L−1096Aに記載の方法に準じて測定した。試料長が10cm、試料幅が5cmの試料片10点を作成し、各試料片毎に縦、横両方向について、定速伸長型引張試験機(東洋ボールドウィン社製テンシロンRTM−500)を用い引張速度20cm/分で伸長し、得られた切断時荷重(N/5cm)の平均値を引張強力(N/5cm)とした。
【0037】
(6)A値:不織布を構成する繊維の断面を電子顕微鏡にて撮影し、20個の繊維断面の外接円の半径Rと内接円の半径rを測定しそれぞれr/R(=A)を算出し20個の平均をA値とした。
【0038】
(7)粉塵捕集性能1(%):試料長が15cm、試料幅が15cmの試料片5点を作成し、平均粒子径0.5μmのラテックスの粉塵を15mg/m3の濃度で含む空気を風速6.0m/分の速度で内径110mmの筒中を通過させ、この筒中に空気流を遮るように張設された各試料片毎に、その前後において空気中の粉塵濃度を光学レーザーダイオードを光源とする前方散乱受光式のデジタル表示粉塵計により測定する。そして試料片通過前の粉塵濃度(A)及び試料片通過後の粉塵濃度(B)を小数点以下4桁まで測定し、次の式により捕集性能を測定し、その平均値を粉塵捕集性能(%)とした。
捕集捕集性能(%)=[(A−B)/A]×100
【0039】
(8)粉塵捕集性能2(%):平均粒子径を0.1μmの粉塵を使用したこと以外は粉塵捕集性能1と同様に測定した。この粉塵捕集性能2においては、30%以上であることが好ましい。
【0040】
(9)毛羽立性:JIS−L−1096Cに記載の方法に準じて測定した。すなわち、直径13cmの円形試験片を5枚作成し、各試験片の中心に直径約6mmの孔を開け、テーバ形摩耗試験機を用い、試験片の表面を上にして試料ホルダ上に取り付ける。荷重250gの摩耗輪を試験片の上に載せて50回摩擦した後外観を観察し判定した。判定結果が3級より良好であれば使用上問題なしと判定する。
【0041】
(10)加工性:巾100cmのシートをプリーツ加工機で折り曲げ、ピッチ25mmとなるようプリーツ加工し下記のように判定した。
○:プリーツが鋭角で均一である△:プリーツがやや不均一であるが、加工上問題ない。
×:プリーツが不均一で、加工上問題がある。
【0042】
実施例1
イソフタル酸を8モル%共重合した共重合ポリエステル(融点230℃、相対粘度1.44)と、ポリエチレンテレフタレート(融点256℃、相対粘度1.38)とを用い、スパンボンド法により多葉型複合長繊維不織布を製造した。すなわち、前記両重合体を個々のエクストルーダ型溶融押出し機を用いて、繊維断面が図1となる、すなわちポリエチレンテレフタレートを芯部に、共重合ポリエステルを6個の葉部に配してなり、両成分が繊維表面に露出する繊維断面となる紡糸口金を通して多葉型複合長繊維を溶融紡出した。溶融紡糸に際し共重合ポリエステルの溶融温度を265℃、ポリエチレンテレフタレート重合体の溶融温度を285℃とし、単孔吐出量=2.0g/分、複合比が芯/葉=65/35の条件下にて溶融複合紡出した。溶融紡出された糸条を公知の開繊器具を用いて開繊し移動する捕集面上に捕集・堆積させて多葉型複合長繊維不織ウエブとした。単糸繊度4.0デシテックス、目付200g/m2とした。
【0043】
次に、面積が0.6mm2の彫刻模様が、圧接点密度20個/cm2かつ圧接面積率12%で配設されたエンボスロールと、表面が平滑な金属ロールとからなるエンボス装置を用いて、両ロールの表面温度を200℃、両ロール間の線圧を490N/cmと設定して、部分的熱圧接処理を施して、本発明のフィルター用不織布を得た。
【0044】
実施例2
実施例1と同様の2種の重合体を用い、繊維断面が図2(a)となる異形複合紡糸口金を用い、共重合ポリエステルを芯部に、ポリエチレンテレフタレートを鞘部に配して、単孔吐出量=1.58g/分、複合比(質量比)芯/鞘=40/60の条件下にて溶融紡糸した以外は、実施例1と同様して、異形芯鞘複合長繊維不織ウェブを得た。単糸繊度3.5デシテックス、目付150g/m2とした。部分的熱圧接処理のロール表面温度を210℃とした以外は実施例1と同様に部分的熱圧接処理を施し、本発明のフィルター用不織布を得た。
【0047】
実施例3
実施例1において、図3に示すごとき断面形状となるような口金を用いて、ポリエチレンテレフタレートとポリエステル重合体とをサイドバイサイド型になるように配し、複合比が1/1、単孔吐出量=1.5g/分の条件下で溶融紡糸したこと、単糸繊度3.0デシテックス、目付150g/m2としたこと以外は、実施例1と同様にして、本発明のフィルター用不織布を得た。
【0048】
比較例1
ポリエチレンテレフタレート(融点256℃、相対粘度1.38)を用い、スパンボンド法により長繊維不織布を製造した。すなわち、通常公知の紡糸口金(繊維断面が丸断面となる口金)を用い、前記重合体をエクストルーダ型溶融押出し機より、単孔吐出量=2.0g/分にて溶融紡糸した。単糸繊度4.0デシテックス、目付150g/m2とした。部分的熱圧接処理においては、ロール表面温度を235℃とした以外は、実施例1と同様にして熱圧接処理を行って、長繊維不織布を得た。
【0049】
比較例2
実施例1において、紡糸口金を丸断面の芯鞘型複合紡糸口金とし、芯部にポリエチレンテレフタレート、鞘部に共重合ポリエステルを配し、芯鞘複合比(質量比)を50/50とした以外は、実施例1と同様にして、複合長繊維不織布を得た。
【0050】
比較例3
実施例2において、紡糸口金を丸断面の芯鞘型複合紡糸口金としたこと、ポリエチレン重合体(融点130℃、メルトインデックス20g/10分)を芯部に配したこと、単孔吐出量=1.1g/分、複合比(質量比)芯/鞘=35/65の条件下にて溶融紡糸したこと、単糸繊度3.1デシテックス、目付160g/m 2 としたこと、ロール表面温度を125℃としたこと以外は、実施例2と同様にして複合長繊維不織布を得た。
【0051】
得られた実施例1〜3、比較例1〜3の物性を表1に示す。
【0052】
【表1】
【0053】
表1より、実施例1〜3の本発明のフィルター用不織布は、構成繊維が一つ以上の窪み部を有しているので、適度な繊維間空隙を有し、かつ窪み部で微細粉塵を捕集することができるため、優れた粉塵捕集性能を有するものであり、特に微細粉塵の捕集性が向上した。さらに、部分的熱圧接部にて、低融点重合体が溶融または軟化により樹脂化しているため、適度な剛性を有し、加工性にも優れたものであった。
【0054】
特に、実施例2においては、部分的熱圧接部では、低融点重合体が露出して樹脂化し、構成繊維を接着しているものの、部分的熱圧接部以外の区域においては、高融点重合体が繊維表面を覆っているため、実施例1の不織布と比較し、より高温での使用に耐えることができ、高温雰囲気下での使用が可能となったものである。
【0056】
一方、比較例1の不織布は、単一の重合体よりなるものであるので、部分的熱圧接部における構成繊維同士の一体化が不十分であり、毛羽が発生しやすいものであった。また、繊維断面においても、丸断面であるため、微細粉塵の捕集性が劣り、本発明の目的とする不織布ではなかった。
【0057】
比較例2は、通常公知の低融点成分が鞘部に配されている芯鞘型複合長繊維不織布であり、繊維断面が丸であるため微細粉塵の捕集性が劣り、また、圧接の効きが悪く層間剥離が発生し、本発明の目的とする不織布ではなかった。
【0058】
比較例3は、高融点重合体が鞘部に配した断面丸の芯鞘型複合長繊維からなる不織布であり、繊維断面が丸であるため微細粉塵の捕集性が劣り、また、圧接部において、低融点重合体の露出が少ないため構成繊維同士の一体化が十分であるため、毛羽の発生しやすいく、本発明の目的とする不織布ではなかった。
【0059】
【発明の効果】
本発明によれば、フィルター用不織布の構成繊維が、融点が20℃以上異なる2種の熱可塑性重合体から構成される複合長繊維であって、繊維断面において、一つ以上の窪み部を有し、特定の異形度を有するものであるので、繊維の表面積が大きくなり、粉塵と接触しやすく、捕集性が向上する。さらに窪み部において、微細粉塵を捕集・溜めこむことができるため、微細粉塵の捕集性が向上する。
【0060】
また、フィルター用不織布は、低融点重合体が溶融または軟化してなる部分熱圧接部を有しているため、機械的強度、寸法安定性が良好で、プリーツ加工性に優れたフィルター用不織布を得ることができたものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明に用いる窪み部を有する複合長繊維の横断面形状の一例を示す模式図である。
【図2】本発明に用いる窪み部を有する複合長繊維の横断面形状の一例を示す模式図である。
【図3】本発明に用いる窪み部を有する複合長繊維の横断面形状の一例を示す模式図である。
【符号の説明】
1:窪み部
r:繊維断面における内接円の半径
R:繊維断面における外接円の半径
Claims (1)
- プリーツ加工が施されるフィルターに用いるための不織布であり、融点差が20℃以上である2種の熱可塑性重合体よりなり、高融点重合体がポリエチレンテレフタレート、低融点重合体が共重合ポリエステル(ただし、脂肪族ポリエステルは除く。)であり、繊維断面において少なくとも一つ以上の窪み部を有し、下式のA値が0.9以下である異形複合長繊維で構成された長繊維不織布で、繊維断面が、(1)高融点重合体を芯部とし、芯部の回りに多数の低融点重合体からなる葉部を有し、両重合体が共に繊維表面に露出している多葉型複合断面、(2)低融点重合体を芯部とし、芯部の回りを多数の高融点重合体からなる突起部分が覆ってなる異形芯鞘型複合断面、(3)C型形状で低融点重合体と高融点重合体とが貼り合せてなるサイドバイサイド型の異形複合断面のいずれかの形態を採用したものであり、
長繊維不織布が部分熱圧接部を有し、部分熱圧接部において低融点重合体が溶融または軟化することにより構成繊維同士を接着させ、全体として一体化していることを特徴とするフィルター用不織布。
A=r/Rr:繊維断面における内接円の半径R:繊維断面における外接円の半径
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