JP7405590B2 - 不織布の製造方法 - Google Patents
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Description
例えば、特許文献1には、熱収縮なしで熱圧着可能なポリプロピレン不織布の製造方法が記載されている。この製造方法では、不織布を熱圧着ロール上で0.2秒以上熱セットしたのち巻取ることを特徴としている。
また、特許文献2には、立体的な凹凸模様を有する化粧シートを製造できるエンボス加工方法が記載されている。この製造方法では、長尺の基材をエンボスロールと第一バックアップロールとで挟み込む工程と、前記基材を前記エンボスロールと第二バックアップロールとで挟み込む工程とを有することを特徴としている。
しかし、不織布の原料として積層ウェブを用いる場合、コンベアが傾斜しているが故に積層ウェブへの気流の当たり方に差異が生じやすく、積層ウェブが分離することがある。特に、この分離現象は、加熱されながら回転するエンボスロールの入口で発生しやすい。例えば、上下一対のエンボスロールに向かってコンベアを上り傾斜させていると、積層ウェブは下側のエンボスロール側に傾き、上側よりも下側のエンボスロールの気流の影響を強く受ける。この気流の影響の差が積層ウェブを押し上げる力となり、繊維ウェブの間に部分的な分離が生じる。
積層ウェブが分離されたままエンボスロールにてエンボス加工を行うと、地合いが大きく悪化した不織布(均質でない不織布)が製造される。このように、積層ウェブを不織布の原料に用いると、不織布の生産性を損なうことがあった。そのため、不織布の製造過程において、積層ウェブを分離させることなくエンボス加工を行うことが求められる。なお、ここでいう「地合いが大きく悪化」とは、不織布中に200mmから300mm程度の筋状の幅が出現し、その筋状部分は明らかに目付(見た目)が薄い部分が存在することをいう。
ここで、「傾斜」とは、後述する「水平部」の範囲に含まれない概念であり、本明細書では水平面に対して15°を超えて傾いていることをいう。即ち、コンベアと積層ウェブとが接触する面は、水平面に対して15°を超えて傾いている。
また、「積層ウェブ」とは、繊維同士が結合される前の繊維の集合体をシート状にしたもの(繊維ウェブ)を、複数重ねたものをいう。即ち、不織布化する前の素材である。積層ウェブは、繊維ウェブを3層以上積層させてもよいが、2層の繊維ウェブを積層させたものが一般的である。また、積層ウェブには短繊維を用いることが一般的である。短繊維とは、一般には25mm以上70mm以下の繊維長のものを指す。
かかるエンボス設備1にて加工される積層ウェブ4は、積層ウェブ4の搬送方向と、該搬送方向に直交する幅方向とを有する。該搬送方向及び該幅方向は、積層ウェブ4以外の設備に関しても、方向を示す用語として用いる。また、エンボスロール3,3の入口とは、エンボスロール3,3における搬送方向の上流側をいう。
なお、図1~3ではコンベア2は一対のエンボスロール3,3に向かって上り傾斜を有するものとして示しているが、設備の状態によっては下り傾斜になっていてもよい。また、図1~3では積層ウェブ4を単線にて示しているが、実際には複数の繊維ウェブを積層させたものである。
第一実施形態では、図1に示すように、エンボスロール3の入口において、積層ウェブ4を水平化する処理を行い、水平部11を設ける。積層ウェブ4に水平部11があることで、積層ウェブ4へ当たる上下からの気流が均等になりやすくなり、積層ウェブ4の分離を防止できる。これにより、製造工程中での積層ウェブの地合いの悪化を抑制して均質化することができ、効率的に製造できる。加えて、第一実施形態では、凹凸形状がより明確で、厚みのある不織布の製造にも好適に用いられる。
エンボスロール3の入口で積層ウェブ4を水平化する方法は、本発明の効果を奏する限り、特に限定されない。例えば、図1に示すように、積層ウェブ4の下部にコンベア等の搬送手段12を設けることで、エンボスロール3の入口において積層ウェブ4を水平に近い角度に保つことができる。その際、搬送手段12はコンベア2と同じ速度で動くことで、積層ウェブ4をエンボスロール3の入口へ効果的に搬送することができる。また、搬送手段12には、摩擦による積層ウェブ4の乱れを抑えるという観点から、好ましくは摩擦抵抗の少ない板状物、より好ましくは表面が稼働するコンベアが挙げられる。但し、積層ウェブ4が水平になるという観点において、搬送手段12に制限はない。
積層ウェブ4の水平部11とは、具体的には、積層ウェブ4の角度と水平面5との差が15°以内の部分をいう。水平部11の特定方法は、次の通りである。
図1において、エンボスロール3,3を正面視して、一対のエンボスロール3,3とコンベア2との間における積層ウェブ4の厚み方向中央の任意の点Pが、エンボスロール3,3同士の接点Qから離れるに従い、点P及び点Qを結ぶ直線L1と水平面5に平行な仮想線L2とがなす角は徐々に変化する。この角が15°となる点Rから、接点Qまでの積層ウェブ4の部分が、水平部11である。水平部11における積層ウェブ4は、水平面5との角が15°以内の範囲で上下方向に傾いていてもよいが、図1に示すように、点Rの近傍以外では傾いていないことが好ましい。
積層ウェブ4の分離を効果的に防止する観点から、水平部11の搬送方向の長さ(正面視における点Rから点Qまでの距離)は、150mm以上が好ましく、200mm以上がより好ましく、250mm以上が更に好ましい。また、エンボス設備1の設置スペースを小さくする観点から、水平部11の搬送方向の長さは500mm以下が好ましく、400mm以下がより好ましく、300mm以下が更に好ましい。
不織布の製造効率を高める観点から、積層ウェブ4の幅方向の長さは、2000mm以上が好ましく、2300mm以上がより好ましく、2500mm以上が更に好ましい。また、エンボス設備1の設置スペースを小さくする観点から、積層ウェブ4の幅方向の長さは5000mm以下が好ましく、4000mm以下がより好ましく、3500mm以下が更に好ましい。
積層ウェブ4をエンボスロール3へ搬送する角度を出来る限り水平に維持する観点から、積層ウェブ4の幅方向の長さに対する水平部11の搬送方向の長さの割合(水平部11の搬送方向の長さ/積層ウェブ4の幅方向の長さ×100)は、2%以上が好ましく、3%以上がより好ましく、4%以上が更に好ましい。また、前記割合を一定以下とすることで、積層ウェブ4が垂れずにエンボスロール3へ適正な角度で搬送できる。かかる観点から、前記割合は10%以下が好ましく、9%以下がより好ましく、8%以下が更に好ましい。
次に、第二実施形態について説明する。
第二実施形態では、図2に示すように、コンベア2上にて積層ウェブ4をパンチングロール21で押圧する処理を行う。即ち、第二実施形態におけるエンボス設備1は、コンベア2上にて積層ウェブ4と接触するパンチングロール21を有する。エンボスロール3での賦形の直前に積層ウェブ4を押圧することで、積層ウェブ4を構成する層同士で繊維の絡み合いが増す。その結果、不均等な気流が積層ウェブ4に当たっても、積層ウェブ4が分離しにくくなり、効率的に不織布を製造できる。加えて、第二実施形態では、凹凸形状がより明確で、厚みのある不織布の製造にも好適に用いられる。
図2に示すように、パンチングロール21は、積層ウェブ4の搬送方向に対して垂直に、積層ウェブ4を押圧する。このときの押圧力22は、水平面5に対するコンベア2の積層ウェブ4との接地面の傾斜の角度をθ(0°以上90°以下)とすると、下記式(1)にて求めることができる。また、パンチングロール21を積層ウェブ4の面に強く押さえ付けることにより、下記式(1)で計算される押圧力以上の押圧力を得ることもできる。
押圧力(kgf/cm)=パンチングロールの自重(kg)
/パンチングロールの幅方向の長さ(cm)×cosθ
式(1)
積層ウェブ4を構成する層の間で繊維を強固に絡ませる観点から、上記式(1)にて求めた押圧力22は、0.2kgf/cm以上が好ましく、0.3kgf/cm以上がより好ましく、0.4kgf/cm以上が更に好ましい。また、厚みのある不織布を製造する観点から、上記式(1)にて求めた押圧力22は、1kgf/cm以下が好ましく、0.8kgf/cm以下がより好ましく、0.6kgf/cm以下が更に好ましい。
パンチングロール21で積層ウェブ4を押圧した後、繊維の絡み合いが解けない内にエンボスロール3で熱圧着を行うことで、積層ウェブ4を分離させることなく賦形を行うことができる。そのため、パンチングロール21とエンボスロール3との距離は適度に短いことが求められる。具体的には、パンチングロール21とエンボスロール3との水平距離23は、1000mm以下が好ましく、800mm以下がより好ましく、600mm以下が更に好ましい。
また、エンボスロール3,3での賦形時に積層ウェブ4がパンチングロール21による気流の影響を受けないようにすることや、パンチングロール21とエンボスロール3とが互いに接触しない程度の距離を保つことも求められる。そのため、前記水平距離23は、150mm以上が好ましく、200mm以上がより好ましく、250mm以上が更に好ましい。
なお、前記水平距離23は、図2に示すように、パンチングロール21の回転の中心からエンボスロール3の回転の中心までの水平方向の距離をいう。
第二実施形態に好ましく用いられるパンチングロール21としては、中空な円筒の表面に複数の穴を空けたものが挙げられる。表面に穴を空けたパンチングロール21を用いることで、パンチングロール21の近傍で気流が乱れにくくなり、繊維ウェブ4を均等に押圧しやすくなる。
また、パンチングロール21に空けた複数の穴は、千鳥状に配されていることが好ましい。穴の配置を千鳥状にすることで、幅方向のいずれの位置においてもパンチングロール21が穴を有することとなり、気流の乱れを効果的に防止できる。
次に、第三実施形態について説明する。
第三実施形態では、図3に示すように、エンボスロール3の表面速度32をコンベア2の搬送速度31よりも大きくする。速度に差異を設けることで、コンベア2とエンボスロール3との間において積層ウェブ4が搬送方向に適度に引っ張られ、不均等な気流が積層ウェブ4に当たっても、積層ウェブ4が分離しにくくなり、効率的に不織布を製造できる。
なお、前記搬送速度31及び前記表面速度32は、それぞれエンボスロール3及びコンベア2にて設定する速度を指す。
不織布の製造効率の観点から、エンボスロール3の表面速度32は、50m/min以上が好ましく、80m/min以上がより好ましく、100m/min以上が更に好ましい。また、縦方向と幅方向との品質の均一性及び加工安定性の観点から、エンボスロール3の表面速度32は、150m/min以下が好ましく、130m/min以下がより好ましく、120m/min以下が更に好ましい。
不織布の製造効率の観点から、コンベア2の搬送速度31は、50m/min以上が好ましく、80m/min以上がより好ましく、100m/min以上が更に好ましい。また、搬送安定性の観点から、コンベア2の搬送速度31は、150m/min以下が好ましく、130m/min以下がより好ましく、120m/min以下が更に好ましい。
コンベア2とエンボスロール3との間において積層ウェブ4を適度に引っ張る観点から、コンベア2の搬送速度31に対するエンボスロール3の表面速度32の比(表面速度32/搬送速度31)は、1.2超である。また、凹凸形状が明確で厚みのある不織布を製造する観点及びウェブを破壊せずに搬送する観点から、前記比は、1.5以下が好ましく、1.4以下がより好ましく、1.3以下が更に好ましい。
また、本発明の不織布の製造方法は、本発明の効果を奏するものである限り、上記の工程に加えて他の工程を有していてもよい。
本発明の製造方法で不織布を製造した後、吸収性物品の他の構成部材と積層することにより、吸収性物品を製造することができる。例えば、本発明の製造方法で得られた不織布を表面シートとして用いる場合、これを吸収体及び裏面シートと積層することにより、吸収性物品が得られる。
幅方向の長さが2500mmとなるように、繊維(商品名:TJ07CE 3.3dtex、帝人フロンティア株式会社製)からシート状の繊維ウェブをカード設備により作製した。繊維ウェブを厚み方向に2層重ね合わせ、2層からなる積層ウェブを作製した。この繊維は、ポリエチレンとポリエステルを原料樹脂とする単一繊維であり、融点は130℃であった。積層ウェブの目付は25g/m2であった。
作製した積層ウェブは、後述の実施例1~5及び比較例に用いた。
図1に示すエンボス設備を用いて、傾きの角度が30°、搬送速度が75m/minのコンベアで、積層ウェブを上方へ搬送した。次いで、搬送手段として別のコンベアを用い、水平面との角が15°以内の範囲に収まるように積層ウェブをエンボスロールの入口へ搬送した。その後、一対のエンボスロールにて、積層ウェブにエンボス加工を施した。このときのエンボスロールの表面速度は86m/minとした。
熱処理温度を138℃とし、0.2秒間熱処理を賦形後の積層ウェブに対して行い、実施例1の不織布試料を得た。
搬送手段の位置を変更した以外は、実施例1と同様にして、実施例2の不織布試料を得た。
図2に示すエンボス設備を用いて、傾きの角度が30°、搬送速度が72m/minのコンベア上で、自重が60kg、幅方向の長さが250cmのパンチングロールを用いて積層ウェブを押圧しながら、積層ウェブを上方へ送り出し、エンボスロールの入口へ搬送した。次いで、積層ウェブにエンボス加工を施した。このときのエンボスロールの表面速度は86m/minとした。
実施例1と同じ条件で熱処理を行い、実施例3の不織布試料を得た。
自重が87kgのパンチングロールを用いた以外は、実施例3と同様にして、実施例4の不織布試料を得た。
図3に示すエンボス設備を用いて、傾きの角度が30°、搬送速度が65m/minのコンベアで、積層ウェブを上方へ送り出し、エンボスロールの入口へ搬送した。次いで、一対のエンボスロールにて、積層ウェブにエンボス加工を施した。このときのエンボスロールの表面速度は85m/minとした。
実施例1と同じ条件で熱処理を行い、実施例5の不織布試料を得た。
パンチングロールによる押圧を行わず、積層ウェブの進入角度を表1に示す通りとした以外は、実施例3と同様にして、比較例1の不織布試料を得た。
実施例1~5及び比較例それぞれについて、水平の位置を調整したカメラを用い、エンボス設備1を幅方向から撮影した。撮影した画像を用い、エンボスロールの入口において積層ウェブの厚み方向中央が成す直線と、水平面との角を、分度器で測定した。
実施例1~5及び比較例それぞれについて、前述の方法に従い、積層ウェブの水平部の搬送方向の長さを測定した。併せて、積層ウェブの幅方向の長さに対する水平部の搬送方向の長さの割合、及びパンチングロールの押圧力を前述の方法に従い算出した。
実施例1~5及び比較例それぞれの不織布試料について、地合いの評価を行った。
具体的には、黒色を背景にして機械幅全幅の不織布試料を観察し、不織布の目付が小さい部分である筋が確認されなければ地合いが良好と判断し、該筋が確認されれば地合いが不良と判断した。
結果を表1に示す。
2 コンベア
3 エンボスロール
4 積層ウェブ
5 水平面
11 水平部
21 パンチングロール
22 押圧力
23 パンチングロールとエンボスロールとの水平距離
31 コンベアの搬送速度
32 エンボスロールの表面速度
Claims (6)
- 傾斜したコンベアで、繊維ウェブをシート状にして複数重ねた積層ウェブをエンボスロールの入口に搬送する工程と、該積層ウェブを該エンボスロールで挟持する工程と、該積層ウェブを不織布化する工程とを有し、
前記入口において、前記積層ウェブを水平化する処理を行って前記積層ウェブの水平部を設け、
前記水平部の搬送方向の長さを150mm以上とし、
前記積層ウェブの幅方向の長さに対する前記水平部の搬送方向の長さの割合を10%以下とする、不織布の製造方法。 - 前記コンベア上にて前記積層ウェブをパンチングロールで押圧する処理を行う、請求項1記載の不織布の製造方法。
- 前記パンチングロールの押圧力が0.2kgf/cm以上である、請求項2記載の不織布の製造方法。
- 前記エンボスロールと前記パンチングロールとの水平距離が1000mm以下である、請求項2又は3記載の不織布の製造方法。
- 前記コンベアの搬送速度に対する前記エンボスロールの表面速度の比が1.2超である、請求項1~4のいずれか1項に記載の不織布の製造方法。
- 請求項1~5のいずれか1項に記載の不織布の製造方法により不織布を製造し、該不織布を他の構成部材と積層する、吸収性物品の製造方法。
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