JPH07207566A - 積層不織布及びその製造方法 - Google Patents

積層不織布及びその製造方法

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Publication number
JPH07207566A
JPH07207566A JP5352143A JP35214393A JPH07207566A JP H07207566 A JPH07207566 A JP H07207566A JP 5352143 A JP5352143 A JP 5352143A JP 35214393 A JP35214393 A JP 35214393A JP H07207566 A JPH07207566 A JP H07207566A
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JP
Japan
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polyester
nonwoven fabric
ultrafine
fibers
polymer
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JP5352143A
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English (en)
Inventor
Koichi Nagaoka
孝一 長岡
Chikayuki Fukushima
周之 福島
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Unitika Ltd
Original Assignee
Unitika Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【目的】 剥離強力が高く、柔軟性に富み、良好なフィ
ルター性能を持ち、且つ引張強力や引張伸度等の機械的
特性にも優れている積層不織布及びその製造方法を提供
する。 【構成】 この積層不織布は、極細繊維不織布と長繊維
不織布とが、積層され貼合されてなる。極細繊維不織布
は、繊維0.7デニール以下のポリエステル系極細繊維が
集積されてなる。この極細繊維は、ポリエステル系重合
体70〜95重量%とポリプロピレン系重合体30〜5重量%
との混合樹脂を使用して、メルトブローン法で得られる
ものである。極細繊維は、その横断面において、ポリエ
ステル系重合体が略鞘部を構成し、ポリプロピレン系重
合体が略芯部を構成している。一方、長繊維不織布は、
極細繊維の繊度よりも大きい繊度を持つポリエステル系
長繊維が集積されてなる。ポリエステル系極細繊維と、
ポリプロピレン系長繊維とは、所定の区域において、融
着されて、両不織布が貼合されているのである。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、ポリエステル系極細繊
維よりなる不織布と、ポリエステル系長繊維よりなる不
織布とを積層して一体化した積層不織布及びその製造方
法に関し、特に、柔軟性に優れると共に、引張強力及び
層間剥離強力が高く、且つ良好なフィルター性能を有
し、医療・衛生材料、衣料用、生活関連資材用、産業資
材用等の広範な用途に使用することのできる積層不織布
及びその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来より、極細繊維不織布と長繊維不織
布とを積層して一体化することは、広く行われているこ
とである。この積層・一体化は、主として、以下のよう
な理由から行われている。即ち、極細繊維不織布は、極
細繊維の集積体であるため、フィルター特性に優れてい
る(細かい塵埃を除去しうるということ。)反面、引張
強度等の機械的特性に劣っている。一方、長繊維不織布
は、一般に極細繊維の繊度よりも大きい繊度を持つ長繊
維が集積されてなるものであるため、引張強度等の機械
的特性に優れている。従って、フィルター特性に優れて
おり、且つ機械的特性に優れているという性質を併有す
る不織布を得るために、極細繊維不織布と長繊維不織布
とを積層・一体化するのである。
【0003】極細繊維不織布と長繊維不織布とを積層・
一体化するには、以下の如き方法が採用されている。例
えば、(1)両不織布を積層した後、ニードルパンチを施
すことによって、極細繊維と長繊維とを交絡させて、一
体化する方法、(2)両不織布を積層した後、高圧水流を
施して、極細繊維と長繊維とを交絡させて、一体化する
方法、(3)両不織布を積層した後、一定の区域に熱を付
与して、その区域に存在する極細繊維及び/又は長繊維
を軟化又は溶融させて、極細繊維と長繊維とを融着させ
て、一体化する方法が採用されている。
【0004】しかし、(1)の方法は、ニードル針によっ
て、極細繊維及び長繊維を針の移動方法(不織布の厚み
方向)に運動させて、相互に絡ませるものであるため、
単位面積当りの極細繊維量又は長繊維量が少ないと、ニ
ードル針に両繊維が引っ掛りにくく、十分に両繊維を交
絡させることができないという憾みがあった。従って、
低目付の極細繊維不織布あるいは長繊維不織布を使用す
ると、層間剥離強力の高い積層不織布を得ることはでき
なかった。(2)の方法は、高圧水流によって、極細繊維
及び長繊維を運動させて、相互に絡ませるものであるた
め、単位面積当りの極細繊維量又は長繊維量が少なくて
も、ニードル針を使用した場合の欠点は生じにくい。し
かし、逆に、単位面積当りの極細繊維量又は長繊維量が
多いと、高圧水流の圧力が内部にまで、十分伝達されな
いという憾みがあった。従って、高目付の極細繊維不織
布あるいは長繊維不織布を使用すると、層間剥離強力の
高い積層不織布を得ることはできなたっ。また、(1)及
び(2)の方法の場合には、ニードル針の移動方法等の不
織布の厚み方向に、極細繊維等を運動させ配列させるも
のであるため、積層不織布の層間を強固に交絡させるよ
うとすると、徐々に積層不織布の繊維密度が高くなって
ゆくということがあった。従って、通気性が不良とな
り、フィルター材として使用できない積層不織布になる
という欠点があった。更に、極細繊維は引張強力が低い
ため、ニードル針に引っ掛けたとき、あるいは高圧水流
によって高い水圧が負荷されたときに、切断してしま
い、積層不織布中から脱落してゆくという欠点もあっ
た。
【0005】このようなことから、積層不織布をフィル
ター材として使用したい場合には、上記した(3)の方法
が一般的に好ましいと考えられている。この方法を採用
する場合には、一般的に、極細繊維不織布を構成する繊
維と、長繊維不織布を構成する長繊維とは、同種である
必要があった。何故なら、異種繊維同士であると、相溶
性が悪く、強固な融着が図れず、極細繊維不織布と長繊
維不織布とが剥離しやすくなるからである。従って、例
えば、両繊維としていずれもポリプロピレン系繊維を採
用することが行われている。しかしながら、ポリプロピ
レン系極細繊維とポリプロピレン系長繊維とを融着させ
ようとすると、極細繊維不織布が収縮したり、あるいは
熱を付与していない区域においても極細繊維が軟化又は
溶融するということがあった。極細繊維不織布が収縮す
ると、長繊維不織布との寸法が合致しなくなり、積層不
織布にシボや皺が発生するという欠点があった。また、
熱を付与していない区域において、極細繊維が軟化又は
溶融すると、全体的に極細繊維同士が融着してしまい、
通気性が不良となり、フィルター材として使用できない
積層不織布になってしまうという欠点があった。これ
は、ポリプロピレン系極細繊維の場合、熱的性質の劣化
が著しいからあると考えられる。
【0006】このため、比較的、熱的性質が劣化しにく
い、ポリエステル重合体を使用することが提案されてい
る。即ち、ポリエステル極細繊維よりなる極細繊維不織
布と、ポリエステル長繊維よりなる長繊維不織布とを積
層し、一定の区域に熱を付与して、その区域に存在する
ポリエステル極細繊維及びポリエステル長繊維を軟化又
は溶融させて、極細繊維と長繊維とを融着させ、両不織
布を貼合する方法が考えられている。しかしながら、ポ
リエステル極細繊維は、熱的性質の劣化は少ないもの
の、極細繊維特有の柔軟性に欠けるという欠点があっ
た。従って、極細繊維不織布と長繊維不織布とを良好に
且つ強固に貼合することはできるものの、柔軟性に欠
け、風合の硬い積層不織布しか得られないという欠点が
あった。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】そこで、本発明は、極
細繊維として、鞘部に熱的性質に優れるポリエステル重
合体が偏在しており、芯部に柔軟性に優れるポリプロピ
レン系重合体が偏在しているものを使用することによっ
て、ポリエステル系長繊維不織布と強固に融着し、高剥
離強力で貼合されると共に、柔軟性に優れ、風合の良好
な積層不織布を提供しようというものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】即ち、本発明は、繊度0.
7デニール以下のポリエステル系極細繊維が集積されて
なる極細繊維不織布と、該ポリエステル系極細繊維の繊
度よりも大きい繊度を持つポリエステル系長繊維が集積
されてなる長繊維不織布とが貼合されてなる積層不織布
であって、該ポリエステル系極細繊維は、ポリエステル
系重合体70〜95重量%とポリプロピレン系重合体30〜5
重量%との混合樹脂によって形成されていると共に、該
ポリエステル系極細繊維の横断面において、該ポリエス
テル系重合体が略鞘部を構成し、該ポリプロピレン系重
合体が略芯部を構成しており、該ポリエステル系極細繊
維と該ポリエステル系長繊維とが所定の区域において融
着することによって、該極細不織布と該長繊維不織布と
が貼合されていることを特徴とする積層不織布に関する
ものである。
【0009】本発明で使用する極細繊維不織布は、ポリ
エステル系重合体とポリプロピレン系重合体とを混合し
た混合樹脂を使用して、得られるものである。ポリエス
テル系重合体の例としては、酸成分としてテレフタル
酸、イソフタル酸、フタル酸、ナフタリン-2・6-ジカル
ボン酸等の芳香族ジカルボン酸、又はアジピン酸、セバ
シン酸等の脂肪族ジカルボン酸、及びこれらのエステル
類を使用し、アルコール成分としてエチレングリコー
ル、ジエチレングリコール、1・4-ブタンジオール、ネオ
ペンチルグリコール、シクロヘキサン-1・4-ジメタノー
ル等のジオール化合物を使用し、両者を縮合させて得ら
れるホモポリエステル又は共重合ポリエステルが挙げら
れる。また、このポリエステル等において、パラオキシ
安息香酸、5-ソジュームスルフオイソフタール酸、ポリ
アルキレングリコール、ペンタエリスリトール、ビスフ
ェノールA等が添加されていてもよいし、あるいは共重
合されていてもよい。
【0010】ポリプロピレン系重合体の例としては、主
として一般に繊維形成用として使用されている結晶性ポ
リプロピレン重合体が使用される。また、エチレン成分
が8重量%以下共重合されたポリプロピレン系共重合
体、あるいはこれと結晶性ポリプロピレン重合体とが混
合されたものも使用される。エチレン成分が8重量%を
超えると、ポリプロピレン系重合体の融点が降下しすぎ
て、得られた極細繊維不織布を使用して積層不織布を得
る際に熱を付与すると、収縮しやすくなる傾向が生じ
る。なお、このポリプロピレン系重合体を使用して、メ
ルトブローン法で極細繊維を得た場合、上記したポリエ
ステル系重合体を使用した場合に比較して、極細繊維の
結晶化の程度は高くなるものである。
【0011】上記したポリエステル系重合体及び/又は
ポリプロピレン系重合体には、本発明の目的を阻害しな
い範囲で、艶消し剤、顔料、防炎剤、消臭剤、帯電防止
剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤等の任意の添加物が添加
されていてもよい。
【0012】ポリエステル系重合体とポリプロピレン系
重合体とを混合して混合樹脂を得る際、両者の混合割合
は、次のとおりである。即ち、ポリエステル系重合体を
70〜95重量%と、ポリプロピレン系重合体を30〜5重量
%とを混合するのである。特に、ポリエステル系重合体
が75〜92重量%でポリプロピレン系重合体が25〜8重量
%であるのが好ましく、更にポリエステル系重合体が80
〜90重量%でポリプロピレン系重合体が20〜10重量%で
あるのが最も好ましい。ポリプロピレン系重合体の混合
割合が5重量%未満であると、混合樹脂を使用して、メ
ルトブローン法で極細繊維を得ても、極細繊維の中心部
にポリプロピレン系重合体が安定して偏在しにくくなる
ので、好ましくない。逆に、ポリプロピレン系重合体の
混合割合が30重量%を超えると、極細繊維の熱的性質が
低下し、積層不織布を得る際に、収縮しやすくなるの
で、好ましくない。
【0013】本発明においては、この混合樹脂を使用し
て、メルトブローン法で極細繊維を得る。この極細繊維
の繊度は、0.7デニール以下となっている。繊度が0.7デ
ニールを超えると、フィルター性能(即ち、細かな塵埃
を除去する性能)が低下するので、好ましくない。な
お、極細繊維の繊度は、複数個の試料について、電子顕
微鏡写真での形状寸法から断面積を算出し、密度補正を
して各繊度を求め、その平均値を極細繊維の繊度とし
た。また、この極細繊維は、その横断面において、ポリ
エステル系重合体が略鞘部を構成し、ポリプロピレン系
重合体が略芯部を構成しているものである。ここで、ポ
リエステル系重合体が略鞘部を構成するということは、
ポリエステル系重合体が、混合樹脂における混合割合を
超えて、極細繊維の表面近傍に偏在しているという意味
である。また、ポリプロピレン系重合体が略芯部を構成
するということは、ポリプロピレン系重合体が、混合樹
脂における混合割合を超えて、極細繊維の中心部近傍に
偏在しているという意味である。このように、極細繊維
が芯鞘構造となっているので、主体素材がポリエステル
系重合体でありながら、中心部にポリプロピレン系重合
体が偏在しているので、極細繊維に柔軟性が発揮される
のである。
【0014】このような芯鞘構造の極細繊維を、メルト
ブローン法で得るには、例えば以下の如き方法によれ
ば、容易に得ることができる。まず、前に説明したよう
な種類のポリプロピレン系重合体とポリエステル系重合
体を準備する。ここで重要なことは、ポリエステル系重
合体としては、ポリプロピレン系重合体の溶融流量に対
する比が1.5〜6.0の溶融流量を持つものを準備すること
である。即ち、1.5≦[(ポリエステル系重合体の溶融
流量)/(ポリプロピレン系重合体の溶融流量)]≦6.
0である。特に、好ましくは溶融流量の比を2.0〜5.5と
するのが良く、更に好ましくは2.5〜5.0とするのが良
い。本発明において溶融流量は、以下の測定方法によっ
て測定されるものである。即ち、メルトインデクサー溶
融流量装置を用い、オリフィス径0.4mm,オリフィス長
1.2mm,加重2160gの条件で10分間当りの溶融ポリマー
の吐出量を測定し、この量(g)を溶融流量とした。な
お、この際の温度は、現実に溶融紡糸する際の温度と同
一の温度条件で行った。このことから明らかなように、
ポリエステル系重合体及びポリプロピレン系重合体の各
溶融流量は、その種類を変更したり、溶融紡糸の温度を
変更することによって、任意に調整できるので、上記の
範囲内の溶融流量の比を得ることは、容易になしうるこ
とである。
【0015】また、ポリエステル系重合体の相対粘度
は、1.20〜1.32とする。相対粘度は、好ましくは1.21〜
1.30であるのがよく、より好ましくは1.22〜1.28である
のがよい。ここで、ポリエステル系重合体の相対粘度
は、フェノールと四塩化エタンとの等重量比の混合溶媒
100ccに、試料0.5gを溶解し、温度20℃の条件で常法に
より測定したものである。ポリエステル系重合体の相対
粘度が1.22未満であると、重合度が低すぎて、重合体の
ペレット化が困難になる傾向が生じたり、得られる極細
繊維の引張強力が低下する傾向が生じる。逆に、相対粘
度が1.32を超えると、重合度が高すぎて、メルトブロー
ン法によると、紡糸口金面でポリマー玉が発生しやすく
なり、極細繊維の形成が困難になる傾向が生じる。ま
た、溶融状態のポリエステル系重合体の流量を大きくす
るのに、多大のエネルギーが必要になる傾向が生じる。
【0016】溶融流量の比を、上記した範囲に設定し
て、メルトブローン法で極細繊維を得ることにより、ポ
リプロピレン系重合体が極細繊維の芯部に偏在し、一方
ポリエステル系重合体は極細繊維の鞘部に偏在し、略芯
鞘構造の極細繊維となるのである。即ち、このような溶
融流量の比を持つ、互いに非相溶性の重合体を混合し、
この混合樹脂を溶融紡糸口金に供給したとき、溶融流量
の大きいポリエステル系重合体が流路抵抗の高いオリフ
ィスの管壁付近を流れ、一方、溶融流量の小さいポリプ
ロピレン系重合体が流路抵抗の低いオリフィスの中央部
を流れることによって、略芯鞘型の構造を持つ極細繊維
が得られるのである。従って、ポリエステル系重合体の
溶融流量の比が1.2未満になると、極細繊維の横断面に
おいて、ポリエステル系重合体が鞘部に偏在せずに、ポ
リプロピレン系重合体中に点状に散在した、いわゆる海
島型の構造を呈し、略芯鞘型の構造とならないため、好
ましくない。逆に、ポリエステル系重合体の溶融流量の
比が2.5を超えると、略芯鞘型の構造の極細繊維は得ら
れるものの、それが効率良く紡糸できないので、好まし
くない。即ち、両重合体の溶融流量が違いすぎて、溶融
紡糸口金面でポリマー玉が発生したり、あるいは吐出糸
条にねじれ現象が発生して、紡糸性が極端に低下すると
共に、紡出糸条の均整度が低下するので、好ましくな
い。
【0017】以上の如き、ポリエステル系重合体70〜95
重量%とポリプロピレン系重合体30〜5重量%とを混合
して、従来周知のメルトブローン法で極細繊維を紡出す
ることにより、鞘部にポリエステル系重合体が偏在し、
芯部ポリプロピレン系重合体が偏在して、略芯鞘構造の
極細繊維を得られるのである。従って、この極細繊維が
集積されてなる極細繊維不織布を、ポリエステル系長繊
維が集積されてなる長繊維不織布と積層し、所定の区域
に熱を付与すれば、極細繊維の鞘部とポリエステル系長
繊維の両者が軟化又は溶融して、極細繊維とポリエステ
ル系長繊維とが融着して、両不織布が強固に貼合される
のである。
【0018】この際、極細繊維中のポリエステル系重合
体は、メルトブローン法による紡出であるため、結晶化
の程度が低く、また分子鎖も無配向となっているが、熱
的性質の劣化が少ないため、熱収縮が起こりにくく、従
って極細繊維の寸法安定性は良好である。しかも、極細
繊維の芯部が柔軟なポリプロピレン系重合体で形成され
ているため、極細繊維全体が柔軟性に富む。例えば、本
発明の如く、極細繊維が略芯鞘構造ではなく、ポリエス
テル系重合体中にポリプロピレン系重合体が点状に散在
している海島型構造であると、ポリプロピレン系重合体
の柔軟性が、極細繊維全体に発現しにくいのである。
【0019】上記した、略芯鞘構造を持つ極細繊維は、
鞘部に偏在しているポリエステル系重合体が主体となっ
ているものであるため、本発明においてはポリエステル
系極細繊維と称呼する。このポリエステル系極細繊維が
集積されて、極細繊維不織布が得られるのである。具体
的には、メルトブローン法で、ポリエステル系重合体と
ポリプロピレン系重合体との混合樹脂を紡出し、直ちに
高圧空気流で牽引・細化し、冷却してポリエステル系極
細繊維を形成させながら、これを移動する捕集面上に、
集積・堆積させることによって、極細繊維不織布を得
る。
【0020】極細繊維不織布は、ポリエステル系極細繊
維を集積・堆積させた状態のまま用いることもできる
し、必要に応じて部分圧接処理を施して、形態保持性を
向上させて用いることもできる。部分圧接処理は、集積
・堆積させた極細繊維不織布の任意の区域に熱及び/又
は圧力を施して、ポリエステル系極細繊維同士を密着又
は融着させることにより行う。融着させる場合には、積
層不織布を得る段階で、ポリエステル系極細繊維とポリ
エステル系長繊維とを融着させる条件よりも、低い温度
条件で熱を付与するのが、好ましい。これは、極細繊維
不織布の柔軟性や品位を低下させないためである。な
お、部分圧接処理は、集積・堆積させた極細繊維不織布
を、エンボス装置,熱エンボス融着装置あるいは超音波
融着装置等に導入することによって、行うことができ
る。
【0021】極細繊維不織布に、積層されて貼合される
長繊維不織布は、ポリエステル系長繊維が集積されてな
るものである。長繊維不織布は、例えば以下に示す方法
によって製造することができる。即ち、従来公知の溶融
紡糸法によって、ポリエステル系重合体を溶融紡糸し、
横吹付や環状吹付等の従来公知の冷却装置を用いて、吹
付風により冷却して、ポリエステル系長繊維を得る。次
に、一般的には、ポリエステル系長繊維をエアーサッカ
ーに導入して、目的繊度となるように牽引細化し、引き
取る。牽引速度は3000m/分以上、特に3500m/分以上
が、機械的性能に優れた長繊維不織布を得るためには、
好ましい。エアーサッカーから排出されたポリエステル
系長繊維は、一般的には、高圧電場中のコロナ放電域
か、あるいは摩擦衝突帯域を通過せしめて帯電開繊させ
た後、スクリーンからなるコンベアーの如き移動堆積装
置上に、開繊集積させて長繊維不織布を得る。長繊維不
織布は、ポリエステル系長繊維を集積させた状態のまま
用いることもできるし、部分圧接処理を施して使用して
もよい。部分圧接処理を施す理由は、極細繊維不織布に
部分圧接処理を施すのと同様の理由であり、また部分圧
接処理の手段も極細繊維不織布の場合と同様の手段が採
用される。
【0022】長繊維不織布を構成しているポリエステル
系長繊維の繊度は、ポリエステル系極細繊維の繊度より
も大きいものである。ポリエステル系長繊維の繊度の方
が、ポリエステル系極細繊維の繊度よりも小さいと、積
層不織布中における長繊維不織布の本来的な役割であ
る、引張強度等の機械的特性の向上が図れないため、好
ましくない。
【0023】上記した極細繊維不織布と長繊維不織布と
を積層し、所定の区域に熱を付与する。また、熱と共に
圧力を施すことも、好ましいことである。所定の区域に
熱及び圧力を施す方法としては、加熱されたエンボスロ
ーラー(凹凸ローラー)と表面が平滑な金属ローラーと
からなる熱エンボス融着装置の両ローラー間を通す方法
や、あるいは周波数20KHZ程度の超音波を発振する超音
波発振器(超音波発振ホーン)と表面が凹凸のパターンロ
ーラーとからなる超音波融着装置のホーンとローラー間
を通す方法等を採用することができる。この際、エンボ
スローラーやパターンローラーの凸部に当接した箇所が
所定の区域になって、この区域でポリエステル系極細繊
維とポリエステル系長繊維とが融着して、極細繊維不織
布と長繊維不織布とが貼合されるのである。エンボスロ
ーラーの凸部の先端は、任意の形態のものが採用され、
例えば丸型,楕円型,菱型,三角型,T字型,#型等の
形態のものが採用される。また、パターンローラーの凸
部の先端も任意でよく、エンボスローラーと同様の丸型
等が採用され、更に帯状となっているものも採用され
る。
【0024】ポリエステル系極細繊維とポリエステル系
長繊維とが融着している所定の区域の割合は、任意に定
めうるものであるが、一般的に、積層不織布の表面積に
対して、4〜50%であるのが好ましい。この区域は、エ
ンボスローラーやパターンローラーの凸部が当接する区
域であるから、エンボスローラーやパターンローラーの
表面積に対する、凸部の総面積の割合を設定することに
よって、この範囲に調整することができる。所定の区域
の割合が4%未満であると、ポリエステル系極細繊維と
ポリエステル系長繊維とが融着している区域が少なすぎ
て、得られる積層不織布の剥離強力が向上しない傾向と
なる。逆に、所定の区域の割合が50%を超えると、得ら
れる積層不織布の柔軟性が低下したり、あるいは通気性
が低下する傾向が生じる。この熱及び所望により圧力を
施す工程は、極細繊維不織布や長繊維不織布の製造工程
及び積層工程と連続する工程としてもよいし、製造工程
及び積層工程とは別個の工程としてもよい。更に、製造
工程とは別個の工程とし、積層工程と熱及び所望により
圧力を施す工程とを連続工程としてもよい。
【0025】次に、実施例に基づき、本発明をより具体
的に説明する。この実施例中で用いられている各特性値
等の測定方法は、以下の方法によって行ったものであ
る。 [極細繊維不織布の沸水収縮率]:試料長25cmで試料幅
25cmの正方形の試料片を5個準備し、沸騰水中に各試料
片を3分間浸漬して沸水処理を施した。沸水処理後の試
料片の面積(S2)を測定し、下記式によって算出した
値の平均値を沸水収縮率(%)とした。なお、S1は、
沸水処理を施す前の試料片の面積(25cm×25cm)であ
る。 記 [1−(S2/S1)]×100 [積層不織布の引張強力]:JIS L-1096に記載のストリ
ップ法に準じ、幅5cm,長さ10cmの試験片から最大引張
強力を測定し、100g/m2の目付に換算した値である。 [積層不織布の引張伸度]:引張強力測定時の切断時の
伸度である。 [積層不織布の層間剥離強力]:幅5cm,長さ10cmの試
験片を、長さ方向が縦方向となるように積層不織布から
採取した。定速伸長型引張試験器を用いて、この積層不
織布中における極細繊維不織布の端部を一方のチャック
に挟持させ、長繊維不織布の端部を他方のチャックに挟
持させて、引張速度10cm/分で剥離した時の荷重値の平
均値を、積層不織布の層間剥離強力とした。 [積層不織布の剛軟度]:幅5cm,長さ10cmの試験片を
長さ方向に曲げて円筒状物とし、当接した端部間を接合
したものを剛軟度測定試料とした。この試料の軸方向
(試験片の幅方向)について、定速伸長型引張試験機を
用いて圧縮速度5cm/分で圧縮し、得られた最大荷重値
の平均値を、積層不織布の剛軟度とした。 [積層不織布の通気度]:JIS L-1096に記載のフラジー
ル法に準じて測定した。
【0026】
【実施例】
実施例1 融点が259℃で相対粘度が1.22のポリエステル系重合体
(ここではポリエチレンテレフタレート重合体であ
る。)95重量%と、融点が160℃のポリプロピレン系重
合体5重量%とを混合して混合樹脂を得た。なお、ポリ
エステル系重合体の溶融流量(測定温度370℃)は、ポ
リプロピレン系重合体の溶融流量(測定温度370℃)に
対して、その比が3.2であった。そして、この混合樹脂
を使用して、以下の条件でメルトブローン法により、目
付25g/m2の極細繊維不織布を得た。即ち、混合樹脂
の紡糸条件は、温度が370℃で単孔吐出量が0.2g/分と
なるように、紡糸口金から紡出した。紡出された糸条を
牽引・細化するための高圧空気流としては、温度400℃
の加熱空気を圧力1.2kg/cm2で噴出させたものを使用し
た。また、高圧空気流によって細化されたポリエステル
系極細繊維が、高圧空気流と共に搬送されて集積される
捕集面は、紡糸口金から5cm離れた位置に配設し、その
移動速度を8m/分とした。
【0027】このようにして得られた極細繊維不織布中
のポリエステル系極細繊維の繊度は、0.29デニールであ
った。また、ポリエステル系極細繊維の横断面を、電子
顕微鏡を用いて5000倍に拡大して観察したところ、ポリ
プロピレン系重合体の周囲をポリエステル系重合体が薄
膜状に被覆した略芯鞘型の構造を有するものであった。
また、極細繊維不織布の沸水収縮率は、32%であり寸法
安定性に優れたものであった。
【0028】一方、融点が259℃で相対粘度が1.35のポ
リエステル系重合体(ここでは、ポリエチレンテレフタ
レートである。)を公知の紡糸機にて溶融し、これを紡
糸口金から紡糸温度295℃,単孔吐出量1.6g/分で紡出
した。紡出糸条を冷却した後、エアーサッカーにより48
00m/分の速度で引き取り、コロナ放電開繊器にて開繊
させた。次いで、エアーサッカーの下部に位置する、移
動する捕集面上に捕集・堆積させた後、これを熱エンボ
ス融着装置に導入して、目付25g/m2の長繊維不織布
を得た。熱エンボス融着装置に配設されたエンボスロー
ラーは、散点状の凸部をローラー表面積に対して5%の
割合で有し、且つ温度は150℃に設定されているもので
あった。なお、長繊維不織布中から採取したポリプロピ
レン系長繊維の繊度は、約3デニールであった。
【0029】次いで、極細繊維不織布と長繊維不織布と
を積層した積層物を、熱エンボス融着装置に導入して、
目付50g/m2の積層不織布を得た。熱エンボス融着装
置に配設されたエンボスローラーは、散点状の凸部をロ
ーラー表面積に対して10%の割合で有し、且つ温度は23
0℃に設定されているものであった。このようにして、
ポリエステル系極細繊維とポリプロピレン系長繊維とが
融着された点状区域の総面積が、積層不織布表面積に対
して、10%である積層不織布が得られた。この積層不織
布の特性は、表1に示したとおりであった。
【0030】実施例2 混合樹脂中における両重合体の混合割合を、ポリエステ
ル系重合体85重量%とポリプロピレン系重合体15重量%
とし、且つメルトブローン法における高圧空気流の圧力
を1.4kg/cm2とした他は、実施例1と同様にして極細繊
維不織布を得た。なお、このときの紡糸性は良好であっ
た。
【0031】このようにして得られた極細繊維不織布中
のポリエステル系極細繊維の繊度は、0.18デニールであ
った。また、ポリエステル系極細繊維の横断面を、電子
顕微鏡を用いて5000倍に拡大して観察したところ、ポリ
プロピレン系重合体の周囲をポリエステル系重合体が薄
膜状に被覆した略芯鞘型の構造を有するものであった。
また、極細繊維不織布の沸水収縮率は、21%であり寸法
安定性に優れたものであった。この極細繊維不織布と、
実施例1で使用した長繊維不織布とを使用し、実施例1
と同一の条件で目付50g/m2の積層不織布を得た。こ
の積層不織布の特性は、表1に示すとおりであった。
【0032】実施例3 混合樹脂中における両重合体の混合割合を、ポリエステ
ル系重合体75重量%とポリプロピレン系重合体25重量%
とし、且つメルトブローン法における高圧空気流の圧力
を1.5kg/cm2とした他は、実施例1と同様にして極細繊
維不織布を得た。なお、このときの紡糸性は良好であっ
た。
【0033】このようにして得られた極細繊維不織布中
のポリエステル系極細繊維の繊度は、0.12デニールであ
った。また、ポリエステル系極細繊維の横断面を、電子
顕微鏡を用いて5000倍に拡大して観察したところ、ポリ
プロピレン系重合体の周囲をポリエステル系重合体が薄
膜状に被覆した略芯鞘型の構造を有するものであった。
また、極細繊維不織布の沸水収縮率は、15%であり寸法
安定性に優れたものであった。この極細繊維不織布と、
実施例1で使用した長繊維不織布とを使用し、実施例1
と同一の条件で目付50g/m2の積層不織布を得た。こ
の積層不織布の特性は、表1に示すとおりであった。
【0034】実施例4 ポリプロピレン系重合体の溶融流量に対する、ポリエス
テル系重合体の溶融流量の比を4.0とし、且つメルトブ
ローン法における高圧空気流の圧力を1.2kg/cm2とした
他は、実施例2と同様にして極細繊維不織布を得た。こ
のときの紡糸性も良好であった。
【0035】このようにして得られた極細繊維不織布中
のポリエステル系極細繊維の繊度は、0.17デニールであ
った。また、ポリエステル系極細繊維の横断面を、電子
顕微鏡を用いて5000倍に拡大して観察したところ、ポリ
プロピレン系重合体の周囲をポリエステル系重合体が薄
膜状に被覆した略芯鞘型の構造を有するものであった。
また、極細繊維不織布の沸水収縮率は、18%であり寸法
安定性に優れたものであった。この極細繊維不織布と、
実施例1で使用した長繊維不織布とを使用し、実施例1
と同一の条件で目付50g/m2の積層不織布を得た。こ
の積層不織布の特性は、表1に示すとおりであった。
【0036】実施例5 実施例4で使用した極細繊維不織布と長繊維不織布とを
用い、熱エンボス融着装置を使用するのに代えて、次に
示す超音波融着装置を使用して、積層不織布を得た。超
音波融着装置は、周波数が20KHZの超音波発振器(ホー
ン)と、円周上に散点状に凸部が設けられたパターンロ
ーラーとからなるものであり、凸部は、ローラー表面積
に対して10%の割合で設けられているものである。この
ようにして、ポリエステル系極細繊維とポリエステル系
長繊維とが融着された点状区域の総面積が、積層不織布
表面積に対して、10%である目付50g/m2の積層不織
布が得られた。この積層不織布の特性は、表1に示した
とおりであった。
【0037】
【表1】
【0038】比較例1 混合樹脂中における両重合体の混合割合を、ポリエステ
ル系重合体50重量%とポリプロピレン系重合体50重量%
とし、且つメルトブローン法における高圧空気流の圧力
を0.8kg/cm2とした他は、実施例1と同様にして極細繊
維不織布を得た。なお、このときの紡糸性は、紡糸口金
の近辺に経時的にポリマー玉が発生し、不良であった。
【0039】このようにして得られた極細繊維不織布中
のポリエステル系極細繊維の繊度は、1.09デニールであ
った。また、ポリエステル系極細繊維の横断面を、電子
顕微鏡を用いて5000倍に拡大して観察したところ、ポリ
プロピレン系重合体の周囲をポリエステル系重合体が薄
膜状に被覆した略芯鞘型の構造を有するものも存在する
反面、一部にポリエステル系重合体中にポリプロピレン
系重合体が点在する海島型の構造を有するものも存在し
た。極細繊維不織布の沸水収縮率は、24%であり寸法安
定性に劣るものであった。この極細繊維不織布と、実施
例1で使用した長繊維不織布とを使用し、実施例1と同
一の条件で目付50g/m2の積層不織布を得た。この積
層不織布の特性は、表1に示すとおりであった。
【0040】比較例2 ポリプロピレン系重合体の溶融流量に対する、ポリエス
テル系重合体の溶融流量の比を1.0とし、且つメルトブ
ローン法における高圧空気流の圧力を0.6kg/cm2とした
他は、実施例2と同様にして極細繊維不織布を得た。こ
のときの紡糸性は、溶融流量の比が小さいため、糸切れ
が発生し不良であった。
【0041】このようにして得られた極細繊維不織布中
のポリエステル系極細繊維の繊度は、2.01デニールであ
った。また、ポリエステル系極細繊維の横断面を、電子
顕微鏡を用いて5000倍に拡大して観察したところ、ポリ
エステル系重合体とポリプロピレン系重合体とが海島型
の構造を有するものであった。極細繊維不織布の沸水収
縮率は、54%であり寸法安定性に劣るものであった。こ
の極細繊維不織布と、実施例1で使用した長繊維不織布
とを使用し、実施例1と同一の条件で目付50g/m2
積層不織布を得た。この積層不織布の特性は、表1に示
すとおりであった。
【0042】比較例3 融点が259℃で相対粘度が1.22のポリエステル系重合体
(ここではポリエチレンテレフタレート重合体であ
る。)の単体を使用して、以下の条件でメルトブローン
法により、目付25g/m2の極細繊維不織布を得た。即
ち、ポリエステル系重合体の紡糸条件は、温度が370℃
で単孔吐出量が0.2g/分となるように、紡糸口金から
紡出した。紡出された糸条を牽引・細化するための高圧
空気流としては、温度400℃の加熱空気を圧力1.6kg/cm
2で噴出させたものを使用した。また、高圧空気流によ
って細化されたポリエステル系極細繊維が、高圧空気流
と共に搬送されて集積される捕集面は、紡糸口金から5c
m離れた位置に配設し、その移動速度を8m/分とした。
【0043】このようにして得られた極細繊維不織布中
のポリエステル系極細繊維の繊度は、0.18デニールであ
った。しかし、極細繊維不織布の沸水収縮率は、84%で
あり寸法安定性に著しく劣るものであった。この極細繊
維不織布と、実施例1で使用した長繊維不織布とを使用
し、実施例1と同一の条件で目付50g/m2の積層不織
布を得た。この積層不織布の特性は、表1に示すとおり
であった。
【0044】表1の結果から明らかなように、実施例1
〜5に係る積層不織布は、横断面において鞘部にポリエ
ステル系重合体が偏在しており、芯部にポリプロピレン
系重合体が偏在しているポリエステル系極細繊維よりな
る極細繊維不織布が、ポリエステル系長繊維よりなる長
繊維不織布と積層され、且つポリエステル系重合体とポ
リエステル系長繊維とが融着して両不織布が貼合されて
なるものであるため、層間剥離強力が高いものである。
【0045】これに対して、比較例1に係る積層不織布
は、繊度の大きいポリエステル系極細繊維よりなる極細
繊維不織布を使用しているため、柔軟性に劣るものであ
った。更に、ポリエステル系極細繊維中にポリプロピレ
ン系重合体が、比較的多量に存在するために、熱的性質
が劣化しており、熱を付与した区域外でも、極細繊維が
軟化又は溶融する傾向があり、極細繊維同士が融着し
て、通気性が低下している。また、比較例2に係る積層
不織布は、ポリプロピレン系重合体とポリエステル系重
合体とが海島型の構造になった極細繊維よりなる不織布
が用いられているので、柔軟性に富むポリプロピレン系
重合体が連続した状態で、極細繊維中に存在しにくくな
っており、柔軟性に欠けるものである。更に、比較例3
に係る積層不織布は、ポリエステル系重合体単体で構成
された極細繊維よりなる極細繊維不織布を使用している
ので、柔軟性に欠けるものである。
【0046】
【作用及び発明の効果】本発明に係る積層不織布は、鞘
部にポリエステル系重合体が偏在し、芯部にポリプロピ
レン系重合体が偏在しているポリエステル系極細繊維よ
りなる極細繊維不織布と、ポリエステル系長繊維よりな
る長繊維不織布とが積層され、極細繊維と長繊維との融
着によって、両不織布が貼合されているものである。極
細繊維の表面に偏在して鞘部を形成するポリエステル系
重合体と、ポリエステル系長繊維とは、同種であるので
相溶性が良く、両者を軟化又は溶融させて融着させた場
合、良好に融着する。従って、本発明に係る積層不織布
は、層間剥離強力が非常に高くなるという効果を奏する
ものである。
【0047】また、極細繊維中において、柔軟性に富む
ポリプロピレン系重合体が芯部を形成しているため、比
較的柔軟性に欠けるポリエステル系重合体が鞘部を形成
していても、極細繊維全体としては、柔軟性に富むもの
である。従って、得られる積層不織布の柔軟性の低下が
少なく、風合も良好であるという効果を奏する。
【0048】更に、本発明に係る積層不織布において、
ポリエステル系極細繊維の鞘部とポリエステル系長繊維
とが融着している区域の総面積を、積層不織布表面積に
対して、4〜50%にした場合には、通気性の低下を良好
に防止でき、フィルター材として好適に使用しうるもの
である。
【0049】また、本発明に係る積層不織布は、極細繊
維不織布に積層された長繊維不織布を構成するポリエス
テル系長繊維の繊度が、極細繊維に比べて大きいもので
あるため、引張強力の低い極細繊維不織布が引張強力の
高い長繊維不織布でカバーされ、全体として引張強力の
高い積層不織布が得られるという効果を奏する。
【0050】本発明に係る積層不織布の製造方法におい
ては、ポリプロピレン系重合体と、このポリプロピレン
系重合体の溶融流量に対して、一定の比の溶融流量を持
つポリエステル系重合体との混合樹脂を使用して、メル
トブローン法によって、ポリエステル系極細繊維を得る
ため、ポリエステル系重合体が鞘部に偏在し、ポリプロ
ピレン系重合体が芯部に偏在するものを、良好な紡糸性
で効率良く得られるという効果をも奏する。
─────────────────────────────────────────────────────
【手続補正書】
【提出日】平成7年3月27日
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0004
【補正方法】変更
【補正内容】
【0004】しかし、(1)の方法は、ニードル針によっ
て、極細繊維及び長繊維を針の移動方法(不織布の厚み
方向)に運動させて、相互に絡ませるものであるため、
単位面積当りの極細繊維量又は長繊維量が少ないと、ニ
ードル針に両繊維が引っ掛りにくく、十分に両繊維を交
絡させることができないという憾みがあった。従って、
低目付の極細繊維不織布あるいは長繊維不織布を使用す
ると、層間剥離強力の高い積層不織布を得ることはでき
なかった。(2)の方法は、高圧水流によって、極細繊維
及び長繊維を運動させて、相互に絡ませるものであるた
め、単位面積当りの極細繊維量又は長繊維量が少なくて
も、ニードル針を使用した場合の欠点は生じにくい。し
かし、逆に、単位面積当りの極細繊維量又は長繊維量が
多いと、高圧水流の圧力が内部にまで、十分伝達されな
いという憾みがあった。従って、高目付の極細繊維不織
布あるいは長繊維不織布を使用すると、層間剥離強力の
高い積層不織布を得ることはできなかった。また、(1)
及び(2)の方法の場合には、ニードル針の移動方法等の
不織布の厚み方向に、極細繊維等を運動させ配列させる
ものであるため、積層不織布の層間を強固に交絡させる
ようとすると、徐々に積層不織布の繊維密度が高くなっ
てゆくということがあった。従って、通気性が不良とな
り、フィルター材として使用できない積層不織布になる
という欠点があった。更に、極細繊維は引張強力が低い
ため、ニードル針に引っ掛けたとき、あるいは高圧水流
によって高い水圧が負荷されたときに、切断してしま
い、積層不織布中から脱落してゆくという欠点もあっ
た。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0006
【補正方法】変更
【補正内容】
【0006】このため、比較的、熱的性質に優れたポリ
エステル重合体を使用することが提案されている。即
ち、メルトブローン法にて得られるポリエステル極細繊
維よりなる極細繊維不織布と、ポリエステル長繊維より
なる不織布とを積層し、一定の区域に熱を付与して、そ
の区域に存在するポリエステル極細繊維及びポリエステ
ル長繊維を軟化又は溶融させて、極細繊維と長繊維とを
融着させ、両不織布を貼合する方法が考えられてい
しかしながら、メルトブローン法にて得られるポリエス
テル極細繊維は、ほとんど結晶化していないがために、
低温領域においても著しく寸法安定性に劣るものであ
る。一方、製糸速度が3500m/分の領域を超える条
件下で得たポリエステル長繊維不織布は熱的な寸法安定
性には優れるものである。従って、極細繊維不織布と長
繊維不織布とを良好に且つ強固に貼合することはできる
ものの、極細繊維不織布が高収縮側、長繊維不織布が低
収縮側となり低温領域においてもシボ立ちが発生し、不
織布表面が平滑な積層不織布は今だ製造されていないの
が現状である。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0007
【補正方法】変更
【補正内容】
【0007】
【発明が解決しようとする課題】そこで、本発明は、極
細繊維として、鞘部に熱的性質に優れるポリエステル重
合体が偏在しており、芯部に柔軟性に優れるポリプロピ
レン系重合体が偏在しているものを使用することによっ
て、ポリエステル系長繊維不織布と強固に融着し、高剥
離強力で貼合されると共に、寸法安定性及び柔軟性に優
れ、風合の良好な積層不織布を提供しようというもので
ある。
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0012
【補正方法】変更
【補正内容】
【0012】ポリエステル系重合体とポリプロピレン系
重合体とを混合して混合樹脂を得る際、両者の混合割合
は、次のとおりである。即ち、ポリエステル系重合体を
70〜95重量%と、ポリプロピレン系重合体を30〜5重量
%とを混合するのである。特に、ポリエステル系重合体
が75〜92重量%でポリプロピレン系重合体が25〜8重量
%であるのが好ましく、更にポリエステル系重合体が80
〜90重量%でポリプロピレン系重合体が20〜10重量%で
あるのが最も好ましい。ポリプロピレン系重合体の混合
割合が5重量%未満であると、混合樹脂を使用して、メ
ルトブローン法で極細繊維を得ても、極細繊維の中心部
にポリプロピレン系重合体が安定して偏在しにくくなる
ので、好ましくない。逆に、ポリプロピレン系重合体の
混合割合が30重量%を超えると、製糸性が悪化するとと
もに、極細繊維の熱的性質が低下し好ましくない。
【手続補正5】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0013
【補正方法】変更
【補正内容】
【0013】本発明においては、この混合樹脂を使用し
て、メルトブローン法で極細繊維を得る。この極細繊維
の繊度は、0.7デニール以下となっている。繊度が0.7デ
ニールを超えると、フィルター性能(即ち、細かな塵埃
を除去する性能)が低下するので、好ましくない。な
お、極細繊維の繊度は、複数個の試料について、電子顕
微鏡写真での形状寸法から断面積を算出し、密度補正を
して各繊度を求め、その平均値を極細繊維の繊度とし
た。また、この極細繊維は、その横断面において、ポリ
エステル系重合体が略鞘部を構成し、ポリプロピレン系
重合体が略芯部を構成しているものである。ここで、ポ
リエステル系重合体が略鞘部を構成するということは、
ポリエステル系重合体が、混合樹脂における混合割合を
超えて、極細繊維の表面近傍に偏在しているという意味
である。また、ポリプロピレン系重合体が略芯部を構成
するということは、ポリプロピレン系重合体が、混合樹
脂における混合割合を超えて、極細繊維の中心部近傍に
偏在しているという意味である。このように、極細繊維
が芯鞘構造となっているので、主体素材がポリエステル
系重合体でありながら、中心部にポリプロピレン系重合
体が偏在しているので、極細繊維に優れた寸法安定性を
付与するとともに柔軟性が発揮されるのである。
【手続補正6】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0018
【補正方法】変更
【補正内容】
【0018】この際、極細繊維中のポリエステル系重合
体は、メルトブローン法による紡出であるため、結晶化
の程度が低く、また分子鎖も無配向ではあるが芯部に偏
在しているポリプロピレン系重合体により熱収縮は起こ
りにくく、従って極細繊維の寸法安定性は良好である。
しかも、極細繊維の芯部が柔軟なポリプロピレン系重合
体で形成されているため、極細繊維全体が柔軟性に富
む。例えば、本発明の如く、極細繊維が略芯鞘構造では
なく、ポリエステル系重合体中にポリプロピレン系重合
体が点状に散在している海島型構造であると、ポリプロ
ピレン系重合体の柔軟性が、極細繊維全体に発現しにく
いのである。
【手続補正6】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0046
【補正方法】変更
【補正内容】
【0046】
【作用及び発明の効果】本発明に係る積層不織布は、鞘
部にポリエステル系重合体が偏在し、芯部にポリプロピ
レン系重合体が偏在しているポリエステル系極細繊維よ
りなる極細繊維不織布と、ポリエステル系長繊維よりな
る長繊維不織布とが積層され、極細繊維と長繊維との融
着によって、両不織布が貼合されているものである。極
細繊維の表面に偏在して鞘部を形成するポリエステル系
重合体と、ポリエステル系長繊維とは、同種であるので
相溶性が良く、両者を軟化又は溶融させて融着させた場
合、良好に融着する。従って、本発明に係る積層不織布
は、層間剥離強力が非常に高くなるとともに寸法安定性
に優れるという効果を奏するものである。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 庁内整理番号 FI 技術表示箇所 D04H 5/08 Z

Claims (4)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 繊度0.7デニール以下のポリエステル系
    極細繊維が集積されてなる極細繊維不織布と、該ポリエ
    ステル系極細繊維の繊度よりも大きい繊度を持つポリエ
    ステル系長繊維が集積されてなる長繊維不織布とが貼合
    されてなる積層不織布であって、該ポリエステル系極細
    繊維は、ポリエステル系重合体70〜95重量%とポリプロ
    ピレン系重合体30〜5重量%との混合樹脂によって形成
    されていると共に、該ポリエステル系極細繊維の横断面
    において、該ポリエステル系重合体が略鞘部を構成し、
    該ポリプロピレン系重合体が略芯部を構成しており、該
    ポリエステル系極細繊維と該ポリエステル系長繊維とが
    所定の区域において融着することによって、該極細不織
    布と該長繊維不織布とが貼合されていることを特徴とす
    る積層不織布。
  2. 【請求項2】 所定の区域の総面積が、積層不織布表面
    の面積に対して、4〜50%である請求項1記載の積層不
    織布。
  3. 【請求項3】 ポリプロピレン系重合体30〜5重量%
    と、該ポリプロピレン系重合体の溶融流量に対する比が
    1.5〜6.0の溶融流量を持ち、且つ相対粘度が1.20〜1.32
    のポリエステル系重合体70〜95重量%とを混合した混合
    樹脂を使用して、メルトブローン法によって、ポリエス
    テル系極細繊維を形成すると共に該ポリエステル系極細
    繊維を集積させて、極細繊維不織布を得る工程と、該ポ
    リエステル系極細繊維の繊度よりも大きい繊度を持つポ
    リエステル系長繊維を集積させて、長繊維不織布を得る
    工程と、該極細繊維不織布と該長繊維不織布とを積層
    し、所定の区域に熱を付与する工程とを具備することを
    特徴とする積層不織布の製造方法。
  4. 【請求項4】 熱を付与する所定の区域が、極細繊維不
    織布と長繊維不織布とを積層した積層体表面の面積に対
    して、4〜50%である請求項3記載の積層不織布の製造
    方法。
JP5352143A 1993-12-31 1993-12-31 積層不織布及びその製造方法 Pending JPH07207566A (ja)

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